(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、ポリカーボネート樹脂(ii)を主成分とする層(以下、「ポリカーボネート(ii)を主成分とする(II)層」、「(II)層」と称す場合がある。)の片面に、熱可塑性樹脂を主成分とする層(以下、「熱可塑性樹脂(i)を主成分とする(I)層」、「(I)層」と称す場合がある。)を有する積層フィルムに係るものである。
【0024】
1.ポリカーボネート樹脂(ii)を主成分とする(II)層
(II)層は、ポリカーボネート樹脂(ii)(以下、「本発明のポリカーボネート樹脂(ii)」と称す場合がある。)を主成分とする。ここで主成分とは、フィルム中の成分として、好ましくは50重量%以上、より好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上含むことをいう。
ポリカーボネート樹脂(ii)は、寸法安定性、耐湿熱性、機械的強度に優れ、また、原料設計により、光学特性を高めることも可能であり、ポリカーボネート樹脂(ii)を主成分とすることにより、高特性のフィルムを得ることができる。このポリカーボネート樹脂(ii)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上の樹脂を混合して用いてもよい。
ポリカーボネート(ii)を主成分とする(II)層は、単層構成であっても多層構成であってもよく、多層構成の場合、2層、3層構成以外にも本発明の要旨を超えない限り、4層またはそれ以上の多層であってもよく、特に限定されるものではない。
【0025】
本発明のポリカーボネート樹脂(ii)としては、代表的なものとして、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン(通称ビスフェノール−A)を構造単位とする芳香族ポリカーボネートが挙げられるが、本発明で用いるポリカーボネート樹脂(ii)は、これに限定されるものではなく、例えば1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−アルキルシクロアルカン、1,1−ビス(3−置換−4−ヒドロキシフェニル)−アルキルシクロアルカン、1,1−ビス(3,5−置換−4−ヒドロキシフェニル)−アルキルシクロアルカン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン類からなる群から選択される少なくとも1種の2価フェノールをモノマー成分とするホモまたは共重合ポリカーボネート、上記2価フェノールとビスフェノールAをモノマー成分とするポリカーボネートとの混合物、上記2価フェノールとビスフェノールAとをモノマー成分とする共重合ポリカーボネートなどが挙げられる。
【0026】
本発明のポリカーボネート樹脂(ii)としては、高透明性、高強度、高耐熱性、高耐候性、光学特性等の点より、構造の一部に下記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むポリカーボネート樹脂が好ましい。
【0028】
より具体的には、上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物としては、例えば、立体異性体の関係にある、イソソルビド、イソマンニド及びイソイデットが挙げられる。
【0029】
前記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物は、生物起源物質を原料として糖質から製造可能なエーテルジオールである。とりわけ、イソソルビドは、澱粉から得られるD−グルコースを水添してから脱水することにより安価に製造可能であって、資源として豊富に入手することが可能である。これらの事情により、上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物としては、イソソルビドが最も好ましい。
【0030】
本発明のポリカーボネート樹脂(ii)は、前記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位以外の構造単位を、さらに含んでいてもよい。前記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位以外の構造単位をさらに含むことで、光学特性や、加工容易性及び耐衝撃性を改良することが可能となる。
【0031】
前記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位以外の構造単位のなかでも、芳香族環を有さないジヒドロキシ化合物に由来する構造単位が好ましく用いられる。
【0032】
より具体的に例えば、国際公開第2004/111106号に記載の脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位及び国際公開第2007/148604号に記載の脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を挙げることができる。
