(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記式1で表される反応性ケイ素基、活性水素含有基又は不飽和基のいずれかである末端基を1つの主鎖末端に1個有し、かつ1つの主鎖末端に平均して反応性ケイ素基を0.5個超1.0個以下有するオキシアルキレン重合体をさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
1つの主鎖末端における末端基が、不活性な1価の有機基であり、1つの主鎖末端に平均して前記式1で表される反応性ケイ素基を0個超0.5個以下有するオキシアルキレン重合体をさらに含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書における用語の定義は以下である。
「〜」で表される数値範囲は、〜の前後の数値を下限値及び上限値とする数値範囲を意味する。
重合体を構成する「単位」とは単量体の重合により直接形成された原子団を意味する。
「オキシアルキレン重合体」とは、アルキレンオキシド単量体に基づく単位から形成される重合鎖を有する重合体を意味する。
「主鎖末端」とは、主鎖を構成する末端の原子に結合している原子団を意味する。
「(メタ)アクリル酸エステル重合体」とは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに基づく単位から形成される重合鎖を有する重合体を意味する。
「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸及びメタクリル酸の一方又は両方を意味する。
【0012】
末端基としての「不飽和基」は、炭素−炭素不飽和結合を含む1価の基である。
「活性水素含有基」は、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、第二級アミノ基、ヒドラジド基及びスルファニル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基である。
「活性水素」とは、上記活性水素含有基に基づく水素原子である。
「シリル化率」は、重合体の主鎖末端に導入された、反応性ケイ素基、活性水素含有基又は不飽和基のいずれかである末端基の数の合計に対する上記反応性ケイ素基の数の割合である。シリル化率の値はNMR分析によって測定できる。また、後述のシリル化剤により、重合体の主鎖末端に上記反応性ケイ素基を導入する際の、主鎖末端における末端基の数に対する添加した上記シリル化剤のシリル基の数の割合(モル%)でもよい。
「シリル化剤」とは、活性水素含有基又は不飽和基と反応する官能基と反応性ケイ素基とを有する化合物を意味する。
数平均分子量(以下、「Mn」と記す)及び重量平均分子量(以下、「Mw」と記す)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定によって得られるポリスチレン換算分子量である。分子量分布は、MwとMnより算出した値であり、Mnに対するMwの比率である。
【0013】
本発明の硬化性組成物は、1つの主鎖末端に平均して1.0個より多くの下記反応性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体(以下、「重合体A」という。)と、主鎖末端に下記反応性ケイ素基を有し、分子量分布が1.8以下である(メタ)アクリル酸エステル重合体(以下、「重合体B」という。)を含む。
さらに、主鎖末端における末端基が、下記反応性ケイ素基、活性水素含有基又は不飽和基のいずれかであり、1つの主鎖末端に平均して下記反応性ケイ素基を0.5個超1.0個以下有するオキシアルキレン重合体(以下、「重合体C」という。)を含んでよい。
さらに、1つの主鎖末端における末端基が不活性な1価の有機基であり、1つの主鎖末端に平均して下記反応性ケイ素基を0個超0.5個以下有するオキシアルキレン重合体(以下、「重合体D」という。)を含んでよい。
硬化性組成物中に共存する重合体A、重合体B、重合体C及び重合体Dのそれぞれの反応性ケイ素基は互いに同じでもよく、異なってもよい。
【0014】
<反応性ケイ素基>
反応性ケイ素基は、下式1で表わされる。反応性ケイ素基は、ケイ素原子に結合した水酸基又は加水分解性基を有し、シロキサン結合を形成して架橋し得る。シロキサン結合を形成する反応は硬化触媒によって促進される。
−SiX
aR
3−a 式1
【0015】
式1において、Rは炭素数1〜20の1価の有機基を示す。Rは加水分解性基を含まない。
Rは、炭素数1〜20の炭化水素基及びトリオルガノシロキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0016】
Rは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、α−クロロアルキル基及びトリオルガノシロキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、α−クロロメチル基、トリメチルシロキシ基、トリエチルシロキシ基及びトリフェニルシロキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。反応性ケイ素基を有する重合体の硬化性と安定性のバランスが良い点からメチル基又はエチル基が好ましい。硬化物の硬化速度が速い点からα−クロロメチル基が好ましい。容易に入手できる点からメチル基が特に好ましい。
