【文献】
Eur. Polym. J.,2014年,54,25−35
【文献】
J. Org. Chem.,2016年,81,1535−1546
【文献】
Bioorg. Med. Chem.,2002年,10,2941−2952
【文献】
J. Med. Chem.,2006年,49,318−328
【文献】
Bioorg. Med. Chem. Lett.,2010年,20,1854−1857
【文献】
J. Med. Chem.,2010年,53,6003−6017
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について具体的に説明する。本発明は以下の記載によって限定されない。ここで、本実施形態の説明において、共通して用いられる用語について説明する。
【0013】
[共通して用いられる用語の説明]
「水素原子」は、軽水素原子であっても、重水素原子であってもよい。
【0014】
「ハロゲン原子」には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が含まれる。
【0015】
「置換基を有していてもよい」には、その化合物または基を構成するすべての水素原子が無置換の場合、および1個以上の水素原子の一部または全部が置換基によって置換されている場合の両方の態様が含まれる。
【0016】
特に例示しない限り、「置換基」の例としては、ハロゲン原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、1価の芳香族炭化水素基(アリール基)、アリールアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、1価の複素環基、複素環オキシ基、複素環チオ基、置換アミノ基、アシル基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、置換オキシカルボニル基、アルケニル基、アルキニル基、シアノ基、およびニトロ基が挙げられる。
【0017】
「アルキル基」は、直鎖状であっても分岐状であってもよく、さらには環状であってもよい。置換基を有していてもよいアルキル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常1〜30である。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル墓、ペンチル基、イソペンチル基、2−メチルブチル基、1−メチルブチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、3−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、1−メチルペンチル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル墓、オクタデシル基、エイコシル基等の鎖状アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基等のシクロアルキル基が挙げられる。
【0018】
「アルコキシ基」のアルキル基部分は、直鎖状であっても分岐状であってもよく、さらには環状であってもよい。置換基を有していてもよいアルコキシ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常1〜20である。置換基を有していてもよいアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、ラウリルオキシ基、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、パーフルオロブトキシ基、パーフルオロヘキシルオキシ基、パーフルオロオクチルオキシ基、メトキシメチルオキシ基および2−メトキシエチルオキシ基が挙げられる。
【0019】
「アルキルチオ基」のアルキル基部分は、直鎖状であっても分岐状であってもよく、さらには環状であってもよい。置換基を有していてもよいアルキルチオ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常1〜20である。置換基を有していてもよいアルキルチオ基の具体例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、ブチルチオ基、イソブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、シクロヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、ノニルチオ基、デシルチオ基、3,7−ジメチルオクチルチオ基、ラウリルチオ基およびトリフルオロメチルチオ基が挙げられる。
【0020】
「1価の芳香族炭化水素基」とは、芳香族炭化水素の芳香環に結合している水素原子1個を除いた基を意味する。置換基を有していてもよい1価の芳香族炭化水素基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常6〜60である。
【0021】
置換基を有していてもよい1価の芳香族炭化水素基が有し得る置換基としては、例えばハロゲン原子および炭素原子数1〜20のアルコキシ基が挙げられる(以下、炭素原子数について、例えば「炭素原子数1〜20」を「C1〜C20」という場合がある。)。
【0022】
置換基を有していてもよい1価の芳香族炭化水素基の具体例としては、フェニル基、C1〜C12アルコキシフェニル基、C1〜C12アルキルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基およびペンタフルオロフェニル基が挙げられる。C1〜C12アルコキシフェニル基の中で、好ましい態様はC1〜C8アルコキシフェニル基であり、より好ましい態様はC1〜C6アルコキシフェニル基である。アルコキシフェニル基中に含まれるアルコキシ基部分におけるC1〜C8アルコキシ基およびC1〜C6アルコキシ基の具体例としては、上記アルコキシ基として例示した基のうちのC1〜C8アルコキシ基およびC1〜C6アルコキシ基が挙げられる。
【0023】
「1価の芳香族複素環基」とは、芳香族複素環式化合物から、環を構成する炭素原子またはヘテロ原子に直接結合している水素原子のうちの1個の水素原子を除いた残りの原子団を意味する。ヘテロ原子の例としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子、塩素原子、ヨウ素原子、臭素原子およびセレン原子が挙げられる。
【0024】
置換基を有していてもよい1価の芳香族複素環基が有し得る置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、1価の複素環基、置換アミノ基、アシル基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、置換オキシカルボニル基、アルケニル基、アルキニル基、シアノ基およびニトロ基が挙げられる。
【0025】
芳香族複素環式化合物には、複素環自体が芳香族性を示す化合物に加えて、芳香族性を示さない複素環に芳香環が縮環している化合物が含まれる。
【0026】
芳香族複素環式化合物のうち、複素環自体が芳香族性を示す化合物の具体例としては、オキサジアゾール、チアジアゾール、チアゾール、オキサゾール、チオフェン、ピロール、ホスホール、フラン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、トリアジン、ピリダジン、キノリン、イソキノリン、カルバゾールおよびジベンゾホスホールが挙げられる。
【0027】
芳香族複素環式化合物のうち、芳香族性を示さない複素環に芳香環が縮環している化合物の具体例としては、フェノキサジン、フェノチアジン、ジベンゾボロール、ジベンゾシロールおよびベンゾピランが挙げられる。
