特許第6578145号(P6578145)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6578145
(24)【登録日】2019年8月30日
(45)【発行日】2019年9月18日
(54)【発明の名称】エッチング方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20190909BHJP
【FI】
   H01L21/302 105A
【請求項の数】6
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-135905(P2015-135905)
(22)【出願日】2015年7月7日
(65)【公開番号】特開2017-22154(P2017-22154A)
(43)【公開日】2017年1月26日
【審査請求日】2018年5月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122507
【弁理士】
【氏名又は名称】柏岡 潤二
(72)【発明者】
【氏名】田端 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】勝沼 隆幸
(72)【発明者】
【氏名】本田 昌伸
【審査官】 佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−079375(JP,A)
【文献】 特開2009−105279(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0205414(US,A1)
【文献】 特開2002−075973(JP,A)
【文献】 特開2010−098101(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化シリコンから構成された第1領域を窒化シリコンから構成された第2領域に対して選択的にエッチングする方法であって、
前記第1領域及び前記第2領域を有する被処理体をプラズマ処理装置の処理容器内に準備する工程と、
前記処理容器内において、フルオロカーボンガス及び希ガスを含む処理ガスのプラズマを生成する工程と、
を含み、
処理ガスのプラズマを生成する前記工程において、前記被処理体がその上に載置される下部電極の自己バイアス電位が4V以上、350V以下であり、
前記処理ガス中の前記フルオロカーボンガスの流量に対して前記処理ガス中の前記希ガスの流量は、250倍以上、5000倍以下である、
方法。
【請求項2】
処理ガスのプラズマを生成する前記工程では、前記処理ガスを前記処理容器内に供給するために、第1のガスソースからフルオロカーボンガス及び希ガスを含む第1のガスが前記処理容器内に供給され、且つ、第2のガスソースから希ガスのみ又は前記第1のガスとは異なる体積比でフルオロカーボンガス及び希ガスを含む第2のガスが前記処理容器内に供給される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
処理ガスのプラズマを生成する前記工程では、前記処理ガスを前記処理容器内に供給するために、単一のガスソースからフルオロカーボンガス及び希ガスを含む混合ガスが前記処理容器内に供給される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記希ガスは、アルゴンガスである、請求項1〜3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記処理ガスは、酸素ガスを更に含む請求項1〜4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第2領域は凹部を形成しており、前記第1領域は、前記凹部を埋め、且つ前記第2領域を覆うように設けられており、
前記第2領域が露出するときを含む期間において、前記第1領域をエッチングするために一回以上のシーケンスを実行する工程を更に含み、
前記一回以上のシーケンスは、
前記処理容器内においてフルオロカーボンガスを含む処理ガスのプラズマを生成する工程であり、前記第1領域及び前記第2領域上にフルオロカーボンを含む堆積物を形成する、該工程と、
前記処理容器内において不活性ガスのプラズマを生成する工程と、
を含む、
請求項1〜5の何れか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エッチング方法に関するものであり、特に、酸化シリコンから構成された第1領域を窒化シリコンから構成された第2領域に対して選択的にエッチングする方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子デバイスの製造においては、酸化シリコンから構成された第1領域を窒化シリコンから構成された第2領域に対して選択的にエッチングすることが行われる。このようなエッチングにおいては、例えば、特許文献1に記載されているように、フルオロカーボンガス、アルゴンガス、及び酸素ガスを含む処理ガスのプラズマがプラズマ処理装置の処理容器内において生成される。
【0003】
また、第1領域を第2領域に対して選択的にエッチングする技術の一種として、SAC(Self−Aligned Contact)技術が知られている。SAC技術においては、第2領域によって形成される凹部内に埋め込まれている第1領域が、自己整合的にエッチングされる。SAC技術においても、上述した処理ガスが利用され、当該処理ガスのプラズマがプラズマ処理容器内において生成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−25979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の技術では、第1領域のエッチングの際に第2領域が少なからず浸食される。したがって、窒化シリコンから構成された第2領域の浸食を抑制しつつ、酸化シリコンから構成された第1領域をエッチングすることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様においては、酸化シリコンから構成された第1領域を窒化シリコンから構成された第2領域に対して選択的にエッチングする方法が提供される。この方法は、(i)第1領域及び第2領域を有する被処理体をプラズマ処理装置の処理容器内に準備する工程と、(ii)処理容器内において、フルオロカーボンガス及び希ガスを含む処理ガスのプラズマを生成する工程と、を含む。処理ガスのプラズマを生成する前記工程において、被処理体がその上に載置される下部電極の自己バイアス電位は、4V以上、35eV以下である。また、処理ガス中のフルオロカーボンガスの流量に対して処理ガス中の希ガスの流量は、250倍以上、5000倍以下である。
