特許第6577897号(P6577897)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6577897
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】蒸煮装置
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/16 20060101AFI20190909BHJP
【FI】
   A47J27/16 G
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-70528(P2016-70528)
(22)【出願日】2016年3月31日
(65)【公開番号】特開2017-176608(P2017-176608A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2018年3月2日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000226976
【氏名又は名称】日清食品ホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】露木 逸人
【審査官】 岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−041012(JP,A)
【文献】 米国特許第06009798(US,A)
【文献】 特開平08−060950(JP,A)
【文献】 特開2011−179256(JP,A)
【文献】 特開2005−047693(JP,A)
【文献】 実公昭63−019507(JP,Y2)
【文献】 国際公開第2004/110229(WO,A2)
【文献】 特開2010−261148(JP,A)
【文献】 特開2008−238100(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
麺線群の蒸煮のために利用される略直方体形状の本体部を有するトンネル型の蒸煮装置において、当該蒸煮装置本体部の所定部分をガルウイング形状に開閉可能とした蒸煮装置であって、
当該開閉可能とした部分と前記蒸煮装置本体部との境界部端面につき、前記開閉可能部において、その境界部の近傍にスライド可能に装着された前記端面を含む位置調整部材によってその位置を調整可能となるように構成した蒸煮装置。
【請求項2】
麺線群の蒸煮のために利用される略直方体形状の本体部を有するトンネル型の蒸煮装置において、当該蒸煮装置本体部の所定部分をガルウイング形状に開閉可能とした蒸煮装置であって、
当該開閉可能とした部分と前記蒸煮装置本体部との境界部端面につき、前記蒸煮装置本体部において、その境界部の近傍にスライド可能に装着された前記端面を含む位置調整部材によってその位置を調整可能となるように構成した蒸煮装置。
【請求項3】
前記開閉可能とした部分が、前記略直方体形状の蒸煮装置本体部のうち少なくともその上面及び側面部の一部を含む部分であって、前記境界部端面における上面部端面が側面部端面に向かって下方に傾斜している請求項1又は2のいずれかに記載の蒸煮装置。
【請求項4】
前記境界部端面が、中空の弾性体により形成される請求項1〜3のいずれかに記載の蒸煮装置。
【請求項5】
麺線群の蒸煮のために利用される略直方体形状の本体部を有するトンネル型の蒸煮装置であって、当該蒸煮装置本体部の所定部分をガルウイング形状に開閉可能とした蒸煮装置において、
当該開閉可能とした部分と前記蒸煮装置本体部との境界部端面につき、開閉可能とした部分又は前記蒸煮装置本体部の境界部近傍にスライド可能に装着された前記端面部を含む位置調整部材によって、その位置を調整可能となるように構成することを特徴とする蒸煮装置の蒸気漏れ防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は食品等の対象物を蒸気で処理する蒸煮装置に関する発明である。すなわち、当該蒸煮装置において、その本体部の胴部の一部を着脱又は開閉可能に構成しつつ、当該着脱又は開閉可能部と蒸気庫本体部の密閉性を担保した蒸煮装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
蒸煮装置は、食品工場等において汎用される機器である。特に蒸し麺や即席麺を製造する際に使用することが必要になる機器である。
