(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1面の二次元投影形状における前記屈曲部の最大長L(mm)に対する、前記開口部の二次元投影形状における最大径d(mm)の比d/Lが0.6以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の曲面カバーガラス。
前記開口部において、前記第1面と前記第2面とを連通する軸と、前記開口部が設けられた部位における前記第1面の法線と、がなす角度θが、0°≦θ≦60°である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の曲面カバーガラス。
前記開口部において、前記第1面と前記第2面とを連通する軸と、前記開口部が設けられた部位における前記第1面の法線と、がなす角度θが、5°≦θ≦60°である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の曲面カバーガラス。
前記第1面のうち、少なくとも端面と隣接する部位における任意の1点において、若しくは、端面から100mm以内の範囲にある任意の1点において、前記屈曲部を有し、該屈曲部に少なくとも一つの前記開口部が設けられている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の曲面カバーガラス。
前記第1面のうち、少なくとも端面と隣接する部位における任意の1点において、若しくは、端面から100mm以内の範囲にある任意の1点において、前記屈曲部を有し、該屈曲部に少なくとも一つの前記凹部が設けられている、請求項7〜9のいずれか1項に記載の曲面カバーガラス。
前記屈曲部上の少なくとも1点において、前記Y軸方向にもその表面が屈曲しており、前記Y軸と前記Z軸を通るYZ平面におけるガラス板状体の第1面の断面の第2曲率半径R2が300〜10000mmである、請求項1〜11のいずれか1項に記載の曲面カバーガラス。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記した従来技術の問題点を解決するため、自動車用内装部品やディスプレイ装置への固定を容易かつ確実に実施できる曲面カバーガラス及びその製造方法、並びに、ガラス部材、表示装置、曲面ガラスの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した目的を達成するため、本発明は下記構成からなる。
(1) 第1面と、
前記第1面に対向する第2面と、
前記第1面と前記第2面を接続する少なくとも一つの端面を有するガラス板状体からなり、
前記ガラス板状体の平均厚みt
aveが5mm以下であり、
前記第1面上の任意の点からの接線方向をX軸とし、前記第1面の中心からの接線方向のうち、前記X軸に直交する方向をY軸とし、前記X軸と前記Y軸に直交する方向をZ軸とするとき、
前記X軸は、前記第1面上の任意の点における前記第1面の接線方向のうち、前記X軸と前記Z軸を通るXZ平面における前記第1面の断面の第1曲率半径R
1が最小となる方向であり、
前記第1面は、前記第1面上の少なくとも1点において前記X軸方向にその表面が屈曲した屈曲部を有しており、第1曲率半径R
1が10000mm以下であり、
前記ガラス板状体に、前記第1面と前記第2面とを連通する、少なくとも一つの開口部が設けられている曲面カバーガラス。
(2) 第1面と、
前記第1面に対向する第2面と、
前記第1面と前記第2面を接続する少なくとも一つの端面を有するガラス板状体からなり、
前記ガラス板状体の平均厚みt
aveが5mm以下であり、
前記第1面上の任意の点からの接線方向をX軸とし、前記第1面の中心からの接線方向のうち、前記X軸に直交する方向をY軸とし、前記X軸と前記Y軸に直交する方向をZ軸とするとき、
前記X軸は、前記第1面上の任意の点における前記第1面の接線方向のうち、前記X軸と前記Z軸を通るXZ平面における前記第1面の断面の第1曲率半径R
1が最小となる方向であり、
前記第1面は、前記第1面上の少なくとも1点において前記X軸方向にその表面が屈曲した屈曲部を有しており、第1曲率半径R
1が10000mm以下であり、
前記屈曲部に、前記第1面と前記第2面とを連通する、少なくとも一つの開口部が設けられていることを特徴とする曲面カバーガラス。
(3) 第1面と、
前記第1面に対向する第2面と、
前記第1面と前記第2面を接続する少なくとも一つの端面を有するガラス板状体からなり、前記ガラス板状体の平均厚みt
aveが5mm以下であり、
前記第1面上の任意の点からの接線方向をX軸とし、前記第1面の中心からの接線方向のうち、前記X軸に直交する方向をY軸とし、前記X軸と前記Y軸に直交する方向をZ軸とするとき、
前記X軸は、前記第1面上の任意の点における前記第1面の接線方向のうち、前記X軸と前記Z軸を通るXZ平面における前記第1面の断面の第1曲率半径R
1が最小となる方向であり、
前記第1面は、前記第1面上の少なくとも1点において前記X軸方向にその表面が屈曲した屈曲部を有しており、第1曲率半径R
1が10000mm以下であり、
前記ガラス板状体に、二次元投影形状が略円形、略楕円形、略半円形状、若しくは、略半楕円形状であり、該二次元投影形状における最大長が1.5〜200mmであり、少なくとも一つの凹部が設けられている曲面カバーガラス。
(4) 第1面と、
前記第1面に対向する第2面と、
前記第1面と前記第2面を接続する少なくとも一つの端面を有するガラス板状体からなり、前記ガラス板状体の平均厚みt
aveが5mm以下であり、
前記第1面上の任意の点からの接線方向をX軸とし、前記第1面の中心からの接線方向のうち、前記X軸に直交する方向をY軸とし、前記X軸と前記Y軸に直交する方向をZ軸とするとき、
前記X軸は、前記第1面上の任意の点における前記第1面の接線方向のうち、前記X軸と前記Z軸を通るXZ平面における前記第1面の断面の第1曲率半径R
1が最小となる方向であり、
