特許第6576345号(P6576345)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6576345サブミクロン銀粒子インク組成物、プロセスおよび応用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6576345
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】サブミクロン銀粒子インク組成物、プロセスおよび応用
(51)【国際特許分類】
   C08L 27/04 20060101AFI20190909BHJP
   C08K 3/08 20060101ALI20190909BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20190909BHJP
   C09D 127/04 20060101ALI20190909BHJP
   C09D 5/24 20060101ALI20190909BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20190909BHJP
【FI】
   C08L27/04
   C08K3/08
   C08K3/04
   C09D127/04
   C09D5/24
   H01B1/22 Z
【請求項の数】21
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-534583(P2016-534583)
(86)(22)【出願日】2014年7月8日
(65)【公表番号】特表2016-536407(P2016-536407A)
(43)【公表日】2016年11月24日
(86)【国際出願番号】US2014045729
(87)【国際公開番号】WO2015023370
(87)【国際公開日】20150219
【審査請求日】2017年7月7日
(31)【優先権主張番号】61/866,825
(32)【優先日】2013年8月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514056229
【氏名又は名称】ヘンケル アイピー アンド ホールディング ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(73)【特許権者】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 克博
(72)【発明者】
【氏名】シア、 ボー
(72)【発明者】
【氏名】オルデンゼイル、 ルドルフ ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】チェン、 ジャンピン
(72)【発明者】
【氏名】ドレーゼン、 ギュンター
【審査官】 水野 明梨
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/026033(WO,A1)
【文献】 特表2012−509965(JP,A)
【文献】 特開2012−184407(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00−13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
100〜1000ナノメートルの範囲の粒子サイズを有する安定化サブミクロン銀粒子、塩化ビニリデンおよび/または塩化ビニルを含むモノマーを重合して得られるハロゲン含有熱可塑性樹脂および
任意に有機希釈剤を含む組成物。
【請求項2】
前記安定化サブミクロン銀粒子が、200〜800ナノメートルの範囲の粒子サイズを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ポリビニルアルコール、ポリ(N−ビニル−2−ピロリドン)、アラビアゴム、α−メタクリル酸、11−メルカプトウンデカン酸またはそのジスフィルド誘導体、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、ステアリン酸、パルミチン酸、オクタン酸、デカン酸、ポリエチレングリコールおよびその誘導体、ポリアクリル酸およびアミノ修飾ポリアクリル酸、2−メルカプトエタノール、澱粉またはそれらの任意の2種以上の混合物である、キャッピング剤をさらに含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記銀粒子が、組成物の20〜95重量%の範囲にある、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
