特許第6575786号(P6575786)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6575786非水電解質二次電池用負極、非水電解質二次電池、および非水電解質二次電池用負極の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6575786
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池用負極、非水電解質二次電池、および非水電解質二次電池用負極の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/133 20100101AFI20190909BHJP
   H01M 4/134 20100101ALI20190909BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20190909BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20190909BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20190909BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20190909BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20190909BHJP
   H01M 4/1393 20100101ALI20190909BHJP
   H01M 4/1395 20100101ALI20190909BHJP
【FI】
   H01M4/133
   H01M4/134
   H01M4/587
   H01M4/36 E
   H01M4/62 Z
   H01M4/38 Z
   H01M4/48
   H01M4/36 C
   H01M4/1393
   H01M4/1395
【請求項の数】15
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2018-534401(P2018-534401)
(86)(22)【出願日】2017年8月15日
(86)【国際出願番号】JP2017029378
(87)【国際公開番号】WO2018034285
(87)【国際公開日】20180222
【審査請求日】2018年12月17日
(31)【優先権主張番号】特願2016-160748(P2016-160748)
(32)【優先日】2016年8月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105050
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲田 公一
(72)【発明者】
【氏名】西浦 克典
(72)【発明者】
【氏名】房 楠
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 貴一
(72)【発明者】
【氏名】古屋 昌浩
【審査官】 近藤 政克
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/051811(WO,A1)
【文献】 特開2006−179234(JP,A)
【文献】 特開2005−108826(JP,A)
【文献】 特開2017−152375(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/006561(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/133
H01M 4/134
H01M 4/1393
H01M 4/1395
H01M 4/36
H01M 4/38
H01M 4/48
H01M 4/587
H01M 4/62
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ金属またはアルカリ土類金属を吸蔵可能なケイ素またはスズを含む合金系材料(A)と、炭素粒子(B)と、カルボン酸塩含有ポリマー(C)と、直鎖ポリフェニレン化合物(D)と、を少なくとも含む負極合材層を有し、
前記負極合材層に含まれる前記合金系材料(A)および前記炭素粒子(B)の体積の合計を100体積%としたときの、前記合金系材料(A)の体積の割合は、10体積%以上60体積%未満であり、
前記負極合材層中の前記カルボン酸塩含有ポリマー(C)の量は前記負極合材層の全質量に対して4質量%以上13質量%以下であり、かつ、前記カルボン酸塩含有ポリマー(C)の中和度は50%以上であることを特徴とする非水電解質二次電池用負極。
【請求項2】
前記カルボン酸塩含有ポリマー(C)は、以下の式(1)で表される構造を50モル%以上含有することを特徴とする、請求項1に記載の非水電解質二次電池用負極。
【化1】
(式(1)中、MはLi、Na、KおよびNHから選択される少なくとも1種のカチオンであり、前記カルボン酸塩含有ポリマー(C)は、Mが異なる複数種の上記式(1)で表される構造を含有してもよい。)
【請求項3】
前記合金系材料(A)は、SiO(0.5≦x≦1.5)で表されるケイ素酸化物である、請求項1または2に記載の非水電解質二次電池用負極。
【請求項4】
前記ケイ素酸化物の少なくとも一部は、炭素により被覆されており、
前記被覆する炭素の質量は、前記負極合材層に含まれる前記ケイ素酸化物の全質量に対して2質量%以上50質量%以下である、請求項3に記載の非水電解質二次電池用負極。
【請求項5】
前記炭素粒子(B)は、天然黒鉛、人造黒鉛、炭素被覆黒鉛からなる群から選ばれる少なくとも一種の黒鉛を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用負極。
【請求項6】
前記カルボン酸塩含有ポリマー(C)の中和度は97%未満であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用負極。
【請求項7】
前記カルボン酸塩含有ポリマー(C)は、ポリアクリル酸のリチウム塩またはポリアクリル酸のナトリウム塩を含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用負極。
【請求項8】
前記直鎖ポリフェニレン化合物(D)は、ビフェニル、ターフェニルまたはその誘導体であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用負極。
【請求項9】
前記合金系材料(A)は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を含有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用負極。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用負極を有する、非水電解質二次電池。
【請求項11】
アルカリ金属またはアルカリ土類金属を吸蔵可能なケイ素またはスズを含む合金系材料(A)と、炭素粒子(B)と、カルボン酸塩含有ポリマー(C)とを少なくとも含み、前記カルボン酸塩含有ポリマー(C)の中和度が50%以上である活物質含有層を、
直鎖ポリフェニレン化合物(D)の存在下で前記合金系材料(A)が吸蔵可能なアルカリ金属またはアルカリ土類金属と接触させて、負極合材層を得る工程を含み、
前記負極合材層に含まれる前記合金系材料(A)および前記炭素粒子(B)の体積の合計を100体積%としたときの、前記合金系材料(A)の体積の割合は、10体積%以上60体積%未満であり、
前記カルボン酸塩含有ポリマー(C)の量は、前記負極合材層の全質量に対して4質量%以上13質量%以下である、
非水電解質二次電池用負極の製造方法。
【請求項12】
前記負極合材層を得る工程は、前記アルカリ金属または前記アルカリ土類金属および直鎖ポリフェニレン化合物(D)が溶解した溶液中に上記活物質含有層を浸漬させる工程であることを特徴とする、請求項11に記載の非水電解質二次電池用負極の製造方法。
【請求項13】
前記得られた負極合材層を、前記直鎖ポリフェニレン化合物(D)が可溶な溶媒中に浸漬する工程をさらに含む、請求項11または12に記載の非水電解質二次電池用負極の製造方法。
【請求項14】
前記直鎖ポリフェニレン化合物(D)が可溶な溶媒は、テトラヒドロフランであることを特徴とする、請求項13に記載の非水電解質二次電池用負極の製造方法。
【請求項15】
正極、負極、および電解液を備え、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の少なくとも一種を含有する非水電解質二次電池であって、
前記負極は、前記アルカリ金属及びアルカリ土類金属の少なくとも一種を吸蔵可能なケイ素またはスズを含む合金系材料(A)と、炭素粒子(B)と、カルボン酸塩含有ポリマー(C)と、直鎖ポリフェニレン化合物(D)と、を少なくとも含む負極合材層を有し、
前記負極合材層に含まれる前記合金系材料(A)および前記炭素粒子(B)の体積の合計を100体積%としたときの、前記合金系材料(A)の体積の割合は、10体積%以上60体積%未満であり、
前記負極合材層中の前記カルボン酸塩含有ポリマー(C)の量は、前記負極合材層の全質量に対して4質量%以上13質量%以下であり、かつ、前記カルボン酸塩含有ポリマー(C)の中和度は50%以上であり、
前記正極が有する正極活物質の容量から算出される前記アルカリ金属及びアルカリ土類金属のモル量より、満充電時の負極に含まれる前記アルカリ金属及びアルカリ土類金属の合計モル量が多い、非水電解質二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質二次電池用負極、非水電解質二次電池、および非水電解質二次電池用負極の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話およびデジタルカメラなどの電子機器の電源として、リチウムイオン二次電池などの非水電解質二次電池が広く用いられている。上記非水電解質二次電池は、リチウムやナトリウムなどのアルカリ金属またはアルカリ土類金属(以下、単に「アルカリ金属類」ともいう。)を吸蔵および放出可能な材料を含む電極(正極および負極)、ならびに電解液を含んで構成される。
【0003】
非水電解質二次電池の負極活物質としては、炭素材料が主に用いられてきた。しかし、近年、ケイ素またはスズを含む合金系材料を負極活物質に用いると、非水電解質二次電池の放電容量をより大きくできると期待されている。ケイ素またはスズを含む合金系材料を用いた負極活物質において、初期サイクルでの充放電効率を高めるため、電池製造前に上記負極活物質に上記アルカリ金属類を吸蔵させる技術が開発されている(以下、負極活物質にアルカリ金属類を予め吸蔵させることを、単に「プレドープ」ともいう。)。
【0004】
たとえば、特許文献1には、リチウムイオンおよび多環芳香族化合物(ナフタレン、アントラセンおよびフェナンスレンなど)を鎖状モノエーテルに溶解させた溶液にSiOを浸漬させて、上記SiOにリチウムを吸蔵させる方法が記載されている。この方法によれば、上記浸漬時に、上記多環芳香族化合物が触媒として作用して、リチウムイオンが上記SiOに吸蔵される。特許文献1によれば、この方法では、容易に、かつ短時間で、上記SiOにリチウムをプレドープできるとされている。また、特許文献1によれば、このようにしてプレドープされたSiOをリチウムイオン二次電池の負極活物質として用いることで、大きな放電容量を有するリチウムイオン二次電池が得られるとされている。
【0005】
特許文献2は、負極活物質として、内部にLi化合物を含むケイ素化合物および炭素材を含む非水電解質二次電池用負極材において、金属イオンを、1族の金属の塩の形で上記負極材中に含ませることによって、上記ケイ素化合物内部のLi化合物の有機溶剤、水溶媒への溶出を抑えることができるとされ、また、負極材が金属イオンを含有することで、負極スラリーの流動性を保つことができ、更にケイ素化合物を侵食することがないため、電池特性を低下させることがないとされている。特許文献2によれば、上記負極材が、カルボニル基、ヒドロキシ基およびアミノ基の少なくとも一つを含む結着剤を含有すると、上記官能基が金属イオン等を引き寄せて、上記炭素材の近傍に上記金属塩を偏在させるため、電極上部またはケイ素化合物外殻の近傍に上記金属塩が偏在することによる初回充放電効率の低下が抑制されると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−108826号公報
【特許文献2】特開2015−149224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、我々の検討によると、特許文献1記載の方法により、負極に含まれるケイ素化合物にリチウムをプレドープすることで、初回充放電効率は高めることができるものの、プレドープ後の負極合材層の重量増加および体積膨張が大きく、電池のエネルギー密度が低下するという問題があることが分かった。重量増加の要因としては、多環芳香族化合物が合材層に付着するためと推定される。一方、体積膨張の要因としては、合材層に使用している結着剤が、リチウムイオンおよび多環芳香族化合物を溶解させた溶液により膨潤することで、プレドープ時に体積膨張したと推定している。
【0008】
また、特許文献1の方法では、たとえば実施例で上記溶液にSiOを3日間接触させているように、リチウムのプレドープが十分に短時間で可能だとはいえなかった。そのため、実際の電池の製造を考慮して、より短時間でプレドープしようとすると、負極活物質の単位量当たりにプレドープされるリチウム量が少なく、初回充放電効率が低いという問題があった。
【0009】
なお、特許文献2においては、前述のとおり、プレドープしたケイ素化合物に適した結着剤が提案されているが、これら結着剤は、すでにプレドープされたケイ素化合物を用いて、負極スラリーを形成する際に適した結着剤として提案されているものであり、これら結着剤を用いて負極を作製した後で、特許文献1の方法でプレドープしても、プレドープ後の負極合材層の重量増加および体積膨張を抑制することはできなかった。
【0010】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、アルカリ金属類のイオンおよび触媒を含有する溶液への浸漬によってプレドープされた非水電解質二次電池用負極であって、プレドープにより負極の重量および体積が増大しにくく、かつ、初回充放電効率もより高めることができる、非水電解質二次電池用負極、およびこれを含む非水電解質二次電池、ならびにアルカリ金属やアルカリ土類金属を効率良くプレドープすることが可能な非水電解質二次電池用負極の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第一は、以下の非水電解質二次電池用負極に関する。