前記第1面は、前記第1面上の少なくとも1点において前記X軸方向にその表面が屈曲した屈曲部を有しており、第1曲率半径R
1が10000mm以下であり、
前記屈曲部に、二次元投影形状が略円形、略楕円形、略半円形状、若しくは、略半楕円形状であり、該二次元投影形状における最大長が1.5〜200mmであり、少なくとも一つの凹部が設けられていることを特徴とする曲面カバーガラス。
(5)上記(1)または(2)の曲面カバーガラスと、筐体と、を有するガラス部材であって、
前記筐体は、前記曲面カバーガラスの前記開口部に嵌通して、前記曲面カバーガラスと前記筐体とを接続する、少なくとも1つの接続機構を有するガラス部材。
(6)上記(3)または(4)の曲面カバーガラスと、筐体と、を有するガラス部材であって、
前記筐体は、前記曲面カバーガラスの前記凹部に嵌合して、前記曲面カバーガラスと前記筐体とを接続する、少なくとも1つの接続機構を有するガラス部材。
(7)上記(1)〜(4)のいずれか一つの曲面カバーガラスと、ディスプレイ装置と、を備えた表示装置。
(8)上記(1)または(2)の曲面カバーガラスを製造する曲面カバーガラスの製造方法であって、
研削部に砥石を備えたドリルを、回転軸を中心として自転させるとともに、らせんを描くように前記第1面と前記第2面とを連通する軸を中心として公転運動させて開口部を形成する曲面カバーガラスの製造方法。
(9)上記(3)または(4)の曲面カバーガラスを製造する曲面カバーガラスの製造方法であって、
研削部に砥石を備えたドリルを、回転軸を中心として自転させるとともに、らせんを描くように前記第1面と前記第2面とを連通する軸を中心として公転運動させて前記凹部を形成する曲面カバーガラスの製造方法。
(10) 第1面と、
前記第1面に対向する第2面と、
前記第1面と前記第2面を接続する少なくとも一つの端面を有するガラス板状体からなり、
前記ガラス板状体の平均厚みt
aveが5mm以下であり、
前記第1面上の任意の点からの接線方向をX軸とし、前記第1面の中心からの接線方向のうち、前記X軸に直交する方向をY軸とし、前記X軸と前記Y軸に直交する方向をZ軸とするとき、
前記X軸は、前記第1面上の任意の点における前記第1面の接線方向のうち、前記X軸と前記Z軸を通るXZ平面における前記第1面の断面の第1曲率半径R
1が最小となる方向であり、
前記第1面は、前記第1面上の少なくとも1点において前記X軸方向にその表面が屈曲した屈曲部を有しており、第1曲率半径R
1が10000mm以下であり、
前記ガラス板状体に、前記第1面と前記第2面とを連通する、少なくとも一つの開口部が設けられている曲面ガラス。
(11) 第1面と、
前記第1面に対向する第2面と、
前記第1面と前記第2面を接続する少なくとも一つの端面を有するガラス板状体からなり、前記ガラス板状体の平均厚みt
aveが5mm以下であり、
前記第1面上の任意の点からの接線方向をX軸とし、前記第1面の中心からの接線方向のうち、前記X軸に直交する方向をY軸とし、前記X軸と前記Y軸に直交する方向をZ軸とするとき、
前記X軸は、前記第1面上の任意の点における前記第1面の接線方向のうち、前記X軸と前記Z軸を通るXZ平面における前記第1面の断面の第1曲率半径R
1が最小となる方向であり、
前記第1面は、前記第1面上の少なくとも1点において前記X軸方向にその表面が屈曲した屈曲部を有しており、第1曲率半径R
1が10000mm以下であり、
前記ガラス板状体に、二次元投影形状が略円形、略楕円形、略半円形状、若しくは、略半楕円形状であり、該二次元投影形状における最大長が1.5〜200mmであり、少なくとも一つの凹部が設けられている曲面ガラス。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、屈曲部若しくは平坦部に開口部若しくは凹部が設けられているため、該開口部若しくは凹部に接続機構を嵌通することにより、自動車用内装部材若しくはディスプレイ装置等への固定を容易かつ確実に実施できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の曲面カバーガラス若しくは曲面ガラス及び本発明のガラス部材のいくつかの実施形態について説明する。なお、本発明の曲面カバーガラス若しくは曲面ガラス及び本発明のガラス部材はこれらの実施形態に限定されない。また、以降の実施形態の説明においては、本発明を曲面カバーガラスを例に説明するが、上記したカバー用途に限らない曲面ガラスや、少なくとも一箇所に屈曲部を有する屈曲ガラスと置き換えてもよい。
【0014】
図1は、本実施形態の曲面カバーガラスを説明するための図である。
図1に示すように、本実施形態の曲面カバーガラスは、第1面11と、該第1面11に対向する第2面12と、該第1面11と該第2面12を接続する少なくとも一つの端面13を有するガラス板状体10aからなる。本明細書におけるガラス板状体10aとは、端面13の厚さに比べて、第1面11及び第2面12の寸法が大きい板状体であることを意味しており、平板状の板ガラスを意味するものではない。本実施形態の曲面カバーガラスをなすガラス板状体10aは、屈曲部14を有しており、該屈曲部14には少なくとも一つの開口部15(図示した態様では4つの開口部15)が設けられている。該開口部15は、ガラス板状体10aの第1面11と第2面12とを連通している。
また、当該ガラス板状体の2つの主面のうち、いずれの主面を第1面若しくは第2面とするかは特に限定されないが、自動車用内装部品やディスプレイ装置等のカバーガラスとして使用する場合、外部に露出する側の面、すなわち、表示面となる側の面を、ガラス板状体の第1面とする。この場合、自動車用内装部品やディスプレイ装置等の表示面と対向する面がガラス板状体の第2面である。そして、自動車用内装部品やディスプレイ装置等の表示面と、ガラス板状体の第2面と、を対向させた状態で、自動車用内装部品やディスプレイ装置等の筐体に設けられた接続機構を、曲面カバーガラスをなすガラス板状体10aの開口部15に嵌通させて、曲面カバーガラスをなすガラス板状体10aと、自動車用内装部品やディスプレイ装置等の筐体と、を接続する。