【0028】
置換基を有していてもよい1価の芳香族複素環基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常2〜60であり、好ましくは2〜20である。
【0029】
「アリールオキシ基」は、アリール基部分に置換基を有していてもよい。アリールオキシ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常6〜60である。アリールオキシ基が有し得る置換基としては、例えば、ハロゲン原子および炭素原子数1〜20のアルコキシ基が挙げられる。
【0030】
置換基を有していてもよいアリールオキシ基の具体例としては、フェノキシ基、C1〜C12アルコキシフェノキシ基、C1〜C12アルキルフェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基およびペンタフルオロフェノキシ基が挙げられる。
【0031】
「アリールチオ基」は、アリール基部分に置換基を有していてもよい。アリールチオ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常6〜60である。
【0032】
置換基を有していてもよいアリールチオ基の具体例としては、フェニルチオ基、C1〜C12アルコキシフェニルチオ基、C1〜C12アルキルフェニルチオ基、1−ナフチルチオ基、2−ナフチルチオ基およびペンタフルオロフェニルチオ基が挙げられる。
【0033】
「アリールアルキル基」は、アリール基部分に置換基を有していてもよい。アリールアルキル基が有し得る置換基としては、例えばハロゲン原子および炭素原子数1〜20のアルコキシ基が挙げられる。
【0034】
置換基を有していてもよいアリールアルキル基の具体例としては、フェニル−C1〜C12アルキル基、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルキル基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキル基、1−ナフチル−C1〜C12アルキル基及び2−ナフチル−C1〜C12アルキル基が挙げられる。置換基を有していてもよいアリールアルキル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常7〜60である。
【0035】
「アシル基」とは、カルボン酸の−COOH基中の水酸基を除いた基を意味する。アシル基の炭素原子数は、通常2〜20である。
【0036】
アシル基の具体例としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基、トリフルオロアセチル基等のハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数2〜20のアルキルカルボニル基、ベンゾイル基、ペンタフルオロベンゾイル基等のハロゲン原子で置換されていてもよいフェニルカルボニル基が挙げられる。
【0037】
「アミド基」とは、アミドから窒素原子に結合した水素原子1個を除いた基を意味する。アミド基の炭素原子数は、通常2〜20である。アミド基の具体例としては、ホルムアミド基、アセトアミド基、プロピオアミド基、ブチロアミド基、ベンズアミド基、トリフルオロアセトアミド基、ペンタフルオロベンズアミド基、ジホルムアミド基、ジアセトアミド基、ジプロピオアミド基、ジブチロアミド基、ジベンズアミド基、ジトリフルオロアセトアミド基およびジペンタフルオロベンズアミド基が挙げられる。
【0038】
「イミン残基」とは、イミン化合物から、炭素原子−窒素原子二重結合を構成する炭素原子または窒素原子に直接結合する水素原子1つを除いた残りの原子団を意味する。
【0039】
「酸イミド基」とは、酸イミドから窒素原子に結合した水素原子1個を除いた残りの原子団を意味する。
【0040】
「置換アミノ基」とは、アミノ基中の1個または2個の水素原子が置換基で置換された基を意味している。置換アミノ基が有し得る置換基は、例えばアルキル基および置換基を有していてもよい1価の芳香族炭化水素基である。アルキル基および置換基を有していてもよい1価の芳香族炭化水素基の具体例は、上記アルキル基および置換基を有していてもよい1価の芳香族炭化水素基の具体例と同じである。置換アミノ基の炭素原子数は、通常1〜40である。
【0041】
置換アミノ基の具体例としては、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、プロピルアミノ基、ジプロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、tert−ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、ヘプチルアミノ基、オクチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ノニルアミノ基、デシルアミノ基、3,7−ジメチルオクチルアミノ基、ラウリルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、ジシクロペンチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基、ピロリジル基、ピペリジル基、ジトリフルオロメチルアミノ基、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、C1〜C12アルコキシフェニルアミノ基、ジ(C1〜C12アルコキシフェニル)アミノ基、ジ(C1〜C12アルキルフェニル)アミノ基、1−ナフチルアミノ基、2−ナフチルアミノ基、ペンタフルオロフェニルアミノ基、ピリジルアミノ基、ピリダジニルアミノ基、ピリミジルアミノ基、ピラジルアミノ基、トリアジルアミノ基、フェニル−C1〜C12アルキルアミノ基、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルキルアミノ基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキルアミノ基、ジ(C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルキル)アミノ基、ジ(C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキル)アミノ基、1−ナフチル−C1〜C12アルキルアミノ基および2−ナフチル−C1〜C12アルキルアミノ基が挙げられる。
【0042】
「置換オキシカルボニル基」とは、R’−O−(C=O)−で表される基を意味する。ここで、R’は、アルキル基、1価の芳香族炭化水素基、アリールアルキル基、または1価の複素環基を表す。
【0043】
置換オキシカルボニル基の炭素原子数は、通常2〜60であり、好ましくは2〜48である。
【0044】
置換オキシカルボニル基の具体例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、ヘプチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、2−エチルヘキシルオキシカルボニル基、ノニルオキシカルボニル基、デシルオキシカルボニル基、3,7−ジメチルオクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基、トリフルオロメトキシカルボニル基、ペンタフルオロエトキシカルボニル基、パーフルオロブトキシカルボニル基、パーフルオロヘキシルオキシカルボニル基、パーフルオロオクチルオキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、ナフトキシカルボニル基およびピリジルオキシカルボニル基が挙げられる。