【0017】
式1において、Xは水酸基又は加水分解性基を示す。
加水分解性基としては、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、スルファニル基、アルケニルオキシ基が例示できる。
加水分解性が穏やかで取扱いやすい点からアルコキシ基が好ましい。アルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基が好ましく、メトキシ基又はエトキシ基がより好ましい。アルコキシ基がメトキシ基又はエトキシ基であると、シロキサン結合を速やかに形成し硬化物中に架橋構造を形成しやすく、硬化物の物性値が良好となりやすい。
【0018】
式1において、aは1〜3の整数を示す。aが1の場合、Rは互いに同一でも異なってもよい。aが2以上の場合、Xは互いに同一でも異なってもよい。
aは1又は2が好ましく、aは2がより好ましい。
【0019】
式1で表される反応性ケイ素基としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、トリス(2−プロペニルオキシ)シリル基、トリアセトキシシリル基、ジメトキシメチルシリル基、ジエトキシメチルシリル基、ジメトキシエチルシリル基、ジイソプロポキシメチルシリル基、(α−クロロメチル)ジメトキシシリル基、(α−クロロメチル)ジエトキシシリル基が例示できる。活性が高く良好な硬化性が得られる点から、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、ジメトキシメチルシリル基、ジエトキシメチルシリル基が好ましく、ジメトキシメチルシリル基及びトリメトキシシリル基がより好ましい。
【0020】
<重合体A>
本発明の硬化性組成物に含まれる重合体Aは1種でもよく、2種類以上でもよい。
重合体Aの主鎖は、1種以上のアルキレンオキシド単量体の重合により形成されたオキシアルキレン重合体からなる重合鎖である。2種以上のアルキレンオキシド単量体の重合により形成された共重合鎖である場合、それらのアルキレンオキシド単量体は、ブロック重合体を形成していてもよくランダム重合体を形成していてもよい。
オキシアルキレン重合体からなる重合鎖として、エチレンオキシド単量体からなる重合鎖、プロピレンオキシド単量体からなる重合鎖、ブチレンオキシド単量体からなる重合鎖、テトラメチレンオキシド単量体からなる重合鎖、エチレンオキシド単量体とプロピレンオキシド単量体の共重合鎖、プロピレンオキシド単量体とブチレンオキシド単量体の共重合鎖が例示できる。特にプロピレンオキシド単量体からなる重合鎖が好ましい。
【0021】
重合体Aは、少なくとも1つの主鎖末端が下式2で表される原子団であることが好ましい。
【0023】
式2において、R
1,R
3はそれぞれ独立に2価の炭素数1〜6の結合基を示し、結合基中の炭素原子に結合している原子は、炭素原子、水素原子、酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子である。
R
1、R
3としては−CH
2−、−C
2H
4−、−C
3H
6−、−C
4H
8−、−C
5H
10−、−C
6H
12−、−C(CH
3)
2−、−CH
2−O−CH
2−、−CH
2−O−CH
2−O−CH
2、−C=C−、−C≡C−、−CO−、−CO−O−、−CO−NH−、−CH=N−、−CH=N−N=CH−が例示できる。
R
1は−CH
2OCH
2−、−CH
2O−、−CH
2−が好ましく、―CH
2OCH
2−がより好ましい。
R
3は、−CH
2−、−C
2H
4−が好ましく、−CH
2−がより好ましい。
【0024】
式2において、R
2,R
4はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を示す。上記炭化水素基としては、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜10のアルキル基が好ましい。
直鎖状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基が例示できる。
分岐状のアルキル基としては、イソプロピル基、s−ブチル基、t−ブチル基、2−メチルブチル基、2−エチルブチル基、2−プロピルブチル基、3−メチルブチル基、3−エチルブチル基、3−プロピルブチル基、2−メチルペンチル基、2−エチルペンチル基、2−プロピルペンチル基、3−メチルペンチル基、3−エチルペンチル基、3−プロピルペンチル基、4−メチルペンチル基、4−エチルペンチル基、4−プロピルペンチル基、2−メチルヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−プロピルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、3−エチルヘキシル基、3−プロピルヘキシル基、4−メチルヘキシル基、4−エチルヘキシル基、4−プロピルヘキシル基、5−メチルヘキシル基、5−エチルヘキシル基、5−プロピルヘキシル基が例示できる。
R
2、R
4は、それぞれ、水素原子、メチル基、エチル基が好ましく、水素原子又はメチル基がより好ましい。
【0025】