[1]アルカリ金属またはアルカリ土類金属を吸蔵可能なケイ素またはスズを含む合金系材料(A)と、炭素粒子(B)と、カルボン酸塩含有ポリマー(C)と、直鎖ポリフェニレン化合物(D)と、を少なくとも含む負極合材層を有し、前記負極合材層に含まれる前記合金系材料(A)および前記炭素粒子(B)の体積の合計を100体積%としたときの、前記合金系材料(A)の体積の割合は、10体積%以上60体積%未満であり、前記負極合材層中の前記カルボン酸塩含有ポリマー(C)の量は前記負極合材層の全質量に対して4質量%以上13質量%以下であり、かつ、前記カルボン酸塩含有ポリマー(C)の中和度は50%以上であることを特徴とする非水電解質二次電池用負極。
[2]前記カルボン酸塩含有ポリマー(C)が、以下の式(1)で表される構造を50モル%以上含有することを特徴とする、[1]に記載の非水電解質二次電池用負極。
【0012】
【化1】
【0013】
式(1)中、MはLi、Na、KおよびNHから選択される少なくとも1種のカチオンであり、前記カルボン酸塩含有ポリマー(C)は、Mが異なる複数種の上記式(1)で表される構造を含有してもよい。
【0014】
[3]前記合金系材料(A)は、SiO(0.5≦x≦1.5)で表されるケイ素酸化物である、[1]または[2]に記載の非水電解質二次電池用負極。
[4]前記ケイ素酸化物の少なくとも一部は、炭素により被覆されており、前記被覆する炭素の質量は、前記負極合材層に含まれる前記ケイ素酸化物の全質量に対して2質量%以上50質量%以下である、[3]に記載の非水電解質二次電池用負極。
[5]前記炭素粒子(B)は、天然黒鉛、人造黒鉛、炭素被覆黒鉛からなる群から選ばれる少なくとも一種の黒鉛を含む、[1]〜[4]のいずれかに記載の非水電解質二次電池用負極。
[6]前記カルボン酸塩含有ポリマー(C)の中和度は97%未満であることを特徴とする、[1]〜[5]のいずれかに記載の非水電解質二次電池用負極。
[7]前記カルボン酸塩含有ポリマー(C)は、ポリアクリル酸のリチウム塩またはポリアクリル酸のナトリウム塩を含むことを特徴とする、[1]〜[6]のいずれかに記載の非水電解質二次電池用負極。
[8]前記直鎖ポリフェニレン化合物(D)は、ビフェニル、ターフェニルまたはその誘導体であることを特徴とする、[1]〜[7]のいずれかに記載の非水電解質二次電池用負極。
[9]前記合金系材料(A)は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を含有する、[1]〜[8]のいずれかに記載の非水電解質二次電池用負極。
【0015】
本発明の第二は、以下の非水電解質二次電池に関する。
[10][1]〜[9]のいずれかに記載の非水電解質二次電池用負極を有する、非水電解質二次電池。
【0016】
本発明の第三は、以下の非水電解質二次電池用負極の製造方法に関する。
[11]アルカリ金属またはアルカリ土類金属を吸蔵可能なケイ素またはスズを含む合金系材料(A)と、炭素粒子(B)と、カルボン酸塩含有ポリマー(C)とを少なくとも含み、前記カルボン酸塩含有ポリマー(C)の中和度が50%以上である活物質含有層を、直鎖ポリフェニレン化合物(D)の存在下で前記合金系材料(A)が吸蔵可能なアルカリ金属またはアルカリ土類金属と接触させて、負極合材層を得る工程を含み、前記負極合材層に含まれる前記合金系材料(A)および前記炭素粒子(B)の体積の合計を100体積%としたときの、前記合金系材料(A)の体積の割合は、10体積%以上60体積%未満であり、前記カルボン酸塩含有ポリマー(C)の量は、前記負極合材層の全質量に対して4質量%以上13質量%以下である、非水電解質二次電池用負極の製造方法。
[12]前記負極合材層を得る工程は、前記アルカリ金属または前記アルカリ土類金属および直鎖ポリフェニレン化合物(D)が溶解した溶液中に上記活物質含有層を浸漬させる工程であることを特徴とする、[11]に記載の非水電解質二次電池用負極の製造方法。
[13]前記得られた負極合材層を、前記直鎖ポリフェニレン化合物(D)が可溶な溶媒中に浸漬する工程をさらに含む、[11]または[12]に記載の非水電解質二次電池用負極の製造方法。
[14]前記直鎖ポリフェニレン化合物(D)が可溶な溶媒は、テトラヒドロフランであることを特徴とする、[13]に記載の非水電解質二次電池用負極の製造方法。
【0017】
本発明の第四は、以下の非水電解質二次電池に関する。
[15]正極、負極、および電解液を備え、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の少なくとも一種を含有する非水電解質二次電池であって、前記負極は、前記アルカリ金属及びアルカリ土類金属の少なくとも一種を吸蔵可能なケイ素またはスズを含む合金系材料(A)と、炭素粒子(B)と、カルボン酸塩含有ポリマー(C)と、直鎖ポリフェニレン化合物(D)と、を少なくとも含む負極合材層を有し、前記負極合材層に含まれる前記合金系材料(A)および前記炭素粒子(B)の体積の合計を100体積%としたときの、前記合金系材料(A)の体積の割合は、10体積%以上60体積%未満であり、前記負極合材層中の前記カルボン酸塩含有ポリマー(C)の量は、前記負極合材層の全質量に対して4質量%以上13質量%以下であり、かつ、前記カルボン酸塩含有ポリマー(C)の中和度は50%以上であり、前記正極が有する正極活物質の容量から算出される前記アルカリ金属及びアルカリ土類金属のモル量より、満充電時の負極に含まれる前記アルカリ金属及びアルカリ土類金属の合計モル量が多い、非水電解質二次電池。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、アルカリ金属類のイオンおよび触媒を含有する溶液への浸漬によってプレドープされた非水電解質二次電池用負極であって、プレドープにより負極の重量および体積が増大しにくく、かつ、初回充放電効率もより高めることができる、非水電解質二次電池用負極、およびこれを含む非水電解質二次電池、ならびにアルカリ金属やアルカリ土類金属を効率良くプレドープすることが可能な非水電解質二次電池用負極の製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
1.非水電解質二次電池用負極
本発明の一実施形態に係る非水電解質二次電池用負極(以下、単に「二次電池用負極」ともいう。)は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を吸蔵可能なケイ素またはスズを含む合金系材料(A)と、炭素粒子(B)と、カルボン酸塩含有ポリマー(C)と、直鎖ポリフェニレン化合物(D)と、を少なくとも含む負極合材層を有する。上記二次電池用負極は、集電体をさらに有してもよい。上記二次電池用負極の構造は、適用する非水電解質二次電池の用途に合わせて適宜選択することができ、たとえば、シート状の集電体と、上記集電体の両面に配置された負極合材層とからなる積層体などとすることができる。上記二次電池用負極は、リチウムイオンキャパシタなどのキャパシタの電極としても利用することができる。
【0020】
非水電解質二次電池の負極として、ケイ素やスズなどの合金系材料を負極活物質として含む負極を用いることが検討されている。しかしながら、これらの合金系材料を含む負極は、初期サイクルにおける不可逆容量が大きくなりやすく、エネルギー密度を高めることが難しいという課題があった。負極の製造時に、アルカリ金属類を負極活物質にプレドープすれば、このような不可逆容量も低減されることが知られている。しかしながら特許文献1に記載の方法などでは、プレドープ時間が短い場合、負極活物質にプレドープされるアルカリ金属類の量が少ない。そのため、初回充放電反応(例えばリチウムの場合、SiO+4Li+4e→3/4LiSi+1/4LiSiO)時に、アルカリ金属類のイオンと反応する負極活物質(プレドープ時にLiを捕捉しなかった負極活物質であり、上記式ではSiO)量が多くなる。その結果、初回充放電反応によって生成する不可逆成分(上記式ではSiLiO)量が多くなり、初回充放電効率が十分に高まり難かった。
【0021】
これに対し、上記二次電池用負極は、負極活物質として合金系材料(A)および炭素粒子(B)を含む。負極活物質として、合金系材料(A)と炭素粒子(B)とを組み合わせると、プレドープにより吸蔵されるアルカリ金属類の量がより多くなり、アルカリ金属類を捕捉したため上記初回充放電反応を生じない負極活物質の量が少なくなるため、初回充放電反応時に生成する上記不可逆成分の量が少なくなる。そのため、上記二次電池用負極は、非水電解質二次電池の初回充放電効率を高めて、エネルギー密度を高めることができる。これはすなわち、合金系材料(A)と炭素粒子(B)とを組み合わせると、アルカリ金属類を負極活物質へプレドープさせる際に要する時間を短縮できることを意味する。
【0022】
本発明では、さらに、直鎖ポリフェニレン化合物(D)をプレドープ時に用いることで、特許文献1のように多環芳香族化合物を触媒として用いたときよりも、プレドープによる負極合材層の質量および体積の増大を抑制することができる。これは、直鎖ポリフェニレン化合物(D)は、多環芳香族化合物に比べて、電極合材層、とりわけ炭素粒子(B)との相互作用が小さく、電極合材層に付着しにくいためであると推定している。
【0023】
しかし、我々の知見によれば、直鎖ポリフェニレン化合物(D)とリチウムからなる化合物は、多環芳香族化合物とリチウムからなる化合物に比べ、プレドープされるリチウム量が少ないため、初回充放電効率を高めにくい。これに対し、我々は、カルボキシル基を有するポリマーであって、上記カルボキシル基が中和されているポリマー(カルボン酸塩含有ポリマー(C))を用い、さらにその量および中和度を調整することで、プレドープ量を十分に高め、プレドープによる負極合材層の質量および体積の増大を抑制しつつ、初回充放電効率も十分に高めることができることを見出した。初回充放電効率が向上した要因は、カルボン酸塩含有ポリマー(C)を使用することにより、ポリマー中をリチウムイオンが移動しやすくなり、プレドープ量が増大したためと推定している。また、カルボン酸塩含有ポリマー(C)を使用することで、リチウムイオンおよび直鎖ポリフェニレン化合物(B)を溶解させた溶液に対する膨潤耐性が向上し、プレドープ時の体積膨張が抑制されたと推定している。
【0024】
上記二次電池用負極において、負極合材層中に含まれるカルボン酸塩含有ポリマー(C)の量は、負極合材層の全質量に対して4質量%以上13質量%以下である。上記カルボン酸塩含有ポリマー(C)の量が4質量%以上であると、カルボン酸塩含有ポリマー(C)によるプレドープ量の増大効果が十分に奏される。また、上記カルボン酸塩含有ポリマー(C)の量が13質量%以下であると、プレドープ時の負極活物質とアルカリ金属類との接触がカルボン酸塩含有ポリマー(C)によって阻害されにくいため、プレドープによって十分な量のアルカリ金属類を吸蔵させることができる。また、カルボン酸塩含有ポリマー(C)の量が上記範囲であると、プレドープ時に、アルカリ金属類との接触時による負極合材層の剥離が生じにくくなる。
【0025】
また、上記二次電池用負極において、カルボン酸塩含有ポリマー(C)の中和度は50%以上である。上記カルボン酸塩含有ポリマー(C)の中和度が50%以上であると、ポリマー中を、アルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオンが移動しやすくなり、プレドープ量が向上するため、初回充放電効率を十分に高めることが可能になる。また、上記カルボン酸塩含有ポリマー(C)の中和度が50%以上であると、リチウムイオンおよび直鎖ポリフェニレン化合物(B)を溶解させた溶液に対する膨潤耐性の向上のため、プレドープによる負極合材層の体積の増大もさらに抑制することができる。
【0026】
以下、上記二次電池用負極の各構成について、説明する。
【0027】
1−1.負極合材層
負極合材層は、合金系材料(A)、炭素粒子(B)、カルボン酸塩含有ポリマー(C)、および直鎖ポリフェニレン化合物(D)を少なくとも含む。
【0028】
合金系材料(A)および炭素粒子(B)は、負極活物質として機能する(アルカリ金属類の吸蔵および放出が可能な)材料である。
【0029】
カルボン酸塩含有ポリマー(C)は、結着剤として機能し、合金系材料(A)同士、合金系材料(A)と炭素粒子(B)と、または合金系材料(A)もしくは炭素粒子(B)と後述する集電体と、などを結着する。
【0030】
直鎖ポリフェニレン化合物(D)は、アルカリ金属類を負極活物質(特に合金系材料(A)および炭素粒子(B))にプレドープするときに負極合材層に含まれるものである。
【0031】
負極合材層は、必要に応じて他の材料を含んでもよく、例えば導電助剤(E)などを含んでもよい。
【0032】
(合金系材料(A))
合金系材料(A)は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を吸蔵可能なケイ素またはスズを構成元素に含む材料であり、負極活物質として機能する(アルカリ金属類の吸蔵および放出が可能な)材料である。合金系材料(A)は、プレドープによりアルカリ金属類との複合体となるが、電池の放電によってアルカリ金属類が放出された後などは、アルカリ金属類を実質的に含んでいなくてもよい。
【0033】
負極合材層に含まれる合金系材料(A)と炭素粒子(B)との合計体積を100体積%としたとき、合金系材料(A)の体積の割合は、10体積%以上60体積%未満であり、10体積%以上50体積%未満であることが好ましく、10体積%以上40体積%未満であることがより好ましく、10体積%以上30体積%未満であることがより好ましい。上記合金系材料(A)の体積の割合が10体積%以上であると、プレドープにより吸蔵されるアルカリ金属類の量を多くして、生成する不可逆成分の量を少なくすることができる。その結果、上記二次電池用負極を有する非水電解質二次電池の初回充放電効率が高まり、エネルギー密度が十分に高くなる。上記合金系材料(A)の体積の割合が60体積%未満であると、プレドープ速度が速いため、初回充放電効率が高まり、かつ、プレドープ時の体積増大も抑制できる。上記体積比は、合金系材料(A)および炭素粒子(B)の含有量および真比重により測定される。合金系材料(A)および炭素粒子(B)の含有量は、電気化学分析法、蛍光X線分析法、イオンクロマトグラフィー、ICP質量分析法、および原子吸光光度法などの公知の方法、または、負極作製時に用いた合金系材料(A)および炭素粒子(B)それぞれの質量から特定される。一方、真比重は、粉末状に粉砕した固体試料(合金系材料(A)および炭素粒子(B))を用いて、JIS Z8807に準拠した方法により測定可能であり、例えば、以下のようにして測定できる。
【0034】
乾燥したピクノメータを室温になるまでデシケータ中で放置し、ピクノメータの質量W1を秤量する。十分に粉砕した試料(合金系材料(A)もしくは炭素粒子(B))をピクノメータに入れ、(ピクノメータ+試料)の質量W2を秤量する。さらに、試料が十分に浸るようにピクノメータにn−ブタノールを入れ、十分に脱気する。n−ブタノールをさらに加えてピクノメータに満たし、恒温水槽に入れて25℃にする。n−ブタノールおよび試料が25℃になった後、n−ブタノールのメニスカスを標線に合わせ、室温になるまで放置する。そして、(ピクノメータ+試料+n−ブタノール)の質量W3を秤量する。ピクノメータにn−ブタノールだけを満たし、恒温槽に入れて25℃にし、n−ブタノールのメニスカスを標線に合わせ、室温になるまで放置し、(ピクノメータ+n−ブタノール)の質量W4を秤量する。
