(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上面、下面および側面と前記下面に位置する正極および負極とを有し、前記上面から光を出射する複数の発光素子を、支持体上に、前記下面が支持体と対向するように配置する工程(A)と、
上面および下面を有する蛍光体板を、前記蛍光体板の下面が前記複数の発光素子の前記上面と対向するように、前記蛍光体板を前記複数の発光素子に対して配置し、前記蛍光体板の下面と前記複数の発光素子の上面とを直接接合によって接合する工程(B)と、
前記支持体を除去した後、前記蛍光体板の上面が下側に位置するように前記蛍光体板を配置した状態で、前記複数の発光素子間に透光性樹脂を配置する工程(C)と、
前記複数の発光素子間において、前記蛍光体板および前記透光性樹脂を切断することによって複数の中間体を得る工程であって、前記複数の中間体のそれぞれは、前記上面に蛍光体板が位置し、前記側面に前記透光性樹脂からなる導光部が位置する発光素子を含み、前記蛍光体板および前記導光部のそれぞれは、切断によって形成される側面であって、互いに整合している側面を有する、工程(D)と、
基板を準備し、前記中間体を前記基板上に接合させる工程(E)と、
前記中間体における導光部および蛍光体板の側面と、前記発光素子の側面および下面を覆う光反射性部を形成する工程(F)と、
を包含し、
前記発光素子の前記下面は、2辺の長さがaおよびbである略矩形形状を有し、
前記工程(A)において、前記長さaの辺に沿う第1方向に、p(ただしpは2a<pを満たす)のピッチで、前記長さbの辺に沿う第2方向に、q(ただしqは2b<qを満たす)のピッチで前記複数の発光素子のうちの第1群を、前記支持体上において所定の点を第1群の基準点として2次元に配置し、前記長さaの辺に沿う第1方向に、前記pのピッチで、前記長さbの辺に沿う第2方向に、前記qのピッチで前記複数の発光素子のうちの第2群を前記支持体上において前記第1群の基準点から前記第1方向および前記第2方向にp/2およびq/2離れた点を第2群の基準点として2次元に配置する、発光装置の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本開示の発光装置および発光装置の製造方法の実施形態を詳細に説明する。本開示の発光装置および発光装置の製造方法は、例示であり、本発明は以下で説明する発光装置および発光装置の製造方法に限られない。以下の説明では、特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」およびそれらの用語を含む別の用語)を用いる場合がある。それらの用語は、参照した図面における相対的な方向や位置を、分かり易さのために用いているに過ぎない。また、図面が示す構成要素の大きさや位置関係等は、分かり易さのため、誇張されている場合があり、実際の発光装置における大きさあるいは、実際の発光装置における構成要素間の大小関係を反映していない場合がある。
【0010】
(第1の実施形態)
<発光装置の構造>
図1は、本開示の発光装置101の第1の実施形態を示す上面図であり、
図2Aおよび
図2Bは、
図1の2A−2A線および2B−2B線における発光装置101の断面図である。発光装置101は、上面、下面および側面と、下面側に位置する正極および負極とを有し、主に上面から光を出射する発光素子10と、蛍光体を含む無機材料からなり、上面と、側面と、発光素子の上面よりも大きく発光素子の上面と直接接している下面とを有する蛍光体板20と、発光素子の側面および蛍光体板の発光素子から露出する下面を覆う導光部30と、蛍光体板20の側面および導光部30を覆う光反射性部40とを備える。また、本実施形態では、発光装置101は基板50を備える。以下、各構成要素を詳細に説明する。
【0011】
[発光素子10]
発光素子10は、発光ダイオード等の半導体発光素子であり、出射光の波長に特に制限はない。本実施形態では、発光装置101は1つの発光素子10を含んでいるが、複数の発光素子10を含んでいてもよい。発光素子10は、透光性基板11と、透光性基板11上に形成された半導体積層体12と、半導体積層体12の表面に設けられた正極13、負極14とを含む。本実施形態では、発光素子10は基板50にフリップチップ実装されており、半導体積層体12から出射する光は、透光性基板11を透過して外部へ出射する。このため、
図1に示す向きに合わせて透光性基板11および半導体積層体12の上面、下面等を説明する。