【0033】
前記脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の中でも、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール及び1,6−ヘキサンジオールから選ばれる少なくとも1種のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むことが好ましい。
【0034】
前記脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の中でも、5員環構造又は6員環構造を含むものであることが好ましい。6員環構造は共有結合によって椅子形又は舟形に固定されていてもよい。
【0035】
5員環構造又は6員環構造である脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むことにより、得られるポリカーボネート樹脂(ii)の耐熱性を高くすることができる。
【0036】
脂環式ジヒドロキシ化合物に含まれる炭素原子数は通常70以下であることが好ましく、50以下であることがより好ましく、30以下であることがさらに好ましい。
【0037】
前記5員環構造又は6員環構造を含む脂環式ジヒドロキシ化合物としては、上述の国際公開第2007/148604号に記載のものを挙げることができる。
中でも、シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、アダマンタンジオール及びペンタシクロペンタデカンジメタノールを好適に例示することができる。これらの中でも、シクロヘキサンジメタノール又はトリシクロデカンジメタノールが経済性及び耐熱性などからより好ましい。特に、下記式(2)で表されるトリシクロデカンジメタノールに由来する構造単位を含有することが、経済性や耐熱性及び、光学特性とのバランスの点で、最も好ましい。
なお、これらの他の構造単位は、ポリカーボネート樹脂中に1種のみが含まれていてもよく2種以上が含まれていてもよい。
【0039】
前記ポリカーボネート樹脂(ii)の、構造の一部に前記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の含有割合は、ポリカーボネート樹脂(ii)中の全ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位に対して、好ましくは30モル%以上、より好ましくは40モル%以上、特に好ましくは50モル%以上であって、また、好ましくは90モル%以下、より好ましくは80モル%以下である。
前記ポリカーボネート樹脂(ii)の、構造の一部に前記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の含有割合が上記下限以上であれば、ガラス転移温度の維持による耐熱性の向上が可能となり、また、後述の高い引裂強度を満たすフィルムを得ることができるため好ましい。一方、上記上限以下であることにより、カーボネート構造に由来する着色、生物起源物質を原料に用いる故に微量に含有する不純物に由来する着色等を抑制することができ、通常ポリカーボネートフィルムに要求される透明性を損なわない可能性がある。また、構造の一部に前記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位のみで構成されるポリカーボネート樹脂(ii)等では達成が困難な、適当な成形加工性、機械的強度及び耐熱性等のバランスを取ることができる。
【0040】
前記ポリカーボネート樹脂(ii)は、構造の一部に前記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、さらに脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位及び/又は脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位とからなることが好ましいが、本発明の目的を損なわない範囲で、さらにそれら以外のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位が含まれていてもよい。
【0041】
前記ポリカーボネート樹脂(ii)は、一般に用いられる重合方法で製造することができる。前記ポリカーボネート樹脂(ii)の製造方法は、ホスゲン法または炭酸ジエステルと反応させるエステル交換法のいずれでもよい。なかでも、重合触媒の存在下に、構造の一部に前記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物と、脂肪族及び/又は脂環式ジヒドロキシ化合物と、必要に応じて用いられるその他のジヒドロキシ化合物と、炭酸ジエステルとを反応させるエステル交換法が好ましい。
【0042】