さらに非銀の導電性充填材を5重量%まで含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記非銀の導電性充填材が、カーボンブラック、黒鉛もくしはカーボンナノチューブである、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
モノマーが、塩化ビニリデンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記熱可塑性樹脂が、ビニル共重合体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記熱可塑性樹脂が、組成物の0.1〜15重量%の範囲にある、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
さらに0.1〜5重量%の熱硬化性樹脂を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記熱硬化性樹脂が、エポキシ官能化樹脂、アクリレート、シアン酸エステル、シリコーン、オキセタン、マレイミドまたはそれらの任意の2種以上の混合物である、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
さらに酸性成分を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記酸性成分が、リン酸、ビニルリン酸、ポリリン酸、ギ酸、酢酸、クロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、シュウ酸、オレイン酸、安息香酸、p−トルエンスルホン酸またはそれらの任意の2種以上の混合物である、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記酸性成分が、組成物の0.1〜5重量%の範囲にある、請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
その上に導電性層を有する透明基材を含むタッチパネルディスプレイであって、前記導電性層が、請求項1に記載の組成物の硬化層を含むタッチパネルディスプレイ。
【請求項16】
導電性ネットワークを作製する方法であって、前記方法が、
請求項1に記載の組成物を適する基材に塗布すること、および
その後前記組成物を焼結することを含む方法。
【請求項17】
前記焼結が、150℃以下の温度で、0.5〜30分の範囲の時間行われる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
請求項16に記載の方法によって作製される、導電性ネットワーク。
【請求項19】
1×10−4Ω・cm以下の抵抗率を有する焼結されたサブミクロン銀粒子の配列を含む、請求項18に記載の導電性ネットワーク。
【請求項20】
さらに導電性ネットワークのための基材を含み、前記導電性ネットワークおよび前記基材間の接着が、テスト方法D 3359−97に従ったASTM標準クロスカットテープテストによって決定され、少なくともレベル1Bである、請求項19に記載の導電性ネットワーク。
【請求項21】
100〜1000ナノメートルの範囲の粒子サイズを有する銀粒子を非金属基材に接着させる方法であって、前記方法が、
請求項1に記載の組成物を前記基材に塗布すること、および
その後前記組成物を焼結すること
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀含有導電性インク組成物およびそれら多様な用途に関する。一態様では、本発明は、安定化サブミクロン銀粒子を含む組成物に関する。別の態様では、本発明は、導電性ネットワークおよびその作製方法に関する。さらに他の態様では、本発明は、サブミクロン銀粒子を非金属基材に接着する方法に関する。
【発明の概要】
【0002】
本発明によれば、基材への接着、サブミクロン粒子安定性、比較的低温での焼結力および良好な電気伝導性をバランス良く兼ね備える導電性インク組成物を提供する。一態様では、本発明の組成物から作製される導電性ネットワークを提供する。特定の態様では、そのような導電性ネットワークは、タッチパネルディスプレイでの使用に適する。特定の態様では、本発明は、非金属基材にサブミクロン銀粒子を接着させる方法に関する。特定の態様では、本発明は、サブミクロン銀粒子が充填された熱可塑性樹脂の非金属基材への接着性を改善するための方法に関する。
【0003】
本発明によれば、安定化サブミクロン銀粒子、熱可塑性樹脂および任意に有機希釈剤を含む組成物を提供する。
【0004】
安定化サブミクロン銀粒子は、典型的には、組成物の少なくとも約20重量%〜約95重量%を構成する。一実施態様では、安定化サブミクロン銀粒子は、本発明の組成物の約30〜約90重量%を構成する。一実施態様では、安定化サブミクロン銀粒子は、本発明の組成物の約50〜約80重量%の範囲を構成する。
