【0007】
(a)加工フェヌグリーク
本発明の加工フェヌグリークは、未粉砕のフェヌグリークを加熱処理し、粉砕処理し、次いで密閉容器中で熟成処理を行うことにより調製する。
加熱処理は、フェヌグリークシードを砕くことなく子葉が種皮で覆われたホールの状態で行う。加熱処理は、フェヌグリークの温度が130℃以上200℃以下に達するまで、目的とする風味に合わせ任意に行うことが出来る。例えば、繊細で軽い香ばしい香りを求める場合は130℃以上で130℃に近い温度まで、強烈で強い香ばしい香りを求める場合には200℃に近い温度まで加熱させる。加熱処理は、上記条件を満たせばどのような加熱媒体により行ってもよく、例えば、オーブン、直火型釜、ハイブリッド釜、オイル式釜、蒸気式釜及び加熱水蒸気等の加熱媒体を使用することができる。
上記のようにフェヌグリークを加熱処理した後、粉砕処理を行う。粉砕処理はどのような装置を用いて行ってもよく、例えばスタンプミル及びハンマーミル等の装置を用いることができる。粉砕後の粒度は限定されず、例えば900μm以下、750μm以下又は350μm以下の粒度とすることができる。ここで、粒度は、JIS Z 8901「試験用粉体及び試験用粒子」に定義されるふるい分け法によって測定した、試験用ふるいの目開きで表したものをいう。
【0008】
本発明においては、加熱処理し、粉砕処理したフェヌグリークを、密閉容器に入れて熟成させる。熟成処理は、実質的に酸素を透過しない密閉条件下で行う。例えば、酸素透過度が1500fmol/m
2/s/Pa以下、好ましくは50fmol/m
2/s/Pa以下、さらに好ましくは10fmol/m
2/s/Pa以下の材料で構成された密閉容器を用いることにより行う。なお、本発明において、酸素透過度はJIS規格 K7126により定義されるものをいう。上記酸素透過度を満たす容器としては、例えばポリエチレンテレフタラート(PET)フィルム、エチレンビニルアルコール(EVOH)フィルム、シリカ蒸着PETフィルム、アルミ蒸着PETフィルム、アルミナ蒸着PETフィルム、ポリビニルアルコール(PVA)コート延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム及びアルミ箔等の材料で構成された包材を用いることができる。
熟成処理は、上記密閉容器中で、好ましくは50℃以上80℃未満の温度、より好ましくは55℃以上75℃以下の温度で、好ましくは3週間以上7週間以下、より好ましくは4週間以上6週間以下の期間行う。本発明者らは、フェヌグリークを酸素が透過しない密閉条件下でこのように熟成させることにより、加熱処理により生じた異味及び異臭をなくすことができ、かつ酸化臭を生じさせずに、甘さと香ばしさのある鼻を突き刺すような所望の強い香りを付与することができることを見出した。
また、フェヌグリークの熟成処理は、他の香辛料とは別に行う。フェヌグリークと他の香辛料とを混合して上記熟成処理条件で一緒に熟成させると、他の香辛料からモノテルペン類や油脂による劣化臭が生じ、結果として得られる加工香辛料の香りが好ましくないものとなってしまう。
【実施例】
【0011】
以下、本発明について実施例を挙げて詳細に説明する。なお、本発明は以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1)
未粉砕のフェヌグリークをオーブンで160℃の温度に達する(以下、達温という)まで加熱して焙煎した。焙煎後のフェヌグリークをスタンプミルで750μm以下の粒度(目開き750μmパス)となる粒度まで粉砕後、酸素透過度が7.5fmol/m
2/s/Paのアルミ蒸着PETフィルムのパウチに充填密閉し、60℃の環境下で5週間熟成処理を行って加工フェヌグリークを得た。
上記の加工フェヌグリーク95gと粉砕したフェンネル5gとを混合し、加工香辛料を調製した。
(実施例2、3)
フェヌグリークの加熱処理の際の達温を、表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様に加工香辛料を調製した。
(実施例4、5)
フェヌグリークの熟成処理の温度及び期間を、表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様に加工香辛料を調製した。
(実施例6)
フェヌグリークの熟成処理を、酸素透過度1375fmol/m
2/s/PaのPETフィルムの包材で行ったこと以外は、実施例1と同様に加工香辛料を調製した。
(実施例7、8)
フェヌグリークを粉砕する際の粒度を、表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様に加工香辛料を調製した。
【0012】
上記のようにして得られた加工香辛料について、訓練され、本評価に同意したパネル10人により、下記の基準を用いて官能評価を行った。結果を表1に示す。
[評価基準]
○:フェヌグリークの甘さと香ばしさのある鼻を突き刺すような強い香りがあり、十分なコクを感じ、かつ、フェンネルが好ましい風味を有する。