【0007】
上記一態様に係る方法では、処理ガス中のフルオロカーボンガスが比較的大量の希ガスによって希釈されており、また、自己バイアス電位が4V以上、350V以下であるので、第1領域のエッチングにおける第2領域の浸食が抑制される。
【0008】
なお、下部電極の自己バイアス電位が4V以上に設定されると、被処理体に照射されるイオンのエネルギーは4eV以上のエネルギーとなる。4eV以上のエネルギーを有するイオンが被処理体に照射されると、第1領域を構成するシリコンと酸素との結合が切断され、シリコンとフッ素の反応生成物が生成される。この反応生成物は排気される。また、上記方法では、第1領域のエッチングの際に、処理ガスの解離によって発生するフルオロカーボン及び/又はカーボンを含む堆積物が第2領域上に形成される。下部電極の自己バイアス電位が350V以下に設定されると、被処理体に照射されるイオンのエネルギーは350eVよりも若干大きいエネルギー以下のエネルギーとなる。このようなエネルギーを有するイオンは、2nmの厚さの堆積物を貫通しない。したがって、自己バイアス電位が350V以下であれば、第2領域の浸食が抑制される。また、処理ガス中のフルオロカーボンガスが250倍以上、5000倍以下の比較的大量の希ガスによって希釈されると、第1領域のエッチングを妨げることなく、第2領域の浸食を更に抑制することが可能になる。これは、堆積物中のフッ素の量が減少され、比較的硬質の堆積物が第2領域上に形成されるからであると推測される。
【0009】
一実施形態の処理ガスのプラズマを生成する前記工程では、処理ガスを処理容器内に供給するために、第1のガスソースからフルオロカーボンガス及び希ガスを含む第1のガスが処理容器内に供給され、且つ、第2のガスソースから希ガスのみ又は第1のガスとは異なる体積比でフルオロカーボンガス及び希ガスを含む第2のガスが処理容器内に供給される。この実施形態によれば、希ガスの流量に対して極少量のフルオロカーボンガスの流量を高精度に調整することが可能となる。
【0010】
一実施形態の処理ガスのプラズマを生成する前記工程では、処理ガスを処理容器内に供給するために、単一のガスソースからフルオロカーボンガス及び希ガスを含む混合ガスが処理容器内に供給されてもよい。
【0011】
一実施形態では、希ガスはアルゴンガスであってもよい。また、一実施形態では、処理ガスは酸素ガスを更に含んでいてもよい。
【0012】
一実施形態では、第2領域は凹部を形成しており、第1領域は、凹部を埋め、且つ前記第2領域を覆うように設けられている。この実施形態の方法は、第2領域が露出するときを含む期間において、第1領域をエッチングするために一回以上のシーケンスを実行する工程を更に含み得る。一回以上のシーケンスは、処理容器内においてフルオロカーボンガスを含む処理ガスのプラズマを生成する工程であり、第1領域及び第2領域上にフルオロカーボンを含む堆積物を形成する、該工程と、処理容器内において不活性ガスのプラズマを生成する工程と、を含む。この実施形態によれば、第2領域の露出時に堆積物により当該第2領域がより確実に保護され、しかる後に堆積物中のラジカルによって第1領域がエッチングされる。したがって、第2領域の浸食が更に抑制される。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、酸化シリコンから構成された第1領域を、窒化シリコンから構成された第2領域の浸食を抑制しつつ、エッチングすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一実施形態に係るエッチング方法を示す流れ図である。
図2】一例の被処理体の一部拡大断面図である。
図3】プラズマ処理装置の一例を概略的に示す図である。
図4】ガス供給部の一例を示す図である。
図5】ガス供給部の別の一例を示す図である。
図6】ガス供給部の更に別の一例を示す図である。
図7図1に示す方法の実施の途中段階における被処理体の一部を拡大して示す断面図である。
図8図1に示す方法の実施の途中段階における被処理体の一部を拡大して示す断面図である。
図9図1に示す方法の実施の途中段階における被処理体の一部を拡大して示す断面図である。
図10図1に示す方法の実施後の被処理体の一部を拡大して示す断面図である。
図11】別の実施形態に係るエッチング方法を示す流れ図である。
図12図11に示す方法の実施の途中段階における被処理体の一部を拡大して示す断面図である。
図13図11に示す方法の実施の途中段階における被処理体の一部を拡大して示す断面図である。
図14図11に示す方法の実施の途中段階における被処理体の一部を拡大して示す断面図である。
図15図11に示す方法の実施の途中段階における被処理体の一部を拡大して示す断面図である。
図16】実験例1〜3及び比較実験例1〜2について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して種々の実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0016】
図1は、一実施形態に係るエッチング方法を示す流れ図である。図1に示す方法MTは、酸化シリコンから構成された第1領域を窒化シリコンから構成された第2領域に対して選択的にエッチングする方法である。
【0017】
図2は、一例の被処理体の一部拡大断面図である。図2に示すように、被処理体(以下、「ウエハW」ということがある)は、基板SB、第1領域R1、第2領域R2、及び、後にマスクを構成する有機膜OLを有している。一例では、ウエハWは、フィン型電界効果トランジスタの製造途中に得られるものであり、更に、隆起領域RA、シリコン含有の反射防止膜AL、及び、レジストマスクRMを有している。
【0018】
隆起領域RAは、基板SBから隆起するように設けられている。この隆起領域RAは、例えば、ゲート領域を構成し得る。第2領域R2は、窒化シリコン(Si)から構成されており、隆起領域RAの表面、及び、基板SBの表面上に設けられている。この第2領域R2は、図2に示すように、凹部を形成するように延在している。一例では、凹部の深さは、約150nmであり、凹部の幅は、約20nmである。
【0019】
第1領域R1は、酸化シリコン(SiO)から構成されており、第2領域R2上に設けられている。具体的に、第1領域R1は、第2領域R2によって形成されている凹部を埋め、当該第2領域R2を覆うように設けられている。
【0020】
有機膜OLは、第1領域R1上に設けられている。有機膜OLは、有機材料、例えば、アモルファスカーボンから構成され得る。反射防止膜ALは、有機膜OL上に設けられている。レジストマスクRMは、反射防止膜AL上に設けられている。レジストマスクRMは、第2領域R2によって画成される凹部上に当該凹部の幅よりも広い幅を有する開口を提供している。レジストマスクRMの開口の幅は、例えば、60nmである。このようなレジストマスクRMのパターンは、フォトリソグラフィ技術により形成される。