【0015】
図2は、本発明における屈曲部を説明するための図であり、曲面カバーガラスを示している。但し、
図2に示す曲面カバーガラスは、屈曲部に開口部が設けられていないため、本実施形態の曲面カバーガラスではない。
図2に示す曲面カバーガラスは、第1面110と、該第1面110に対向する第2面120と、該第1面110と該第2面120を接続する少なくとも一つの端面130を有するガラス板状体100からなる。本発明では、後述する屈曲部を特定するため、曲面カバーガラスをなすガラス板状体の第1面110の任意の点Pにおける第1面の接線方向のうち、以下の条件を満たすよう選ばれる接線方向をX軸とし、該第1面の点Pにおける第1面の接線方向のうち、該X軸に直交する方向をY軸とし、X軸とY軸に直交する方向をZ軸とする。ここで該X軸は、ガラス板状体の第1面上の任意の点Pにおける第1面の接線方向のうち、該X軸と該Z軸を通るXZ平面におけるガラス板状体の第1面の断面の曲率半径(以下、第1曲率半径ともいう)R
1が最小となる方向とする。R
1が最小となる方向が複数ある場合、それらのうち少なくとも一つの方向をX軸として、第1曲率半径R
1を定めてよい。なお、その場合後述する第2曲率半径R
2が最小となるような方向をX軸として、第1曲率半径R
1を定めることが好ましい。
曲面カバーガラスをなすガラス板状体の第1面は、第1面上の少なくとも1点において該X軸方向にその表面が屈曲した屈曲部を有する。屈曲部とは、第1面上の任意の点Pにおいて該XZ平面における第1曲率半径R
1が10000mm以下となる領域を指す。なお、
図2では、第1面110全体が屈曲部をなしている。
第1曲率半径R
1が10000mm以下の屈曲部を有していると、自動車用内装部材若しくはディスプレイ装置等のカバーガラスとして使用した場合に、これらの表示面上に配置される部位が適度に屈曲しているため、利用者からの視野角が小さくなり、視認性が向上する。
視認性の向上の観点からは、屈曲部の第1曲率半径R
1は300〜3000mmの範囲内であることが好ましく、500〜2000mmの範囲内であることがより好ましい。
【0016】
また、
図2に示すように、曲面カバーガラスをなすガラス板状体の屈曲部は、屈曲部上の少なくとも1点においてY軸方向にもその表面が屈曲していてもよい。この場合、Y軸とZ軸を通るYZ平面におけるガラス板状体の第1面の断面の曲率半径(以下、第2曲率半径ともいう)R
2が10000mm以下であることが好ましく、300〜3000mmの範囲内であることがより好ましく、500〜2000mmの範囲内であることがさらに好ましい。なお、上述の通り、ガラス板状体の第1面上の任意の点Pにおける第1面の接線方向のうち、第1曲率半径R
1が最小となる方向をX軸とするため、第1曲率半径R
1及び第2曲率半径R
2はR
1≦R
2の関係式を満たす。
【0017】
本実施形態の曲面カバーガラスは、曲面カバーガラスをなすガラス板状体の厚みtが小さいことが、以下の理由から求められる。まず、厚みtを小さくすることで、曲面カバーガラスの質量が小さくなる。また、曲面カバーガラスの厚み方向における吸光度は厚みtに比例する。したがって、厚みtを小さくすることで、該吸光度を小さくし、曲面カバーガラスの厚み方向における可視光透過率を上げられるため、視認性が向上する。
図3は、曲面カバーガラスをなすガラス板状体の厚みtを説明するための図である。但し、
図3に示す曲面カバーガラスは、屈曲部に開口部が設けられていないため、本実施形態の曲面カバーガラスではない。
図3に示すガラス板状体100は、第1面110と、該第1面110に対向する第2面120と、該第1面110と該第2面120を接続する少なくとも一つの端面130を有する。
本明細書において、第1面における任意の点Pにおける該ガラス板状体の厚みtとは、
図3に示す通り、第1面110における任意の点Pと、点Pにおける第1面110に対する法線とガラス板状体の第2面120との交点Qと、を結ぶ最短距離とする。
本実施形態の曲面カバーガラスは、曲面カバーガラスをなすガラス板状体の平均厚みt
aveが5mm以下である。軽量化の観点、タッチパネルなどのセンシングの観点から曲面カバーガラスをなすガラス板状体の平均厚みt
aveが2mm以下であることが好ましく、1.5mm以下であることがより好ましく、1.0mm以下であることがさらに好ましく、0.7mm以下であることが特に好ましい。
【0018】
本実施形態の曲面カバーガラスは、曲面カバーガラスをなすガラス板状体の屈曲部における厚みtにばらつきが少ないことが、ガラス板状体の透過率などのばらつきが抑制され、視認性が向上するため好ましい。
具体的には、ガラス板状体の屈曲部における厚みの最大値t
maxと、最小値t
minと、の比t
max/t
minが1.0〜1.5であることが好ましく、1.0〜1.1であることがより好ましい。
【0019】
図4は、本実施形態の曲面カバーガラスの一構成例を示した図である。
図4に示す曲面カバーガラスは、第1面11と、該第1面11に対向する第2面12と、該第1面11と該第2面12を接続する少なくとも一つの端面13を有するガラス板状体10aからなる。
図4は、
図2と同様に、ガラス板状体10aの第1面11の任意の点Pと、該点Pにより定まるX軸、Y軸、Zが示されている。
図4に示すガラス板状体10aは、第1面11のうち、図中右側の端面に近い部位のみが屈曲部14をなしている。
本明細書において、第1曲率半径R
1が10000mm超の部位を屈曲していない略平坦部、曲率半径が300mm未満の部位を特異屈曲部とする。
図4に示すガラス板状体10aにおいて、第1面11のうち、屈曲部14をなす図中右側の端面に近い部位以外の部位は略平坦部である。
【0020】