エステル交換法は、構造の一部に前記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物の1種又は2種以上と、脂肪族及び/又は脂環式ジヒドロキシ化合物の1種又は2種以上と、必要に応じて用いられるその他のジヒドロキシ化合物の1種又は2種以上と、炭酸ジエステルとに、塩基性触媒、さらにはこの塩基性触媒を中和する酸性物質を添加してエステル交換反応を行う製造方法である。
【0043】
炭酸ジエステルの代表例としては、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネート、ジナフチルカーネート、ビス(ビフェニル)カーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジブチルカーボネート及びジシクロヘキシルカーボネートなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらのうち、特にジフェニルカーボネートが好ましく用いられる。
【0044】
本発明のポリカーボネート樹脂(ii)の分子量は、還元粘度で表すことができ、還元粘度の下限は、0.20dl/g以上が好ましく、0.30dL/g以上がより好ましく、0.35dL/g以上がさらに好ましく、還元粘度の上限は、2.00dL/g以下が好ましい。
ポリカーボネート樹脂(ii)の還元粘度が低すぎると得られるフィルムの機械的強度が小さい可能性があり、大きすぎると、成形する際の流動性が低下し、生産性や成形性を低下させる傾向がある。
【0045】
なお、ポリカーボネート樹脂(ii)の還元粘度は、中央理化社製DT−504型自動粘度計にてウベローデ型粘度計を用い、溶媒として塩化メチレンを用い、ポリカーボネート樹脂(ii)濃度が0.60g/dlになるように精密に調整した後に、温度20.0℃±0.1℃で、下記に基づき測定値から算出される。
溶媒の通過時間t0、溶液の通過時間tから、下記式:
ηrel=t/t0
より相対粘度ηrelを求め、相対粘度ηrelから、下記式:
ηsp=(η−η0)/η0=ηrel−1
より比粘度ηspを求める。
比粘度ηspを濃度c(g/dl)で割って、下記式:
ηred=ηsp/c
より還元粘度(換算粘度)ηredを求める。
【0046】
また、本発明のポリカーボネート樹脂(ii)の耐熱性の指標となるガラス転移温度(Tg)は、100℃以上であることが好ましく、110℃以上であることがさらに好ましい。ガラス転移温度(Tg)の上限については特に制限はないが、通常160℃以下である。
ポリカーボネート樹脂(ii)のガラス転移温度の測定方法は、後述の実施例の項に記載されるとおりである。
【0047】
ポリカーボネート(ii)を主成分とする(II)層には、紫外線吸収剤が含まれていてもよい。紫外線吸収剤が含まれていると、フィルムの耐候性を向上でき、また液晶や偏光膜の紫外線劣化を防ぐことができる。紫外線吸収剤としては、公知のもの、例えば各種市販のものを特に制限なく使用できる。中でも、公知の芳香族ポリカーボネート樹脂(ii)への添加に通常用いられるものを好適に用いることができる。
【0048】
紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス(4−クミル−6−ベンゾトリアゾールフェニル)及び2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール]等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(ヘキシルオキシ)−フェノール等のトリアジン系紫外線吸収剤;2,2’−p−フェニレンビス(1,3−ベンゾオキサジン−4−オン)等のベンゾオキサジン系紫外線吸収剤;2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(ヘキシル)オキシ−フェノール等のヒドロキシフェニルトリアジン系紫
外線吸収剤;などを挙げることができる。
【0049】
紫外線吸収剤の融点としては、特に120℃〜250℃の範囲にあるものが好ましい。融点が120℃以上の紫外線吸収剤を使用することにより、紫外線吸収剤が時間経過とともにフィルム表面に凝集するブリードアウト現象によりポリカーボネート(ii)を主成分とする(II)層表面が汚れたり、口金や金属ロールを用いてフィルム成形する場合に、ブリードアウトによりそれらが汚れたりすることを防止し、ポリカーボネート(ii)を主成分とする(II)層表面の曇りを減少させ、また改善することが容易になる。
【0050】
これらの観点、及び、本発明のポリカーボネート樹脂(ii)との相溶性や、耐湿熱性、液晶や偏光膜の紫外線劣化を効率的に防ぐ観点から、紫外線吸収剤としては、2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール]、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−(3”,4”,5”,6”−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)]フェノール及び2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、並びに2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(ヘキシル)オキシ−フェノール等のトリアジン系紫外線吸収剤を好ましく使用できる。
