特許第6574771号(P6574771)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6574771室温硬化性シリコーンゴム組成物、その用途、および電子機器の補修方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6574771
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】室温硬化性シリコーンゴム組成物、その用途、および電子機器の補修方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/14 20060101AFI20190902BHJP
   C08L 83/06 20060101ALI20190902BHJP
   C08K 5/5419 20060101ALI20190902BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20190902BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20190902BHJP
【FI】
   C08L83/14
   C08L83/06
   C08K5/5419
   C08K3/36
   C08K3/22
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-535257(P2016-535257)
(86)(22)【出願日】2014年12月25日
(65)【公表番号】特表2017-500394(P2017-500394A)
(43)【公表日】2017年1月5日
(86)【国際出願番号】JP2014006473
(87)【国際公開番号】WO2015098118
(87)【国際公開日】20150702
【審査請求日】2017年12月14日
(31)【優先権主張番号】特願2013-272669(P2013-272669)
(32)【優先日】2013年12月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】719000328
【氏名又は名称】ダウ・東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小玉 春美
(72)【発明者】
【氏名】大西 正之
【審査官】 楠 祐一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−097519(JP,A)
【文献】 特開平02−133490(JP,A)
【文献】 特開2000−212541(JP,A)
【文献】 特開2009−007553(JP,A)
【文献】 特開2006−316190(JP,A)
【文献】 特開2012−219113(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/14
C08L 83/06
C08K 5/5419
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)分子鎖中のケイ素原子に、一般式:
【化1】
(式中、Rは同じかまたは異なる、脂肪族不飽和結合を有さない一価炭化水素基であり、Rはアルキル基であり、Rは同じかまたは異なるアルキレン基であり、aは0〜2の整数であり、pは1〜50の整数である。)
で表されるアルコキシシリル含有基を一分子中に少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン 100質量部、
(B)一般式:
Si(OR)
(式中、Rは一価炭化水素基であり、Rはアルキル基である。)
で表されるジアルコキシシランまたはその部分加水分解縮合物である架橋剤 0.5〜30質量部、
(C)縮合反応用触媒 0.1〜10質量部、および
(D)平均単位式:
(RSiO1/2)(SiO4/2)
(式中、Rは同じかまたは異なる一価炭化水素基であり、bは0.5〜1.5の数である。)
で表されるシリコーンレジン 10〜250質量部
含有する室温硬化性シリコーンゴム組成物。
【請求項2】
(A)成分の25℃における粘度が100〜1,000,000mPa・sの範囲内である、請求項1に記載の室温硬化性シリコーンゴム組成物。
【請求項3】
(A)成分が、分子鎖両末端のケイ素原子にアルコキシシリル含有基を有する直鎖状のオルガノポリシロキサンである、請求項1または2に記載の室温硬化性シリコーンゴム組成物。
【請求項4】
(A)成分中のアルコキシシリル含有基が、式:
【化2】
で表される基である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の室温硬化性シリコーンゴム組成物。
【請求項5】
(B)成分が、ジメチルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、またはジフェニルジメトキシシランである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の室温硬化性シリコーンゴム組成物。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか一項に記載の室温硬化性シリコーンゴム組成物を(A)成分と(B)成分を架橋させるよう硬化させてなる、シリコーンゴム硬化物。
【請求項7】
請求項に記載のシリコーンゴム硬化物を備える、電子機器。
【請求項8】
