(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2のTiON膜の内側に設けられたTiN膜をさらに有し、前記TiN膜の両側に前記第2のTiON膜が形成され、前記第2のTiON膜の両側に前記第1のTiON膜が形成された5層構造を有することを特徴とする請求項1に記載のDRAMキャパシタの下部電極。
前記第2のTiON膜の内側に設けられた前記第2のTiON膜よりも酸素濃度が低い第3のTiON膜をさらに有し、前記第3のTiON膜の両側に前記第2のTiON膜が形成され、前記第2のTiON膜の両側に前記第1のTiON膜が形成された5層構造を有することを特徴とする請求項1に記載のDRAMキャパシタの下部電極。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献3に記載された方法でDRAMのキャパシタを形成する際には、下部電極は、モールド酸化膜を除去する際にフッ酸(HF)に浸漬され、また、high−k膜成膜時には酸化剤である酸素系ガス(例えばO
2ガスやO
3ガス)に曝される。
【0009】
このため、下部電極には、フッ酸に対する耐性が高く、かつ酸素系ガスによるストレス変化が小さいことが要求される。
【0010】
しかし、特許文献1および非特許文献1に記載された、酸素が添加されたTiN膜を下部電極として用いた場合は、フッ酸に対する耐性が高いことと、酸素系ガスによるストレス変化が小さいこととを両立させることが困難である。
【0011】
したがって、本発明は、フッ酸に対する耐性が高いことと、酸素系ガスによるストレス変化が小さいこととを両立させることができるDRAMキャパシタの下部電極およびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明の第1の観点は、DRAMキャパシタにおける誘電体膜の下層に設けられるTiN系材料からなる
シリンダ状の下部電極であって、両外側に設けられた相対的に酸素濃度が低い第1のTiON膜と、前記第1のTiON膜の内側に設けられた相対的に酸素濃度が高い第2のTiON膜とを有することを特徴とするDRAMキャパシタの下部電極を提供する。
【0013】
上記第1の観点に係るDRAMキャパシタの下部電極は、前記第2のTiON膜の両外側に前記第1のTiON膜が形成された3層構造を有してもよいし、前記第2のTiON膜の内側に設けられたTiN膜をさらに有し、前記TiN膜の両側に前記第2のTiON膜が形成され、前記第2のTiON膜の両側に前記第1のTiON膜が形成された5層構造を有してもよい。また、前記第2のTiON膜の内側に設けられた前記第2のTiON膜よりも酸素濃度が低い第3のTiON膜をさらに有し、前記第3のTiON膜の両側に前記第2のTiON膜が形成され、前記第2のTiON膜の両側に前記第1のTiON膜が形成された5層構造を有してもよい。前記下部電極は、厚さ方向に対称な膜構造を有することが好ましい。
【0014】
前記第1のTiON膜の酸素濃度は、30〜40at.%であることが好ましく、前記第1のTiON膜の膜厚は、0.5〜5nmであることが好ましい。また、前記第2のTiON膜の酸素濃度は、40at.%より高いことが好ましく、前記第2のTiON膜の膜厚は、0.5〜5nmであることが好ましい。
【0015】
本発明の第2の観点は、DRAMキャパシタにおける誘電体膜の下層に設けられたTiN系材料からなる
シリンダ状の下部電極の製造方法であって、被処理基板を処理容器内に収容し、前記処理容器内を減圧状態に保持し、所定の処理温度で、Ti含有ガスと窒化ガスとを前記処理容器のパージを挟んで所定回数交互に供給して単位窒化膜を形成した後、酸化剤を供給して前記単位窒化膜を酸化処理するサイクルを所定サイクル行って、相対的に酸素濃度が低い第1のTiON膜を形成する工程と、前記Ti含有ガスと前記窒化ガスとを前記処理容器のパージを挟んで所定回数交互に供給して単位窒化膜を形成した後、前記酸化剤を供給して前記単位窒化膜を酸化処理するサイクルを所定サイクル行って