(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、適宜図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【0016】
<銅張積層板>
本実施の形態の銅張積層板は、ポリイミド絶縁層と銅箔層とから構成される。銅箔層はポリイミド絶縁層の片面又は両面に設けられている。つまり、本実施の形態の銅張積層板は、片面銅張積層板(片面CCL)でもよいし、両面銅張積層板(両面CCL)でもよい。片面CCLの場合、ポリイミド絶縁層の片面に積層された銅箔層を、本発明における「第1の銅箔層」とする。両面CCLの場合、ポリイミド絶縁層の片面に積層された銅箔層を、本発明における「第1の銅箔層」とし、ポリイミド絶縁層において、第1の銅箔層が積層された面とは反対側の面に積層された銅箔層を、本発明における「第2の銅箔層」とする。本実施の形態の銅張積層板は、銅箔をエッチングするなどして配線回路加工して銅配線を形成し、FPCとして使用される。
【0017】
<第1の銅箔層>
本実施の形態の銅張積層板において、第1の銅箔層に使用される銅箔(以下、「第1の銅箔」と記すことがある)は、圧延銅箔からなる。第1の銅箔として圧延銅箔を用いることによって、後述するように、厚みと引張弾性率との積を考慮することにより、優れた寸法安定性と高屈曲性を両立可能な銅張積層板を安定的に製造することができる。また、本実施の形態の銅張積層板においては、第1の銅箔として、短辺(幅)に対する長辺(長さ)の比率(長辺/短辺)が600以上である長尺な銅箔を使用する。
【0018】
第1の銅箔の厚みは13μm以下であり、好ましくは6〜12μmの範囲内がよい。第1の銅箔の厚みが13μmを超えると、銅張積層板(又はFPC)を折り曲げた際の銅箔(又は銅配線)に加わる曲げ応力が大きくなることにより耐折り曲げ性が低下することとなる。また、生産安定性及びハンドリング性の観点から、第1の銅箔の厚みの下限値は6μmとすることが好ましい。
【0019】
また、第1の銅箔の引張弾性率は、例えば、10〜35GPaの範囲内であることが好ましく、15〜25GPaの範囲内がより好ましい。本実施の形態で第1の銅箔として使用する圧延銅箔は、熱処理によってアニールされると、柔軟性が高くなる。従って、第1の銅箔の引張弾性率が上記下限値に満たないと、長尺な第1の銅箔からキャスト法によって銅張積層板を製造する際、第1の銅箔上にポリイミド絶縁層を形成する工程において、加熱によって第1の銅箔自体の剛性が低下してしまう。その結果、銅張積層板に凹凸(コルゲーション)が発生するという問題が生じる。なお、ラミネート法によって銅張積層板を製造する場合、上記コルゲーションの問題は生じ難いが、十分な寸法安定性が得られない。
一方、引張弾性率が上記上限値を超えるとFPCを折り曲げた際に銅配線により大きな曲げ応力が加わることとなり、その耐折り曲げ性が低下する。なお、圧延銅箔は、前述したキャスト法によって銅箔上にポリイミド絶縁層を形成する際の熱処理条件や、ポリイミド絶縁層を形成した後の銅箔のアニール処理などにより、その引張弾性率が変化する傾向がある。従って、本実施の形態では、最終的に得られた銅張積層板において、第1の銅箔の引張弾性率が上記範囲内にあればよい。
【0020】
また、第1の銅箔は、その厚み(μm)と引張弾性率(GPa)との積が、180〜250の範囲内であり、210〜240の範囲内であることが好ましい。第1の銅箔の厚みと引張弾性率との積が180未満では、長尺な第1の銅箔を用いてキャスト法によって銅張積層板を製造する際にコルゲーションが発生しやすくなって生産安定性が低下し、250を超えると、耐折り曲げ性が低下する。本実施の形態においては、第1の銅箔の厚みと引張弾性率との積を上記範囲内に規定することによって、第1の銅箔のハンドリング性と剛性のバランスをとり、生産安定性と耐折り曲げ性との両立を図ることができる。
【0021】
第1の銅箔は、上記特性を充足するものであれば特に限定されるものではなく、市販されている圧延銅箔を用いることができる。第1の銅箔として好適な市販品として、例えば、JX日鉱日石金属株式会社製のHA−V2箔を挙げることができる。
【0022】
<第2の銅箔層>
第2の銅箔層は、ポリイミド絶縁層における第1の銅箔層とは反対側の面に積層されている。第2の銅箔層に使用される銅箔(第2の銅箔)としては、特に限定されるものではなく、例えば、圧延銅箔でも電解銅箔でもよい。また、第2の銅箔として、市販されている銅箔を用いることもできる。なお、第2の銅箔として、第1の銅箔と同じものを使用してもよい。
【0023】
<ポリイミド絶縁層>
本実施の形態の銅張積層板において、反りの発生や寸法安定性の低下を防止するために、ポリイミド絶縁層全体として、熱膨張係数(CTE)が10ppm/K以上30ppm/K以下の範囲内であることが重要である。ポリイミド絶縁層の熱膨張係数(CTE)は、10ppm/K以上25ppm/K以下の範囲内が好ましい。熱膨張係数(CTE)が10ppm/K未満であるか、又は30ppm/Kを超えると、銅張積層板に反りが発生したり、寸法安定性が低下したりする。また、本実施の形態の銅張積層板において、銅の熱膨張係数(CTE)に対してポリイミド絶縁層の熱膨張係数(CTE)が、±5ppm/K以下の範囲内がより好ましく、±2ppm/K以下の範囲内が最も好ましい。
