(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
カラー撮像用のカラーフィルタを有しない撮像素子を備え校正されて絶対感度の得られた撮像装置で撮影された撮影対象物の画像について、前記絶対感度に基づき、前記撮影対象物から放射された光の単位時間あたりの光子数で表された光量と、前記画像が表示される際の画素の表示状態と、の対応関係を示す光量表示スケールを設定する工程と、
前記画像を前記光量表示スケールとともに表示する工程と
を有する画像表示方法であって、
前記撮像装置の校正は、所定の大きさの開口窓を有することでmWからpWオーダの微弱な光量で発光し、放射角度分布がランバート分布である標準光源を、前記撮像装置で撮影することで行われたものであり、
前記光量表示スケールを設定する工程では、前記撮影対象物から放射された光について想定される放射角度分布として、ランバート分布および等方性分布を含む複数の放射角度分布のうちから設定された放射角度分布に基づいて、前記画像の輝度値の総和が前記撮影対象物から放射された光の全放射光量を表すように、前記光量表示スケールを設定する、
画像表示方法。
前記撮影対象物から放射された光の光量に応じて定まる、前記画像の輝度値と、前記画像が表示される際の画素の表示状態と、の対応関係を変えることで、前記画像が表示される際のコントラストを調整するとともに、コントラスト調整に対応させて前記光量表示スケールを再設定する工程
をさらに有する請求項1または2に記載の画像表示方法。
カラー撮像用のカラーフィルタを有しない撮像素子を備え校正されて絶対感度の得られた撮像装置で撮影された撮影対象物の画像について、前記絶対感度に基づき、前記撮影対象物から放射された光の単位時間あたりの光子数で表された光量と、前記画像が表示される際の画素の表示状態と、の対応関係を示す光量表示スケールを設定する手順と、
前記画像を前記光量表示スケールとともに表示する手順と
をコンピュータに実行させるための画像表示プログラムであって、
前記撮像装置の校正は、所定の大きさの開口窓を有することでmWからpWオーダの微弱な光量で発光し、放射角度分布がランバート分布である標準光源を、前記撮像装置で撮影することで行われたものであり、
前記光量表示スケールを設定する手順では、前記撮影対象物から放射された光について想定される放射角度分布として、ランバート分布および等方性分布を含む複数の放射角度分布のうちから設定された放射角度分布に基づいて、前記画像の輝度値の総和が前記撮影対象物から放射された光の全放射光量を表すように、前記光量表示スケールを設定する、
画像表示プログラム。
カラー撮像用のカラーフィルタを有しない撮像素子を備え校正されて絶対感度の得られた撮像装置で撮影された撮影対象物の画像について、前記絶対感度に基づき、前記撮影対象物から放射された光の単位時間あたりの光子数で表された光量と、前記画像が表示される際の画素の表示状態と、の対応関係を示す光量表示スケールを設定する機能と、
前記画像を前記光量表示スケールとともに表示する機能と
を有する画像表示装置であって、
前記撮像装置の校正は、所定の大きさの開口窓を有することでmWからpWオーダの微弱な光量で発光し、放射角度分布がランバート分布である標準光源を、前記撮像装置で撮影することで行われたものであり、
前記光量表示スケールを設定する機能では、前記撮影対象物から放射された光について想定される放射角度分布として、ランバート分布および等方性分布を含む複数の放射角度分布のうちから設定された放射角度分布に基づいて、前記画像の輝度値の総和が前記撮影対象物から放射された光の全放射光量を表すように、前記光量表示スケールを設定する、
画像表示装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1を参照して、本発明の一実施形態による画像表示装置の概略的な構成について説明する。実施形態による画像表示装置1は、保持台10、撮像装置20、制御部30、表示部40、および入力部50を含んで構成されている。
【0013】
