特許第6576710号(P6576710)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6576710
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】ペースト状食品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/105 20160101AFI20190909BHJP
   A23L 29/219 20160101ALI20190909BHJP
   A23L 13/40 20160101ALI20190909BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20190909BHJP
   A23L 33/185 20160101ALI20190909BHJP
【FI】
   A23L33/105
   A23L29/219
   A23L13/40
   A23L33/10
   A23L33/185
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-129862(P2015-129862)
(22)【出願日】2015年6月29日
(65)【公開番号】特開2017-12029(P2017-12029A)
(43)【公開日】2017年1月19日
【審査請求日】2018年4月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001421
【氏名又は名称】キユーピー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】黒木 瑛莉奈
(72)【発明者】
【氏名】内藤 和子
(72)【発明者】
【氏名】本多 優美
【審査官】 斉藤 貴子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−083617(JP,A)
【文献】 特開2005−110677(JP,A)
【文献】 特開2000−300215(JP,A)
【文献】 特開2011−109945(JP,A)
【文献】 特開2005−287326(JP,A)
【文献】 特開平10−179096(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L13/00
A23L17/00
A23L33/00
A23L29/00
A23L35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
肉類を含有し、
水分含有量75%以上のペースト状食品の製造方法において、
乾燥重量換算で0.5〜5%の豆類と、
0.5〜5%の加工澱粉及び/又は湿熱処理澱粉を含有し、
前記豆類及び前記加工澱粉及び/又は湿熱処理澱粉をペースト化処理する工程を含み、
前記豆類が油脂との吸着処理をしたものである、
ペースト状食品の製造方法
【請求項2】
請求項1に記載のペースト状食品の製造方法であって、
さらにキサンタンガムを含有する、
ペースト状食品の製造方法
【請求項3】
請求項1又は2に記載のペースト状食品の製造方法であって、
タンパク質含有量が2.0〜7.0%、
タンパク質含有量1部に対する脂質含有量が0.3〜3部である、
ペースト状食品の製造方法
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のペースト状食品の製造方法であって、
前記豆類がヒヨコマメ属、ササゲ属、エンドウ属またはインゲンマメ属に属する豆類から
選ばれる1種又は2種以上である、
ペースト状食品の製造方法

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分含有量75%以上のペースト状食品であっても、適度なざらつきやボディ感を有し、肉類の素材感が感じられるペースト状食品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
社会の高齢化に伴い、咀嚼・嚥下困難者用加工食品に対する需要は著しく高まっている。特に、ペースト状食品は、家庭で作るにはミキサーや裏ごし機等を必要とするために、簡便に使用できる加工食品が強く望まれている。
【0003】
咀嚼・嚥下困難者用ペースト状食品市場において、畜肉や魚介類の肉を含む肉類のフレーバーは人気の味である。肉類はタンパク質を豊富に含むため、栄養強化の観点からも好ましい原料である。
一方で、肉類の含有量が多すぎると、製造途中の加熱工程で変性したタンパク質が凝集して固形物となり、ペースト状食品が不均一になりやすい。その場合、誤嚥を生じてしまう可能性があるため、咀嚼・嚥下困難者用食品として好ましくない。
したがって、咀嚼・嚥下困難者用ペースト状食品に肉類をあまり多く配合することができず、水分を増やしたうえで増粘剤や澱粉等を用いて粘度をつけるのが一般的である。
【0004】