【0024】
本実施の形態の銅張積層板において、ポリイミド絶縁層の厚みは、銅箔層の厚みや剛性などに応じて、所定の範囲内の厚みに設定することができる。ポリイミド絶縁層の厚みは、例えば8〜50μmの範囲内にあることが好ましく、11〜26μmの範囲内にあることがより好ましい。ポリイミド絶縁層の厚みが上記下限値に満たないと、電気絶縁性が担保出来ないことや、ハンドリング性の低下により製造工程にて取扱いが困難になるなどの問題が生じることがある。一方、ポリイミド絶縁層の厚みが上記上限値を超えるとFPCを折り曲げた際に銅配線により曲げ応力が加わることとなり、その耐折り曲げ性を低下させてしまうことがある。
【0025】
また、ポリイミド絶縁層の引張弾性率は3.0〜10.0GPaの範囲内であることが好ましく、4.5〜8.0GPaの範囲内であるのがよい。ポリイミド絶縁層の引張弾性率が3.0GPaに満たないとポリイミド自体の強度が低下することによって、銅張積層板を回路基板へ加工する際にフィルムの裂けなどのハンドリング上の問題が生じることがある。反対に、ポリイミド絶縁層の引張弾性率が10.0GPaを超えると、銅張積層板の折り曲げに対する剛性が上昇する結果、銅張積層板を折り曲げた際に銅配線に加わる曲げ応力が上昇し、耐折り曲げ性が低下してしまう。
【0026】
ポリイミド絶縁層としては、市販のポリイミドフィルムをそのまま使用することも可能であるが、その厚さや物性のコントロールのしやすさから、ポリアミド酸溶液を銅箔上に直接塗布した後、熱処理により乾燥、硬化する所謂キャスト法によって形成されたものが好ましい。また、ポリイミド絶縁層は、単層のみから形成されるものでもよいが、ポリイミド絶縁層と第1の銅箔層との接着性等を考慮すると複数層からなるものが好ましい。ポリイミド絶縁層を複数層とする場合、異なる構成成分からなるポリアミド酸溶液の上に他のポリアミド酸溶液を順次塗布して形成することができる。ポリイミド絶縁層が複数層からなる場合、同一の構成のポリイミド前駆体樹脂を2回以上使用してもよい。
【0027】
ポリイミド絶縁層は複数層とすることが好ましいが、その具体例としては、ポリイミド絶縁層を、低熱膨張性ポリイミド層と、高熱膨張性ポリイミド層と、を含む積層構造とすることが好ましい。ここで、低熱膨張性ポリイミド層は、熱膨張係数が35×10
−6/K未満、好ましくは1×10
−6〜30×10
−6/Kの範囲内、特に好ましくは3×10
−6〜25×10
−6/Kの範囲内のポリイミド層をいう。また、高熱膨張性ポリイミド層は、熱膨張係数が35×10
−6/K以上、好ましくは35×10
−6〜80×10
−6/Kの範囲内、特に好ましくは35×10
−6〜70×10
−6/Kの範囲内のポリイミド層をいう。ポリイミド層は、使用する原料の組合せ、厚み、乾燥・硬化条件を適宜変更することで所望の熱膨張係数を有するポリイミド層とすることができる。
【0028】
上記ポリイミド絶縁層を与えるポリアミド酸溶液は、公知のジアミンと酸無水物とを溶媒の存在下で重合して製造することができる。
【0029】
ポリイミドの原料として用いられるジアミンとしては、例えば、4,6-ジメチル-m-フェニレンジアミン、2,5-ジメチル-p-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノメシチレン、4,4'-メチレンジ-o-トルイジン、4,4'-メチレンジ-2,6-キシリジン、4,4'-メチレン-2,6-ジエチルアニリン、2,4-トルエンジアミン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、4,4'-ジアミノジフェニルプロパン、3,3'-ジアミノジフェニルプロパン、4,4'-ジアミノジフェニルエタン、3,3'-ジアミノジフェニルエタン、4,4'-ジアミノジフェニルメタン、3,3'-ジアミノジフェニルメタン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4'-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3'-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4'-ジアミノジフェニルスルホン、3,3'-ジアミノジフェニルスルホン、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、3,3-ジアミノジフェニルエーテル、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、ベンジジン、3,3'-ジアミノビフェニル、3,3'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニル、3,3'-ジメトキシベンジジン、4,4'-ジアミノ-p-テルフェニル、3,3'-ジアミノ-p-テルフェニル、ビス(p-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