真比重は、上記のようにして秤量した各質量W1、W2、W3、およびW4から、以下のように算出できる。
真比重={(W2−W1)×s}/{(W2−W1)−(W3−W4)}
ここで、sは、25℃におけるn−ブタノールの比重である。
【0035】
なお、負極合材層に含まれる合金系材料(A)および後述する炭素粒子(B)の量の合計は、77質量%以上97質量%以下であることが好ましく、80質量%以上96質量%以下であることがより好ましい。合金系材料(A)および後述の炭素粒子(B)の量の合計が上記範囲であると、吸蔵および放出可能なアルカリ金属類の量を十分に多くし、非水電解質二次電池の放電容量を十分に大きくすることができる。
【0036】
合金系材料(A)の粒径D50は、一般に小さい方が好ましいが、あまりにも小さいと凝集によって粗大化することがある。D50とはレーザー回析法による粒度分布測定における体積分布の積算値が50%に相当する粒子径、つまり、体積基準で測定したメディアン径を指す。このような観点から、合金系材料(A)の粒径D50は1μm以上40μm以下であることが好ましく、2μm以上30μm以下であることがより好ましい。
【0037】
合金系材料(A)が吸蔵可能なアルカリ金属類の種類は特に制限されないが、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウムおよびカルシウムが好ましく、リチウムおよびナトリウムがより好ましく、リチウムが特に好ましい。
【0038】
ケイ素を構成元素として含む合金系材料(A)の例には、(i)ケイ素微粒子、(ii)マグネシウム、ニッケル、チタン、モリブデン、コバルト、カルシウム、クロム、銅、鉄、マンガン、ニオブ、タンタル、バナジウム、タングステン、または亜鉛と、ケイ素との合金、(iii)ホウ素、窒素、酸素または炭素と、ケイ素との化合物、および(iv)上記(ii)で例示される金属と上記(iii)で例示されるケイ素化合物との複合材料などが含まれる。
【0039】
ケイ素を構成元素として含む合金系材料(A)の具体的な例には、上記(ii)の具体例であるMgSi、NiSi、TiSi、MoSi、CoSi、NiSi、CaSi、CrSi、CuSi、FeSi、MnSi、NbSi、TaSi、VSi、WSi、およびZnSi、上記(iii)の具体例であるSiB、SiB、SiC、SiO(0.5≦x≦1.5)、およびSi、ならびに上記(iv)の具体例であるSiO、ならびにLiSiOなどが含まれる。
【0040】
スズを構成元素として含む合金系材料(A)の例には、(i)ケイ素、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモンまたはクロムと、スズとの合金、(ii)酸素または炭素と、スズとの化合物、(iii)上記(i)で例示される金属と、上記(ii)で例示されるスズ化合物との複合材料などが含まれる。
【0041】
スズを構成元素として含む合金系材料(A)の具体的な例には、上記(i)の具体例であるMgSn、上記(ii)の具体例であるSnO(0<w≦2)およびLiSnO、ならびに上記(iii)の具体例であるSnSiOなどが含まれる。
【0042】
合金系材料(A)は、ケイ素またはスズを含む合金や化合物を一種のみ含んでもよく、二種以上含んでもよい。また、これらの表面は、導電性を高めるなどの観点から、炭素材料などで被覆されていてもよい。
【0043】
特に好ましい合金系材料(A)の例には、SiO(0.5≦x≦1.5)で表されるケイ素酸化物(以下、単に「ケイ素酸化物」ともいう。)が含まれる。本発明において、SiO(0.5≦x≦1.5)とは、二酸化ケイ素(SiO)と金属ケイ素(Si)とを原料として得られる非晶質のケイ素酸化物の総称を表す一般式である。SiO(0.5≦x≦1.5)において、xが0.5未満であると、Si相の占める比率が高くなるため充放電時の体積変化が大きくなり、非水電解質二次電池のサイクル特性が低下することがある。また、xが1.5を超えると、Si相の比率が低下してエネルギー密度が低下することがある。より好ましいxの範囲は、0.7≦x≦1.2である。
【0044】
また、上記ケイ素酸化物は、導電性を高めるため、その表面の少なくとも一部が炭素により被覆されていてもよい。上記ケイ素酸化物が炭素によって被覆されたものである場合、上記複合体における炭素の付着量は、上記ケイ素酸化物の全質量に対して、2質量%以上50質量%以下であることが好ましく、3質量%以上40質量%以下であることがより好ましく、3質量%以上25質量%以下であることがさらに好ましい。炭素の付着量が2質量%以上であると、上記ケイ素酸化物の導電性が十分に高まり、上記二次電池用負極の集電効率が高まりやすい。一方、炭素付着量が過剰であると、上記二次電池用負極を用いた非水電解質二次電池の容量が低下することがあるが、炭素の付着量が50質量%以下であれば、上記容量の低下は生じにくい。
【0045】
炭素によって被覆された上記ケイ素酸化物の電気伝導率は、1×10−6S/m以上であることが好ましく、1×10−4S/m以上であることがより好ましい。上記電気伝導率とは、4端子を持つ円筒状のセル内に被測定粉末を充填し、この被測定粉末に電流を流したときの電圧降下を測定して求めた値である。
【0046】
(炭素粒子(B))
炭素粒子(B)は、黒鉛材料を含有する粒子であり、負極活物質として機能する(アルカリ金属類の吸蔵および放出が可能な)材料である。
【0047】
負極合材層における炭素粒子(B)の量は、合金系材料(A)と炭素粒子(B)との合計体積を100体積%としたときに、40体積%より多く90体積%以下であり、50体積%より多く90体積%以下であることが好ましく、60体積%より多く90体積%以下であることがより好ましく、70体積%より多く90体積%以下であることがより好ましい。前述のように、合金系材料(A)と炭素粒子(B)とが上記範囲であると、プレドープにより吸蔵されるアルカリ金属類の量を多くして、生成する不可逆成分の量を少なくすることができる。その結果、上記二次電池用負極を有する非水電解質二次電池の初回充放電効率が高まり、エネルギー密度が十分に高くなる。また、前述のように、合金系材料(A)と炭素粒子(B)とが上記範囲であると、プレドープ時の体積増大も抑制できる。炭素粒子(B)の体積比は、前述の方法で算出される。
【0048】
炭素粒子(B)の粒径D50は特に制限されないが、1μm以上であることが好ましい。D50とはレーザー回析法による粒度分布測定における体積分布の積算値が50%に相当する粒子径、つまり、体積基準で測定したメディアン径を指す。なお、炭素粒子(B)の粒径D50は、合金系材料(A)の粒径D50の1.0倍以上8.0倍以下であることが好ましく、1.5倍以上6.5倍以下であることがより好ましく、2.0倍以上6.0倍未満であることがさらに好ましい。炭素粒子(B)の粒径D50を、前記合金系材料(A)の粒径D50と同径以上とすることで、充放電サイクルに伴う負極合材層の体積変化を小さくして、負極合材層の剥離などを生じにくくすることができる。一方、上記比が8.0倍以下であると、炭素粒子(B)の比表面積が過度に高まらず、電解液が炭素粒子(B)を分解することによる容量低下が生じ難くなる。
【0049】
炭素粒子(B)の具体例には、天然黒鉛、人造黒鉛、難黒鉛化性炭素(ハードカーボン)、易黒鉛化性炭素(ソフトカーボン)、メソカーボンマイクロビーズ、黒鉛粒子とその表面に存在する炭素質層とからなる粒子(すなわち、炭素被覆黒鉛)、および黒鉛粒子に炭素繊維を付着させてなる粒子などが含まれる。これらのうち、炭素粒子(B)は、天然黒鉛、人造黒鉛および炭素被覆黒鉛のうち少なくとも一種であることが好ましい。これら炭素粒子を使用することで、プレドープ時に、炭素粒子(B)にリチウムイオンがドープするのを抑制し、より選択的にケイ素化合物にリチウムイオンがプレドープされるため、初回充放電効率が向上しやすい。なお、炭素粒子(B)の形状は、球状、略球状、扁平状などのいずれの形状でもありうるが、本発明では、アスペクト比が10未満である粒子を、炭素粒子(B)とする。
【0050】
アルカリ金属類をプレドープした後の負極の充放電効率(たとえば、ドライエア中に24時間放置した後の充放電効率)を低下させにくくする観点からは、炭素粒子(B)は、天然黒鉛、人造黒鉛および炭素被覆黒鉛のいずれかを含むことが好ましい。
【0051】
ここで、炭素粒子(B)は、窒素ガス吸着法で測定された全細孔容積が、1.0×10−2cm/g以上1.0×10−1cm/g以下であり、かつ平均細孔直径が20nm以上50nm以下であることが好ましい。全細孔容積および平均細孔直径は、それぞれ1.5×10−2cm/g以上9.0×10−2cm/g以下および25nm以上40nm以下であることがより好ましく、2.0×10−2cm/g以上7.0×10−2cm/g以下および25nm以上35nm以下であることがさらに好ましい。炭素粒子(B)の全細孔容積と平均細孔直径とが上記範囲を満たすと、電解液が活物質中に浸透しやすい。そのため、上記炭素粒子(B)を含む二次電池用負極は、イオン導電性が高く、電極抵抗が低いため、非水電解質二次電池の充放電容量および負荷特性を高めることができる。さらに、炭素粒子(B)の全細孔容積と平均細孔直径とが上記範囲を満たすと、充電時に合金系材料(A)が体積膨張しても、炭素粒子(B)が弾性変形して、合材層の変形が抑制される。その結果、負極合材層が集電体から剥離し難く、良好なサイクル特性が維持されやすい。なお、炭素粒子(B)は、上記粒径D50および全細孔容積のうち、少なくとも一方が、上述した範囲を満たす粒子であることが好ましい。
【0052】
炭素粒子(B)は、前記黒鉛材料を含む一次粒子が集合または結合してなる二次凝集体であることがさらに好ましい。このとき、炭素粒子(B)の一次粒子は、扁平状であることが望ましい。このような形状を有する炭素粒子(B)では、充放電サイクル後も良好な導電性が保持されやすく、電極抵抗の増大が抑制されやすい。その結果、非水電解質二次電池のサイクル寿命を延ばすことができる。扁平状の一次粒子からなる炭素粒子(B)の例には、MAGなどが含まれる。
【0053】
(カルボン酸塩含有ポリマー(C))
カルボン酸塩含有ポリマー(C)は、負極合材層において、結着剤として機能するポリマーである。負極合材層に含まれるカルボン酸塩含有ポリマー(C)の量は、負極合材層の全質量に対して4質量%以上13質量%以下であり、5質量%以上10質量%以下であることが好ましく、5質量%以上8質量%以下であることがより好ましい。カルボン酸塩含有ポリマー(C)の量が4質量%以上であると、カルボン酸塩含有ポリマー(C)によるプレドープ量の増大効果が十分に奏される。一方で、カルボン酸塩含有ポリマー(C)の量が13質量%以下であると、プレドープにより吸蔵されるアルカリ金属類の量がより多くなるため、上記二次電池用負極を有する非水電解質二次電池の初回充放電効率を高めて、エネルギー密度を高めることができる。その理由は定かではないが、カルボン酸塩含有ポリマー(C)の量が13質量%以下であると、カルボン酸塩含有ポリマー(C)が活物質である合金系材料(A)や炭素粒子(B)を完全に被覆せず、合金系材料(A)や炭素粒子(B)が一部露出することで、活物質にアルカリ金属類がプレドープされやすくなると推察される。上記カルボン酸塩含有ポリマー(C)の量は、負極合材層作製時の仕込み量や、電気化学分析法、蛍光X線分析法、イオンクロマトグラフィー、ICP質量分析法、および原子吸光光度法などによって算出することができる。また、結着剤が溶解する溶媒中に電極を浸漬して溶解し、溶媒除去後の残渣の重量を測定することで、結着剤を定量することができる。
【0054】
カルボン酸塩含有ポリマー(C)は、カルボキシル基を有するポリマーと金属イオンまたはアンモニウムイオンが塩を形成したものであればよい。
【0055】
上記塩を形成したカルボン酸塩含有ポリマー(C)の中和度は、50%以上である。上記中和度が50%以上であると、カルボン酸塩含有ポリマー(C)によるリチウムイオンの捕捉が抑制できるため、初回充放電効率を十分に高めることが可能になる。また、上記カルボン酸塩含有ポリマー(C)の中和度が50%以上であると、アルカリ金属または前記アルカリ土類金属および直鎖ポリフェニレン化合物(D)が溶解した溶液に対する耐膨潤性が向上するため、プレドープによる負極合材層の体積の増大もさらに抑制することができる。一方で、上記中和度が高すぎると、活物質とカルボン酸塩含有ポリマー(C)の親和性が低下するため、初回充放電効率が十分に高まりにくく、また、プレドープによる負極合材層の体積の増大も十分に抑制しきれないことがある。そのため、初回充放電効率をより高め、かつ、プレドープによる負極合材層の体積の増大もより抑制する観点からは、上記カルボン酸塩含有ポリマー(C)の中和度は97%未満であることが好ましく、95%未満であることがより好ましい。
【0056】
上記カルボキシル基を有するポリマーの例には、カルボキシルメチルセルロース(CMC)、ポリアクリル酸(PAA)などが含まれる。上記カルボキシル基を有するポリマーは、同一の繰り返し単位からなるホモポリマーでもよいし、複数の繰り返し単位を有するコポリマーでもよい。
【0057】
また、カルボン酸塩含有ポリマー(C)は、以下の式(1)で表される構造を、ポリマーが有する繰り返し単位の全モル数を100モル%としたときに、50モル%以上含むことが好ましい。以下の式で表される構造を50モル%以上含むと、電解液に対する耐膨潤性が高まり、プレドープによる負極合材層の体積の増大もさらに抑制することができる。以下の式で表される構造の割合は、50モル%以上100モル%未満であることがより好ましく、70モル%以上98モル%未満であることがさらに好ましい。
【0058】
【化2】
【0059】
式(1)中、MはLi、Na、KおよびNHから選択される少なくとも1種のカチオンである。MはLi、NaおよびKが好ましく、LiおよびNaがより好ましい。カルボン酸塩含有ポリマー(C)は、Mが異なる複数種の上記式(1)で表される構造を含有してもよい。
【0060】
カルボン酸塩含有ポリマー(C)の構造は、電気化学分析法、核磁気共鳴法、ICP質量分析法、赤外吸光分光法およびラマン分光分析などによって測定することができる。
【0061】
上記金属イオンの例には、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のイオンが含まれる。上記金属イオンとしては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、マグネシウムイオン、カリウムイオンおよびカルシウムイオンが好ましく、リチウムイオンおよびナトリウムイオンがより好ましく、リチウムイオンが特に好ましい。また、上記金属イオンは、前記合金系材料(A)が吸蔵可能なアルカリ金属類であることが好ましい。
【0062】
