特許第6575775号(P6575775)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6575775-軟磁性膜 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6575775
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】軟磁性膜
(51)【国際特許分類】
   G11B 5/667 20060101AFI20190909BHJP
   G11B 5/851 20060101ALI20190909BHJP
   C23C 14/34 20060101ALI20190909BHJP
   C23C 14/14 20060101ALI20190909BHJP
   H01F 10/16 20060101ALI20190909BHJP
   H01F 41/18 20060101ALI20190909BHJP
【FI】
   G11B5/667
   G11B5/851
   C23C14/34 A
   C23C14/14 F
   H01F10/16
   H01F41/18
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-509306(P2017-509306)
(86)(22)【出願日】2016年1月7日
(86)【国際出願番号】JP2016050288
(87)【国際公開番号】WO2016157922
(87)【国際公開日】20161006
【審査請求日】2018年12月10日
(31)【優先権主張番号】特願2015-66603(P2015-66603)
(32)【優先日】2015年3月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(72)【発明者】
【氏名】上田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】福岡 淳
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 和也
【審査官】 中野 和彦
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/183546(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/022963(WO,A1)
【文献】 特開2014−037569(JP,A)
【文献】 特開2012−169021(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/104509(WO,A1)
【文献】 特開2008−260969(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 5/667
C23C 14/14
C23C 14/34
G11B 5/851
H01F 10/16
H01F 41/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子比における組成式が、(CoFe1−a100−b−cNb、0.5≦a≦0.0、3≦b≦14、3≦c≦19、16≦b+c≦24、Mは、CrおよびWからなる群から選ばれる1種以上の元素、残部が不可避的不純物からなり、100℃における飽和磁束密度が0.50T以上であり、25℃から100℃における飽和磁束密度の低下率が10%以下であることを特徴とする軟磁性膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂直磁気記録方式の磁気媒体等に用いられる軟磁性膜およびこの軟磁性膜を形成するために用いるスパッタリングターゲットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の磁気記録媒体には記録密度の高密度化のため、従来の面内磁気記録に替わり、垂直磁気記録方式が実用化されている。垂直磁気記録方式とは、垂直磁気記録媒体の磁性膜を媒体面に対して磁化容易軸が垂直方向に配向するように形成したものであり、記録密度を上げてもビット内の反磁界が小さく、記録再生特性の低下が少ない高記録密度に適した方法である。この垂直磁気記録方式において、記録感度を高めた磁気記録膜層と軟磁性膜層とを有する記録媒体が開発されている。