(p-β-アミノ-t-ブチルフェニル)エーテル、ビス(p-β-メチル-δ-アミノペンチル)ベンゼン、p-ビス(2-メチル-4-アミノペンチル)ベンゼン、p-ビス(1,1-ジメチル-5-アミノペンチル)ベンゼン、1,5-ジアミノナフタレン、2,6-ジアミノナフタレン、2,4-ビス(β-アミノ-t-ブチル)トルエン、2,4-ジアミノトルエン、m-キシレン-2,5-ジアミン、p-キシレン-2,5-ジアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、2,6-ジアミノピリジン、2,5-ジアミノピリジン、2,5-ジアミノ-1,3,4-オキサジアゾール、ピペラジン、2,2'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニル、3,7-ジアミノジベンゾフラン、1,5-ジアミノフルオレン、ジベンゾ-p-ジオキシン-2,7-ジアミン、4,4'-ジアミノベンジルなどが挙げられる。
【0030】
また、ポリイミドの原料として用いられる酸無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3',4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,2,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,2,4,5-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,2,6,7-テトラカルボン酸二無水物、4,8-ジメチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロナフタレン-1,2,5,6-テトラカルボン酸二無水物、4,8-ジメチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロナフタレン-2,3,6,7-テトラカルボン酸二無水物、2,6-ジクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、2,7-ジクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-テトラクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-テトラクロロナフタレン-2,3,6,7-テトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3',4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3'',4,4''-p-テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2'',3,3''-p-テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3'',4''-p-テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)-プロパン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-プロパン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3.4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ペリレン-2,3,8,9-テトラカルボン酸二無水物、ペリレン-3,4,9,10-テトラカルボン酸二無水物、ペリレン-4,5,10,11-テトラカルボン酸二無水物、ペリレン-5,6,11,12-テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン-1,2,7,8-テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン-1,2,6,7-テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン-1,2,9,10-テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、ピラジン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、チオフェン-,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、4,4'-オキシジフタル酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。
【0031】
上記ジアミン及び酸無水物は、それぞれ1種のみを使用してもよく2種以上を併用することもできる。また、重合に使用される溶媒は、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリジノン、2-ブタノン、ジグライム、キシレン等が挙げられ、1種又は2種以上併用して使用することもできる。
