特許第6576273号(P6576273)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6576273
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】冷凍麺塊の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/109 20160101AFI20190909BHJP
【FI】
   A23L7/109 C
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-43915(P2016-43915)
(22)【出願日】2016年3月7日
(65)【公開番号】特開2017-158453(P2017-158453A)
(43)【公開日】2017年9月14日
【審査請求日】2018年7月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000226976
【氏名又は名称】日清食品ホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】花村 学
(72)【発明者】
【氏名】藤生 淳
【審査官】 北村 悠美子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−081163(JP,A)
【文献】 特開2015−033428(JP,A)
【文献】 特開平04−262729(JP,A)
【文献】 特開2001−286267(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 7/109−7/139
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍麺塊の製造方法であって、
加熱調理された麺線を冷凍用トレーに充填する充填工程と、
前記充填工程の後、トレーに充填された麺塊をトレー内で櫛歯軸を中心に水平方向に櫛歯を回転させることによりす麺塊均し工程と、
前記麺塊均し工程の後、押圧する押圧工程と、
前記押圧工程の後、麺塊を冷凍する冷凍工程と、を含むことを特徴とする冷凍麺塊の製造方法。
【請求項2】
前記冷凍用トレーの形状が略四角形であり、短辺と長辺の比が1:1〜1:1.5であることを特徴とする請求項1記載の冷凍麺塊の製造方法。
【請求項3】
前記充填工程において前記冷凍用トレーの底面積に対する麺線の充填量が1.5g/cm2〜2.6g/cm2であることを特徴とする請求項1または2何れか一項記載の冷凍麺塊の製造方法。
【請求項4】
前記冷凍麺塊がうどんであることを特徴とする請求項1〜3何れか一項記載の冷凍麺塊の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍麺塊の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍麺は、一般的に、製麺した生麺または乾麺を茹で上げた後、水洗冷却を行い、冷凍用容器(トレー)に麺を投入し、整形後、急速冷凍して製造される。整形する主な目的としては、トレーに投入した麺の偏りを均し、できるだけ形状が均質な冷凍麺塊を作製することにあり、形状が均質な冷凍麺塊を作製することで、冷凍時の冷凍ムラや調理時の調理ムラを低減できるだけでなく、冷凍麺塊を包装する時に安定して包装することが可能となる。
【0003】
冷凍麺塊を作製する際に、冷凍麺塊をできるだけコンパクトにすることで、包装する資材を少なくすることができ、また、保管時に省スペース化できるため、冷凍麺塊をコンパクトにする技術が提案されている(例えば特許文献1〜4)。
【0004】
特許文献1には、板状体で、枠内又は開口部を有する容器内に充填された加熱調理済みの麺塊の上面又は開口部面を均しつつ抑えることにより、麺塊を圧縮し、板状体で圧縮したまま冷却硬化させ、圧縮形状を安定させ、圧縮形状安定後に、麺塊から板状体を除き、圧縮形状の麺塊を凍結する圧縮された冷凍麺塊の製造方法が記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、茹で上げ麺を容器に投入する工程と、麺が投入された容器を振動させる振動させる振動工程と、容器に投入された状態で麺を冷凍する冷凍工程と、冷凍工程において冷凍された麺を容器から取り出す取り出し工程と、を含むことを特徴とする冷凍麺の成形方法が記載されている。
