(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリテトラメチレングリコール(a−1−1)及び鎖伸長剤(a−1−2)を含むポリオール(a−1)とポリイソシアネート(a−2)との反応物であるイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(A)、ポリオール(b−1)とポリイソシアネート(b−2)とN−2−ヒドロキシアルキルオキサゾリジン(b−3)との反応物であるオキサゾリジン基を有するウレタン化合物(B)、酸触媒(C)、及び、チキソ性付与剤(D)を含有する湿気硬化型ウレタン組成物であって、前記鎖伸長剤(a−1−2)の数平均分子量が50〜450の範囲であることを特徴とする湿気硬化型ウレタン組成物。
前記ポリイソシアネート(a−2)が、トルエンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート及びジフェニルメタンジイソシアネートからなる群より選ばれる1種以上である請求項1記載の湿気硬化型ウレタン組成物。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の湿気硬化型ウレタン組成物は、ポリテトラメチレングリコール(a−1−1)及び鎖伸長剤(a−1−2)を含むポリオール(a−1)とポリイソシアネート(a−2)との反応物であるイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(A)、ポリオール(b−1)とポリイソシアネート(b−2)とN−2−ヒドロキシアルキルオキサゾリジン(b−3)との反応物であるオキサゾリジン基を有するウレタン化合物(B)、酸触媒(C)、及び、チキソ性付与剤(D)を必須成分として含有するものである。
【0010】
前記ウレタンプレポリマー(A)の原料として用いるポリオールとしては、ポリテトラメチレングリコール(a−1−1)を用いることが必須である。通常、強度の高い硬化物を得る場合には、ポリエステルポリオールやポリカーボネートポリオールのような機械的強度の高いポリオールを用いることが一般的であるが、高強度形規格の基準は非常にハードルが高く、これらのポリオールで鋭意検討を行ったものの、前記基準を満たすことができなかった。本発明のように、機械的強度の劣るポリテトラメチレングリコール(a−1−1)を用いることにより前記基準を満たすことができたのは非常に驚きであった。
【0011】
前記ポリテトラメチレングリコール(a−1−1)の数平均分子量としては、引張強度及び引張伸度の点から、500〜5,000の範囲であることが好ましく、800〜3,000の範囲であることがより好ましい。なお、前記ポリテトラメチレングリコール(a−1−1)の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により、下記の条件で測定して得られた値を示す。
【0012】
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC−8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度0.4質量%のテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
【0013】
(標準ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−550」
【0014】
前記鎖伸長剤(a−1−2)は、高強度形規格を満たす上で必須の成分である。なお、鎖伸長剤(a−1−2)を用いることにより、ウレタン基濃度が増加し、得られるポリウレタンに海島構造を形成させることで機械的強度の高い硬化物が得られることはポリウレタンの技術分野においては広く知られている。しかしながら、前記ポリテトラメチレングリコール(a−1)と組合せ用いてウレタンプレポリマー(A)を得、更に後述するオキサゾリジン基を有するウレタン化合物(B)、充填剤(D)及び可塑剤(E)と組合せることにより、高強度形規格を満たすことが分かり、これ以外の態様では前記高強度形規格を満たすことは非常に困難であった。
【0015】
前記鎖伸長剤(a−1−2)としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、グリセリン、トリメチロ−ルプロパン、ジトリメチロールプロパン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の脂肪族ポリオール;1,4−シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA等の脂環式ポリオール;ビスフェノールA、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ビスフェノールS、ビスフェノールSのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族ポリオールなどを用いることができる。これらの鎖伸長剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、その鎖長により適度なハードセグメントを形成でき、優れた高強度性が得られる点から、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール及びブタンジオールからなる群より選ばれる1種以上の鎖伸長剤を用いることが好ましい。