、前記第1のTiON膜の上に、相対的に酸素濃度が高い第2のTiON膜を形成する工程と、最上層として、被処理基板を処理容器内に収容し、前記処理容器内を減圧状態に保持し、所定の処理温度で、Ti含有ガスと窒化ガスとを前記処理容器のパージを挟んで所定回数交互に供給して単位窒化膜を形成した後、酸化剤を供給して前記単位窒化膜を酸化処理するサイクルを所定サイクル行って、2層目の前記第1のTiON膜を形成する工程とを有し、前記第1のTiON膜と前記第2のTiON膜との酸素濃度を、前記単位窒化膜を形成する際の前記Ti含有ガスと前記窒化ガスとの交互供給回数、前記単位窒化膜を酸化処理する時間、および前記酸化処理の際の前記酸化剤の流量の少なくとも一つにより調整することを特徴とするDRAMキャパシタの下部電極の製造方法を提供する。
【0016】
本発明の第3の観点は、DRAMキャパシタにおける誘電体膜の下層に設けられたTiN系材料からなる
シリンダ状の下部電極の製造方法であって、被処理基板を処理容器内に収容し、前記処理容器内を減圧状態に保持し、所定の処理温度で、Ti含有ガスと窒化ガスとを前記処理容器のパージを挟んで所定回数交互に供給して単位窒化膜を形成した後、酸化剤を供給して前記単位窒化膜を酸化処理するサイクルを所定サイクル行って相対的に酸素濃度が低い1層目の第1のTiON膜を形成する工程と、次いで、前記Ti含有ガスと前記窒化ガスとを前記処理容器のパージを挟んで所定回数交互に供給して単位窒化膜を形成した後、前記酸化剤を供給して前記単位窒化膜を酸化処理するサイクルを所定サイクル行って、1層目の前記第1のTiON膜の上に、相対的に酸素濃度が高い1層目の第2のTiON膜を形成する工程と、次いで、前記Ti含有ガスと前記窒化ガスとを前記処理容器のパージを挟んで交互に供給して1層目の前記第2の
TiON膜の上にTiN膜を形成する工程と、次いで、前記Ti含有ガスと前記窒化ガスとを前記処理容器のパージを挟んで所定回数交互に供給して単位窒化膜を形成した後、前記酸化剤を供給して前記単位窒化膜を酸化処理するサイクルを所定サイクル行って、前記TiN膜の上に、2層目の前記第2のTiON膜を形成する工程と、次いで、前記Ti含有ガスと前記窒化ガスとを前記処理容器のパージを挟んで所定回数交互に供給して単位窒化膜を形成した後、前記酸化剤を供給して前記単位窒化膜を酸化処理するサイクルを所定サイクル行って、2層目の前記第2のTiON膜の上に、2層目の前記第1のTiON膜を形成する工程と有し、前記第1のTiON膜と前記第2のTiON膜との酸素濃度を、前記単位窒化膜を形成する際の前記Ti含有ガスと前記窒化ガスとの交互供給回数、前記単位窒化膜を酸化処理する時間、および前記酸化処理の際の前記酸化剤の流量の少なくとも一つにより調整することを特徴とするDRAMキャパシタの下部電極の製造方法を提供する。
【0017】
上記第2および第3の観点において、前記Ti含有ガスがTiCl
4ガスであり、前記窒化ガスがNH
3ガスであることが好ましい。前記酸化剤として、O
2ガス、O
3ガス、H
2O、NO
2からなる群から選択される酸素含有ガス、または、前記酸素含有ガスをプラズマ化したものを用いることができる。前記処理温度は300〜500℃であることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、DRAMキャパシタの下部電極として、TiN系材料からなり、両外側に相対的に酸素濃度が低い第1のTiON膜を形成し、その内側に相対的に酸素濃度が高い第2のTiON膜を形成するので、第1のTiON膜により、モールド酸化膜を除去する際のフッ酸に対する耐性を高くすることができ、第2のTiON膜により、誘電体膜形成の際に用いられる酸素系ガスによるストレス変化を小さくすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について具体的に説明する。
【0021】
<DRAMキャパシタの製造方法>
図1は本発明の一実施形態に係る下部電極を有するDRAMキャパシタの製造方法を概略的に示す工程断面図である。