【0021】
方法MTでは、図2に示すウエハWのような被処理体がプラズマ処理装置内において処理される。図3は、プラズマ処理装置の一例を概略的に示す図である。図3に示すプラズマ処理装置10は、容量結合型プラズマエッチング装置である。プラズマ処理装置10は、略円筒状の処理容器12を備えている。処理容器12は、例えばアルミニウムから構成されており、当該処理容器12の内壁面には陽極酸化処理が施されている。この処理容器12は保安接地されている。
【0022】
処理容器12の底部上には、略円筒状の支持部14が設けられている。支持部14は、例えば、絶縁材料から構成されている。支持部14は、処理容器12内において、処理容器12の底部から鉛直方向に延在している。また、処理容器12内には、載置台PDが設けられている。載置台PDは、支持部14によって支持されている。
【0023】
載置台PDは、その上面においてウエハWを保持する。載置台PDは、下部電極LE及び静電チャックESCを有している。下部電極LEは、第1プレート18a及び第2プレート18bを含んでいる。第1プレート18a及び第2プレート18bは、例えばアルミニウムといった金属から構成されており、略円盤形状を有している。第2プレート18bは、第1プレート18a上に設けられており、第1プレート18aに電気的に接続されている。
【0024】
第2プレート18b上には、静電チャックESCが設けられている。静電チャックESCは、導電膜である電極を一対の絶縁層又は絶縁シート間に配置した構造を有している。静電チャックESCの電極には、直流電源22がスイッチ23を介して電気的に接続されている。この静電チャックESCは、直流電源22からの直流電圧により生じたクーロン力等の静電力によりウエハWを吸着する。これにより、静電チャックESCは、ウエハWを保持することができる。
【0025】
第2プレート18bの周縁部上には、ウエハWのエッジ及び静電チャックESCを囲むようにフォーカスリングFRが配置されている。フォーカスリングFRは、エッチングの均一性を向上させるために設けられている。フォーカスリングFRは、エッチング対象の膜の材料によって適宜選択される材料から構成されており、例えば、石英から構成され得る。
【0026】
第2プレート18bの内部には、冷媒流路24が設けられている。冷媒流路24は、温調機構を構成している。冷媒流路24には、処理容器12の外部に設けられたチラーユニットから配管26aを介して冷媒が供給される。冷媒流路24に供給された冷媒は、配管26bを介してチラーユニットに戻される。このように、冷媒流路24とチラーユニットとの間では、冷媒が循環される。この冷媒の温度を制御することにより、静電チャックESCによって支持されたウエハWの温度が制御される。
【0027】
また、プラズマ処理装置10には、ガス供給ライン28が設けられている。ガス供給ライン28は、伝熱ガス供給機構からの伝熱ガス、例えばHeガスを、静電チャックESCの上面とウエハWの裏面との間に供給する。
【0028】
また、プラズマ処理装置10は、上部電極30を備えている。上部電極30は、載置台PDの上方において、当該載置台PDと対向配置されている。下部電極LEと上部電極30とは、互いに略平行に設けられている。上部電極30と載置台PDとの間には、ウエハWにプラズマ処理を行うための処理空間Sが提供されている。
【0029】
上部電極30は、絶縁性遮蔽部材32を介して、処理容器12の上部に支持されている。一実施形態では、上部電極30は、載置台PDの上面、即ち、ウエハ載置面からの鉛直方向における距離が可変であるように構成され得る。上部電極30は、天板34及び支持体36を含み得る。天板34は処理空間Sに面しており、当該天板34には複数のガス吐出孔34aが設けられている。この天板34は、一実施形態では、シリコンから構成されている。
【0030】
支持体36は、天板34を着脱自在に支持するものであり、例えばアルミニウムといった導電性材料から構成され得る。この支持体36は、水冷構造を有し得る。支持体36の内部には、ガス拡散室36aが設けられている。このガス拡散室36aからは、ガス吐出孔34aに連通する複数のガス通流孔36bが下方に延びている。また、支持体36には、ガス拡散室36aに処理ガスを導くガス導入口36cが形成されており、このガス導入口36cには、ガス供給管38が接続されている。
【0031】
ガス供給管38には、ガス供給部GUが接続されている。図4は、ガス供給部の一例を示す図である。図4に示す第1例のガス供給部GUは、ガスソース群GSG、バルブ群42、流量制御器群43、及びバルブ群44を有している。第1例のガス供給部GUでは、ガスソース群GSGは、複数のガスソースGS1〜GS7を含んでおり、バルブ群42は、複数のバルブ421〜427を含んでおり、流量制御器群43は、複数の流量制御器431〜437を含んでおり、バルブ群44は、複数のバルブ441〜447を含んでいる。なお、流量制御器431〜437の各々は、マスフローコントローラ、又は、圧力制御式の流量制御器である。
【0032】
ガスソースGS1は、Cガスのソースであり、バルブ421、流量制御器431、及び、バルブ441を介して、ガス供給管38に接続されている。ガスソースGS2は、CFガスのソースであり、バルブ422、流量制御器432、及び、バルブ442を介して、ガス供給管38に接続されている。ガスソースGS3は、Cガスのソースであり、バルブ423、流量制御器433、及び、バルブ443を介して、ガス供給管38に接続されている。ガスソースGS4は、希ガスのソースであり、バルブ424、流量制御器434、及び、バルブ444を介して、ガス供給管38に接続されている。なお、希ガスは、Heガス、Neガス、Arガス、Krガスといった任意の希ガスであることができる。ガスソースGS5は、窒素ガス(Nガス)のソースであり、バルブ425、流量制御器435、及び、バルブ445を介して、ガス供給管38に接続されている。ガスソースGS6は、水素ガス(Hガス)のソースであり、バルブ426、流量制御器436、及び、バルブ446を介して、ガス供給管38に接続されている。また、ガスソースGS7は、酸素ガス(Oガス)のソースであり、バルブ427、流量制御器437、及び、バルブ447を介して、ガス供給管38に接続されている。なお、第1例のガス供給部GUは、酸素含有ガス、例えば、酸化炭素ガスのソース、並びに当該ソースとガス供給管38との間に設けられたバルブ、流量制御器、及びバルブを更に有していてもよい。
【0033】
この第1例のガス供給部GUは、異なるガス種の複数の単ガス用の複数のガスソースを有しており、選択された一以上のガスソースからのガスの流量を調整し、流量調整されたガスをガス供給管38に供給するように構成されている。