これらの紫外線吸収剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
前記紫外線吸収剤は、ポリカーボネート樹脂(ii)を主成分とする(II)層中に、ポリカーボネート樹脂(ii)100重量部に対して、0.0001重量部以上、20重量部以下の割合で含有することが好ましく、0.0005重量部以上、15重量部以下の割合で含有することがより好ましく、0.001重量部以上、10重量部以下の割合で含有することがさらに好ましい。
かかる範囲で紫外線吸収剤を含有することにより、ポリカーボネート樹脂(ii)を主成分とする(II)層表面への紫外線吸収剤のブリードやポリカーボネート樹脂(ii)を主成分とする(II)層の機械特性低下を生じることなく、ポリカーボネート樹脂(ii)を主成分とする(II)層の耐候性を向上させ、また液晶や偏光膜の紫外線劣化を防ぐことができる。
【0052】
本発明の目的を損なわない範囲で、ポリカーボネート樹脂(ii)を主成分とする(II)層にはまた、紫外線吸収剤以外の添加成分として、シランカップリング剤、酸化防止剤、耐候安定剤などのその他の各種添加剤を適宜な量含有していてもよい。また、本発明の目的を損なわない範囲で、本発明のポリカーボネート樹脂(ii)以外の樹脂を含有していてもよい。
【0053】
2.熱可塑性樹脂(i)を主成分とする(I)層
(I)層は、熱可塑性樹脂(i)を主成分とする。ここで、主成分とするとは、当該層中の熱可塑性樹脂(i)の含有量が好ましくは50重量%以上、より好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上であることをいう。熱可塑性樹脂(i)は、ポリカーボネート(ii)を主成分とする(II)層から剥離可能という観点からは、ポリカーボネート樹脂(ii)以外の樹脂において、非晶性樹脂、結晶性樹脂のどちらを主成分としてもかまわないが、ハンドリング性を良好にする観点から、結晶性熱可塑性樹脂を主成分とすることが好ましい。結晶性熱可塑性樹脂の中でもコストや剥離性、得られる積層熱可塑性樹脂フィルムのハンドリング性等の観点からポリオレフィン系樹脂、特にポリプロピレン、又はポリエチレンであることが好ましい。
この熱可塑性樹脂(i)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。また熱可塑性樹脂(i)を主成分とする(I)層は、単層構成であっても多層構成であってもよく、多層構成の場合、2層、3層構成以外にも本発明の要旨を超えない限り、4層またはそれ以上の多層であってもよく、特に限定されるものではない。
【0054】
熱可塑性樹脂(i)の結晶性熱可塑性樹脂として用いられるポリオレフィン系樹脂の製造方法は特に限定されず、公知のオレフィン系重合用触媒を用いた公知の重合方法、例えばチーグラー・ナッタ型触媒に代表されるマルチサイト触媒や、メタロセン系触媒に代表されるシングルサイト触媒などを用いた重合方法が挙げられる。
【0055】
また、結晶性熱可塑性樹脂の融点(Tm)は、特に制限されないが、得られる積層熱可塑性樹脂フィルムのブロッキング防止や、ポリカーボネート樹脂(ii)のガラス転移温度(Tg)との関係を満たしやすくする観点(後述)から、60℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましく、80℃以上がさらに好ましい。また、結晶性熱可塑性樹脂の融点の上限は特に制限されないが、通常180℃程度である。
また、結晶性熱可塑性樹脂の結晶化温度(Tc)は、特に制限されないが、後述するポリカーボネート樹脂(ii)のガラス転移温度(Tg)との関係を満たしやすくする観点から、40℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、70℃以上がさらに好ましい。また、結晶性熱可塑性樹脂の結晶化温度の上限は特に制限されないが、通常160℃程度である。
更には、ポリカーボネート樹脂(ii)のガラス転移温度(Tg)と、結晶性熱可塑性樹脂の結晶化温度(Tc)との差(Tg−Tc)は、好ましくは60℃以下、より好ましくは50℃以下、特に好ましくは40℃以下であると、本発明のフィルムを低位相差にできる。その原理については定かではないが、前述した積層熱可塑性樹脂フィルム製造の際、口金から押し出された直後の溶融状態から、熱可塑性樹脂(i)を主成分とする(I)層がなるべく早く結晶化によって固定された方が、フィルムの引き落としや、引き取りなどによりポリカーボネート(ii)を主成分とする(II)層にかかる歪みが低減され、低位相差になりやすいと考えられる。また、結晶性熱可塑性樹脂の結晶化温度は、ポリカーボネート樹脂(ii)のガラス転移温度を超えてもよいが、あまり大きくなると結晶性熱可塑性樹脂の融点が高くなり、ポリカーボネート樹脂(ii)と押出温度が離れるため、共押出が困難になる。良好に共押出をするために、ポリカーボネート樹脂(ii)のガラス転移温度(Tg)と結晶性熱可塑性樹脂の結晶化温度(Tc)との差(Tg−Tc)は、−60℃以上が好ましく、−50℃以上がより好ましく、−30℃以上がさらに好ましい。