【0032】
熱膨張係数35×10
−6/K未満の低熱膨張性ポリイミド層を形成するには、原料の酸無水物成分としてピロメリット酸二無水物、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を、ジアミン成分としては、2,2'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニル、2-メトキシ-4,4’-ジアミノベンズアニリドを用いることがよく、特に好ましくは、ピロメリット酸二無水物及び2,2'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニルを原料各成分の主成分とするものがよい。
【0033】
また、熱膨張係数35×10
−6/K以上の高熱膨張性ポリイミド層を形成するには、原料の酸無水物成分としてピロメリット酸二無水物、3,3',4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物を、ジアミン成分としては、2,2’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼンを用いることがよく、特に好ましくはピロメリット酸二無水物及び2,2’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパンを原料各成分の主成分とするものがよい。なお、このようにして得られる高熱膨張性ポリイミド層の好ましいガラス転移温度は、300〜400℃の範囲内である。
【0034】
また、ポリイミド絶縁層を低熱膨張性ポリイミド層と高熱膨張性ポリイミド層との積層構造とした場合、好ましくは、低熱膨張性のポリイミド層と高熱膨張性のポリイミド層との厚み比(低熱膨張性ポリイミド層/高熱膨張性のポリイミド層)が1.5〜6.0の範囲内であることがよい。この比の値が、1.5に満たないとポリイミド絶縁層全体に対する低熱膨張性ポリイミド層が薄くなるため、銅箔をエッチングした際の寸法変化率が大きくなりやすく、6.0を超えると高熱膨張性ポリイミド層が薄くなるため、ポリイミド絶縁層と銅箔との接着信頼性が低下しやすくなる。
【0035】
本実施の形態の銅張積層板は、下記の評価方法によって得られる、10mmの回路基板サイズ(FPCサイズ)における配線パターンの配線幅と配線間隔との和に対する累積換算寸法変化量の比率の、試験片における面内のばらつきが、±2%以下である。このばらつきの値が±2%を超える場合には、銅張積層板から加工されたFPCにおいて、配線間もしくは配線と端子との接続不良を引き起こす原因となり、回路基板の信頼性や歩留まりを低下させる要因となる。ここで、
図1〜
図7を参照しながら、本実施の形態において使用される銅張積層板の寸法安定性の評価方法について説明する。この評価方法は、以下の工程(1)〜(7)を備えている。
【0036】
(1)試験片を準備する工程:
本工程では、
図1に例示するように、長尺な銅張積層板100を、所定の長さに切断することによって試験片10を準備する。なお、以下の説明では、長尺な銅張積層板100の長手方向をMD方向、幅方向をTD方向と定義する(試験片10についても同様である)。試験片10は、正方形に近い形状となるように、銅張積層板100の幅(TD方向の長さ)と切断間隔(MD方向の長さ)がほぼ等しくなるようにすることが好ましい。銅張積層板100は、図示は省略するが絶縁樹脂層と、この絶縁樹脂層の片側又は両側に積層された銅層とを有する。
【0037】
本評価方法の対象となる銅張積層板100は、任意の方法で調製したものを使用できる。例えば、銅張積層板100は、樹脂フィルムを用意し、これに金属をスパッタリングしてシード層を形成した後、メッキによって銅層を形成することによって調製したものでもよい。また、銅張積層板100は、樹脂フィルムと銅箔とを熱圧着などの方法でラミネートすることによって調製したものでもよい。さらに、銅張積層板100は、銅箔の上に樹脂溶液を塗布して絶縁樹脂層を形成することによって調製したものでもよい。
【0038】
(2)試験片に複数のマークを形成する工程:
本工程では、
図2に示すように、まず試験片10において、MD方向及びTD方向と平行な辺を有する仮想の正四角形20を想定する。この仮想の正四角形20の一辺の長さは、銅張積層板100の幅(TD方向の長さ)に応じた長さとすることができる。また、仮想の正四角形20の面積は、多数個採りの場合にFPCに加工する範囲の限界まで評価対象に含めるため、FPCに加工する範囲をカバーできる面積に設定することが好ましい。従って、正四角形20の一辺の長さは、試験片10におけるTD方向の長さ(銅張積層板100の幅)の60〜90%の範囲内とすることが好ましく、70〜80%の範囲内とすることがより好ましい。例えば、銅張積層板100の幅(TD方向の長さ)が250mmである場合には、仮想の正四角形20の一辺の長さは、150〜225mmの範囲内に設定することが好ましく、175〜200mmの範囲内に設定することがより好ましい。
【0039】
次に、
図2〜