本実施形態の曲面カバーガラスにおいて、曲面カバーガラスをなすガラス板状体は、第1面のうち、少なくとも、端面と隣接する部位における任意の1点において、若しくは、端面から100mm以内の範囲にある任意の1点において屈曲部を有することが、自動車用内装部品やディスプレイ装置等のカバーガラスとして使用した場合における視認性の向上の観点から好ましい。ここで、前者は、第1面における屈曲部と、端面と、が接続している場合であり、後者は、第1面における屈曲部と、端面と、が接続していない場合である。後者では、第1面における該屈曲部と、端面と、の間に、略平坦部や特異屈曲部が存在する。後者の場合、端面から50mm以内の範囲にある任意の1点において屈曲部を有することがより好ましく、端面から30mm以内の範囲にある任意の1点において屈曲部を有することがさらに好ましい。
【0021】
本実施形態の曲面カバーガラスにおいて、屈曲部14に設けられる開口部15は、第1面11の端面から5mm以上離れた位置に設けられていることが、曲面カバーガラスをなすガラス板状体10aの破損防止の観点から好ましい。
屈曲部14に設けられる開口部15は、第1面11の端面から10mm以上離れた位置に設けられていることがより好ましく、20mm以上離れた位置に設けられていることがさらに好ましい。
【0022】
図4に示す曲面カバーガラスは、曲面カバーガラスをなすガラス板状体10aの寸法が600mm×250mm×平均厚みt
ave1mmである。屈曲部14は、第1面11が凸面をなすように、上記で定義したX軸方向にのみ屈曲しており、第1曲率半径R
1が500mmである。屈曲部14には、Y軸方向に等間隔で整列して、4つの開口部15が形成されている。開口部15の二次元投影形状における最大径dは50mmである。
【0023】
本実施形態の曲面カバーガラスにおいて、開口部15の二次元投影形状における最大径dは50mm以下であることが、曲面カバーガラスをなすガラス板状体10aの破損防止の観点から好ましい。
開口部15の二次元投影形状における最大径dは30mm以下であることがより好ましく、10mm以下であることがさらに好ましい。
図5は、曲面カバーガラスをなすガラス板状体の第1面を二次元平面に任意の方向から投影して得られた平面図形を示す説明図である。
開口部15の二次元投影形状における最大径dとは、
図5に示すように、投影して得られた平面図形31のうち、開口部15に相当する領域33の面積が最大のものについて、その開口部15に相当する平面図形の輪郭上の任意の2点K1,K2を結ぶ直線のうち最大の直線の長さ、を指す。
なお、曲面カバーガラスをなすガラス板状体10aに後述する手順で開口部15を形成する場合、該開口部15の二次元投影形状は略円形、略楕円形、略半円形状、若しくは、略半楕円形状となる。
また、開口部15の二次元投影形状における最大径dは、第1面11側と、第2面12側で異なっていてもよい。この場合、開口部15は、ガラス板状体10aの厚み方向において、最大径dが異なるテーパー形状をなす。
【0024】
図6は、曲面カバーガラスをなすガラス板状体を第1面と平行な方向から投影して得られた平面図面を示す説明図である。
図6に示すように、本実施形態の曲面カバーガラスにおいて、長さLwのガラス板状体10aの第1面11の二次元投影形状35は、屈曲部14に相当する領域37を有する。この領域37の最大長をL(mm)とする。最大長L(mm)に対する、開口部15の二次元投影形状における最大径d(mm)の比d/Lが0.6以下であることが、曲面カバーガラスをなすガラス板状体10aの破損防止の観点から好ましい。
二次元投影形状における開口部15の最大径dと屈曲部14の最大長Lとの比d/Lは、0.5以下であることがより好ましく、0.4以下であることがさらに好ましい。
【0025】
図7(a)は、
図4に示す曲面カバーガラスの部分斜視図であり、
図7(b)は、
図4に示す曲面カバーガラスの部分側断面図である。
図7(b)に示すように、屈曲部14に設けられた開口部15は、ガラス板状体10aの第1面11と第2面12とを連通している。
図7(b)では、第1面11と第2面12とを連通する開口部15の軸と、開口部15が設けられた部位における第1面11の法線と、が一致しているが、これに限定されず、両者が一致していなくてもよい。
図8は、本実施形態の曲面カバーガラスの別の一構成例を示した部分側断面図である。
図8に示す曲面カバーガラスは、曲面カバーガラスをなすガラス板状体10bの屈曲部14に設けられた開口部15の向きが、
図7(b)に示したガラス板状体10aとは異なっている。
図8に示すガラス板状体10bは、第1面11と第2面12とを連通する開口部15の軸と、開口部15が設けられた部位における第1面11の法線に対して傾斜している。
【0026】
本実施形態の曲面カバーガラスにおいて、上記で定義した屈曲部に開口部を設ける理由の一つは、自動車用内装部材若しくはディスプレイ装置等のカバーガラスとして使用する場合に、屈曲部に設けた開口部にボルト、アングル等の接続機構を嵌通させて、自動車用内装部材若しくはディスプレイ装置等の筐体と、曲面カバーガラスをなすガラス板状体と、を接続するためである。
以下、本明細書において、自動車用内装部材若しくはディスプレイ装置等の筐体と、曲面カバーガラスをなすガラス板状体と、を接続したものを総称して本発明のガラス部材とする。
【0027】
但し、本実施形態の曲面カバーガラスにおいて、上記で定義した屈曲部に開口部を設ける理由をこれに限定されない。例えば、自動車用内装部材若しくはディスプレイ装置等の表示装置のカバーガラスとして使用する場合に、スピーカー、スイッチ、通風孔、収納エリア、スロットエリアなどの機能を有する孔として、開口部を設けてもよい。
屈曲部に設けた開口部に接続機構を嵌通させて、自動車用内装部材若しくはディスプレイ装置等の筐体と、曲面カバーガラスをなすガラス板状体と、を接続する場合、第1面11と第2面12とを連通する開口部15の軸と、開口部15が設けられた部位における第1面11の法線との、なす角度θは特に制限はないが、0°≦θ≦60°であり、5°≦θ≦60°であることが好ましい。上記角度θは、10°≦θ≦45°であることがより好ましく、15°≦θ≦30°であることがさらに好ましい。