【0045】
「1価の複素環基」としては、置換基を有していてもよいフラン、チオフェン、ピロール、ピロリン、ピロリジン、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、イミダゾリン、イミダゾリジン、ピラゾール、ピラゾリン、プラゾリジン、フラザン、トリアゾール、チアジアゾール、オキサジアゾール、テトラゾール、ピラン、ピリジン、ピペリジン、チオピラン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピペラジン、モルホリン、トリアジン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インドール、イソインドール、インドリジン、インドリン、イソインドリン、クロメン、クロマン、イソクロマン、ベンゾピラン、キノリン、イソキノリン、キノリジン、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、インダゾール、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、キナゾリジン、シンノリン、フタラジン、プリン、プテリジン、カルバゾール、キサンテン、フェナントリジン、アクリジン、β-カルボリン、ペリミジン、フェナントロリン、チアントレン、フェノキサチイン、フェノキサジン、フェノチアジン、フェナジン等の複素環式化合物から水素原子を1個除いた基が挙げられる。
【0046】
「複素環オキシ基」としては、上記複素環基に酸素原子が結合した下記式(D)で表される基が挙げられる。複素環チオ基としては、上記複素環基に硫黄原子が結合した下記式(E)で表される基が挙げられる。
【0048】
式(D)および式(E)中、Ar
7は1価の複素環基を表す。
【0049】
複素環オキシ基の炭素原子数は、通常4〜60である。複素環オキシ基の具体例としては、チエニルオキシ基、C1〜C12アルキルチエニルオキシ基、ピロリルオキシ基、フリルオキシ基、ピリジルオキシ基、C1〜C12アルキルピリジルオキシ基、イミダゾリルオキシ基、ピラゾリルオキシ基、トリアゾリルオキシ基、オキサゾリルオキシ基、チアゾリルオキシ基およびチアジアゾリルオキシ基が挙げられる。
【0050】
「複素環チオ基」の炭素原子数は、通常4〜60である。複素環チオ基の具体例としては、チエニルメルカプト基、C1〜C12アルキルチエニルメルカプト基、ピロリルメルカプト基、フリルメルカプト基、ピリジルメルカプト基、C1〜C12アルキルピリジルメルカプト基、イミダゾリルメルカプト基、ピラゾリルメルカプト基、トリアゾリルメルカプト基、オキサゾリルメルカプト基、チアゾリルメルカプト基およびチアジアゾリルメルカプト基が挙げられる。
【0051】
「アルケニル基」は、直鎖状、分岐状および環状のいずれであってもよい。直鎖状のアルケニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常2〜30であり、好ましくは3〜20である。分岐状または環状のアルケニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3〜30であり、好ましくは4〜20である。
【0052】
アルケニル基は、置換基を有していてもよい。置換基を有していてもよいアルケニル基の具体例としては、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、5−ヘキセニル基、7−オクテニル基およびこれらの基がアルキル基、アルコキシ基等の置換基を有している基が挙げられる。
【0053】
「アルキニル基」は、直鎖状、分岐状および環状のいずれであってもよい。直鎖状のアルケニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常2〜20であり、好ましくは3〜20である。分岐状または環状のアルケニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常4〜30であり、好ましくは4〜20である。
【0054】
アルキニル基は、置換基を有していてもよい。アルキニル基の具体例としては、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、3−ペンチニル基、4−ペンチニル基、1−ヘキシニル基、5−ヘキシニル基およびこれらの基がアルキル基、アルコキシ基等の置換基を有している基が挙げられる。
【0055】
[ハロゲン化合物の製造方法]
本発明の実施形態にかかるハロゲン化合物の製造方法は、下記式(1)、下記式(2)、下記式(3)、下記式(4)、下記式(5)または下記式(6)で表される原料化合物と、ハロゲン化剤とを、有機スルホン酸誘導体を含む溶媒中で反応させる工程を含む、下記式(1’)、下記式(2’)、下記式(3’)、下記式(4’)、下記式(5’)または下記式(6’)で表されるハロゲン化合物の製造方法である。
【0057】
前記式(1)〜式(6)中、
Xは、硫黄原子、酸素原子、セレン原子または−NR
3−で表される基を表す。
Yは、置換基を有していてもよい1価の芳香族炭化水素基または置換基を有していてもよい1価の芳香族複素環基を表す。
Arは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環または置換基を有していてもよい芳香族複素環を表す。
Z
1およびZ
2は、それぞれ独立に、炭素原子または窒素原子を表す。
R
1およびR
2は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいアルコキシ基を表す。Z
1が窒素原子である場合にはR
1は存在せず、Z
2が窒素原子である場合にはR
2は存在しない。R
1およびR
2が存在する場合には、R
1およびR
2は同一であっても異なっていてもよい。
R
3は、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよい1価の芳香族炭化水素基または置換基を有していてもよい1価の芳香族複素環基を表す。
【0059】
前記式(1’)〜式(6’)中、
X、Y、Ar、Z
1、Z
2、R
1およびR
2は、前記定義のとおりである。
ここで、前記式(2’)、式(4’)および式(6’)中、Yが結合している環構造が、特にベンゾチアジアゾール環である場合には、「前記式(2)、式(4)または下記式(6)で表される原料化合物と、ハロゲン化剤とを、有機スルホン酸誘導体を含む溶媒中で反応させる工程」によって、ハロゲン化剤に由来するハロゲン原子が、Yにも結合する場合があり得る。よって、本実施形態には、ハロゲン化剤に由来するハロゲン原子が、さらにYにも結合する態様も含まれる。
【0060】
U
1およびU
2は、ハロゲン原子を表す。U
1およびU
2は同一であっても異なっていてもよい。前記式(2’)、式(4’)および式(6’)中、U
1に結合するハロゲン原子とYに結合し得るハロゲン原子とは、通常同一であるが、互いに異なっていてもよい。
【0061】
(原料化合物)
本実施形態のハロゲン化合物の製造方法に用いることができる原料化合物(基質)は、前記式(1)〜式(6)で表される化合物である。
本実施形態の原料化合物は、収率の向上の観点から、芳香族複素環式化合物であって、例えばベンゾチアジアゾール環、フッ素原子、−C=N−で表される構造などを含む電子不足化合物であることが好ましい。本実施形態の原料化合物として好適に用いることができる芳香族複素環式化合物の構造は特に限定されない。かかる芳香族複素環式化合物は、例えば、置換基を有していてもよく、複数の複素環式化合物同士または複素環式化合物と芳香族炭化水素とが単結合により結合している構造を有していてもよく、さらには複数の複素環式化合物同士または複素環式化合物と芳香族炭化水素とが縮環している構造を有していてもよく、これらが組み合わされた構造を有していてもよい。