例えば、蒸し麺や即席麺の製造方法としては、一般には、小麦粉・そば粉・澱粉等の原材料を入れ、練水(食塩、かんすい、増粘多糖類等を溶解したもの)を給水し、混ねつし、ドウと称される麺生地を調製する。そして、調製後の麺生地(ドウ)を熟成後、圧延機により麺帯に調製し複合する。複合後のめん帯を複数の圧延機により圧延し、圧延後の麺帯を切刃ロールにより切出し、コンベア上に積層させて搬送する。当該搬送させる麺線群を上記蒸煮装置を通過させて、麺線群の蒸煮を行い、蒸し麺を製造する。製造された蒸し麺は袋パックへの収納又は、乾燥等の別途工程に移送され、蒸し麺製品や即席麺製品が製造される。ここで、蒸煮装置においては、その内部の洗浄や搬送するコンベアの調整等を必要とするため、蒸気庫の内部を容易に脱着又は開閉できる構成としておくことが必要となる。一方、蒸煮装置は内部に蒸気を供給してかつ、この蒸気を可能な限り充満させておくことが好ましい。
【0003】
このため、蒸煮装置の本体部から、脱着又は開閉可能部を分離できる構成とする場合、当該境界部からの蒸気漏れをできる限り防止する必要がある。この場合、境界部における脱着又は開閉可能部と、蒸煮本体部との境界部の密閉性が確保されていないと、当該境界部から蒸気が漏れて蒸気の無駄につながることになる。そして、この場合、蒸煮装置本体部と前記脱着又は開閉部分のそれぞれが精密にその長さに調製されていれば、密着性が担保され蒸気の漏れの問題は生じにくい。
【0004】
一方、当該寸法等については製造者の精度管理や技量によっても変わってくる。特に一般に海外において本態様の蒸煮装置を製造する場合には当該リスクが大きい。また、装置の製造時点では、正確であったとしても長期間の使用により変形等が生じ境界部の寸法差が生じてくる場合もある。
このように脱着又は開閉部分と、蒸煮装置本体部との境界部における寸法の相違が生じる場合に、その調整を容易にできないとすると、蒸気の漏れ等に対して的確に対応できない。
【0005】
そこで、予め前記境界部での寸法の相違等が生じることを想定しておき、境界部の脱着部又は開閉可能部の境界部の位置を予め調整できるようにしておくことができれば、実際に寸法の相違等が発生したとしても対応が可能となり好適である。
このような蒸煮装置の本体部から蒸気の漏れの解決を意図した先行技術としては、例えば、以下の先行特許が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5362517号但し、上述の先行特許は家庭内での調理器具についての蒸気漏れを防ぐための技術に関するものであり、本発明のように食品工場における大規模なトンネル型の蒸煮装置における脱着又は開閉可能部の蒸気漏れを防ぐための構成とは異なる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明者らは、例えば、食品工場において大規模な生産(例えば、即席麺や蒸し麺、蒸しシュウマイ等)に適用可能な食品生産用の蒸煮装置において、当該蒸煮装置が脱着又は開閉可能な部分を有する場合において、当該脱着又は開閉可能な部分と、蒸煮装置本体部の境界領域の密閉度を長期間の使用や、寸法精度のブレに対しても予め対応可能となるような蒸煮装置を開発することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らの鋭意研究の結果、略直方体形状の本体部を有するトンネル型の蒸煮装置において当該蒸煮装置本体部の所定部分を着脱又は開閉可能とした部分を設ける態様とした場合において、境界部端面につきその位置を調整可能となるように構成した場合、着脱又は開閉可能とした部分の変形等によっても、その位置を調整することによって当該境界部の密着性を担保し迅速に対応可能であることを見出した。
すなわち、本願第一の発明は、
「略直方体形状の本体部を有するトンネル型の蒸煮装置において、当該蒸煮装置本体部の所定部分を着脱又は開閉可能とした蒸煮装置であって、
当該着脱又は開閉可能とした部分と前記蒸煮装置本体部との境界部端面につき、その位置を調整可能となるように構成した蒸煮装置。」である。
【0009】
次に、当該境界部の調整は、前記着脱又は開閉可能部における前記蒸煮装置本体との境界部近傍に装着された、前記端面部を含む位置調整部材によってなされるのが好適である。
すなわち、本願第二の発明は、
「前記境界部端面の位置調整が、前記着脱又は開閉可能部において、境界部の近傍にスライド可能に装着された前記端面部を含む位置調整部材によってなされる請求項1に記載の蒸煮装置。」、である。
【0010】
次に、該境界部の調整は、前記本体部における前記着脱又は開閉可能部との境界部近傍に装着された、前記端面部を含む位置調整部材によってなされることが好ましい。
すなわち、本願第三の発明は、
「前記境界部の位置調整が、前記蒸煮装置本体部において、境界部の近傍にスライド可能に装着された前記端面部を含む位置調整部材によってなされる請求項1に記載の蒸煮装置。」、である
【0011】
次に、前記着脱又は開閉可能とした部分が、前記略直方体形状の蒸煮装置本体部のうち少なくともその上面及び側面部の一部を含む部分であって、
すなわち、本願第四の発明は、