【0034】
図5は、ガス供給部の別の一例を示す図である。図5に示す第2例のガス供給部GUでは、ガスソース群GSGは、上述した複数のガスソースGS1〜GS7に加えて、ガスソースGS8を含んでいる。また、第2例のガス供給部GUでは、バルブ群42はバルブ428を更に含んでおり、流量制御器群43は流量制御器438を更に含んでおり、バルブ群44はバルブ448を更に含んでいる。なお、第2例のガス供給部GUも、酸素含有ガス、例えば、酸化炭素ガスのソース、並びに当該ソースとガス供給管38との間に設けられたバルブ、流量制御器、及びバルブを更に有していてもよい。
【0035】
ガスソースGS8は、フルオロカーボンガスと希ガスを含む混合ガス、即ち、第1のガスのソースである。フルオロカーボンガスは例えばCガスであり、希ガスは先に例示したような任意の希ガスである。このガスソースGS8は、バルブ428、流量制御器438、及びバルブ448を介してガス供給管38に接続されている。ガスソースGS8からのガスは、後述する工程ST4で用いられ得る。工程ST4で用いられる処理ガスは、大流量の希ガスによってフルオロカーボンガスが希釈されたガスである。したがって、この処理ガスの全流量中において、フルオロカーボンガスの流量は相当に小さい。このような流量のフルオロカーボンガスの供給を単ガスのガスソースから行う場合には、流量制御器に求められる流量制御の精度は高いものとなる。一方、第2例のガス供給部GUでは、フルオロカーボンガスの所望の流量及び希ガスの所望の流量に応じた混合比でフルオロカーボンガスと希ガスを含む混合ガス用の単一のガスソースGS8が用いられる。したがって、第2例のガス供給部GUによれば、高い精度の流量制御器を用いずとも、所望の流量のフルオロカーボンガス及び所望の流量の希ガスを供給することが可能となる。
【0036】
図6は、ガス供給部の更に別の一例を示す図である。図6に示す第3例のガス供給部GUでは、ガスソース群GSGは、上述した複数のガスソースGS1〜GS8に加えて、ガスソースGS9を含んでいる。また、第2例のガス供給部GUでは、バルブ群42はバルブ429を更に含んでおり、流量制御器群43は流量制御器439を更に含んでおり、バルブ群44はバルブ449を更に含んでいる。なお、第3例のガス供給部GUも、酸素含有ガス、例えば、酸化炭素ガスのソース、並びに当該ソースとガス供給管38との間に設けられたバルブ、流量制御器、及びバルブを更に有していてもよい。
【0037】
ガスソースGS9は、第2のガスのソースであり、当該第2のガスは、希ガスのみを含むか、或いはフルオロカーボンガスと希ガスを含む。第2のガスがフルオロカーボンガスと希ガスを含む場合には、ガスソースGS9は、ガスソースGS8における第1のガスとは異なる体積比で、フルオロカーボンガスと希ガスを含む。この第3例のガス供給部GUのガスソースGS8及びガスソースGS9は、工程ST4において処理ガスを供給するために用いられる。これらの工程では、フルオロカーボンガスの所望の流量及び希ガスの所望の流量に応じて、ガスソースGS8の第1のガスの流量、及び、ガスソースGS9の第2のガスの流量が調整される。これにより、高精度の流量制御器を用いずとも、処理ガス中のフルオロカーボンガスの流量を高い分解能で制御することが可能となる。
【0038】
例えば、ガスソースGS8の第1のガスが体積比で0.1%のフルオロカーボンガス及び99.9%の希ガスを含み、ガスソースGS8の第2のガスが希ガスのみをフルオロカーボンガスのみを含む場合を想定する。この場合に、第1のガスの流量を500sccm、第2のガスの流量を500sccmに調整すると、希ガスの流量が約1000sccmとなり、フルオロカーボンガスの流量は0.5sccmとなる。また、第1のガスの流量を490sccm、第2のガスの流量を510sccmに調整すると、希ガスの流量が約1000sccmとなり、フルオロカーボンガスの流量は0.49sccmとなる。このように、ガスソースGS8の第1のガスの流量及びガスソースGS9の第2のガスの流量の調整の分解能が低くても、フルオロカーボンガスの流量を高い分解能で調整することが可能となる。
【0039】
再び図3を参照する。プラズマ処理装置10では、処理容器12の内壁に沿ってデポシールド46が着脱自在に設けられている。デポシールド46は、支持部14の外周にも設けられている。デポシールド46は、処理容器12にエッチング副生物(デポ)が付着することを防止するものであり、アルミニウム材にY等のセラミックスを被覆することにより構成され得る。
【0040】
処理容器12の底部側、且つ、支持部14と処理容器12の側壁との間には排気プレート48が設けられている。排気プレート48には、当該排気プレート48を板厚方向に貫通する複数の貫通孔が形成されている。排気プレート48は、例えば、アルミニウム材にY等のセラミックスを被覆することにより構成され得る。この排気プレート48の下方、且つ、処理容器12には、排気口12eが設けられている。排気口12eには、排気管52を介して排気装置50が接続されている。排気装置50は、圧力調整弁、及び、ターボ分子ポンプなどの真空ポンプを有しており、処理容器12内の空間を所望の真空度まで減圧することができる。また、処理容器12の側壁にはウエハWの搬入出口12gが設けられており、この搬入出口12gはゲートバルブ54により開閉可能となっている。
【0041】
また、プラズマ処理装置10は、第1の高周波電源62及び第2の高周波電源64を更に備えている。第1の高周波電源62は、プラズマ生成用の高周波を発生する電源であり、例えば27〜100MHzの周波数の高周波を発生する。第1の高周波電源62は、整合器66を介して下部電極LEに接続されている。整合器66は、第1の高周波電源62の出力インピーダンスと負荷側(下部電極LE側)の入力インピーダンスを整合させるための回路を有している。なお、第1の高周波電源62は、整合器66を介して上部電極30に接続されていてもよい。
【0042】
第2の高周波電源64は、ウエハWにイオンを引き込むための高周波バイアスを発生する電源であり、例えば、400kHz〜13.56MHzの範囲内の周波数の高周波バイアスを発生する。第2の高周波電源64は、整合器68を介して下部電極LEに接続されている。整合器68は、第2の高周波電源64の出力インピーダンスと負荷側(下部電極LE側)の入力インピーダンスを整合させるための回路を有している。
【0043】
