特許第6576672号(P6576672)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6576672
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】切削装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/08 20060101AFI20190909BHJP
   B23Q 11/00 20060101ALI20190909BHJP
   B24B 27/06 20060101ALI20190909BHJP
   B24B 55/06 20060101ALI20190909BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20190909BHJP
【FI】
   B23Q11/08 B
   B23Q11/00 Q
   B24B27/06 M
   B24B55/06
   H01L21/78 F
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-86683(P2015-86683)
(22)【出願日】2015年4月21日
(65)【公開番号】特開2016-203295(P2016-203295A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2018年2月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100132067
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 喜雅
(74)【代理人】
【識別番号】100137903
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 亨
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】松山 敏文
(72)【発明者】
【氏名】野崎 真生
【審査官】 中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−271834(JP,A)
【文献】 特開2012−045689(JP,A)
【文献】 特開平10−263984(JP,A)
【文献】 特開2008−264888(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3161805(JP,U)
【文献】 特開2010−029952(JP,A)
【文献】 特開2012−104562(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/00−13/00
B24B 3/00−3/60
B24B 21/00−39/06
B24B 53/00−57/04
H01L 21/78−21/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持される被加工物を切削ブレードで切削する切削手段と、被加工物と該切削ブレードとに切削水を供給する切削水供給手段と、該チャックテーブルを該切削ブレードの切削送り方向に切削送りする切削送り手段と、該チャックテーブルを囲繞するチャックテーブルカバーと、該チャックテーブルカバーに連結し該切削送り方向に伸縮移動する蛇腹カバーと、該切削送り手段による該チャックテーブルの移動を可能にする該切削送り方向に延在し、該チャックテーブルカバーと該蛇腹カバーとで覆われる開口を有し、該切削水を受け止めるウォータケースと、を備える切削装置であって、
該蛇腹カバーは、該開口を覆う表面部と、該表面部に連接して垂下する垂下部と、を備え、
該ウォータケースは、該開口の延在方向に平行する両側において凹部を形成し該切削水を所定の水深で貯水する貯水エリアと、該貯水エリアに貯水される該切削水に該蛇腹カバーの垂下部の下端部のみを水没させ該蛇腹カバーの伸縮移動を可能にさせ該開口の延在方向に平行する両側に形成する案内部と、を備え、
該案内部を覆い該切削送り手段により該案内部で案内され伸縮する該蛇腹カバーは、該蛇腹カバーの内側で着水しないで該案内部の上面を滑走するローラを備え
該チャックテーブルカバーの該切削送り方向に平行な側面に側面開口を備える切削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物に切削水を供給しながら切削する切削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1において、ウエーハを切削ブレードで切削してチップに分割する切削装置では、切削ブレードの切削送り方向に、ウエーハを保持するチャックテーブルを移動させている。チャックテーブルを支持するチャックテーブルカバーには、切削送り方向の両側に蛇腹カバーが連結されている。蛇腹カバーは、チャックテーブルの切削送り方向の両側を覆い、且つ、切削送り方向でのチャックテーブルの動きに伴って伸縮する。
【0003】