「前記着脱又は開閉可能とした部分が、前記略直方体形状の蒸煮装置本体部のうち少なくともその上面及び側面部の一部を含む部分であって、前記境界部端面における上面部端面が側面部端面に向かって下方に傾斜している請求項1〜3のいずれかに記載の蒸煮装置。」、である。
【0012】
次に、前記境界部端面においては、種々の素材を選択することができるが、中空の弾性体であることが好ましい。すなわち、本願第五の発明は、
「前記境界部端面が、中空の弾性体により形成される請求項1〜4のいずれかに記載の蒸煮装置。」、である。
【発明の効果】
【0013】
本発明における蒸煮装置とすることで、蒸煮装置本体部の一部の着脱又は開閉可能としつつ、その境界部端面の位置を予め調整可能としているので、当該蒸煮装置の製造時の寸法精度が良好でない場合や、長期間の使用によって生じる場合のある変形にも迅速に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第一の実施態様の蒸煮装置の開閉可能部を含めた全体構成を示す斜視模式図である。
図2】本発明の第一の実施態様として多段式(三段式)の蒸煮装置とした場合の当該構造の断面の簡易模式図である。
図3】本発明の第一実施態様の蒸煮装置の開閉可能部と本体部側の把手受動部を示した斜視模式図である。
図4】本発明の第一の実施態様の蒸煮装置の開閉可能部及び本体部を示した斜視模式図である。
図5】本発明の第一の実施態様の蒸煮装置の開閉可能部の上部境界部の拡大模式図である。
図6】本発明の第一の実施態様の蒸煮装置の蒸煮装置本体部の枠体の斜視図である。
図7】(1)本発明の第一の実施態様の蒸煮装置の開閉可能部が本体部に対して閉状態となった場合の当該境界部の拡大図である。(2)本発明の第一の実施態様の蒸煮装置の開閉可能部が本体部に対して閉状態となった場合における当該開閉可能部の境界端面部の状態を示した拡大図である。
図8】本発明の実施態様の蒸煮装置の開閉可能部の開状態における蒸煮装置本体部の断面図である。
【符号の説明】
【0015】
1 蒸煮装置の本体部
3 開閉可能部
5 コンベア部
7 蒸気管
9 ドアクローザ
11 開閉可能部の位置調整部材
13 ネジボルト
15 パッキン部材
17 スライド孔
19 ネジボルトに対する螺合溝部
23 本体部側の境界部端面
25 把手部
27 把手受動部
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本願発明について、第一の実施態様について図面で実施例を説明する。但し、本願発明はこれらの実施例に限定されるものではないことは勿論である。以下、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の第一の実施態様の蒸煮装置の本体部1と、本発明における蒸煮装置本体部の着脱又は開閉可能とした所定部分3を示した斜視図である。
本発明の蒸煮装置は、図1に示すように当該着脱等部分3を含み点線の矢印方向に伸びた略直方体の枠体形状を有している。
【0017】
また、開閉可能部分3及び本体部1の内部にコンベア部5が対象物を搬送可能に設けられており、これと同時に内部に蒸気を供給するための蒸気管7も適宜設けられるが、これらの記載は図1に示した略図以外は省略している。
本第一の実施態様における蒸煮装置の開閉可能部3は図1の上部方向への矢印に示すように、上部方向に開閉可能な構造となっており、内部を容易に露出できるようになっている。また、当該開閉部3はコンベア装置5の伸長方向に隣接するように設置されているとともに、蒸煮装置の伸長方向中央部に対して、対称に位置するように設けられている。
以下に、図1に示す本発明の第一の実施態様の蒸煮装置についてさらに詳しく説明する。

<トンネル型の蒸煮装置>
【0018】
本発明にいう略直方体形状の本体部を有するトンネル型の蒸煮装置とは、一般には入口部と出口部を有し、内部にコンベア5等を配置して、対象物を当該入口部より蒸煮する対象物を、内部にコンベア等によって連続的に搬入して、コンベア5で搬送しながら当該蒸煮装置内部で所定時間の蒸煮をした後、出口部より連続的に排出するタイプの蒸煮装置をいう。
すなわち、コンベアの進行に伴って、対象物(例えば、麺線群等)が蒸煮装置の本体に搬入されるように配置されている。対象物が蒸煮装置の入口側から入ることにより、内部において蒸煮がされ、本体部の内部をコンベア5が進行している間において、本体部の内部の上部又はコンベア5の下部等に設置された蒸気官等より噴出する蒸気によって対象物が蒸煮される。
【0019】
なお、本蒸煮装置は、搬送方向に沿って延びると共に、内部に空間が形成された箱型(筒型でもよい)の形状を有している。その構造は、搬送方向に対向する一対の端壁部を備え、一方の端壁部に形成された開口部によって入口部が構成され、他方の端壁部に形成された開口部によって出口部が構成される。コンベアのうち、少なくとも対象物を載置する部分は、概ね本体部の入口部から内部空間を通過して出口部まで延びている。