図4に示すように、仮想の正四角形20の中心20aを含む中心領域21と、正四角形20におけるTD方向の一辺を共有する2つの角部20bの1つずつを含む2つのコーナー領域23a,23bとに、それぞれ、直線状の配列を含む複数のマークを形成する。マークは、例えば試験片10を貫通する丸い孔30である。複数の孔30は、等間隔に形成することが好ましい。なお、マークとしての孔30は、例えば三角形、長方形などの多角形状でもよい。また、マークは、その位置を識別可能であれば、貫通孔に限らず、例えば試験片10に溝、切り込みなどを形成したものであってもよいし、インクなどを利用して印刷した模様であってもよい。
【0040】
<中心領域>
仮想の正四角形20の中心20aは、試験片10の伸縮を測定するための座標の基準になることから、本評価方法では、当該中心20aを含む中心領域21を測定対象とする。中心領域21においては、直線状の配列を含む限り、複数の孔30を形成する位置は任意であり、例えばT字形、L字形などに配列してもよいが、仮想の正四角形20の中心20aから、MD方向及びTD方向に均等に配列できる十字型が好ましい。すなわち、
図3に示すように、複数の孔30を、仮想の正四角形20の中心20aを通る十字形に沿ってMD方向及びTD方向に形成することが好ましく、十字型の交差部分が、仮想の正四角形20の中心20aに重なるように配置することがより好ましい。この場合、中心20aに重なる孔30は、MD方向及びTD方向の両方向の配列を構成する孔30として重複してカウントされる。
【0041】
また、中心領域21では、試験片10の面内での寸法変化のばらつきを含めた寸法安定性を正確に評価できるようにするため、正四角形20における中心20aからMD方向及びTD方向に、それぞれ、正四角形20の1辺の長さに対して、少なくとも12.5%以上、好ましくは12.5〜32.5%の範囲内、より好ましくは12.5〜25%の範囲内に亘って孔30を形成することがよい。
【0042】
<コーナー領域>
正四角形20におけるTD方向の一辺を共有する2つの角部20bの周囲は、
図1に示すような長尺な銅張積層板100において、最も伸縮しやすく、寸法変化が大きくなりやすい領域である。そのため、本評価方法では、正四角形20におけるTD方向の一辺を共有する2つの角部20bの1つずつを含む2つのコーナー領域23a,23bの両方を測定対象とする。
【0043】
コーナー領域23a,23bにおいては、直線状の配列を含む限り、孔30を形成する位置は任意であるが、例えば
図4に示すように、複数の孔30を、仮想の正四角形20の角部20bを挟む2つの辺に沿ってMD方向及びTD方向にL字形に形成することが好ましい。この場合、角部20bに重なる孔30は、MD方向及びTD方向の両方向の配列を構成する孔30として重複してカウントされる。なお、
図4は、片方のコーナー領域23bのみを示しているが、他方のコーナー領域23aについても同様である。
【0044】
2つのコーナー領域23a,23bでは、試験片10の面内での寸法変化のばらつきを含めた寸法安定性を正確に評価できるようにするため、正四角形20におけるTD方向の一辺の両端(つまり、正四角形20の角部20b)からMD方向の中央側へ、それぞれ、MD方向の一辺の長さに対して、少なくとも12.5%以上、好ましくは12.5〜32.5%の範囲内、より好ましくは12.5〜25%の範囲内に亘って孔30を形成することがよい。
【0045】
また、2つのコーナー領域23a,23bでは、試験片10の面内での寸法変化のばらつきを含めた寸法安定性を正確に評価できるようにするため、正四角形20におけるTD方向の一辺の両端(つまり、正四角形20の角部20b)からTD方向の中央側へ、それぞれ、TD方向の一辺の長さに対して、少なくとも12.5%以上、好ましくは12.5〜32.5%の範囲内、より好ましくは12.5〜25%の範囲内に亘って孔30を形成することがよい。
【0046】
また、試験片10の面内を網羅し、部位毎の寸法変化を正確に把握できるようにするために、中心領域21において直線状に配列された両端の孔30間の配列範囲と、コーナー領域23a,23bにおいて同方向に直線状に配列された両端の孔30間の配列範囲とが、重なるようにしてもよい。
具体的には、少なくとも、中心領域21内でMD方向に配列される複数の孔30の両端の位置と、2つのコーナー領域23a,23b内でそれぞれMD方向に配列される複数の孔30の中で最も内側(角部20bから遠い側)の孔30の位置とが、TD方向に平行移動させたときにオーバーラップするように配置してもよい。
同様に、少なくとも、中心領域21内でTD方向に配列される複数の孔30の中で最もコーナー領域23a,23bに近接した孔30の位置と、2つのコーナー領域23a,23b内でTD方向にそれぞれ配列される複数の孔30の中で最も内側(角部20bから遠い側)の孔30の位置とが、MD方向に平行移動させたときにオーバーラップするように配置してもよい。
以上のような配置を考慮すると、中心領域21では、複数の孔30を十字形に配列することが最も合理的であり、また、2つのコーナー領域23a,23bでは、複数の孔30をL字形に配列することが最も合理的である。
【0047】