しかしながら、例えば特許文献1のように増粘剤や澱粉を用いて粘度をつけると、とろみのあるペーストになってしまい、肉類とはかけ離れた状態になってしまう。すなわち、ペースト状でありながら、配合している肉類の素材感を感じ、かつ嚥下に支障なく安心して食事を楽しむことができる咀嚼・嚥下困難者用食品はこれまでになく、消費者からは強く望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開第2013−85512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者は、肉類の素材感を感じられるペースト状食品とするためには、肉類の風味を感じられるだけでなく、
食した時に適度なざらつきやボディ感を感じられることが重要であると見出した。
そこで、本発明は、水分含有量75%以上のペースト状食品であっても、適度なざらつきやボディ感を有し、肉類の素材感が感じられるペースト状食品及びその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の原料を配合することにより、
適度なざらつきやボディ感を有し、肉類の素材感が感じられるペースト状食品を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本発明は、
(1)肉類を含有し、水分含有量75%以上のペースト状食品において、
乾燥重量換算で0.5〜5%の豆類と、
0.5〜5%の加工澱粉及び/又は湿熱処理澱粉を含有する、
ペースト状食品、
(2)(1)記載のペースト状食品であって、
さらにキサンタンガムを含有する、
ペースト状食品、
(3)(1)又は(2)に記載のペースト状食品であって、
タンパク質含有量が2.0〜7.0%、
タンパク質含有量1部に対する脂質含有量が0.3〜3部である、
ペースト状食品、
(4)(1)乃至(3)のいずれかに記載のペースト状食品であって、
前記豆類がヒヨコマメ属、ササゲ属、エンドウ属またはインゲンマメ属に属する豆類から選ばれる1種又は2種以上である、
ペースト状食品、
(5)(1)乃至(4)のいずれかに記載のペースト状食品の製造方法であって、
豆類及び加工澱粉及び/又は湿熱処理澱粉をペースト化処理する工程を含む、
ペースト状食品の製造方法、
(6)(5)に記載のペースト状食品の製造方法であって、
前記豆類が油脂との吸着処理をしたものである、
ペースト状食品の製造方法、
である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、適度なざらつきやボディ感を有し、肉類の素材感が感じられるペースト状食品及びその製造方法を提供することができ、
介護食市場のさらなる拡大に貢献することが期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明のペースト状食品を詳述する。なお、本発明において「%」は「質量%」、「部」は「質量部」を意味する。また、本発明における水分含有量、タンパク質含有量及び脂質含有量は、五訂日本食品標準成分表に記載されている測定法に従って算出する。具体的には、水分含有量は減圧加熱乾燥法、タンパク質含有量はケルダール法、脂質含有量は酸分解法により算出される。
【0011】
<本発明の特徴>
本発明は、乾燥重量換算で0.5〜5%の豆類と、0.5〜5%の加工澱粉及び/又は湿熱処理澱粉を含有することにより、水分含有量75%以上であっても、適度なざらつきやボディ感を有し、肉類の素材感が感じられるペースト状食品及びその製造方法であることに特徴を有する。
【0012】
<ペースト状食品>
本発明のペースト状食品は、ペースト状の食品であればいずれのものでもよい。
前記ペースト状とは、原料をすり潰したり裏ごししたりして得られた状態をさす。
ペースト化の程度は特に限定していないが、咀嚼・嚥下困難者用食品としてふさわしいことから、最長辺の長さが1mm以上の原料が残らないように処理されたものであるとよい。
【0013】
<肉類>
本発明における肉類は、牛肉、豚肉、鶏肉等の畜肉、タラ、サケ、サワラ、貝類等の魚介類の肉を含むものである。中でも、本発明の効果を得られ易いことから、魚介類の肉とすることができる。
本発明のペースト状食品に配合する肉類の種類や状態は特に限定されず、生の状態のものを用いてもよいし、加熱、冷凍、乾燥、塩蔵等されたのものを用いてもよい。
【0014】
<ペースト状食品の水分含有量>
本発明のペースト状食品の水分含有量は、75%以上であり、さらに80%以上とすることができる。
ペースト状食品の水分含有量が前記範囲内であると、肉類の素材感が感じられないという本発明の課題がより顕著になるため、本発明の効果が得られ易い。
【0015】
<豆類>
本発明のペースト状食品は、豆類を含有する。
豆類は、適度なざらつきやボディ感を有し、肉類の素材感が感じられるペースト状食品が得られ易いことから、ペースト状食品中で、粒が目視で確認できないくらいまですりつぶされたペースト状であるとよい。
【0016】
<豆類の種類>