【0016】
前記鎖伸長剤(a−1−2)の数平均分子量としては、引張強度及び引張伸度の点から、50〜450の範囲であることが好ましい。なお、前記鎖伸長剤(a−1−2)の数平均分子量は、前記ポリテトラメチレングリコール(a−1−1)の数平均分子量と同様に測定して得られた値を示す。
【0017】
前記鎖伸長剤(a−1−2)の使用量としては、引張強度及び引張伸度の点から、前記ポリオール(a−1)及びポリイソシアネート(a−2)の合計量に対して、1〜40質量%の範囲であることが好ましく、5〜30質量%の範囲がより好ましい。
【0018】
前記ポリオール(a−1)は、前記ポリテトラメチレングリコール(a−1−1)及び前記鎖伸長剤(a−1−2)以外に、必要に応じてその他のポリオールを含有することができる。
【0019】
前記その他のポリオールとしては、例えば、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアクリルポリオール、ダイマーポリオール、ポリブタジエンポリオール等を用いることができる。これらのポリオールは単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、湿気硬化型ウレタン組成物の粘度を下げ、優れた塗工作業性が得られる点から、ポリオキシプロピレングリコール、及び/又はポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを用いることが好ましい。
【0020】
前記ポリオール(a−1)中における前記ポリテトラメチレングリコール(a−1−1)の含有量としては、高強度性の点から、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましい。
【0021】
前記ポリイソシアネート(a−2)としては、例えば、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド化ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート等の脂肪族又は脂環式ポリイソシアネートなどを用いることができる。これらのポリイソシアネートは単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、良好な高強度性、及び貯蔵安定性点から、トルエンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート及びジフェニルメタンジイソシアネートからなる群より選ばれる1種以上のポリイソシアネートを用いることがより好ましい。
【0022】
前記ウレタンプレポリマー(A)の製造方法としては、前記ポリオール(a−1)が有する水酸基と前記ポリイソシアネート(a−2)が有するイソシアネート基とのモル比(NCO/OH)が、好ましくは1.1〜2の範囲で、前記ポリオール(a−1)及び前記ポリイソシアネート(a−2)を反応させる方法を使用することが、良好な高強度性、及び貯蔵安定性が得られる点から好ましい。
【0023】
前記ウレタンプレポリマー(A)はイソシアネート基を有するものであり、そのイソシアネート基含有率(以下「NCO%」と略記する。)としては、高強度性及び貯蔵安定性をより一層向上できる点から、2〜10質量%の範囲であることが好ましく、2.1〜8質量%の範囲であることがより好ましい。なお、高強度性を向上する手法としては、ウレタンプレポリマーのイソシアネート基含有率を高める手法が一般的であるが、イソシアネート基は自身の高活性により後述するウレタン化合物(B)の有するオキサゾリジン基を開環させる作用が強く、使用前に組成物系中で反応が進行してしまい貯蔵安定性が悪化する傾向があることが分かった。
【0024】
前記ウレタンプレポリマー(A)の重量平均分子量としては、硬化速度、接着性、高強度性及び貯蔵安定性をより一層向上できる点から、800〜20,000の範囲であることが好ましく、4,000〜8,000の範囲であることがより好ましい。なお、前記ウレタンプレポリマー(A)の重量平均分子量は、前記ポリテトラメチレングリコール(a−1−1)の数平均分子量と同様に測定して得られた値を示す。
【0025】