【0028】
図9(a)、(b)は、本実施形態のガラス部材の一構成例を示した図であり、
図9(a)は部分斜視図であり、
図9(b)は部分側断面図である。
図9(a)、(b)に示すガラス部材は、
図7(a)、(b)に示す曲面カバーガラス(曲面カバーガラスをなすガラス板状体10a)と、自動車用内装部材、ディスプレイ装置等の筐体20と、が接続されている。但し、
図9(a)については、曲面カバーガラスをなすガラス板状体10aと、筐体20と、の位置関係をわかりやすくするため、両者を離間させた状態で示している。
図9(a)、(b)において、曲面カバーガラスをなすガラス板状体10aの第2面12と、自動車用内装部材、ディスプレイ装置等の筐体20の表示面21と、が対向するように配置されている。筐体20の表示面21のうち、ガラス板状体10aの屈曲部14と対向する部位は、屈曲部22を有している。
図9(a)、(b)において、曲面カバーガラスをなすガラス板状体10aの屈曲部14に設けた開口部15に接続機構(図示せず)を嵌通させることにより、自動車用内装部材若しくはディスプレイ装置等の筐体20と、曲面カバーガラスをなすガラス板状体10aと、が接続できる。
【0029】
図9(a)、(b)において、曲面カバーガラスをなすガラス板状体10aの第2面12の形状と、自動車用内装部材、ディスプレイ装置等の筐体20の表示面21の形状と、が一致していることが、視認性の向上の観点から好ましい。
本実施形態の曲面カバーガラスは、上述したように、曲面カバーガラスをなすガラス板状体の厚みtが小さいため、第1面の屈曲部における曲率半径(第1曲率半径R
1、第2曲率半径R
2)と、第1面に対向する第2面における曲率半径と、の差が小さい。そのため、曲面カバーガラスをなすガラス板状体の第1面の屈曲部における曲率半径(第1曲率半径R
1、第2曲率半径R
2)を、自動車用内装部材若しくはディスプレイ装置等の筐体の表示面の形状と、曲面カバーガラスをなすガラス板状体の第2面の形状と、の一致の判断指標とすることができる。曲面カバーガラスをなすガラス板状体の第1面の屈曲部上の任意の点Pにおける第1曲率半径R
1と、自動車用内装部材若しくはディスプレイ装置等の筐体の表示面の部位における点Pに対向する点において第1曲率半径R
1と同方向の曲率半径と、の差の絶対値が、第1曲率半径R
1の10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、3%以下であることがさらに好ましい。
【0030】
次に、本実施形態の曲面カバーガラスの別の一構成例を示す。
図10(a)、(b)は、本実施形態の曲面カバーガラスの別の一構成例を示した図であり、
図10(a)は部分斜視図であり、
図10(b)は部分側断面図である。
図10(a)、(b)に示す曲面カバーガラスは、第1面11と、該第1面11に対向する第2面12と、該第1面11と該第2面12を接続する少なくとも一つの端面13を有するガラス板状体10cからなる。
図10(a)、(b)に示すガラス板状体10cは、
図9(a)、(b)に示すガラス板状体10aと同様に、第1面11のうち、図中右側の端面に近い部位のみが屈曲部14をなしている。
図10(a)、(b)に示すガラス板状体10cの屈曲部14には、少なくとも一つの凹部16(
図10(a)、(b)に曲面カバーガラスでは、Y軸方向に等間隔で整列して3つの凹部16)が形成されている。該凹部16は、ガラス板状体10cの第1面11において凹部16をなしているが、
図9(a)、(b)に示すガラス板状体10aの開口部15とは違い、ガラス板状体10cの第1面11と第2面12とを連通していない。曲面カバーガラスをなすガラス板状体10cの屈曲部14に設けた凹部16に接続機構(図示せず)を嵌合させることによっても、自動車用内装部材若しくはディスプレイ装置等の筐体と、曲面カバーガラスをなすガラス板状体10cと、を接続できる。
但し、屈曲部14に設けた凹部16に接続機構(図示せず)を嵌合させることによって、自動車用内装部材若しくはディスプレイ装置等の筐体と、曲面カバーガラスをなすガラス板状体10cと、を接続するためには、屈曲部14に設けた凹部16がある程度の深さを有することが求められる。具体的には、屈曲部14に設けた凹部16の深さは、0.5mm以上であることが好ましく、1mm以上であることがより好ましい。
一方、曲面カバーガラスをなすガラス板状体10cの破損防止の観点からは、屈曲部14に設けた凹部16の深さは、曲面カバーガラスをなすガラス板状体の平均厚みtに対して、0.7×t以下であることが好ましく、0.6×t以下であることがより好ましく、0.5×t以下であることがさらに好ましい。
【0031】
図11(a)、(b)は、本実施形態のガラス部材の別の一構成例を示した図であり、
図11(a)は部分斜視図であり、
図11(b)は部分側断面図である。
図11(a)、(b)に示すガラス部材は、
図10(a)、(b)に示す曲面カバーガラス(曲面カバーガラスをなすガラス板状体10c)と、自動車用内装部材、ディスプレイ装置等の筐体20と、が接続されている。但し、
図11(a)については、曲面カバーガラスをなすガラス板状体10cと、筐体20と、の位置関係をわかりやすくするため、両者を離間させた状態で示している。
図11(a)、(b)において、曲面カバーガラスをなすガラス板状体10cの第2面12と、自動車用内装部材、ディスプレイ装置等の筐体20の表示面21と、が対向するように配置されている。筐体20の表示面21のうち、ガラス板状体10aの屈曲部14と対向する部位は、屈曲部22を有している。
図11(a)、(b)において、曲面カバーガラスをなすガラス板状体10cの屈曲部14に設けた凹部16に接続機構(図示せず)を嵌合させることにより、自動車用内装部材若しくはディスプレイ装置等の筐体20と、曲面カバーガラスをなすガラス板状体10cと、が接続できる。
なお、