このような磁気記録媒体の軟磁性膜としては、優れた軟磁気特性が要求されることから、アモルファス軟磁性合金が採用されている。この軟磁性膜用のアモルファス合金としては、Fe、CoあるいはFeCo合金に種々の添加元素を含む合金が挙げられる。(例えば、特許文献1参照。)
【0003】
従来の軟磁性膜には、高い飽和磁束密度(以下、Bsと記す。)と非晶質性が要求されていた。そして、近年では、ドライブ中の読書き用ヘッドの改良や、軟磁性合金の磁束密度を調整し、軟磁性膜とRu膜との交換結合磁界を最適化することにより、従来よりも低い磁束での書込みが可能となってきている。
このように、アモルファス合金を垂直磁気記録媒体の軟磁性膜として用いると、軟磁性膜中の記録磁化が周囲に磁気的な影響を与えることなく、小さなスペースに記録可能となる。そして、このような高いBsが要求される軟磁性膜には、FeリッチのFeCo合金が利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開WO09/104509号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者の検討によると、上述したFeリッチのFeCo合金を用いた軟磁性膜は、温度の上昇に伴うBsの低下が大きく、室温(25℃)より高い温度環境、例えば50〜100℃程度では、垂直磁気記録媒体の軟磁性膜としての機能を十分に果たせなくなってしまう場合がある、すなわち、Bsの高温特性に問題があることを確認した。
【0006】
本発明の目的は、高温でもBsの低下が小さい軟磁性膜、および、この軟磁性膜を形成するために用いるスパッタリングターゲットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、Bsの高温特性に関する問題を検討した。そして、軟磁性膜を構成するアモルファス合金にCoFeNb系合金を採用し、CoとFeとの原子比を一定の比率とすることで、Bsの高温特性を大きく改善できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、原子比における組成式が、(CoFe1−a100−b−cNb、0.50≦a≦0.90、3≦b≦14、3≦c≦19、16≦b+c≦24、Mは、Mo、CrおよびWからなる群から選ばれる1種以上の元素、残部が不可避的不純物からなり、100℃における飽和磁束密度が0.50T以上である軟磁性膜である。
【0008】
また、本発明は、前記軟磁性膜を形成するために用いるスパッタリングターゲット材であって、原子比における組成式が、(CoFe1−a100−b−cNb、0.50≦a≦0.90、3≦b≦14、3≦c≦19、16≦b+c≦24、Mは、Mo、CrおよびWからなる群から選ばれる1種以上の元素、残部が不可避的不純物からなる軟磁性膜形成用のスパッタリングターゲットである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、室温(25℃)より高い温度環境でも、Bsの低下が小さく、高温特性に優れるため、垂直磁気記録媒体の使用環境下で軟磁性膜の性能を十分に高めることができるようになり、垂直磁気記録媒体の製造に有用な技術となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明例1および比較例2の軟磁性膜の温度推移に対するBsの測定結果。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の軟磁性膜は、原子比における組成式が、(CoFe1−a100−b−cNb、0.50≦a≦0.90、3≦b≦14、3≦c≦19、16≦b+c≦24、Mは、Mo、CrおよびWからなる群から選ばれる1種以上の元素、残部が不可避的不純物からなり、100℃におけるBsが0.50T以上であることに特徴を有する。
そして、本発明の軟磁性膜は、垂直磁気記録媒体の使用環境である、室温(25℃)より高い、100℃という温度で、Bsの低下を抑制して、Bsを0.50T以上とすることにより、垂直磁気記録媒体の軟磁性膜としての機能を十分に果たすことができる。