本発明のペースト状食品に用いる豆類の種類は、特に限定されず、例えば、ひよこ豆等のヒヨコマメ属、小豆、緑豆等のササゲ属、エンドウ豆等のエンドウ属、白いんげん豆等のインゲンマメ属、大豆等のダイズ属、レンズマメ等のヒラマメ属等に属する豆類が挙げられる。
中でも、適度なざらつきやボディ感を有し、肉類の素材感が感じられるペースト状食品が得られ易いことから、ヒヨコマメ属、ササゲ属、エンドウ属、またはインゲンマメ属に属する豆類から選ばれる1種又は2種以上であるとよく、特にヒヨコマメ属に属する豆類であるとよい。
【0017】
<豆類の含有量>
本発明のペースト状食品における前記豆類の含有量は、乾燥重量で、ペースト状食品全体の0.5〜5%であり、1〜3%であるとよい。
豆類の含有量が前記範囲を下回ると、適度なざらつきやボディ感を付与することができず、肉類の素材感が感じられるペースト状食品を得られない。また、前記範囲を上回ると、豆類の風味が強くでてしまうため、肉類本来の風味が損なわれ、肉類の素材感を感じられなくなる。
【0018】
<加工澱粉及び/又は湿熱処理澱粉>
本発明のペースト状食品は、加工澱粉及び/又は湿熱処理澱粉を含有する。
本発明に用いる加工澱粉としては、小麦粉澱粉、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉、米澱粉、タピオカ澱粉に、常法により架橋処理、エステル化処理、エーテル化処理、酸化処理などの一種又は二種以上の処理を行った架橋澱粉、酸化澱粉、エーテル化澱粉、エステル化澱粉等が挙げられ、具体的には、アセチル化アジピン酸架橋澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉、アセチル化酸化澱粉、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウム、酢酸澱粉、酸化澱粉、ヒドロキシプロピル澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、リン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉、リン酸架橋澱粉、リン酸化澱粉等である。
また、本発明に用いる湿熱処理澱粉としては、小麦粉澱粉、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉、米澱粉、タピオカ澱粉に、常法により湿熱処理を行ったものが挙げられる。
これらの中でも、適度なざらつきやボディ感を有し、肉類の素材感が感じられるペースト状食品が得られ易いことから、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉及び/又は湿熱処理澱粉であるとよい。
【0019】
<加工澱粉及び/又は湿熱処理澱粉の含有量>
本発明のペースト状食品における加工澱粉及び/又は湿熱処理澱粉の含有量は、ペースト状食品全体の0.5〜5%であり、さらに1〜3%とすることができる。加工澱粉及び/又は湿熱処理澱粉の含有量が前記範囲外であると、適度なざらつきやボディ感を付与できず、肉類の素材感が感じられるペースト状食品を得ることができない。
【0020】
<キサンタンガム>
本発明のペースト状食品は、キサンタンガムを含有するとよい。
キサンタンガムの含有量は、適度なざらつきやボディ感を有し、肉類の素材感が感じられるペースト状食品が得られ易いことから、0.01〜0.5%であるとよく、さらに0.05〜0.3%であるとよい。
【0021】
<ペースト状食品のタンパク質含有量>
本発明のペースト状食品のタンパク質含有量は、2.0〜7.0%であるとよく、さらに2.5〜5.0%であるとよい。
タンパク質含有量が前記範囲内であることにより、適度なざらつきやボディ感を有し、肉類の素材感が感じられるペースト状食品が得られ易い。タンパク質含有量が前記範囲を上回ると、舌でつぶした時にざらつきが舌に残ってしまい、嚥下に支障が生じてしまう恐れが高くなる。
【0022】
<タンパク質含有量1部に対する脂質含有量>
本発明のペースト状食品は、タンパク質含有量1部に対する脂質含有量が0.5〜3部であるとよく、さらに0.7〜2部であるとよい。
タンパク質含有量に対する脂質含有量が前記範囲内であることにより、適度なざらつきやボディ感を有し、肉類の素材感が感じられるペースト状食品が得られ易い。
【0023】
<ペースト状食品の脂質含有量>
本発明のペースト状食品の脂質含有量は、2.0〜7.0%であるとよく、さらに2.5〜6.0%であるとよい。
脂質含有量が前記範囲内であることにより、適度なざらつきやボディ感を有し、肉類の素材感が感じられるペースト状食品が得られ易い。
【0024】
<製造方法>
本発明のペースト状食品は、常法に則り製造することができ、例えば原料すべてをミキサーに投入しペースト化処理した後に容器へ充填・密封し、レトルト殺菌を施すことで得られる。
ただし、後述する方法にて下処理した豆類をペースト化処理することにより、適度なざらつきやボディ感を有し、肉類の素材感が感じられるペースト状食品が得られ易い。