図11では第1面11に凹部16が形成されているが、第2面12に凹部16が形成されてもよい。第2面12に凹部16が形成されているときには筐体20に設けられた凸部と嵌合でき、簡単にガラス板状体が固定される。
【0032】
図12(a)、(b)は、本実施形態の曲面カバーガラスのさらに別の一構成例を示した図であり、
図12(a)は部分斜視図であり、
図12(b)は部分側断面図である。
図12(a)、(b)に示す曲面カバーガラスは、第1面11と、該第1面11に対向する第2面12と、該第1面11と該第2面12を接続する少なくとも一つの端面13を有するガラス板状体10dからなる。
図12(a)、(b)に示すガラス板状体10dは、
図10(a)、(b)に示すガラス板状体10cと同様に、第1面11のうち、図中右側の端面に近い部位のみが屈曲部14をなしており、該屈曲部14には、少なくとも一つの凹部17(
図12(a)、(b)に示すガラス板状体10dでは、Y軸方向に等間隔で整列して3つの凹部17)が形成されている。但し、
図10(a)、(b)に示すガラス板状体10cでは、屈曲部14に形成された凹部16の二次元投影形状が略円形であるのに対して、
図12(a)、(b)に示すガラス板状体10dでは、屈曲部14に形成された凹部17の二次元投影形状が略半円形である。
図4に示すガラス板状体10aのように、屈曲部14に開口部15を設ける場合は、ガラス板状体10aの破損防止の観点から、第1面11の端面から5mm以上離れた位置に開口部15を設けることが好ましい。しかし、
図12(a)、(b)に示すガラス板状体10dのように、屈曲部14に凹部17を形成する場合、ガラス板状体10dの第1面11においては凹部17をなしているが、ガラス板状体10dの第1面11と第2面12とを連通していないため、第1面11の端面に隣接する部位に凹部17を形成できる。そのため、後述する手順により、二次元投影形状は略半円形や略半楕円形状の凹部17を形成できる。一方、第1面11の端面から離れた位置に凹部を形成する場合には、後述する手順により、二次元投影形状が略円形、若しくは、略楕円形状の凹部を形成できる。この場合、第1面11の端面から10mm以上離れた位置に凹部を形成することが好ましく、15mm以上離れた位置に形成することがより好ましく、20mm以上離れた位置に形成することがさらに好ましい。
【0033】
図13(a)、(b)は、本実施形態のガラス部材の別の一構成例を示した図であり、
図13(a)は部分斜視図であり、
図13(b)は部分側断面図である。
図13(a)、(b)に示すガラス部材は、
図12(a)、(b)に示す曲面カバーガラス(曲面カバーガラスをなすガラス板状体10d)と、自動車用内装部材、ディスプレイ装置等の筐体20と、が接続されている。但し、
図13(a)については、曲面カバーガラスをなすガラス板状体10dと、筐体20と、の位置関係をわかりやすくするため、両者を離間させた状態で示している。
図13(a)、(b)において、曲面カバーガラスをなすガラス板状体10dの第2面12と、自動車用内装部材、ディスプレイ装置等の筐体20の表示面21と、が対向するように配置されている。筐体20の表示面21のうち、ガラス板状体10aの屈曲部14と対向する部位は、屈曲部22を有している。
図13(a)、(b)において、曲面カバーガラスをなすガラス板状体10dの屈曲部14に設けた凹部17に接続機構(図示せず)を嵌合させることにより、自動車用内装部材若しくはディスプレイ装置等の筐体20と、曲面カバーガラスをなすガラス板状体10dと、が接続できる。
【0034】
屈曲部に凹部が形成された曲面カバーガラスにおいて、凹部16、17の二次元投影形状における最大長が1.5mm以上200mm以下であることが、曲面カバーガラスをなすガラス板状体10c、10dの破損防止の観点から好ましい。
凹部16、17の二次元投影形状における最大長は30mm以下であることがより好ましく、10mm以下であることがさらに好ましい。
【0035】
屈曲部に開口部が形成された曲面カバーガラス、及び、屈曲部に凹部が形成された曲面カバーガラスのいずれの場合も、曲面カバーガラスをなすガラス板状体の第1面が図示した態様のように凸面のものであってもよく、凹面のものであってもよい。本実施形態の曲面カバーガラスを自動車用内装部材若しくはディスプレイ装置等のカバーガラスとして使用する場合は、自動車用内装部材若しくはディスプレイ装置等のカバーガラスとして使用する際に表示面となる第1面が凹面であることが、視認性の向上の観点からは好ましい。
【0036】
開口部が形成された曲面カバーガラス、及び、凹部が形成された曲面カバーガラスのいずれの場合も、屈曲部に少なくとも一つの開口部、若しくは、少なくとも一つの凹部が形成される限り、その個数は特に限定されず、一つのみであっても、複数であってもよい。開口部
、若しくは、凹部に接続機構を嵌通または嵌合させて、自動車用内装部材若しくはディスプレイ装置等の筐体と、曲面カバーガラスをなすガラス板状体と、を接続する場合、開口部、若しくは、凹部の数は複数であることが好ましい。屈曲部、略平坦部、平坦部に複数の開口部、若しくは、複数の凹部を形成する場合、これら複数の開口部若しくは凹部は異なる役割を有していてもよい。例えば、一部の開口部、若しくは、一部の凹部は、接続機構を嵌通または嵌合させて、自動車用内装部材若しくはディスプレイ装置等の筐体と、曲面カバーガラスをなすガラス板状体と、を接続する役割を果たす一方で、残りの開口部、若しくは、残りの凹部は、スピーカーなどの機能を果たしてもよい。この場合、それぞれの機能は果たす開口部、若しくは、凹部は、互いに異なる形状や寸法であってもよい。上記の他、開口部や凹部に空調設備に使用するようなルーバーや、デザインや固定などに用いる金属部材や樹脂部材、装飾ガラスなどを嵌めてもよく、開口部から起動ボタンを露出させてもよい。
【0037】