特に好ましいカルボン酸塩含有ポリマー(C)の例には、ポリアクリル酸のリチウム塩およびポリアクリル酸のナトリウム塩が含まれる。これらのカルボン酸塩含有ポリマー(C)を用いることで、電極合材層中のイオン導電性が向上することによる初回充放電効率向上効果および、アルカリ金属または前記アルカリ土類金属および直鎖ポリフェニレン化合物(D)が溶解した溶液に対する耐膨潤性向上による、プレドープ時の体積膨張低減効果が発現しやすくなるため好ましい。
【0063】
上記カルボン酸塩含有ポリマー(C)が含むリチウムイオンまたはナトリウムイオンの量は、イオンクロマトグラフィーなどによって測定することができる。
【0064】
カルボン酸塩含有ポリマー(C)の重量平均分子量は5.0×10以上5.0×10以下であることが好ましい。重量平均分子量が5.0×10未満であると、負極合材層の機械強度が低下することがある。また、重量平均分子量が5.0×10を超えると負極合材層の形成が困難になりやすい。カルボン酸塩含有ポリマー(C)の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定されうる。
【0065】
なお、負極合材層は、カルボン酸塩含有ポリマー(C)以外のポリマーまたは合成ゴムを含んでいてもよい。負極合材層が含み得るポリマーの例には、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、およびアラミドなどのポリアミドなどが含まれる。また、負極合材層が含み得る合成ゴムの例には、スチレンブタジエン系ゴム(SBR)、フッ素系ゴム(FR)およびエチレンプロピレンジエン(EPDM)などが含まれる。
【0066】
(直鎖ポリフェニレン化合物(D))
直鎖ポリフェニレン化合物(D)は、負極活物質である合金系材料(A)および炭素材料(B)をプレドープする際に触媒として機能する化合物である。直鎖ポリフェニレン化合物(D)は、アルカリ金属類のプレドープの際に、負極合材層に導入される。そのため、負極合材層が直鎖ポリフェニレン化合物(D)を含むことは、負極がアルカリ金属類のイオンおよび触媒を含有する溶液への浸漬によりプレドープされたことを意味する。
【0067】
直鎖ポリフェニレン化合物(D)は、芳香環が直接結合してなる構造を含む直鎖状の化合物である。直鎖ポリフェニレン化合物(D)が有する芳香環が直鎖状に直接結合してなる構造は、2個以上5個以下の芳香環を含むことが好ましく、2個以上3個以下の芳香環を含むことがより好ましい。上記芳香環は、ヘテロ原子を含まないことが好ましい。2個以上の芳香環が直接結合してなる構造を含む直鎖ポリフェニレン化合物(D)は、リチウムとの会合体の活性が高く、電極へのプレドープ量が向上する。一方で芳香環の数が5個を超えると、会合体が安定化し、プレドープ量が低下する。直鎖ポリフェニレン化合物(D)の例には、ビフェニル、o−ターフェニル、m−ターフェニル、p−ターフェニル、ならびにこれらの誘導体が含まれる。上記誘導体の例には、ビフェニルまたはターフェニルに炭素数1以上10以下のアルキル基が置換された化合物、たとえば4−tert−ブチルビフェニルおよび4,4’−ジ−tert−ブチルビフェニル、p−メトキシビフェニルなどが含まれる。
【0068】
直鎖ポリフェニレン化合物(D)の量は、片面電極の場合、電極面積(cm)当たり0.005μg以上20μg以下であることが好ましく、0.005μg以上10μg以下であることがより好ましく、0.005μg以上5μg以下であることがさらに好ましい。直鎖ポリフェニレン化合物(D)の量は、両面電極の場合、電極面積(cm)当たり0.01μg以上40μg以下であることが好ましく、0.01μg以上20μg以下であることがより好ましく、0.01μg以上10μg以下であることがさらに好ましい。直鎖ポリフェニレン化合物(D)が多量に存在すると、負極を非水電解質二次電池に用いた際に、電池の内部抵抗が増大したり、初期特性や負荷特性が低下することある。これに対し、直鎖ポリフェニレン化合物(D)の量が上記範囲であれば、直鎖ポリフェニレン化合物(D)が電池の特性に影響を及ぼし難く、電池特性が安定しやすくなる。
【0069】
直鎖ポリフェニレン化合物(D)の含有量は、ガスクロマトグラフィ(GC)により確認することができる。具体的には、以下の手順で確認することができる。
1)負極合材層中の直鎖ポリフェニレン化合物(D)を、ガスクロマトグラフィ(GC)にて特定する。そして、特定した直鎖ポリフェニレン化合物(D)の濃度が異なる液体試料を複数準備し、後述する測定条件でガスクロマトグラフィ(GC)測定を行い、検量線を得る。
2)次いで、測定対象となる負極合材層を、バイアル瓶に入れ、そこに直鎖ポリフェニレン化合物(D)が可溶な抽出溶媒1mLを加えて、30分間浸漬する。このバイアルを超音波洗浄機VS−D100(アズワン製)にセットし、上記バイアルに24kHzおよび31kHzの複合周波を3分間照射する。
3)得られた抽出溶媒をガスクロマトグラフィ(GC)にて分析し、前述の検量線と照合して抽出溶媒中の直鎖ポリフェニレン化合物(D)を定量する。
ガスクロマトグラフィ(GC)は、例えば以下の条件で行うことができる。
測定装置名:Agilent 7890A/5975C GC/MSD
カラム:Agilent J&W HP−5MS 長さ60m、内径0.25mm、膜厚0.25μm
加熱条件:40℃(3分保持)−20℃/分で昇温−300℃(14分保持)
キャリアガス:ヘリウム
検出器:MSD(質量選択型検出器)
【0070】
また、上記抽出溶媒としては、直鎖ポリフェニレン化合物(D)が溶解する溶媒であれば特に制限されないが、気化しやすい低沸点溶媒が好ましい。そのような抽出溶媒の例には、アセトンが含まれる。
【0071】
(導電助剤(E))
本発明の負極の負極合材層は、導電助剤(E)をさらに含んでもよい。このような導電助剤(E)としては、非水電解質二次電池内において化学変化を起こさないものであれば特に限定されず、例えば、アスペクト比が10以上である炭素繊維、カーボンブラック(サーマルブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラックなど)、金属粉(銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの粉末)、金属繊維、ポリフェニレン誘導体などの材料を用いることができる。
【0072】
導電助剤(E)は、アスペクト比が10以上1000以下である炭素繊維を含むことが好ましい。炭素繊維のアスペクト比は、より好ましくは10以上500以下である。このような炭素繊維を、前述の炭素粒子(B)と組み合わせると、負極を非水電解質二次電池に用いた際に、容量およびサイクル寿命が高まりやすい。
【0073】
炭素繊維の製造方法は特に限定されない。例えば紡糸法などで高分子を繊維状にし、不活性雰囲気中で熱処理する方法や、触媒存在下、高温で有機化合物を反応させる気相成長法などが挙げられる。気相成長法で得られる炭素繊維、いわゆる気相法炭素繊維は、結晶成長方向が繊維軸にほぼ平行であるため、黒鉛構造の繊維長方向の結晶性が高くなりやすく、比較的、短繊維径、高導電性、高強度の炭素繊維が得られる。
【0074】
負極合材層中には、導電助剤(E)が0.01質量%以上含まれることが好ましく、より好ましくは0.05質量%以上であり、さらに好ましくは0.1質量%以上である。また通常20質量%以下が好ましく、より好ましくは10質量%以下である。
【0075】
(負極合材層の物性)
負極合材層の厚みは特に制限されず、例えば5μm以上であることが好ましく、より好ましくは10μm以上である。また、負極合材層の厚みは、200μm以下とすることが好ましく、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは75μm以下である。負極合材層の厚みが上記範囲であると、高い充放電レートでの充放電に対しても、吸蔵および放出の機能可能なアルカリ金属類の量が十分に多くなる。
【0076】
また、負極合材層の密度は、1.1g/cm以上1.7g/cm以下であることが好ましく、1.2g/cm以上1.5g/cm以下であることがより好ましく、1.2g/cm以上1.4g/cm以下であることがさらに好ましい。負極合材層における活物質の密度が、1.1g/cm以上であると、電池の体積エネルギー密度十分に高まりやすく、1.6g/cm以下であると、サイクル特性が高まりやすい。
【0077】
さらに、負極合材層が、集電体の両面に形成されている場合、負極合材層の片面の単位面積当たりに含まれる活物質(合金系材料(A)および炭素粒子(B))の量は、2mg/cm以上10mg/cm以下であることが好ましく、3mg/cm以上8mg/cm以下であることがより好ましい。
【0078】
1−2.集電体
負極の集電体の材質は、ケイ素および/またはケイ素合金、スズおよびその合金、ケイ素−銅合金、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼などの金属材料や、カーボンクロス、カーボンペーパーなどの炭素材料などでありうる。
【0079】
負極の集電体の形状は、非水電解質二次電池の用途に合わせて適宜選択される。例えば、集電体が金属材料からなる場合、箔状、円柱状、コイル状、板状、薄膜状などでありうる。一方、集電体が炭素材料からなる場合、板状、薄膜状、円柱状などでありうる。集電体の厚みは、特に制限されないが、通常5μm以上30μm以下であり、好ましくは6μm以上20μm以下である。さらに、集電体表面は、化学処理もしくは物理処理によって、表面を粗化されたものであってもよく、表面にカーボンブラック、アセチレンブラックなどの導電材が塗布されたものであってもよい。
【0080】
2.非水電解質二次電池用負極の製造方法
本発明の一実施形態に係る非水電解質二次電池用負極の製造方法は、集電体上に、合金系材料(A)、炭素粒子(B)、およびカルボン酸塩含有ポリマー(C)を含む活物質含有層を、直鎖ポリフェニレン化合物(D)の存在下でアルカリ金属類と接触させて、合金系材料(A)や炭素粒子(B)にアルカリ金属類をプレドープし、負極合材層を有する二次電池用負極を形成する工程を含む。本発明の非水電解質二次電池用負極の製造方法には、活物質含有層を形成する工程を含んでもよい。またさらに、上記得られた二次電池用負極から不純物を除去する工程などを含んでもよい。以下、各工程について、説明する。
【0081】
2−1.活物質含有層の形成工程
活物質含有層は、前述の合金系材料(A)、炭素粒子(B)、カルボン酸塩含有ポリマー(C)、導電助剤などを溶媒に分散させて、負極合材ペーストとし、これを集電体に塗布して得られる。負極合材ペーストの塗布後、必要に応じて溶媒を除去するなどして、負極合材ペーストを乾燥・固化させることで、活物質含有層が得られる。
【0082】
このとき、上記負極合材ペースト中の各成分の量は、製造しようとする非水電解質二次電池用負極中の各成分の量にあわせて調整すればよい。たとえば、上記負極合材ペーストが含有するカルボン酸塩含有ポリマー(C)の量を、負極合材ペーストが含有する溶媒以外の成分の合計の質量に対して4質量%以上13質量%以下とすることで、製造される非水電解質二次電池用負極が有する負極合材層中のカルボン酸塩含有ポリマー(C)の量を、上記負極合材層の全質量に対して4質量%以上13質量%以下とすることができる。このとき、プレドープ時に負極合材層に導入される直鎖ポリフェニレン化合物(D)の量は負極合材層の全質量に対してさほど多い量ではないため、無視してもよい。
【0083】
負極合材ペーストに使用可能な溶媒は、合金系材料(A)、炭素粒子(B)、およびカルボン酸塩含有ポリマー(C)などを均一に溶解もしくは分散可能なものであれば特に制限されないが、好ましくは、非プロトン性極性溶媒であり、さらに好ましくは、非プロトン性アミド系溶媒である。非プロトン性アミド系溶媒の例には、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、および1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンなどが含まれる。これらの溶媒は、単独で用いてもよいし、二種類以上組み合わせてもよい。
【0084】
これらの溶媒以外に、必要に応じて他の溶媒を共存させてもよい。他の溶媒の例には、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、メシチレン、1,2,4−トリメチルベンゼン、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−クロロトルエン、m−クロロトルエン、p−クロロトルエン、o−ブロモトルエン、m−ブロモトルエン、p−ブロモトルエン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロピルアルコールおよびn−ブタノールなどが含まれる。
【0085】
負極合材ペーストにおける溶媒量は、負極合材ペーストの粘度などを考慮して適宜設定される。上記溶媒量は、合材ペーストに含まれる固形分100質量部に対して、50質量部以上900質量部以下であることが好ましく、65質量部以上500質量部以下であることがより好ましい。
【0086】
負極合材ペーストの塗布は、例えばスクリーン印刷、ロールコート、スリットコートなど、公知の方法で行うことができる。このとき、負極用合材ペーストをパターン状に塗布してもよく、例えば、メッシュ状の活物質含有層を形成してもよい。
【0087】
塗布した負極合材ペーストの乾燥は、たとえば加熱硬化によって行うことができる。加熱硬化は、通常、大気圧下で行うことが可能であるが、加圧下、ないしは真空下で行ってもよい。また加熱乾燥時の雰囲気は、特に制限されないが、通常、空気、窒素、ヘリウム、ネオンまたはアルゴンなどの雰囲気下で行うことが好ましく、より好ましくは不活性気体である窒素またはアルゴン雰囲気下で行う。また、負極合材ペーストの加熱は、たとえば、150℃以上500℃以下で1分間以上24時間以下の熱処理によって行うことができる。
【0088】
2−2.プレドープ工程
前述の合金系材料(A)、炭素粒子(B)、およびカルボン酸塩含有ポリマー(C)を少なくとも含む活物質含有層と、アルカリ金属類とを直鎖ポリフェニレン化合物(D)の存在下で接触させて、前述の活物質含有層にアルカリ金属類をプレドープする。つまり、プレドープされた負極合材層を有する負極を得る。直鎖ポリフェニレン化合物(D)の存在下、アルカリ金属類と上記活物質含有層とを接触させる方法は特に制限されないが、アルカリ金属類および直鎖ポリフェニレン化合物(D)が溶解した溶液中に上記活物質含有層を浸漬させて、溶液中でこれらを接触させることが好ましい。ここで、溶液中に溶解させるアルカリ金属類は、合金系材料(A)が吸蔵可能なものであればよい。
【0089】
アルカリ金属類および直鎖ポリフェニレン化合物(D)を、溶媒に溶解させると、アルカリ金属類から直鎖ポリフェニレン化合物(D)に電子が移動し、直鎖ポリフェニレン化合物(D)のアニオンおよびアルカリ金属イオン(例えばリチウムイオンまたはナトリウムイオン)やアルカリ土類金属イオンが生成する。上記溶液に前述の活物質含有層を浸漬させると、直鎖ポリフェニレン化合物(D)のアニオンから、活物質含有層側に電子が移動し、直鎖ポリフェニレン化合物(D)のアニオンは直鎖ポリフェニレン化合物(D)に戻る。一方、電子を受け取った負極活物質(合金系材料(A)および炭素原子(B))はアルカリ金属イオンやアルカリ土類金属イオンと反応して、負極活物質がプレドープされる。また、このとき、上述した量の直鎖ポリフェニレン化合物(D)が負極合材層に導入される。