式2において、nは1〜10の整数を示す。nは1〜7が好ましく、1〜5がより好ましく、1がさらに好ましい。
【0026】
式2において、R
5はそれぞれ独立に、炭素数1〜20の1価の有機基であって、加水分解性基以外の有機基を示し、Yはそれぞれ独立に水酸基又は加水分解性基を示す。bは1〜3の整数である。R
5が複数存在する場合、R
5は互いに同一でも異なってもよい。Yが複数存在する場合、Yは互いに同一でも異なってもよい。
式2のR
5は、式1のRと同様である。
式2のYは、式1のXと同様である。
式2のbは式1のaと同様である。
【0027】
重合体Aは、1つの主鎖末端に平均して上記反応性ケイ素基を1.0個超4.0個以下有するものが好ましく、伸び物性の観点から、1.1〜3.0個であるものがより好ましく、1.2〜2.0個であるものがさらに好ましい。
重合体Aは、主鎖末端に、2個以上の反応性ケイ素基を含む構造を有することが好ましい。
1つの主鎖末端に含まれる2価以上の原子の合計数は、80個以下が好ましく、50個以下がより好ましく、40個以下がさらに好ましい。
1つの主鎖末端に含まれる2価以上の原子の合計数は、1個以上が好ましく、4個以上がより好ましく、10個以上がさらに好ましく、20個以上が特に好ましい。
2価以上の原子としては、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子及びケイ素原子から選ばれる1種以上が好ましく、炭素原子、窒素原子、酸素原子及びケイ素原子から選ばれる1種以上がより好ましく、炭素原子、酸素原子及びケイ素原子から選ばれる1種以上がより好ましい。
【0028】
重合体AのMnは2,000〜100,000が好ましく、3,000〜50,000がより好ましく、4,000〜30,000がさらに好ましい。上記範囲の下限値以上であると、重合体Aの質量あたりの反応性ケイ素基の導入量が多くなりすぎず、伸び物性が優れやすい点で好ましい。上限値以下であると、粘度が充分に低くなり作業性に優れやすい点で好ましい。
重合体Aの分子量分布は1.8以下が好ましい。粘度低減の点から、分子量分布は小さいほうが好ましく、1.5以下がより好ましく、1.4以下がさらに好ましく、1.2以下が特に好ましい。
【0029】
重合体Aは、1分子中に主鎖末端を2〜8個有するものが好ましく、2〜6個有するものがより好ましく、2個又は3個有するものがさらに好ましく、2個有するものが特に好ましい。
重合体Aは、1分子中に主鎖末端を2個有し、各主鎖末端に上記式1で表される反応性ケイ素基、活性水素含有基又は不飽和基のいずれかである末端基を2個有することが好ましく、さらに1分子中に上記末端基を4個以上有し、シリル化率が50モル%超100モル%以下であることが好ましい。
上記末端基を、1つの主鎖末端に2個有しており、1分子中に上記末端基を4個有する場合、分子量とシリル化率が同じであれば、上記末端基を、1つの主鎖末端に1個有しており、1分子中に上記末端基を4個有する重合体と比較して伸び物性が大きくなる傾向がある。
【0030】
重合体Aは、前駆重合体の1つの主鎖末端に平均して上記反応性ケイ素基を1個より多く導入して得られる。
重合体Aの製造方法は、前駆重合体の1つの主鎖末端に平均して不飽和基を1.0個よりも多く導入した後、上記不飽和基とシリル化剤を反応させる方法が好ましい。
前駆重合体は、活性水素含有基を有する開始剤の活性水素に、開環重合触媒の存在下で、アルキレンオキシド単量体を開環付加重合させたオキシアルキレン重合体である。開始剤の活性水素の数と、前駆重合体の主鎖末端の数と、重合体Aの主鎖末端の数は同じである。
前駆重合体は、水酸基を有する開始剤にアルキレンオキシド単量体を開環付加重合させた、主鎖末端の末端基が水酸基である重合体が好ましい。
上記開始剤としては、水酸基を2〜8個有する開始剤が好ましく、水酸基を2〜6個有する開始剤がより好ましく、水酸基を2個有する開始剤又は水酸基を3個有する開始剤がさらに好ましい。開始剤は1種類を単独で使用してもよく2種類以上を併用してもよい。
水酸基を2個有する開始剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、低分子量のポリオキシプロピレングリコールが例示できる。
水酸基を3個有する開始剤としては、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ソルビトール、ペンタエリスリトール、低分子量のポリオキシプロピレントリオールが例示できる。
重合体Aの主鎖は、硬化物の伸び物性に優れる点から直鎖状が好ましい。そのために、開始剤としては、活性水素含有基を2個有する化合物が好ましく、水酸基を2個有する化合物がより好ましい。
【0031】
上記前駆重合体を得る際の、開始剤にアルキレンオキシド単量体を開環付加重合させる触媒としては、従来公知の触媒を用いることができ、例えば、KOHのようなアルカリ触媒、有機アルミニウム化合物とポルフィリンとを反応させて得られる錯体のような遷移金属化合物−ポルフィリン錯体触媒、複合金属シアン化物錯体触媒、ホスファゼン化合物からなる触媒が挙げられる。