特許文献1の切削装置では、ウエーハの切削加工中に切削ブレードに切削水が供給され、この切削水は、蛇腹カバーで受け止められてからウォータケースに流れ落ち、ウォータケースの内部に貯水される。蛇腹カバーの下側領域は、ウォータケースに貯水される切削水に浸漬し、ウォータシールを形成している。このウォータシールによって、切削時に噴霧状になった切削水がウォータケースの開口内に浸入することが規制される。この結果、ウォータケースの下方に位置する切削送り軸等に噴霧状の切削水が巻き込まれて濡れることが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−271834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の蛇腹カバーにあっては、ウォータケースに貯水される切削水に対し、下側領域が浸漬される深さについて開示がないものである。このため、チャックテーブルの切削送りが高速になる程、蛇腹カバーの下部領域によって貯水される切削水がかき乱され易くなる。これにより、ウォータシールを形成できるものの、かき乱された切削水が飛び跳ねて切削送り軸を漏水させないようにする点で改善の余地がある。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、噴霧状となった切削水がウォータケースの開口内に巻き込まれることを防止しつつ、チャックテーブルの切削送りによって切削水が飛び跳ねることを抑制することを防止できる切削装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の切削装置は、被加工物を保持するチャックテーブルと、チャックテーブルに保持される被加工物を切削ブレードで切削する切削手段と、被加工物と切削ブレードとに切削水を供給する切削水供給手段と、チャックテーブルを切削ブレードの切削送り方向に切削送りする切削送り手段と、チャックテーブルを囲繞するチャックテーブルカバーと、チャックテーブルカバーに連結し切削送り方向に伸縮移動する蛇腹カバーと、切削送り手段によるチャックテーブルの移動を可能にする切削送り方向に延在し、チャックテーブルカバーと蛇腹カバーとで覆われる開口を有し、切削水を受け止めるウォータケースと、を備える切削装置であって、蛇腹カバーは、開口を覆う表面部と、表面部に連接して垂下する垂下部と、を備え、ウォータケースは、開口の延在方向に平行する両側において凹部を形成し切削水を所定の水深で貯水する貯水エリアと、貯水エリアに貯水される切削水に蛇腹カバーの垂下部の下端部のみを水没させ蛇腹カバーの伸縮移動を可能にさせ開口の延在方向に平行する両側に形成する案内部と、を備え、案内部を覆い切削送り手段により案内部で案内され伸縮する蛇腹カバーは、蛇腹カバーの内側で着水しないで案内部の上面を滑走するローラを備え、チャックテーブルカバーの切削送り方向に平行な側面に側面開口を備えることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、ウォータケースの貯水エリアに貯水される切削水に蛇腹カバーの垂下部の下端部のみを水没させている。言い換えると、貯水エリアに貯水される切削水の深さに対し、水没される蛇腹カバーの下端部の液面からの深さを十分に小さくすることができる。よって、切削加工によって噴霧状となった切削水がウォータケースの開口内に巻き込まれることを規制しつつ、チャックテーブルの切削送りに伴い蛇腹カバーが伸縮移動しても、貯水エリアに貯水される切削水の波立ちを抑えることができる。その結果、貯水される切削水が蛇腹カバーによってかき乱されることを抑制でき、蛇腹カバーの内側で切削水が飛び跳ねてウォータケースの開口内の部材等が濡れることを防止できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、噴霧状となった切削水がウォータケースの開口内に巻き込まれることを防止しつつ、チャックテーブルの切削送りによって切削水が飛び跳ねることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施の形態に係るチャックテーブル周辺の構成部品が搭載された切削装置を示す斜視図である。
図2】本実施の形態に係るチャックテーブルカバーを示す斜視図である。
図3】本実施の形態に係るチャックテーブルカバー及びその周辺構造の概略断面図である。
図4】本実施の形態に係る蛇腹カバー及びその周辺構造の概略断面図である。
図5】変形例に係る蛇腹カバーの周辺構造の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本実施の形態に係る切削装置について説明する。図1は、本実施の形態に係るチャックテーブル周辺の構成部品が搭載された切削装置を示す斜視図である。
【0013】
図1に示すように、切削装置1は、被加工物Wに対して切削ブレード55を相対移動させることで、被加工物Wを個々のチップに分割するように構成されている。なお、被加工物Wは、シリコン、ガリウム砒素等の半導体基板にIC、LSI等のデバイスが形成された半導体ウェーハでもよいし、セラミック、ガラス、サファイア系の無機材料基板にLED等の光デバイスが形成された光デバイス板状物でもよい。