【0090】
ここで、上記溶液におけるアルカリ金属類の濃度は、プレドープにより吸蔵されるアルカリ金属類の量を高める観点から、0.07g/L以上、かつ飽和量以下であることが好ましい。一方、上記溶液における直鎖ポリフェニレン化合物(D)の濃度は0.005mol/L以上4.0mol/L以下であることが好ましく、0.005mol/L以上1.0mol/L以下であることがより好ましく、0.005mol/L以上0.7mol/L以下であることがさらに好ましい。直鎖ポリフェニレン化合物(D)の濃度が0.005mol/Lより小さいと、アルカリ金属類のプレドープに要する時間が長くなりやすい。一方、直鎖ポリフェニレン化合物(D)の濃度が4.0mol/Lより大きいと、直鎖ポリフェニレン化合物(D)が溶液中に析出しやすくなる。
【0091】
上記溶液と活物質含有層とを接触させる時間は特に制限されない。しかしながら、負極活物質(合金系材料(A)および炭素原子(B))にアルカリ金属類を十分にプレドープさせるためには、0.5分以上であることが好ましく、0.5分以上240時間以下であることが好ましく、0.5分以上72時間以下であることがより好ましく、0.5分以上24時間以下であることがさらに好ましく、0.5分以上1時間以下であることがさらに好ましく、0.5分以上0.5時間以下であることがさらに好ましい。
【0092】
なお、溶液に負極を浸漬させる場合、溶液を攪拌または循環などにより流動させることによって、アルカリ金属類のプレドープ速度を速めることができる。また、溶液の温度を高くする方がプレドープ速度を速めることができるが、溶液を沸騰させないためには、溶媒の沸点以下の温度とすることが好ましい。
【0093】
上記アルカリ金属類および直鎖ポリフェニレン化合物(D)を溶解させる溶媒の種類は、アルカリ金属類が溶媒和しやすいものであれば特に制限されず、例えば、環状炭酸エステル、環状エステル、鎖状エステル、環状エーテル、鎖状エーテル、ニトリル類などでありうる。
【0094】
環状炭酸エステルの例には、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルスルホキシド(DMSO)などが含まれる。環状エステルの例には、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、δ−ヘキサノラクトン、δ−オクタノラクトンなどが含まれる。鎖状エステルの例には、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートなどが含まれる。環状エーテルの例には、オキセタン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピランなどが含まれる。鎖状エーテルの例には、ジメトキシエタン、エトキシメトキシエタン、ジエトキシエタンなどが含まれる。ニトリル類の例には、アセトニトリル、プロピオニトリル、グルタロニトリル、メトキシアセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリルなどが含まれる。また、上記溶媒は、ヘキサメチルスルホルトリアミド、アセトン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ピリジン、ジメチルホルムアミド、エタノール、ホルムアミド、メタノール、水などでもありうる。溶媒には、これらが一種のみ含まれてもよく、二種以上含まれてもよい。
【0095】
2−3.二次電池用負極から不純物を除去する工程
本工程では、前述の工程で得られた二次電池用負極を、直鎖ポリフェニレン化合物(D)が可溶な溶媒中に浸漬して、前記二次電池用負極が有する負極合材層から直鎖ポリフェニレン化合物(D)を除去する。本工程によって、直鎖ポリフェニレン化合物(D)を除去することで、上記二次電池用負極中の不純物が少なくなり、非水電解質二次電池の安定性が高まる。なお、直鎖ポリフェニレン化合物(D)は前記負極合材層から完全に除去されることはなく、少なくとも上述した量が負極合材層の中に残留する。
【0096】
直鎖ポリフェニレン化合物(D)が可溶な溶媒の例には、前述の環状炭酸エステル、環状エステル、鎖状エステル、環状エーテル、鎖状エーテル、ニトリル類などが含まれる。これらのうち、リチウムの溶解性の観点からは、環状炭酸エステルが好ましく、テトラヒドロフランがより好ましい。負極合材層を上記溶媒に浸漬させる時間は特に制限されず、5秒以上であればよく、10秒以上10時間以下であることが好ましい。上記溶媒に浸漬後、十分に溶媒を揮発させることで、安定な非水電解質二次電池用負極が得られる。なお、溶液に負極合材層を浸漬させる場合、溶液を流動、または、超音波などにより微振動させることによって、直鎖ポリフェニレン化合物(D)が除去されやすくなり、不純物の除去速度を速めることができる。また、溶液の温度を高くしても、不純物の除去速度を速めることができるが、溶液を沸騰させないためには、加熱時の溶液の温度は溶媒の沸点以下の温度とすることが好ましい。
【0097】
3.非水電解質二次電池
本発明の一実施形態に係る非水電解質二次電池は、正極、上述した二次電池用負極、および電解液を含む。上記正極、負極および電解液の少なくともいずれかには、アルカリ金属類が含有されている。上記非水電解質二次電池では、負極がプレドープされているため、「正極が有する正極活物質の容量から算出されるアルカリ金属類のモル量」より、「満充電時の二次電池用負極に含まれるアルカリ金属類の合計モル量」が多い。「正極活物質の容量から算出されるアルカリ金属類のモル量」、「満充電時の負極に含まれるアルカリ金属類の合計モル量」、および「負極へプレドープされたアルカリ金属類の量」は以下の方法で検証することができる。
【0098】
「満充電時の負極に含まれるアルカリ金属類の合計モル量」は、例えば、ICP発光分析法、原子吸光法などの元素定量分析法により特定できる。なお、上記合計モル量は、「正極活物質の充放電に寄与するアルカリ金属類のモル量(B)」と「二次電池用負極中のアルカリ金属類(負極にプレドープされたアルカリ金属類)の合計モル量」との合計(A)に相当する。
【0099】
一方、「正極活物質の容量から算出されるアルカリ金属類のモル量」は、非水電解質二次電池の正極および上記アルカリ金属類を対極としたハーフセルを作製し、上記ハーフセルの放電容量(正極へのアルカリ金属類の吸蔵量)を測定することで特定できる。上記値は、上記の「正極活物質の充放電に寄与するアルカリ金属類のモル量(B)」に相当することから、(A)から(B)を差し引くことで、「負極へプレドープされたアルカリ金属類の量」が特定できる。
【0100】
なお、本発明の非水電解質二次電池では、上記二次電池用負極は、前述の「正極が有する正極活物質の容量から算出されるアルカリ金属類のモル量」に対して3モル%以上50モル%以下、好ましくは7モル%以上40モル%以下、さらに好ましくは10モル%以上35モル%以下のアルカリ金属類がプレドープされていることが好ましい。上記二次電池用負極に含まれるアルカリ金属およびアルカリ土類金属の合計モル量が上記範囲であると、上記二次電池用負極が安定で、ドープ容量の経時低下が少なく、不活性雰囲気以外で非水電解質二次電池を組み立てることができる。アルカリ金属類の合計モル量が3モル%未満の場合、電池の初回充放電効率が十分に向上しない。また50モル%より大きい場合、負極の活性が高まり、アルゴンなどの不活性雰囲気下で電池を組み立てる必要が生じるため、実用的でない。
【0101】
なお、上記二次電池用負極については上述したので、非水電解質二次電池の負極以外の構成である、正極、電解液、およびセパレータについて、以下説明する。
【0102】
3−1.正極
上記正極は非水電解質二次電池の用途に合わせて適宜選択することができ、たとえば、シート状の集電体と、上記集電体の両面に配置された正極合材層とからなる積層体などとすることができる。
【0103】
(正極合材層)
正極合材層は、正極活物質が、正極用結着剤(正極用結着剤)で結着された層でありうる。正極活物質は、前記二次電池用負極が負極合材層に有する合金系材料(A)が吸蔵および放出可能なアルカリ金属類の吸蔵および放出が可能な材料であれば限定されず、非水電解質二次電池に通常用いられる正極活物質を利用することができる。具体的には、上記アルカリ金属類がリチウムの場合は、リチウム−マンガン複合酸化物(LiMnなど)、リチウム−ニッケル複合酸化物(LiNiOなど)、リチウム−コバルト複合酸化物(LiCoOなど)、リチウム−鉄複合酸化物(LiFeOなど)、リチウム−ニッケル−マンガン複合酸化物(LiNi0.5Mn0.5など)、リチウム−ニッケル−コバルト複合酸化物(LiNi0.8Co0.2など)、リチウム−ニッケル−コバルト−マンガン複合酸化物、リチウム−遷移金属リン酸化合物(LiFePOなど)、およびリチウム−遷移金属硫酸化合物(LiFe(SO)などが挙げられる。
【0104】
なお、上記合金系材料(A)が吸蔵および放出可能なアルカリ金属類と、前記プレドープ工程でプレドープされたアルカリ金属類と、上記正極活物質が吸蔵および放出可能なアルカリ金属類と、は同じ元素であることが好ましい。
【0105】
これらの正極活物質は、正極合材層に一種のみ含まれてもよく、二種以上含まれてもよい。正極合材層中の正極活物質の量は、10質量%以上であればよく、30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがさらに好ましい。また、正極合材層中の正極活物質の量は、99.9質量%以下であればよく、99質量%以下であることが好ましい。
【0106】
一方、正極活物質を結着する正極用結着剤は、上記の負極合材層に含まれる正極用結着剤(カルボン酸塩含有ポリマー(C))などであってもいが、その他の公知の正極用結着剤樹脂でもありうる。公知の正極用結着剤樹脂の例には、シリケート、水ガラスなどの無機化合物や、テフロン(登録商標)、ポリフッ化ビニリデン、ポリイミドなどの不飽和結合を有さない高分子などが含まれる。これらの高分子の重量平均分子量の下限は、1.0×10であればよく、1.0×10であることが好ましい。これらの高分子の重量平均分子量の上限は、3.0×10であればよく、1.0×10であることが好ましい。
【0107】
正極合材層には、電極の導電性を向上させるために、導電助剤が含まれてもよい。導電助剤は、導電性を付与できるものであれば特に制限はないが、アセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛などの炭素粉末、各種の金属の繊維、粉末、箔などとすることができる。
【0108】
正極合材層の厚さは、10μm以上200μm以下であればよい。正極合材層の密度(集電体に積層した単位面積あたりの正極合材層の質量と、厚みから算出される)は、3.0g/cm以上4.5g/cm以下であることが好ましい。
【0109】
(正極集電体)
正極の集電体としては、通常、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ、チタン、タンタルなどの金属材料や、カーボンクロス、カーボンペーパーなどの炭素材料などを用いることができる。これらのうち、金属材料が好ましく、アルミニウムが特に好ましい。集電体の形状は、集電体が金属材料からなる場合、箔状、円柱状、コイル状、板状、薄膜状でありうる。上記集電体はメッシュ状などであってもよく、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタルなどからなるものであってもよい。一方、集電体が炭素材料からなる場合、その形状は、板状、薄膜状、円柱などとすることができる。中でも、金属薄膜が、現在工業化製品に使用されているため好ましい。
【0110】
正極集電体が薄膜である場合、その厚さは任意であるが、1μm以上とすることができ、3μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましい。上記厚さは、100mm以下であればよく、1mm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましい。薄膜である正極集電体の厚さが上記範囲よりも薄いと、集電体として必要な強度が不足するおそれがある。一方で、薄膜である正極集電体の厚さが上記範囲よりも厚いと、取り扱いの容易さが損なわれる恐れがある。
【0111】
(正極の形成方法)
上述の正極は、前述の正極活物質や正極用結着剤またはその前駆体、および導電助剤などを溶媒に分散させて、正極合材ペーストとし、これを集電体に塗布して得られる。正極合材ペーストの塗布後、必要に応じて溶媒を除去したり、正極用結着剤の前駆体を反応させたりすることによって、正極合材ペーストを乾燥・固化させる。正極合材ペーストの塗布方法や固化方法などは、負極の形成方法と同様でありうる。
【0112】
3−2.電解液
本発明の非水電解質二次電池の電解液は、非水系溶媒に上記アルカリ金属類の塩を溶解させた非水系電解液でありうる。また、この非水系電解液に有機高分子化合物などを添加して、ゲル状、ゴム状、固体シート状にしたものなどでもありうる。
【0113】
非水系電解液には、アルカリ金属類の塩と非水溶媒とが含まれる。アルカリ金属類の塩は、公知のアルカリ金属類の塩の中から、適宜選択して用いることができる。例えば、アルカリ金属類がリチウムであるときは、LiCl、LiBrなどのハロゲン化物、LiBrO、LiClOなどの過ハロゲン酸塩、LiPF、LiBF、LiAsFなどの無機フッ化物塩、リチウムビス(オキサラトホウ酸塩)LiBCなどの無機リチウム塩、LiCFSO、LiCSOなどのパーフルオロアルカンスルホン酸塩、Liトリフルオロスルフォンイミド((CFSONLi)などのパーフルオロアルカンスルホン酸イミド塩などの含フッ素有機リチウム塩とすることができる。電解液には、アルカリ金属類の塩が一種のみ含まれてもよく、二種以上含まれてもよい。非水系電解液中におけるアルカリ金属類の塩の濃度は、0.5M以上2.0M以下とすることができる。
【0114】