また、視認性の向上の観点からは、曲面カバーガラスをなすガラス板状体は、第1面のうち、少なくとも、端面と隣接する部位における任意の1点において、若しくは、端面から100mm以内の範囲にある任意の1点において屈曲部を有することが好ましい。ここで、前者は、第1面における屈曲部と、端面と、が接続している場合であり、後者は、第1面における屈曲部と、端面と、が接続していない場合である。後者では、第1面における該屈曲部と、端面と、の間に、略平坦部や特異屈曲部が存在する。後者の場合、端面から50mm以内の範囲にある任意の1点において屈曲部を有することがより好ましく、端面から30mm以内の範囲にある任意の1点において屈曲部を有することがさらに好ましい。
【0038】
曲面カバーガラスをなすガラス板状体の屈曲部が、Y軸方向にもその表面が屈曲している場合、視認性の向上の観点からは、曲面カバーガラスをなすガラス板状体は、第1面のうち、少なくとも、端面と隣接する部位における少なくとも1点において、若しくは、端面から100mmの範囲内にある少なくとも1点において、第2曲率半径R
2が300〜10000mmの範囲内であることが好ましい。ここで、前者は、第1面における屈曲部と、端面と、が接続している場合であり、後者は、第1面における屈曲部と、端面と、が接続していない場合である。後者では、第1面における屈曲部と、端面と、の間に、略平坦部若しくは特異屈曲部が存在する。後者の場合、端面から50mm以内の範囲にある任意の1点において、第2曲率半径R
2が300〜10000mmの範囲内であることがより好ましく、端面から30mm以内の範囲にある任意の1点において、第2曲率半径R
2が300〜10000mmの範囲内であることがさらに好ましい。
【0039】
本実施形態の曲面カバーガラスは、曲面カバーガラスをなすガラス板状体の第1面の二次元投影形状における最大長が50mm以上1000mm以下であることが、屈曲部を設けることによる視認性の向上の効果が顕著となるため好ましく、200mm以上700mm以下であることがより好ましく、300mm以上600mm以下であることがさらに好ましい。ここで、ガラス板状体の二次元投影形状における最大長とは、曲面カバーガラスをなすガラス板状体の第1面を二次元平面に任意の方向から投影して得られた平面図形のうち面積が最大のものについて、該平面図形の輪郭上の任意の2点を結ぶ直線のうち最大の直線の長さ、を指す。該二次元投影形状における最大長が50mm以上1000mm以下であることで、自動車用内装部材若しくはディスプレイ装置等のカバーガラスとして使用する場合に二次元投影形状が小さすぎず、なおかつ利用者からの視野角が横方向及び/または縦方向に広がりすぎなくなる。
【0040】
本実施形態の曲面カバーガラスは、自動車用内装部材若しくはディスプレイ装置等のカバーガラスとして必要な機械的強度及び耐擦傷性を確保するため、曲面カバーガラスをなすガラス板状体が化学強化されている。化学強化ガラスであるガラス板状体は、化学強化することで、表面に圧縮応力層を形成し、強度及び耐擦傷性が高められている。化学強化は、ガラス転移点以下の温度で、イオン交換によりガラス表面のイオン半径が小さなアルカリ金属イオン(典型的には、LiイオンまたはNaイオン)を、イオン半径のより大きなアルカリ金属イオン(典型的には、Kイオン)に交換することで、ガラス表面に圧縮応力層を形成する処理である。化学強化処理は従来公知の方法によって実施できる。
【0041】
曲面カバーガラスをなすガラス板状体のガラス組成は、化学強化処理が可能である限り特に限定されず、例えば、ソーダライムシリケートガラス、アルミノシリケートガラス、ボレートガラス、リチウムアルミノシリケートガラス、ホウ珪酸ガラスが挙げられる。
【0042】
曲面カバーガラスをなすガラス板状体は、化学強化処理を適切に行うため、そのガラス組成におけるLi
2OとNa
2Oの含有量の合計が12モル%以上であることが好ましい。さらに、ガラス組成におけるLi
2Oの含有率が増加するにしたがって、ガラス転移点下がり、成形が容易となるため、Li
2Oの含有率を0.5モル%以上とすることが好ましく、1.0モル%以上とすることがより好ましく、2.0モル%以上とすることがさらに好ましい。さらに、表面圧縮応力(Compressive Stress: CS)及び圧縮応力層深さ(Depth of Layer: DOL)を大きくするため、ガラス板状体のガラス組成がSiO
2を60モル%以上、Al
2O
3を8モル%以上含有することが好ましい。なお、曲面カバーガラスをなすガラス板状体は、第1面における表面圧縮応力の最大値が600MPa以上であることが好ましく、圧縮応力層深さは10μm以上であることが好ましい。表面圧縮応力及び圧縮応力層深さを当該範囲とすることにより、優れた強度と耐擦傷性が得られる。
【0043】
曲面カバーガラスをなすガラス板状体のガラス組成の具体例としては、モル%で表示した組成で、SiO
2を50〜80%、Al
2O
3を0.1〜25%、Li
2O+Na
2O+K
2Oを3〜30%、MgOを0〜25%、CaOを0〜25%及びZrO
2を0〜5%含むガラスが挙げられるが、特に限定されない。より具体的には、以下のガラスの組成が挙げられる。なお、例えば、「MgOを0〜25%含む」とは、MgOは必須ではないが25%まで含んでもよい、の意である。(i)のガラスはソーダライムシリケートガラスに含まれ、(ii)及び(iii)のガラスはアルミノシリケートガラスに含まれる。
【0044】
(i)モル%で表示した組成で、モル%で表示した組成で、SiO
2を63〜73%、Al
2O
3を0.1〜5.2%、Na
2Oを10〜16%、K
2Oを0〜1.5%、Li
2Oを0〜5.0%、MgOを5〜13%及びCaOを4〜10%を含むガラス
(ii)モル%で表示した組成が、SiO
2を50〜74%、Al
2O
3を1〜10%、Na
2Oを6〜14%、K
2Oを3〜11%、Li
2Oを0〜5.0%、MgOを2〜15%、CaOを0〜6%及びZrO
2を0〜5%含有し、SiO
2及びAl
2O
3の含有量の合計が75%以下、Na
2O及びK
2Oの含有量の合計が12〜25%、MgO及びCaOの含有量の合計が7〜15%であるガラス
(iii)モル%で表示した組成が、SiO
2を68〜80%、Al