複合金属シアン化物錯体触媒を用いて上記前駆重合体を得る場合、得られる重合体の分子量分布が狭くすることができ、粘度の低い硬化性組成物が得られやすい点から好ましい。複合金属シアン化物錯体は、従来公知の化合物を用いることができ、複合金属シアン化物錯体を用いた重合体の製造方法も公知の方法を採用することができる。例えば、国際公開第2003/062301号、国際公開報第2004/067633号、特開2004−269776号公報、特開2005−15786号公報、国際公開第2013/065802号、特開2015−010162号公報などに開示される化合物及び製造方法を用いることができる。
【0032】
前駆重合体の1つの主鎖末端に平均して不飽和基を1.0個よりも多く導入する方法としては、前駆重合体に、アルカリ金属塩を作用させた後、不飽和基を有するエポキシ化合物を反応させ、次いで不飽和基を有するハロゲン化炭化水素化合物を反応させる方法が好ましい。
不飽和基を有するエポキシ化合物としては、下式3で表される化合物が好ましい。
【0034】
式3のR
1,R
2は、式2のR
1,R
2と同じである。
不飽和基を有するエポキシ化合物としては、アリルグリシジルエーテル、メタリルグリシジルエーテル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ブタジエンモノオキシド、1,4−シクロペンタジエンモノエポキシドが例示できる。アリルグリシジルエーテルが好ましい。
【0035】
前駆重合体の1つの主鎖末端に不飽和基を1個よりも多く導入する方法としては、公知の方法を特に制限なく用いることができ、例えば、国際公開第2013/180203号公報、国際公開第2014/192842号公報、特開2015−105293号、特開2015−105322号、特開2015−105323号、特開2015−105324号、国際公開第2015/080067号公報、国際公開第2015/105122号公報、国際公開第2015/111577号公報、国際公開第2016/002907号公報、特開2016−216633号、特開2017−39782号に記載される方法を用いることができる。
【0036】
上記反応により、前駆重合体の主鎖末端に上記不飽和基を有するエポキシ化合物に由来する不飽和基が導入され、次いで上記ハロゲン化炭化水素化合物に由来する不飽和基が導入された中間体が得られる。中間体は主鎖末端における末端基の一部が未反応の活性水素含有基であってもよい。
上記中間体の1分子中に含まれる活性水素含有基の数は、貯蔵安定性の点から0.3個以下が好ましく、0.1個以下がより好ましい。
【0037】
上記中間体の不飽和基とシリル化剤とを反応させて、主鎖末端に反応性ケイ素基を導入して重合体Aを得る。
シリル化剤としては、不飽和基と反応して結合を形成し得る基(例えばスルファニル基)及び上記反応性ケイ素基の両方を有する化合物、ヒドロシラン化合物(例えばHSiX
aR
3−a、ただし、X、R、aは上記式1と同じである。)が例示できる。具体的には、例えば、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリイソプロポキシシラン、トリス(2−プロペニルオキシ)シラン、トリアセトキシシラン、ジメトキシメチルシラン、ジエトキシメチルシラン、ジメトキシエチルシラン、ジイソプロポキシメチルシラン、(α−クロロメチル)ジメトキシシラン、(α−クロロメチル)ジエトキシシランが例示できる。活性が高く良好な硬化性が得られる点から、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、ジメトキシメチルシラン、ジエトキシメチルシランが好ましく、ジメトキシメチルシラン又はトリメトキシシランがより好ましい。
【0038】
上記反応により、主鎖末端における末端基は上記反応性ケイ素基、活性水素含有基又は不飽和基のいずれかであり、1つの主鎖末端に平均して上記反応性ケイ素基を1個より多く有する重合体Aが得られる。
重合体Aの「シリル化率」は、50モル%超100モル%以下が好ましく、60〜97モル%がより好ましく、65〜95モル%がさらに好ましい。
1つの主鎖末端に上記末端基を2個有する場合、シリル化率が50%超であれば、上記1つの主鎖末端に平均して反応性ケイ素基が1.0個より多く存在する。
シリル化率は、上記中間体の不飽和基に対して反応させる上記反応性ケイ素基含有化合物の量によって調整することができる。
硬化性組成物が、2種以上の重合体Aを含む場合、重合体A全体における平均のシリル化率が上記の範囲内であればよい。
【0039】
硬化性組成物に含まれる重合体Aの含有割合は、硬化性組成物に対して、1〜80質量%が好ましく、3〜60質量%がより好ましく、5〜40質量%がさらに好ましい。重合体Aの含有量が上記範囲の下限値以上であると機械的強度に優れやすく、上限値以下であると伸び物性に優れやすい。
【0040】
<重合体B>
本発明の硬化性組成物に含まれる重合体Bは1種でもよく、2種類以上でもよい。
重合体Bの主鎖は(メタ)アクリル酸エステルを含む単量体を重合して形成される。重合体Bの主鎖は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに基づく単位のほかに、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な不飽和基を有する単量体に基づく単位を有してもよい。
重合体Bを構成する単量体としては、例えば、特公平3−14068号公報、特開平6−211922号公報、特開平11−130931号公報に記載される、従来公知の単量体を用いることができる。