前記オキサゾリジン基を有するウレタン化合物(B)の原料として用いる前記ポリオール(b−1)としては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアクリルポリオール、ダイマージオール、ポリブタジエンポリオール等を用いることができる。これらのポリオールは単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、作業性及び柔軟性をより一層向上できる点から、ポリエーテルポリオールを用いることが好ましい。
【0026】
前期ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリオキシエチレンポリオール、ポリオキシプロピレンポリオール、ポリオキシテトラメチレンポリオール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオール、ポリオキシエチレンポリオキシテトラメチレンポリオール、ポリオキシプロピレンポリオキシテトラメチレンポリオール等を用いることができる。これらのポリエーテルポリオールは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0027】
前記ポリオール(b−1)の数平均分子量としては、作業性及び柔軟性をより一層向上できる点から、500〜5,000の範囲が好ましく、800〜3,000の範囲がより好ましい。なお、前記ポリオール(b−1)の数平均分子量は、前記ポリテトラメチレングリコール(a−1−1)の数平均分子量と同様に測定して得られた値を示す。
【0028】
前記オキサゾリジン基を有するウレタン化合物(B)の原料として用いる前記ポリイソシアネート(b−2)としては、前記ポリイソシアネート(a−2)と同様のものを用いることができる。
【0029】
前記N−2−ヒドロキシアルキルオキサゾリジン(b−3)としては、例えば、アルデヒド化合物とジヒドロキシアルキルアミン化合物とを反応させて得られたものを用いることができる。
【0030】
前記アルデヒド化合物としては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、ブチルアルデヒド、ベンズアルデヒド等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0031】
前記ジヒドロキシアルキルアミン化合物としては、例えば、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0032】
前記ウレタン化合物(B)は、前記ポリオール(b−1)、前記ポリイソシアネート(b−2)及び前記N−2−ヒドロキシアルキルオキサゾリジン(b−3)を公知の方法で反応させたものであり、そのオキサゾリジン基の数としては、低温時及び高温時の引張性能並びに作業性の点から、1〜4の範囲であることが好ましく、1〜3の範囲がより好ましい。
【0033】
前記ウレタン化合物(B)の数平均分子量としては、基材への接着性及び硬化速度をより一層向上できる点から、500〜15,000の範囲であることが好ましい。なお、前記ウレタン化合物(B)の数平均分子量は、前記ポリテトラメチレングリコール(a−1−1)と同様に測定した値を示す。
【0034】
前記ウレタン化合物(B)の使用量としては、低温時及び高温時での引張性能、硬化速度、基材への接着性、高強度性並びに貯蔵安定性をより一層向上できる点から、前記ウレタンプレポリマー(A)100質量部に対して、10〜100質量部の範囲であることが好ましく、15〜60質量部の範囲がより好ましい。
【0035】
前記酸触媒(C)は、前記ウレタン化合物(B)が有するオキサゾリジン基の解離を促進するものであり、例えば、硫酸、塩酸、燐酸、炭酸、アルキルベンゼンスルホン酸、安息香酸、サリチル酸、蟻酸、酢酸、マレイン酸、フマル酸等の有機酸又は無機酸;それらの塩などを用いることができる。これらの酸触媒は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、硬化性がより一層向上する点から、燐酸、サリチル酸及び燐酸塩からなる群より選ばれる1種以上の酸触媒を用いることが好ましい。
【0036】
前記酸触媒(C)の使用量としては、硬化性の点から、前記ウレタン化合物(B)100質量部に対して、0.01〜20質量部の範囲であることが好ましい。
【0037】
前記チキソ性付与剤(D)は、湿気硬化型ウレタン組成物にチキソ性を付与し、施工時の垂れを防止する上で必須の成分である。
【0038】
前記チキソ性付与剤(D)としては、例えば、アマイドワックス、水添ひまし油、1,3,5−トリス(トリアルコキシシリルアルキル)イソシアヌレート等の有機化合物;ヒュームドシリカ、カーボンブラック等の無機化合物等を用いることができる。これらのチキソ性付与剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記ウレタンプレポリマー(A)、及び前記ウレタン化合物(B)との相溶性が良好である点から、ヒュームドシリカを用いることが好ましい。
【0039】
前記ヒュームドシリカは、非変成のヒュームドシリカ(煙霧質シリカ)、及びヒュームドシリカの粒子表面を各種表面処理剤により疎水変性したもののどちらでもよい。