また、プラズマ処理装置10は、電源70を更に備えている。電源70は、上部電極30に接続されている。電源70は、処理空間S内に存在する正イオンを天板34に引き込むための電圧を、上部電極30に印加する。一例においては、電源70は、負の直流電圧を発生する直流電源である。別の一例において、電源70は、比較的低周波の交流電圧を発生する交流電源であってもよい。電源70から上部電極に印加される電圧は、−150V以下の電圧であり得る。即ち、電源70によって上部電極30に印加される電圧は、絶対値が150V以上の負の電圧であり得る。このような電圧が電源70から上部電極30に印加されると、処理空間Sに存在する正イオンが、天板34に衝突する。これにより、天板34から二次電子及び/又はシリコンが放出される。放出されたシリコンは、処理空間S内に存在するフッ素の活性種と結合し、フッ素の活性種の量を低減させる。
【0044】
また、一実施形態においては、プラズマ処理装置10は、制御部Cntを更に備え得る。この制御部Cntは、プロセッサ、記憶部、入力装置、表示装置等を備えるコンピュータであり、プラズマ処理装置10の各部を制御する。この制御部Cntでは、入力装置を用いて、オペレータがプラズマ処理装置10を管理するためにコマンドの入力操作等を行うことができ、また、表示装置により、プラズマ処理装置10の稼働状況を可視化して表示することができる。さらに、制御部Cntの記憶部には、プラズマ処理装置10で実行される各種処理をプロセッサにより制御するための制御プログラムや、処理条件に応じてプラズマ処理装置10の各部に処理を実行させるためのプログラム、即ち、処理レシピが格納される。
【0045】
以下、再び図1を参照して、方法MTについて詳細に説明する。以下、図1と共に、図2図7図10を適宜参照する。図7図9は、図1に示す方法の実施の途中段階における被処理体の一部を拡大して示す断面図であり、図10図1に示す方法の実施後の被処理体の一部を拡大して示す断面図である。以下の説明では、方法MTにおいて図2に示すウエハWが図3に示す一つのプラズマ処理装置10を用いて処理される例について説明する。なお、プラズマ処理装置10を用いて実施される方法MTの各工程では、当該プラズマ処理装置10の各部の動作は制御部Cntによって制御され得る。
【0046】
まず、方法MTでは、工程ST1が実行される。工程ST1では、プラズマ処理装置10の処理容器12内に図2に示すウエハWが準備される。具体的には、ウエハWが、処理容器12内に搬入され、当該ウエハWが載置台PD上に載置されて、当該載置台PDの静電チャックESCによって保持される。
【0047】
方法MTでは、次いで、工程ST2が実行される。工程ST2では、反射防止膜ALがエッチングされる。このため、工程ST2では、ガスソース群GSGの複数のガスソースのうち選択されたガスソースから処理容器12内に処理ガスが供給される。この処理ガスは、フルオロカーボンガスを含む。フルオロカーボンガスは、例えば、Cガス及びCFガスのうち一種以上を含み得る。また、この処理ガスは、希ガス、例えば、Arガスを更に含み得る。また、工程ST2では、排気装置50が作動され、処理容器12内の圧力が所定の圧力に設定される。さらに、工程ST2では、第1の高周波電源62からの高周波が下部電極LEに供給され、第2の高周波電源64からの高周波バイアスが下部電極LEに供給される。
【0048】
工程ST2では、処理ガスのプラズマが生成され、フルオロカーボン及び/又はフッ素の活性種によって、レジストマスクRMの開口から露出されている部分において反射防止膜ALがエッチングされる。その結果、図7に示すように、反射防止膜ALの全領域のうち、レジストマスクRMの開口から露出されている部分が除去される。即ち、反射防止膜ALにレジストマスクRMのパターンが転写され、開口を提供するパターンが反射防止膜ALに形成される。
【0049】
続く工程ST3では、有機膜OLがエッチングされる。このため、工程ST3では、ガスソース群GSGの複数のガスソースのうち選択されたガスソースから処理容器12内に処理ガスが供給される。この処理ガスは、水素ガス及び窒素ガスを含み得る。なお、工程ST3において用いられる処理ガスは、有機膜をエッチングし得るものであれば、他のガス、例えば、酸素ガスを含む処理ガスであってもよい。また、工程ST3では、排気装置50が作動され、処理容器12内の圧力が所定の圧力に設定される。さらに、工程ST3では、第1の高周波電源62からの高周波が下部電極LEに供給され、第2の高周波電源64からの高周波バイアスが下部電極LEに供給される。
【0050】
工程ST3では、処理ガスのプラズマが生成され、反射防止膜ALの開口から露出されている部分において有機膜OLがエッチングされる。また、レジストマスクRMもエッチングされる。その結果、図8に示すように、レジストマスクRMが除去され、有機膜OLの全領域のうち、反射防止膜ALの開口から露出されている部分が除去される。即ち、有機膜OLに反射防止膜ALのパターンが転写され、開口を提供するパターンが有機膜OLに形成され、当該有機膜OLからマスクMKが生成される。
【0051】
続く工程ST4では、第1領域R1がエッチングされる。このため、工程ST4では、処理ガスのプラズマが処理容器12内において生成される。この処理ガスは、フルオロカーボンガス及び希ガスを含む。フルオロカーボンガスは、例えば、Cガスである。また、希ガスは、例えば、アルゴンガス(Arガス)である。また、一実施形態では、処理ガスは酸素ガスを更に含む。処理ガスに酸素ガスが含まれていることにより、後述する堆積物DPの量が適度に調整される。
【0052】
工程ST4では、ガスソース群GSGの複数のガスソースのうち選択されたガスソースから処理容器12内に上記処理ガスが供給される。一実施形態では、上述した第1〜第3例のガス供給部GUの何れかによって処理ガスが供給される。第2例のガス供給部GUが用いられる場合には、ガスソースGS8からフルオロカーボンガスと希ガスの混合ガスが供給される。また、第3例のガス供給部GUが用いられる場合には、ガスソースGS8(第1のガスソース)からフルオロカーボンガスと希ガスを含む第1のガスが供給され、ガスソースGS9(第2のガスソース)から希ガスのみを含むか、或いは、第1のガスとは異なる体積比でフルオロカーオンガス及び希ガスを含む第2のガスが供給される。また、工程ST4では、排気装置50が作動され、処理容器12内の圧力が所定の圧力に設定される。さらに、工程ST4では、第1の高周波電源62からの高周波が下部電極LEに供給される。なお、第2の高周波電源64からの下部電極LEに対する高周波バイアスの供給は行われてもよく、或いは行われなくてもよい。
【0053】