重合体Bを構成する全単量体に対して、(メタ)アクリル酸エステル単量体は50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、100質量%でもよい。
【0041】
重合体Bの重合方法は、上記文献に記載される従来公知の方法を用いることができ、分子量分布が狭く、低粘度の重合体が得られることから、リビングラジカル重合が好ましい。
リビングラジカル重合法は、例えば、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエティー(J.Am.Chem.Soc.)、1994年、116巻、7943頁に示されているようなコバルトポルフィリン錯体を用いるもの、特表2003−500378号公報に示されているようなニトロオキサイドラジカルを用いるもの、特開平11−130931号公報に示されているような有機ハロゲン化物やハロゲン化スルホニル化合物などを開始剤とし、遷移金属錯体を触媒とする原子移動ラジカル重合(Atom Transfer Radical Polymerization:ATRP法)が挙げられる。
【0042】
重合体BのMnは、10,000〜100,000が好ましく、15,000〜80,000がより好ましい。上記範囲の下限値以上であると、硬化物の伸び物性に優れやすく、上限値以下であると、作業性に優れやすい。
重合体Bの分子量分布は、1.8以下であり、1.7以下が好ましい。
重合体Bは、1分子中に反応性ケイ素基を1個以上有する。少なくとも1個の主鎖末端における末端基は反応性ケイ素基であることが好ましい。全主鎖末端における末端基が反応性ケイ素基であることがより好ましい。全主鎖末端における末端基が反応性ケイ素基であり、かつ1分子中に存在する反応性ケイ素基の全部が主鎖末端における末端基であることがさらに好ましい。すなわち、重合体Bは側鎖に導入された反応性ケイ素基を有しないことが好ましい。
【0043】
重合体Bの1分子あたりの反応性ケイ素基の数の平均は1.0個以上であることが好ましい。硬化後の強度の点から1.2個以上が好ましく、1.6個以上がより好ましい。硬化物の伸びが良好となる点から4.0個以下が好ましく、3.0個以下がより好ましい。
重合体Bの1分子あたりの反応性ケイ素基の数の平均は「重合体B中の反応性ケイ素基の濃度[mol/g]×重合体BのMn」で算出される。重合体B中の反応性ケイ素基の濃度[mol/g]は、NMRにより測定できる。
【0044】
硬化性組成物に含まれる重合体Bの含有量は、重合体Aの100質量部に対して、5〜200質量部が好ましく、10〜180質量部がより好ましく、15〜150質量部がさらに好ましい。重合体Bの含有量が上記範囲の下限値以上であると機械強度や耐候性に優れやすく、上限値以下であると粘度が低くなりやすく、作業性に優れやすい。
【0045】
<重合体C>
硬化性組成物に含まれる重合体Cは1種でもよく、2種以上でもよい。
重合体Cの主鎖の例示は、重合体Aの主鎖の例示と同じである。
【0046】
重合体Cは、伸び物性の観点から、1つの主鎖末端に平均して上記反応性ケイ素基を0.55〜0.97個有するものが好ましく、0.65〜0.95個有するものがより好ましい。
重合体CのMnは2,000〜100,000が好ましく、3,000〜50,000がより好ましく、4,000〜30,000がさらに好ましい。上記範囲の下限値以上であると、硬化物の伸び物性に優れやすく、上限値以下であると、粘度が充分に低くなりやすく作業性に優れやすい。
重合体Cの分子量分布は1.8以下が好ましい。粘度低減の点から、分子量分布は小さいほうが好ましく、1.5以下がより好ましく、1.4以下がさらに好ましく、1.2以下が特に好ましい。
【0047】
重合体Cは、上記式1で表される反応性ケイ素基、活性水素含有基又は不飽和基のいずれかである末端基を、1つの主鎖末端に1個有しており、かつ1分子中に上記末端基を2個以上有することが好ましく、上記末端基を2個有することがより好ましい。
重合体Cは、前駆重合体の1つの主鎖末端に平均して上記反応性ケイ素基を0.5個超1.0個以下導入して得られる。
重合体Cの製造方法は、前駆重合体の一つの主鎖末端に平均して不飽和基を0.5個超1.0個以下導入した後、不飽和基とシリル化剤を反応させる方法が好ましい。
重合体Cの前駆重合体は、重合体Aの前駆重合体と同様のものを用いることができ、好ましい態様も同様である。また、上記前駆重合体は、重合体Aの前駆重合体と同様の方法で製造することができる。
【0048】
重合体Cの製造方法は、従来公知の方法を用いることができ、例えば、特公昭45−36319号、特開昭50−156599号、特開昭61−197631号、特開平3−72527号、特開平8−231707号、米国特許3632557、米国特許4960844等の各公報に提案されている方法が挙げられる。
【0049】
重合体Cは2個以上の末端基を有し、末端基として上記反応性ケイ素基を有し、1つの主鎖末端に平均して反応性ケイ素基を0.5個超1.0個以下有するものが好ましい。
重合体Cは、1つの主鎖末端に平均して、反応性ケイ素基以外の末端基として、未反応の活性水素含有基又は不飽和基を1.0個有していてもよい。
重合体Cは、反応性ケイ素基、活性水素含有基又は不飽和基のいずれかである末端基を、1分子中に2個以上有するものが好ましい。