【0006】
また、特許文献3には、トレー中央部から周辺部に向って拡がる複数の爪を有する延伸手段と、麺分塊の上表面のほぼ全面にわたって押圧する押圧手段とから成り、延伸手段の爪を麺分塊中央部に装入した後、トレー周辺部に向けて拡開させて麺分塊を延伸し、次に圧延手段により表面を平らかにする麺線ならし装置が記載されている。
【0007】
また、特許文献4には、加熱調理済みの一定量の麺で構成される麺塊を、水中の麺塊形成トレーへ落下させることにより投入し、水中で振動若しくは掻き分け手段、及び/又は水流を用いて均し、均されたトレー入り麺塊を冷凍し、冷凍麺塊を得る工程を含む、冷凍麺塊の製造方法が記載されている。
【0008】
これらの方法は、麺塊が均質に均され、コンパクト化された冷凍麺塊を製造できる優れた方法であるが、よりコンパクトにするために麺塊上部から麺塊を強く押圧し圧縮する場合、麺線が絡み合った状態で圧縮されるため、交錯した部分の麺線が凹み、食感が均質にならないといった課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第5836580号公報
【特許文献2】特許第4643497号公報
【特許文献3】特許第3030521号公報
【特許文献4】特開2013−34406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、コンパクトで、麺線の凹みが少なく、食感が均質な冷凍麺塊を製造することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明者らは、冷凍麺塊をよりコンパクト化したいと考えたが、従来の麺塊の均し方法で冷凍用トレーに投入された麺塊を均した後、強く押圧し圧縮すると麺線が凹み、食感が均質にならないため、強く押圧できず、冷凍麺塊をコンパクト化できなかった。そこで鋭意研究した結果、従来の方法で麺塊を均した後に押圧するのではなく、麺線の方向性を整えて麺線が交錯する部分を極力なくした麺塊を作製した後に、麺塊の上部から押圧することで、コンパクトで、麺線の凹みが少なく、食感が均質な冷凍麺塊を製造できることを見出し、本発明に至った。
【0012】
すなわち、冷凍麺塊の製造方法であって、加熱調理された麺線を冷凍用トレーに充填する充填工程と、前記充填工程の後、トレーに充填された麺塊をトレー内で櫛歯を回転させることにより麺塊を均す麺塊均し工程と、前記麺塊均し工程の後、押圧する押圧工程と、前記押圧工程の後、麺塊を冷凍する冷凍工程と、を含むことを特徴とする冷凍麺塊の製造方法、である。
【0013】
また、本発明で使用する冷凍用トレーは、形状が略四角形であり、短辺と長辺の比が1:1〜1:1.5であることが好ましい。
【0014】
また、本発明の充填工程においては、冷凍用トレーの底面積に対する麺線の充填量が1.5g/cm〜2.6g/cmとなるように麺線を冷凍用トレーに充填することが好ましい。
【0015】
また、本発明における冷凍麺塊は麺に厚みがあるうどんが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、コンパクトで、麺線の凹みが少なく、調理時の食感が均質な冷凍麺塊を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る麺塊均し工程及び押圧工程の説明図である。
図2】本発明の実施形態である実施例1−1の麺塊均し工程後の冷凍用トレー上部から撮影した写真である。
図3】本発明の実施形態である実施例1−1の冷凍麺塊の上部から撮影した写真である。
図4】本発明の実施形態である実施例1−1の冷凍麺塊の下部から撮影した写真である。
図5】本発明の比較例1−1の麺塊均し工程後の冷凍用トレー上部から撮影した写真である。