【0062】
本実施形態の前記式(1)〜式(6)で表される化合物のハロゲン化反応は、芳香族求電子置換反応で進行する。芳香族求電子置換反応は、前記式(1)〜式(6)で表される化合物が電子不足であるほど、また用いられるハロゲン化剤の反応部位の電子が豊富であるほど、反応は進行しにくい。
【0063】
ここで、原料化合物である本実施形態の前記式(1)〜式(6)で表される化合物は、いずれも電子不足である電子不足化合物である。
【0064】
このような電子不足化合物である前記式(1)〜式(6)で表される化合物に対するハロゲン化剤の反応性をより高め、芳香族求電子置換反応を促進させるためには、求電子攻撃を行うハロゲン化剤の反応部位についても電子不足な状態とする必要がある。よって、本実施形態の前記式(1)〜式(6)で表される化合物を原料化合物として用いるハロゲン化反応においては、ハロゲン化剤に加え、ハロゲン化条件の選択が極めて重要となる。
【0065】
そこで、本実施形態のハロゲン化合物の製造方法では、高い電子受容性を示すスルホニル基を有する有機化合物を用いて、ハロゲン化剤の反応部位を電子不足な状態とすることにより、ハロゲン化剤の反応性を高めている(詳細は後述する。)。
【0066】
本実施形態のハロゲン化合物の製造方法によれば、このような態様とすることにより、同様の電子構造を有する前記式(1)〜式(6)で表される化合物を用いる芳香族求電子置換反応をより効果的に促進させることができ、結果として、ハロゲン化合物の収率を顕著に向上させることができる。
【0067】
本実施形態の原料化合物としては、前記式(1)、前記式(3)または前記式(5)で表される化合物であることが好ましく、前記式(1)で表される化合物であることがより好ましい。
【0068】
前記式(1)〜式(6)で表される化合物において、Xは、硫黄原子、酸素原子、セレン原子または−NR
3−で表される基を表す。Xは、硫黄原子または酸素原子であることが好ましい。
【0069】
前記式(1)〜式(6)中、−NR
3−で表される基におけるR
3は、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよい1価の芳香族炭化水素基または置換基を有していてもよい1価の芳香族複素環基を表す。
【0070】
R
3の具体例としては、メチル基、エチル基、ヘキシル基、メトキシ基、プロポキシ基、トリフルオロメチル基、フェニル基、ジメチルフェニル基、メトキシフェニル基、ビストリフルオロメチルフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、チエニル基およびオキサゾリル基が挙げられる。
【0071】
前記式(1)〜式(6)中、Yは、置換基を有していてもよい1価の芳香族炭化水素基または置換基を有していてもよい1価の芳香族複素環基を表す。1価の芳香族炭化水素基および1価の芳香族複素環基は、2個以上の環が縮環した構造を有していてもよい。
【0072】
Yは、置換基を有していてもよい1価の芳香族複素環基であることが好ましい。Yの具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、チエニル基、チアゾリル基、フリル基、オキサゾリル基、ピロリル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、ピリジル基、チエノチニル基およびベンゾチエニル基が挙げられる。
【0073】
前記式(3)および式(4)中、Arは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環または置換基を有していてもよい芳香族複素環を表す。Arは、ベンゾヘテロジアゾール環の六員環側(5位および6位)に縮環している環構造である。Arは、ハロゲン化合物の収率を向上させる観点から、置換基を有していてもよい芳香族複素環であることが好ましい。
【0074】
Arである、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環としては、例えば、ベンゼン環、置換基として1個または2個以上のアルコキシ基を有するベンゼン環、置換基として1または2以上のアルキル基を有するベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、ピレン環およびペリレン環が挙げられる。
【0075】
Arである、置換基を有していてもよい芳香族複素環としては、例えば、既に説明した芳香族複素環式化合物に由来する環が挙げられる。かかる芳香族複素環の具体例としては、チオフェン環、チアゾール環、チアジアゾール環、フラン環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環およびキノキサリン環が挙げられる。
【0076】
前記式(1)、式(2)、式(5)および式(6)中、Z
1およびZ
2は、それぞれ独立に、炭素原子または窒素原子を表す。Z
1およびZ
2は、炭素原子であることが好ましい。
【0077】
前記式(1)、式(2)、式(5)および式(6)中、R
1およびR
2は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいアルコキシ基を表す。Z
1が窒素原子である場合にはR
1は存在せず、Z
2が窒素原子である場合にはR
2は存在しない。R
1およびR
2が存在する場合には、R
1およびR
2は同一であっても異なっていてもよい。
【0078】
R
1およびR
2の具体例としては、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基、ドデシル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基およびオクトキシ基が挙げられる。
【0079】
R
1およびR
2としては、水素原子またはハロゲン原子であることが好ましい。R
1およびR
2は、それぞれ独立に、水素原子またはフッ素原子であることが好ましく、いずれもフッ素原子であることがより好ましい。
【0080】
前記式(1)で表される化合物の具体例としては、下記式(1−1)〜下記式(1−20)で表される化合物が挙げられる。
【0082】
前記式(2)で表される化合物の具体例としては、下記式(2−1)〜下記式(2−20)で表される化合物が挙げられる。
【0084】
前記式(3)で表される化合物の具体例としては、下記式(3−1)〜下記式(3−15)で表される化合物が挙げられる。
【0086】
前記式(4)で表される化合物の具体例としては、下記式(4−1)〜下記式(4−20)で表される化合物が挙げられる。
【0088】
前記式(5)で表される化合物の具体例としては、下記式(5−1)〜下記式(5−15)で表される化合物が挙げられる。
【0090】
前記式(6)で表される化合物の具体例としては、下記式(6−1)〜下記式(6−10)で表される化合物が挙げられる。
【0092】