工程ST4では、ウエハWがその上に載置される下部電極LEの自己バイアス電位が、4V以上、350V以下となるように、第1の高周波電源62からの高周波の電力が設定される。また、第1の高周波電源62からの高周波に加えて第2の高周波電源64からの高周波バイアスが下部電極LEに供給される場合には、上記の自己バイアス電位が発生するよう、第1の高周波電源62からの高周波の電力、及び第2の高周波電源64からの高周波バイアスの電力の双方が設定される。なお、自己バイアス電位は、第1の高周波電源62からの高周波の電力が大きいほど高くなる傾向があり、第2の高周波電源64からの高周波バイアスの電力が大きいほど高くなる傾向がある。また、自己バイアス電位は、処理容器12内の空間の圧力、第1の高周波電源62の高周波の周波数、及び、第2の高周波電源64からの高周波バイアスの周波数にも依存する。但し、処理容器12内の空間の圧力、第1の高周波電源62の高周波の周波数、及び、第2の高周波電源64からの高周波バイアスの周波数等が決定されれば、上記傾向に従って第1の高周波電源62からの高周波の電力及び第2の高周波電源64からの高周波バイアスの電力を調整することにより、自己バイアス電位を所望の値に設定することができる。
【0054】
また、工程ST4では、処理ガス中のフルオロカーボンガスの流量に対して処理ガス中の希ガスの流量は、250倍以上、5000倍以下の流量に設定される。即ち、工程ST4では、大量の希ガスによって希釈されたフルオロカーボンガスが利用される。
【0055】
以下に、工程ST4における各種処理条件を例示する。
・処理容器内圧力:10mTorr(1.33Pa)〜100mTorr(13.3Pa)
・処理ガス
ガス:0.2sccm〜4sccm
Arガス:500sccm〜1500sccm
ガス:0.2sccm〜5sccm
・プラズマ生成用の高周波の電力:30W〜500W
・高周波バイアスの電力:0W〜100W
・電源70の負の直流電圧:0V〜−600V
【0056】
工程ST4では、図9に示すように、処理ガス中のプラズマの生成によって得られるフルオロカーボン及び/又はフッ素の活性種によって第1領域R1がエッチングされる。また、マスクMKの表面、エッチングによって形成された開口を画成する側壁面、及び第2領域R2の表面に、フルオロカーボン及び/又はカーボンを含む堆積物DPが形成される。この堆積物DPによって第2領域R2が保護されつつ、第1領域R1のエッチングが進行する。そして工程ST4の終了時には、図10に示すように、第2領域R2によって形成されている凹部の底面まで第1領域R1がエッチングされる。
【0057】
かかる方法MTの工程ST4によれば、処理ガス中のフルオロカーボンガスが比較的大量の希ガスによって希釈されており、また、自己バイアス電位が4V以上、350V以下であるので、第1領域R1のエッチングにおける第2領域R2の浸食が抑制される。
【0058】
なお、下部電極LEの自己バイアス電位が4V以上に設定されると、ウエハWに照射されるイオンのエネルギーは4eV以上のエネルギーとなる。4eV以上のエネルギーを有するイオンがウエハWに照射されると、第1領域R1を構成するシリコンと酸素との結合が切断され、シリコンとフッ素の反応生成物が生成される。この反応生成物は排気される。また、下部電極LEの自己バイアス電位が350V以下に設定されると、ウエハWに照射されるイオンのエネルギーは350eVよりも若干大きいエネルギー以下のエネルギーとなる。このようなエネルギーを有するイオンは、2nmの厚さの堆積物DPを貫通しない。したがって、自己バイアス電位が350V以下であれば、第2領域R2の浸食が抑制される。また、工程ST4において用いられる処理ガス中のフルオロカーボンガスが250倍以上、5000倍以下の比較的大量の希ガスによって希釈されると、第1領域R1のエッチングを妨げることなく、第2領域R2の浸食を更に抑制することが可能になる。これは、堆積物DP中のフッ素の量が減少され、比較的硬質の堆積物DPが第2領域R2上に形成されるからであると推測される。
【0059】
以下、別の実施形態に係るエッチング方法について説明する。図11は、別の実施形態に係るエッチング方法を示す流れ図である。図11に示す方法MT2は、シーケンスSQを含む点において方法MTとは異なっている。方法MT2は、工程ST5を更に含んでいてもよい。以下、図11に加えて、図12図15を参照する。図12図15は、図11に示す方法の実施の途中段階における被処理体の一部を拡大して示す断面図である。また、以下の説明では、方法MT2において図2に示すウエハWが図3に示す一つのプラズマ処理装置10を用いて処理される例について説明する。なお、プラズマ処理装置10を用いて実施される方法MT2の各工程では、当該プラズマ処理装置10の各部の動作は制御部Cntによって制御され得る。
【0060】
方法MT2では、方法MTと同様に工程ST1〜工程ST3が実行され、図8に示す状態のウエハWが得られる。次いで、工程ST5が実行される。工程ST5では、第1領域R1が、第2領域R2が露出する直前までエッチングされる。即ち、第2領域R2上に第1領域R1が僅かに残されるまで、当該第1領域R1がエッチングされる。このため、工程ST5では、ガスソース群GSGの複数のガスソースのうち選択されたガスソースから処理容器12内に処理ガスが供給される。この処理ガスは、フルオロカーボンガスを含む。また、この処理ガスは、希ガス、例えば、Arガスを更に含み得る。また、この処理ガスは、酸素ガスを更に含み得る。また、工程ST5では、排気装置50が作動され、処理容器12内の圧力が所定の圧力に設定される。さらに、工程ST5では、第1の高周波電源62からの高周波が下部電極LEに供給され、第2の高周波電源64からの高周波バイアスが下部電極LEに供給される。
【0061】
図12に示すように、工程ST5では、処理ガスのプラズマが生成され、マスクMKの開口から露出されている部分において第1領域R1が、フルオロカーボン及び/又はフッ素の活性種によってエッチングされる。また、工程ST5では、マスクMKの表面、及びエッチングによって形成された開口を画成する側壁面に、フルオロカーボン及び/又はカーボンを含む堆積物DPが形成される。この工程ST5の処理時間は、当該工程ST5の終了時に、第2領域R2上に第1領域R1が所定の膜厚で残されるように、設定される。
【0062】
なお、工程ST5の処理条件は工程ST4の処理条件と同様の条件であってもよい。或いは、工程ST5は、より短時間で第1領域R1のエッチングを行うことが可能であるよう、以下に示す処理条件で実行されてもよい。
・処理容器内圧力:10mTorr(1.33Pa)〜50mTorr(6.65Pa)
・処理ガス
8ガス:10sccm〜30sccm
CFガス:50sccm〜150sccm
Arガス:500sccm〜1000sccm
ガス:10sccm〜30sccm
・プラズマ生成用の高周波の電力:500W〜2000W
・高周波バイアスの電力:500W〜2000W
【0063】
次いで、方法MT2では、一回以上のシーケンスSQが実行される。シーケンスSQは、第2領域R2が露出するときを含む期間において第1領域R1をエッチングするために実行される。シーケンスSQは、工程ST11及び工程ST13を含んでいる。一実施形態では、シーケンスSQは、工程ST12を更に含み得る。