試験片10の仮想の正四角形20において、孔30を形成する範囲は、孔30の大きさ、孔30の数、孔30と孔30との間隔の長さによって調節することができる。
【0048】
孔30の大きさは、寸法変化の検出精度を高くするため、孔30と孔30との間隔の長さの20%以下の範囲内とすることが好ましい。
【0049】
上記中心領域21と2つのコーナー領域23a,23bに形成する複数の孔30は、試験片10の面内での寸法変化のばらつきを含めた寸法安定性を正確に評価できるようにするため、MD方向及びTD方向のそれぞれにおいて、少なくとも11個以上の直線状の配列を含むことが好ましく、20個以上の直線状の配列を含むことがより好ましい。ここで、孔30の数をn個とすると、後の工程(3)、工程(5)で計測の対象となる隣り合う孔30と孔30との間隔の数はn−1箇所となる。隣り合う孔30と孔30との間隔は、例えば、孔30の数が10個である場合には9箇所となり、孔30の数が21個である場合には20箇所となる。この場合、MD方向及びTD方向において、孔30の数は同じであることが好ましい。
【0050】
孔30と孔30との間の距離は、寸法変化の検出精度を高くするため、2mm以上の範囲内とすることが好ましい。
【0051】
(3)第1の計測工程:
本工程では、複数の孔30の位置を測定する。そして、各孔30の位置の測定結果から、隣接する孔30と孔30の間の距離L0を算出する。例えば孔30の数が21個であれば、隣接する孔30と孔30の間の20か所の間隔について距離L0を求める。ここで、隣接する孔30と孔30の間の距離L0は、
図5に示すように、ある孔30の中心30aから、隣接する孔30の中心30aまでの距離を意味する。
【0052】
孔30の位置の計測は、特に限定されるものではなく、例えば、試験片10の画像を元に孔30の位置を検出する方法によって実施できる。
【0053】
本工程の孔30の位置の計測は、上記工程(2)に引き続いて実施してもよいが、計測前に、試験片10のコンディションを調整する工程を設けることが好ましい。試験片10のコンディション調整の一例として、調湿処理を挙げることができる。調湿処理は、一定の環境に一定時間(例えば23℃、50RH%の環境で24時間)、試験片10を静置することにより行うことができる。
【0054】
(4)エッチング工程:
本工程では、試験片10の銅層の一部分又は全部をエッチングする。現実に即した寸法安定性を評価するため、エッチングの内容は、銅張積層板100から形成するFPCの配線パターンに準じて行うことが好ましい。試験片10が両面銅張積層板から調製したものである場合は、両側の銅層をエッチングしてもよい。なお、実際のFPCの加工において、熱処理を伴う場合は、エッチング後に、試験片10を任意の温度で加熱する処理を行ってもよい。
【0055】
(5)第2の計測工程:
本工程は、上記(4)のエッチング後に、再度、複数の孔30の位置を測定する工程である。そして、各孔30の位置の測定結果から、隣接する孔30と孔30の間の距離L1を算出する。本工程における孔30の位置の計測は、上記工程(3)と同様の方法で行うことができる。隣接する孔30と孔30の間の距離L1は、
図5に示すように、ある孔30の中心30aから、隣接する孔30の中心30aまでの距離を意味する。
【0056】
本工程の孔30の位置の計測は、上記工程(4)に引き続いて実施してもよいが、上記工程(3)と同様に、試験片10のコンディションを調整する工程を設けることが好ましい。特に、上記工程(3)でコンディション調整を行った場合は、本工程でも、計測前に、同様の条件でコンディション調整を実施することが好ましい。
【0057】
(6)寸法変化量を算出する工程:
本工程では、
図5に示すように、エッチングの前後で同じ2つの孔30の間隔について、第1の計測工程で得られた距離L0と、第2の計測工程で得られた距離L1との差分L1−L0を算出する。そして、同一の直線状に配列された孔30と孔30との間隔の2箇所以上、好ましくは10箇所以上、より好ましくは全てについて、同様に差分L1−L0を算出する。この差分L1−L0を「寸法変化量Δ」とする。
【0058】
(7)配線スケールに換算する工程:
本工程では、工程(6)で得られた寸法変化量Δを、銅張積層板100から形成するFPCにおける配線パターンのスケールに換算し、得られた換算値を、配線パターンの配線幅と配線間隔との和に対する比率で表す。本工程によって、試験に供した銅張積層板100を実際にFPCに加工した場合に、FPCの配線パターンに対し、銅張積層板100の寸法変化が与える影響をわかりやすく表現できる。
【0059】
本工程では、まず、寸法変化量Δを、銅張積層板100から形成する予定のFPCにおけるL/Sの配線パターンにおける配線幅/配線間隔のスケールに換算し、換算した寸法変化量を累積して累積換算寸法変化量を求める。例えばエッチング前の2つの孔30の間の距離L0がXmmであり、形成予定のFPCにおける配線パターンにおける配線幅と配線間隔が、それぞれ、距離L0の1/Yである場合、次式に基づき、寸法変化量Δを2×(1/Y)のスケールにダウンサイジングしたときの値に換算し、2×(1/Y)のスケールの累積換算寸法変化量を求める。
【0060】
累積換算寸法変化量=[Σ
i=1i(2×Δ
i/Y)]