保持台10は、光を放射する撮影対象物100を保持するように構成されている。撮像装置20は、保持台10に保持された撮影対象物100を撮影できる位置に設置されている。
【0014】
撮像装置20としては、例えば、高感度CCD、CMOSカメラ等の固体撮像装置を用いることができる。撮像装置20は、絞り(アイリス)機構21、レンズ22、および固体撮像素子23を含んで構成されている。撮像素子23として、カラーフィルタを有しない(白黒の)撮像素子を用いることができる。保持台10に保持された撮影対象物100から放射された光が、絞り機構21を介して、レンズ22に入射する。レンズ22の(絞り機構21の)開口角はθ
0である。レンズ22により、保持台10に保持された撮影対象物100の像が、撮像素子23上に結像する。撮像装置20は、必要に応じて、不要な波長成分をカットするフィルターを有していてもよい。フィルターは、撮影対象物100と撮像素子23との間(典型的には撮影対象物100とレンズ22との間)に配置される。
【0015】
撮像素子23へ光が入射することにより得られたシグナルは、所定の分解能(例えば8ビット、16ビット等)を有するアナログデジタルコンバータで画素毎にデジタル化され、画像として出力される。画素毎のデジタル化された数値を輝度値と呼ぶ。撮像装置20から出力された画像データは、制御部30に入力される。
【0016】
制御部30としては、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard disk drive)、通信I/F(interface)部等のハードウエア資源を組み合わせて構成されたコンピュータを用いることができる。
【0017】
制御部30は、所定プログラムがインストールされ、その所定プログラムをCPUが必要に応じて実行することで、後述の光量表示スケール設定や、画像と光量表示スケールの表示等の各種機能を実現する。これらの機能が制御部30により実現されることから、制御部30を、画像表示装置と捉えることもできる。なお、このような所定プログラムは、インストールに先立って、制御部30で読み取り可能な記録媒体に格納されて提供されるものであってもよいし、あるいは制御部30と接続する通信回線を通じて制御部30へ提供されるものであってもよい。
【0018】
表示部40は、ディスプレイ装置やプリンタ装置等の情報出力部として構成されており、制御部30に制御されて、例えば、後述のように、撮像装置20で撮影された画像と、光量表示スケールとを表示する。なお、ディスプレイ装置での電子的な表示に限らず、プリンタ装置での印刷による出力等も含めて、種々の情報出力を広く「表示」と捉えることができる。
【0019】
入力部50は、キーボードやマウス等の情報入力部として構成されている。ユーザは、入力部50を介して、制御部30に必要な情報を入力したり、制御部30が表示部40に提示した選択肢を選択したりすること等により、種々の情報入力を行うことができる。
【0020】
次に、実施形態による画像表示装置1を用いた画像表示方法について説明する。まず、撮像装置20の校正を行う。撮像装置20の校正では、撮像装置20の絶対感度を取得する。撮像装置20の校正を行うことにより、撮像装置20で撮影された画像と撮影対象物から放射された光量との正確な対応付けを行うことが可能になる。
【0021】
なお、撮像装置20の絶対感度は、一度得られた後は、後述の画像表示に繰り返し用いることができるので、撮像装置20の校正は、初期に一度行えばよい。なお、必要に応じて、適当な機会に撮像装置20の校正をやり直してもよい。
【0022】
以下、撮像装置20の校正手順の一例について説明する。撮像装置20の校正には、発光波長と、全放射光量と、放射角度分布とが既知の標準光源が用いられる。標準光源として用いる光源に特に制限はないが、撮像装置20の絶対感度を正確に測定できる程度の適度な光量を有しているものが好ましい。
【0023】
ここで、光量は、例えば、単位時間当たりの放射光子数(photons/s)として表される。光量は、これに発光波長に応じたエネルギーを乗じて、パワー(W)として表すこともできる。以下の説明では、単位時間当たりの光子数(photons/s)として光量を表す場合を例示する。