なお、結晶性熱可塑性樹脂の融点及び結晶化温度の測定方法は、後述の実施例の項に記載されるとおりである。
【0056】
熱可塑性樹脂(i)を主成分とする(I)層には、添加成分として各種添加剤を適宜な量添加してもよい。添加剤の例としては、例えば紫外線吸収剤、酸化防止剤、核剤等が挙げられる。
【0057】
3.積層フィルムの製造方法
本発明の積層フィルムは、ポリカーボネート樹脂(ii)を主成分とする(II)層の片面に、熱可塑性樹脂(i)を主成分とする(I)層を有する。
本発明の積層フィルムの製膜方法としては、公知の方法、例えば、単軸押出機、多軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダーなどの溶融混合設備を有し、Tダイを用いる押出キャスト法やカレンダー法などを採用することができ、特に限定されるものではないが、本発明においては、ハンドリング性や生産性などの面から、(I)層と(II)層を同時に押し出すTダイを用いた共押出法が好適に用いられる。なお、本発明の積層フィルムは、ポリカーボネート樹脂(ii)を主成分とする(II)層の両面に熱可塑性樹脂(i)を主成分とする(I)層を積層した構成で共押出してから片方の(I)層を剥離して作製してもよいし、一方の面のみに(I)層を積層した構成で共押出して作製してもよい。前者であれば、ポリカーボネート樹脂(ii)を主成分とする(II)層への異物付着抑制や、製膜時の積層体の強度の点で優れる。また、後者であれば、(I)層を剥離する工程がなくても偏光子との貼り合せが可能であり、生産性に優れる。また、(II)層の両面に(I)層を積層する場合、(II)層の両面の(I)層を構成する熱可塑性樹脂(i)は、同一の熱可塑性樹脂であってもよいし、異なっていてもよい。また、(II)層の両面の(I)層の膜厚は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、このときの(II)層と(I)層との剥離強度は、後述するとおり、両層が自然に剥離しない限り、できる限り小さいほうが好ましい。具体的には剥離強度の上限は、好ましくは5N/cm以下であり、さらに好ましくは3N/cm以下であり、最も好ましくは1N/cm以下である。
Tダイを用いる押出キャスト法での成形温度は、用いるポリカーボネート樹脂(ii)の流動特性や製膜性などによって適宜調整されるが、概ね80℃以上、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは140℃以上であり、かつ、概ね320℃以下、好ましくは300℃以下、より好ましくは280℃以下、さらに好ましくは260℃以下であり、シランカップリング剤などを添加する場合は反応に伴う樹脂圧の増加やフィッシュアイの増加を抑制するために成形温度を低下させることが好ましい。シランカップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候安定剤などの各種添加剤は、予めポリカーボネート樹脂(ii)とともにドライブレンドしてからホッパーに供給してもよいし、予めポリカーボネート樹脂(ii)等の全ての材料を溶融混合してペレットを作製してから供給してもよいし、添加剤のみを予めポリカーボネート樹脂(ii)等の樹脂に濃縮したマスターバッチを作製して供給してもよい。
【0058】
本発明のカール率が50%未満である積層フィルムを得るためには以下の(1)、(2)を満たすように製膜することが好ましい。
【0059】
(1)キャストロール温度
製膜時のキャストロール温度は、60℃以下、好ましくは50℃以下、更に好ましくは40℃以下である。60℃を超えると、後述するとおりカールが発生しやすく、ハンドリング性に劣る。キャストロール温度が上記範囲のときにカールが抑制される理由については定かではないが、積層フィルムが口金から押し出されたあとの冷却過程において、急冷されることで、それぞれの層について線膨張分の寸法変化がおきにくくなり、それに起因する応力や、各層の寸法差が小さくなるためと考えられる。
【0060】
(2)キャストロールとタッチロールの温度差
キャストロールとタッチロールの温度差は、好ましくは30℃以下であり、25℃以下であることがより好ましく、20℃以下がさらに好ましい。
30℃を超えると、キャストロール側とタッチロール側での冷却条件の差により、カールが発生しやすくなると考えられる。
【0061】
4.積層フィルム
本発明の積層フィルムは、ポリカーボネート樹脂(ii)を主成分とする(II)層の片面にのみ熱可塑性樹脂(i)を主成分とする(I)層が積層された非対照構成であるが、下記式で定義されるカール率は50%未満である。カール率は、30%未満であることが好ましく、10%未満であることがより好ましい。50%未満であれば、フィルムのハンドリング性に優れ、カール起因によるシワ入りも改善される。
前述したロール温度にすることにより、カール率を上記の範囲にすることができる。