【0014】
切削装置1の基台11上には、チャックテーブル12をX軸方向に移動する切削送り手段13が設けられている。切削送り手段13は、基台11上に配置されたX軸方向に平行な一対のガイドレール21と、一対のガイドレール21にスライド可能に設置されたモータ駆動のX軸テーブル22とを有している。X軸テーブル22の上部には、チャックテーブル12が設けられている。また、X軸テーブル22の背面側には、図示しないナット部が形成され、このナット部にボールネジ23が螺合されている。そして、ボールネジ23の一端部に連結された駆動モータ24が回転駆動されることで、チャックテーブル12がガイドレール21に沿って切削ブレード55(後述)の切削送り方向(X軸方向)に切削送りされる。
【0015】
チャックテーブル12は、円板状に形成されており、X軸テーブル22の上面に回転可能に設けられている。チャックテーブル12の上面には、ポーラスセラミックス材により保持面25が形成されている。保持面25は、チャックテーブル12内の流路を通じて吸引源(不図示)に接続されており、保持面25上に生じる負圧によって被加工物Wが吸着保持される。チャックテーブル12の周囲には、一対の支持アームを介して2つのクランプ部26が設けられ、被加工物Wの周囲のフレームFが径方向両側から挟持固定される。
【0016】
切削装置1の基台11上には、切削手段15をチャックテーブル12の上方でY軸方向及びZ軸方向に移動する切削手段移動機構14が設けられている。切削手段移動機構14は、基台11上に配置されたY軸方向に平行な一対のガイドレール41と、一対のガイドレール41にスライド可能に設置されたモータ駆動のY軸テーブル42とを有している。Y軸テーブル42は上面視矩形状に形成されており、そのX軸方向における一端部には側壁部43が立設している。
【0017】
また、切削手段移動機構14は、側壁部43の壁面に設置されたZ軸方向に平行な一対のガイドレール44(1つのみ図示)と、一対のガイドレール44にスライド可能に設置されたZ軸テーブル45とを有している。Z軸テーブル45には、チャックテーブル12に向ってY軸方向に延在するスピンドル46が片持で支持されている。また、Y軸テーブル42、Z軸テーブル45の背面側には、それぞれ図示しないナット部が形成され、これらナット部にボールネジ47(Z軸テーブル45の背面側のボールネジは不図示)が螺合されている。そして、ボールネジ47(Z軸テーブル45の背面側のボールネジは不図示)の一端部に連結された駆動モータ51、52が回転駆動されることで、切削手段15がガイドレール41、44に沿ってY軸方向及びZ軸方向に移動される。
【0018】
切削手段15は切削ブレード55を有しており、切削ブレード55は、スピンドル46のスピンドル軸(不図示)の先端に設けられている。切削ブレード55は、ダイアモンド砥粒をレジンボンドで固めて円形にしたレジンブレードで構成されている。切削ブレード55はブレードカバー56によって周囲が覆われており、ブレードカバー56には切削部分に向けて切削水を供給する切削水供給手段としての噴射ノズル57が設けられている。切削手段15は、切削ブレード55を高速回転させ、複数の噴射ノズル57から切削部分である被加工物Wと切削ブレード55とに切削水を噴射しつつ被加工物Wを切削加工する。
【0019】
チャックテーブル12は、チャックテーブル12を囲繞するチャックテーブルカバー27により、回転可能に支持されている。図2は、本実施の形態に係るチャックテーブルカバーを示す斜視図である。図3は、本実施の形態に係るチャックテーブルカバー及びその周辺構造を示す断面模式図である。図2に示すように、チャックテーブルカバー27は、上面視で方形状に形成された頂壁31と、頂壁31の四辺となる外周から垂下された第1外壁32及び第2外壁33とを備えている。第1外壁32は、チャックテーブルカバー27のY軸方向両側の側面を形成し、X軸方向(切削送り方向)に平行に延在している。第2外壁33は、チャックテーブルカバー27のX軸方向両側に形成され、第2外壁33の外面は蛇腹カバー装着面35として形成される。
【0020】
第1外壁32は、その下端側を上方に凹ませるように形成された側面開口36を備えている。図3にも示すように、各第1外壁32の内側には、内壁37が第1外壁32と平行にそれぞれ設けられている。内壁37は、頂壁31の下面から垂下し、X軸方向の両側が第2外壁33の内面に連接している。第1外壁32及び内壁37の各下端の高さ位置は、略同一に設定されている。
【0021】
図1に示すように、チャックテーブルカバー27の各蛇腹カバー装着面35には、チャックテーブル12のX軸方向両側を覆う蛇腹カバー80が連結される。図4は、本実施の形態に係る蛇腹カバー及びその周辺構造の概略断面図である。図4に示すように、蛇腹カバー80は、蛇腹状に形成されてX軸方向に伸縮移動するカバー本体81と、カバー本体81の下面側に設けられた複数の支持部82とを備えている。カバー本体81は、後述するウォータケース61の開口62を覆う表面部81aと、表面部81aに連続して設けられ、表面部81aの延在方向に直交する方向の両端から下方に垂下する垂下部81bとを有している。すなわち、垂下部81bは、表面部81aに連接して垂下し、上下方向に延在して設けられている。垂下部81bの下端の高さ位置は、第1外壁32及び内壁37の各下端の高さ位置と略同一に設定されている(図3参照)。