【0022】
最初に、シリコン基板等の半導体基板201上に、厚さ1μm以上のSiO
2からなるモールド酸化膜202を形成する(
図1(a))。次いで、モールド酸化膜202をエッチングしてアスペクト100以上の円柱状の凹部203を形成する(
図1(b))。次いで、モールド酸化膜202および露出した半導体基板201の上に後述するように、TiON膜を含むTiN系材料からなる下部電極204を形成し(
図1(c))、モールド酸化膜202の上面をエッチバックする(
図1(d))。次いで、フッ酸(HF)によりモールド酸化膜202を除去し、半導体基板201上にシリンダ状の下部電極204のみを残存させる(
図1(e))。
【0023】
その後、シリンダ状の下部電極204の表面に容量絶縁膜として用いられる高誘電率(high−k)材料からなる誘電体膜(high−k膜)205を形成する(
図1(f))。誘電体膜(high−k膜)205としては、HfO
2やZrO
2、Al
2O
3とZrO
2を積層したもの等の酸化物材料が用いられる。誘電体膜(high−k膜)205は、Hf等を含む原料ガスと、酸化剤としての酸素系ガス(例えばO
2ガスやO
3ガス)とを交互に供給する原子層堆積法(Atomic Layer Deposition;ALD)により成膜される。
【0024】
その後、誘電体膜(high−k膜)205の表面に、TiON膜を含む上部電極206を形成する(
図1(g))。以上により、DRAMキャパシタが製造される。
【0025】
<下部電極構造>
次に、以上のようにして形成されるDRAMキャパシタの下部電極について説明する。
【0026】
図2は、DRAMキャパシタの下部電極の一例を示す断面図である。
この例では、下部電極204は上述したように全体がTiN系材料からなり、両外側に設けられた2層の第1の
TiON膜241と、それらの内側にそれぞれ形成された2層の第2のTiON膜242と、第2のTiON膜242の内側に設けられた中心層をなすTiN膜243とを有する5層の積層構造となっている。
【0027】
TiON膜は、TiN膜に酸素を添加した膜であり、下部電極204の両外側をTiON膜とすることにより、下部電極204の表面に形成される誘電体膜(high−k膜)205を構成する酸化物材料の中の酸素が抜けて酸素の欠陥が生じることを抑制する効果を有する。
【0028】
TiON膜のうち、外側の第1のTiON膜241は相対的に酸素濃度が低いTiON膜であり、内側の第2のTiON膜242は相対的に酸素濃度が高いTiON膜である。下部電極204を形成する際には、凹部203が形成された後のモールド酸化膜202の表面および半導体基板201の露出面に、第1のTiON膜241、第2のTiON膜242、TiN膜243、第2のTiON膜242、第1のTiON膜241の順に形成される。そして、2層の第1のTiON膜241および2層の第2のTiON膜242は、それぞれ同じ厚さを有しており、下部電極204は、厚さ方向に対称な膜構造となっている。そして、モールド酸化膜202を除去した後も対称な構造が維持される。
【0029】
酸素濃度が相対的に低い第1のTiON膜241を最外側に配置するのは、TiON膜は、酸素濃度が低いほど、フッ酸(HF)に対する耐食性良好になるからである。
【0030】
上述したように、DRAMキャパシタを製造する際には、フッ酸(HF)でモールド酸化膜を除去する工程があるが、その際には下部電極204もフッ酸(HF)に浸漬されるため、下部電極204にはフッ酸(HF)に対する耐性が要求される。そこで、TiON膜の酸素濃度とフッ酸(HF)に対する耐性との関係を調査した結果、TiON膜は低酸素濃度であるほど良好な耐性を示すことが確認された。
【0031】
そのことを確認した実験を
図3に示す。
図3は、TiN膜、低酸素濃度のTiON膜(酸素濃度33〜38at.%)、中酸素濃度のTiON膜(酸素濃度46at.%)、高酸素濃度のTiON膜(酸素濃度55at.%)についてフッ酸に対する耐腐食性を試験した結果を示す図である。ここでは、シリコン基板上に、SiO