【0040】
前記ヒュームドシリカとは、乾式法で得られるものであり、具体的には、四塩化ケイ素を気化し、高温の炎中で加水分解した二酸化ケイ素である。ただし、製造工程においては、これらが凝集したものが形成される。
【0041】
前記凝集した二酸化ケイ素の表面には、シロキサン及びシラノール基が存在しており、親水性を示す。一方、このシラノール基に表面処理剤を反応させることで、疎水性が付与される。
【0042】
前記表面処理剤としては、例えば、ジメチルジクロロシランやジメチルシリコーンオイル、ヘキサメチルジシラザン、オクチルシラン、ヘキサデシルシラン、アミノシラン、メタクリルシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ポリジメチルシロキサン等を用いることができる。
【0043】
また、前記ヒュームドシリカのBET法による比表面積としては、30〜300m
2/gの範囲であることが好ましく、60〜200m
2/gの範囲であることがより好ましい。
【0044】
前記ヒュームドシリカの親水性タイプとしては、例えば「アエロジル50」、「アエロジル90G」、「アエロジル130」、「アエロジル200」、「アエロジル200CF」、「アエロジル200V」、「アエロジル300」、「アエロジル300CF」(以上、日本アエロジル株式会社製)等を市販品として入手することができる。
【0045】
また、疎水性タイプとしては、「アエロジルDT4」、「アエロジルNA200Y」、「アエロジルNA50H」、「アエロジルNA50Y」、「アエロジルNAX50」、「アエロジルR104」、「アエロジルR106」、「アエロジルR202」、「アエロジルR202W90」、「アエロジルR504」、「アエロジルR711」、「アエロジルR700」、「アエロジルR7200」、「アエロジルR805」、「アエロジルR805VV90」、「アエロジルR812」、「アエロジル812S」、「アエロジルR816」、「アエロジルR8200」、「アエロジルR972」、「アエロジルR972V」、「アエロジルR974」、「アエロジルRA200HS」、「アエロジルRX200」、「アエロジルRX300」、「アエロジルRX50」、「アエロジルRY200」、「アエロジルRY200S」、「アエロジルRY300」、「アエロジルRY50」(以上、日本アエロジル株式会社製)等を市販品として入手することができる。また、日本アエロジル株式会社以外には株式会社トクヤマからも同様のヒュームドシリカを入手することができる。
【0046】
前記チキソ性付与剤(D)の使用量としては、施工時の垂れを良好に抑制でき、かつ湿気硬化型ウレタン組成物の粘度を適度な範囲とし、良好な作業性が得られる点から、前記ウレタンプレポリマー(A)及び前記ウレタン化合物(B)の合計質量に対して、0.01〜10質量%の範囲であることが好ましく、0.05〜5質量%の範囲であることがより好ましい。
【0047】
本発明の湿気硬化型ウレタン組成物は、前記ウレタンプレポリマー(A)、前記ウレタン化合物(B)、前記酸触媒(C)、及び前記チキソ性付与剤(D)を含有するが、必要に応じてその他の添加剤を含有してもよい。
【0048】
前記その他の添加剤としては、例えば、充填剤(D)、可塑剤(E)、有機溶剤、顔料、チキソ性付与剤、プロセスオイル、紫外線防止剤、補強材、骨材、硬化促進剤、難燃剤等を用いることができる。これらの添加剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、低温時及び高温時において優れた高強度性が得られる点から、前記充填剤(D)、及び、可塑剤(E)を含有することが好ましい。
【0049】
前記充填剤(D)を用いることにより、優れた低温時及び高温時における強度と作業性とが得られる。前記充填剤(D)を配合することにより、これらの効果が得られる理由としては、補強効果が得られること、及び粘度、揺変度の調整が可能であることが考えられる。
【0050】
前記充填剤(D)としては、例えば、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、クレー、タルク、酸化チタン、硫酸アルミニウム、カオリン、硅そう土、ガラスバルーン等を用いることができる。これらの充填剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。前記充填剤(D)の使用量としては、前記ウレタンプレポリマー(A)及び前記ウレタン化合物(B)の合計質量に対し0.1〜60質量%の範囲であることが好ましく、5〜50質量%の範囲がより好ましい。
【0051】
前記可塑剤(F)を用いることにより、優れた低温時及び高温時における伸び率を得ることができる。前記可塑剤(F)を配合することにより、低温時及び高温時における良好な伸び率が得られる理由としては、低温時及び高温時における可塑性を付与できることが考えられる。
【0052】