カール率(%)=100−((フィルムを平面上に置き真上からみたときの、フィルムの平面上への投影面積)÷(フィルムの実際の面積)×100)
【0062】
ポリカーボネート樹脂(ii)を主成分とする(II)層の膜厚の上限値については、50μm以下であり、好ましくは40μm以下であり、さらに好ましくは30μm以下である。ポリカーボネート樹脂(ii)を主成分とする(II)層の膜厚が50μmを超えると、これを用いた偏光子保護フィルム及び偏光板の総膜厚が厚くなり、液晶パネルの薄膜化が困難となる。フィルムの膜厚は、押出量や引取速度などの製膜条件などによって調整できる。本発明のポリカーボネート樹脂(ii)を主成分とする(II)層の膜厚の下限値は特に制限がないが、機械的強度の観点から通常は3μm以上であり、5μm以上が好ましく、10μm以上がさらに好ましい。
【0063】
熱可塑性樹脂(i)を主成分とする(I)層の膜厚は、機械的強度やハンドリング性の観点から、一層あたり3μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましく、10μm以上がさらに好ましい。一方、コストの観点から、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、40μm以下が更に好ましい。
特に熱可塑性樹脂(i)を主成分とする(I)層の膜厚は、1層あたり、ポリカーボネート樹脂(ii)を主成分とする(II)層の膜厚の0.1〜10倍が好ましく、0.2〜5倍がより好ましく、特に好ましくは、0.5〜3倍である。
【0064】
5.偏光子保護フィルム
本発明の偏光子保護フィルムは、本発明の積層フィルムから、熱可塑性樹脂(i)を主成分とする(I)層を剥離することで得られる。積層フィルムからの(I)層の剥離に際しては、通常の操作で(過剰な力をかけることなく)、かつ、(II)層と(I)層を破壊することなく、これらの層を互いに剥離できることが好ましい。従って、剥離強度は、両層が自然に剥離しない限り、できる限り小さいほうが好ましい。具体的には剥離強度の上限は、好ましくは5N/cm以下であり、さらに好ましくは3N/cm以下であり、最も好ましくは1N/cm以下である。剥離強度が上記上限以下であれば、過剰な力や操作を要することなく、両層を容易に剥離することができる。一方、剥離強度の下限は、好ましくは0.1N/cm以上である。剥離強度が上記下限以上であれば、両層が良好に積層状態を維持し得るので、自然剥離によって操作が中断されるおそれがきわめて小さい。なお、剥離強度の測定方法は、後述の実施例の項に記載されるとおりである。
以下、本発明の偏光子保護フィルムの物性等について具体的に説明する。
【0065】
(1)引裂強度
本発明の偏光子保護フィルムのJIS K7128−2の方法により測定される引裂強度は、7.5kg/cm以上であることが好ましく、より好ましくは8.0kg/cm以上、特に好ましくは8.5kg/cm以上である。引裂強度が上記範囲であれば、フィルムが裂けにくく、ハンドリング性に優れるため、薄膜化が容易である。引裂強度が7.5kg/cm未満である場合、薄膜化した際にフィルムが裂けやすくハンドリング性が悪いものとなり、好ましくない。引裂強度の上限値については特に制限がないが、通常20kg/cm以下である。引裂強度の測定方法は、後述の実施例の項に記載されるとおりである。
【0066】
(2)引張伸び
本発明の偏光子保護フィルムのJIS K7161の方法により測定される引張伸びは、好ましくは20%以上、より好ましくは50%以上、特に好ましくは80%以上である。引張伸びが20%未満である場合、フィルムが破断しやすいためハンドリング性が悪くなる。引張伸びの上限値については特に制限がないが、通常200%以下である。引張伸びの測定方法は、後述の実施例の項に記載されるとおりである。
【0067】
(3)引張最大強度
本発明の偏光子保護フィルムのJIS K7161の方法により測定される引張最大強度は、好ましくは50MPa以上、より好ましくは60MPa以上、特に好ましくは70MPa以上である。引張最大強度が50MPa未満である場合、フィルムの強度が低く、これを用いて得られる偏光板の強度が低下する。引張最大強度の上限値については特に制限がないが、通常200MPa以下である。引張最大強度の測定方法は、後述の実施例の項に記載されるとおりである。
【0068】
(4)位相差
本発明の偏光子保護フィルムの面内位相差(R
O)及び厚み位相差(R
th)は、好ましくは10nm以下、さらに好ましくは5nm以下、特に好ましくは3nm以下である。面内位相差(R
O)及び厚み位相差(R
th)が10nm以下である場合、光学異方性が小さいため光学フィルムとして適する。
前述した本発明のポリカーボネート樹脂(ii)、具体的には、前記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と前記式(2)で表されるトリシクロデカンジメタノールに由来する構造単位とを所定の割合で含有するポリカーボネート樹脂(ii)を使用したり、更に本発明の偏光子保護フィルムを採用することで、このような光学異方性の小さいフィルムを容易に製造することができる。