図6】本発明の比較例1−1の冷凍麺塊の上部から撮影した写真である。
図7】本発明の比較例1−1の冷凍麺塊の下部から撮影した写真である。
図8】本発明の実施形態である実施例2−1の麺塊均し工程後の冷凍用トレー上部から撮影した写真である。
図9】本発明の実施形態である実施例2−1の冷凍麺塊の上部から撮影した写真である。
図10】本発明の実施形態である実施例2−1の冷凍麺塊の下部から撮影した写真 である。
【符号の説明】
【0018】
1 冷凍用トレー
2 麺塊
3 櫛歯
4 櫛歯軸
5 櫛歯ピン
6 押圧板
A 麺塊均し工程前
B 麺塊均し工程時
C 押圧工程前
D 押圧工程時
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の記載に限定されるものではない。
なお、本発明において製造する冷凍麺塊の種類は、特に限定されず、通常、当技術分野で知られるいかなるものであってもよい。例えば、中華麺、焼きそば、うどん、そば、パスタ等が挙げられる。
【0020】
1.原料配合
本発明に係る冷凍麺には、通常の麺類の原料が使用できる。すなわち、主原料粉としては、小麦粉(デュラム粉を含む)、そば粉及び米粉等の穀粉並びに馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉及びコーンスターチ等の各種澱粉を単独で使用しても、または混合して使用してもよい。前記澱粉として、生澱粉、α化澱粉並びにアセチル化澱粉、エーテル化澱粉及び架橋澱粉等の加工澱粉等を使用することもできる。これら主原料粉に対して、副原料として麺類の製造において一般に使用されている食塩やアルカリ剤、リン酸塩類、各種増粘剤、麺質改良剤、食用油脂及びカロチン色素等の各種色素等を添加することができる。これらは、主原料粉と一緒に粉体で添加しても、練り水に溶かすか懸濁させて添加してもよい。
【0021】
2.製麺工程
前記原料を混練することによって麺生地(ドウ)を製造する。より具体的には、小麦粉や澱粉等の主原料粉に、麺質改良剤等の副原料粉を加え粉体混合した後、さらに水に食塩、アルカリ剤等の副原料を溶解させた練り水を加え、ミキサーを用いて各原料が均一に混ざるように良く混捏してドウを製造する。このとき、真空ミキサーなどにより減圧下でミキシングを行ってもよい。
【0022】
次いで作製したドウから麺線を作製する。作製方法としては、常法に従って行えばよく、エクストルーダ等を用いてドウを押し出して麺線を作製する方法や、ドウを複合等により麺帯化した後、ロールにより複数回圧延し、所定の麺帯厚とした後、切刃と呼ばれる切出しロールまたは包丁切りにより麺帯を切出し、麺線を作製する方法が挙げられる。麺帯を作製してから麺線を切り出す場合、エクストルーダを用いて麺帯を作製した後、圧延、切出しを行ってもよく、また、複数の麺帯を合わせて多層構造を持つ麺帯を作製した後、圧延、切出しを行ってもよい。エクストルーダ等を用いて押出し麺帯または押出し麺線を作製する場合は、減圧下で行うことが好ましい。次いで作製した麺線を適当な長さで切断し、生麺とする。
【0023】
上記の製麺方法は、生麺について記載したが、本発明においては生麺だけでなく市販の乾麺も使用することができる。
【0024】
3.調理工程
次いで作製した生麺または乾麺をボイル調理または蒸し調理する。ボイル調理を行う場合、ボイル温度及びボイル時間は、麺の種類、麺の太さにより好ましい条件が異なるため、目的とする食感に合わせて、好ましい温度を適宜設定すればよい。ボイル温度については、95〜100℃程度である。また、ボイル時間については、調理時の再加熱があるため、中華麺であれば通常20秒〜5分程度であり、うどんであれば4分〜20分程度である。蒸し調理を行う場合、飽和蒸気だけでなく過熱蒸気も用いることができる。また、蒸し工程中または/及び蒸後に水分を付与することにより、麺線同士の結着を防止し、麺線の水分を増やすこともできる。調理された麺は必要により、水洗冷却や調味液浸漬を行う。
【0025】
4.充填工程
調理された麺線を冷凍用トレーに充填する。充填方法は特に限定はなく、例えば冷凍用トレーの上方より、調理された麺線を筒状のシュートを通して落下させ、充填する方法が挙げられる。