【0022】
支持部82は、カバー本体81の下面側に設けられ、例えば、カバー本体81の延在方向中間にある不図示の補強板から下側に突出するように複数設けられている。支持部82は、後述する案内部68の上面を滑走するローラ83と、カバー本体81に取り付けられてローラ83を回転可能に支持するブラケット84とを備えている。ローラ83は、弾性材料からなるタイヤで構成される。
【0023】
チャックテーブルカバー27及び蛇腹カバー80は、ウォータケース61の内部に配置されている。図1に示すように、ウォータケース61は、中央に開口62を形成するように枠状に形成されている。この開口62は、切削送り手段13によるチャックテーブル12の移動を可能にするよう切削送り方向(X軸方向)に延在し、チャックテーブルカバー27と蛇腹カバー80とで覆われている。ウォータケース61は、蛇腹カバー80等から流出される切削水を受け止めて排出する役割を果たす。
【0024】
図3に戻り、ウォータケース61は、底壁部63と、底壁部63から起立する外側壁64及び内側壁65とを備え、内側壁65によって囲まれた空間が開口62とされる。ウォータケース61は、切削水を貯水する貯水エリア66を形成し、この貯水エリア66は、底壁部63、外側壁64及び内側壁65の内側空間とされる。貯水エリア66は、開口62の延在方向に平行する両側、すなわち、開口62の断面となるY軸方向両側に凹部として形成されてなる。貯水エリア66では、後述するように切削水を所定の水深で貯水する。
【0025】
底壁部63は、断面視でクランク状に形成されており、外側壁64側に上底部63aが形成される一方、内側壁65側に上底部63aより低くなる下底部63bが形成されている。従って、貯水エリア66は、上底部63aの上方で貯水する浅底エリア66aと、浅底エリア66aより深くなるよう下底部63bの上方で貯水する深底エリア66bとを有している。浅底エリア66aにおいて、上底部63aより高い位置に排水孔71が配設されている。排水孔71にはドレイン72が接続され、排水孔71及びドレイン72を介して切削水が外部に排出される。従って、貯水エリア66に貯水される切削水の液面L1は、常時は、排水孔71の高さ位置に設定される。なお、貯水エリア66に深さが異なる2つのエリア66a、66bを形成したので、貯水エリア66の全てを深底エリア66bと同じ深さとする構成に比べ、貯水される切削水の量を減らすことができる。
【0026】
なお、貯水エリア66は、底壁部63を断面視でクランク状に形成している構成としたが、所定の深さの貯水エリア66が形成されればよく、図5に示すように、垂下部81bの外側に、開口62の延在方向に延在する貯水壁66cを底壁部63の上面から立設させ、浅底エリア66aと深底エリア66bとを備えず貯水エリア66を形成させてもよい。つまり、貯水壁66cを超えた切削水を排水させ、貯水壁66cを超えない切削水が貯水エリア66に貯水される。
【0027】
深底エリア66b内には、図4に示すように、蛇腹カバー80の垂下部81bの下端部が配設される。また、深底エリア66b内には、図3に示すように、チャックテーブルカバー27の第1外壁32及び内壁37の各下端部が配設される。ここで、切削水の液面L1が排水孔71の高さ位置となるよう深底エリア66b内に所定の深さで貯水されると、垂下部81b、第1外壁32及び内壁37は、その下端部のみが水没される。言い換えると、蛇腹カバー80の垂下部81b等の下端部は、深底エリア66bに浸漬された状態で、深底エリア66bに貯水される切削水の深さDに対し、水没される垂下部81bの下端部における水没量dが十分に小さくなる。
【0028】
内部飛沫防止プレート67は、概して板状部材で構成され、内側壁65の高さ方向中央近傍において、切削送り方向(X軸方向)に延在して設けられている。内部飛沫防止プレート67は、貯水エリア66の切削水が液面で飛び跳ねた際、かかる飛び跳ねを上から抑えて開口部62内に切削水が浸入することを防止する。なお、内部飛沫防止プレート67の高さ位置は、側面開口36の内周上端部より低く、内壁37の下端より高い位置に設定されている。
【0029】
内側壁65の上部には、概して板状をなす案内部68が設けられている。案内部68は、開口67の延在方向に平行する両側、すなわち、Y軸方向両側に形成されている。案内部68は、その上面をローラ83が滑走することで、蛇腹カバー80の伸縮移動を案内する。なお、案内部68の厚みやブラケット84の長さ等を変えることによって、深底エリア66bにおいて、水没される垂下部81bの下端部における水没量dが調整される。なお、後述するように案内部68は内部飛沫防止プレート67に設けられ、ローラ83は内部飛沫防止プレート67の上を滑走してもよい。
【0030】