請求項に記載のシリコーンゴム硬化物を用いる、電子機器の補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気中の水分と接触することにより室温で硬化する室温硬化性シリコーンゴム組成物、その室温硬化性シリコーンゴム組成物を硬化して得られるシリコーンゴム硬化物、そのシリコーンゴム硬化物を備える電子機器、およびその電子機器の補修方法に関する。本出願は2013年12月27日付け出願の日本国特許出願2013−272669号の優先権を主張しており、ここに折り込まれるものである。
【背景技術】
【0002】
空気中の水分と接触することにより室温で硬化してシリコーンゴム硬化物を形成する室温硬化性シリコーンゴム組成物は、硬化に加熱を必要としないことから、電気・電子機器のシーリング剤や接着剤として利用されている(特許文献1〜4参照)。このような室温硬化性シリコーンゴム組成物を電気回路または電極に接触した状態で硬化させた場合には、長時間経過後も、該電気回路または電極からシリコーンゴム硬化物を除去することができ、補修やリサイクルが可能であるという特徴がある。
【0003】
しかし、特許文献1〜4に記載された室温硬化性シリコーンゴム組成物は、基材に対する接着性が良好であるシリコーンゴム硬化物を形成するが、この基材からシリコーンゴム硬化物を取り除く際、このシリコーンゴム硬化物が破断したり、凝集破壊を起こしたりして、効率的に除去するのが難しいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−22277号公報
【特許文献2】特開2006−22278号公報
【特許文献3】特開2007−231172号公報
【特許文献4】特開2012−219113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、空気中の水分と接触することにより室温で硬化して、硬化途上で接触している基材に対して良好な接着性を示すとともに良好な剥離性を示すシリコーンゴム硬化物を形成する室温硬化性シリコーンゴム組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく、本発明者らが鋭意検討した結果、(A)アルコキシシリル含有基を一分子中に少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン、(B)所定のアルコキシシランまたはその部分加水分解縮合物、および(C)縮合反応用触媒を含む室温硬化性シリコーンゴム組成物を用いることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
具体的には、本発明の室温硬化性シリコーンゴム組成物は、
(A)分子鎖中のケイ素原子に、一般式:
【化1】
(式中、Rは同じかまたは異なる、脂肪族不飽和結合を有さない一価炭化水素基であり、Rはアルキル基であり、Rは同じかまたは異なるアルキレン基であり、aは0〜2の整数であり、pは1〜50の整数である。)
で表されるアルコキシシリル含有基を一分子中に少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン、
(B)一般式:
Si(OR)
(式中、Rは一価炭化水素基であり、Rはアルキル基である。)
で表されるアルコキシシランまたはその部分加水分解縮合物、および、
(C)縮合反応用触媒、
を含有してなる。
【0008】
より好適には、本発明の室温硬化性シリコーンゴム組成物は、
(D)平均単位式:
(RSiO1/2)(SiO4/2)
(式中、Rは同じかまたは異なる一価炭化水素基であり、bは0.5〜1.5の数である。)
で表されるシリコーンレジンをさらに含有する。
【0009】
(A)成分の25℃における粘度は、100〜1,000,000mPa・sの範囲内であることが好ましい。
【0010】
(A)成分は、分子鎖両末端のケイ素原子にアルコキシシリル含有基を有する直鎖状のオルガノポリシロキサンであることが好ましい。
【0011】
(A)成分中のアルコキシシリル含有基は、式:
【化2】
で表される基であることが好ましい。
【0012】
(B)成分は、ジメチルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、またはジフェニルジメトキシシランであることが好ましい。
【0013】
より好適には、本発明の室温硬化性シリコーンゴム組成物は、(A)成分100質量部に対して、(B)成分を0.5〜30質量部含有し、(C)成分を0.1〜10質量部含有し、(D)成分を10〜250質量部含有する。
【0014】
本発明の室温硬化性シリコーンゴム組成物は、(E)分子鎖中のケイ素原子に水酸基およびアルコキシ基を有さないオルガノポリシロキサンをさらに含有することが好ましい。
【0015】
本発明の室温硬化性シリコーンゴム組成物は、(F)接着促進剤をさらに含有することが好ましい。
【0016】
(F)成分は、エポキシ基含有アルコキシシラン、アクリル基含有アルコキシシラン、アミノ基含有アルコキシシラン、およびエポキシ基含有アルコキシシランとアミノ基含有アルコキシシランとの反応混合物からなる群より選択されることが好ましい。
【0017】
本発明の室温硬化性シリコーンゴム組成物は、(G)補強性充填剤をさらに含有することが好ましい。
【0018】
(G)成分は、ヒュームドシリカ微粉末、沈降性シリカ微粉末、焼成シリカ微粉末、およびヒュームド酸化チタン微粉末からなる群より選択されることが好ましい。
【0019】