前記可塑剤(F)としては、例えば、2−エチルヘキシルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジウンデシルフタレート、ジラウリルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジブチルアジペート、ジオクチルアジペート、ジイソノニルアジペート、ジイソノニルアジペート、ジオクチルアゼレート、ジオクチルセバケート、トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート等を用いることができる。これらの可塑剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。前記可塑剤(F)の使用量としては、前記ウレタンプレポリマー(A)及び前記オキサゾリジン基を有するウレタン化合物(B)の合計質量に対し1〜30質量%の範囲であることが好ましく、5〜20質量%の範囲がより好ましい。
【0053】
以上、本発明の湿気硬化型ウレタン組成物は施工時に垂れることがなく、また鏝塗り等によっても簡便に塗膜を作製でき、大型機械によらなくても施工が可能なものである。また、本発明の湿気硬化型ウレタン組成物を湿気硬化させて得られる硬化物は、前記高強度形規格の基準を満たすものであるため、高強度性に極めて優れるものである。従って、本発明の湿気硬化型ウレタン組成物は、土木建築関連の被覆材として好適に使用することができ、防水材及びコンクリート補修材として特に好適に使用することができる。
【0054】
本発明の湿気硬化型ウレタン組成物を土木建築関連の被覆材として用いる場合に塗布する基材(下地材)としては、コンクリート、アスファルト、モルタル等の無機質基材;金属、木材、布帛、プラスチックなどを用いることができる。また、塗布する際の厚さは、用途に応じて適宜決定されるが、例えば、0.1〜10mmの範囲である。
【0055】
前記湿気硬化型ウレタン組成物は、湿気により硬化し硬化物を得る。前記湿気硬化させる方法としては、例えば、25℃、湿度50%の条件下で5〜10日間養生させる方法が挙げられる。
【0056】
前記方法により得られる硬化物は、前記高強度形規格を満たすものであり、すなわちJISA6021:2011に準拠して測定した引張強さ(試験時温度23℃)が10N/mm
2以上であり、破断時の伸び率(試験時温度23℃)が200%以上であり、かつ、破断時のつかみ間の伸び率(試験時温度23℃)が120%以上であるものである。
【0057】
また、前記湿気硬化型ウレタン組成物として、前記充填剤(E)、及び、可塑剤(F)を含有する場合には、その硬化物は、JISA6021:2011に準拠して測定した引張強さ(試験時温度23℃)が10N/mm
2以上であり、引張強さ(試験時温度−20℃)が10N/mm
2以上であり、引張強さ(試験時温度60℃)が6N/mm
2以上であり、破断時の伸び率(試験時温度23℃)が200%以上であり、破断時のつかみ間の伸び率(試験時温度23℃)が120%以上であり、破断時のつかみ間の伸び率(試験時温度−20℃)が100%以上であり、破断時のつかみ間の伸び率(試験時温度60℃)が100%以上であり、かつ、伸び時の劣化性状を満たすものである。
【0058】
また、前記方法により得られる硬化物は、JISA6021:2011にて規定する「伸び時の劣化性状」を満たすものであり、具体的には、加熱処理、促進暴露処理、オゾン処理を行っても、試験片にひび割れ及び著しい変形がないものである。
【実施例】
【0059】
以下、実施例を用いて、本発明をより詳細に説明する。
【0060】
[合成例1]ウレタンプレポリマー(A−1)の合成
ポリテトラメチレングリコール(数平均分子量;1,000、以下「PTMG1000」と略記する。)300質量部、ポリオキシプロピレングリコール(数平均分子量;3,000、以下「PPG3000」と略記する。)120質量部、ジプロピレングリコール(以下「DPG」と略記する。)180質量部を混合し、そこへトルエンジイソシアネート(以下「TDI」と略記する。)400質量部加え、窒素気流下、90℃で8時間反応させ、NCO%;5.2質量%のウレタンプレポリマー(A−1)を得た。
【0061】
[合成例2]ウレタンプレポリマー(A−2)の合成
ポリテトラメチレングリコール(数平均分子量;2,000、以下「PTMG2000」と略記する。)300質量部、PPG3000を145質量部、DPGを180質量部を混合し、そこへTDIを375質量部加え、窒素気流下、90℃で8時間反応させ、NCO%;5.2質量%のウレタンプレポリマー(A−2)を得た。
【0062】
[合成例3]ウレタンプレポリマー(A−3)の合成
PTMG1000を300質量部、PPG3000を200質量部、DPGを180質量部混合し、そこへTDIを320質量部加え、窒素気流下、90℃で8時間反応させ、NCO%;2.4質量%のウレタンプレポリマー(A−3)を得た。
【0063】
[合成例4]ウレタンプレポリマー(A−4)の合成