【0026】
冷凍用トレーに充填する麺線の量は、後述する麺塊均し工程において、少なすぎると麺線に方向性を持たせることによる効果が少なく、多すぎても麺線に方向性を持たせることが難しくなるため、冷凍用トレーの底面の面積に対して好ましくは1.5〜2.6g/cm、より好ましくは1.8〜2.5g/cm、さらに好ましくは2.1〜2.4g/cmとなるように充填することが好ましい。
【0027】
5.麺塊均し工程
【0028】
冷凍用トレーに充填された麺塊を麺線同士が出来るだけ交錯しないよう方向性を持たせるため、櫛歯を回転させて麺塊を均すことにより、麺線の方向性が整った麺塊を作製することができる。具体的な麺塊の均し方法は、例えば、図1で示すように櫛歯3を櫛歯軸4が冷凍用トレー中央の位置となるように櫛歯ピン5を冷凍用トレー内に入れ、櫛歯軸4を中心に回転させることにより、櫛歯ピン5に麺線が絡み、回転方向に麺線の方向性が整った麺塊を形成することが出来る。この時、櫛歯ピン5の本数が多いほど麺線が櫛歯ピン5に絡みやすいが、櫛歯ピン5が麺塊から抜けにくくなるため、櫛歯ピン5の本数としては好ましくは6本以下、さらに好ましくは2〜4本である。
【0029】
冷凍用トレーの形状については、特に限定はしないが、櫛歯ピン5に絡まって回転する麺線が、冷凍用トレー壁面にぶつかる際の摩擦により麺線の方向性が整いやすくなるため、円形のトレーでは、麺線が冷凍用トレーにぶつかる際の摩擦が少なく、空転して麺線の方向性が整い難く、好ましくは略四角形の冷凍用トレーを用いることが好ましい。略四角形とは、図2で示すように四角形の角の部分が丸まっていてもよく、概ね形状が四角形であるものを指す。また、略四角形の形状は、長辺が短辺より長くなりすぎると、麺塊を後述する押圧工程で冷凍用トレー全体に押し広げることが難しくなる。そのため、短辺と長辺の比が1:1〜1:1.5であることが好ましく、より好ましくは1:1〜1:1.2である。
【0030】
6.押圧工程
図1で示すように、麺線の方向性を整えた麺塊を冷凍用トレーの形状に合わせた押圧板6や押圧棒などを用いて、麺塊上方から下方に向けて押圧し、麺塊を圧縮する。最終的な押圧の圧力としては、60〜80g/cm程度、時間としては1〜10秒程度、押圧すればよい。本発明では、麺線の方向性が整っているため、麺線同士が交錯している部分が少なく、強く押圧しても麺線が凹んだ部分が少なく抑えられる。
【0031】
7.冷凍工程
次いで押圧した麺塊を、速やかに冷凍する。冷凍方法は、スパイラルフリーザーやトンネルフリーザー等により−30〜−60℃程度の温度で急速凍結することが好ましい。
【0032】
8.その他工程
次いで凍結した冷凍麺塊を冷凍用トレーから取り出す。取り出された冷凍麺塊は、個包装または複数個並べて包装されて、必要により別添スープを添付して再び外包装されて冷凍麺として販売される。
【0033】
以上のように、麺線の方向を整えて麺線が交錯する部分を極力少なく均した麺塊を作製した後に、麺塊の上部から押圧することで、コンパクトで、麺線の凹みが少なく、調理時の食感が均質な冷凍麺塊を製造できる。
なお、本発明に係る冷凍麺塊としては、冷凍麺塊が嵩高くなりやすい麺幅が広く、厚みのあるうどんがこのましい。
【0034】
以下に実施例を挙げて本実施形態をさらに詳細に説明する。
【実施例】
【0035】
<実験1>麺塊の均し方法との比較
(実施例1−1)
中力粉1700gに酢酸澱粉300gを粉体混合し、食塩96gを水860gに溶解した練水を加え、真空ミキサーにて常圧下で4分間混捏した後、減圧下で8分間混捏し、ドウを作製した。
【0036】
作製したドウを複合して麺帯を作製し、ロール圧延にて2.75mmまで麺帯を圧延した後、9番薄刃のロール切刃にて麺帯を切断し、麺線とした後、約30cmとなるように麺線をカットした。
【0037】
カットした麺線を100℃の沸騰水で11分30秒間ボイルした。
【0038】
ボイルした麺線に対して水洗冷却を1分30秒行い、四角形の冷凍用トレー(底面9.15x13.73cm)に200g充填し、図1で示したような2本ピンを有する櫛歯(櫛歯間4.5cm)の軸を冷凍用トレーの中央の位置に配置し、麺塊上部から櫛歯のピンを冷凍用トレー内に入れ、2回転して麺塊均した。