【0005】
本発明の実施に使用するために考慮される安定化サブミクロン銀粒子は、典型的には、約100ナノメートル〜約1マイクロメータ(すなわち1000ナノメートル)の範囲の粒子サイズを有する。一実施態様では、本明細書での使用に考慮されるサブミクロン銀粒子は、少なくとも200ナノメートルの粒子サイズを有する。本発明の他の実施態様では、本明細書での使用に考慮されるサブミクロン銀粒子は少なくとも250ナノメートルの粒子サイズを有する。一実施態様では、本明細書での使用に考慮されるサブミクロン銀粒子は少なくとも300ナノメートルの粒子サイズを有する。このように一実施態様では、約200〜800nmの範囲の粒子サイズを有するサブミクロン銀粒子が、本明細書での使用に考えられる。一実施態様では、約250〜800nmの範囲の粒子サイズを有するサブミクロン銀粒子が本明細書での使用に考えられる。一実施態様では、約300〜800nmの範囲の粒子サイズを有するサブミクロン銀粒子が、本明細書での使用に考えられる。一実施態様では、約200〜600nmの範囲の粒子サイズを有するサブミクロン銀粒子が、本明細書での使用に考えられる。一実施態様では、約250〜600nmの範囲の粒子サイズを有するサブミクロン銀粒子が、本明細書での使用に考えられる。一実施態様では、約300〜600nmの範囲の粒子サイズを有するサブミクロン銀粒子が、本明細書での使用に考えられる。一実施態様では、約200〜500nmの範囲の粒子サイズを有するサブミクロン銀粒子が、本明細書での使用に考えられる。一実施態様では、約250〜500nmの範囲の粒子サイズを有するサブミクロン銀粒子が、本明細書での使用に考えられる。一実施態様では、約300〜500nmの範囲の粒子サイズを有するサブミクロン銀粒子が、本明細書での使用に考えられる。
【0006】
本発明の実施に使用するために考慮されるサブミクロン銀粒子は、典型的には安定化されたものである。当業者に容易に認識されるように、サブミクロン銀粒子は、種々の方法、たとえば、1種以上のキャッピング剤の存在(凝集からサブミクロン粒子を安定化するために用いられる)によって、安定化することができる。例示的キャッピング剤は、ポリビニルアルコール、ポリ(N−ビニル−2−ピロリドン)、アラビアゴム、α−メタクリル酸、11−メルカプトウンデカン酸またはそれらのジスルフィド誘導体、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、ステアリン酸、パルミチン酸、オクタン酸、デカン酸、ポリエチレングリコールおよびその誘導体、ポリアクリル酸およびアミノ修飾ポリアクリル酸、2−メルカプトエタノール、でんぷんおよび同類のもの、またそれらの任意の2種以上の混合物を含む。
【0007】
当業者に容易に認識されるように、少量のキャッピング剤であってもサブミクロン銀粒子を安定化するのに有効である。典型的には、キャッピング剤の量は、組成物の約0.05〜約5重量%の範囲である。一実施態様では、用いられるキャッピング剤の量は、組成物の約0.1〜約2.5重量%の範囲である。
【0008】
本明細書での使用に考慮されるサブミクロン銀粒子は様々な形状、たとえば、実質的に球状粒子、異形粒子、長方形の粒子、フレーク状(たとえば、薄く、平らな単結晶フレーク)および同類のもので存在することができる。本明細書での使用に考慮されるサブミクロン銀粒子は、銀被覆/銀メッキ微粒子を含み、実質的に銀被覆/銀メッキが下地の微粒子を覆う限り、下地の微粒子は任意の多様な材料であることができ、得られる組成物は至る所に流通する銀被覆粒子を有する熱可塑性マトリックスを含む。
【0009】
本発明の組成物は、任意に、付加的に非銀の導電性充填材を含んでもよい。例示的な非銀の導電性充填材は、カーボンブラック、黒鉛、カーボンナノチューブおよび同類のものを含む。
【0010】
非銀の導電性充填材が本明細書での使用に考慮される場合には、その約5重量%までが考えられる。
【0011】
本明細書での使用に考慮される熱可塑性樹脂は、ビニル共重合体、ポリエステル、ポリウレタンおよび同類のものを含む。一実施態様では、本明細書での使用に考慮される熱可塑性樹脂はハロゲン化熱可塑性樹脂である。
【0012】
一実施態様では、本発明による組成物は第1モノマーと第2モノマーを含むビニル共重合体を含み、前記第1モノマーは、酢酸ビニル、ビニルアルコール,塩化ビニル、塩化ビニリデンおよびスチレンからなる群から選択され、前記第2モノマーは、第2の酢酸ビニル、第2のビニルアルコール、第2の塩化ビニル、第2の塩化ビニリデン、第2のスチレン、アクリレートおよび窒化物からなる群から選択される。
【0013】