非水系溶媒の例には、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)などの環状カーボネート類、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)などの鎖状カーボネート類、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの脂肪族カルボン酸エステル類、γ−ブチロラクトンなどのγ−ラクトン類、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,2−ジエトキシエタン(DEE)、エトキシメトキシエタン(EME)などの鎖状エーテル類、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランなどの環状エーテル類、ジメチルスルホキシド、1,3−ジオキソラン、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、プロピルニトリル、ニトロメタン、エチルモノグライム、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エチルエーテル、1,3−プロパンサルトン、アニソール、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、ブチルジグライム、メチルテトラグライムなどの非プロトン性有機溶媒などが含まれる。電解液には、これらが一種のみ含まれてもよく、二種以上含まれてもよい。
【0115】
また、電解液をゲル状、ゴム状、或いは固体シート状とするための有機高分子化合物の具体例には、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドなどのポリエーテル系高分子化合物、ポリエーテル系高分子化合物の架橋体高分子、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラールなどのビニルアルコール系高分子化合物、ビニルアルコール系高分子化合物の不溶化物、ポリエピクロルヒドリン、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン、ポリビニルピロリドン、ポリビニリデンカーボネート、ポリアクリロニトリルなどのビニル系高分子化合物、ポリ(ω−メトキシオリゴオキシエチレンメタクリレート)、ポリ(ω−メトキシオリゴオキシエチレンメタクリレート−co−メチルメタクリレート)、ポリ(ヘキサフルオロプロピレン−フッ化ビニリデン)などのポリマー共重合体などが含まれる。
【0116】
電解液には、更に被膜形成剤が含まれてもよい。被膜形成剤の具体例としては、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、ビニルエチルカーボネート、メチルフェニルカーボネートなどのカーボネート化合物、フルオロエチレンカーボネート、ジフルオロエチレンカーボネート、トリフルオロメチルエチレンカーボネート、ビス(トリフルオロメチル)エチレンカーボネート、1−フルオロエチルメチルカーボネート、エチル1−フルオロエチルカーボネート、フルオロメチルメチルカーボネート、ビス(1−フルオロエチル)カーボネート、ビス(フルオロメチル)カーボネート、エチル2−フルオロエチルカーボネート、ビス(2−フルオロエチル)カーボネート、メチル1,1,1−トリフルオロプロパン−2−イルカーボネート、エチル1,1,1−トリフルオロプロパン−2−イルカーボネート、メチル2,2,2−トリフルオロエチルカーボネート、ビス(1,1,1−トリフルオロプロパン−2−イル)カーボネート、ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)カーボネート、エチル3,3,3−トリフルオロプロピルカーボネート、ビス(3,3,3−トリフルオロプロピル)カーボネートなどのフッ素系カーボネート化合物、エチレンサルファイド、プロピレンサルファイドなどのアルケンサルファイド、1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトンなどのスルトン化合物、マレイン酸無水物、コハク酸無水物などの酸無水物などが含まれる。
【0117】
電解液に被膜形成剤が含まれる場合、その含有量は、電解液の構成成分全量(質量)に対して、30質量%以下とすればよく、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましく、2質量%以下であることが特に好ましい。被膜形成剤の含有量が多過ぎると、非水電解質二次電池の初期不可逆容量の増加や低温特性、レート特性の低下など、他の電池特性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0118】
3−3.セパレータ
正極と前記二次電池用負極との間には、セパレータが含まれてもよい。セパレータが含まれると、電極間の短絡が防止される。セパレータは、多孔膜や不織布などの多孔性体とすることができる。セパレータの空孔率は、電子やイオンの透過性、セパレータの素材などに応じて適宜設定されるが、30%以上80%以下であることが好ましい。
【0119】
セパレータの例には、優れたイオン透過性を有する微多孔性フィルム、ガラス繊維シート、不織布、および織布などが含まれる。また、耐有機溶剤性および疎水性を高める観点からは、セパレータの材料は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリフェニレンスルフイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレナフタレート、ポリメチルペンテン、ポリアミド、ポリイミドなどが好ましい。セパレータは、これらの一種のみからなるものであってもよく、二種以上からなるものであってもよい。
【0120】
セパレータには、安価なポリプロピレンを用いることができる。非水電解質二次電池に耐リフロー性が要求される場合には、セパレータは、熱変形温度が230℃以上のポリプロピレンスルフィド、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリイミドなどであることが好ましい。また、セパレータの厚みは、10μm以上300μm以下とすることができる。
【0121】
3−4.非水電解質二次電池の形態
非水電解質二次電池の形態は特に制限されない。非水電解質二次電池の形態の例には、シート電極およびセパレータをスパイラル状にしたシリンダータイプ、ペレット電極およびセパレータを組み合わせたインサイドアウト構造のシリンダータイプ、ペレット電極およびセパレータを積層したコインタイプなどが含まれる。また、これらの形態の電池を任意の外装ケースに収めることにより、コイン型、円筒型、角型、パウチ型などの任意の形状としてもよい。
【0122】
3−5.非水電解質二次電池の製造方法
非水電解質二次電池は、前記二次電池用負極と、正極などとを、電池の構造に応じて適切な手順で組み立てることにより製造できる。一例を挙げると、外装ケース上に上記二次電池用負極を乗せ、その上に電解液とセパレータを設け、更に負極と対向するように正極を乗せて、ガスケット、封口板と共にかしめて製造することができる。
【実施例】
【0123】
以下、実施例を参照して本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲は実施例の記載に限定されない。
【0124】
本実施例及び比較例で用いた略称の内容を以下に示す。
PAAH:中和していないポリアクリル酸
PAALi:Liで中和したポリアクリル酸
PAANa:Naで中和したポリアクリル酸
SBR:スチレン・ブタジエンゴム
CMC:カルボキシメチルセルロースナトリウム塩
THF:テトラヒドロフラン
BP:ビフェニル
NAP:ナフタレン
oTP:o−ターフェニル
DtBBP:4,4’−ジ−tert−ブチル−2,2’−ビフェニル
【0125】
本実施例及び比較例における、各種物性の測定方法は、以下の通りである。
【0126】
(カルボン酸塩含有ポリマー(C)の固形分濃度)
カルボン酸塩含有ポリマー(C)(その質量をwとする)を、熱風乾燥機中150℃で60分間加熱処理して、加熱処理後の質量(その質量をwとする)を測定した。固形分濃度(質量%)は、次式によって算出した。
固形分濃度(質量%)=(w/w)×100
【0127】
(直鎖ポリフェニレン化合物(D)の固形分濃度)
直鎖ポリフェニレン化合物(D)の固形分濃度は、ガスクロマトグラフィ(GC)により測定した。具体的には、以下の手順で測定することができる。
1)それぞれの負極の製造に用いた直鎖ポリフェニレン化合物(D)の濃度が異なる液体試料を複数準備し、後述する測定条件でガスクロマトグラフィ(GC)測定を行い、検量線を得た。
2)次いで、測定対象となる負極合材層を、単位面積分、バイアル瓶に入れ、そこに直鎖ポリフェニレン化合物(D)が可溶な抽出溶媒1mLを加えて、30分間浸漬した。このバイアルを超音波洗浄機VS−D100(アズワン製)にセットし、上記バイアルに24kHzおよび31kHzの複合周波を3分間照射した。
3)得られた抽出溶媒をガスクロマトグラフィ(GC)にて分析し、前述の検量線と照合して抽出溶媒中の直鎖ポリフェニレン化合物(D)を定量した。
ガスクロマトグラフィ(GC)は、例えば以下の条件で行った。
測定装置名:Agilent 7890A/5975C GC/MSD
カラム:Agilent J&W HP−5MS 長さ60m、内径0.25mm、膜厚0.25μm
加熱条件:40℃(3分保持)−20℃/分で昇温−300℃(14分保持)
キャリアガス:ヘリウム
検出器:MSD(質量選択型検出器)
4)このようにして定量された直鎖ポリフェニレン化合物(D)の量を、上記単位面積当たりの負極活物質の質量で除して、単位面積あたりの直鎖ポリフェニレン化合物(D)の固形分濃度を求めた。
【0128】
(負極容量、初回充放電効率)
負極容量および初回充放電効率は、コインセルを用いて評価した。電極は、各実施例及び比較例で作製した直径14.5mmΦの負極と、直径15mmΦのリチウム箔からなる正極を用いた。電解液には、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートの混合溶媒(体積比1:1混合)にLiPFを1mol/lの濃度で溶解したものを用いた。セパレータは、直径16mmΦ、膜厚25μmのポリプロピレン多孔質膜を使用した。
【0129】
これらのコインセルを25℃にて24時間放置後、測定温度25℃、0.05Cで3Vになるまで定電流充電した。まず、コインセルを10分放置後、0.005Vになるまで定電流放電し、その後、0.01Cになるまで定電圧放電を行った。次に放電後のコインセルを10分放置後、0.05C、CCモードで1.2Vになるまで定電流充電を行った。当該充放電時の放電容量を負極へのリチウム挿入時容量、放電後に続いて実施した充電容量をリチウム脱離時容量とした。初回充放電効率は以下の式により算出した。
初回充放電効率(%)= リチウム脱離時容量/リチウム挿入時容量*100
【0130】
(合材層 重量増加率)
リチウムプレドープ前後の電極重量を秤量し、以下の式により、リチウムプレドープによる合材層の重量増加率を算出した。
リチウムプレドープによる合材層の重量増加率=
((リチウムプレドープ後の電極重量―集電体重量)−(リチウムプレドープ前の電極重量―集電体重量))/(リチウムプレドープ前の電極重量―集電体重量)*100
【0131】
(合材層 厚み増加率)
リチウムプレドープ前後の電極厚みを測定し、以下式により、リチウムプレドープによる合材層の厚み増加率を算出した。
リチウムプレドープによる合材層の厚み増加率=
((リチウムプレドープ後の電極厚み―集電体厚み)−(リチウムプレドープ前の電極厚み―集電体厚み))/(リチウムプレドープ前の電極厚み―集電体厚み)*100
【0132】
〔実施例1〕
<カルボン酸塩含有ポリマー(C)の調製>
ポリアクリル酸の25%水溶液(和光純薬工業社製、分子量約15万)29.5質量部(固形分0.1モル)に、1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液93.6質量部(固形分0.09モル)を撹拌しながら滴下することで、中和度90%のポリアクリル酸ナトリウム水溶液を得た。この水溶液の固形分濃度は8.2%であった。
【0133】
<負極の作製>
前記方法で調製した中和度90%のポリアクリル酸ナトリウム水溶液12.2質量部(固形分1質量部)と、0.6質量部の導電助剤アセチレンブラック(電気化学工業製、HS−100)を、電池用コンパウンド攪拌機(プライミクス社製、T.K.ハイビスミックス モデル2P−03)を用いて混練した。得られたペーストに、ケイ素酸化物(信越化学工業製、KSC−1064)、炭素粒子(黒鉛:日立化成株式会社製、MAGD−20)を合計18.4質量部添加し、HOを加えてさらに混練を行って、負極合材ペーストを調製した。活物質であるケイ素酸化物と炭素粒子の体積比率は20:80とした。
【0134】
この負極合材ペーストを、集電体としてのCu箔(厚さ:18μm)にアプリケータを用いて塗布し、窒素雰囲気下で150℃、5分間熱処理を行って硬化させた。これにより、集電体と負極合材層とが積層された負極が得られた。乾燥後の負極合材層中の活物質質量は単位面積当たり4mg/cmであった。
【0135】
<負極へのリチウムプレドープ>
(リチウムおよび直鎖ポリフェニレンが溶解した溶液(ドープ液)の調製)
アルゴン雰囲気下において、THF(和光純薬工業社製、脱酸素グレード)17.7質量部に、BP1.5質量部と、金属リチウム(本城金属製)0.15質量部を加え、25℃で2時間撹拌することでリチウムドープ液を調製した。
【0136】
(負極へのリチウムプレドープ工程)
当該溶液中に、上記方法で作製した負極を25℃で15分間浸漬し、この負極にリチウムをプレドープさせた。負極をドープ液から引き上げた後、負極に付着したドープ液を除去するために、当該負極をTHFに1分間浸漬した。その後、当該負極を25℃で5分間真空乾燥することで、ドープ負極を得た。
【0137】
前記方法で作製したドープ負極を用いてコインセルを作製し、前述の方法で初回充放電効率の算出および、合材層の重量増加率、厚み増加率の算出を行った。結果を表1に示す。
【0138】
〔実施例2〕
<負極の作製>
実施例1で調製した中和度90%のポリアクリル酸ナトリウム水溶液24.3質量部(固形分2質量部)と、0.6質量部の導電助剤アセチレンブラック(電気化学工業製、HS−100)を、電池用コンパウンド攪拌機(プライミクス社製、T.K.ハイビスミックス モデル2P−03)を用いて混練した。得られたペーストに、ケイ素酸化物(信越化学工業製、KSC−1064)、炭素粒子(黒鉛:日立化成株式会社製、MAGD−20)を合計17.4質量部添加し、HOを加えてさらに混練を行って、負極合材ペーストを調製した。活物質であるケイ素酸化物と炭素粒子の体積比率は20:80とした。
【0139】
この負極合材ペーストを、集電体としてのCu箔(厚さ:18μm)にアプリケータを用いて塗布し、窒素雰囲気下で150℃、5分間熱処理を行って硬化させた。これにより、集電体と負極合材層とが積層された負極が得られた。乾燥後の負極合材層中の活物質質量は単位面積当たり4mg/cmであった。
【0140】
負極へのリチウムプレドープは、実施例1と同様の方法で行った。前記方法で作製したドープ負極を用いてコインセルを作製し、前述の方法で初回充放電効率の算出および、合材層の重量増加率、厚み増加率の算出を行った。結果を表1に示す。
【0141】
〔実施例3〕
<カルボン酸塩含有ポリマー(C)の調製>