本発明の上記原子比における組成式中のa、即ちCoの含有比率を0.50以上とするのは、100℃におけるBsの低下を抑制し、Bsを0.50T以上にするためである。また、組成式中のaを0.90以下にすることで、軟磁気特性の低下を抑制することができる。このため、本発明では、組成式中のaを0.50≦a≦0.90の範囲にする。中でも、上記と同様の理由から、0.55≦a≦0.70の範囲が好ましい。
【0012】
本発明の軟磁性膜は、Nbを含有する。Nbを添加元素として選定したのは、電位−pH図において、pHの広範囲に亘って緻密な不動態被膜を形成することが示されていることから、軟磁性膜の耐食性を向上させるためである。
本発明の軟磁性膜は、組成式中のbを3以上にすることにより、軟磁性膜をアモルファス構造にすることができる上、耐食性を向上させることができる。また、本発明の軟磁性膜は、組成式中のbを14以下にすることにより、脆い金属間化合物相の形成を抑制できる。このため、本発明の軟磁性膜は、組成式中のbを3≦b≦14の範囲とする。これにより、本発明の軟磁性膜は、成膜時にアモルファス膜となると同時に、高温環境下であっても軟磁性膜をアモルファス構造に維持でき、結晶化の抑制が可能となる。中でも、上記と同様の理由から、bは5以上が好ましく、8以上がより好ましい。また、bは12以下が好ましく、11以下がより好ましい。
【0013】
本発明の軟磁性膜は、M元素としてMo、CrおよびWからなる群から選ばれる1種以上の元素を含有し、その含有量を3〜19の範囲とする。
上記のNbを添加するのみでは、十分に安定なアモルファス構造と高い耐食性を得ることが困難な場合がある。そこで、本発明の軟磁性膜は、M元素をNbと複合添加することにより、十分に安定なアモルファス構造を形成した上で、軟磁気特性や耐食性を向上させることができる。そして、M元素の群の中でも、上記と同様の理由から、Wが好ましい。
本発明の軟磁性膜は、組成式中のcを3以上にすることにより、十分に安定なアモルファス構造が得られるとともに、耐食性を向上できる。また、本発明の軟磁性膜は、組成式中のcを19以下にすることで、軟磁性膜の軟磁気特性を向上できる。このため、本発明の軟磁性膜は、M元素の添加量、即ち組成式中のcを、3≦c≦19の範囲とする。中でも、上記と同様の理由から、cは4以上が好ましく、8以上がより好ましい。また、cは18以下が好ましく、11以下がより好ましい。
【0014】
本発明の軟磁性膜は、上記Nbと上記M元素を複合添加する際に、その含有量、即ち組成式中のb+cを、16≦b+c≦24の範囲とする。これは、アモルファス構造を維持したまま、良好な軟磁気特性を得るためである。組成式中のb+cを16以上にすることで、軟磁性膜において安定なアモルファス構造が得られるとともに、耐食性を向上させることができる。また、本発明の軟磁性膜は、組成式中のb+cを24以下にすることにより、軟磁性膜の軟磁気特性を向上できる。中でも、上記と同様の理由から、b+cは16以上が好ましく、17以上がより好ましい。また、b+cは22以下が好ましく、21以下がより好ましい。
【0015】
本発明の軟磁性膜は、NbおよびM元素を上記の範囲で含有する以外の残部は、FeとCoと不可避的不純物である。不純物の含有量は、できるだけ少ないことが好ましく、例えば、ガス成分である酸素、窒素は1000質量ppm以下、不可避的に含まれるガス成分以外のNi、Si等の不純物元素は、合計で1000質量ppm以下であることが好ましい。
【0016】
本発明の上記特性を具備する軟磁性膜の形成には、軟磁性膜の組成と同一組成のスパッタリングターゲットを用いたスパッタリング法が最適である。そして、本発明の別の発明は、原子比における組成式が、(CoFe1−a100−b−cNb、0.50≦a≦0.90、3≦b≦14、3≦c≦19、16≦b+c≦24、Mは、Mo、CrおよびWからなる群から選ばれる1種以上の元素、残部が不可避的不純物からなる軟磁性膜形成用スパッタリングターゲットである。
【0017】
本発明のスパッタリングターゲットの製造方法としては、例えば溶製法や粉末焼結法が適用可能である。溶製法では、鋳造インゴット、もしくは鋳造インゴット中に存在する鋳造欠陥の低減や組織の均一化を図るために、塑性加工や加圧加工を加えてバルク体とし、これに機械加工を施すことで製造できる。