このような連続的なトンネル型の蒸煮装置は、通常のバッチ式の蒸煮装置に比べて規模が大きい場合が多く、蒸煮する対象物としては麺線等の食品を対象とする場合が多い。
【0020】
また、蒸煮対象となる対象物はコンベアの搬送に伴い本体部の出口より外部に出ると蒸煮が終了して、対象物は次の工程に運ばれる。尚、トンネル型の蒸煮装置の場合、蒸気管が外部より導入されて本体部の内部に配置されるのが一般的である。
また、図1に示す本願第一の実施態様においては、コンベアが進行方向に向けて一段の場合を示しているが、図2に示すように第一及び第二の2種類のコンベアを組み合わせて、複数段のコンベア装置としておく態様であってもよいことは勿論である。
すなわち、装置全体の高さを大きくして、コンベア5の長手方向に複数回の往復を経て排出されるような態様であってもよい。特に蒸煮する対象が麺線群の場合、上下段の受渡しをスムースに行うことができるため、このような複数段のコンベア装置が有効に用いることができる。また、このような態様にしておくと、コンベア伸長方向の長さを短縮化できるため、本発明のように着脱又は開閉可能な状態としておくことで、メンテナンス等を容易に行えるため、本発明の利用度が高い。
【0021】
尚、蒸気の供給には、一般には、上述のようにコンベア5の下部や上部に配設された蒸気管7より供給されるがこれに限定されないことは勿論である。また、蒸気管の配置については、複数の蒸気官がコンベアの進行方向に並行に配置される場合や、コンベアの進行方向と直行するような位置に複数配置される場合もある。
蒸気管7には複数の孔が設けられており、当該孔から蒸気が供給されるタイプが多い。また、必要に応じて入口部と出口部にはダクトを設けて余分な蒸気を吸収する構成としてもよい。これらの構成は適宜選択できることは勿論である。

<着脱又は開閉可能とした所定部分>
【0022】
本発明においては、蒸煮装置の一部を分離できる構成としており、当該部分3が着脱又は開閉可能としている。
本発明の第一の実施態様においては、蒸煮装置の一部の領域を上下方向に開閉できるように構成されており、図3及び図4に示すように当該部分は蒸煮装置本体部のその上面及び側面部の下端部にわたっているように構成されており、一体として蒸煮装置の一部を構成するようになっている。そして、当該部分の開き時には上部に持ち上げることによっていわゆる“ガルウイング扉”の形態となるように開閉が可能となっている。また、当該開閉状態を緩衝するために、ドアクローザ9が設けられている。
【0023】
また、当該開閉可能部は、コンベアの伸長方向に繰り返して連続して設けられているとともに、コンベアの伸長方向中央部に対して対象に設けられている。
このように、本発明の第一の実施態様に示すように、本発明における着脱・開閉部分3の数は特に限定されない。また、本第一の実施態様のように連続又は対象になるように配置されてもよいことは勿論である。
次に、本発明の第一の実施態様における開閉可能部3は、蒸煮装置本体部の上面部と側面部を含む領域をカバーしている。このように、上面部及び側面部を含む領域とすることで、蒸煮装置の内部の清掃や整備がようになるというメリットを有することができるが、
【0024】
本発明は必ずしも本発明の第一の実施態様のように上面及び側面部の両方を含む領域である必要はなく、上面のみ又は側面の一部の領域であっても良いことは勿論である。また、上面又は側面以外に下面であってもよい。
また、本発明の第一の実施態様においては、ガルウイング部を上下方向に開閉可能となるような態様を示しているが、左右に開閉可能となるタイプでも可能であるし、当該部分については開閉可能形態だけでなく、着脱可能とする形態であってもよいことは勿論である。これらの所定の部分の着脱又は開閉の方法としては種々のタイプを選択できることは勿論である。

<境界部端面について、その位置を調整可能となるようにする>
【0025】
本発明の蒸煮装置は、当該着脱又は開閉可能とした部分と前記蒸煮装置本体部との境界部端面につき、その位置を調整可能となるように構成されている。
すなわち、本発明の第一の実施態様においては、図3に示すように前記着脱又は開閉可能としたガルウイング部(開閉可能部)3の上面及び側面のL字状の境界部において、端面部を含む位置調整部材11が複数のネジボルト13によって固定される態様を示している。また、当該位置調整部材11には、実際の接触面となるパッキン部材15が取り付けられている。
本第一の実施態様においては、上述のように図3に示すように一対のL字部の境界部近傍の部分に対応して位置調整部材が装着されているが、当該位置調整部材をさらに図3に示す下端の境界部に設けてもよいことは勿論である。