△:フェヌグリークの甘さと香ばしさのある鼻を突き刺すような香りがあり、コクを感じ、かつ、フェンネルが好ましい風味を有する。
×:フェヌグリークの甘さと香ばしさのある鼻を突き刺すような香りが弱く、コクを感じない、若しくは焦げ臭を感じる。または、フェンネルが好ましい風味を有しない。
【表1】
【0013】
(比較例1)
フェヌグリークの熟成処理を酸素透過度14800fmol/m
2/s/Paのポリエチレン(PE)フィルムの包材で行ったこと以外は、実施例1と同様に加工香辛料を調製した。得られた加工香辛料は、油の焼けた臭いが強く、フェヌグリークの甘さと香ばしさのある鼻を突き刺すような香りが弱く、コクを感じなかった。
(比較例2)
フェヌグリークの加熱処理を行わなかったこと以外は、実施例1と同様に加工香辛料を調製した。得られた加工香辛料は、フェヌグリークの甘さと香ばしさのある鼻を突き刺すような香りがなく、コクを感じなかった。
(比較例3)
加熱処理後のフェヌグリークを粉砕しなかったこと以外は、実施例1と同様に加工香辛料を調製した。得られた加工香辛料は、フェヌグリークの甘さと香ばしさのある鼻を突き刺すような香りが弱く、コクを感じなかった。
(比較例4)
未粉砕のフェヌグリークを実施例1と同様に加熱処理及び粉砕処理した。粉砕したフェヌグリーク95gと、粉砕したフェンネル5gとを、共に酸素透過度が7.5fmol/m
2/s/Paのアルミ蒸着PETフィルムのパウチに充填密閉し、60℃の環境下で5週間熟成処理を行った。得られた加工香辛料は、モノテルペン類の劣化臭が生じ、フェヌグリークの甘さと香ばしさのある鼻を突き刺すような香りがなく、コクも感じられなかった。
【0014】
【表2】
【0015】
(実施例9 カレーパウダー)
実施例1と同様にして加工フェヌグリークを調製し、この加工フェヌグリーク4g、オールスパイス4g、唐辛子4g、カルダモン5g、コリアンダー35g、クミン10g、ショウガ4g、黒コショウ4g及びターメリック20gを混合し、カレーパウダーを得た。得られたカレーパウダーは、フェヌグリークの甘さと香ばしさのある刺激的な鼻を突き刺すような強い香りと共に良好な香辛料の風味を有し、強いコクを有するものであった。
(実施例10 レトルトカレー)
実施例1と同様にして加工フェヌグリークを調製し、この加工フェヌグリーク、ターメリック、コリアンダー、唐辛子、及びクミンを、1:2:2:1:2の重量比で混合し、加工香辛料を得た。
ラード33.5gと小麦粉37gを120℃になるまで炒めた。そこに上記加工香辛料8gを加え、3分間炒めた。次に、グラニュー糖6.5g、食塩7.5g、グルタミン酸ナトリウム6.5g、核酸調味料0.7g、カラメル色素0.3g、水600gを加えて撹拌し、カレーソースを作った。前記カレーソース200gをレトルトパウチに入れ、120℃で60分間殺菌処理を行い、レトルトカレーソースを得た。このレトルトカレーソースは、フェヌグリークの甘さと香ばしさのある刺激的な鼻を突き刺すような強い香りと共に良好な香辛料の風味を有し、強いコクを有するものであった。
(実施例11 ルウカレー)
ラード33.5gと小麦粉37gを120℃になるまで炒めた。そこに実施例10で調製した加工香辛料8gを加え、3分間炒めた。次に、グラニュー糖6.5g、食塩7.5g、グルタミン酸ナトリウム6.5g、核酸調味料0.7g、カラメル色素0.3gを入れ、90℃で30分間加熱混合した後、60℃まで冷却し、これを80重量部トレイに充填した。次に、これを−10℃、12分間の条件で冷却処理を施して固化し、固形カレールウを得た。得られたルウで作ったカレーは、フェヌグリークの甘さと香ばしさのある刺激的な鼻を突き刺すような強い香りと共に良好な香辛料の風味を有し、強いコクを有するものであった。
(実施例12 ルウカレー)
フェンネル5g、ターメリック30g、陳皮10g、クミン5g、コリアンダー30g、コショウ10g、およびカルダモン1gを混合し、スパイスミックスを調整した。そこに、実施例1と同様にして調製した加工フェヌグリーク9gを添加し、加工香辛料を得た。この加工香辛料8gを用いた以外は、実施例11と同様に固形カレールウを調整した。得られたルウで作ったカレーは、フェヌグリークの甘さと香ばしさのある刺激的な鼻を突き刺すような強い香りと共に良好な香辛料の風味を有し、強いコクを有するものであった。
(実施例13 水系ルウカレー)
水25.7g、食塩6.6g、菜種油3.8g、水あめ10.4g、麦芽糖20.8g、グルタミン酸ナトリウム1g、オニオンペースト0.9g、粉末野菜7.4g、乳原料0.8g、カラメル色素0.8g、その他の調味料1.8g、実施例10で調製した加工香辛料2gを撹拌混合しながら混合物の温度が95℃に達するまで加熱調理し、70℃まで冷却後、アルコール2.0g、コーンスターチ16.1gを加え撹拌混合し、柔軟性のある容器に充填密閉し、カレールウを得た。得られたルウで作ったカレーは、フェヌグリークの甘さと香ばしさのある刺激的な鼻を突き刺すような強い香りと共に良好な香辛料の風味を有し、強いコクを有するものであった。