【0039】
次いで均した麺塊を図1で示したような冷凍用トレーの内側に入るように設計した押圧板で徐々に圧力を加えて麺塊を冷凍用トレー全体に押し広げるように押圧した。この時、最終の圧力は70g/cmとした。
【0040】
次いで押圧した麺塊を冷凍用トレーごと−35℃のエアブラスト式の凍結庫に入れ30分凍結し、凍結後、冷凍用トレーから冷凍麺塊を取り出し、冷凍麺塊サンプルを作製した。
【0041】
冷凍麺塊サンプルの体積(cm)を算出した。算出方法は、麺塊上の凸部(凹んでいない部分)の任意の5点の短辺、長辺、高さを測定し、その平均値をサンプルの短辺、長辺、高さとし、短辺、長辺、高さを掛け合わせ冷凍麺塊サンプルの体積とした。さらに冷凍麺塊サンプル3検体の体積を測定し、平均値を試験区の冷凍麺塊の体積とした。
【0042】
また、冷凍麺塊サンプルの密度(g/cm)を算出した。密度は、冷凍麺塊サンプルの重量を算出した冷凍麺塊の体積で割り求めた。さらに体積を求めた冷凍麺塊サンプル3検体の密度の平均値を試験区の冷凍麺塊の密度とした。
【0043】
(比較例1−1)
冷凍用トレーに充填するまでは、実施例1−1の方法と同様に行い、充填した麺塊を通常通り、エアで軽く均した後、実施例1−1と同様に押圧、冷凍し、冷凍麺塊サンプルを作製した。また、冷凍麺塊サンプルならびに試験区の体積、密度も実施例1−1と同様に算出した。
【0044】
(比較例1−2)
冷凍用トレーに充填するまでは、実施例1−1の方法と同様に行い、充填した麺塊を通常通り、エアで軽く均した後、特許文献1と同様の方法により、重り200gを載せたプレス板を麺塊の上に載せ3分間、−35℃で凍結した後、プレス板を取り出し、再び27分間−35℃で凍結し、冷凍麺塊サンプルを作製した。また、冷凍麺塊サンプルならびに試験区の体積、密度も実施例1−1と同様に算出した。
【0045】
(比較例1−3)
冷凍用トレーに充填するまでは、実施例1−1の方法と同様に行い、充填した麺塊を特許文献2に記載されているように冷凍用トレーの長辺方向及び短辺方向にトレーを振動させた後、施例1−1と同様に押圧、冷凍し、冷凍麺塊サンプルを作製した。また、冷凍麺塊サンプルならびに試験区の体積、密度も実施例1−1と同様に算出した。
【0046】
(比較例1−4)
冷凍用トレーに充填するまでは、実施例1−1の方法と同様に行い、充填した麺塊を特許文献3に記載されているように冷凍用トレー中央からトレーの4隅方向へ4つのピンを押し広げるように動かし、麺塊を均した後、実施例1−1と同様に押圧、冷凍し、冷凍麺塊サンプルを作製した。また、冷凍麺塊サンプルならびに試験区の体積、密度も実施例1−1と同様に算出した。
【0047】
(比較例1−5)
調理した麺を作製するまでは、実施例1−1の方法と同様に行い、特許文献4に記載されているように水中に冷凍用トレーを置き、そこに麺線を落下させ充填した後、水流により麺塊を均した後、水切りをし、実施例1−1と同様に押圧、冷凍し、冷凍麺塊サンプルを作製した。また、冷凍麺塊サンプルならびに試験区の体積、密度も実施例1−1と同様に算出した。
【0048】
各試験区の冷凍麺サンプルを鍋で3分間茹で調理し、麺の食感に影響を及ぼす麺の凹みについて評価した。評価は、3段階で行い、凹みがほとんどなく均質なものを○、やや凹んでいる部分があるものを△、凹んでいる部分が目立つものを×とした。
【0049】
実験1の各試験区の体積、麺密度、麺の凹みについて下記表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
上記の結果より、麺線の方向性を整えて麺線が交錯する部分を極力少なく均した麺塊を作製した後に、麺塊の上部から押圧することで、コンパクトで、麺線の凹みが少なく、調理時の食感が均質な冷凍麺塊を製造できることがわかる。
【0052】
比較例1−2は、密度が一番高くコンパクトであるが麺が大きく凹んでいる部分が目立った。他の比較例においても、密度を高めるために押圧を強くすると麺が凹むことが推測される。
【0053】
<実験2>リテーナの形状について
(実施例2−1)