ポリアクリル酸の25%水溶液(和光純薬工業社製、分子量約15万)29.5質量部(固形分0.1モル)に、1mol/Lの水酸化リチウム水溶液92.2質量部(固形分0.09モル)を撹拌しながら滴下することで、中和度90%のポリアクリル酸リチウム水溶液を得た。この水溶液の固形分濃度は7.1%であった。
【0142】
<負極の作製>
前記方法で調製した中和度90%のポリアクリル酸リチウム水溶液14.1質量部(固形分1質量部)と、0.6質量部の導電助剤アセチレンブラック(電気化学工業製、HS−100)を、電池用コンパウンド攪拌機(プライミクス社製、T.K.ハイビスミックス モデル2P−03)を用いて混練した。得られたペーストに、ケイ素酸化物(信越化学工業製、KSC−1064)、炭素粒子(黒鉛:日立化成株式会社製、MAGD−20)を合計18.4質量部添加し、HOを加えてさらに混練を行って、負極合材ペーストを調製した。活物質であるケイ素酸化物と炭素粒子の体積比率は20:80とした。
【0143】
この負極合材ペーストを、集電体としてのCu箔(厚さ:18μm)にアプリケータを用いて塗布し、窒素雰囲気下で150℃、5分間熱処理を行って硬化させた。これにより、集電体と負極合材層とが積層された負極が得られた。乾燥後の負極合材層中の活物質質量は単位面積当たり4mg/cmであった。
【0144】
負極へのリチウムプレドープは、実施例1と同様の方法で行った。前記方法で作製したドープ負極を用いてコインセルを作製し、前述の方法で初回充放電効率の算出および、合材層の重量増加率、厚み増加率の算出を行った。結果を表1に示す。
【0145】
〔実施例4〕
<負極の作製>
実施例3で調製した中和度90%のポリアクリル酸リチウム水溶液19.7質量部(固形分1.4質量部)と、0.6質量部の導電助剤アセチレンブラック(電気化学工業製、HS−100)を、電池用コンパウンド攪拌機(プライミクス社製、T.K.ハイビスミックス モデル2P−03)を用いて混練した。得られたペーストに、ケイ素酸化物(信越化学工業製、KSC−1064)、炭素粒子(黒鉛:日立化成株式会社製、MAGD−20)を合計18質量部添加し、HOを加えてさらに混練を行って、負極合材ペーストを調製した。活物質であるケイ素酸化物と炭素粒子の体積比率は20:80とした。
【0146】
この負極合材ペーストを、集電体としてのCu箔(厚さ:18μm)にアプリケータを用いて塗布し、窒素雰囲気下で150℃、5分間熱処理を行って硬化させた。これにより、集電体と負極合材層とが積層された負極が得られた。乾燥後の負極合材層中の活物質質量は単位面積当たり4mg/cmであった。
【0147】
負極へのリチウムプレドープは、実施例1と同様の方法で行った。前記方法で作製したドープ負極を用いてコインセルを作製し、前述の方法で初回充放電効率の算出および、合材層の重量増加率、厚み増加率の算出を行った。結果を表1に示す。
【0148】
〔実施例5〕
<負極の作製>
実施例3で調製した中和度90%のポリアクリル酸リチウム水溶液28.2質量部(固形分2質量部)と、0.6質量部の導電助剤アセチレンブラック(電気化学工業製、HS−100)を、電池用コンパウンド攪拌機(プライミクス社製、T.K.ハイビスミックス モデル2P−03)を用いて混練した。得られたペーストに、ケイ素酸化物(信越化学工業製、KSC−1064)、炭素粒子(黒鉛:日立化成株式会社製、MAGD−20)を合計17.4質量部添加し、HOを加えてさらに混練を行って、負極合材ペーストを調製した。活物質であるケイ素酸化物と炭素粒子の体積比率は20:80とした。
【0149】
この負極合材ペーストを、集電体としてのCu箔(厚さ:18μm)にアプリケータを用いて塗布し、窒素雰囲気下で150℃、5分間熱処理を行って硬化させた。これにより、集電体と負極合材層とが積層された負極が得られた。乾燥後の負極合材層中の活物質質量は単位面積当たり4mg/cmであった。
【0150】
負極へのリチウムプレドープは、実施例1と同様の方法で行った。前記方法で作製したドープ負極を用いてコインセルを作製し、前述の方法で初回充放電効率の算出および、合材層の重量増加率、厚み増加率の算出を行った。結果を表1に示す。
【0151】
〔実施例6〕
<カルボン酸塩含有ポリマー(C)の調製>
ポリアクリル酸の25%水溶液(和光純薬工業社製、分子量約15万)29.5質量部(固形分0.1モル)に、1mol/Lの水酸化リチウム水溶液87質量部(固形分0.085モル)を撹拌しながら滴下することで、中和度85%のポリアクリル酸リチウム水溶液を得た。この水溶液の固形分濃度は7.3%であった。
【0152】
<負極の作製>
前記方法で調製した中和度85%のポリアクリル酸リチウム水溶液19.3質量部(固形分1.4質量部)と、0.6質量部の導電助剤アセチレンブラック(電気化学工業製、HS−100)を、電池用コンパウンド攪拌機(プライミクス社製、T.K.ハイビスミックス モデル2P−03)を用いて混練した。得られたペーストに、ケイ素酸化物(信越化学工業製、KSC−1064)、炭素粒子(黒鉛:日立化成株式会社製、MAGD−20)を合計18質量部添加し、HOを加えてさらに混練を行って、負極合材ペーストを調製した。活物質であるケイ素酸化物と炭素粒子の体積比率は20:80とした。
【0153】
この負極合材ペーストを、集電体としてのCu箔(厚さ:18μm)にアプリケータを用いて塗布し、窒素雰囲気下で150℃、5分間熱処理を行って硬化させた。これにより、集電体と負極合材層とが積層された負極が得られた。乾燥後の負極合材層中の活物質質量は単位面積当たり4mg/cmであった。
【0154】
負極へのリチウムプレドープは、実施例1と同様の方法で行った。前記方法で作製したドープ負極を用いてコインセルを作製し、前述の方法で初回充放電効率の算出および、合材層の重量増加率、厚み増加率の算出を行った。結果を表1に示す。
【0155】
〔実施例7〕
<負極の作製>
実施例6で調製した中和度85%のポリアクリル酸リチウム水溶液27.5質量部(固形分2質量部)と、0.6質量部の導電助剤アセチレンブラック(電気化学工業製、HS−100)を、電池用コンパウンド攪拌機(プライミクス社製、T.K.ハイビスミックス モデル2P−03)を用いて混練した。得られたペーストに、ケイ素酸化物(信越化学工業製、KSC−1064)、炭素粒子(黒鉛:日立化成株式会社製、MAGD−20)を合計17.4質量部添加し、HOを加えてさらに混練を行って、負極合材ペーストを調製した。活物質であるケイ素酸化物と炭素粒子の体積比率は20:80とした。
【0156】
この負極合材ペーストを、集電体としてのCu箔(厚さ:18μm)にアプリケータを用いて塗布し、窒素雰囲気下で150℃、5分間熱処理を行って硬化させた。これにより、集電体と負極合材層とが積層された負極が得られた。乾燥後の負極合材層中の活物質質量は単位面積当たり4mg/cmであった。
【0157】
負極へのリチウムプレドープは、実施例1と同様の方法で行った。前記方法で作製したドープ負極を用いてコインセルを作製し、前述の方法で初回充放電効率の算出および、合材層の重量増加率、厚み増加率の算出を行った。結果を表1に示す。
【0158】
〔実施例8〕
<カルボン酸塩含有ポリマー(C)の調製>
ポリアクリル酸の25%水溶液(和光純薬工業社製、分子量約15万)29.5質量部(固形分0.1モル)に、1mol/Lの水酸化リチウム水溶液71.7質量部(固形分0.07モル)を撹拌しながら滴下することで、中和度70%のポリアクリル酸リチウム水溶液を得た。この水溶液の固形分濃度は7.4%であった。
【0159】
<負極の作製>
前記方法で調製した中和度70%のポリアクリル酸リチウム水溶液27.2質量部(固形分2質量部)と、0.6質量部の導電助剤アセチレンブラック(電気化学工業製、HS−100)を、電池用コンパウンド攪拌機(プライミクス社製、T.K.ハイビスミックス モデル2P−03)を用いて混練した。得られたペーストに、ケイ素酸化物(信越化学工業製、KSC−1064)、炭素粒子(黒鉛:日立化成株式会社製、MAGD−20)を合計17.4質量部添加し、HOを加えてさらに混練を行って、負極合材ペーストを調製した。活物質であるケイ素酸化物と炭素粒子の体積比率は20:80とした。
【0160】
この負極合材ペーストを、集電体としてのCu箔(厚さ:18μm)にアプリケータを用いて塗布し、窒素雰囲気下で150℃、5分間熱処理を行って硬化させた。これにより、集電体と負極合材層とが積層された負極が得られた。乾燥後の負極合材層中の活物質質量は単位面積当たり4mg/cmであった。
【0161】
負極へのリチウムプレドープは、実施例1と同様の方法で行った。前記方法で作製したドープ負極を用いてコインセルを作製し、前述の方法で初回充放電効率の算出および、合材層の重量増加率、厚み増加率の算出を行った。結果を表1に示す。
【0162】
〔実施例9〕
<カルボン酸塩含有ポリマー(C)の調製>
ポリアクリル酸の25%水溶液(和光純薬工業社製、分子量約15万)29.5質量部(固形分0.1モル)に、1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液52質量部(固形分0.05モル)を撹拌しながら滴下することで、中和度50%のポリアクリル酸ナトリウム水溶液を得た。この水溶液の固形分濃度は10.9%であった。
【0163】
<負極の作製>
前記方法で調製した中和度50%のポリアクリル酸リチウム水溶液18.3質量部(固形分2質量部)と、0.6質量部の導電助剤アセチレンブラック(電気化学工業製、HS−100)を、電池用コンパウンド攪拌機(プライミクス社製、T.K.ハイビスミックス モデル2P−03)を用いて混練した。得られたペーストに、ケイ素酸化物(信越化学工業製、KSC−1064)、炭素粒子(黒鉛:日立化成株式会社製、MAGD−20)を合計17.4質量部添加し、HOを加えてさらに混練を行って、負極合材ペーストを調製した。活物質であるケイ素酸化物と炭素粒子の体積比率は20:80とした。
【0164】
この負極合材ペーストを、集電体としてのCu箔(厚さ:18μm)にアプリケータを用いて塗布し、窒素雰囲気下で150℃、5分間熱処理を行って硬化させた。これにより、集電体と負極合材層とが積層された負極が得られた。乾燥後の負極合材層中の活物質質量は単位面積当たり4mg/cmであった。
【0165】
負極へのリチウムプレドープは、実施例1と同様の方法で行った。前記方法で作製したドープ負極を用いてコインセルを作製し、前述の方法で初回充放電効率の算出および、合材層の重量増加率、厚み増加率の算出を行った。結果を表1に示す。
【0166】
〔実施例10〕
<負極の作製>
実施例1で調製した中和度90%のポリアクリル酸ナトリウム水溶液24.3質量部(固形分2質量部)と、0.6質量部の導電助剤アセチレンブラック(電気化学工業製、HS−100)を、電池用コンパウンド攪拌機(プライミクス社製、T.K.ハイビスミックス モデル2P−03)を用いて混練した。得られたペーストに、ケイ素酸化物(信越化学工業製、KSC−1064)、炭素粒子(黒鉛:日立化成株式会社製、MAGD−20)を合計17.4質量部添加し、HOを加えてさらに混練を行って、負極合材ペーストを調製した。活物質であるケイ素酸化物と炭素粒子の体積比率は20:80とした。
この負極合材ペーストを、集電体としてのCu箔(厚さ:18μm)にアプリケータを用いて塗布し、窒素雰囲気下で150℃、5分間熱処理を行って硬化させた。これにより、集電体と負極合材層とが積層された負極が得られた。乾燥後の負極合材層中の活物質質量は単位面積当たり4mg/cmであった。
【0167】
<負極へのリチウムプレドープ>
(リチウムおよび直鎖ポリフェニレンが溶解した溶液(ドープ液)の調製)
アルゴン雰囲気下において、THF(和光純薬工業社製、脱酸素グレード)17.7質量部に、oTP0.92質量部と、金属リチウム(本城金属製)0.067質量部を加え、25℃で2時間撹拌することでリチウムドープ液を調製した。
【0168】
(負極へのリチウムプレドープ工程)
当該溶液中に、上記方法で作製した負極を25℃で15分間浸漬し、この負極にリチウムをプレドープさせた。負極をドープ液から引き上げた後、負極に付着したドープ液を除去するために、当該負極をTHFに1分間浸漬した。その後、当該負極を25℃で5分間真空乾燥することで、ドープ負極を得た。
【0169】
前記方法で作製したドープ負極を用いてコインセルを作製し、前述の方法で初回充放電効率の算出および、合材層の重量増加率、厚み増加率の算出を行った。結果を表1に示す。
【0170】
〔実施例11〕
<負極の作製>
実施例1で調製した中和度90%のポリアクリル酸ナトリウム水溶液24.3質量部(固形分2質量部)と、0.6質量部の導電助剤アセチレンブラック(電気化学工業製、HS−100)を、電池用コンパウンド攪拌機(プライミクス社製、T.K.ハイビスミックス モデル2P−03)を用いて混練した。得られたペーストに、ケイ素酸化物(信越化学工業製、KSC−1064)、炭素粒子(黒鉛:日立化成株式会社製、MAGD−20)を合計17.4質量部添加し、HOを加えてさらに混練を行って、負極合材ペーストを調製した。活物質であるケイ素酸化物と炭素粒子の体積比率は20:80とした。
【0171】
この負極合材ペーストを、集電体としてのCu箔(厚さ:18μm)にアプリケータを用いて塗布し、窒素雰囲気下で150℃、5分間熱処理を行って硬化させた。これにより、集電体と負極合材層とが積層された負極が得られた。乾燥後の負極合材層中の活物質質量は単位面積当たり4mg/cmであった。
【0172】
<負極へのリチウムプレドープ>
(リチウムおよび直鎖ポリフェニレンが溶解した溶液(ドープ液)の調製)
アルゴン雰囲気下において、THF(和光純薬工業社製、脱酸素グレード)17.7質量部に、DtBBP1.1質量部と、金属リチウム(本城金属製)0.067質量部を加え、25℃で2時間撹拌することでリチウムドープ液を調製した。
【0173】
(負極へのリチウムプレドープ工程)
当該溶液中に、上記方法で作製した負極を25℃で15分間浸漬し、この負極にリチウムをプレドープさせた。負極をドープ液から引き上げた後、負極に付着したドープ液を除去するために、当該負極をTHFに1分間浸漬した。その後、当該負極を25℃で5分間真空乾燥することで、ドープ負極を得た。
【0174】
前記方法で作製したドープ負極を用いてコインセルを作製し、前述の方法で初回充放電効率の算出および、合材層の重量増加率、厚み増加率の算出を行った。結果を表1に示す。
【0175】
〔実施例12〕
<負極の作製>
実施例1で調製した中和度90%のポリアクリル酸ナトリウム水溶液24.3質量部(固形分2質量部)と、0.6質量部の導電助剤アセチレンブラック(電気化学工業製、HS−100)を、電池用コンパウンド攪拌機(プライミクス社製、T.K.ハイビスミックス モデル2P−03)を用いて混練した。得られたペーストに、ケイ素酸化物(信越化学工業製、KSC−1064)、炭素粒子(黒鉛:日立化成株式会社製、MAGD−20)を合計17.4質量部添加し、HOを加えてさらに混練を行って、負極合材ペーストを調製した。活物質であるケイ素酸化物と炭素粒子の体積比率は40:60とした。
【0176】
この負極合材ペーストを、集電体としてのCu箔(厚さ:18μm)にアプリケータを用いて塗布し、窒素雰囲気下で150℃、5分間熱処理を行って硬化させた。これにより、集電体と負極合材層とが積層された負極が得られた。乾燥後の負極合材層中の活物質質量は単位面積当たり4mg/cmであった。