2膜を形成した後、TiN膜または上記酸素濃度のTiON膜を厚さ10nmで成膜したサンプルを、49%フッ酸(HF)に30sec浸漬した後、倍率5倍および50倍の光学顕微鏡で表面状態を観察した。
【0032】
その結果、
図3に示すように、TiN膜と低酸素濃度のTiON膜は、フッ酸浸漬によりほとんど変化は見られなかったが、中酸素濃度のTiON膜は明らかな腐食が見られ、高酸素濃度のTiON膜は膜が消失し、その下のSiO
2膜も消失して、銀色のシリコン基板が露出していた。
【0033】
このように、TiON膜は、酸素濃度が低いほど、フッ酸(HF)に対する耐性が良好になることから、フッ酸(HF)が浸漬される下部電極204の表面領域を相対的に酸素濃度が低い第1のTiON膜241とする。
【0034】
第1のTiON膜241の酸素濃度は、フッ酸に対する耐性を良好にする観点から40at.%以下であることが好ましく、誘電体膜(high−k膜)205を構成する酸化物材料の中の酸素が抜けて酸素の欠陥が生じることを抑制する観点から30at.%以上が好ましい。また、第1のTiON膜241の膜厚は、フッ酸に対する耐性を良好にする観点から、0.5〜5nmであることが好ましい。
【0035】
相対的に酸素濃度が高い第2のTiON膜242は、第1のTiON膜241の内側でかつTiN膜243の外側に設けられるが、これは積層膜として構成される下部電極204のストレス変化を小さくするためである。
【0036】
上述したように、DRAMキャパシタを製造する際には、下部電極204の上に誘電体膜(high−k膜)205を成膜する工程があるが、その際には下部電極も、酸化剤として用いる加熱された酸素系ガス(O
2ガスやO
3ガス)に曝される。従来、下部電極として用いられているTiN膜は、このような酸素系ガスによって膜に比較的大きなストレス変化が生じる。膜にストレス変化があると、パターン倒れ等の不都合が生じるおそれがある。そこで、TiON膜の酸素濃度と膜のストレス変化との関係を調査した結果、TiON膜は高酸素濃度であるほどストレス変化が小さいことが確認された。
【0037】
そのことを確認した実験を
図4に示す。
図4は、TiN膜、低酸素濃度のTiON膜(酸素濃度33〜38at.%)、中酸素濃度のTiON膜(酸素濃度46at.%)、高酸素濃度のTiON膜(酸素濃度55at.%)について、膜のストレス変化を示す図である。ここでは、シリコン基板上に、SiO
2膜を形成した後、TiN膜または上記酸素濃度のTiON膜を厚さ10nmで成膜したサンプルについて、300℃で90secのO
3ガスアニールを行い、膜のストレス変化をストレス測定器により測定した。
【0038】
図4に示すように、TiN膜はストレス変化の絶対値が1GPaを超えていたのに対し、TiON膜は酸素濃度が上昇するに従ってストレス変化の絶対値が低下し、高酸素濃度のTiON膜のストレス変化の絶対値は0.3GPaとTiN膜の1/3程度であった。
【0039】
このように、TiON膜は、酸素濃度が高いほど、ストレス変化が小さくなることから、外側の第1のTiON膜241と中央のTiN膜243との間に相対的に酸素濃度が高い第2のTiON膜242を配置することにより、下部電極204の全体のストレス変化を抑制することができる。また、下部電極204は、2層の第1のTiON膜241、2層の第2のTiON膜242、中央のTiN膜243が厚さ方向に対称に設けられた構造を有しているので、膜のストレスが均一となる。
【0040】
第2のTiON膜242の酸素濃度は、ストレス変化を小さくする効果を得る観点から40at.%より高いことが好ましく、50at.%以上であることがより好ましい。また、第2のTiON膜242の膜厚は、ストレス変化を小さくする観点から、0.5〜5nmであることが好ましい。
【0041】