冷凍用トレーを底面9.15x9.15cm(短辺:長辺=1:1)とする以外は実施例1−1の方法で冷凍麺塊サンプルを作製した。また、冷凍麺塊サンプルならびに試験区の体積、密度も実施例1−1と同様に算出した。
【0054】
(実施例2−2)
冷凍用トレーを底面9.15x10.07cm(短辺:長辺=1:1.1)とする以外は実施例1−1の方法で冷凍麺塊サンプルを作製した。また、冷凍麺塊サンプルならびに試験区の体積、密度も実施例1−1と同様に算出した。
【0055】
(実施例2−3)
冷凍用トレーを底面9.15x10.98cm(短辺:長辺=1:1.2)とする以外は実施例1−1の方法で冷凍麺塊サンプルを作製した。また、冷凍麺塊サンプルならびに試験区の体積、密度も実施例1−1と同様に算出した。
【0056】
(実施例2−4)
冷凍用トレーを底面9.15x11.90cm(短辺:長辺=1:1.3)とする以外は実施例1−1の方法で冷凍麺塊サンプルを作製した。また、冷凍麺塊サンプルならびに試験区の体積、密度も実施例1−1と同様に算出した。
【0057】
(実施例2−5)
冷凍用トレーを底面9.15x12.81cm(短辺:長辺=1:1.4)とする以外は実施例1−1の方法で冷凍麺塊サンプルを作製した。また、冷凍麺塊サンプルならびに試験区の体積、密度も実施例1−1と同様に算出した。
【0058】
実験2で作製した各試験区の冷凍麺塊サンプルの麺の凹みについて実験1と同様に評価を行った。
【0059】
実験2の各試験区の体積、麺密度、麺の凹みについて下記表2に示す。
【0060】
【表2】
【0061】
短辺と長辺の比が近づくほど密度が高くなりコンパクトな冷凍麺塊を作ることが出来ることがわかる。特に短辺と長辺の比が1:1〜1:1.2程度となると麺塊を押圧工程で、全体に押し延ばしやすくなり、密度が高くなるものと考える。
【0062】
<実験3>充填量について
(実施例3−1)
充填量を125gとする以外は実施例2−1の方法で冷凍麺塊を製造した。また、冷凍麺塊サンプルならびに試験区の体積、密度も実施例1−1と同様に算出した。
【0063】
(実施例3−2)
充填量を135gとする以外は実施例2−1の方法で冷凍麺塊を製造した。また、冷凍麺塊サンプルならびに試験区の体積、密度も実施例1−1と同様に算出した。
【0064】
(実施例3−3)
充填量を150gとする以外は実施例2−1の方法で冷凍麺塊を製造した。また、冷凍麺塊サンプルならびに試験区の体積、密度も実施例1−1と同様に算出した。
【0065】
(実施例3−4)
充填量を175gとする以外は実施例2−1の方法で冷凍麺塊を製造した。また、冷凍麺塊サンプルならびに試験区の体積、密度も実施例1−1と同様に算出した。
【0066】
(実施例3−5)
充填量を210gとする以外は実施例2−1の方法で冷凍麺塊を製造した。また、冷凍麺塊サンプルならびに試験区の体積、密度も実施例1−1と同様に算出した。
【0067】
(実施例3−6)
充填量を220gとする以外は実施例2−1の方法で冷凍麺塊を製造した。また、冷凍麺塊サンプルならびに試験区の体積、密度も実施例1−1と同様に算出した。
【0068】
実験3で作製した各試験区の冷凍麺塊サンプルの麺の凹みについて実験1と同様に評価を行った。
【0069】
実験3の各試験区の体積、麺密度、麺の凹みについて下記表3に示す。
【0070】
【表3】
【0071】
実験3の結果より、冷凍用トレーの面積当たりの充填量が1.5〜2.6g/cmの範囲であれば、比較例1−1で示した従来法よりもコンパクトな麺を作ることが出来る。ただし、冷凍用トレーの底面積当たりの充填量が少なくなればなるほど、櫛歯に絡む麺線の数が少なくなり、本発明のコンパクト化する効果が得られにくくなる。逆に冷凍用トレーの底面積当たりの充填量が多くなりすぎると麺線の量が多すぎて櫛歯に麺線が絡み過ぎ、麺線の方向性が整い難しく、本発明のコンパクト化だけでなく麺線の凹みを抑える効果も得られ難くなる。より好ましくは、冷凍用トレーの底面積当たりの充填量が1.8〜2.5g/cmである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10