【0025】
<豆類の下処理>
本発明に用いる豆類は、ペースト化処理を行う前に、油脂を吸着させる下処理を行うとよい。
前記下処理を行うことにより、タンパク質の細かい凝集物が生じやすくなり、適度なざらつきとボディ感を有し、肉類の素材感が感じられるペースト状食品が得られ易い。
豆類に油脂を吸着させる方法は、例えば、豆類を油脂と混合することで吸着させる方法や、油脂を付着させた原料と混合することで吸着させる方法等が挙げられる。
【実施例】
【0026】
以下、本発明について、実施例、試験例に基づき具体的に説明する。なお、本発明は、これらに限定するものではない。
また、本実施例で調製したペースト状食品は全て水分含有量75%以上であった。
【0027】
[実施例1]
配合表1に記載の配合にしたがって、実施例1のペースト状食品を調製した。
具体的には、まず、ペースト化していない丸のままの生のひよこ豆と菜種油を混合し、油脂をひよこ豆に吸着させた。その後、他の原料とともにミキサーへ投入し、5分間ペースト化処理を行った。これをレトルトパウチに充填・密封し、121℃で20分間のレトルト処理を施すことで、実施例1のペースト状食品を得た。
なお、実施例1のペースト状食品は、タンパク質含有量が3.1%、タンパク質含有量1部に対する脂質含有量が1部であった。
【0028】
[配合表1]
白身魚(タラ) 15%
タマネギ 10%
ジャガイモ 7%
ひよこ豆 1.5%(乾燥重量)
ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉 1.5%
キサンタンガム 0.2%
菜種油 3%
清水で 100%
【0029】
実施例1で調製したペースト状食品を実際に食したところ、適度なざらつきとボディ感を有し、肉類の素材感が強く感じられるペースト状食品であった。
【0030】
[比較例1]
豆類の有無が、本発明のペースト状食品の肉類の素材感に与える影響を調べるため、実施例1のひよこ豆をジャガイモ1.5%に置き換えた以外は実施例1と同様にペースト状食品を調製し、比較例1とした。なお、比較例1のペースト状食品は、タンパク質含有量が2.8%、タンパク質含有量1部に対する脂質含有量が1.1部であった。
【0031】
比較例1で調製したペースト状食品を実際に食したところ、とろとろしていて、適度なざらつきとボディ感が感じられず、肉類の素材感が感じられなかった。
【0032】
[比較例2]
加工澱粉及び/又は湿熱処理澱粉の有無が、本発明のペースト状食品の肉類の素材感に与える影響を調べるため、実施例1のヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉を未加工の小麦粉澱粉1.5%に置き換えた以外は実施例1と同様にペースト状食品を調製し、比較例2とした。なお、比較例2のペースト状食品は、タンパク質含有量が3.1%、タンパク質含有量1部に対する脂質含有量が1部であった。
【0033】
比較例2で調製したペースト状食品を実際に食したところ、適度なざらつきとボディ感が感じられず、肉類の素材感が感じられなかった。
【0034】
[試験例1]
豆の含有量が本発明のペースト状食品の肉類の素材感に与える影響を調べるため、試験例1を行った。
具体的には、表1に記載のようにひよこ豆の含有量を変更した以外は、実施例1と同様にペースト状食品を調製し、実施例2,3及び比較例3とした。
続いて、調製したペースト状食品を食して、肉類の素材感が感じられるか下記の評価基準を用いて評価を行った。
なお、試験例1で製したペースト状食品はすべて、タンパク質含有量が2.0〜7.0%、タンパク質含有量1部に対する脂質含有量が0.3〜3部の範囲内であった。
【0035】
[評価基準]
◎:適度なざらつきやボディ感を有し、肉類の素材感が強く感じられた。
〇:適度なざらつきやボディ感を有し、肉類の素材感が感じられた。
△:肉類の素材感はやや感じにくかったが、問題のない範囲であった。
×:適度なざらつきとボディ感が感じられず、肉類の素材感が感じられなかった。
【0036】
[表1]
【0037】
表1より、豆類の含有量は、0.5〜5%であり、さらに1〜3%であると、適度なざらつきやボディ感を有し、肉類の素材感が感じられるペースト状食品が得られ易いことが理解できる。
なお、実施例3は、適度なざらつきとボディ感は得られたものの、豆の風味がペースト状食品の風味に影響し、肉類の素材感を損ねやすい傾向であり、比較例3は豆の風味が強くでてしまい、肉類本来の風味が損なわれ、肉類の素材感を感じられなかった。
【0038】
[試験例2]
澱粉の含有量が本発明のペースト状食品の肉類の素材感に与える影響を調べるため、試験例2を行った。
具体的には、表2に記載のようにヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉の含有量を変更した以外は、実施例1と同様にペースト状食品を調製し、実施例4,5及び比較例4とした。