下部電極204は電極として低抵抗であることが好ましく、かつその中央部は酸素が含有される必要はないため、下部電極204の中央部をTiON膜よりも低抵抗の通常のTiN膜243で構成する。TiN膜243の厚さは、第1のTiON膜241および第2のTiON膜242の残部である。下部電極204の全体の厚さは5〜20nmであることが好ましく、このことから、上記第1のTiON膜241および第2のTiON膜242の膜厚を考慮すると、TiN膜243の厚さは3〜10nm程度となる。
【0042】
なお、
図2の例では、下部電極204を、両外側に設けられた2層の第1の
TiON膜241と、それらの内側に形成された2層の第2のTiON膜242とを有する5層構造としたが、
図5に示すように、両外側に設けられた第1のTiON膜241と、中央に設けられた第2のTiON膜242とを有する3層構造であってもよいし、
図6に示すように、
図2の構造における中央のTiN膜243を第2のTiON膜242よりも酸素濃度が低いTiON膜、例えば第1のTiON膜241で置き換えた5層構造であってもよい。
【0043】
<下部電極の製造方法>
次に、以上のように構成されるDRAMキャパシタの下部電極の製造方法について説明する。
【0044】
最初に、下部電極204を製造するための成膜装置について説明する。
図7は下部電極を構成する各膜を成膜する成膜装置の一例を示す概略断面図である。
【0045】
この成膜装置100は、略円筒状のチャンバ1を有している。チャンバ1の内部には、
図1(b)に示す、モールド酸化膜202に多数の凹部203が形成された構造の半導体ウエハ(以下単にウエハと記す)Wを水平に支持するためのステージとして、AlNで構成されたサセプタ2がその中央下部に設けられた円筒状の支持部材3により支持された状態で配置されている。サセプタ2の外縁部にはウエハWをガイドするためのガイドリング4が設けられている。また、サセプタ2にはモリブデン等の高融点金属で構成されたヒーター5が埋め込まれており、このヒーター5はヒーター電源6から給電されることにより被処理基板であるウエハWを所定の温度に加熱する。
【0046】
チャンバ1の天壁1aには、シャワーヘッド10が設けられている。シャワーヘッド10は、ベース部材11とシャワープレート12とを有しており、シャワープレート12の外周部は、貼り付き防止用の円環状をなす中間部材13を介してベース部材11に図示しないネジにより固定されている。シャワープレート12はフランジ状をなし、その内部に凹部が形成されており、ベース部材11とシャワープレート12との間にガス拡散空間14が形成される。ベース部材11はその外周にフランジ部11aが形成されており、このフランジ部11aがチャンバ1の天壁1aに取り付けられている。シャワープレート12には複数のガス吐出孔15が形成されており、ベース部材11には2つのガス導入孔16および17が形成されている。
【0047】
ガス供給機構20は、Ti含有ガスとしてのTiCl
4ガスを供給するTiCl
4ガス供給源21と、窒化ガスとしてのNH
3ガスを供給するNH
3ガス供給源23とを有している。TiCl
4ガス供給源21にはTiCl
4ガス供給ライン22が接続されており、このTiCl
4ガス供給ライン22は第1のガス導入孔16に接続されている。NH
3ガス供給源23にはNH
3ガス供給ライン24が接続されており、このNH
3ガス供給ライン24は第2のガス導入孔17に接続されている。
【0048】
TiCl
4ガス供給ライン22にはN
2ガス供給ライン26が接続されており、このN
2ガス供給ライン26にはN
2ガス供給源25からN
2ガスがキャリアガスまたはパージガスとして供給されるようになっている。
【0049】
NH
3ガス供給ライン24には酸化剤供給ライン28が接続されており、この酸化剤供給ライン28には酸化剤供給源27から、酸化剤として、O
2ガス、O
3ガス、H
2O、NO
2等の酸素含有ガスが供給されるようになっている。酸素含有ガスをプラズマ化して酸化剤として用いてもよい。このとき、酸化剤供給源27から予め酸素含有ガスをプラズマ化したものを酸化剤として供給してもよいし、酸素含有ガスをシャワーヘッド10内でプラズマ化してもよい。また、NH