図3Aは、発光素子および導光部を含む構造の下面図である。発光素子10は、平面視において、例えば、略矩形形状を有しており、4つの側面10c、10d、10e、10fを有する。つまり、発光素子10は、略矩形状の上面10aおよび下面10bと、上面10aと下面10bとの間に位置する4つの側面10c、10d、10e、10fとを備える略直方体である。
【0012】
透光性基板11は、半導体積層体12を支持し、半導体積層体12をエピタキシャル成長させるための基板である。透光性基板11は上面11aおよび上面11aと対向する下面11bを有する。後述するように半導体積層体12が窒化物系半導体である場合、サファイア(Al
2O
3)、スピネル(MgAl
2O
4)等の透光性の絶縁性基板、または、窒化物半導体などの半導体基板等を、透光性基板11として用いることができる。ここでの透光性とは、発光素子10から出射される光に対して、少なくとも60%以上、好ましくは80%程度以上の透光率を有する性質を指す。
【0013】
半導体積層体12は、
図2Aでは、透光性基板11の下面11b側に位置している。半導体積層体12は、積層された複数の半導体層を含む。例えば、半導体積層体12は、発光層(活性層)と、発光層を挟む第1導電型半導体層(例えばn型半導体層)および第2導電型半導体層(例えばp型半導体層)とを含む。発光層のバンドギャップに対応した波長の光を発光素子10は出射する。紫外光、青色光から緑色光の可視光を発光可能な半導体層は、例えば、III−V族化合物半導体、II−VI族化合物半導体等の半導体材料から形成することができる。具体的には、In
XAl
YGa
1−X−YN(0≦X、0≦Y、X+Y≦1)等組成を有する窒化物系の半導体材からなる半導体積層体12を用いることができる。半導体積層体12の上面12aが透光性基板11の下面11bと接触しており、発光層から出射する光は半導体積層体12の上面12aから透光性基板11へ入射し、透光性基板11の上面11aおよび側面から発光素子10の外部へ出射する。
【0014】
半導体積層体12の下面12bには、正極13、および負極14が設けられている。正極13および負極14は、それぞれ、第1導電型半導体層および第2導電型半導体層と電気的に接続されており、正極13および負極14から第1導電型半導体層および第2導電型半導体層を介して発光層に電圧が印加される。
【0015】
正極13および負極14は、半導体積層体12と電気的に接続し得る公知の金属材料によって構成されている。例えば、Cu、Au、Ag、AuSn等の金属を用いることができる。正極13および負極14は、単層構造を有していてもよいし、積層構造を有していてもよい。
【0016】
透光性基板11の上面11aおよび半導体積層体12の下面12bは、発光素子10の上面10aおよび下面10bでもある。上述したように、発光素子10の上面10a(つまり透光性基板11の上面11a)および下面10b(つまり半導体積層体12の下面12b)は、平面視において、略矩形形状を有する。
【0017】
[蛍光体板20]
蛍光体板20は、発光素子10から入射する光の少なくとも一部の波長を変換して出射する。蛍光体板20は、上面20aおよび上面20aと対向する下面20bを有する。蛍光体板20の下面20bは発光素子10の上面10aと直接接している。後述するように、蛍光体板20の下面20bと発光素子10の上面10aとは直接接合によって接合されている。直接接合とは、接合する界面において、接着材等の接合部材を用いずに、界面に露出している原子同士が互いに結合する接合形態をいう。蛍光体板20と発光素子10との間に接着層等の介在物がないため、発光素子10と蛍光体板20との間における熱伝導性が優れる。このため、蛍光体板20で発生した熱を、発光素子10を介して基板50へ伝導させたり、発光素子10で発生した熱を蛍光体板20へ伝導させたりすることが可能であり、発光装置101内における熱伝導性が高められる。強力な直接接合が形成されるよう、蛍光体板20の下面20bおよびと発光素子10の上面10aは高い平滑性を有していることがこのましい。具体的には、1nm以下の算術平均粗さRaを有していることが好ましい。
【0018】
蛍光体板20の上面20aおよび下面20bは、互いに略平行であることが好ましい。本明細書において略平行とは、いずれか一方の面が他方の面に対して±5°程度の傾斜が許容されることを意味する。このような形状により、発光面となる蛍光体板20の上面20aにおいて、正面輝度が均一であり、発光色むらの少ない発光装置101を実現し得る。蛍光体板20の厚さ(つまり蛍光体板20の下面20bから蛍光体板20の上面20aまでの高さ)は、例えば、50μm〜300μm程度である。
図1、
図2Aおよび