なお、面内位相差(R
O)及び厚み位相差(R
th)の下限については特に定めないが、好ましくは−10nm以上、さらに好ましくは−5nm以上、特に好ましくは−3nm以上である。
面内位相差(R
O)及び厚み位相差(R
th)の測定方法は、後述の実施例の項に記載されるとおりである。
【0069】
(5)全光線透過率
本発明の偏光子保護フィルムの全光線透過率は、好ましくは85%以上、より好ましくは88%以上、特に好ましくは90%以上である。全光線透過率が85%以上であれば、透明な光学フィルムとして適する。
前述した本発明のポリカーボネート樹脂(ii)、具体的には、前記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と前記式(2)で表されるトリシクロデカンジメタノールに由来する構造単位とを所定の割合で含有するポリカーボネート樹脂(ii)を使用することで、このような透明性に優れたフィルムを容易に製造することができる。
全光線透過率の測定方法は、後述の実施例の項に記載されるとおりである。
【0070】
6.偏光板
本発明の偏光子保護フィルムは、透明性、寸法安定性、耐湿熱性に優れ、引裂強度等の機械的強度、更には光学特性にも優れることから、偏光板の偏光膜の保護フィルムとして好適に用いることができる。
本発明の偏光板は、本発明の偏光子保護フィルムが、偏光子の片面あるいは両面に貼りあわされてなる。ここで、本発明の積層フィルムより偏光板を作成する手順を
図1を参照して説明する。本発明の積層フィルム1をそのまま、すなわち片面に熱可塑性樹脂(i)を主成分とする(I)層が積層された状態のまま偏光子と貼りあわせて積層体2とし、その後熱可塑性樹脂(i)を主成分とする(I)層を剥離して偏光板3を作製してもよいし、本発明の積層フィルム1から、あらかじめ熱可塑性樹脂(i)を主成分とする(I)層を剥離して偏光子保護フィルム4とし、それを偏光子と貼りあせて偏光板3を作製してもよい。フィルムの剛性の観点から、前者の方法が好ましい。なお、前者において、本発明の積層フィルムはカールが小さいため、ハンドリング性が良好かつ、ロール to ロールで偏光子と張り合わせる際に、カール起因のシワが入ることなく、良好に貼り合せることができる。
【0071】
本発明の積層フィルムまたは偏光子保護フィルムを例えば、偏光板における偏光膜の保護フィルムとして使用する場合、一般的には、偏光膜を接着させるための接着剤を介して偏光膜を貼り合わせる。
接着剤としては、従来公知のものを使用することができ、例えば、ポリビニルアルコール系やウレタン化合物等の水系接着剤、アクリル系化合物やエポキシ系化合物、オキサゾリン化合物等の活性エネルギー線硬化系接着剤が挙げられる。中でも、偏光膜であるポリビニルアルコール(PVA)との接着性や、廃棄物等における環境安全性等の観点より、ポリビニルアルコール系等の水系接着剤が好ましい。
【0072】
本発明のフィルム上に水系接着剤等の接着剤を塗布して接着剤層を形成した後、この上に、例えば一軸延伸され、ヨウ素等で染色されたポリビニルアルコール膜などの偏光膜を貼り合わせる。この偏光膜の反対側にも保護フィルムや位相差フィルム等を貼り合わせて偏光板とすることができる。
【0073】
7.液晶表示装置
本発明の積層フィルムまたは偏光子保護フィルムは、ハンドリング性、透明性、寸法安定性、耐湿熱性に優れ、引裂強度等の機械的強度、更には光学特性にも優れ、偏光膜に対して密着性よく接着させることができることから、このような本発明のフィルムを用いた本発明の偏光板は、偏光膜の保護効果、機能維持性に優れ、テレビ、パソコン、デジタルカメラ、携帯電話等の液晶表示装置の偏光板として高品質な表示画面を実現することができ、また、液晶表示装置製造時の作業性にも優れる。
【0074】
前述の通り、液晶ディスプレイは、前面側偏光板/液晶/後面側偏光板の構成を有し、偏光板は保護フィルム/偏光膜/保護フィルムの構成を有することから、前面側偏光板を構成する偏光膜の前面側及び後面側に配置する保護フィルムをそれぞれ保護フィルムA、保護フィルムBとし、後面側偏光板を構成する偏光膜の前面側及び後面側に配置する保護フィルムをそれぞれ保護フィルムC、保護フィルムDとすると、全体的な構成は、前面側から、保護フィルムA/前面側偏光膜/保護フィルムB/液晶/保護フィルムC/後面側偏光膜/保護フィルムDとなる。
【0075】
本発明の積層フィルムまたは偏光子保護フィルムは、一方のフィルム面側には前述の接着剤層を介して偏光膜を接着し、他方のフィルム面側には前述の接着剤層を介して他の機能性フィルムや透明基材を接着することができる。他の機能性フィルムとしては、特に制限はないが、例えば、高屈折率フィルム、低屈折率フィルム、これらを積層した反射防止フィルム、色補正フィルムなどの光学フィルム、ハードコートフィルム、防汚フィルム、電磁波シールドフィルム、赤外線吸収フィルム、紫外線吸収フィルムなどが挙げられる。また、透明基材としては、支持基板としてのガラスや各種透明フィルムが挙げられる。
【0076】