【0064】
工程ST11では、図12に示したウエハWが収容された処理容器12内で、処理ガスのプラズマが生成される。このため、工程ST11では、ガスソース群GSGの複数のガスソースのうち選択されたガスソースから処理容器12内に処理ガスが供給される。この処理ガスは、フルオロカーボンガスを含む。また、この処理ガスは、希ガス、例えば、Arガスを更に含み得る。また、工程ST11では、排気装置50が作動され、処理容器12内の圧力が所定の圧力に設定される。さらに、工程ST11では、第1の高周波電源62からの高周波が下部電極LEに供給される。なお、第2の高周波電源64からの高周波バイアスが下部電極LEに供給されてもよく、供給されなくてもよい。この工程ST11では、フルオロカーボンガスを含む処理ガスのプラズマが生成され、解離したフルオロカーボンが、ウエハWの表面上に堆積して、図13に示すように堆積物DPを形成する。
【0065】
この工程ST11では、工程ST5の処理条件及び工程ST4の処理条件は異なり、第1領域R1のエッチングよりも、ウエハW上への堆積物DPの形成が優位となるモード、即ち、堆積モードとなる処理条件が選択される。一例では、工程ST11の処理ガス中のフルオロカーボンガスとして、Cガスが利用される。
【0066】
以下に、工程ST11における各種処理条件を例示する。
・処理容器内圧力:10mTorr(1.33Pa)〜50mTorr(6.65Pa)
・処理ガス
ガス:2sccm〜10sccm
Arガス:500sccm〜1500sccm
・プラズマ生成用の高周波の電力:100W〜500W
・高周波バイアスの電力:0W
【0067】
一実施形態では、次いで、工程ST12が実行される。工程ST12では、処理容器12内において酸素含有ガス及び不活性ガスを含む処理ガスのプラズマが生成される。このため、工程ST12では、ガスソース群GSGの複数のガスソースのうち選択されたガスソースから処理容器12内に処理ガスが供給される。一例では、この処理ガスは、酸素含有ガスとして、酸素ガスを含む。また、一例では、この処理ガスは、不活性ガスとして、Arガスといった希ガスを含む。不活性ガスは、窒素ガスであってもよい。また、工程ST12では、排気装置50が作動され、処理容器12内の圧力が所定の圧力に設定される。さらに、工程ST12では、第1の高周波電源62からの高周波が下部電極LEに供給される。工程ST12では、第2の高周波電源64からの高周波バイアスが下部電極LEに供給されなくてもよい。
【0068】
工程ST12では、酸素の活性種が生成され、当該酸素の活性種によって、ウエハW上の堆積物DPの量が、図14に示すように、適度に減少される。その結果、マスクMKが形成する開口、及びエッチングによって形成される開口が、過剰な堆積物DPによって閉塞されることが防止される。また、工程ST12で利用される処理ガスでは、酸素ガスが不活性ガスによって希釈されているので、堆積物DPが過剰に除去されることが抑制される。
【0069】
以下に、工程ST12における各種処理条件を例示する。
・処理容器内圧力:10mTorr(1.33Pa)〜50mTorr(6.65Pa)
・処理ガス
ガス:2sccm〜20sccm
Arガス:500sccm〜1500sccm
・プラズマ生成用の高周波の電力:100W〜500W
・高周波バイアスの電力:0W
【0070】
一実施形態では、各シーケンスの工程ST12、即ち一回の工程ST12は2秒以上実行され、且つ、工程ST12において堆積物DPが1nm/秒以下のレートでエッチングされ得る。プラズマ処理装置10のようなプラズマ処理装置を用いて上記シーケンスを実行するには、工程ST11、工程ST12、及び工程ST13の各工程間の遷移のためのガスの切り換えに時間を要する。したがって、放電の安定に要する時間を考慮すると、工程ST12は2秒以上実行される必要がある。しかしながら、このような時間長の期間における堆積物DPのエッチングのレートが高すぎると、第2領域R2を保護するための堆積物が過剰に除去され得る。このため、工程ST12において1nm/秒以下のレートで堆積物DPがエッチングされる。これにより、ウエハW上に形成されている堆積物DPの量を適度に調整することが可能となる。なお、工程ST12における堆積物DPのエッチングの1nm/秒以下のレートは、処理容器内の圧力、処理ガス中の酸素の希ガスによる希釈の度合い、即ち、酸素濃度、及び、プラズマ生成用の高周波の電力を、上述した条件から選択することによって達成され得る。
【0071】
続く工程ST13では、第1領域R1がエッチングされる。この工程ST13では、堆積物DP中のフルオロカーボンと第1領域R1の酸化シリコンとの反応を促進させる処理が行われる。このため、工程ST13では、ガスソース群GSGの複数のガスソースのうち選択されたガスソースから処理容器12内に処理ガスが供給される。この処理ガスは、不活性ガスを含む。不活性ガスは、一例では、Arガスといった希ガスであり得る。或いは、不活性ガスは、窒素ガスであってもよい。また、工程ST13では、排気装置50が作動され、処理容器12内の圧力が所定の圧力に設定される。さらに、工程ST13では、第1の高周波電源62からの高周波が下部電極LEに供給される。また、工程ST13では、第2の高周波電源64からの高周波バイアスが下部電極LEに供給される。
【0072】
以下に、工程ST13における各種条件を例示する。
・処理容器内圧力:10mTorr(1.33Pa)〜50mTorr(6.65Pa)
・処理ガス
Arガス:500sccm〜1500sccm
・プラズマ生成用の高周波の電力:100W〜500W
・高周波バイアスの電力:20W〜300W
【0073】
工程ST13では、不活性ガスのプラズマが生成され、イオンがウエハWに対して引き込まれる。これにより、堆積物DP中に含まれるフルオロカーボンのラジカルと第1領域R1の酸化シリコンとの反応が促進され、第1領域R1がエッチングされる。この工程ST13の実行により、図15に示すように、第2領域R2によって提供される凹部内の第1領域R1がエッチングされる。
【0074】
このシーケンスSQの実行回数は1回であってもよい。この場合には、後述する工程STJの判定は不要であり、シーケンスSQの実行後、工程ST4が実行される。
【0075】
一実施形態では、シーケンスSQは繰り返して実行される。即ち、シーケンスSQが複数回実行される。この実施形態では、工程STJにおいて、停止条件が満たされるか否かが判定される。停止条件はシーケンスSQが所定回数実行されている場合に満たされるものと判定される。工程STJにおいて、停止条件が満たされないと判定される場合には、工程ST11からシーケンスSQが再び実行される。一方、工程STJにおいて、停止条件が満たされると判定される場合には、次いで、工程ST4が実行される。方法MT2の工程ST4は、方法MTの工程ST4と同一の工程である。この工程ST4の実行の終了時には、図10に示したように、ウエハWは、第2領域R2によって形成されている凹部の底面まで第1領域R1がエッチングされた状態となる。