一実施態様では、第1モノマーは、塩化ビニリデンであり、第2モノマーは、塩化ビニル、アクリロニトリルまたはアクリル酸アルキルである。
【0014】
一実施態様では、第1モノマーは、塩化ビニリデンであり、第2モノマーは、塩化ビニル(たとえばポリ塩化ビニリデン)である。一実施態様では、第1モノマーは、塩化ビニリデンであり、第2モノマーは、アクリロニトリルである。一実施態様では、第1モノマーは、塩化ビニリデンであり、第2モノマーは、アクリル酸アルキルである。
【0015】
典型的には、本明細書での使用に考慮される熱可塑性樹脂は組成物の約0.1〜約15重量%の範囲内である。いくつかの実施形態では、本明細書での使用に考慮される熱可塑性樹脂は、組成物の約0.5〜約15重量%の範囲内である。いくつかの実施形態では、本明細書での使用に考慮される熱可塑性樹脂は、組成物の約1〜約15重量%の範囲内である。いくつかの実施形態では、本明細書での使用に考慮される熱可塑性樹脂は、組成物の約0.1〜約12重量%の範囲内である。いくつかの実施形態では、本明細書での使用に考慮される熱可塑性樹脂は、組成物の約0.1〜約8重量%の範囲内である。いくつかの実施形態では、本明細書での使用に考慮される熱可塑性樹脂は、組成物の約0.5〜約12重量%の範囲内である。いくつかの実施形態では、本明細書での使用に考慮される熱可塑性樹脂は、組成物の約0.5〜約8重量%の範囲内である。いくつかの実施形態では、本明細書での使用に考慮される熱可塑性樹脂は、組成物の約1〜約12重量%の範囲内である。いくつかの実施形態では、本明細書での使用に考慮される熱可塑性樹脂は、組成物の約1〜約8重量%の範囲内である。
【0016】
一実施態様によれば、本発明の組成物は任意に、さらに1または複数の熱硬化性樹脂を含んでもよい。
【0017】
存在するならば、幅広い種類の熱硬化性樹脂が、本明細書での使用に考慮され、たとえば、エポキシ官能化樹脂、アクリレート類、シアン酸エステル類、シリコーン類、オキセタン類、マレイミド類、および同類のもの、またこれらの任意の2種以上の混合物である。
【0018】
幅広い種類のエポキシ官能化樹脂が、本明細書での使用に考慮され、たとえば、ビスフェノールAに基づく液体型エポキシ樹脂、ビスフェノールAに基づく固体型エポキシ樹脂、ビスフェノールFに基づく液体型エポキシ樹脂(たとえば、Epiclon EXA−835LV)、フェノールノボラック樹脂に基づく多官能性エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(たとえば、Epiclon HP−7200L)、ナフタレン型エポキシ樹脂および同類のもの、またこれらの任意の2種以上の混合物である。
【0019】
本明細書での使用に考慮される例示的エポキシ官能化樹脂は、脂環式アルコール、水素化ビスフェノールAのジエポキシド(Epalloy 5000のように市販されている)または無水ヘキサヒドロフタル酸の二官能性脂環式グリシジルエステル(Epalloy 5200のように市販されている)、Epiclon EXA−835LV、Epiclon HP−7200Lおよび同類のもの、またこれらの任意の2種以上の混合物である。
【0020】
本発明の実施に使用するために考慮されるアクリレートは、技術分野においてよく知られている。たとえば、米国特許第5,717,034号明細書を参照し、すべての内容が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0021】
本発明の実施に使用するために考慮されるシアン酸エステル類は、技術分野においてよく知られている。たとえば、米国特許第5,718,941号明細書を参照し、すべての内容が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0022】
本発明の実施に使用するために考慮されるシリコーン類は、技術分野においてよく知られている。たとえば、米国特許第5,717,034号明細書を参照し、すべての内容が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0023】
オキセタン類(すなわち、1,3−プロピレンオキシド)は、三つの炭素原子および一つの酸素原子を有する四員環を有する分子式COである複素環有機化合物である。用語オキセタンは、一般的にオキセタン環を含む任意の有機化合物についてもまた示す。たとえば、Burkhardらによる、Angew.Chem.Int.Ed.2010、49、9052〜9067頁を参照し、すべての内容が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0024】