【0177】
負極へのリチウムプレドープは、実施例1と同様の方法で行った。前記方法で作製したドープ負極を用いてコインセルを作製し、前述の方法で初回充放電効率の算出および、合材層の重量増加率、厚み増加率の算出を行った。結果を表1に示す。
【0178】
〔実施例13〕
<カルボン酸塩含有ポリマー(C)の調製>
ポリアクリル酸の25%水溶液(和光純薬工業社製、分子量約15万)29.5質量部(固形分0.1モル)に、1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液104質量部(固形分0.1モル)を撹拌しながら滴下することで、中和度100%のポリアクリル酸ナトリウム水溶液を得た。この水溶液の固形分濃度は7.2%であった。
【0179】
<負極の作製>
前記方法で調製した中和度100%のポリアクリル酸リチウム水溶液27.8質量部(固形分2質量部)と、0.6質量部の導電助剤アセチレンブラック(電気化学工業製、HS−100)を、電池用コンパウンド攪拌機(プライミクス社製、T.K.ハイビスミックス モデル2P−03)を用いて混練した。得られたペーストに、ケイ素酸化物(信越化学工業製、KSC−1064)、炭素粒子(黒鉛:日立化成株式会社製、MAGD−20)を合計17.4質量部添加し、HOを加えてさらに混練を行って、負極合材ペーストを調製した。活物質であるケイ素酸化物と炭素粒子の体積比率は20:80とした。
【0180】
この負極合材ペーストを、集電体としてのCu箔(厚さ:18μm)にアプリケータを用いて塗布し、窒素雰囲気下で150℃、5分間熱処理を行って硬化させた。これにより、集電体と負極合材層とが積層された負極が得られた。乾燥後の負極合材層中の活物質質量は単位面積当たり4mg/cmであった。
【0181】
負極へのリチウムプレドープは、実施例1と同様の方法で行った。前記方法で作製したドープ負極を用いてコインセルを作製し、前述の方法で初回充放電効率の算出および、合材層の重量増加率、厚み増加率の算出を行った。結果を表1に示す。
【0182】
〔比較例1〕
<負極の作製>
ポリアクリル酸の25%水溶液(和光純薬工業社製、分子量約15万)8質量部(固形分2質量部)と、0.6質量部の導電助剤アセチレンブラック(電気化学工業製、HS−100)を、電池用コンパウンド攪拌機(プライミクス社製、T.K.ハイビスミックス モデル2P−03)を用いて混練した。得られたペーストに、ケイ素酸化物(信越化学工業製、KSC−1064)、炭素粒子(黒鉛:日立化成株式会社製、MAGD−20)を合計17.4質量部添加し、HOを加えてさらに混練を行って、負極合材ペーストを調製した。活物質であるケイ素酸化物と炭素粒子の体積比率は20:80とした。
【0183】
この負極合材ペーストを、集電体としてのCu箔(厚さ:18μm)にアプリケータを用いて塗布し、窒素雰囲気下で150℃、5分間熱処理を行って硬化させた。これにより、集電体と負極合材層とが積層された負極が得られた。乾燥後の負極合材層中の活物質質量は単位面積当たり4mg/cmであった。
【0184】
<負極へのリチウムプレドープ>
(リチウムおよび多環芳香族化合物が溶解した溶液(ドープ液)の調製)
アルゴン雰囲気下において、THF(和光純薬工業社製、脱酸素グレード)17.7質量部に、NAP0.51質量部と、金属リチウム(本城金属製)0.067質量部を加え、25℃で2時間撹拌することでリチウムドープ液を調製した。
【0185】
(負極へのリチウムプレドープ工程)
当該溶液中に、上記方法で作製した負極を25℃で15分間浸漬し、この負極にリチウムをプレドープさせた。負極をドープ液から引き上げた後、負極に付着したドープ液を除去するために、当該負極をTHFに1分間浸漬した。その後、当該負極を25℃で5分間真空乾燥することで、ドープ負極を得た。
【0186】
前記方法で作製したドープ負極を用いてコインセルを作製し、前述の方法で初回充放電効率の算出および、合材層の重量増加率、厚み増加率の算出を行った。結果を表2に示す。
【0187】
〔比較例2〕
<負極の作製>
実施例1で調製した中和度90%のポリアクリル酸ナトリウム水溶液24.3質量部(固形分2質量部)と、0.6質量部の導電助剤アセチレンブラック(電気化学工業製、HS−100)を、電池用コンパウンド攪拌機(プライミクス社製、T.K.ハイビスミックス モデル2P−03)を用いて混練した。得られたペーストに、ケイ素酸化物(信越化学工業製、KSC−1064)、炭素粒子(黒鉛:日立化成株式会社製、MAGD−20)を合計17.4質量部添加し、HOを加えてさらに混練を行って、負極合材ペーストを調製した。活物質であるケイ素酸化物と炭素粒子の体積比率は20:80とした。
【0188】
この負極合材ペーストを、集電体としてのCu箔(厚さ:18μm)にアプリケータを用いて塗布し、窒素雰囲気下で150℃、5分間熱処理を行って硬化させた。これにより、集電体と負極合材層とが積層された負極が得られた。乾燥後の負極合材層中の活物質質量は単位面積当たり4mg/cmであった。
【0189】
負極へのリチウムプレドープは、比較例1と同様の方法で行った。前記方法で作製したドープ負極を用いてコインセルを作製し、前述の方法で初回充放電効率の算出および、合材層の重量増加率、厚み増加率の算出を行った。結果を表2に示す。
【0190】
〔比較例3〕
<負極の作製>
比較例1と同様のポリアクリル酸水溶液8質量部(固形分2質量部)と、0.6質量部の導電助剤アセチレンブラック(電気化学工業製、HS−100)を、電池用コンパウンド攪拌機(プライミクス社製、T.K.ハイビスミックス モデル2P−03)を用いて混練した。得られたペーストに、ケイ素酸化物(信越化学工業製、KSC−1064)、炭素粒子(黒鉛:日立化成株式会社製、MAGD−20)を合計17.4質量部添加し、HOを加えてさらに混練を行って、負極合材ペーストを調製した。活物質であるケイ素酸化物と炭素粒子の体積比率は20:80とした。
【0191】
この負極合材ペーストを、集電体としてのCu箔(厚さ:18μm)にアプリケータを用いて塗布し、窒素雰囲気下で150℃、5分間熱処理を行って硬化させた。これにより、集電体と負極合材層とが積層された負極が得られた。乾燥後の負極合材層中の活物質質量は単位面積当たり4mg/cmであった。
【0192】
負極へのリチウムプレドープは、実施例1と同様の方法で行った。前記方法で作製したドープ負極を用いてコインセルを作製し、前述の方法で初回充放電効率の算出および、合材層の重量増加率、厚み増加率の算出を行った。結果を表2に示す。
【0193】
〔比較例4〕
<カルボン酸塩含有ポリマー(C)の調製>
ポリアクリル酸の25%水溶液(和光純薬工業社製、分子量約15万)29.5質量部(固形分0.1モル)に、1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液31.2質量部(固形分0.03モル)を撹拌しながら滴下することで、中和度30%のポリアクリル酸ナトリウム水溶液を得た。この水溶液の固形分濃度は13.6%であった。
【0194】
<負極の作製>
前記方法で調製した中和度30%のポリアクリル酸ナトリウム水溶液14.7質量部(固形分2質量部)と、0.6質量部の導電助剤アセチレンブラック(電気化学工業製、HS−100)を、電池用コンパウンド攪拌機(プライミクス社製、T.K.ハイビスミックス モデル2P−03)を用いて混練した。得られたペーストに、ケイ素酸化物(信越化学工業製、KSC−1064)、炭素粒子(黒鉛:日立化成株式会社製、MAGD−20)を合計17.4質量部添加し、HOを加えてさらに混練を行って、負極合材ペーストを調製した。活物質であるケイ素酸化物と炭素粒子の体積比率は20:80とした。
【0195】
この負極合材ペーストを、集電体としてのCu箔(厚さ:18μm)にアプリケータを用いて塗布し、窒素雰囲気下で150℃、5分間熱処理を行って硬化させた。これにより、集電体と負極合材層とが積層された負極が得られた。乾燥後の負極合材層中の活物質質量は単位面積当たり4mg/cmであった。
【0196】
負極へのリチウムプレドープは、実施例1と同様の方法で行った。前記方法で作製したドープ負極を用いてコインセルを作製し、前述の方法で初回充放電効率の算出および、合材層の重量増加率、厚み増加率の算出を行った。結果を表2に示す。
【0197】
〔比較例5〕
<負極の作製>
実施例1で調製した中和度90%のポリアクリル酸ナトリウム水溶液36.6質量部(固形分3質量部)と、0.6質量部の導電助剤アセチレンブラック(電気化学工業製、HS−100)を、電池用コンパウンド攪拌機(プライミクス社製、T.K.ハイビスミックス モデル2P−03)を用いて混練した。得られたペーストに、ケイ素酸化物(信越化学工業製、KSC−1064)、炭素粒子(黒鉛:日立化成株式会社製、MAGD−20)を合計16.4質量部添加し、HOを加えてさらに混練を行って、負極合材ペーストを調製した。活物質であるケイ素酸化物と炭素粒子の体積比率は20:80とした。
【0198】
この負極合材ペーストを、集電体としてのCu箔(厚さ:18μm)にアプリケータを用いて塗布し、窒素雰囲気下で150℃、5分間熱処理を行って硬化させた。これにより、集電体と負極合材層とが積層された負極が得られた。乾燥後の負極合材層中の活物質質量は単位面積当たり4mg/cmであった。
【0199】
負極へのリチウムプレドープは、実施例1と同様の方法で行った。前記方法で作製したドープ負極を用いてコインセルを作製し、前述の方法で初回充放電効率の算出および、合材層の重量増加率、厚み増加率の算出を行った。結果を表2に示す。
【0200】
〔比較例6〕
<負極の作製>
実施例1で調製した中和度90%のポリアクリル酸ナトリウム水溶液7.3質量部(固形分0.6質量部)と、0.6質量部の導電助剤アセチレンブラック(電気化学工業製、HS−100)を、電池用コンパウンド攪拌機(プライミクス社製、T.K.ハイビスミックス モデル2P−03)を用いて混練した。得られたペーストに、ケイ素酸化物(信越化学工業製、KSC−1064)、炭素粒子(黒鉛:日立化成株式会社製、MAGD−20)を合計18.8質量部添加し、HOを加えてさらに混練を行って、負極合材ペーストを調製した。活物質であるケイ素酸化物と炭素粒子の体積比率は20:80とした。
【0201】
この負極合材ペーストを、集電体としてのCu箔(厚さ:18μm)にアプリケータを用いて塗布し、窒素雰囲気下で150℃、5分間熱処理を行って硬化させた。これにより、集電体と負極合材層とが積層された負極が得られた。乾燥後の負極合材層中の活物質質量は単位面積当たり4mg/cmであった。
【0202】
負極へのリチウムプレドープは、実施例1と同様の方法で行った。前記方法で作製したドープ負極を用いてコインセルを作製し、前述の方法で初回充放電効率の算出および、合材層の重量増加率、厚み増加率の算出を行った。結果を表2に示す。
【0203】
〔比較例7〕
<負極の作製>
実施例1で調製した中和度90%のポリアクリル酸ナトリウム水溶液24.3質量部(固形分2質量部)と、0.6質量部の導電助剤アセチレンブラック(電気化学工業製、HS−100)を、電池用コンパウンド攪拌機(プライミクス社製、T.K.ハイビスミックス モデル2P−03)を用いて混練した。得られたペーストに、ケイ素酸化物(信越化学工業製、KSC−1064)、炭素粒子(黒鉛:日立化成株式会社製、MAGD−20)を合計17.4質量部添加し、HOを加えてさらに混練を行って、負極合材ペーストを調製した。活物質であるケイ素酸化物と炭素粒子の体積比率は60:40とした。
この負極合材ペーストを、集電体としてのCu箔(厚さ:18μm)にアプリケータを用いて塗布し、窒素雰囲気下で150℃、5分間熱処理を行って硬化させた。これにより、集電体と負極合材層とが積層された負極が得られた。乾燥後の負極合材層中の活物質質量は単位面積当たり4mg/cmであった。
【0204】
負極へのリチウムプレドープは、実施例1と同様の方法で行った。前記方法で作製したドープ負極を用いてコインセルを作製し、前述の方法で初回充放電効率の算出および、合材層の重量増加率、厚み増加率の算出を行った。結果を表2に示す。
【0205】
〔比較例8〕
<負極の作製>
第1の負極結着剤であるSBR水溶液1質量部(固形分0.5質量部)及び第2の負極結着剤であるCMC28.4質量部(固形分0.6質量部)と、0.7質量部の導電助剤アセチレンブラック(電気化学工業製、HS−100)を、電池用コンパウンド攪拌機(プライミクス社製、T.K.ハイビスミックス モデル2P−03)を用いて混練した。得られたペーストに、ケイ素酸化物(信越化学工業製、KSC−1064)、炭素粒子(黒鉛:日立化成株式会社製、MAGD−20)を合計18.2質量部添加し、HOを加えてさらに混練を行って、負極合材ペーストを調製した。活物質であるケイ素酸化物と炭素粒子の体積比率は20:80とした。
【0206】
この負極合材ペーストを、集電体としてのCu箔(厚さ:18μm)にアプリケータを用いて塗布し、窒素雰囲気下で120℃、3分間熱処理を行って硬化させた。これにより、集電体と負極合材層とが積層された負極が得られた。乾燥後の負極合材層中の活物質質量は単位面積当たり4mg/cmであった。
【0207】
負極へのリチウムプレドープは、実施例1と同様の方法で行った。前記方法で作製したドープ負極を用いてコインセルを作製し、前述の方法で初回充放電効率の算出および、合材層の重量増加率、厚み増加率の算出を行った。結果を表2に示す。
【0208】
【表1】
【0209】
【表2】
【0210】
表1に示されるように、合金系材料(A)と、炭素粒子(B)と、カルボン酸塩含有ポリマー(C)とを負極合材層に含む負極を、直鎖ポリフェニレン化合物(D)を含む溶液でプレドープして得た二次電池用負極を用いた実施例1〜13は、プレドープにより負極の重量および体積が増大しにくく、かつ、初回充放電効率も高かった。
【0211】
これに対し、表2に示されるように、多環芳香族化合物を含む溶液でプレドープして得られた負極を用いた比較例1および2は、プレドープにより負極の重量および体積が増大していた。
【0212】
また、直鎖ポリフェニレン化合物(D)を含む溶液でプレドープしたものの、カルボン酸塩含有ポリマー(C)の量が4質量%以上13質量%以下ではないか、または中和度50%未満である比較例3〜6は、初回充放電効率が高まりにくかった。
【0213】
また、直鎖ポリフェニレン化合物(D)を含む溶液でプレドープしたものの、カルボン酸塩含有ポリマー(C)以外の結着材を用いた比較例8は、プレドープにより負極の質量および体積が増大しにくかったものの、初回充放電効率が高まりにくかった。
【0214】
本出願は、2016年8月18日出願の日本国出願番号2016−160748号に基づく優先権を主張する出願であり、当該出願の特許請求の範囲および明細書に記載された内容は本出願に援用される。
【産業上の利用可能性】
【0215】
本発明の非水電解質二次電池は、初回充放電効率が高く、エネルギー密度が高い。したがって、上記非水電解質二次電池は、各種用途に適用可能である。