2O
3を4〜10%、Na
2Oを5〜15%、K
2Oを0〜1%、Li
2Oを0〜5.0%、MgOを4〜15%及びZrO
2を0〜1%含有するガラス(iv)モル%で表示した組成が、SiO
2を67〜75%、Al
2O
3を0〜4%、Na
2Oを7〜15%、K
2Oを1〜9%、Li
2Oを0〜5.0%、MgOを6〜14%及びZrO
2を0〜1.5%含有し、SiO
2及びAl
2O
3の含有量の合計が71〜75%、Na
2O及びK
2Oの含有量の合計が12〜20%であり、CaOを含有する場合その含有量が1%未満であるガラス。
【0045】
本実施形態において、曲面カバーガラスをなすガラス板状体は、平板状の板ガラスから所定の形状に成形することが好ましい。使用する成形法としては、自重成形法、真空成形法、プレス成形法から、成形後のガラス板状体の形状に応じて、所望の成形法を選択すればよい。
自重成形法は、成形後のガラス板状体の形状に応じた所定の金型上に板ガラスを設置した後、該板ガラスを軟化させて、重力により板ガラスを曲げて金型になじませて、所定の形状に成形する方法である。
真空成形法は、板ガラスを軟化させた状態で板ガラスの表裏面に差圧を与えて、板ガラスを曲げて金型になじませて、所定の形状に成形する方法である。真空成形法では、成形後のガラス板状体の形状に応じた所定の金型上に板ガラスを設置し、該板ガラス上にクランプ金型を設置し、板ガラスの周辺をシールした後、金型と板ガラスとの空間をポンプで減圧することにより、板ガラスの表裏面に差圧を与える。この際に、補助的に、板ガラスの上面側を加圧してもよい。
プレス成形は、成形後のガラス板状体の形状に応じた所定の金型(下型、上型)間に板ガラスを設置し、板ガラスを軟化させた状態で、上下の金型間にプレス荷重を加えて、板ガラスを曲げて金型になじませて、所定の形状に成形する方法である。
中でも真空成形法は、曲面カバーガラスをなすガラス板状体を所定の形状に成形する方法として特に好ましい。真空成形法によれば、ガラス板状体の対向する二つの主面のうち、一方の主面は成形型と接触せずに成形できるため、傷、へこみなどの凹凸状欠点を減らせる。この成形型と接触しない側の主面を第1面とすることで、第1面における特異屈曲部を単位面積1mm
2あたり10箇所以下とすることができ、視認性向上の観点から好ましい。
なお、成形後のガラス板状体の形状に応じて、2種以上の成形法を併用してもよい。
また成形後のガラス板状体を再加熱(アニール)し、ガラス板状体に残る残留歪みを除いてもよい。これにより、残留歪みの少ないガラスが得られるだけでなく、この後に実施する化学強化工程において、均一な化学強化を達成できる。
【0046】
上述した手順で所定の形状に成形したガラス板状体の屈曲部に形成される開口部若しくは凹部は、研削部に砥石を備えたドリルを、回転軸を中心として自転させるとともに、らせんを描くようにガラス板状体の第1面と第2面とを連通する軸を中心として公転運動させることで形成できる。ここで、ドリルがらせんを描く際のピッチ(1公転毎にドリルが前進する距離)が0.1〜5mmであることが好ましく、0.2〜4mmであることがより好ましく、0.3〜3mmであることがさらに好ましい。また、公転運動の半径は、開口部15または凹部16、17の二次元投影形状における最大径×0.1以上が好ましい。
ドリルを用いて形成される開口部若しくは凹部は、その端面が鋭いエッジを持った状態となるため、その端面、すなわち、開口部の第1面側の端面及び第2面側の端面、凹部の第1面側の端面には面取り加工やエッチングを施すことが好ましい。
他の工程として、開口部若しくは凹部を形成(孔あけ工程)した後に、化学強化工程を実施してもよい。これにより、開口部または凹部を形成した後に化学強化が実施されるため、孔の端面も化学強化され高強度の曲面カバーガラスが得られる。さらに孔あけ工程後、孔の端面を面取りや研磨を実施してもよい。これにより強度に関わるクラックを除去できより高強度の曲面カバーガラスが得られる。但し、強度を要求されない曲面カバーガラスでは、化学強化工程後に孔あけ加工しても良い。さらには、印刷を実施してもよく、この印刷工程は前記いずれの工程の前後に実施してもよい。
【0047】
曲面カバーガラスをなすガラス板状体には、自動車用内装部材若しくはディスプレイ装置等のカバーガラスとして使用する際に表示面となるガラス板状体の第1面に、必要に応じて各種機能膜を形成してもよい。このような機能膜の具体例としては、防眩膜、反射防止膜、防汚膜が挙げられる。これら機能膜は、ガラス板状体の第1面のうち、少なくとも屈曲部に設けられる。
ガラス板状体の第1面に防眩膜が形成されている場合、第1面の屈曲部のヘイズが40%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、20%以下であることがさらに好ましい。ヘイズ値が40%以下であれば、コントラストの低下が充分に抑えられる。
ガラス板状体の第1面に防汚膜が形成されている場合、第1面の屈曲部の静止摩擦係数が1.0以下であることが好ましく、0.9以下であることがより好ましく、0.8以下であることがさらに好ましい。静止摩擦係数が1.0以下であれば、人間の指が第1面の屈曲部に触れる際に指滑り性が良い。また、第1面の屈曲部の動摩擦係数が0.02以下であることが好ましく、0.015以下であることがより好ましく、0.01以下であることがさらに好ましい。動摩擦係数が0.02以下であれば、人間の指が第1面の屈曲部に触れる際に指滑り性が良い。
【0048】
本発明のガラスは、外装部材にも内装部材にも使用でき、ディスプレイ装置やタッチパネル、センサー等のような電子機器の外表面に設けられるカバーガラスをはじめ、電子機器に限らず装飾品、建材、家具、自動車の操作パネル、エンブレム、内装品の外表面に設けられてもよい。
【0049】
本出願は、2015年2月25日出願の日本特許出願2015−35183に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。