3ガス供給ライン24にはN
2ガス供給ライン30が接続されており、このN
2ガス供給ライン30にはN
2ガス供給源29からN
2ガスがキャリアガスまたはパージガスとして供給されるようになっている。
【0050】
また、ガス供給機構20は、クリーニングガスであるClF
3ガスを供給するClF
3ガス供給源31も有しており、ClF
3ガス供給源31にはClF
3ガス供給ライン32aが接続されている。このClF
3ガス供給ライン32aは、TiCl
4ガス供給ライン22に接続されている。また、ClF
3ガス供給ライン32aから分岐して、NH
3ガス供給ライン24に接続されるClF
3ガス供給ライン32bが設けられている。
【0051】
TiCl
4ガス供給ライン22、NH
3ガス供給ライン24、酸化剤ライン28、N
2ガス供給ライン26、30、ClF
3ガス供給ライン32aには、マスフローコントローラ33およびマスフローコントローラ33を挟む2つのバルブ34が設けられている。また、ClF
3ガス供給ライン32bには、バルブ34が設けられている。
【0052】
したがって、TiCl
4ガス供給源21からのTiCl
4ガスおよびN
2ガス供給源25からのN
2ガスは、TiCl
4ガス供給ライン22を介してシャワーヘッド10の第1のガス導入孔16からシャワーヘッド10内のガス拡散空間14に至り、またNH
3ガス供給源23からのNH
3ガス、酸化剤供給源27からの酸化剤およびN
2ガス供給源29からのN
2ガスは、NH
3ガス供給ライン24を介してシャワーヘッド10の第2のガス導入孔17からシャワーヘッド10内のガス拡散空間14に至り、これらのガスはシャワープレート12のガス吐出孔15からチャンバ1内へ吐出されるようになっている。
なお、シャワーヘッド10は、TiCl
4ガスとNH
3ガスとが独立してチャンバ1内に供給されるポストミックスタイプであってもよい。
【0053】
なお、Ti含有ガスとしては、TiCl
4以外に、テトラ(イソプロポキシ)チタン(TTIP)、四臭化チタン(TiBr
4)、四ヨウ化チタン(TiI
4)、テトラキスエチルメチルアミノチタン(TEMAT)、テトラキスジメチルアミノチタン(TDMAT)、テトラキスジエチルアミノチタン(TDEAT)等を用いることもできる。また、窒化ガスとしては、NH
3以外に、モノメチルヒドラジン(MMH)を用いることもできる。また、キャリアガスおよびパージガスとして用いるN
2ガスの代わりに、Arガス等の他の不活性ガスを用いることもできる。
【0054】
シャワーヘッド10のベース部材11には、シャワーヘッド10を加熱するためのヒーター45が設けられている。このヒーター45にはヒーター電源46が接続されており、ヒーター電源46からヒーター45に給電することによりシャワーヘッド10が所望の温度に加熱される。ベース部材11の上部に形成された凹部にはヒーター45による加熱効率を上げるために断熱部材47が設けられている。
【0055】
チャンバ1の底壁1bの中央部には円形の穴35が形成されており、底壁1bにはこの穴35を覆うように下方に向けて突出する排気室36が設けられている。排気室36の側面には排気管37が接続されており、この排気管37には排気装置38が接続されている。そしてこの排気装置38を作動させることによりチャンバ1内を所定の真空度まで減圧することが可能となっている。
【0056】
サセプタ2には、ウエハWを支持して昇降させるための3本(2本のみ図示)のウエハ支持ピン39がサセプタ2の表面に対して突没可能に設けられ、これらウエハ支持ピン39は支持板40に支持されている。そして、ウエハ支持ピン39は、エアシリンダ等の駆動機構41により支持板40を介して昇降される。
【0057】
チャンバ1の側壁には、チャンバ1と隣接して設けられた図示しないウエハ搬送室との間でウエハWの搬入出を行うための搬入出口42と、この搬入出口42を開閉するゲートバルブ43とが設けられている。
【0058】