図2Bに示すように、蛍光体板20の下面20bは発光素子10の上面10aよりも大きい。平面視において、蛍光体板20は略矩形形状を有している。蛍光体板20の下面20bの外縁は、発光素子10の上面10aの外縁より外側に位置している。
【0019】
図1、
図2A等に示すように、蛍光体板20は側面20c、20d、20e、20fを有する。側面20c、20d、20e、20fは、平坦面であり、蛍光体板20の上面20aに対して略垂直な面であることが好ましい。つまり、蛍光体板20は、略矩形で略同形状の上面20aおよび下面20bと、上面20aと下面20bとの間に位置する4つの側面20c、20d、20e、20fとを備える略直方体であることが好ましい。これにより、蛍光体板20と、後述する蛍光体板20を囲む光反射性部40との境界が発光面に対して垂直に位置するため、発光装置101の発光面となる蛍光体板20の上面20aに垂直な方向から見た場合、発光部と非発光部との境界が明瞭になる。本明細書において略垂直とは、いずれか一方の面が他方の面に対して90°±5°程度の角度を成すことを意味する。
【0020】
蛍光体板20は、発光素子10から入射される光の少なくとも一部の波長を変換して放射する蛍光体を含む。蛍光体板20が蛍光体を含むことにより、蛍光体板20の上面20aから外部に出射される光は、発光素子10からの出射光と、蛍光体により波長変換された光との混色光となる。例えば、発光素子10から出射された青色光と、その青色光の一部が蛍光体により波長変換された黄色光とを混合させることにより、白色系の光を発する発光装置101を得ることができる。
【0021】
蛍光体板20は、例えば、蛍光体の焼結体、あるいは、セラミックス、ガラス等の無機材料に蛍光体粉末を含有させたものからなる。蛍光体には、発光素子10が出射する光で励起可能なものが使用される。例えば、以下に示す具体例のうちの1種を単独で、または、2種以上を組み合わせて用いることができる。青色発光素子または紫外線発光素子で励起可能な蛍光体の具体例としては、セリウムで賦活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(例えばY
3(Al,Ga)
5O
12:Ce)、セリウムで賦活されたルテチウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(例えばLu
3(Al,Ga)
5O
12:Ce)、ユウロピウムおよび/またはクロムで賦活された窒素含有アルミノ珪酸カルシウム系蛍光体(例えばCaO−Al
2O
3−SiO
2:Eu)、ユウロピウムで賦活されたシリケート系蛍光体(例えば(Sr,Ba)
2SiO
4:Eu)、β サイアロン系蛍光体(例えばSi
6−zAl
zO
zN
8−z:Eu(0<Z<4.2))、CASN系蛍光体(例えばCaAlSiN
3:Eu)、SCASN系蛍光体(例えば(Sr,Ca)AlSiN
3:Eu)等の窒化物系蛍光体、マンガンで賦活されたフッ化珪酸カリウム系蛍光体(例えばK
2SiF
6:Mn)、硫化物系蛍光体、量子ドット蛍光体などが挙げられる。これらの蛍光体と、青色発光素子または紫外線発光素子と組み合わせることにより、所望の発光色の発光装置(例えば白色系の発光装置)を得ることができる。例えば、蛍光体板20に含まれる蛍光体の種類および濃度を調整することにより白色光を出射する発光装置101を得ることができる。蛍光体板20中の蛍光体の含有量は、例えば、5〜50質量%程度である。
【0022】
蛍光体板20は、蛍光体の他に光拡散材を含んでいてもよい。光拡散材としては、例えば、酸化チタン、チタン酸バリウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素等を用いることができる。蛍光体板20が無機材料のみを含むことにより、つまり、有機材料を含まないことにより、蛍光体板20の熱伝導率を大きくし、放熱性を高めることができる。また、有機材料を含む場合に比べて、蛍光体板20の屈折率を大きくし、透光性基板11との屈折率差を小さくできるため、発光素子10と蛍光体板20との界面における反射を抑制し、蛍光体板20からの出射効率を高めることができる。
【0023】
[導光部30]
図2A、
図2Bおよび
図3Aに示すように、導光部30は、発光素子10の側面10c、10d、10e、10fと蛍光体板の下面20bを覆い、発光素子10の側面10c、10d、10e、10fから出射する光を蛍光体板20へ導く。このため、導光部30は、発光素子10の側面10c、10d、10e、10fの少なくとも一部および蛍光体板20の下面20bのうち、発光素子10から露出している部分の少なくとも一部を覆う。好ましくは、導光部30は、発光素子10の側面10c、10d、10e、10fを取り囲んで覆っており、かつ、発光素子10の側面10c、10d、10e、10f全体を覆っている。また、好ましくは、導光部30は、蛍光体板20の下面20bのうち、発光素子10から露出している部分全体を覆う。