本実施の形態に係る切削装置1において、切削送り手段13によりチャックテーブル12が移動すると、蛇腹カバー81に覆われた案内部68の上面をローラ83が滑走され、蛇腹カバー81がX軸方向に伸縮移動する。この状態で、ローラ83は、貯水エリア66の切削水に着水しないで蛇腹カバー81の内側に配設される。
【0031】
切削装置1における切削加工では、高速回転する切削ブレード55(図1参照)に切削水が噴射される。噴射された切削水は、チャックテーブルカバー27及び蛇腹カバー80で受け止められてウォータケース61の貯水エリア66に流れ落ちる。ここで、チャックテーブルカバー27及び蛇腹カバー81は、開口62を覆っているので、開口62内の切削送り手段13に切削水が浸入するのを防止する役割を果たしている。
【0032】
切削時において、噴射された切削水の一部は霧状になり、チャックテーブルカバー27や蛇腹カバー80の内側に回り込む。ここで、図3に示すように、貯水エリア66に貯水された切削水に対し、内壁37の下端部が水没されてウォータシールが形成される。このウォータシールによって、チャックテーブルカバー27の外部と開口62とに通じる隙間が塞がれ、霧状の切削水が開口62側に浸入することが防止される。また、図4に示すように、垂下部81bの下端部においても、貯水エリア66の切削水に水没されてウォータシールを形成しており、蛇腹カバー80の外部と開口62とに通じる隙間が塞がれ、霧状の切削水が開口62側に浸入することが防止される。これらのウォータシールによって、霧状になった切削水が開口62内に浸入し、開口62の下方に位置する切削送り手段13(図1参照)に巻き込まれるのを防止させている。
【0033】
ウォータシールを形成した状態において、垂下部81bの下端部は切削水に水没されるので、切削時における蛇腹カバー80の伸縮移動によって、深底エリア66bの液面L1付近の切削水をかき乱すこととなる。ところが、蛇腹カバー80における垂下部81bの下端部のみが、切削水の液面L1よりもわずかに下方側に配置されるので、蛇腹カバー80が伸縮移動しても、深底エリア66bに貯水される切削水の波立ちを抑えることができる。言い換えると、深底エリア66bに貯水される切削水の深さDに対し、水没される垂下部81bの下端部における水没量dが十分に小さくなるので、切削送り速度を高速としても、切削水が内側壁65より高く飛び跳ねなくなる。その結果、飛び跳ねた切削水がウォータケース61の開口62内に浸入し、開口62内に配置されている切削送り手段13等が濡れて、劣化することを回避することができる。
【0034】
ここで、蛇腹カバー80の伸縮移動によって、液面L1の高さや垂下部81bの下端部の高さは若干変位するが、かかる変位が生じても、液面L1と垂下部81bとの間に隙間が生じないような水没量dに設定される。つまり、水没量dは、蛇腹カバー80の伸縮移動によって、上述のウォータシール機能と、開口62内に浸入するような切削水の飛び跳ねを規制する機能とを同時に達成することができる値に設定される。ここにおいて、本明細書及び特許請求の範囲において、上記水没量dで水没した状態を、「蛇腹カバーの下端部のみ」が水没した状態とする。具体的な一例を挙げると、深底エリア66bに貯水される切削水の深さDを20mmとした場合、水没される垂下部81bの下端部における水没量dとして3mmとすることができる。
【0035】
一方、チャックテーブルカバー27の切削送り方向の移動により、貯水エリア66における切削水の液面L1が液面L2に上昇しても、側面開口36から水を流出させることができる。よって、チャックテーブルカバー27を高速で移動しても、第1外壁32の内側で切削水の液面が大きく上昇することを抑制でき、切削水が内側壁65を超えて開口62内の切削送り手段13に浸入することを防止できる。
【0036】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状、方向などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0037】
蛇腹カバー80の支持部82は、カバー本体81の垂下部81bの一部から内側に突出するように複数設けられていてもよい。このとき、案内部68は、上述のとおり内側壁65の上部や内部飛沫防止プレート67の上側、下側に設けられていてもよいし、内部飛沫防止プレート67に設けられ、内部飛沫防止プレート67を案内部として利用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
以上説明したように、本発明は、噴霧状となった切削水がウォータケースの開口内に巻き込まれることを防止しつつ、チャックテーブルの切削送りによって切削水が飛び跳ねることを抑制する効果を有し、特に、被加工物に切削水を供給しながら切削する切削装置において有用である。
【符号の説明】
【0039】
12 チャックテーブル
13 切削送り手段
15 切削手段
27 チャックテーブルカバー
36 側面開口
55 切削ブレード
57 (切削水供給手段としての)噴射ノズル
61 ウォータケース
62 開口
66 貯水エリア
68 案内部
80 蛇腹カバー
81 カバー本体
81a 表面部
81b 垂下部
83 ローラ
W 被加工物
図1
図2
図3
図4
図5