成膜装置100の構成部であるヒーター電源6および46、バルブ34、マスフローコントローラ33、駆動機構41等は、マイクロプロセッサ(コンピュータ)を備えた制御部50に接続されて制御される構成となっている。また、制御部50には、オペレータが成膜装置100を管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボードや、成膜装置100の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等からなるユーザーインターフェース51が接続されている。さらに、制御部50には、成膜装置100で実行される各種処理を制御部50の制御にて実現するためのプログラムや、処理条件に応じて成膜装置100の各構成部に処理を実行させるためのプログラムすなわち処理レシピが格納された記憶部52が接続されている。処理レシピは記憶部52中の記憶媒体52aに記憶されている。記憶媒体はハードディスク等の固定的なものであってもよいし、CDROM、DVD等の可搬性のものであってもよい。また、他の装置から、例えば専用回線を介して処理レシピを適宜伝送させるようにしてもよい。そして、必要に応じて、ユーザーインターフェース51からの指示等にて任意の処理レシピを記憶部52から呼び出して制御部50に実行させることで、制御部50の制御下で、成膜装置100での所望の処理が行われる。
【0059】
次に、以上のような成膜装置100により積層構造の下部電極を製造する方法について説明する。
【0060】
最初に
図8のフロー図により全体のプロセスについて説明する。
ゲートバルブ43を開にして、ウエハ搬送室から搬送装置により(いずれも図示せず)搬入出口42を介してウエハWをチャンバ1内へ搬入し、サセプタ2に載置する(工程1)。そして、ゲートバルブ43を閉じて所定の真空度に調整するとともに、ヒーター5によりウエハWを好ましくは300〜500℃の範囲の所定温度に加熱し、チャンバ1内にN
2ガスを供給してウエハWの予備加熱を行いウエハWの温度を安定させる(工程2)。
【0061】
その後、1層目の第1のTiON膜241の形成(工程3)、1層目の第2のTiON膜242の形成(工程4)、TiN膜243の形成(工程5)、2層目の第2のTiON膜242の形成(工程6)、2層目の第1のTiON膜241の形成(工程7)を連続して行う。
【0062】
その後、チャンバ1内の真空引きを行い(工程8)、ゲートバルブ43を開にして、ウエハ搬送室の搬送装置によりウエハWを搬出する(工程9)。以上により、1枚のウエハWに対する下部電極204の形成が終了する。
【0063】
次に、第1のTiON膜241および第2のTiON膜242の成膜方法の詳細について説明する。
【0064】
第1のTiON膜241および第2のTiON膜242の成膜に際しては、Ti含有ガスであるTiCl
4ガスの供給と、窒化ガスであるNH
3ガスの供給とをチャンバ1のパージを挟んで交互に複数回(X回)繰り返した後、酸化剤を供給し、その後チャンバ1をパージするサイクルを1サイクルとし、このサイクルを複数サイクル(Yサイクル)繰り返す。
【0065】
この成膜手法の一例について
図9のタイミングチャートおよび
図10のフロー図を参照して説明する。
これらの図に示すように、最初に、TiCl
4ガス供給源21からTiCl
4ガスをチャンバ1に供給してTiCl
4ガスを吸着させ(ステップS1)、次いで、TiCl
4ガスの供給を停止し、N
2ガスによりチャンバ1内をパージし(ステップS2)、次いで、NH
3ガス供給源23からNH
3ガスをチャンバ1に供給して吸着したTiCl
4と反応させてTiNを形成し(ステップS3)、次いで、NH
3ガスを停止し、N
2ガスによりチャンバ1内をパージし(ステップS4)、これらステップS1〜S4をX回繰り返す。X回繰り返したら、酸化剤供給源27から酸化剤(例えばO
2ガス)をチャンバ1に供給して酸化処理を行い(ステップS5)、次いでチャンバ1内をパージする(ステップS6)。このサイクルを1サイクルとし、これをYサイクル繰り返すことにより、所望の厚さのTiON膜を形成する。
【0066】