【0024】
導光部30は、蛍光体板20の下面に接する第1側面30c、30d、30e、30fと、各第1側面から発光素子10の側面10c、10d、10e、10fに接続する第2側面30cg、30dg、30eg、30fgを有する。
図3Bは、導光部30の第1側面30cおよび第2側面30cgを示す側面図である。導光部30の第1側面30c、30d、30e、30fは蛍光体板20の下面外縁に接する略平坦面であり、第2側面は発光素子10の下面外縁に接する傾斜面であることが好ましい。さらに、第1側面は、発光素子10の側面に略平行な平坦面であり、第2側面は後述する光反射性部40側に凹の曲面であることがより好ましい。このような形状によって、発光素子10の側面からの出射光が導光部30の外面で、光反射性部40と相まって適度な反射面を形成することができ、反射光を蛍光体板20へと導光させることができる。特に、発光素子10の側面に略平行な導光部30の第1側面が蛍光体板の下面外縁に接することにより、発光素子10の上面10aから露出する蛍光体板の外周部においても、入射する光の入射角度が小さくなり(つまり垂直入射する光の割合が増える)、光の取り出し効率が向上する。
【0025】
導光部30の第1側面30c、30d、30e、30fは位置により異なる高さを有する。これを2つの断面で説明する。
図2Aは、平面視における、発光素子10の略矩形形状を有する下面10bの2つの対角線(
図1において一点鎖線で指示している)の交点を通り、矩形の1つの辺と平行な線を含む下面10bに垂直な断面を示している。以下、この断面を2A−2A断面という。また、
図2Bは、平面視における、発光素子10の矩形形状を有する下面10bの2つの対角線の1つを含み下面10bに垂直な断面であり、以下、この断面を2B−2B断面という。
【0026】
2A−2A断面における、導光部30の発光素子10から最も離れた位置p1における高さhcと、2B−2B断面における、導光部30の発光素子10から最も離れた位置p2における高さhdとは互いに異なっている。
図3Bに示すように、高さhdは導光部30の各第1側面の両端における高さであり、高さhcは、各第1側面の中央における高さでもある。本実施形態では、hdはhcよりも大きい(hd>hc)。
【0027】
図3Aに示すように、平面視において、位置p2と発光素子10の側面10c、10fとの距離は、位置p1と側面10cとの距離よりも長い。このため、平面視における蛍光体板20の4つの角近傍では、発光素子10から入射する光の量(および光密度)が他の部分よりも低下しやすい。その結果、蛍光体板20の上面20aの4つの角近傍において、発光素子10から入射される光量が低下し、矩形の発光面の四隅が他の部分に比べて暗くなりやすい。また、例えば、混色によって、蛍光体板20の発光面から白色光を出射する場合には、四隅における発光素子10からの光量が低下することによって、混色する2以上の光のバランスが他の部分と異なることになる。その結果、発光面の四隅において、色調が他の部分と異なることによって、色むらが生じやすい。
【0028】
本実施形態では、位置p2における高さhdが位置p1における高さhcよりも大きいことによって、導光部30による、発光素子10の側面10c〜10fから出射する光の反射特性を、蛍光体板20の4つの角近傍とその他の部分とで異ならせ、色むらを抑制している。具体的には、蛍光体板20の4つの角近傍に対応する、導光部30の第1側面30c〜30fの両端近傍の高さを中央近傍よりも大きくし、第2側面30cg〜30fgの高さを両端近傍において、中央近傍よりも小さくしている。これにより、発光素子10の側面から出射した光が、第2側面30cg〜30fgの両端近傍で反射し半導体素子へ入射する割合を低下させ、第1側面30c〜30fに直接入射し、蛍光体板204へ向けて反射する割合、および、第2側面30cg〜30fgで反射し、第1側面へ入射して蛍光体板204へ進む割合を高めることができる。よって、蛍光体板20の四隅近傍に入射する光の光量不足を補うことができ、発光素子10の発光面の四隅における輝度の低下および色むらを抑制することができる。
【0029】
