【実施例】
【0027】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0028】
<試験1:天ぷら衣の油分量測定試験>
下記の方法により、揚げダネを有しないバッターのみのモデル試験系を用いて、各種乳化剤を添加した加熱調理用油脂組成物で天ぷらの衣を作製し、衣に残存する油分量を測定した。
【0029】
1.サンプル調製
精製なたね油「日清キャノーラ油」(日清オイリオグループ株式会社製)に表1に示す各種乳化剤No.1〜8を、0質量%(無添加)、0.05質量%、0.1質量%、0.25質量%となるようにそれぞれ混合し、各種加熱調理用油脂組成物(フライ用油脂)を調製した。乳化剤は、油脂800gを入れて180℃に加熱した後、油脂に各規定量の乳化剤を添加、溶解した。
天ぷら粉「昭和天ぷら粉」(昭和産業株式会社製)38gと氷水62gとを混合し、バッターを作製した。
バッターを鉄製のカップ状容器に3.5gずつ量りとり、鉄製の鍋で180℃に加熱した各フライ用油脂に容器ごと5個ずつ投入し、3分間加熱した。投入後、バッターはカップから剥離して浮上し衣となり、鉄製のカップ状容器は沈殿する。1.5分経過後に衣を裏返して、3分経過した調理済み衣を網の上に移動させて5分間静置して油分をきり、これを測定用サンプルとした。
衣は、各フライ用油脂について、10個ずつ作製した。
【0030】
2.油分測定
上記測定用サンプル(加熱調理後の衣)は、重量を測定した後、減圧下で乾燥させて水分を除去した。その際、乾燥前後の重量を測定することで、水分量を算出した。
乾燥後のサンプルをヘキサンに浸漬し、衣が含有する油分をヘキサン画分に溶出させた(油分抽出)。該ヘキサン画分を回収し、ヘキサンを除去した後、残存した油分を秤量した。サンプル10個の平均値を油分量とした。また、油分の重量を乾燥前のサンプル重量で除した値を油分割合とした。各フライ用油脂使用時のサンプルの油分量及び油分割合を表1中に示す。
さらに、No.1とNo.3のフライ油脂について、油脂中の乳化剤添加量とサンプルの油分量との関係を
図1のグラフに、油脂中の乳化剤添加量とサンプルの油分割合との関係を
図2のグラフに示す。
【0031】
【表1】
【0032】
※1 商品名「リョートーシュガーエステルPOS−135」三菱化学フーズ株式会社製(HLB値 1.0、脂肪酸構成(重量割合):パルミチン酸30%、オレイン酸41%、ステアリン酸23%、他6%)
※2 ペンタオレイン酸テトラグリセリン、商品名「SYグリスターPO−3S」坂本薬品工業株式会社製(HLB値 3.0)
※3 商品名「サンソフト661AS」太陽化学株式会社製(HLB値 7.5)
※4 商品名「サンソフトNo.750」太陽化学株式会社製(HLB値 5.3)
※5 商品名「エマゾールL−120V」花王株式会社製(HLB値 16.7)
※6 商品名「リョートーシュガーエステルL−195」三菱化学フーズ株式会社製(HLB値 1.0)
※7 商品名「SYグリスターOE−750」坂本薬品工業株式会社製(HLB値 3.7)
※8 商品名「エマルジーMO」理研ビタミン株式会社製(HLB値 4.3、脂肪酸構成(質量割合):パルミチン酸34%、オレイン酸16%、リノール酸45%、他5%)
【0033】
3.測定結果の解析
図1及び表1に示す通り、加熱調理用油脂組成物にNo.1の乳化剤、すなわち、ショ糖脂肪酸エステル(HLB値 1.0)を添加した場合、その添加量が0.05質量%付近のときに、得られるサンプル(天ぷら衣)の油分量、油分割合が明確な極小値を示すことが判明した。また、表1の結果より、No.2及び6の乳化剤についても、同様の傾向が見られることが分かる。一方、No.3の乳化剤、すなわち、乳酸ステアリン酸モノグリセリンを添加した場合は、測定範囲において、油分量の極小値は観測できなかった。No.4、5、7及び8の乳化剤についても、測定範囲において、明確な油分量、油分割合の極小値は見られなかった。
以上の結果より、No.1、2及び6の乳化剤、すなわち、ショ糖脂肪酸エステル(HLB値 1.0)、ポリグリセリン脂肪酸エステル(HLB値 3.0)、及びショ糖ラウリン酸エステル(HLB値 1.0)については、加熱調理用油脂組成物への添加量が0.05質量%程度のときに、天ぷら等のフライ調理品の吸油量を効果的に低減できることが判明した。
【0034】
<試験2:天ぷらでの効果実証実験>
試験1で使用した乳化剤No.1を0.05質量%添加した加熱調理用油脂組成物を調製し、これを使用して実際に天ぷらを調理して、調理品の油分低減効果を確認した。
【0035】