【0024】
標準光源としては、例えば、光取出し側の表面上に、微小な開口窓(例えば直径1μm〜5mmの円形開口窓)を有する遮光膜が形成された平面型半導体発光素子を用いることができる。なお、半導体発光素子の上側電極層を、この遮光膜を兼ねるように形成することができる。開口窓の大きさを調整することにより、開口窓の外部へ放出される光量を調整することができる。さらに、このような半導体発光素子に印加する駆動信号のON/OFFパルス比(デューティ比)と点灯周期とを調整することで、微弱な発光光量を精度良く調整することができる。
【0025】
標準光源の発光波長が未知の場合には、標準光源の発光波長を、例えば、波長校正された光スペクトラムアナライザ装置、または、例えば、波長校正された、分光器とCCDなどの撮像装置からなるマルチチャネルアナライザ(分光光度計)を用いて測定する。
【0026】
標準光源の全放射光量が未知の場合には、標準光源の全放射光量を、例えば積分球方式を用いて測定する。標準光源の全放射光量をA
LUとする。
【0027】
標準光源の放射角度分布が未知の場合には、標準光源の放射角度分布を、例えば以下のようにして測定する。光検出器として例えばフォトダイオードを用いる。まず、フォトダイオードを、標準光源の発光部と対向するように配置する。そして、標準光源の発光部に対するフォトダイオードの相対角度を変えながら光量を測定して、放射角度分布を測定する。測定される放射角度分布は、相対的な光量分布を示すものでよい。
【0028】
図2は、撮像装置20の校正の概略的な手順を示すフローチャートである。各手順(ステップS11〜S13)で行われる各種のデータ処理や計算等は、制御部30で行われる。
【0029】
まず、ステップS11で、撮像装置20により標準光源を撮影する。より具体的には、
図1に示した撮影対象物100として標準光源を保持台10に保持して、撮像装置20で標準光源を撮影する。標準光源の発光部全体(上記の標準光源例では開口窓全体)が画像内に収まるようにして、撮影を行う。また、各画素の輝度値が飽和しない程度の適当な光量や露出時間で、撮影を行う。
【0030】
次に、ステップS12で、入射光量P
LUを算出する。入射光量P
LUは、標準光源から放射された全放射光量A
LUのうち、撮像装置20に入射する分の絶対的な光量である。
【0031】
まず、標準光源に対する撮像装置20の集光効率η
Lを算出する。集光効率η
Lは、標準光源から放射された全放射光量A
LUに対する、入射光量P
LUの割合を示す。つまり、
集光効率η
L=入射光量P
LU/全放射光量A
LU
と表される。
【0032】
標準光源の放射角度分布を用いると、集光効率η
Lは、全立体角内で放射角度分布を積分した値に対する、撮像装置20の開口角θ
0に応じた立体角内(アイリス開口立体角内)で放射角度分布を積分した値の割合として表される。つまり、
集光効率η
L=アイリス開口立体角内での放射角度分布積分値/全立体角内での放射角度分布積分値
と表される。
【0033】
例えば、標準光源の放射角度分布がランバート分布で表される場合、集光効率η
Lは、以下のように解析的に表すことができる。ここで、NAは、撮像装置20のレンズ22の(絞り機構21の)開口数である。
【0034】
集光効率η
Lと全放射光量A
LUとにより、入射光量P
LUは、
入射光量P
LU=全放射光量A
LU×集光効率η
L
と算出することができる。
【0035】
なお、絶対的な光量分布として放射角度分布が知られている場合であれば、アイリス開口立体角内で放射角度分布を積分することにより、入射光量P
LUを得ることができる。
【0036】
なお、ステップS12での入射光量P
LUの算出は、ステップS11での標準光源の撮影の後に行わなくてもよく、標準光源の撮影の前に行っても、標準光源の撮影と同時に行ってもよい。
【0037】
次に、ステップS13で、撮像装置20の絶対感度Sを算出する。絶対感度Sは、撮像装置20での撮影における単位輝度値と入射光子数との関係を示し、ここでは単位輝度値当たりの入射光子数として示される。