以下に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、これらの実施例及び比較例により本発明は制限を受けるものではない。
【0077】
[評価方法]
以下において、種々の物性等の測定及び評価は次のようにして行った。
【0078】
<結晶化温度(Tc)、融点(Tm)、ガラス転移温度(Tg)>
示差走査熱量計((株)パーキンエルマー社製、商品名:Pyris1 DSC)を用いて、JIS K7122に準じて、試料約10mgを加熱速度10℃/分で室温から250℃まで昇温し、250℃で5分間保持した後、冷却速度10℃/分で室温まで降温した時に測定されたサーモグラムから、発熱ピーク温度を結晶化温度(Tc)として読みとった。また、これを再度加熱速度10℃/分で250℃まで昇温した時に測定されたサーモグラムから、吸熱ピーク温度を融点(Tm)として読みとった。また、同じく再度昇温した時のサーモグラムから、ガラス転移温度(Tg)を読み取った。
【0079】
<面内位相差(R
O)及び厚み位相差(R
th)>
実施例及び比較例1については、作製した積層フィルムから熱可塑性樹脂層((I)層)を剥離し、評価用サンプルとした。比較例2については、単層フィルムをそのまま評価用サンプルとした。これら評価用サンプルについて、位相差測定装置(王子計測社製、商品名:KOBRA−WR)を用いて測定した。なお、R
thは、入射角度0°のときと、40°のときの位相差より算出した。測定結果から、以下のように評価した。
○:R
O、R
thの絶対値が10nm以下
×:R
O、R
thの絶対値が10nmより大きい
【0080】
<カール評価>
実施例および比較例1で得られた積層フィルムを、10cm×10cmの大きさに切り出し、平面上に置き、真上からみたときの、フィルムの平面上への投影面積と、切り出したフィルムの実際の面積(10cm×10cm=100cm
2)から、以下の式に従ってカール率を算出した。(II)層、(I)層それぞれを上面にして評価を行い、大きい方の値から、カールについて以下のように評価した。
◎:カール率が10%未満
○:カール率が10%以上50%未満
×:カール率が50%以上
カール率(%)=100−((フィルムを平面上に置き真上からみたときの、フィルムの平面上への投影面積)÷(フィルムの実際の面積)×100)
【0081】
[構成材料]
以下に、実施例におけるフィルムの作製に用いた構成材料を示す。
【0082】
<ポリカーボネート樹脂(ii)>
特開2008−024919号公報に準じた方法により得られた、ジヒドロキシ化合物であるイソソルビドに由来する構造単位とトリシクロデカンジメタノールに由来する構造単位のモル比率がイソソルビド/トリシクロデカンジメタノール=6/4で、ガラス転移温度(Tg)が132℃であるポリカーボネート樹脂。
【0083】
<結晶性熱可塑性樹脂(i)>
ポリプロピレン(日本ポリプロ(株)製、商品名ノバテックPP FG3DC、Tm:147℃、Tc:106℃)
【0084】
[実施例1]
上記ポリカーボネート樹脂と上記結晶性熱可塑性樹脂を、それぞれ、φ65mm単軸押出機、φ40mm単軸押出機に投入し、それぞれ220〜240℃、及び180℃〜240℃のバレル設定温度にて溶融混練し、フィードブロック及び幅1350mm、リップギャップ0.7mmの口金(設定温度240℃)から共押出したのち、30℃に温調されたキャストロールおよびタッチロールにて巻き取り、熱可塑性樹脂層((I)層)/ポリカーボネート樹脂層((II)層)/熱可塑性樹脂層((I)層)の2種3層積層構成のフィルム(各層の厚み20μm)を作製し、片面の熱可塑性樹脂層((I)層)を剥離し、2種2層の積層フィルムを得た。
【0085】
[実施例2]
キャストロールの温度を50℃にした以外は実施例1と同様の方法で、積層フィルムを作製した。
【0086】
[実施例3]
キャストロールの温度を50℃、タッチロールの温度を15℃にした以外は実施例1と同様の方法で、積層フィルムを作製した。
【0087】
[比較例1]
キャストロールの温度を50℃にした以外は実施例1と同様の方法で、積層フィルムを作製した。
【0088】
[比較例2]
上記ポリカーボネート樹脂をφ65mm単軸押出機に投入し、220〜240℃のバレル設定温度にて溶融混練し、幅1350mm、リップギャップ0.7mmの口金(設定温度240℃)から押出したのち、100℃に温調されたキャストロールおよび30℃に温調されたタッチロールにて巻き取り、厚み20μmのポリカーボネートフィルムを作製した。
【0089】
実施例及び比較例のフィルムの評価結果を表1に示す。
実施例1〜3は、キャストロール温度が60℃以下であり、2種2層の非対称構成な積層フィルムであるがカールが小さく、ハンドリング性良好である。とくに、実施例1〜2は、タッチロールとキャストロールの温度差が30℃以下であるため、2種3層構成のときも、カールが抑制されている。一方、比較例1は、キャストロール温度が60℃を超えており、2種2層の非対称構成の積層フィルムにするとカールが発生するため、ハンドリング性が悪く、カール起因のシワ入りも生じる。また、比較例2は、単層での製膜であり光学異方性を生じるので、位相差が高い。