【0076】
この方法MT2によれば、第2領域R2の露出時にシーケンスSQが実行され、堆積物DPにより当該第2領域R2がより確実に保護される。しかる後に堆積物DP中のラジカルによって第1領域R1がエッチングされる。したがって、第2領域R2の浸食が更に抑制される。
【0077】
以上、種々の実施形態について説明してきたが、上述した実施形態に限定されることなく種々の変形態様を構成可能である。例えば、上述した実施形態に係る方法が適用される被処理体は、図2に示した被処理体に限定されるものではない。例えば、上述した実施形態に係る方法は、酸化シリコンから構成された第1領域と窒化シリコンから第2領域を有する任意の被処理体に適用可能である。
【0078】
また、上述した実施形態に係る方法は、容量結合型のプラズマ処理装置以外の任意のプラズマ処理装置を用いて実施することが可能である。例えば、上述した実施形態に係る方法は、誘導結合型のプラズマ処理装置、又は、マイクロ波といった表面波によりプラズマを生成するプラズマ処理装置を用いて実施されてもよい。
【0079】
また、方法MT2では、工程ST5を実行せず、工程ST3に続けてシーケンスSQが実行されてもよい。また、シーケンスSQは工程ST12を含んでいなくてもよい。一方、シーケンスSQが工程ST12を含む場合には、当該シーケンスSQにおける工程ST12の実行順は任意であり得る。例えば、シーケンスSQにおいて、工程ST12は工程ST13の実行後に実行されてもよい。
【0080】
以下、工程ST4の評価のために行った実験例1〜3について説明する。実験例1〜3では、図16の(a)にその一部の拡大断面図を示すウエハWEを準備した。ウエハWEは、基板SB上に設けられた隆起領域RA、当該隆起領域RAを覆う窒化シリコン製の第2領域R2、第2領域R2によって形成された凹部を埋め、且つ、第2領域R2を覆うように設けられた酸化シリコン製の第1領域R1を有するものであった。第2領域R2によって形成された凹部はトレンチであり、その幅は20nmであり、深さは150nmであった。また、比較実験例1〜2においても同様のウエハWEを準備した。
【0081】
実験例1〜3及び比較実験例1〜2の各々では、プラズマ処理装置10を用いて以下に示す処理条件で、第1領域R1をエッチングした。
<実験例1の処理条件>
処理容器内圧力:30mTorr(4Pa)
ガスの流量:4sccm
Arガスの流量:1000sccm
ガスの流量:5sccm
ガスの流量に対するArガスの流量:250倍
第1の高周波電源62の高周波:40MHz、500W
第2の高周波電源64の高周波バイアス:13MHz、50W
下部電極LEの自己バイアス電位:350V
電源70の負の直流電圧:−300V
処理時間:10分
<実験例2の処理条件>
処理容器内圧力:30mTorr(4Pa)
ガスの流量:0.8sccm
Arガスの流量:1000sccm
ガスの流量:0.8sccm
ガスの流量に対するArガスの流量:1250倍
第1の高周波電源62の高周波:40MHz、300W
第2の高周波電源64の高周波バイアス:13MHz、0W
下部電極LEの自己バイアス電位:150V
電源70の負の直流電圧:−300V
処理時間:10分
<実験例3の処理条件>
処理容器内圧力:30mTorr(4Pa)
ガスの流量:0.2sccm
Arガスの流量:1000sccm
ガスの流量:0.2sccm
ガスの流量に対するArガスの流量:5000倍
第1の高周波電源62の高周波:40MHz、120W
第2の高周波電源64の高周波バイアス:13MHz、0W
下部電極LEの自己バイアス電位:50V
電源70の負の直流電圧:−300V
処理時間:10分
<比較実験例1の処理条件>
処理容器内圧力:30mTorr(4Pa)
ガスの流量:8sccm
Arガスの流量:1000sccm
ガスの流量:10sccm
ガスの流量に対するArガスの流量:125倍
第1の高周波電源62の高周波:40MHz、500W
第2の高周波電源64の高周波バイアス:13MHz、100W
下部電極LEの自己バイアス電位:500V
電源70の負の直流電圧:−300V
処理時間:10分
<比較実験例2の処理条件>
処理容器内圧力:30mTorr(4Pa)
ガスの流量:7.6sccm
Arガスの流量:1000sccm
ガスの流量:10sccm
ガスの流量に対するArガスの流量:131倍
第1の高周波電源62の高周波:40MHz、300W
第2の高周波電源64の高周波バイアス:13MHz、0W
下部電極LEの自己バイアス電位:150V
電源70の負の直流電圧:−300V
処理時間:10分
【0082】
実験例1〜3及び比較実験例1〜2では、処理後のウエハWEのSEM画像を取得し、隆起領域RAの中央の上における第2領域R2の膜厚の減少量ΔT1(処理前後の第2領域R2の膜厚の差)、第2領域R2の肩部における当該第2領域R2の膜厚の減少量ΔT2(処理前後の第2領域R2の膜厚の差)を求めた。その結果、実験例1のΔT1は2.4nm、実験例1のΔT2は6.3nmであり、実験例2のΔT1は及びΔT2は0nmであり、実験例3のΔT1は及びΔT2は0nmであった。また、比較実験例1のΔT1は14.7nm、比較実験例1のΔT2は23.9nmであり、比較実験例2のΔT1は11.1nm、比較実験例2のΔT2は17.6nmであった。比較実験例1、即ち、Cガスの流量に対するArガスの流量が125倍であり、自己バイアス電位が500Vの処理条件でエッチングを行った実験例では、第2領域R2が大きく浸食され、第2領域R2の膜厚が大きく減少していた。比較実験例1の自己バイアス電位よりも低い自己バイアス電位を用いた比較実験例2においても、10nmを超える第2領域R2の膜厚の減少が生じていた。これは、比較実験例2では、Cガスの流量に対するArガスの流量が131倍であり、250倍よりも小さかったことが原因である。一方、実験例1〜3では、第2領域R2の膜厚の減少量が非常に小さくなっていた。したがって、方法MT及び方法MT2では、工程ST4の実行によって、第2領域R2の浸食を抑制しつつ、第1領域R1をエッチングすることが可能であることが確認された。
【符号の説明】
【0083】
10…プラズマ処理装置、12…処理容器、30…上部電極、50…排気装置、PD…載置台、LE…下部電極、ESC…静電チャック、62…第1の高周波電源、64…第2の高周波電源、GU…ガス供給部、GSG…ガスソース群、Cnt…制御部、W…ウエハ、MK…マスク、R1…第1領域、R2…第2領域、DP…堆積物。
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