【0038】
まず、撮像装置20から出力された標準光源の画像について、画像全面にわたり画素の輝度値を積算して、輝度値の総和を算出する。そして、この輝度値の総和を、撮影での露光時間で割ることにより、単位時間当たりの輝度値の総和I
Lを算出する。
【0039】
絶対感度Sは、単位時間当たりの輝度値の総和I
Lに対する、撮像装置20への入射光量P
LU(すなわち単位時間当たりの入射光子数)の比率として表すことができる。つまり、
絶対感度S=入射光量P
LU/単位時間当たりの輝度値の総和I
L
と表される。このようにして、撮像装置20の校正が行われ、絶対感度Sが得られる。
【0040】
次に、校正されて絶対感度Sの得られた撮像装置20を用いて観察対象である撮影対象物を撮影し、撮影された画像の表示を行う。
【0041】
図3は、観察対象である撮影対象物の撮影および画像表示の概略的な手順を示すフローチャートである。各手順(ステップS21〜S23)で行われる各種のデータ処理や計算等は、制御部30で行われる。本実施形態では、撮影対象物として発光体を例示する。
【0042】
まず、ステップS21で、撮像装置20により発光体を撮影する。より具体的には、
図1に示した撮影対象物100として発光体を保持台10に保持して、撮像装置20で発光体を撮影する。発光体の発光部全体が画像内に収まるようにして、撮影を行う。また、各画素の輝度値が飽和しない程度の適当な露出時間で撮影を行う。なお、光量が可変な発光体であるならば、光量を適当に選択することで、各画素の輝度値が飽和しないようにしてもよい。
【0043】
次に、ステップS22で、撮影された発光体の画像について、絶対感度Sに基づき、光量表示スケールを設定する。光量表示スケールは、輝度値と光量との対応関係を示し、また、輝度値と表示画像における画素の表示状態(例えばグレースケール画像表示での明るさ)との対応関係を介して、画素の表示状態と光量との対応関係を示す。光量表示スケールは、後続のステップS23で説明するように、画像とともに表示される。
【0044】
輝度値Lと光量Qとの対応関係は、以下のようにして設定される。輝度値Lは、絶対感度Sを用いると、光子数LSに換算される。さらに、撮影の露光時間T
EXPを用いると、輝度値Lは、単位時間当たりの光子数すなわち光量に換算されて、LS/T
EXPと表される。
【0045】
このようにして、輝度値Lを光量LS/T
EXPに対応させる光量表示スケールが得られる。この光量表示スケールでは、画像全面での輝度値の総和L
SUMを光量に換算したL
SUMS/T
EXPが、発光体からの全放射光量のうち、撮像装置20に入射した分の光量と等しくなる。このような光量表示スケールを、入射光量ベースの光量表示スケールと呼ぶこととする。
【0046】
入射光量ベースの光量表示スケールは、撮像装置20に入射した分の光量について、すなわち、発光体が撮像装置20の方向に向けてどの程度の明るさで発光しているかについては表せるものの、発光体が全体としてどの程度の明るさで発光しているかについては表すことができない。
【0047】
そこで、本実施形態の画像表示方法では、以下に説明するように、画像全面での輝度値の総和L
SUMが、発光体からの全放射光量を表すような光量表示スケールを設定する。このような光量表示スケールを、全放射光量ベースの光量表示スケールと呼ぶこととする。
【0048】
全放射光量ベースの光量表示スケールを設定する場合には、発光体の放射角度分布を想定し、放射角度分布に基づいて、発光体に対する撮像装置20の集光効率η
Sを算出する。集光効率η
Sは、標準光源の集光効率η
Lについて説明したのと同様に、アイリス開口立体角内での放射角度分布積分値を、全立体角内での放射角度分布積分値で割ることにより求めることができる。
【0049】
例えば、発光体がランダム配向の発光分子からなる場合であれば、放射角度分布として等方性分布を想定でき、等方性分布に対応する集光効率η
Sは、
【0050】
入射光量ベースの光量表示スケールでは、輝度値Lを光量LS/T