本実施形態のハロゲン化合物の製造方法に用いる原料化合物としては、ハロゲン化合物の収率を向上させる観点から、前記式(1−1)、式(1−2)、式(1−6)、式(1−7)、式(1−11)、式(1−12)、式(1−16)、式(1−17)、式(2−1)〜式(2−3)、式(2−6)、式(2−7)、式(2−10)、式(2−11)、式(2−14)〜式(2−19)、式(3−1)〜式(3−10)、式(4−1)〜式(4−3)、式(4−6)、式(4−7)、式(4−10)、式(4−11)、式(4−14)〜式(4−19)、式(5−1)〜式(5−10)、式(5−13)、式(6−1)〜式(6−7)および式(6−9)で表される化合物が好ましく、前記式(1−1)、式(1−2)、式(1−6)、式(1−7)、式(1−11)、式(1−12)、式(2−1)、式(2−2)、式(2−15)〜式(2−17)、式(2−19)、式(3−1)〜式(3−10)、式(4−1)、式(4−2)、式(4−6)、式(4−7)、式(4−10)、式(4−11)、式(4−14)〜式(4−19)、式(5−1)、式(5−2)、式(5−6)、式(5−7)および式(6−1)〜式(6−6)で表される化合物がより好ましく、前記式(1−1)、式(1−2)、式(1−6)、式(1−7)、式(1−11)、式(1−12)、式(3−1)〜式(3−10)、式(5−1)、式(5−2)、式(5−6)、式(5−7)で表される化合物がさらに好ましく、前記式(1−1)、式(1−2)、式(1−6)、式(1−7)、式(1−11)、式(1−12)で表される化合物が特に好ましい。
【0093】
本実施形態のハロゲン化合物の製造方法においては、ハロゲン化合物の収率をより向上させる観点から、電子不足である芳香環全般、とりわけ、イミン窒素を2個有するジアゾール環を含む極めて電子不足である芳香族複素環式化合物を原料化合物として用いることが好ましい。
【0094】
(目的化合物)
本実施形態のハロゲン化合物の製造方法にかかる目的化合物は、前記式(1’)〜式(6’)で表されるハロゲン化合物である。
【0095】
前記式(1’)〜式(6’)で表されるハロゲン化合物において、X、Y、Ar、Z
1、Z
2、R
1およびR
2については、既に説明した前記式(1)〜式(6)で表される原料化合物のX、Y、Ar、Z
1、Z
2、R
1およびR
2と、反応させた後でも同様であり、具体例および好適例などについても同様である。よって、これらの詳細な説明については省略する。
【0096】
前記式(1’)〜式(6’)中、U
1およびU
2は、ハロゲン原子を表す。U
1およびU
2は、同一であっても異なっていてもよい。
【0097】
U
1およびU
2は、臭素原子であることが好ましい。より具体的には、前記式(2’)、式(4’)および式(6’)中、U
1は臭素原子であることが好ましく、前記式(1’)、式(3’)および式(5’)中、U
1およびU
2が臭素原子であることが好ましい。
【0098】
本実施形態のハロゲン化合物の製造方法にかかる目的化合物のうち、前記式(1’)で表される化合物の具体例としては、下記式(1’−1)〜下記式(1’−20)で表される化合物が挙げられる。
【0100】
前記式(2’)で表される化合物の具体例としては、下記式(2’−1)〜下記式(2’−20)で表される化合物が挙げられる。
【0102】
前記式(3’)で表される化合物の具体例としては、下記式(3’−1)〜下記式(3’−15)で表される化合物が挙げられる。
【0104】
前記式(4’)で表される化合物の具体例としては、下記式(4’−1)〜下記式(4’−20)で表される化合物が挙げられる。
【0106】
前記式(5’)で表される化合物の具体例としては、下記式(5’−1)〜下記式(5’−15)で表される化合物が挙げられる。
【0108】
前記式(6’)で表される化合物の具体例としては、下記式(6’−1)〜下記式(6’−10)で表される化合物が挙げられる。
【0110】
本実施形態の目的化合物としては、ハロゲン化合物の収率を向上させる観点から、前記式(1’−1)、式(1’−2)、式(1’−6)、式(1’−7)、式(1’−11)、式(1’−12)、式(1’−16)、式(1’−17)、式(2’−1)〜式(2’−3)、式(2’−6)、式(2’−7)、式(2’−10)、式(2’−11)、式(2’−14)〜式(2’−19)、式(3’−1)〜式(3’−10)、式(4’−1)〜式(4’−3)、式(4’−6)、式(4’−7)、式(4’−10)、式(4’−11)、式(4’−14)〜式(4’−19)、式(5’−1)〜式(5’−10)、式(5’−13)、式(6’−1)〜式(6’−7)および式(6’−9)で表される化合物が好ましく、前記式(1’−1)、式(1’−2)、式(1’−6)、式(1’−7)、式(1’−11)、式(1’−12)、式(2’−1)、式(2’−2)、式(2’−15)〜式(2’−17)、式(2’−19)、式(3’−1)〜式(3’−10)、式(4’−1)、式(4’−2)、式(4’−6)、式(4’−7)、式(4’−10)、式(4’−11)、式(4’−14)〜式(4’−19)、式(5’−1)、式(5’−2)、式(5’−6)、式(5’−7)および式(6’−1)〜式(6’−6)で表される化合物がより好ましく、前記式(1’−1)、式(1’−2)、式(1’−6)、式(1’−7)、式(1’−11)、式(1’−12)、式(3’−1)〜式(3’−10)、式(5’−1)、式(5’−2)、式(5’−6)、式(5’−7)で表される化合物がさらに好ましく、前記式(1’−1)、式(1’−2)、式(1’−6)、式(1’−7)、式(1’−11)、式(1’−12)で表される化合物が最も好ましい。
【0111】
(反応工程)
本実施形態のハロゲン化合物の製造方法は、原料化合物と、ハロゲン化剤とを、有機スルホン酸誘導体を含む溶媒中で反応させる工程(反応工程)を含む。
【0112】
反応工程における温度条件は、選択される原料化合物、ハロゲン化剤および有機スルホン酸誘導体を含む溶媒に好適な条件を採用することができる。反応工程における温度条件は、通常−50℃〜80℃であり、好ましくは−20℃〜50℃である。
【0113】
反応工程において反応時間は、選択される原料化合物、ハロゲン化剤および有機スルホン酸誘導体を含む溶媒に好適な時間を設定することができる。反応工程における反応時間は、通常1分間〜10時間であり、好ましくは30分間〜8時間であり、より好ましくは1時間〜5時間である。
【0114】
前記反応工程において、原料化合物と後述するハロゲン化剤とを反応させる際の原料化合物とハロゲン化剤との物質量の比率は、通常〔原料化合物〕/〔ハロゲン化剤〕=1/0.5〜1/20(mol/mol)であり、好ましくは1/0.8〜1/10(mol/mol)である。
【0115】
本実施形態のハロゲン化合物の製造方法においては、反応工程終了後に、詳細については後述する態様で、得られた反応溶液を用いて液体クロマトグラフィー(LC)測定を行うことにより、目的化合物の収率(反応収率)を求めることができる。
【0116】
本実施形態のハロゲン化合物の製造方法においては、目的化合物を反応溶液から精製して単離する従来公知の任意好適な工程をさらに実施してもよい。具体的には、例えば得られた反応溶液を常温に近づけた後に、適当な有機溶媒で抽出し、水で洗浄したり、溶媒を留去したりするなどの従来公知の任意好適な後処理を行うことにより、単離された目的化合物を得ることができる。
【0117】
本実施形態の反応工程に用いることができる「ハロゲン化剤」および「有機スルホン酸誘導体を含む溶媒」について説明する。
【0118】
(ハロゲン化剤)
本実施形態のハロゲン化合物の製造方法においては、ハロゲン化剤が用いられる。ハロゲン化剤としては、導入すべきハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子)に対応した任意好適な1種または2種以上のハロゲン化剤を選択して用いることができる。例えば、2種以上のハロゲン化剤を用いることによって、2種以上のハロゲン原子を含むハロゲン化合物を得ることができる。2種以上のハロゲン原子を含むハロゲン化合物を製造するにあたり、2種以上のハロゲン化剤をそれぞれ別途反応させてもよいし、2種以上のハロゲン化剤を反応系に同時に存在させることにより反応させてもよい。
【0119】
フッ素化剤であるハロゲン化剤の具体例としては、下記式(101)〜式(110)で表される化合物が挙げられる。
【0121】
塩素化剤であるハロゲン化剤の具体例としては、下記式(111)〜式(120)で表される化合物が挙げられる。