本発明はさらに、前記した本発明の室温硬化性シリコーンゴム組成物を硬化させてなるシリコーンゴム硬化物にも関する。
【0020】
本発明はさらに、前記したシリコーンゴム硬化物を備える電子機器にも関する。
【0021】
本発明はさらに、前記したシリコーンゴム硬化物を用いる電子機器の補修方法にも関する。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る室温硬化性シリコーンゴム組成物は、空気中の水分と接触することにより室温で硬化して、硬化途上で接触している基材に対して良好な接着性を示すとともに、基材から剥離する際に凝集破壊を起こさない、良好な剥離性を示すシリコーンゴム硬化物を形成することができる。
【0023】
さらに、上記(D)シリコーンレジン成分をさらに含む本発明に係る室温硬化性シリコーンゴム組成物は、向上した機械的強度を示すとともに、剥離時の糊残りが低減されるので、優れた補修性および再利用性を示すことができる。
【0024】
さらに、本発明に係るシリコーンゴム硬化物は、硬化途上で接触している基材に対して良好な接着性を示すとともに、基材から効率的に剥離することができる良好な剥離性を示す。また、本発明に係る電子機器は、上述したシリコーンゴム硬化物の基材に対する高い接着性および剥離性により良好な信頼性を有する。また、本発明に係る電子機器の補修方法は、上述した高い剥離性を有するシリコーンゴム硬化物を用いるので、容易に電子機器の補修を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[室温硬化性シリコーンゴム組成物]
本発明に係る室温硬化性シリコーンゴム組成物は、上述した(A)〜(C)成分を含有してなる。こうした室温硬化性シリコーンゴム組成物は、空気中の水分と接触することにより室温で硬化して、硬化途上で接触している基材に対して良好な接着性を示すとともに、基材から効率的に剥離することができる良好な剥離性を示すシリコーンゴム硬化物を形成することができる。以下、各成分について詳細に説明する。なお、本明細書において、粘度は25℃において、JIS K7117−1に準拠してB型粘度計を用いて測定した測定値である。
【0026】
(A)成分は、本組成物の主剤であり、分子鎖中のケイ素原子に、一般式:
【化3】
で表されるアルコキシシリル含有基を一分子中に少なくとも2個有するオルガノポリシロキサンである。
【0027】
式中、Rは同じかまたは異なる、脂肪族不飽和結合を有さない一価炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、およびオクタデシル基等のアルキル基;シクロペンチル基およびシクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、およびナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、およびフェニルプロピル基等のアラルキル基;並びに、3−クロロプロピル基および3,3,3−トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基が挙げられ、好ましくは、アルキル基、シクロアルキル基、またはアリール基であり、より好ましくは、メチル基またはフェニル基である。また、式中、Rはアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、およびオクタデシル基が挙げられ、好ましくは、メチル基またはエチル基である。また、式中、Rは同じかまたは異なるアルキレン基であり、例えば、メチルメチレン基、エチレン基、メチルエチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、およびオクチレン基が挙げられ、好ましくは、メチルメチレン基、エチレン基、メチルエチレン基、またはプロピレン基である。また、式中、aは0〜2の整数であり、好ましくは、0または1である。また、式中、pは1〜50の整数であり、好ましくは、1〜20の整数であり、より好ましくは、1〜10の整数であり、特に好ましくは、1〜5の整数である。
【0028】
このようなアルコキシシリル含有基としては、例えば、式:
【化4】
で表される基、式:
【化5】
で表される基、式:
【化6】
で表される基、式:
【化7】
で表される基、式:
【化8】
で表される基、式:
【化9】
で表される基、式:
【化10】
で表される基が挙げられる。
【0029】
(A)成分の分子鎖中のケイ素原子に結合する上記アルコキシシリル含有基以外の基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、およびオクタデシル基等のアルキル基;シクロペンチル基およびシクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、およびヘプテニル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、およびナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、およびフェニルプロピル基等のアラルキル基;並びに、3−クロロプロピル基および3,3,3−トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基が挙げられ、好ましくは、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、またはアリール基であり、より好ましくは、メチル基、ビニル基、またはフェニル基である。