本発明での実施に使用するために考慮されるマレイミド類は、技術分野においてよく知られている。たとえば、米国特許第5,717,034号明細書を参照し、すべての内容が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0025】
存在するならば、比較的低い濃度の熱硬化性樹脂が本明細書での使用に考慮される。典型的な熱硬化性樹脂は、存在するならば、組成物のわずか約0.1〜約5重量%を構成する。一実施態様では、熱硬化性樹脂は、全組成物の約0.2〜約3重量%を構成する。
【0026】
本明細書での任意の使用に考慮される有機希釈剤は、エステル類(たとえば、酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシプロピルアセテートおよび同類のもの)、2塩基エステル類、α−テルピネオール、β−テルピネオール、灯油、フタル酸ジブチル、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、カルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、へキシレングリコール、高沸点アルコール、およびそのエステル類、グリコールエーテル類、ケトン類、エステル類、芳香族炭化水素類(たとえば、ベンゼン、トルエン、キシレン)、飽和炭化水素類(たとえば、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、テトラデカン)、エーテル類(たとえば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン)、塩化炭化水素類(たとえば、ジクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、ジクロロメタン)および同類のもの、またこれらの任意の2種以上の混合物を含む。
【0027】
本発明に従った使用に考慮される有機希釈剤の量は、幅広く変化することができ、典型的には、組成物の約5〜約80重量%の範囲である。一実施態様では、有機希釈剤の量は、全組成物の約10〜60重量%の範囲である。一実施態様では、有機希釈剤の量は、全組成物の約20〜約50重量%の範囲である。
【0028】
任意に、本明細書に記載の組成物は、流動性添加剤および同類のものを含んでもよい。本明細書で任意に使用するのに考慮される流動性添加剤は、シリコン重合体、エチルアクリレート/2−エチルヘキシルアクリレートコポリマー、ケトオキシムのリン酸エステルのアルキロールアンモニウム塩および同類のもの、またこれらの任意の2種以上の組み合わせを含む。
【0029】
本明細書での使用に考慮される追加の任意成分は、得られる組成物の導電性を高める酸性成分を含む。多種多様の酸性成分が、本発明による組成物の他の成分とそれらが混和する限り、本発明の組成物に組み入れるのに適する。そのような酸性材料は、典型的には、pH<7である、弱い〜軽度(weak-to-mild)の酸である。一実施態様では、本明細書での使用に考慮される酸性成分は、少なくとも1であるが、7未満の範囲のpHを有する。一実施態様では、本明細書での使用に考慮される酸性成分は、少なくとも2〜約6までの範囲のpHを有する。本明細書での使用に考慮される例示的酸性成分は、リン酸、ビニルリン酸、ポリリン酸、ギ酸、酢酸、クロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、シュウ酸、オレイン酸、安息香酸、p−トルエンスルホン酸および同類のもの、またこれらの任意の2種以上の混合物を含む。
【0030】
酸性成分の適する量は、任意に本発明の組成物に含めるならば、典型的には、組成物の約0.1〜約5重量%の範囲である。一実施態様では、任意に本発明の組成物に含めるならば、用いられる酸性成分の量は、約0.5〜2重量%の範囲である。
【0031】
本発明の他の実施態様によれば、導電性ネットワークを作製する方法であって、方法が、
本明細書に記載の組成物を適する基材上に塗布すること、および
その後に前記組成物を焼結することを含む方法を提供する。
【0032】
非導電性である限り、幅広い種類の基材が、本明細書での使用に考慮される。例示的な基材は、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ガラスまたは同類のものを含む。
【0033】
本発明による組成物の特に有利な点は、比較的低い温度で焼結できることであり、たとえば、一実施態様では、約150℃以下の温度である。そのような温度で焼結するときは、0.5〜約30分の範囲の時間、組成物を焼結条件にさらすことが考えられる。
【0034】
一実施態様では、約120℃以下の温度で実施できることが考えられる。そのような温度で焼結するときは、0.1〜約2時間の範囲の時間、組成物を焼結条件にさらすことが考えられる。