【0123】
臭素化剤であるハロゲン化剤の具体例としては、下記式(121)〜式(140)で表される化合物が挙げられる。
【0125】
ヨウ素化剤であるハロゲン化剤の具体例としては、下記式(141)〜式(145)で表される化合物が挙げられる。
【0127】
本実施形態においては、ハロゲン化剤として、臭素化剤を用いることが好ましい。臭素化剤であるハロゲン化剤としては、前記式(121)で表される化合物(臭素)、前記式(130)で表される化合物(N−ブロモスクシンイミド)、前記式(135)で表される化合物(1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン)および前記式(136)で表される化合物(ジブロモイソシアヌル酸)を用いることが好ましく、前記式(135)で表される化合物または前記式(136)で表される化合物を用いることがより好ましく、入手性に優れ、製造コストをより低減できるので、前記式(135)で表される化合物を用いることがさらに好ましい。
【0128】
(有機スルホン酸誘導体を含む溶媒)
既に説明した本実施形態の反応工程においては、有機スルホン酸誘導体を含む溶媒が用いられる。「有機スルホン酸誘導体を含む溶媒」としては、「有機スルホン酸誘導体」と「溶媒」、すなわち後述する「有機スルホン酸誘導体以外の溶媒」とを組み合わせて用いることができる。また「有機スルホン酸誘導体」と「溶媒」との組み合わせのみならず、有機スルホン酸誘導体のみ、換言すると、有機スルホン酸誘導体であって、溶媒としても機能することができる化合物を単独で用いてもよい。
【0129】
「有機スルホン酸誘導体を含む溶媒」の反応工程における用量は、ハロゲン化合物の収率を向上させる観点から、有機スルホン酸誘導体が原料化合物に対して通常0.01モル当量から100モル当量であり、好ましくは0.1モル当量から80モル当量であり、より好ましくは1モル当量から40モル当量である。
【0130】
以下、本実施形態の反応工程に用いることができる有機スルホン酸誘導体および溶媒について説明する。
【0131】
(1)有機スルホン酸誘導体
本実施形態において、有機スルホン酸誘導体とは、スルホニル基と有機基とを含む、高い電子受容性を示す化合物を意味している。有機基としては、例えばメチル基などのアルキル基、フェニル基、メチルフェニル基などの芳香族炭化水素基およびトリフルオロメチル基などのハロゲン化アルキル基が挙げられる。
【0132】
ここで、有機スルホン酸誘導体には、例えばメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸などの脂肪族スルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸など芳香族スルホン酸に加え、有機スルホン酸から誘導された種々の化合物が含まれる。有機スルホン酸誘導体としては、例えば有機スルホン酸の塩、エステル、シリルエステルおよび無水物が挙げられる。これらの有機スルホン酸誘導体は、反応系において2種以上を混在させて用いることもできる。
【0133】
特に有機スルホン酸誘導体として、pKaがより小さい有機スルホン酸誘導体を用いれば、反応工程をより穏和な条件で実施することができる。具体的には、温度条件をより常温に近い温度とし、反応時間をより短縮することができる。
【0134】
有機スルホン酸誘導体の具体例としては、下記式(201)〜式(218)で表される化合物が挙げられる。
【0136】
有機スルホン酸誘導体としては、収率の向上、副生成物の抑制などの観点から、式(201)で表される化合物(メタンスルホン酸)、式(205)で表される化合物(p−トルエンスルホン酸)、式(209)で表される化合物(トリフルオロメタンスルホン酸)、式(210)で表される化合物(トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル)または式(215)で表される化合物(ノナフルオロブタンスルホン酸)を用いることが好ましく、メタンスルホン酸またはトリフルオロメタンスルホン酸を用いることがより好ましい。これらのうち、特にメタンスルホン酸のような常温で液体である有機スルホン酸誘導体については「有機スルホン酸誘導体を含む溶媒」として、単独で用いることができる。
【0137】
このような有機スルホン酸誘導体を用いることにより、ハロゲン化剤の反応部位を電子不足な状態とすることができ、これによりハロゲン化剤の反応性をより高めることができる。
【0138】
(2)有機スルホン酸誘導体以外の溶媒
有機スルホン酸誘導体と組み合わせて用いられる有機スルホン酸誘導体以外の溶媒としては、例えば、アセトニトリル、、プロピオニトリル、ブチロニトリルおよびイソブチロニトリルなどのニトリル溶媒、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタンなどのハロゲン溶媒が挙げられる。
【0139】
本実施形態において、有機スルホン酸誘導体以外の溶媒としては、ハロゲン化合物の収率を向上させる観点から、アセトニトリル、イソブチロニトリルまたはクロロホルムを用いることが好ましい。これらの溶媒は、反応系において2種以上を混在させて用いることもできる。
【0140】
本実施形態のハロゲン化合物の製造方法は、ハロゲン化合物の収率を向上させる観点から、下記の態様とすることが、好ましい。
(i)原料化合物が前記式(1)で表される化合物であって、式(1)中、Xが硫黄原子であり、Z
1およびZ
2が炭素原子であり、R
1およびR
2がフッ素原子であり、有機スルホン酸誘導体がメタンスルホン酸またはトリフルオロメタンスルホン酸であり、ハロゲン化剤が1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン、ジブロモイソシアヌル酸またはN−ブロモスクシンイミドである態様
(ii)原料化合物が前記式(1)で表される化合物であって、式(1)中、Xが硫黄原子であり、Z
1およびZ
2が炭素原子であり、R
1およびR
2が水素原子であり、有機スルホン酸誘導体がトリフルオロメタンスルホン酸であり、ハロゲン化剤が1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントインである態様、および
(iii)原料化合物が前記式(1)で表される化合物であって、式(1)中、Xが酸素原子であり、Z
1およびZ
2が炭素原子であり、R
1およびR
2がフッ素原子であり、有機スルホン酸誘導体がトリフルオロメタンスルホン酸であり、ハロゲン化剤が1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントインまたはジブロモイソシアヌル酸である態様
【0141】
本実施形態のハロゲン化合物の製造方法によれば、ハロゲン化合物の収率(反応収率)を顕著に向上させ、副生成物の発生を効果的に抑制することができる。
【0142】
既に説明したとおり、本実施形態のハロゲン化合物の製造方法により得ることができるハロゲン化合物は、特に有機太陽電池や有機光センサー等の有機光電変換素子の機能性材料として用いられる高分子化合物の原料化合物として好適に用いることができる。しかしながら、本実施形態のハロゲン化合物はこれに限定されず、有機エレクトロルミネッセンス素子、有機薄膜トランジスタ素子などの他の電子素子の機能性材料の原料化合物としても用いることができる。
【0143】
[実施例]
以下、本発明にかかる実施例について詳細に説明する。本発明は実施例により限定されない。
【0144】
まず、実施例において用いられた測定方法について説明する。
(液体クロマトグラフィー測定)
測定対象である反応溶液をテトラヒドロフラン(THF)で希釈した試料を用いて、下記の条件で測定を行った。
装置:島津製作所製「LC−10AD」