【0030】
(A)成分の分子構造は限定されず、例えば、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状、分岐鎖状、および環状が挙げられ、好ましくは、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状、または分岐鎖状である。上記アルコキシシリル含有基は、分子鎖末端のケイ素原子に結合していてもよく、また、分子鎖途中のケイ素原子に結合してもよい。(A)成分としては、分子構造が直鎖状であり、分子鎖両末端のケイ素原子に上記アルコキシシリル含有基を有するオルガノポリシロキサンが好ましい。
【0031】
(A)成分の25℃における粘度は限定されないが、好ましくは、100〜1,000,000mPa・sの範囲内であり、より好ましくは、100〜100,000mPa・sの範囲内である。(A)成分の粘度が上記範囲の下限以上であると、得られるシリコーンゴム硬化物の機械的強度が向上し、一方、上記範囲の上限以下であると、得られる組成物の取扱作業性が向上する。
【0032】
(A)成分を調製する方法としては、例えば、特開昭62−207383号公報や特開昭62−212488号公報に記載の方法が挙げられる。
【0033】
(B)成分は、本組成物の架橋剤として作用し、硬化途上で接触している基材に対して、経時での基材からの良好な剥離性を示すための特徴的な成分であり、一般式:
Si(OR)
(式中、Rは一価炭化水素基であり、Rはアルキル基である。)
で表されるジオルガノジアルコキシシランまたはその部分加水分解縮合物である。
【0034】
式中、Rは同じかまたは異なる一価炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、およびオクタデシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、およびヘプテニル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、およびナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、およびフェニルプロピル基等のアラルキル基;並びに、3−クロロプロピル基および3,3,3−トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基が挙げられ、好ましくは、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、またはアリール基であり、より好ましくは、メチル基である。また、式中、Rは同じかまたは異なるアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、およびヘキシル基が挙げられ、好ましくは、メチル基である。
【0035】
(B)成分としては、例えば、ジメチルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン;およびこれらの部分加水分解縮合物が挙げられる。(B)成分はこれらのジオルガノジアルコキシシランまたはその部分加水分解縮合物を単独で用いても良く、また2種以上混合して用いても良い。
【0036】
(B)成分の含有量は、限定されないが、例えば、(A)成分100質量部に対して0.5〜30質量部の範囲内であり、好ましくは、0.5〜20質量部の範囲内であり、より好ましくは、0.5〜15質量部の範囲内であり、特に好ましくは、0.5〜10質量部の範囲内である。(B)成分の含有量が上記範囲の下限以上であると、得られる組成物の硬化性が十分であり、また、湿気遮断下、得られる組成物のシェルフライフが向上し、一方、上記範囲の上限以下であると、得られる組成物が空気中の水分により速やかに硬化する。
【0037】
(C)成分は、本組成物の架橋を促進する縮合反応用触媒である。このような(C)成分としては、例えば、ジメチル錫ジネオデカノエートおよびスタナスオクトエート等の錫化合物;テトラ(イソプロポキシ)チタン、テトラ(n−ブトキシ)チタン、テトラ(t−ブトキシ)チタン、ジ(イソプロポキシ)ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ(イソプロポキシ)ビス(メチルアセトアセテート)チタン、およびジ(イソプロポキシ)ビス(アセチルアセトネート)チタン等のチタン化合物が挙げられる。
【0038】
(C)成分の含有量は、限定されないが、例えば、(A)成分100質量部に対して0.1〜10質量部の範囲内であり、好ましくは、0.1〜6質量部の範囲内である。(C)成分の含有量が上記範囲の下限以上であると、得られる組成物が空気中の水分により速やかに硬化し、一方、上記範囲の上限以下であると、得られる組成物のシェルフライフが向上する。
【0039】
本発明に係る室温硬化性シリコーンゴム組成物は、上記(A)〜(C)成分以外にも、他の成分を含有してもよく、例えば、以下の(D)〜(G)成分をさらに含有してもよい。
【0040】
(D)成分は、本組成物を硬化して得られるシリコーンゴム硬化物に適度の機械的強度を付与し、硬化途上で接触している基材から効率的にシリコーンゴム硬化物を剥離する際の糊残りを低減し、その結果、補修性および再利用性を向上するための成分であり、平均単位式:
(RSiO1/2)(SiO4/2)
(式中、Rは同じかまたは異なる一価炭化水素基であり、bは0.5〜1.5の数である。)
で表されるシリコーンレジンである。