【0035】
本発明のさらに他の実施態様によれば、1×10−4オーム・cm以下の抵抗率を有する焼結されたサブミクロン銀粒子の配列(array)を含む、導電性ネットワークを提供する。本発明のさらに他の実施態様によれば、1×10−5オーム・cm以下の抵抗率を有する焼結されたサブミクロン銀粒子の配列を含む、導電性ネットワークを提供する。
【0036】
そのような導電性ネットワークは、典型的には、基材およびそれに十分に接着するディスプレイに適用する。導電性ネットワークおよび基材間の接着は、種々の方法、たとえば、テスト方法D 3359−97に従ったASTM標準クロスカットテープテストによって決定される。本発明によれば、少なくともASTMレベル1Bと同程度の接着力が観測される(すなわち、当初接着したフィルム表面のうち少なくとも35%が、テープテストを受けた後、基材へ付着したままである)。本発明の一実施態様では、少なくともASTMレベル2Bと同程度の接着力が観測される(すなわち、当初接着したフィルム表面のうち少なくとも65%が、テープテストを受けた後、基材へ付着したままである)。本発明の一実施態様では、少なくともASTMレベル3Bと同程度の接着力が観測される(すなわち、当初接着したフィルム表面のうち少なくとも85%が、テープテストを受けた後、基材へ付着したままである)。本発明の一実施態様では、少なくともASTMレベル4Bと同程度の接着力が観測される(すなわち、当初接着したフィルム表面のうち少なくとも95%が、テープテストを受けた後、基材へ付着したままである)。本発明の一実施態様では、少なくともASTMレベル5Bと同程度の接着力が観測される(すなわち、当初接着したフィルム表面のうち100%が、テープテストを受けた後、基材へ付着したままである)。
【0037】
本発明の他の実施態様によれば、サブミクロン銀粒子を非金属基板に接着するための方法であって、前記方法が、
本明細書に記載された組成物を前記基材に塗布すること、およびその後、
前記組成物を焼結することを含む方法を提供する。
【0038】
本発明の実施態様によれば、低い温度での焼結(たとえば、約150℃以下の温度、または約120℃以下の温度)が考えられる。
【0039】
本発明のさらなる実施態様によれば、サブミクロン銀粒子を充填した熱可塑性樹脂の非金属基板への接着を改善するための方法であって、前記方法が、
ハロゲン含有熱可塑性樹脂および有機希釈剤を
前記銀粒子充填熱可塑性樹脂中に組み入れることを含む方法を提供する。
【0040】
本明細書に記載のサブミクロン銀粒子、熱可塑性樹脂および有機希釈剤は本発明の実施態様の使用に考慮される。
【0041】
本発明の他の実施態様によれば、その上に導電性層を有する透明基材を含むタッチパネルディスプレイを提供し、前記導電性層が、本発明の組成物の硬化した層を含む。
【0042】
本発明の種々の態様は、以下の非限定的な例によって説明される。例は、例示を目的とし、本発明の任意の実施を限定するものではない。本発明の精神および範囲から外れることなく、変更および修飾を行うことができると理解される。一当業者は、本明細書に記載の試薬および成分を合成または商業的に得る方法を簡単に知る。
【実施例】
【0043】
例1
サブミクロン銀粒子を所望量の熱可塑性(Tp)樹脂と混合することにより、インクを作製する。混合は、スピードミキサー中で、組成物が実質的に均一になるまで行う。材料は、基材(ポリエチレンテレフタレート、PET)に塗布し、10ミクロンワイアバーでフィルムを作製する。材料は、その後、ボックスオーブンで、120℃、5分、または150℃、5分間乾燥する。0.5×5cm片に切断し、その厚みおよび抵抗を測定し、それに基づき、抵抗を算出した。結果を以下の表に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
前記表の結果は、サブミクロン銀微粒子材料にポリ塩化ビニリデンのようなハロゲン化熱可塑性ポリマーの少量(6重量%)を単に添加することだけで組成物を塗布できる厚みを減らし、その抵抗率を著しく低くする。
【0046】
本発明の多くの改変は、本明細書に示され、記載されたものに加えて、上述の当業者には明らかである。そのような改変もまた、添付の特許請求の範囲の範囲内であることを意味する。
【0047】
本明細書で言及した特許および刊行物は、本発明が関連する当業者のレベルを示す。これらの特許および刊行物が、それぞれ個々の出願または刊行物が明確にかつ個々に本明細書で参照により組み込まれるのと同程度に本明細書では、参照により組み込まれる。
【0048】
前述の記載は、本発明の特定の実施態様の例示であるが、本発明の実施の際に限定することを意味しない。そのすべての均等を含む、以下の特許請求の範囲は、本発明の範囲を定義することを意図する。