カラム:ナカライテスク製「COSMOCIL π−NAP」(4.6mml.D.×250mm)
温度:40℃
検出波長:310nm
移動相:水およびアセトニトリル
試料注入量:5μL
【0145】
(収率(反応収率))
反応収率は、下記の方法により求めた。
ハロゲン化合物である4,7−ジブロモ−5,6−ジフルオロ−2,1,3−ベンゾチアジアゾール(東京化成工業製)、4,7−ジブロモ−2,1,3−ベンゾチアジアゾール(東京化成工業製)、4,7−ジブロモ−5,6−ジフルオロ−2,1,3−ベンゾオキサジアゾール(国際公開第WO2015/108206号に記載の方法で合成した。)を準備し、下記A液、B液、C液、D液、E液、F液およびG液を調製した。
A液:50mLメスフラスコに、各ハロゲン化合物を110mg秤量し、THFにて定容した溶液(2.2000mg/mL)
B液:20mLメスフラスコに、A液を10mL量り取り、THFにて定容した溶液(1.1000mg/mL)
C液:20mLメスフラスコに、A液を5mL量り取り、THFにて定容した溶液(0.550mg/mL)
D液:20mLメスフラスコに、A液を2mL量り取り、THFにて定容した溶液(0.2200mg/mL)
E液:50mLメスフラスコに、A液を2mL量り取り、THFにて定容した溶液(0.0880mg/mL)
F液:20mLメスフラスコに、D液を2mL量り取り、THFにて定容した溶液(0.0220mg/mL)
G液:20mLメスフラスコに、F液を2mL量り取り、THFにて定容した溶液(0.00220mg/mL)
【0146】
上記B液、C液、D液、E液、F液およびG液の6液を用いてLC測定を行い、ハロゲン化合物のピーク面積値から検量線を作成した。
【0147】
次に、後述する実施例および比較例にかかる各反応後の反応溶液を約100mg量り取り、テトラヒドロフランを用いて10mLにメスアップしてテトラヒドロフラン溶液を得た。
【0148】
得られたテトラヒドロフラン溶液を用いてLC測定を行い、実施例および比較例にかかるハロゲン化合物のピーク面積値から、検量線を用いて反応溶液中に含まれているハロゲン化合物の含有量を算出することで反応収率を得た。
【0149】
(実施例1)
下記のとおり、原料化合物である化合物1を用いて、目的化合物である化合物2(ハロゲン化合物)を得た。
【0151】
内部の雰囲気を窒素ガスで置換した100mLの3つ口フラスコに、5,6−ジフルオロ−2,1,3−ベンゾチアジアゾール(化合物1、東京化成工業製)0.516g(3.00mmol)、アセトニトリル(和光純薬製)5.20g、メタンスルホン酸(東京化成工業製)5.20gおよび1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン(東京化成工業製)1.76g(6.15mmol)を入れて攪拌し、均一な溶液とした。得られた溶液を50℃で5時間加熱攪拌して反応させることにより、目的化合物である化合物2(ハロゲン化合物)を含む反応溶液を得た。その後、得られた反応溶液を常温まで冷却した。
【0152】
次いで、上記のとおりLC測定を行って、化合物2の反応収率を求めた。この反応の反応収率は、85%であった。用いられた試薬および結果を表1にも示す(以下の実施例についても同様に示す。)。
【0153】
(実施例2)
アセトニトリルの代わりに、イソブチロニトリル(東京化成工業製)5.20gを用いた以外は実施例1と同様に反応させることにより反応溶液を得て、化合物2の反応収率を求めた。この反応の反応収率は、85%であった。
【0154】
(実施例3)
アセトニトリルの代わりに、クロロホルム(関東化学製)5.20gを用いた以外は、実施例1と同様に反応させることにより反応溶液を得て、化合物2の反応収率を求めた。この反応の反応収率は、87%であった。
【0155】
(実施例4)
内部の雰囲気を窒素ガスで置換した100mLの3つ口フラスコに、5,6−ジフルオロ−2,1,3−ベンゾチアジアゾール(化合物1、東京化成工業製)0.516g(3.00mmol)、アセトニトリル(和光純薬製)10.3g、トリフルオロメタンスルホン酸(東京化成工業製)0.945gおよび1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン(東京化成工業製)1.76g(6.15mmol)を入れて攪拌し、均一な溶液とした。得られた溶液を50℃で5時間加熱攪拌して反応させることにより、化合物2(ハロゲン化合物)を含む反応溶液を得た。その後、得られた反応溶液を常温まで冷却した。
【0156】
次いで、上記のとおりLC測定を行って、化合物2の反応収率を求めた。この反応の反応収率は、96%であった。
【0157】
(実施例5)
アセトニトリルの代わりに、イソブチロニトリル(東京化成工業製)10.3gを用いた以外は実施例4と同様に反応させることにより反応溶液を得て、化合物2の反応収率を求めた。この反応の反応収率は、88%であった。
【0158】
(実施例6)
アセトニトリルの代わりに、クロロホルム(関東化学製)10.3gを用いた以外は実施例4と同様に反応させることにより反応溶液を得て、化合物2の反応収率を求めた。この反応の反応収率は、99%であった。
【0159】
(実施例7)
内部の雰囲気を窒素ガスで置換した100mLの3つ口フラスコに、5,6−ジフルオロ−2,1,3−ベンゾチアジアゾール(化合物1、東京化成工業製)0.516g(3.00mmol)、有機スルホン酸誘導体であって溶媒を兼ねており、「有機スルホン酸誘導体を含む溶媒」に相当するメタンスルホン酸(東京化成工業製)10.3gおよび1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン(東京化成工業製)1.76g(6.15mmol)を入れて攪拌し、均一な溶液とした。得られた溶液を常温で1時間加熱攪拌して反応させることにより、化合物2(ハロゲン化合物)を含む反応溶液を得た。その後、得られた反応溶液を常温まで冷却した。
【0160】
次いで、上記のとおりLC測定を行い、化合物2の反応収率を求めた。この反応の反応収率は、99%であった。
【0161】
(実施例8)
内部の雰囲気を窒素ガスで置換した100mLの3つ口フラスコに、5,6−ジフルオロ−2,1,3−ベンゾチアジアゾール(化合物1、東京化成工業製)0.516g(3.00mmol)、クロロホルム(関東化学製)10.3g、トリフルオロメタンスルホン酸(東京化成工業製)0.945gおよびジブロモイソシアヌル酸(東京化成工業製)1.76g(6.15mmol)を入れて攪拌し、均一な溶液とした。得られた溶液を50℃で5時間加熱攪拌して反応させることにより、化合物2(ハロゲン化合物)を得た。その後、得られた反応溶液を常温まで冷却した。
【0162】
次いで、上記のとおりLC測定を行い、化合物2の反応収率を求めた。この反応の反応収率は、95%であった。
【0163】
(実施例9)
ジブロモイソシアヌル酸の代わりに、N―ブロモスクシンイミド(関東化学製)1.09g(6.15mmol)を用いた以外は実施例8と同様に反応させることにより、反応溶液を得て、化合物2の反応収率を求めた。この反応の反応収率は、99%であった。
【0164】
(実施例10)
下記のとおり、原料化合物である化合物3を用いて、目的化合物である化合物4(ハロゲン化合物)を得た。
【0166】
内部の雰囲気を窒素ガスで置換した100mLの3つ口フラスコに、2,1,3−ベンゾチアジアゾール(化合物3、東京化成工業製)0.409g(3.00mmol)、クロロホルム(関東化学製)10.3g、トリフルオロメタンスルホン酸(東京化成工業製)0.945gおよび1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン(東京化成工業製)0.870g(3.00mmol)を入れて攪拌し、均一な溶液とした。得られた溶液を50℃で5時間加熱攪拌して反応させることにより、ハロゲン化合物(化合物4)を含む反応溶液を得た。その後、得られた反応溶液を常温まで冷却した。