【0041】
こうした(D)成分をさらに含む本発明に係る室温硬化性シリコーンゴム組成物は、向上した機械的強度を示すとともに、剥離時の糊残りが低減されるので、優れた補修性および再利用性を示すことができる。
【0042】
上述した(D)成分を表す式中、Rは同じかまたは異なる一価炭化水素基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、およびオクタデシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、およびシクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、およびヘプテニル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、およびナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、およびフェニルプロピル基等のアラルキル基;並びに、3−クロロプロピル基、および3,3,3−トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基が挙げられ、好ましくは、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、またはアリール基であり、より好ましくは、メチル基、ビニル基、またはフェニル基である。また、式中、bは0.5〜1.5であり、より好ましくは0.6〜1.3である。また、(D)シリコーンレジンは、分子中にケイ素原子結合水酸基またはケイ素原子結合アルコキシ基を0.2〜5.0質量%含むことが好ましい。こうしたケイ素原子結合水酸基の含有量は、例えば、核磁気共鳴法により測定できる。こうした(D)シリコーンレジンは、当該技術分野で公知であり、各種市販のシリコーンレジンを適宜使用することができる。
【0043】
(D)成分の含有量は、限定されないが、例えば、(A)成分100質量部に対して、10〜250質量部の範囲内であり、好ましくは、20〜220質量部の範囲内であり、より好ましくは、30〜200質量部の範囲内である。
【0044】
(E)成分は、本組成物から得られるシリコーンゴム硬化物を適度な柔らかさにするとともに接着性を向上させるための成分であり、分子鎖中のケイ素原子に水酸基およびアルコキシ基を有さないオルガノポリシロキサンである。(E)成分中のケイ素原子に結合する水酸基およびアルコキシ基以外の基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、およびオクタデシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、およびシクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、およびヘプテニル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、およびナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、およびフェニルプロピル基等のアラルキル基;並びに、3−クロロプロピル基、および3,3,3−トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基が挙げられ、好ましくは、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、またはアリール基であり、より好ましくは、メチル基、ビニル基、またはフェニル基である。こうした(E)成分としては、例えば、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサンおよび両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン等を挙げることができる。(E)成分の分子構造は限定されず、例えば、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状、分岐鎖状、および環状が挙げられ、好ましくは、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状、または分岐鎖状である。(E)成分の25℃における粘度は限定されないが、好ましくは、10〜1,000,000mPa・sの範囲内であり、より好ましくは、50〜100,000mPa・sの範囲内である。(E)成分の粘度が上記範囲の下限以上であると、得られるシリコーンゴム硬化物から(E)成分のブリードアウトを抑制でき、一方、上記範囲の上限以下であると、得られる組成物の取扱作業性が向上する。
【0045】
(E)成分の含有量は、限定されないが、例えば、(A)成分100質量部に対して1〜100質量部の範囲内であり、好ましくは、1〜80質量部の範囲内であり、より好ましくは、1〜70質量部の範囲内であり、特に好ましくは、1〜60質量部の範囲内である。(E)成分の含有量が上記範囲の下限以上であると、得られる組成物の接着性が良好となり、一方、上記範囲の上限以下であると、得られるシリコーンゴム硬化物から(E)成分のブリードアウトを抑制できる。特に、有機樹脂に対する接着性が良好であることから、(E)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、15〜60質量部の範囲内であることが好ましい。
【0046】