導光部30には、取り扱いおよび加工が容易であるという観点から、樹脂部材を用いることが好ましい。樹脂部材としては、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂の1種以上を含む樹脂またはハイブリッド樹脂等からなる樹脂部材を用いることができる。高さhdと高さhcが異なる導光部30は、後述するように、導光部30を形成するための樹脂部材の原料である未硬化の樹脂材料の粘性、発光素子10の側面との濡れ性および樹脂材料の硬化時の収縮を利用して形成することができる。
【0030】
導光部30は、蛍光体を含んでいてもよい。この場合、蛍光体は、例えば、導光部30のうち、蛍光体板20に近接した位置に偏って配置される。蛍光体には上述した種々の蛍光体から選ぶことができる。
【0031】
[光反射性部40]
光反射性部40は、蛍光体板20の側面20c、20d、20e、20fと、導光部30を覆っている。これにより、光反射性部40と蛍光体板20および導光部30との界面で、発光素子10から出射した光を蛍光体板20および導光部30側へ反射させ、最終的に蛍光体板20の上面20aから出射させる。発光素子10の側面のうち、導光部30によって覆われていない部分がある場合には、導光部30によって覆われていない側面も光反射性部40が覆っていることが好ましい。
【0032】
また、発光素子10が基板50上に配置される際には、光反射性部40は、発光素子10と基板50との間にも配置されていることが好ましい。
【0033】
光反射性部40は、発光素子10から出射される光を反射することができる材料から形成される。具体的には、上述した導光部30と同様の樹脂部材に、光反射性物質を含有させることにより形成することができる。光反射性物質としては、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、イットリア安定化ジルコニア、チタン酸カリウム、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、ムライトなどが挙げられる。光反射性部40における光反射性物質等の含有量は、例えば、母材となる樹脂部材100重量部に対し、光反射性物質は30〜60重量部含有されていることが好ましく、特に45〜60重量部含有されていることが好ましい。これにより、発光装置外部への光漏れをより抑制することが可能となり好ましい。
【0034】
[基板50]
基板50は、発光素子10を支持する。基板50は、発光素子10に電力を供給する配線および発光素子10を外部回路と接続するための外部端子を備えていてもよい。本実施形態では、基板50は、板状の基体51と、基体51の上面51aに形成された配線52と、基体51の下面51bに形成された外部端子53とを備える。配線52は、発光素子10の正極13、負極14と電気的に接続されている。配線52は例えば基体51に設けられたビアホールおよびビア導体を介して外部端子53と電気的に接続されている。
【0035】
基体51の材料としては、ガラスエポキシ、樹脂、セラミックスなどの絶縁性部材、絶縁部材を形成した金属部材等が挙げられる。なかでも、基体51の材料として、耐熱性及び耐候性の高いセラミックスを用いることが好ましい。セラミックス材料としては、アルミナ、窒化アルミニウム、ムライトなどが挙げられる。これらのセラミックス材料に、例えば、BTレジン、ガラスエポキシ、エポキシ系樹脂等の絶縁性材料を組み合わせてもよい。
【0036】
配線52および外部端子53は、例えば、銅、アルミニウム、金、銀、プラチナ、チタン、タングステン、パラジウム、鉄、ニッケル等の金属またはこれらを含む合金等によって形成することができる。また、配線52は、発光素子10からの光を効率よく取り出すために、その最表面が銀または金などの反射率の高い材料で覆われていることが好ましい。配線52は、電解めっき、無電解めっき、蒸着、スパッタ等によって形成できる。例えば、発光素子の基板への実装にAuバンプを用いる場合、配線の最表面にAuを用いることで、発光素子と基板との接合性が向上できる。このような基板は、当該分野で公知であり、発光素子等の電子部品が実装されるために使用される基板のいずれをも用いることができる。
【0037】
[保護素子60]
発光装置101は、ツェナーダイオード等の保護素子60を備えていてもよい。例えば、
図1において破線で示すように、保護素子60は、光反射性部40に埋設することができる。光反射性部40内に設けることにより、発光素子10からの光が保護素子60に吸収されたり、保護素子60に遮光されたりすることによる光取り出しの低下を抑制することができる。
【0038】
<発光装置の製造方法>
以下、図面を参照しながら、本開示の発光装置の製造方法の実施形態を説明する。発光装置の製造方法は、(A)複数の発光素子を支持体に配置する工程、(B)蛍光体板と複数の発光素子とを接合する工程、(C)複数の発光素子間に透光性樹脂を配置する工程、(D)導光部を備えた中間体を得る工程、(E)中間体を基板に接合させる工程および(F)光反射性部を形成する工程を包含する。以下、各工程を詳細に説明する。