重合体Cは、反応性ケイ素基、活性水素含有基又は不飽和基のいずれかである末端基を1つの主鎖末端に1個有するものが好ましい。
重合体Cのシリル化率は50モル%超100モル%以下が好ましく、60〜97モル%がより好ましく、65〜95モル%がさらに好ましい。
硬化性組成物が、2種以上の重合体Cを含む場合、重合体C全体における平均のシリル化率が上記の範囲内であればよい。
【0050】
硬化性組成物が重合体Cを含む場合の重合体Cの含有量は、重合体Aの100質量部に対して、5〜300質量部が好ましく、10〜200質量部がより好ましく、15〜100質量部がさらに好ましい。上記範囲の下限値以上であると伸び物性に優れ、上限値以下であると強度物性に優れている。
また重合体B/重合体Cで表される質量比は、100/1〜1/100が好ましく、100/10〜10/100がより好ましく、100/20〜20/100がさらに好ましい。上記範囲内であると、低粘度となりやすく、作業性が良好となりやすく、良好な機械強度が得られやすい。
【0051】
<重合体D>
本発明の硬化性組成物は、重合体Dを含んでもよい。重合体Dは1種でもよく、2種類以上でもよい。重合体Dは反応性可塑剤として働き、硬化性組成物の低粘度化及び塗料汚染性の向上に寄与する。
重合体Dの主鎖の例示は、重合体Aの主鎖の例示と同じである。
重合体Dは、1つの主鎖末端に平均して上記反応性ケイ素基を0.23〜0.5個有するものが好ましく、伸び物性の観点から、0.27〜0.43個であるものがより好ましい。
【0052】
重合体DのMnは2,000〜12,000が好ましく、2,200〜10,000がより好ましく、2,500〜9,000がさらに好ましい。上記範囲内であると、硬化物の伸び物性に優れやすく、硬化物の塗料汚染性に優れやすい。
重合体Dの分子量分布は1.8以下が好ましい。粘度低減の点から、分子量分布は小さいほうが好ましく、1.6以下がより好ましく、1.5以下がさらに好ましく、1.4以下が特に好ましい。
【0053】
重合体Dは、1つの主鎖末端における末端基が不活性な1価の有機基である前駆重合体に、1つの主鎖末端に平均して上記反応性ケイ素基を0個超0.5個以下導入して得られる。
不活性な1価の有機基としては、例えばR
10−O−(R
10は1価の炭化水素基)が挙げられる。R
10としては、炭素数1〜20の分岐状又は直鎖状のアルキル基が好ましく、炭素数1〜10の分岐状又は直鎖状のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜4の分岐状又は直鎖状のアルキル基がさらに好ましく、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−ブチル基又はt−ブチル基が特に好ましい。
【0054】
重合体Dの前駆重合体は、活性水素含有基を1個有する開始剤を用いる他は、重合体Aの前駆重合体と同様の方法で得られる。開始剤は1種類でもよく2種類以上を併用してもよい。
開始剤の活性水素含有基は水酸基が好ましい。前駆重合体は、主鎖末端における末端基として水酸基を1個有する重合体が好ましい。
水酸基を1個有する開始剤としては、直鎖状又は分岐状の炭化水素基を有する1価のアルコールが好ましい。具体的には、メタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、2-ブタノール、t−ブタノール、2−エチルヘキサノール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデカノール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、低分子量のポリオキシアルキレンモノオールが例示できる。
重合体Dの製造方法は、従来公知の方法を用いることができ、重合体Cと同様の方法を用いることができる。
【0055】
重合体Dは、1分子中に主鎖末端を2個有し、一方の主鎖末端の末端基が上記反応性ケイ素基、活性水素含有基又は不飽和基のいずれかであり、他方の主鎖末端の末端基が開始剤から活性水素を1個除いた残基(不活性な1価の有機基)であるものが好ましく、1分子中の2個の主鎖末端がそれぞれ末端基を1個のみ有し、一方の上記末端基は、上記反応性ケイ素基、活性水素含有基又は不飽和基のいずれかであり、他方の上記末端基は、上記開始剤から活性水素を1個除いた残基であるものがより好ましい。
重合体Dのシリル化率は45〜100モル%が好ましく、50〜97モル%がより好ましく、55〜95%がさらに好ましい。
硬化性組成物が、2種以上の重合体Dを含む場合、重合体D全体における平均のシリル化率が上記の範囲内であればよい。
【0056】
硬化性組成物が重合体Dを含む場合の重合体Dの含有量は、重合体A、重合体B、重合体C及び後述の重合体Eの合計100質量部に対して、1〜600質量部が好ましく、5〜500質量部がより好ましく、10〜300質量部がさらに好ましい。重合体Dの含有量が上記範囲の下限値以上であると低粘度になりやすく、作業性が優れやすく、上限値以下であると耐疲労物性に優れやすい。
【0057】
<重合体E>
本発明の硬化性組成物は、側鎖に導入された反応性ケイ素基を有し、分子量分布が1.8超である(メタ)アクリル酸エステル重合体(以下、「重合体E」という。)を含んでもよい。
重合体Eは、主鎖末端と側鎖のいずれか一方または両方に反応性ケイ素基が導入されていてもよい。