(F)成分は、接着促進剤であり、本組成物の硬化途上で接触している有機樹脂に対する接着性を向上させるための成分である。(F)成分の接着促進剤としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、および4−オキシラニルブチルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有アルコキシシラン;3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、および3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアクリル基含有アルコキシシラン;3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、およびN−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有アルコキシシラン;並びに上記エポキシ基含有アルコキシシランと上記アミノ基含有アルコキシシランとの反応混合物が挙げられ、特に、上記エポキシ基含有アルコキシシランと上記アミノ基含有アルコキシシランとの反応混合物が好ましい。このようなエポキシ基含有アルコキシシランとアミノ基含有アルコキシシランとの反応混合物を調製する方法としては、例えば、特公昭55−41702号公報や特公平7−113083号公報に記載の方法が挙げられる。
【0047】
(F)成分の含有量は、本組成物が硬化途上で接触する有機樹脂に十分な接着性を付与できる量であれば限定されないが、好ましくは、(A)成分100質量部に対して0.01〜10質量部の範囲内であり、好ましくは、0.01〜5質量部の範囲内である。(F)成分の含有量が上記範囲の下限以上であると、有機樹脂に対する接着性が十分であり、一方、上記範囲の上限以下であると、得られる組成物が空気中の水分と接触することにより速やかに硬化する。
【0048】
(G)成分は、補強性充填剤であり、本組成物を硬化して得られるシリコーンゴム硬化物に機械的強度を付与し、基材からの剥離性を向上させるための成分である。(G)成分としては、例えば、ヒュームドシリカ微粉末、沈降性シリカ微粉末、溶融シリカ微粉末、焼成シリカ微粉末、ヒュームド二酸化チタン微粉末、ガラス繊維、並びにこれらの表面をオルガノシラン類、シラザン類、およびシロキサンオリゴマー等で表面処理して疎水化した微粉末が挙げられる。(G)成分の微粉末の粒子径は、特に限定されないが、例えばレーザー回折散乱式粒度分布測定によるメジアン径で0.01μm〜1000μmの範囲内であり得る。
【0049】
(G)成分の含有量は、限定されないが、(A)成分100質量部に対して0.1〜50質量部の範囲内であることが好ましい。
【0050】
また、本組成物には、本発明の目的を損なわない限り、その他任意の成分として、例えば、石英微粉末、炭酸カルシウム微粉末、珪藻土微粉末、水酸化アルミニウム微粉末、アルミナ微粉末、水酸化マグネシウム微粉末、マグネシア微粉末、酸化亜鉛微粉末、炭酸亜鉛微粉末、およびこれらの表面をオルガノシラン類、シラザン類、またはシロキサンオリゴマー等で表面処理して疎水化した非補強性充填剤;その他、有機溶剤、防カビ剤、難燃剤、耐熱剤、可塑剤、チクソ性付与剤、硬化促進剤、電極・配線等の腐食防止剤・マイグレーション防止剤および/またはカーボンブラック等の顔料を含有してもよい。
【0051】
本組成物は、(A)成分〜(C)成分、および(D)成分、さらに必要に応じて、(E)〜(G)成分、およびその他任意の成分を湿気遮断下で均一に混合することにより製造することができる。シリコーン組成物の各成分の混合方法は、従来公知の方法でよく特に限定されないが、通常、単純な攪拌により均一な混合物となる。また、任意成分として無機質充填剤等の固体成分を含む場合は、混合装置を用いた混合がより好ましい。こうした混合装置としては特に限定がなく、一軸または二軸の連続混合機、二本ロール、ロスミキサー、ホバートミキサー、デンタルミキサー、プラネタリミキサー、ニーダーミキサー、およびヘンシェルミキサー等が例示される。このようにして調製された本組成物は、湿気遮断下、密閉容器中に封入することにより長期間貯蔵することができる。
【0052】
[シリコーンゴム硬化物]
本発明に係るシリコーンゴム硬化物は、上述した室温硬化性シリコーンゴム組成物を硬化したものである。こうした室温硬化性シリコーンゴム組成物の硬化する方法は、特に限定されないが、通常空気中の水分と接触することにより速やかに硬化することができ、シリコーンゴム硬化物を形成する。こうしたシリコーンゴム硬化物は、硬化途上で接触している基材に対して良好な接着性を示すとともに、基材から効率的に剥離することができる良好な剥離性を示す。
【0053】
[電子機器]
本発明に係る電子機器は、上述したシリコーンゴム硬化物を備える電子機器である。電子機器としては、特に限定されないが、例えば、ガラス、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、またはセラミック等の基材上に、銀、銅、アルミニウム、または金等の金属電極;ITO(Indium Tin Oxide)等の金属酸化膜電極が形成された電気回路または電極等を含む電子機器が例示される。こうした電極としては、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)、フラットパネルディスプレイ(FPD)、およびフラットパネル表示装置の電極等が挙げられ、本組成物は、こうした電極のコーティングとして用いることができる。こうした電子機器は、シリコーンゴム硬化物の硬化途上で接触している基材に対する高い接着性および高い剥離性により、良好な信頼性を有する。