【0039】
(A)複数の発光素子を支持体に配置する工程
まず、複数の発光素子10を支持体に配置する。
図4Aに示すように、例えば、接着層71が形成された支持体70上に複数の発光素子10を配置する。支持体70は平坦な上面を有していればよく、種々の材料からなる板状の基板を用いることができる。例えば、Si基板を用いることができる。支持体70の上面に発光素子10を一時的に接着するため接着層71を形成する。例えば未硬化のシリコーン樹脂を支持体70の上面にスピンコート法により塗布し、硬化させることによって接着層71を形成する。
【0040】
次に、発光素子10の下面10bが支持体70と対向するよう配置し、発光素子10を、接着層71を介して支持体70に接着させる。発光素子10の配置は、例えば、チップマウンタなどを用いることができる。
【0041】
図4Bは発光素子10の支持体70上における配置例を示す。発光素子10の上面10aおよび下面10bは矩形形状を有している。隣接する2辺の長さはaおよびbである。
図4Bでは、支持体70に配置された複数の発光素子10を示しており、発光素子10の上面10aで発光素子10の位置を示している。発光素子10の上面10aの矩形における隣接する2辺に沿って、第1方向および第2方向をとる。例えば、第1方向および第2方向としてx方向およびy方向をとる。
【0042】
複数の発光素子10は、交互配列、スタッガー配列、千鳥配列等で呼ばれる配列で、支持体70上に配置される。例えば、複数の発光素子10の配置は2つのグループに分けて説明できる。具体的には、複数の発光素子10を第1群G1および第2群G2に分ける。
図4Bでは、第1群G1の発光素子10を10(G1)と示し、第2群G2の発光素子10を10(G2)で示している。支持体70上の平面において、任意の所定の点として第1群の基準点O1をとり、第1群G1の発光素子10は、第1群の基準点O1から、長さaの辺に沿う第1方向(x方向)にpのピッチで、長さbの辺に沿う第2方向(y方向)に、qのピッチで2次元に配置する。ここで、p、q、は2a<p、2b<qを満たす実数である。ピッチとは、配列における繰り返しの長さをいう。第2群G2の発光素子10は、第1群の基準点O1から第1方向および第2方向にp/2およびq/2離れた第2群の基準点O2を基準として、長さaの辺に沿う第1方向(x方向)にpのピッチで、長さbの辺に沿う第2方向(y方向)に、qのピッチで2次元に配置する。このように複数の発光素子10を配置することにより、発光素子10の上面10aの対角方向における発光素子10の間隔ddは第1方向および第2方向における間隔dcよりも短くなる。
【0043】
(B)蛍光体板と複数の発光素子とを接合する工程
図4Cに示すように、上述した配列で配置された複数の発光素子10に蛍光体板20を接合させる。具体的には、蛍光体板20の下面20bが複数の発光素子10の上面10aと対向するように、蛍光体板20を複数の発光素子10に対して配置し、蛍光体板20の下面20bと複数の発光素子10の上面10aとを直接接合によって接合する。
【0044】
本実施形態に適した直接接合は、一般的に常温接合と分類される直接接合であることが好ましい。例えば、表面活性化接合、原子拡散接合、水酸基接合等が挙げられる。表面活性化接合は、超高真空中で不活性イオンを接合界面に照射することにより、表面を清浄、活性化し接合する(例えば、国際公開2011/126000号参照)。原子拡散接合は、超高真空中で金属をスパッタリングし、その金属の拡散により接合する。スパッタリングによる金属膜を非常に薄くすることで、光取り出しに影響なく接合できることが確認されている(例えば、特開2015−29079号公報参照)。原子拡散接合の場合、発光素子10と蛍光体板20とは光取り出しに影響がないほどの薄い金属層を介して接合されることになる。本明細書においては、原子拡散接合による接合も発光素子10と蛍光体板20とは直接接しているものとする。水酸基接合は接合界面に水酸基を形成し、水酸基の水素結合で発光素子10と蛍光体板20とを接合する(例えば、特開2014−232866号公報参照)。これらの接合方法は常温接合に分類されるが、必要に応じて加熱処理を行い、結合力を増大させてもよい、この場合、加熱温度は、400℃以下であり、好ましくは300℃以下、より好ましくは200℃以下である。
【0045】