EXPに対応させた。全放射光量ベースの光量表示スケールでは、入射光量ベースの光量表示スケールでの光量を集光効率η
Sで割って、輝度値Lを光量LS/(T
EXPη
S)と対応させる。言い換えると、入射光量ベースの光量表示スケールでの光量が(1/η
S)倍される。これにより、画像全面での輝度値の総和L
SUMを光量に換算したL
SUMS/(T
EXPη
S)が、発光体からの全放射光量と等しくなる。このようにして、全放射光量ベースの光量表示スケールが設定される。
【0051】
発光体の放射角度分布(またはこれに対応する集光効率η
S)は、例えば、ユーザが入力部50から制御部30に入力することで、設定することができる。また例えば、制御部30が表示部40に、ランバート分布、等方性分布等の複数の放射角度分布候補を提示し、ユーザが入力部50を介して適当な分布を選択することで、設定するようにしてもよい。
【0052】
次に、ステップS23で、発光体の画像を光量表示スケールとともに表示する。制御部30は、画像が光量表示スケールとともに表示されるように、表示部40を制御する。ここでは、画像が明暗画像(グレースケール画像)で表示される場合を例示する。
【0053】
グレースケール画像表示の場合、表示し得る最大の輝度値L
Mを有する画素は、白表示となる。このような輝度値と画素の表示状態との対応関係を介して、輝度値と光量との対応関係を示す光量表示スケールは、画素の表示状態と光量との対応関係を示すことともなる。より具体的には、光量表示スケールは、例えば、黒から白までのグラデーションで表されたグレースケールに、所定の色(灰色)に対する光量を示す目盛や数値を添える形式で表示することができる。例えば、白側の端部に、最大輝度値L
Mに対応する光量L
MS/(T
EXPη
S)の数値が添えられる。光量表示スケールの具体的な表示例を、後述の実施例で示す(
図5(A)、
図5(B)等)。
【0054】
以上説明したように、本実施形態によれば、発光体の画像を、光量表示スケールとともに表示することができる。これにより、画像から、発光体がどの程度の明るさを有しているかを、絶対的な光量として把握できる。
【0055】
光量表示スケールとして、全放射光量ベースの光量表示スケールを設定することができる。これにより、画像から、発光体が全体としてどの程度の明るさを有しているかを、絶対的な光量として把握できる。
【0056】
なお、発光体の画像および光量表示スケールとともに、画像全面での輝度値の総和として得られる全放射光量を表示してもよい。これにより、発光体の全放射光量を一見して把握することができる。
【0057】
次に、上述の実施形態による画像表示方法の第1の変形例による画像表示方法について説明する。第1の変形例では、光量表示スケールを設定するステップS22において、コントラスト調整の手順が追加される。その他の手順は、上述の実施形態と同様である。
【0058】
ステップS21において撮影された画像が、そのまま表示すると例えば暗すぎる等、適当なコントラストとなっていなかった場合は、本変形例で説明するように、画像のコントラスト調整を行ってもよい。
【0059】
以下、コントラスト調整の手順の一例について説明する。コントラスト調整は、画素上に表示し得る最大の輝度値を、コントラスト調整前の値L
Mから、これをコントラスト調整係数αで割ったコントラスト調整後の値L
M/αへと変更することで行うことができる。これにより、例えば、グレースケール表示において、輝度値L
M/αを有しコントラスト調整前の画像で灰色表示されていた画素が、コントラスト調整後には白表示されるようになる。光量表示スケールは、端部に対応する最大輝度値がL
MからL
M/αへと変更されるように、設定される。
【0060】
このように、輝度値と画素の表示状態との対応関係を変えることで、画像のコントラストを調整するとともに、コントラスト調整に対応させて光量表示スケールを設定する。なお、コントラスト調整を行っても、輝度値と光量との対応関係が変わるわけではなく、画素に対応する光量は変わらない。コントラスト調整を行った場合の光量表示スケールの具体的な表示例を、後述の実施例で示す(
図5(A)、
図5(B)等)。