また、粉末焼結法では、原料粉末を例えば熱間静水圧プレス、ホットプレス、放電プラズマ焼結、押し出しプレス焼結等の加圧焼結することにより製造できる。中でも、熱間静水圧プレスは、以下に述べる加圧焼結条件を安定して実現できるため、好適である。
【0018】
本発明で粉末焼結法を適用する場合は、原料粉末として、複数の合金粉末や純金属粉末を最終組成になるように混合した混合粉末や、最終組成に調整した合金粉末が適用できる。
また、最終組成に調整した粉末を加圧焼結する方法では、Nbを含有する金属間化合物相を安定的に微細で均一分散できる効果を有する。本発明では、最終組成の合金粉末の紛体組成物を加圧焼結することが好ましい。
【0019】
また、上述の加圧焼結に用いる原料粉末は、所望の組成に成分調整した合金溶湯を鋳造したインゴットを粉砕する方法や、上記合金溶湯を不活性ガスにより噴霧するガスアトマイズ法によって作製することが可能である。中でも、不純物の混入が少なく、充填率の高い、焼結に適した球状粉末が得られるガスアトマイズ法が好ましい。尚、球状粉末の酸化を抑制するためには、アトマイズガスとして不活性ガスであるArガスもしくは窒素ガスを用いることが好ましい。
【0020】
また、上述の加圧焼結における焼結温度は、800℃以上にすることで、高融点金属であるNbやM元素を含有する粉末の焼結を進行させることができ、空孔の発生を抑制することができる。また、焼結温度を1400℃以下にすることで、合金粉末の溶解を防止できる。このため、本発明では、焼結温度を800〜1400℃とすることが好ましい。尚、空孔の形成を最小限に低減した上で、Nbを含有する金属間化合物相の成長を抑制するためには、900〜1300℃の温度で焼結することがより好ましい。
また、上述の加圧焼結における加圧圧力は、100MPa以上にすることで、焼結の進行を助長し、空孔の発生を抑制することができる。また、加圧圧力を200MPa以下にすることで、焼結時にスパッタリングターゲットへの残留応力の導入が抑制され、焼結後の割れの発生を抑制することができる。このため、本発明では、加圧圧力を100〜200MPaとすることが好ましい。尚、より空孔の形成を最小限に低減し、残留応力の導入をさらに抑制するためには、120〜160MPaの加圧圧力で焼結することがより好ましい。
また、上述の加圧焼結における焼結時間は、1時間以上にすることで、焼結の進行を助長し、空孔の発生を抑制することができる。また、焼結時間を10時間以下とすることで、製造効率を悪化させないで、Nbを含有する金属間化合物相の成長を抑制して製造できる。このため、本発明では、焼結時間を1〜10時間とすることが好ましい。尚、空孔の形成を最小限に低減し、Nbを含有する金属間化合物相の成長をさらに抑制するためには、1〜3時間の焼結時間で焼結することがより好ましい。
【実施例】
【0021】
(本発明例1)
まず、純度99.9%以上の原料を用いて、原子比における組成式で、(Co0.70Fe0.3082Nbの合金組成となる合金溶湯を真空溶解し、Arガスによるガスアトマイズ法によってガスアトマイズ粉末を作製し、250μmの篩で分級し、粗粒を除去した。
そして、得られたガスアトマイズ粉末を軟鋼製のカプセルに充填し、脱気封止した後、温度950℃、圧力122MPa、保持時間1時間の条件で熱間静水圧プレスによって加圧焼結し、焼結体を作製した。得られた焼結体に機械加工を施し、直径180mm×厚さ5mmの軟磁性膜形成用のスパッタリングターゲットを得た。
【0022】
上記で作製した軟磁性膜形成用スパッタリングターゲットを、キヤノンアネルバ製のDCマグネトロンスパッタ装置(C−3010)のチャンバー内に配置し、チャンバ内の真空到達度が2×10−5Pa以下となるまで排気を行なった後、寸法75mm×25mmのガラス基板上に、Arガス圧0.6Pa、投入電力1000Wの条件で、膜厚300nmの軟磁性膜をスパッタリング成膜した。
【0023】
(本発明例2)
まず、純度99.9%以上の原料を用いて、原子比における組成式で、(Co0.55Fe0.4582NbMoの合金組成となる合金溶湯を真空溶解し、Arガスによるガスアトマイズ法によってガスアトマイズ粉末を作製する以外は、本発明例1と同様の条件で軟磁性膜形成用のスパッタリングターゲットを作製した。