蛍光体板20と発光素子10との良好な接合を得るために、蛍光体板20の下面20bおよび発光素子10の上面10aの表面粗さは小さい方が好ましい。例えば、蛍光体板20の下面20bおよび発光素子10の上面10aの算術平均表面粗さRaは1nm以下であることが好ましい。
【0046】
例えば、表面活性化接合によって蛍光体板20と発光素子10を接合する場合、支持体70に配置された複数の発光素子10の上面10aを洗浄し、乾燥後、発光素子10の上面10aおよび蛍光体板20の下面20bを、不活性ガスを含むプラズマに曝し、表面を活性化させ、発光素子10の上面10aおよび蛍光体板20の下面20bを接触させて接合させる。
【0047】
(C)複数の発光素子間に透光性樹脂を配置する工程
蛍光体板20を配列された発光素子10に接合した後、支持体70を除去する。接着層71による発光素子10と支持体70との接着は、所望の配列で発光素子10を固定するための仮止めであり、その接着強度は直接接合よりも弱いため、容易に支持体70を剥離することができる。
【0048】
図4Dは、蛍光体板20に接合された複数の発光素子10の、
図4Bにおける第1方向(x方向)での断面を示し、
図4Eは、発光素子10の上面10aにおける対角方向での断面を示す。
図4Dおよび
図4Eに示すように、蛍光体板20の上面20aが下側に位置するように蛍光体板20を配置した状態で、複数の発光素子10間に導光部30となる透光性樹脂を配置する。具体的には、導光部30となる透光性樹脂の原料である未硬化の樹脂材料を、蛍光体板20の下面20b上であって、複数の発光素子10間にポッティング等によって配置する。このとき、未硬化の樹脂材料75は、表面張力により発光素子10の側面を這いあがり、滴下した領域内で上に凹の形状を有する。
【0049】
その後、未硬化の樹脂材料75を加熱して硬化する。硬化した透光性樹脂75’は、
図4Dおよび
図4Eに示すように、凹型のメニスカスを示す。ここで、
図4Eに示すように、発光素子10の上面10aの対角方向においては、隣接する発光素子10間の間隔が短いため、発光素子10間において、透光性樹脂75’の高さはあまり小さくならない。これに対し、
図4Dに示すように、発光素子10の上面10aの矩形における隣接する2辺に沿った第1方向および第2方向では、隣接する発光素子10間の間隔が長いため、発光素子10間において、透光性樹脂75’の高さが小さくなる。これにより、高さhd>hcの関係を有する透光性樹脂が形成される。
【0050】
(D)導光部を備えた中間体を得る工程
その後、
図4D、
図4Eおよび
図4Fに示すように、複数の発光素子10を個片化する。
図4D、
図4Eおよび
図4Fにおいて一点鎖線で示す位置で蛍光体板20および透光性樹脂75’を切断することによって、発光素子10の側面において、透光性樹脂からなる導光部30が位置する発光素子10を含む複数の中間体80が得られる。
【0051】
(E)中間体を基板に接合させる工程
図4Gに示すように、基板50を準備し、基板50の配線52と複数の中間体80の正極13および負極14とを電気的に接続することによって、複数の中間体80を基板50に接合させる。このとき、
図4Hに示すように、基板50上に中間体80は例えば、第1方向(x方向)および第2方向(y方向)に沿って2次元に配列してよい。あるいは、発光装置101に含まれる発光素子10の数に応じた中間体80を基板50に接合してもよい。
【0052】
(F)光反射性部を形成する工程
図4Iに示すように、基板50上に配列された中間体80の間に光反射性部40の原料となる未硬化の材料85を配置し、硬化させる。この工程は、例えば、射出成形、ポッティング成形、印刷法、トランスファーモールド法、圧縮成形などで成形することができる。
【0053】
これにより、中間体80の導光部30および蛍光体板20の側面、発光素子10の下面を覆う光反射性樹脂85’が形成される。その後、
図4Jに示すように、光反射性樹脂85’および基板50を切断し、個片化することによって発光装置101が完成する。
【0054】
[効果]
本開示の発光装置101によれば、発光素子10の側面10c、10d、10e、10fを導光部30が覆っており、導光部30がさらに蛍光体板20の下面20bのうち、発光素子10の上面10aと接しておらず発光素子10から露出している部分も覆っている。このため、発光素子10の上面10aおよび側面10c、10d、10e、10fから出射する光を蛍光体板20の下面20b全体に入射させることが可能であり、蛍光体板20の全体で、発光素子10から入射した光と蛍光体板20内の蛍光体により波長変換された光との混色が行われる。よって、発光装置101の発光面である、蛍光体板20の上面20a全体から混色された光を出射され、発光面における色むらが抑制される。