重合体Eとしては、反応性ケイ素基及び不飽和基を含む単量体と、(メタ)アクリル酸エステルを含む単量体を重合させた(メタ)アクリル酸エステル重合体が例示できる。
【0058】
重合体Eは、重合体Bで用いられる単量体を制限なく用いることができる。
上記単量体と共重合させる反応性ケイ素基及び不飽和基を含む単量体としては、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、トリス(2−メトキシエトキシ)ビニルシラン、(メタ)アクリル酸−3−(メチルジメトキシリル)プロピル、(メタ)アクリル酸−3−(トリメトキシシリル)プロピル、(メタ)アクリル酸−3−(トリエトキシシリル)プロピルが例示できる。これらは1種でもよく、2種以上を併用してもよい。
【0059】
重合体Eは、特開2006−257405号公報、特開2006−37076号公報、特開2008−45059号公報などに記載の従来公知の重合方法で重合できる。例えば、ラジカル重合で重合することができる。ラジカル重合の重合方法としては、例えば、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、バルク重合が挙げられる。重合に必要な開始剤などの副資材についても従来公知のものを用いることができ、反応温度や反応圧力などの反応条件も適宜選択できる。
【0060】
重合体EのMnは500〜100,000が好ましく、1,000〜80,000がより好ましく、2,000〜50,000がさらに好ましい。上記範囲の下限値以上であると、硬化物の伸び物性に優れやすく、上限値以下であると、粘度が充分に低くなり作業性に優れやすい。
分子量分布は1.8超5.0以下が好ましく、1.9〜3.5がより好ましく、2.0〜3.5がさらに好ましい。
重合体Eの1分子あたりの反応性ケイ素基の数の平均は0.05〜4個が好ましく、0.1〜3個がより好ましく、0.1〜2個がさらに好ましい。0.05個以上であると硬化物における架橋密度が高く、破断強度に優れやすい。4個以下であると硬化物の伸び物性に優れやすい。
重合体Eの1分子あたりの反応性ケイ素基の数の平均は、重合体Bと同様の方法で測定できる。
【0061】
硬化性組成物が重合体Eを含む場合の重合体Eの含有量は、重合体Bの合計の含有量よりも少なく、かつ、重合体Aの合計100質量部に対して、1〜80質量部が好ましく、2〜60質量部がより好ましく、3〜50質量部がさらに好ましい。上記範囲の下限値以上であると機械強度や耐候性に優れやすく、上限値以下であると低粘度になりやすく、作業性に優れやすい。
【0062】
<重合体F>
本発明の硬化性組成物は、反応性ケイ素基を有しない、Mnが1,000以上の重合体(以下、「重合体F」という。)を1種以上含んでもよい。
重合体Fは、硬化物の表面の汚染低減、硬化物の表面上の塗料の乾燥性向上、塗料表面の汚染低減に寄与する。
重合体Fとしては、飽和炭化水素重合体、(メタ)アクリル酸エステル重合体及びオキシアルキレン重合体からなる群から選ばれる1種以上が好ましい。
【0063】
飽和炭化水素重合体は、主鎖が飽和炭化水素の単量体に基づく単位を含む重合体であり、ポリエチレン、ポリプロピレンが例示できる。
(メタ)アクリル酸エステル重合体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリルを含む単量体の重合体又は共重合体が例示できる。市販の(メタ)アクリル酸エステル重合体としては、ARUFON UP−1000、ARUFON UP−1110、ARUFON UP−1171(いずれも東亜合成社製品名)が例示できる。
オキシアルキレン重合体としては、ポリエーテルポリオール(例えばポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール)、上記ポリエーテルポリオールの水酸基を封止してエステル又はエーテルにした誘導体が例示できる。市販のオキシアルキレン重合体としては、プレミノールS3011、プレミノールS4012、プレミノールS4013F(いずれも旭硝子社製品名)が例示できる。
【0064】
重合体FのMnは、1,000〜40,000が好ましく、1,500〜35,000がより好ましく、2,000〜30,000がさらに好ましい。上記範囲の下限値以上であると熱や降雨による流出防止に優れやすく、上限値以下であると粘度が低く、作業性に優れやすい。
重合体Fの分子量分布は、(メタ)アクリル酸エステル重合体の場合、6.0未満が好ましく、5.5以下がより好ましく、5.0以下がさらに好ましい。オキシアルキレン重合体の場合、2.0未満が好ましく、1.8以下がより好ましく、1.6以下がさらに好ましい。
硬化性組成物が重合体Fを含む場合の重合体Fの含有量は、重合体A、重合体B、重合体C及び重合体Eの合計100質量部に対して、1〜600質量部が好ましく、5〜500質量部がより好ましく、10〜300質量部がさらに好ましい。上記範囲の下限値以上であると、表面の汚染性が低下しやすく、上限値以下であると低粘度となりやすく、作業性に優れやすい。
【0065】
<その他の成分>
硬化性組成物は、上記重合体A〜F以外のその他の成分を含んでもよい。その他の成分としては、硬化性化合物、硬化触媒(シラノール縮合触媒)、充填剤、可塑剤、チキソ性付与剤、安定剤、接着性付与剤、物性調整剤、粘着性付与樹脂、フィラーなどの補強材、表面改質剤(界面活性剤)、難燃剤、発泡剤、溶剤、シリケートが例示できる。