【0061】
次に、累積換算寸法変化量から、次式に基づき、配線の位置ずれ比率を求める。この配線の位置ずれ比率は、累積換算寸法変化量を、形成予定のL/Sの配線パターンにおける配線幅(Lmm)と配線間隔(Smm)との和に対する比率で表したものである。
配線の位置ずれ比率(%)=
{[Σ
i=1i(2×Δ
i/Y)]/[L+S]}×100
【0062】
以上のようにして算出したFPCにおけるMD方向及びTD方向の配線の位置ずれ比率をグラフ上にプロットすることによって、FPCサイズに応じた近似直線が得られる。ここで、「FPCサイズ」とは、FPCにおいて形成された複数の配線の中で最も離れた両端の配線間の距離を意味する。グラフの傾きの大小は、配線の位置ずれの大小を意味し、グラフの傾きのばらつきの大小は、配線の位置ずれの面内ばらつきの大小を意味する。
【0063】
本工程によって、試験に供した銅張積層板100を実際に回路に加工した場合に、FPCの配線パターンに対し、銅張積層板100の寸法変化が与える影響をわかりやすく表現できる。また、近似直線のグラフを作成することによって、FPCサイズに応じて、被試験体である銅張積層板100から作成される配線の位置ずれの大きさや面内のばらつきを可視化して表現できる。
【0064】
なお、上記工程(6)において得られた寸法変化量Δを累積した後、累積寸法変化量を銅張積層板100から形成する予定のFPCにおけるL/Sの配線パターンにおける配線幅/配線間隔のスケールに換算し、累積換算寸法変化量を求めることもできる。例えば、それぞれの間隔における寸法変化量Δを累積し、累積寸法変化量Σを得る。この累積寸法変化量Σは、次の式によって算出することができる。
【0065】
Σ=Δ
1+Δ
2+Δ
3+・・・+Δ
i=Σ
i=1iΔ
i
【0066】
上記式において、記号Σ
i=1iは、1からiまでの総和を表す。また、寸法変化量Δは、エッチング後における第n番目の孔30と第n−1番目の孔30との距離L1から、エッチング前における第n番目の孔30と第n−1番目の孔30との距離L0を差し引いた値を表す(ここで、nは2以上の整数である)。Δ
1は、第1番目の間隔の長さ(隣り合う2つの孔30間の距離)の寸法変化量であり、Δ
iは、第i番目(iは正の整数を意味する)の間隔の長さの寸法変化量である。
【0067】
累積寸法変化量Σは、銅張積層板100のMD方向、TD方向のいずれか片方、好ましくは両方について求めることができる。累積寸法変化量Σの大小によって、銅張積層板100のMD方向、TD方向の寸法安定性を評価できる。また、累積寸法変化量Σの実測値に基づき、スケールアップした近似直線が得られる。
【0068】
以上のように、本評価方法によれば、工程(1)〜(7)によって、銅張積層板100の寸法変化を、面内でのばらつきを含めて高精度に評価することが可能になる。また、銅張積層板100から多数個採りを行う場合であっても、FPCへの加工領域毎に、個別に寸法安定性を評価することが可能になる。
【0069】
<銅張積層板の製造>
本実施の形態の銅張積層板は、例えば、第1の銅箔の表面にポリイミド前駆体樹脂溶液(ポリアミド酸溶液ともいう。)を塗工し、次いで、乾燥、硬化させる熱処理工程を経て製造することができる。熱処理工程における熱処理は、塗工されたポリアミド酸溶液を160℃未満の温度でポリアミド酸中の溶媒を乾燥除去した後、更に、150℃から400℃の温度範囲で段階的に昇温し、硬化させることで行なわれる。このようにして得られた片面銅張積層板を両面銅張積層板とするには、前記片面銅張積層板と、これとは別に準備した銅箔(第2の銅箔)とを300〜400℃にて熱圧着する方法が挙げられる。
【0070】
<FPC>
本実施の形態の銅張積層板は、主にFPC材料として有用である。すなわち、本実施の形態の銅張積層板の銅箔を常法によってパターン状に加工して配線層を形成することによって、本発明の一実施の形態であるFPCを製造できる。
【実施例】
【0071】
(合成例1)
熱電対及び攪拌機を備えると共に窒素導入が可能な反応容器に、N,N−ジメチルアセトアミドを入れ、この反応容器に2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)を投入して容器中で撹拌しながら溶解させた。次に、ピロメリット酸二無水物(PMDA)をモノマーの投入総量が12wt%となるように投入した。その後、3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸aの樹脂溶液を得た。ポリアミド酸aから形成された厚み25μmのポリイミドフィルムの熱膨張係数(CTE)は、55×10
−6/Kであった。
【0072】
(合成例2)
熱電対及び攪拌機を備えると共に窒素導入が可能な反応容器に、N,N−ジメチルアセトアミドを入れ、この反応容器に2,2'−ジメチル−4,4'−ジアミノビフェニル(m-TB)を投入して容器中で攪拌しながら溶解させた。次に、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)およびピロメリット酸二無水物(PMDA)をモノマーの投入総量が15wt%、各酸無水物のモル比率(BPDA:PMDA)が20:80となるように投入した。その後、3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸bの樹脂溶液を得た。ポリアミド酸bから形成された厚み25μmのポリイミドフィルムの熱膨張係数(CTE)は、22×10