【0054】
[電子機器の補修方法]
本発明に係る電子機器の補修方法は、上述した基材に対する良好な剥離性を有するシリコーンゴム硬化物を用いる補修方法である。こうした補修方法によれば、シリコーンゴム硬化物が基材に対して良好な剥離性を有するので、シリコーンゴム硬化物を糊残りなく剥離させて容易に電子機器の補修を行うことができる。
【実施例】
【0055】
本発明の室温硬化性シリコーンゴム組成物を実施例により詳細に説明する。なお、実施例中、粘度は、25℃において、JIS K7117−1に準拠してB型粘度計を用いて測定した測定値である。また、室温硬化性シリコーンゴム組成物を硬化して得られたシリコーンゴム硬化物の基材に対する剥離性、接着性、および補修性(再利用性)を次のとおりに評価した。
【0056】
<シリコーンゴム硬化物の基材に対する剥離性の評価方法>
ガラス製基材に室温硬化性シリコーンゴム組成物からなる接着層を厚さが1mmとなるように形成し、これを25℃、50%RHで7日間静置して前記組成物を硬化させて試験片を作製した。この試験片を短冊状に切断し(長さ4.0cm×幅1.0cm×厚さ0.5mm)、180度方向に50mm/分のスピードで剥離試験を行った。接着破断面の状態を目視で観察し、シリコーンゴム硬化物が凝集破壊した割合を凝集破壊(CF)率として求めた。CF率が0%であることは、シリコーンゴム硬化物の剥離時の凝集破壊が抑制され、基材に対してシリコーンゴム硬化物が良好な剥離性を有することを意味する。
【0057】
<シリコーンゴム硬化物の基材に対する接着性の評価方法>
(引張強さの測定)
上記試験片からJIS K6252(加硫ゴムの引裂張試験方法)に記載のクレセント形試験片を打抜いて、試験片とした。これを用いて、JIS K6252に準じて、島津製作所社製、「オートグラフ SES−1000」を用いて測定した。
【0058】
(切断時伸び率の測定)
JIS K6251に準じて、島津製作所社製、「オートグラフ SES−1000」を用いて測定し、上記引張強さの測定に用いた試験片が切断した時の伸びを初期に対する比率(%)で表わした。
【0059】
<シリコーンゴム硬化物の基材に対する補修性の評価方法>
ガラス製基材(3mm×80mm)に室温硬化性シリコーンゴム組成物からなる接着層を厚さが0.5mmとなるように形成し、これを25℃、50%RHで7日間静置して前記組成物を硬化させて試験片を作製した。得られたシリコーンゴム硬化物を20度方向に50mm/分のスピードで剥離試験を行った。補修性(再利用性)を以下の基準に基づいて評価した。
1:容易に基材から剥離できるとともに、剥離試験の間シリコーンゴム硬化物が全く破断せず、非常に優れた補修性を示した。
2:容易に基材から剥離できるとともに、剥離試験の間シリコーンゴム硬化物が1または2回しか破断せず、良好な補修性を示した。
3:容易に基材から剥離できたが、剥離試験の間シリコーンゴム硬化物が3回以上破断したため、補修性に実用上問題があった。
【0060】
実施例および比較例の室温硬化性シリコーンゴム組成物を調製するため、次のとおりの原料を用いた。
(A)成分:粘度が500mPa・sであり、分子鎖両末端のケイ素原子に、式:
【化11】
で表されるトリメトキシシリルエチル含有基を有する直鎖状のジメチルポリシロキサン
(B−1)成分:ジメチルジメトキシシラン
(B−2)成分:メチルトリメトキシシラン(比較のための成分)
(C)成分:チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)
(D)成分:平均単位式:
{(CHSiO1/2}0.65(SiO4/2
で表されるシリコーンレジン (ケイ素原子結合水酸基の含有量:1.0質量%未満)
(E)成分:粘度が500mPa・sである、分子鎖両末端のケイ素原子にトリメチルシロキシ基を有する直鎖状のジメチルポリシロキサン
(G)成分:BET法による比表面積が130m2/gであり、表面がヘキサメチルジシラザンで処理されたヒュームドシリカ粉末
なお、上記(A)成分は、特開昭62−207383号公報に記載の方法に準じて調製した。
【0061】
[実施例1〜6並びに比較例1および2]
湿気遮断下、(A)成分、(B‐1)成分、(B−2)成分、(C)成分、(E)成分、および(G)成分を表1に示す配合量で均一に混合して室温硬化性シリコーンゴム組成物を調製した。この室温硬化性シリコーンゴム組成物を硬化して得られたシリコーンゴム硬化物の剥離性を評価し、その結果を表1に示した。
【0062】
【表1】
【0063】
[実施例6〜13および比較例3]
湿気遮断下、(A)成分、(B‐1)成分、(B−2)成分、(C)成分、および(D)成分、並びに必要に応じて溶媒を表2に示す配合量で均一に混合して室温硬化性シリコーンゴム組成物を調製した。この室温硬化性シリコーンゴム組成物を硬化して得られたシリコーンゴム硬化物の剥離性、接着性、および補修性を評価し、その結果を表2に示した。
【0064】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の室温硬化性シリコーンゴム組成物は、空気中の水分と接触することにより室温で硬化し、硬化途上で接触している基材に対して良好な接着性を示し、必要により効率的に基材から剥離性を示すシリコーンゴム硬化物を形成することから、電気・電子部品の補修が可能な封止剤、接着剤、防湿コート剤として好適である。