【0167】
次いで、上記のとおりLC測定を行い、化合物4の反応収率を求めた。この反応の反応収率は、78%であった。
【0168】
(実施例11)
下記のとおり、原料化合物である化合物5を用いて、目的化合物である化合物6(ハロゲン化合物)を得た。
【0170】
内部の雰囲気を窒素ガスで置換した100mLの3つ口フラスコに、4,7−ジブロモ−5,6−ジフルオロ−2,1,3−ベンゾオキサジアゾール(化合物5、Adv. Mater. 2016, 28, 1868−1873に記載の方法で合成した。)0.468g(3.00mmol)、クロロホルム(関東化学製)10.3g、トリフルオロメタンスルホン酸(東京化成工業製)0.945gおよび1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン(東京化成工業製)0.870g(3.00mmol)を入れて攪拌し、均一な溶液とした。得られた溶液を50℃で5時間加熱攪拌して反応させることにより、ハロゲン化合物(化合物6)を含む反応溶液を得た。その後、得られた反応溶液を常温まで冷却した。
【0171】
次いで、上記のとおりLC測定を行い、化合物6の反応収率を求めた。この反応の反応収率は、91%であった。
【0172】
(実施例12)
1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントインの代わりに、ジブロモイソシアヌル酸(東京化成工業製)0.870g(3.00mmol)を用いた以外は実施例11と同様に反応させることにより反応溶液を得て、化合物6の反応収率を求めた。この反応の反応収率は、92%であった。
【0174】
(比較例1)
内部の雰囲気を窒素ガスで置換した100mLの3つ口フラスコに、5,6−ジフルオロ−2,1,3−ベンゾチアジアゾール(化合物1、東京化成工業製)0.516g(3.00mmol)、酸であって溶媒を兼ねる濃硫酸(和光純薬製)10.3gおよび1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン(東京化成工業製)1.76g(6.15mmol)を入れて攪拌し、均一な溶液とした。得られた溶液を常温で5時間攪拌して反応させることにより、化合物2(ハロゲン化合物)を含む反応溶液を得た。
【0175】
次いで、得られた反応溶液を用いて、上記のとおりLC測定を行い、化合物2の反応収率を求めた。この反応の反応収率は、48%であった。用いられた試薬および結果を表2にも示す(以下の比較例についても同様に示す。)。
【0176】
(比較例2)
濃硫酸の代わりに、酢酸(和光純薬製)10.3gを用いた以外は比較例1と同様に反応させることにより反応溶液を得て、化合物2の反応収率を求めた。この反応の反応収率は、0%であった。
【0177】
(比較例3)
酸であって溶媒を兼ねる濃硫酸の代わりに、溶媒であるクロロホルム(関東化学製)10.3gのみを用いた以外は比較例1と同様に反応させることにより反応溶液を得て、化合物2の反応収率を求めた。この反応の反応収率は、0%であった。
【0178】
(比較例4)
1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントインの代わりに、ジブロモイソシアヌル酸(東京化成工業製)1.76g(6.15mmol)を用いた以外は比較例1と同様に反応させることにより反応溶液を得て、化合物2の反応収率を求めた。この反応の反応収率は、48%であった。
【0179】
(比較例5)
1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントインの代わりに、N−ブロモスクシンイミド(東京化成工業製)2.14g(12.0mmol)を用いた以外は比較例1と同様に反応させることにより反応溶液を得て、化合物2の反応収率を求めた。この反応の反応収率は、52%であった。
【0180】
(比較例6)
内部の雰囲気を窒素ガスで置換した100mLの3つ口フラスコに、5,6−ジフルオロ−2,1,3−ベンゾチアジアゾール(化合物1、東京化成工業製)0.516g(3.00mmol)、濃硫酸(和光純薬製)5.20g、クロロホルム(関東化学製)5.20gおよび1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン(東京化成工業製)1.76g(6.15mmol)を入れて攪拌し、均一な溶液とした。得られた溶液を常温で5時間攪拌して反応させることにより化合物2(ハロゲン化合物)を含む反応溶液を得た。
【0181】
次いで、得られた反応溶液を用いて、上記のとおりLC測定を行い、化合物2の反応収率を求めた。この反応の反応収率は、29%であった。
【0182】
(比較例7)
クロロホルムの代わりに、アセトニトリル(和光純薬製)5.20gを用いた以外は比較例6と同様に反応させることにより反応溶液を得て、化合物2の反応収率を求めた。この反応の反応収率は、10%であった。
【0183】
(比較例8)
内部の雰囲気を窒素ガスで置換した100mLの3つ口フラスコに、2,1,3−ベンゾチアジアゾール(化合物3、東京化成工業製)0.409g(3.00mmol)、酸であって溶媒を兼ねる濃硫酸(和光純薬製)10.3gおよび1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン(東京化成工業製)1.76g(6.15mmol)を入れて攪拌し、均一な溶液とした。得られた溶液を常温で5時間攪拌して反応させることにより化合物4(ハロゲン化合物)を含む反応溶液を得た。
【0184】
次いで、得られた反応溶液を用いて、上記のとおりLC測定を行い、化合物4の反応収率を求めた。この反応の反応収率は、0.7%であった。
【0185】
(比較例9)
内部の雰囲気を窒素ガスで置換した100mLの3つ口フラスコに、4,7−ジブロモ−5,6−ジフルオロ−2,1,3−ベンゾオキサジアゾール(化合物5、Adv. Mater. 2016, 28, 1868−1873に記載の方法で合成した。)0.468g(3.00mmol)、酸であって溶媒を兼ねる濃硫酸(和光純薬製)10.3gおよび1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン(東京化成工業製)1.76g(6.15mmol)を入れて攪拌し、均一な溶液とした。得られた溶液を常温で5時間攪拌して反応させることにより化合物6(ハロゲン化合物)を含む反応溶液を得た。
【0186】
次いで、得られた反応溶液を用いて、上記のとおりLC測定を行い、化合物6の反応収率を求めた。この反応の反応収率は、0.1%であった。
【0187】
(比較例10)
1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントインの代わりに、ジブロモイソシアヌル酸(東京化成工業製)1.76g(6.15mmol)を用いた以外は比較例9と同様に反応させることにより反応溶液を得て、化合物6の反応収率を求めた。この反応の反応収率は、0.8%であった。
【0189】
上記実施例および比較例から明らかなとおり、原料化合物と、ハロゲン化剤とを、有機スルホン酸誘導体を含む溶媒中で反応させることにより、目的化合物であるハロゲン化合物の収率(反応収率)を、有機スルホン酸誘導体を用いない比較例と比較して、顕著に向上させることができた。特に実施例6、7および9にかかる態様によれば、ほぼ定量的にハロゲン化合物を得ることができた。
【解決手段】下記式(1)〜式(6)で表される原料化合物と、ハロゲン化剤とを、有機スルホン酸誘導体を含む溶媒中で反応させる工程を含む、下記式(1’)〜式(6’)で表されるハロゲン化合物の製造方法。