【0055】
また、蛍光体板20の側面20c、20d、20e、20fおよび導光部30と発光素子10の下面10bを覆う光反射性部40を備えるため、蛍光体板20の上面20a以外が光反射性部40で覆われることによって、外部への光の取り出し効率が向上し、高輝度の発光装置101が実現する。さらに発光部と非発光部との境界が明瞭であり、いわゆる出射光の見切りがよい発光装置101が実現する。さらに発光素子10と蛍光体板20とが直接接合によって接合されているため、発光素子10と蛍光体板20との間の熱伝導性が優れる。これら特徴は、例えば、高輝度で、白色の均一性が高く、放熱性が優れ、かつ、見切りの良い光源として、車両のヘッドランプ等に好適に用いられる。
【0056】
また、導光部30の側面の高さは、中央よりも両端において高くなっている。このため、発光素子10の側面から出射した光を、光量が不足しやすい蛍光体板の四隅により多く入射させることができ、蛍光体板の四隅における輝度の低下および色むらが抑制される。
【0057】
この導光部30の側面の高さは、導光部30を形成する際の発光素子10の支持体への配列によって調整が可能である。このため、導光部30の側面の高さを調節し、発光装置101に求められる仕様や特性を満たすことが可能である。
【0058】
なお、本実施形態では、
図3Bに示すように、導光部30は、両端の高さhdが中央部の高さhcよりも大きい側面を有している。しかし、導光部30は、両端の高さhdが中央部の高さhcよりも小さい側面を有していてもよい。つまりhd<hcであってもよい。このような導光部30を備える発光装置を製造する場合には、(A)複数の発光素子を支持体に配置する工程において、
図7に示すように、複数の発光素子10を第1方向(x方向)および第2方向(y方向)にrおよびsのピッチで2次元に配列すればよい。ここでr、sは、それぞれ、a<r<2a、およびb<s<2bを満たす実数である。これにり、間隔dcが間隔ddよりも短くなり、hd<hcを満たす側面を有する導光部30を形成することができる。
【0059】
(第2の実施形態)
図5Aおよび
図5Bは、第2の実施形態による発光装置102の上面図および
図5Aの5B−5B線における発光装置102の断面図である。発光装置102は、複数の発光素子10を備えている点で第1の実施形態の発光装置101と異なる。発光装置102は3つの発光素子10を備えている。発光素子10の上面10aは、連続した1つの蛍光体板20の下面20bに直接接合によって接合されている。隣接する発光素子10の側面の間には、導光部30が設けられている。
【0060】
発光装置102は、第1の実施形態の発光素子の製造方法の(A)複数の発光素子を支持体に配置する工程において、
図5Cに示すように、複数の発光素子10を第1方向(x方向)および第2方向(y方向)に2次元に配列し、(D)導光部を備えた中間体を得る工程において、蛍光体板20上に2次元に配列された複数の発光素子10を
図5Cにおいて一点鎖線で示すように、3個の発光素子を1つの個片として切り出すことによって製造できる。この場合、導光部30の高さは、第1の実施形態で説明したように支持体70に発光素子10を配列する際の発光素子10の間隔(
図5Cにおいて矢印で示す)を変えることによって調整し得る。これにより、発光素子10の側面から出射する光を蛍光体板20に入射させる際の光の分布を調整することが可能となり、発光面である蛍光体板20の上面20aにおける色むらおよび輝度むらを抑制することが可能である。
【0061】
(第3の実施形態)
図6Aおよび
図6Bは、第3の実施形態による発光装置103の上面図および
図6Aの6B−6B線における発光装置103の断面図である。発光装置103は、複数の発光素子10を備えているが、発光素子10間に光反射性部40が配置されている点で第2の実施形態の発光装置102と異なる。発光装置103において、3つの発光素子10はそれぞれ、独立した蛍光体板20と接合されており、蛍光体板20間および発光素子10間に光反射性部40が位置している。
【0062】
発光装置103は、第1の実施形態の製造方法の(E)中間体を基板に接合させる工程において、3つの中間体80を基板50に配列し、3つ中間体80を覆う光反射性部を形成することによって製造することができる。
【0063】
発光装置103によれば、発光素子10の側面から出射する光は、導光部30に入射するが、光反射性部40によって隣接する発光素子10の導光部30には入射しない。この構造は隣接する発光素子10から出射する光が発光素子10の発光層に入射し、発光効率が低下する場合に発光効率の低下を抑制するのに有効である。