続いて、調製したペースト状食品を食して、肉類の素材感が感じられるか試験例1の評価基準を用いて評価を行った。
なお、試験例2で製したペースト状食品はすべて、タンパク質含有量が3.1%、タンパク質含有量1部に対する脂質含有量が1部であった。
【0039】
[表2]
【0040】
表2より、澱粉の含有量は、0.5〜5%であり、さらに1〜3%であると、適度なざらつきやボディ感を有し、肉類の素材感が感じられるペースト状食品が得られ易いことが理解できる。
【0041】
[試験例3]
豆類の種類が本発明のペースト状食品の肉類の素材感に与える影響を調べるため、試験例3を行った。
具体的には、表3に記載のように豆類の種類を変更した以外は、実施例1と全く同様にペースト状食品を調製し、実施例6乃至8とした。
続いて、調製したペースト状食品を食して、肉類の素材感が感じられるか試験例1の評価基準を用いて評価を行った。
なお、試験例3で製したペースト状食品はすべて、タンパク質含有量が2.0〜7.0%、
タンパク質含有量1部に対する脂質含有量が0.3〜3部の範囲内であった。
【0042】
[表3]
【0043】
表3より、ひよこ豆以外の豆類を用いても、適度なざらつきやボディ感を有し、肉類の素材感が感じられるペースト状食品が得られ、中でもひよこ豆を用いることで、肉類の素材感を強く感じられることが理解できる。
【0044】
[試験例4]
本発明におけるタンパク質含有量及びタンパク質含有量1部に対する脂質含有量(脂質/タンパク質)の影響を調べるため、試験例4を行った。
具体的には、表4に記載のように白身魚と菜種油の含有量を変更した以外は、実施例1と同様にペースト状食品を調製し、実施例9乃至11とした。
続いて、調製したペースト状食品を食して、肉類の素材感が感じられるか試験例1の評価基準を用いて評価を行った。
【0045】
[表4]
【0046】
表4より、タンパク質含有量が2.0〜7.0%、さらに2.5〜5.0%であると、本発明の効果が得られ易く、また、タンパク質含有量1部に対する脂質含有量が、0.3〜3部、さらに0.7〜2部であると、本発明の効果が得られ易いことが理解できる。
【0047】
[実施例12]
キサンタンガムが本発明のペースト状食品の肉類の素材感に与える影響を調べるため、キサンタンガムをヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉0.2%に変更した以外は実施例1と全く同様に実施例12のペースト状食品を調製した。
実施例12は、適度なざらつきやボディ感を有し、肉類の素材感が感じられたが、実施例1ほどではなかった。
【0048】
[実施例13]
製造方法の違いが本発明のペースト状食品の肉類の素材感に与える影響を調べるため、配合は実施例1と全く同じで、製造方法が異なる実施例13を調製した。
具体的には、まず丸のままのひよこ豆を菜種油と混合することなく、5分間ペースト化処理を行った。次いで、他の原料をミキサーへ投入し、5分間ペースト化処理を行った後、前記ペースト化処理したひよこ豆と混合した。これをレトルトパウチに充填・密封し、121℃で20分間のレトルト処理を施すことで、実施例13のペースト状食品を得た。
なお、実施例13のペースト状食品は、タンパク質含有量が3.1%、タンパク質含有量1部に対する脂質含有量が1部であった。
【0049】
実施例13は、適度なざらつきやボディ感を有し、肉類の素材感が感じられたが、実施例1ほどではなかった。
すなわち、豆類をペースト化処理する前に、豆類に油脂を吸着させる工程を有することにより、肉類の素材感を感じられるペースト状食品が得られ易いことが理解できる。
【0050】
[試験例5]
肉類の種類が本発明のペースト状食品の肉類の素材感に与える影響を調べるため、試験例5を行った。具体的には、白身魚(タラ)をサケ、鶏胸肉、豚もも肉に変更した以外は実施例1と全く同様に調製し、それぞれ実施例14,15,16のペースト状食品とした。なお、試験例5で製したペースト状食品はすべて、タンパク質含有量が2.0〜7.0%、
タンパク質含有量1部に対する脂質含有量が0.3〜3部の範囲内であった。
【0051】
試験例5で調製したペースト状食品をそれぞれ食して評価した結果、実施例14は、適度なざらつきやボディ感を有し、肉類の素材感が強く感じられた。実施例15,16も適度なざらつきやボディ感を有し、肉類の素材感が感じられたが、実施例1,14ほどではなかった。
【0052】
[実施例17]
澱粉の種類が本発明のペースト状食品の肉類の素材感に与える影響を調べるため、実施例17を行った。具体的には、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉を湿熱処理澱粉に変更した以外は実施例1と同様に調製し、実施例17のペースト状食品とした。なお、実施例17は、タンパク質含有量が3.1%、タンパク質含有量1部に対する脂質含有量が1部であった。
【0053】
実施例17で調製したペースト状食品を食して評価した結果、適度なざらつきやボディ感を有し、肉類の素材感が強く感じられた。