1.サンプル調製
精製なたね油「日清キャノーラ油」(日清オイリオグループ株式会社製)に表2に示す各種乳化剤No.1を、0.05質量%となるようにそれぞれ混合し、実施例1及び2の加熱調理用油脂組成物(フライ用油脂)を調製した。乳化剤は、油脂800gを入れて180℃に加熱した後、油脂に乳化剤を0.05質量%添加、溶解した。一方、乳化剤を添加しないキャノーラ油を比較例1とした。
サツマイモを厚さ5mm、直径3.4cmの円柱状にカットし、揚げダネとした。天ぷら粉「昭和天ぷら粉」(昭和産業株式会社製)38gと氷水62gとを混合し、バッターを作製した。サツマイモをバッター液に浸し、バッターを付着させた。
鍋で180℃に加熱した各フライ用油脂に、バッターを付着させたサツマイモを5個ずつ投入し、3分間加熱調理した。その際、加熱調理開始1.5分後に、フライ用油脂中のサツマイモを一度裏返した。3分間加熱調理した後のフライ調理品を網の上に移動させて静置して油分をきり、5分後に回収し、これを測定用サンプルとした。
フライ調理品サンプルは、各フライ用油脂について、10個ずつ作製した。
【0036】
2.油分測定
上記サンプル(フライ調理品)は、重量を測定した後、減圧下で乾燥させて水分を除去した。その際、乾燥前後の重量を測定することで、水分量を算出した。
乾燥後のサンプルを30mLのヘキサンに浸漬し、サンプルが含有する油分をヘキサン画分に溶出させた(油分抽出)。該ヘキサン画分を回収し、ヘキサンを除去した後、残存した油分を秤量した。サンプル10個の平均値を油分量とした。また、油分の重量を乾燥前のサンプル重量で除した値を油分割合とした。各フライ用油脂使用時のサンプルの油分量及び油分割合を表2中に示す。
【0037】
【表2】
【0038】
※9 商品名「リョートーシュガーエステルPOS−135」三菱化学フーズ株式会社製(HLB値 1.0、脂肪酸構成(重量割合):パルミチン酸30%、オレイン酸41%、ステアリン酸23%、他6%)
【0039】
表2に示す通り、実施例1の加熱調理用油脂組成物において、乳化剤を添加しない比較例と比して、得られたフライ調理品の油分が明確に低減していることが確認された。
【0040】
<試験3:天ぷらでの効果実証試験>
試験1で使用した乳化剤No.1を0質量%(無添加)、0.04質量%、0.06質量%、0.08質量%添加した加熱調理用油脂組成物を調製し、これを使用して実際に天ぷらを調理して、調理品の油分低減効果を確認した。
【0041】
1.サンプル調製
精製なたね油「日清キャノーラ油」(日清オイリオグループ株式会社製)に乳化剤No.1(ショ糖脂肪酸エステル、商品名「リョートーシュガーエステルPOS−135」三菱化学フーズ株式会社製(HLB値 1.0、脂肪酸構成(質量割合):パルミチン酸30%、オレイン酸41%、ステアリン酸23%))を、0.04質量%、0.06質量%、0.08質量%となるようにそれぞれ混合し、実施例1〜5の加熱調理用油脂組成物(フライ用油脂)を調製した。乳化剤は、油脂800gを加熱した後、溶解した。一方、乳化剤を添加しないキャノーラ油を比較例2とした。
サツマイモを厚さ5mm、直径3.4cmの円柱状にカットし、揚げダネとした。天ぷら粉「昭和天ぷら粉」(昭和産業株式会社製)38gと氷水62gとを混合し、バッターを作製した。サツマイモをバッター液に浸し、バッターを付着させた。
鍋で180℃に加熱した各フライ用油脂に、バッターを付着させたサツマイモを5個ずつ投入し、3分間加熱調理した。その際、加熱調理開始1.5分後に、フライ用油脂中のサツマイモを一度裏返した。3分間加熱調理した後のフライ調理品を網の上に移動させて静置して油分をきり、5分後に回収し、これを測定用サンプルとした。
フライ調理品サンプルは、各フライ用油脂について、10個ずつ作製した。
【0042】
2.油分測定
上記サンプル(フライ調理品)は、重量を測定した後、減圧下で乾燥させて水分を除去した。その際、乾燥前後の重量を測定することで、水分量を算出した。
乾燥後のサンプルを30mLのヘキサンに浸漬し、サンプルが含有する油分をヘキサン画分に溶出させた(油分抽出)。該ヘキサン画分を回収し、ヘキサンを除去した後、残存した油分を秤量した。サンプル10個の平均値を油分量とした。また、油分の重量を乾燥前のサンプル重量で除した値を油分割合とした。各フライ用油脂使用時のサンプルの油分量及び油分割合を表3中に示す。
【0043】
【表3】
【0044】
表3に示す通り、実施例2〜4の加熱調理用油脂組成物において、乳化剤を添加しない比較例と比して、得られたフライ調理品の油分が明確に低減していることが確認された。