そして、上記で作製した軟磁性膜形成用スパッタリングターゲットを用いて、実施例1と同様の条件で軟磁性膜をスパッタリング成膜した。
【0024】
(本発明例3)
まず、純度99.9%以上の原料を用いて、原子比における組成式で、(Co0.70Fe0.3082NbCrの合金組成となる合金溶湯を真空溶解し、Arガスによるガスアトマイズ法によってガスアトマイズ粉末を作製する以外は、本発明例1と同様の条件で軟磁性膜形成用のスパッタリングターゲットを作製した。
そして、上記で作製した軟磁性膜形成用スパッタリングターゲットを用いて、実施例1と同様の条件で軟磁性膜をスパッタリング成膜した。
【0025】
(本発明例4)
まず、純度99.9%以上の原料を用いて、原子比における組成式で、(Co0.70Fe0.3083Nb14の合金組成となる合金溶湯を真空溶解し、Arガスによるガスアトマイズ法によってガスアトマイズ粉末を作製する以外は、本発明例1と同様の条件で軟磁性膜形成用のスパッタリングターゲットを作製した。
そして、上記で作製した軟磁性膜形成用スパッタリングターゲットを用いて、実施例1と同様の条件で軟磁性膜をスパッタリング成膜した。
【0026】
(比較例1)
まず、純度99.9%以上の原料を用いて、原子比における組成式で、(Co0.35Fe0.6581.5Ta18.5の合金組成となる合金溶湯を真空溶解し、Arガスによるガスアトマイズ法によってガスアトマイズ粉末を作製する以外は、本発明例1と同様の条件で軟磁性膜形成用のスパッタリングターゲットを作製した。
そして、上記で作製した軟磁性膜形成用スパッタリングターゲットを用いて、実施例1と同様の条件で軟磁性膜をスパッタリング成膜した。
【0027】
(比較例2)
まず、純度99.9%以上の原料を用いて、原子比における組成式で、(Co0.35Fe0.6582Nbの合金組成となる合金溶湯を真空溶解し、Arガスによるガスアトマイズ法によってガスアトマイズ粉末を作製する以外は、本発明例1と同様の条件で軟磁性膜形成用のスパッタリングターゲットを作製した。
そして、上記で作製した軟磁性膜形成用スパッタリングターゲットを用いて、実施例1と同様の条件で軟磁性膜をスパッタリング成膜した。
【0028】
(比較例3)
まず、純度99.9%以上の原料を用いて、原子比における組成式で、(Co0.34Fe0.6667Cr2013の合金組成となる合金溶湯を真空溶解し、Arガスによるガスアトマイズ法によってガスアトマイズ粉末を作製する以外は、本発明例1と同様の条件で軟磁性膜形成用のスパッタリングターゲットを作製した。
そして、上記で作製した軟磁性膜形成用のスパッタリングターゲットを用いて、実施例1と同様の条件で軟磁性膜をスパッタリング成膜した。
【0029】
上記で成膜した各軟磁性膜の試料を、さらに寸法6mm×7mmに加工した後、東英工業株式会社製の振動試料型磁力計(VSM−5−20)を使用し、面内方向に最大磁場80kA/mを印加したまま、昇温速度0.2℃/secで、室温(25℃)から410℃まで加熱し、Bsを測定した。
代表例として、本発明例1および比較例2の測定結果を図1に示す。また、各軟磁性膜の25℃および100℃におけるBsの測定結果と、100℃におけるBsの25℃におけるBsからの低下率を表1に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
表1より、本発明の範囲外の比較例となる軟磁性膜は、100℃におけるBsが0.50T未満であった。これに対し、本発明の軟磁性膜は、100℃におけるBsが0.50T以上であり、Bsの高温特性に優れた軟磁性膜であることが確認できた。
また、本発明の範囲外の比較例となる軟磁性膜は、いずれも25℃から100℃におけるBsの低下値が0.10Tを超え、低下率は26%以上であり、大幅な低下であった。これに対し、本発明の軟磁性膜は、25℃から100℃におけるBsの低下値は0.10T未満、低下率は11%以下であり、Bsの高温特性に優れた軟磁性膜であることが確認できた。
そして、本発明の軟磁性膜は、本発明の軟磁性膜形成用のスパッタリングターゲットにより形成可能であることが確認され、本発明の有効性が確認できた。
図1