このときの成膜状態を
図11に示す。この図に示すように、ステップS1〜S4をX回繰り返すことにより所定膜厚の単位TiN膜101が成膜され、その後ステップS5の酸化処理を行うことにより単位TiN膜101が酸化される。これを1サイクルとしてYサイクル行うことにより所定膜厚のTiON膜が形成される。
【0067】
このときステップS1〜S4の繰り返し回数であるXによりTiON膜の酸素量を調整することができる。すなわち、Xを減らすと酸化の頻度が増えるので膜中の酸素取り込み量が増え、逆にXを増やすと膜中の酸素取り込み量は減る。
【0068】
したがって、酸素濃度が相対的に低い第1のTiON膜241の1層目については、Xを比較的大きくして上記シーケンスで成膜を行い、その後、酸素濃度が相対的に高い第2のTiON膜242の1層目を成膜する際には、Xを減らして同様のシーケンスで成膜を行えばよい。
【0069】
また、TiON膜の酸素濃度は、Xを調整するのみならず、酸化処理の時間や酸化剤の流量で調整することもできる。したがって、TiON膜の酸素濃度は、Xの調整、酸化処理の時間、および酸化剤の流量の少なくとも1つにより調整することができる。このことから、第1のTiON膜241を成膜した後、第2のTiON膜242の1層目を成膜する際には、Xを減少させること、酸化処理の時間を増加させること、および酸化剤の流量を増加させることの少なくとも一つを行えばよい。
【0070】
なお、Ti原料ガスとしてTiCl
4ガス、窒化ガスとしてNH
3ガス、キャリアガス・パージガスとしてN
2ガス、酸化剤としてO
2ガスを用いた場合のTiON膜の成膜条件の好ましい範囲は以下の通りである。
処理温度(サセプタ温度):300〜500℃
チャンバ内圧力:13.33〜1333Pa(0.1〜10Torr)
TiCl
4ガス流量:10〜200mL/min(sccm)
NH
3ガス流量:1000〜10000mL/min(sccm)
N
2ガス流量:1000〜30000mL/min(sccm)
ステップS1〜S4の1回の供給時間:0.01〜3sec
O
2ガス流量:10〜3000mL/min(sccm)
O
2ガス供給時間:0.1〜60sec
【0071】
第2のTiON膜242の1層目を形成した後にTiN膜243を形成する際には、
図12のフロー図に示すように、最初に、TiCl
4ガス供給源21からTiCl
4ガスをチャンバ1に供給してTiCl
4ガスを吸着させ(ステップS11)、次いで、TiCl
4ガスの供給を停止し、N
2ガスによりチャンバ1内をパージし(ステップS12)、次いで、NH
3ガス供給源23からNH
3ガスをチャンバ1に供給して吸着したTiCl
4と反応させてTiNを形成し(ステップS13)、次いで、NH
3ガスを停止し、N
2ガスによりチャンバ1内をパージし(ステップS14)、これらステップS11〜S14を所定回繰り返せばよい。ステップS11〜S14は、上記ステップS1〜S4と同様の条件で行うことができる。
【0072】
その後、2層目の第2のTiON膜242および2層目の第1のTiON膜241を形成する際にも、上述した1層目の第1のTiON膜241および1層目の第2のTiON膜242と同様に、繰り返し回数X等を調整して所望の酸素濃度で形成することができる。
【0073】
図5および
図6の構造の下部電極204を形成するに際しても、上述した成膜手法により、繰り返し回数X等を調整して膜の酸素濃度を調整し、所望の厚さで第1のTiON膜241および第2のTiON膜242を成膜すればよい。
【0074】
<他の適用>
なお、本発明は、上記実施形態に限定されることなく種々変形可能である。例えば、下部電極の構造は、
図2、
図5、
図6のものに限らず、両方の最外側に相対的に酸素濃度が低いTiON膜を有し、その内側に相対的に酸素濃度が高いTiON膜を有する積層膜であればよく、中央部はTiN膜であっても種々の濃度のTiON膜であってもよい。また、
図7の成膜装置は、あくまで例示であって、本発明の下部電極は
図7の装置に限らず製造することができる。