−6/Kであった。
【0073】
(実施例)
<フレキシブル銅張積層板の製造>
長尺の銅箔(例えば、JX日鉱日石金属株式会社製 GHY5−93F−HA−V2箔)の表面に、合成例1で調製したポリイミド前駆体であるポリアミド酸aの樹脂溶液(ポリアミド酸溶液ともいう)を塗工・乾燥させた。次いで、合成例2、合成例1でそれぞれ調製したポリアミド酸b、ポリアミド酸aの樹脂溶液を順次同様に塗工・乾燥させた後に硬化させる熱処理工程を経て、25μm厚みのポリイミド層を形成させた。熱処理工程における熱処理は、塗工されたポリアミド酸溶液を160℃未満の温度でポリアミド酸中の溶媒を乾燥除去した後、更に、150℃から400℃の温度範囲で段階的に昇温し、硬化させることで行なった。この過程で、片面銅張積層板にコルゲーションの発生は観察されなかった。このようにして得られた片面銅張積層板と、これとは別に準備した銅箔とを300〜400℃にて熱圧着することによって、両面銅張積層板を作製した。
【0074】
得られた両面銅張積層板から、評価用サンプルの材料として、銅張積層板1(端幅;250mm)を準備した。
銅張積層板1:
長尺状、実施例の方法で製造した両面銅張積層板、絶縁層の厚さ;25μm、絶縁層のCTE;17ppm/K、第1の銅箔層;JX日鉱日石金属株式会社製GHY5−93F−HA−V2箔、第1の銅箔層の厚さ;12μm、第1の銅箔層のCTE;17ppm、第1の銅箔層の引張弾性率18GPa、第1の銅箔層の厚さと引張弾性率との積;216。
【0075】
(比較例)
評価用サンプルの材料として、銅張積層板2(端幅;250mm)を準備した。
銅張積層板2:
長尺状、汎用ラミネート材、絶縁層の厚さ;25μm、銅箔層;JX日鉱日石金属株式会社製BHY−82F−HA箔、銅箔層の厚さ;12μm、ラミネート法によりポリイミドフィルム(カネカ社製、商品名;ピクシオ)の両面に銅箔を熱圧着したもの。銅箔層の引張弾性率14GPa、銅箔層の厚さと引張弾性率との積;168。
【0076】
<評価用サンプルの調製>
上記の銅張積層板1又は2をMD方向に長さ250mmに切断し、MD:250mm×TD:250mmとした。
図6に示したとおり、切断後の銅張積層板におけるMD:200mm×TD:200mmの範囲に仮想の正四角形を想定した。この仮想の正四角形のTD方向の一辺を共有する2つの角部を1つずつ含む左右2つのコーナー領域(Left及びRight)並びに仮想の正四角形の中心を含む中央領域(Center)のそれぞれにおいて、MD及びTD方向に2.5mm間隔で連続して21個の孔あけ加工を行って、評価用サンプルを調製した。なお、孔あけ加工は、0.105mm径のドリルを用いた。
【0077】
<寸法安定性の評価>
非接触CNC画像測定機(Mitutoyo社製、商品名;クイックビジョン QV−X404PIL−C)を使用して、評価用サンプルにおける両面の銅箔層の全部をエッチングして除去した前後における各孔の位置を測定した。測定値からエッチング前後における隣り合う2孔間距離の寸法変化量及び累積寸法変化量を算出した。
【0078】
長尺状の銅張積層板1及び2を準備し、
図7に示すように、評価用サンプル1、2を調製した。評価用サンプル1、2のそれぞれについて、Center、Left、及びRightにおけるエッチング前後の各孔の位置を測定した。測定値からエッチング前後における隣り合う2孔間の距離の寸法変化量及びそれらの合計(20ケ所)の累積寸法変化量を算出した。
【0079】
銅張積層板1における評価結果をもとに、MD方向の累積寸法変化量とばらつきを表1に示し、
図8には、FPCサイズと配線位置ずれ率との関係を示した。同様に銅張積層板2における評価結果をもとに、MDの累積寸法変化量と、そのばらつきを表2に示し、
図9にはFPCサイズと配線位置ずれ率との関係を示した。なお、表1及び表2並びに
図8及び
図9では、Left、Center、Rightにおける累積寸法変化率と累積寸法変化量を想定FPCサイズ10mmに換算した累積換算寸法変化量で示しており、Left、Center、Rightの全範囲におけるばらつきも示している。表中の「範囲」の数値は、中央値±上下範囲を意味する。
【0080】
【表1】
【0081】
【表2】
【0082】
これらの結果より、銅張積層板1及び銅張積層板2を材料として形成した回路配線基板(L/S=0.025mm/0.0025mm)について、配線の位置ずれ率及び試験片の面内での寸法変化率のばらつきが評価できることを確認すると共に、実施例の銅張積層板1における各FPCサイズでの配線位置ずれ率のばらつきが、比較例の銅張積層板2におけるものと比較して、小さいことが確認出来た。
【0083】
以上、本発明の実施の形態を例示の目的で詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に制約されることはなく、種々の変形が可能である。