本発明の第一の実施態様における位置調整部材11についてより具体的には、拡大した図5にも示されているように、当該位置調整部材11には、前記ネジボルト13が挿通される複数のスライド孔17が設けられている。ガルウイング部3に設けられた、前記ネジボルト13に対する螺合溝部19に当該ネジボルト13が嵌入して締め付けられる際に、同時に位置調整部材11もガルウイング部3に固定される態様を示している。
また、本発明の蒸煮装置の開閉可能部の設計時には、ボルト溝部が位置調整部材のスライド孔17の中央部に合わせるように設計しておくことが好適である。このように設計しておくことで、実際の製造で寸法のずれが生じた場合等においても効果的に密着度を担保して、蒸気の漏れを防止することができる。
【0026】
このように、位置調整部材のスライド孔17は、ガルウイング部3に対してその位置を適宜調整できるようにスライド可能となっている。これによって、ガルウイング部3に対する当該位置調整部材11の相対位置を自由に調整できるので、当該位置調整部材11に含まれる端面の位置を、当該端面に対して密着させる必要のある蒸気庫本体部側1の境界部端面部に対して調整できる。これによって、ガルウイング部3と蒸煮装置の本体部1の密閉度を高めることができ、本発明の蒸煮装置において蒸気の漏れを効果的に防止することができる。
【0027】
尚、当該位置調整部材11の位置調整方法については、本発明の第一の実施態様においては、帯状のスライド孔17を設けた位置調整部材11を例示しているが、これに限定されるものではなく、種々の方法が可能であることは勿論である。
また、当該端面部においては図5に示すように弾性を有する中空のパッキン部材15が設けられている。このように端面の密着度を高めるために、当該端面を弾性部材とすることは当然に可能である。また、当該パッキン部分の素材は限定されず、種々のタイプのプラスチック等の弾性素材を用いることができる。また、当該弾性部材については、本第一の実施態様のように中空の弾性部材であることが好ましい。中空構造にすることで、弾性部材が密着時の加圧により適度に変形し、より端面の密着性の向上が図れるためである。
【0028】
また、本発明においては、本実施態様のように、位置調整部材が、着脱又は開閉可能部の境界部付近にある場合のみならず、当該位置調整部材が、蒸煮装置の本体部側の境界部の近傍に設けられる態様であってもよい。
このように、本体部側の境界部に位置調整可能部材を設けておくことによっても、前記着脱又は開閉可能部と本体部との密着度を向上させて蒸気の漏れを効果的に防止することができる。
次に、蒸煮装置本体部1とガルウイング部3との密着の方法については、特に限定されず種々の態様が可能である。本発明の第一の実施態様においては、当該開閉可能部3は、コンベアの伸長方向に繰り返して連続して設けられているが、各開閉可能部3のパッキンを有する端面部15に密着可能なように、蒸気庫本体部側の枠体1の一部として、前記開閉可能3部の境界部端面と密着可能な本体部側の端面部23が設けられている(図6)。
次に、図7には本体部側の端面部に前記開閉可能部3が本体部1に対して閉じた状態で密着している状態を示している。また、図8は、開閉可能部3を開いた場合の蒸煮装置の本体部の上部の傾斜部分について示している。対する位置関係を示している。尚、このような密着する構成については本実施態様以外においても適宜設定可能であることは勿論である。
【0029】
次に、本発明の第一の実施態様においては、前記開閉可能部3と本体部2側の端面部とが開閉可能部側に装着されたパッキン15を介して密着した状態を維持するために、前記開閉可能部3に把手部分25が設けられており、当該把手部分が挿嵌される把手受動部27が本体部1側に設けられている。
また、本発明の実施態様においては、開閉可能部3側の一方のみに中空のパッキンが装着されているが、これを本体部1側に設けてもよいことは勿論である。また、開閉部3及び本体部1の両方に設けてもよいことは勿論である。
また、本発明の第一実施態様においては、図7(2)及び図8に示すように上部の境界端面部が側面部に向かって下方に傾斜する傾斜角を有している。
【0030】
本発明の蒸煮装置は内部で蒸煮するための装置であるため、内部において蒸気による水滴が蓄積される場合があるという特性を有する。このため、本発明においては、上部の端面部が中央から側面部に向かって下方に傾斜する傾斜部分を有していることが好ましい。
このようにすることで水滴が蒸煮装置本体部の内部への垂れを防止して、境界部の端面に沿って落とし流すことができる。これによって、蒸煮装置の運転中に開閉する必要がある場合等においてもコンベア面への水滴の垂れを防止することができ、蒸煮中の対象物に対する水分の付与等を防止することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8