【0061】
コントラスト調整係数αは、例えば、ユーザが入力部50から制御部30に入力することで、設定することができる。また例えば、制御部30が表示部40に、複数のコントラスト調整係数αの候補を提示し、ユーザが入力部50を介して適当な係数αを選択することで、設定するようにしてもよい。
【0062】
第1の変形例によれば、画像がより見やすくなるように、コントラストを調整できるとともに、コントラスト調整を行っても正確な光量表示が保たれるように、光量表示スケールを設定できる。
【0063】
次に、上述の実施形態による画像表示方法の第2の変形例による画像表示方法について説明する。第2の変形例では、光量表示スケールを設定するステップS22において、波長感度補正の手順が追加される。その他の手順は、上述の実施形態と同様である。
【0064】
ステップS21において撮影される発光体の発光波長が、標準光源の発光波長と異なっている場合は、本変形例で説明するように、波長感度補正を行ってもよい。波長感度補正を行う場合は、予め、撮像装置20の相対波長感度特性を取得しておく。
【0065】
撮像装置20の相対波長感度特性は、例えば以下のようにして得られる。相対波長感度特性測定用の光源として、例えば白色光源を準備する。白色光源から放射された光のうち、バンドパスフィルターを透過させた波長λの光を、光ファイバーにカップリングする。
【0066】
光ファイバーを介して放射される波長λの光の全光量P
λを、例えばフォトダイオードにより測定する。より具体的には、以下のような測定を行う。例えば、マクロレンズを利用する測定系では、出力側の光ファイバー端にコリメーターを取り付け、コリメーターから放射する全光量をフォトダイオードで測定する。また例えば、対物レンズを用いる測定系では、対物レンズのNAよりも小さなNAを持つ光ファイバーを利用し、光ファイバーから放射する全光量をフォトダイオードで測定する。
【0067】
そして、撮像装置20により、波長λの光の発光部を撮影する。上述の測定系の例では、コリメーターの像またはファイバー端の像を取得する。そして、得られた画像から、発光部の輝度値の総和I
λを求める。
【0068】
全光量P
λと、画像の輝度値の総和I
λとから、波長λにおける波長感度は、
波長λにおける波長感度=輝度値の総和I
λ/全光量P
λ
と求められる。
【0069】
バンドパスフィルターの透過波長λを様々に変えて上述の測定を行うことにより、各波長λでの波長感度が得られる。適当な基準波長での波長感度を100%とし、これに対する各波長λの相対的な波長感度として、相対波長感度RS
λが得られる。なお、測定波長間の波長に対する相対波長感度は、適当な方法で補間することができる。
【0070】
図4に、相対波長感度特性の一例を示す。なお、
図4に示す測定は試験的に行ったものであり、再測定を行うことで、より正確な特性が得られるものと考えられる。
【0071】
次に、撮像装置20の相対波長感度特性に基づき、波長感度補正を行う手順の一例について説明する。標準光源の発光波長を基準波長(100%)として表した相対波長感度を用いると、発光体の発光波長λに対する絶対感度は、標準光源に対して得られた絶対感度Sを、波長λでの相対波長感度RS
λで割ったS/RS
λとして求められる。
【0072】
したがって、波長感度補正を行う場合は、輝度値Lを光量LS/(T
EXPη
SRS
λ)と対応させることにより、光量表示スケールが設定される。
【0073】
第2の変形例によれば、撮像装置20の校正に用いた標準光源の発光波長と、観察したい発光体の発光波長とが異なる場合に、波長感度補正を行うことで、より正確な光量表示スケールを設定できる。
【0074】
なお、上述の実施形態では、全放射光量ベースの光量表示スケールを用いる場合について例示したが、必要に応じて、入射光量ベースの光量表示スケールを用いてもよい。
【0075】
なお、発光体の放射角度分布として、撮像装置のレンズに向かう一方向のみに光が放射される分布が用いられる場合、集光効率η
Sが1(100%)となり、全放射光量ベースの光量表示スケールは、結果的に、入射光量ベースの光量表示スケールと一致することになる。