PTMG1000を300質量部、PPG3000を114質量部、DPGを180質量部混合し、そこへTDIを406質量部加え、窒素気流下、90℃で8時間反応させ、NCO%;6.8質量%のウレタンプレポリマー(A−4)を得た。
【0064】
[合成例5]ウレタンプレポリマー(A−5)の合成
PTMG1000を300質量部、PPG3000を215質量部、DPGを170質量部混合し、そこへTDIを305質量部加え、窒素気流下、90℃で8時間反応させ、NCO%;5.2質量%のウレタンプレポリマー(A−5)を得た。
【0065】
[比較合成例1]ウレタンプレポリマー(A’−1)の合成
セバシン酸とビスフェノールAのエチレンオキサイド6モル付加物とを反応させて得られたポリエステルポリオール(数平均分子量;1,250、以下、「PEs−1」と略記する。)1,250質量部、DPGを50質量部を容器に入れ、そこへTDIを331質量部加え、窒素気流下、90℃で8時間反応させ、NCO%;4.8質量%のウレタンプレポリマー(A’−1)を得た。
【0066】
[比較合成例2]ウレタンプレポリマー(A’−2)の合成
ダイマー酸と2-メチルペンタンジオールとを反応させて得られたポリエステルポリオール(数平均分子量;2,000、以下、「PEs−2」と略記する。)2,000質量部、DPGを30質量部を容器に入れ、そこへTDIを383質量部加え、窒素気流下、90℃で8時間反応させ、NCO%;4.2質量%のウレタンプレポリマー(A’−2)を得た。
【0067】
[合成例8]ウレタン化合物(B−1)の合成
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(数平均分子量;1,000、オキシエチレン構造の含有量;20質量%、以下、「EOPO」と略記する。)を100質量部、TDIを80質量部を反応させ、NCO%;16.8質量%のウレタンプレポリマーを得た。次いで、キシレンを40質量部加えて撹拌しながら、N−2−イソプロピル−3−(2−ヒドロキシエチル)−1,3−オキサゾリジン(以下、「OXZ−1」と略記する。)114.5質量部を、発熱を抑えながらゆっくり滴下した。発熱が収まったのを確認した後、70℃にて8時間撹拌させ、オキサゾリジン基を有するウレタン化合物(B−1)を得た。
【0068】
[実施例1〜5、比較例1〜3]
密閉した混合容器内で表1〜2に示した所定量のウレタンプレポリマー(A)、ウレタン化合物(B)、酸触媒(C)、及びチキソ性付与剤(D)を均一に混合して湿気硬化型ウレタン組成物を得た。配合表及び試験結果を表1〜2に示す。
【0069】
[引張性能試験]
JISA6021:2011「6.6.1 23℃における引張性能試験」に準拠して引張試験を行い、引張強さ(N/mm
2)、破断時の伸び率(%)及び破断時のつかみ間の伸び率(%)を測定した。
【0070】
[施工時の垂れの評価方法]
実施例及び比較例で得られた湿気硬化型ウレタン組成物を、机上に垂直に立てたコンクリート板に刷毛を用いて塗布した。この際、湿気硬化型ウレタン組成物の垂れが確認されなかった場合は「○」、確認された場合は「×」と評価した。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
[実施例6〜10]
密閉した混合容器内で表3に示した所定量のウレタンプレポリマー(A)、ウレタン化合物(B)、酸触媒(C)、チキソ性付与剤(D)、充填剤(E)、及び可塑剤(F)を均一に混合して湿気硬化型ウレタン組成物を得た。配合表及び試験結果を表3に示す。
【0074】
[引張性能試験]
前記試験時温度23℃における試験に加えて、試験時温度−20℃及び60℃における試験を実施した。具体的には、JISA6021:2011「6.6.2 −20℃及び60℃における引張性能試験」に準拠して引張試験を行い、試験時温度−20℃における引張強さ(N/mm
2)及び破断時のつかみ間の伸び率(%)、及び、試験時温度60℃における引張強さ(N/mm
2)及び破断時のつかみ間の伸び率(%)を測定した。
【0075】
[伸び時の劣化性状試験]
JISA6021:2011「6.10 伸び時の劣化性状試験」に準拠して、加熱処理、促進暴露処理、及び、オゾン処理を行い、塗膜表面を目視観察した。いずれの試験においても塗膜表面にひび割れ及び著しい変形がない場合は「T」、ある場合は「F」と評価した。
【0076】
【表3】
【0077】
本発明の湿気硬化型ウレタン組成物は、施工時に垂れがなく、かつ前記高強度形規格の基準を満たすことが分かった。特に、充填剤(E)及び可塑剤(F)を含有した態様である実施例6〜10は、高温時及び低温時においても、優れた高強度性を有することが分かった。
【0078】
一方、比較例1及び2は、ポリテトラメチレングリコール(a−1−1)の代わりに、ポリエステルポリオールを用いた態様であるが、いずれも高強度形規格の基準を満たすことができなかった。
【0079】
比較例3は、チキソ性付与剤(D)を用いない態様であるが、施工時に垂れが発生した。