【0076】
なお、上述の実施形態では、ステップS23において、輝度値の大小をグレースケールで表したグレースケール表示を行う場合について例示したが、輝度値の大小をどのような態様で表すかは、特に制限されない。例えば、輝度値の大小を疑似カラーで表した疑似カラー表示で、画像と光量表示スケールとを表示することができる。
【0077】
なお、後述の実施例において
図6(A)および
図6(B)に示すように、撮像装置の校正に用いる標準光源の画像を、光量表示スケールとともに表示してもよい。
【0078】
なお、上述の実施形態および後述の実施例では、撮影対象物として発光体を例示しているが、撮影対象物は、発光体に限定されない。光を反射したり散乱したりするような撮影対象物を撮影する場合についても、発光体の撮影について説明した手順と同様にして、画像に対して光量表示スケールを設定し、表示することで、撮影対象物がどの程度の明るさを有しているかを、絶対的な光量として把握することができるようになる。ここで、表現の煩雑さを避けるため、撮影対象物から外に向かう光について、(発光による)放射、反射、散乱などをまとめて「放射」と呼ぶことができる。
【実施例】
【0079】
次に、標準光源を用いて校正した撮像装置により、半導体多重量子井戸構造を撮影して発光特性を調べた実験について説明する。
【0080】
標準光源として、AlGaInP系半導体により、発光波長が約630nmの平面型発光ダイオード(LED)を作製した。この標準光源は、径100μmの微小円形開口窓を有し、mW〜pWの微弱な光量での発光が可能である。標準光源を動作させたところ、開口窓のみから一様な発光が観測され、放射角度分布は、ほぼランバート分布となっていた。光パワーメーターを用いた全光量計測から、全放射光量は0.044nWと見積もられた。なお、光パワーメーターを用いた簡易的な全光量計測でも充分な精度が得られることを、積分球を用いた計測により検証している。
【0081】
観察対象の発光体として、10周期のGaAs/Al
0.3Ga
0.7As多重量子井戸構造(GaAs層の厚さ12nm、Al
0.3Ga
0.7As層の厚さ10nm)を有する素子を作製した。この素子を、ホトルミネセンス(PL)発光させて(測定温度77K)、上記の標準光源で校正した撮像装置により撮影した。
【0082】
図5(A)および
図5(B)は、発光体(半導体多重量子井戸構造)の発光状態を示す画像を、全放射光量ベースの光量表示スケールとともに示した表示例である。画像全面での輝度値の総和として得られる全放射光量も(W単位で)表示している(3.9nW)。
図5(A)と
図5(B)とは、同一の発光状態を、コントラストを変えて表示したものである。コントラストの調整に応じて、光量表示スケールも調整されている。
【0083】
図5(A)および
図5(B)は、発光体(半導体多重量子井戸構造)の放射角度分布としてランバート分布を想定している。画像全面での輝度値の総和として得られる全PL強度から、励起光強度、光吸収量、およびPL光取り出し効率を用いて、77K での外部および内部発光量子収率が、それぞれ3.8×10
−3 、 0.18と求められた。
【0084】
図6(A)および
図6(B)は、標準光源の発光状態を示す画像を、全放射光量ベースの光量表示スケールとともに示した表示例である。画像全面での輝度値の総和として得られる全放射光量も(W単位で)表示している(0.044nW)。
図6(A)と
図6(B)とは、同一の発光状態を、コントラストを変えて表示したものである。コントラストの調整に応じて、光量表示スケールも調整されている。
【0085】
なお、
図5(A)、
図5(B)、
図6(A)、および
図6(B)では、画像の縦軸および横軸として、つまり縦方向および横方向の位置として、画素の位置(Pixel)が示されているが、例えば、これらを発光体の実際の寸法を示すよう長さ単位に換算して表示してもよい。
【0086】
以上、実施形態および実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。