その他の成分は、それぞれ、国際公開第2013/180203号、国際公開第2014/192842号、国際公開第2016/002907号、特開2014−88481号公報、特開2015−10162号公報、特開2015−105293号公報、特開2017−039728号公報、特開2017−214541号公報などに記載される従来公知のものを、制限なく組み合わせて用いることができる。
【0066】
<硬化性組成物>
硬化性組成物は、硬化性組成物に配合する重合体を合成し、得られた重合体と、重合体以外の配合成分を混合して得られる。
硬化性組成物が重合体Eを含む場合、重合体A又は重合体Cの存在下で重合体Eを構成する単量体を重合させてもよい。
硬化性組成物における、重合体A、重合体B、重合体C及び重合体Eの合計の含有割合は、1.05〜84質量%が好ましく、3.3〜66質量%がより好ましく、5.75〜46質量%がさらに好ましい。上記範囲の下限値以上であると、機械強度に優れやすく、上限値以下であると、低粘度となりやすく、伸び物性及び耐疲労性に優れやすい。
硬化性組成物における、重合体Aを100質量部としたときの、(重合体Aの含有量/重合体Bの含有量/重合体Cの含有量/重合体Eの含有量)としては、(100質量部/5〜200質量部/5〜500質量部/5〜200質量部)が好ましく、(100質量部/10〜180質量部/10〜400質量部/10〜180質量部)がより好ましく、(100質量部/15〜150質量部/15〜300質量部/15〜150質量部)がさらに好ましい。上記範囲内であると、機械強度に優れやすく、伸び物性及び耐疲労性に優れやすい。
【0067】
硬化性組成物は、すべての配合成分を予め配合し密封保存して、施工後に空気中の湿気により硬化させる、1成分型でもよく、少なくとも反応性ケイ素基を有する成分を含む主剤組成物と、少なくとも硬化触媒を含む硬化剤組成物とを別々に保存し、使用前に硬化剤組成物と主剤組成物を混合する、2成分型でもよい。
【0068】
1成分型の硬化性組成物は水分を含まないことが好ましい。水分を含む配合成分を予め脱水乾燥するか、また配合混練中に減圧して脱水することが好ましい。
2成分型の硬化性組成物において、硬化剤組成物は水を含んでもよい、主剤組成物は少量の水分を含んでもゲル化し難いが、貯蔵安定性の点からは配合成分を予め脱水乾燥することが好ましい。貯蔵安定性を向上させるために、1成分型の硬化性組成物又は2成分型の主剤組成物にメタノールやエタノールなどの低級アルコールやアルコキシシランなどの従来公知の脱水剤を添加することができる。
【0069】
硬化性組成物の用途としては、シーリング材(例えば建築用弾性シーリング材、複層ガラス用シーリング材、ガラス端部の防錆・防水用封止材、太陽電池裏面封止材、建造物用密封材、船舶用密封材、自動車用密封材、道路用密封材)、電気絶縁材料(電線・ケーブル用絶縁被覆材)、接着剤が好適である。
特に、硬化物の伸び物性及び耐疲労性が要求される用途に好適であり、例えば屋外に施工されるシーリング材が例示できる。
【0070】
本発明の硬化性組成物は、後述の実施例に示されるように、重合体Aと重合体Bとを組み合わせて用いることにより、引張強度、伸び物性及び耐疲労性に優れた硬化物が得られる。
【実施例】
【0071】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例においては、以下の測定方法を用いた。
[Mn及び分子量分布]
東ソー製、HLC−8220GPC(製品名)を用い、テトラヒドロフランを溶離液として、ポリスチレン換算のMwとMnを測定した。これらを用いて分子量分布(以下、「Mw/Mn」と記す。)の値を算出した。
【0072】
[水酸基換算分子量]
JIS K 1557に基づいて算出した水酸基価の値を用いて、「56,100/(水酸基価)×(開始剤の活性水素の数)」の式から算出した。
[シリル化率]
主鎖末端に塩化アリルを用いて不飽和基を導入し、シリル化剤を上記不飽和基と反応させて反応性ケイ素基を導入する方法において、主鎖末端に導入された不飽和基に対する、シリル化剤の反応性ケイ素基の仕込み当量(モル比)をシリル化率とした。
塩化アリルを用いて導入された不飽和基とシリル化剤の反応において、副反応によりシリル化剤と反応しない不飽和基はおよそ10%である。したがって不飽和基の90モル%未満をシリル化剤と反応させる場合には、上記仕込み当量がシリル化率となる。
【0073】
[引張特性の評価(H型試験)]
JIS A 1439の建築用シーリング材の試験方法に準拠してH型試験体を作製し引張特性を評価した。
具体的には、作製したH型試験体を温度23℃、湿度50%で7日間養生し、更に温度50℃、湿度65%で7日間養生した。得られた硬化物について、テンシロン試験機にて引張特性試験を行い、モジュラス(50%伸張した時の応力(M50)、単位:N/mm
2)、最大点凝集力(単位:N/mm
2)、最大点伸び(単位:%)を測定した。
M50の値は小さいほど硬化物が柔らかく、最大点凝集力の値は大きいほど硬化物の引張強度が高く、最大点伸びの値は大きいほど硬化物の伸びが良い。
【0074】
[耐疲労性試験]
JIS A 1439(2016)の5.22に記載の耐疲労性試験の、耐疲労性の区分CR90に準じて試験した。被着体として表面陽極酸化アルミニウムを使用した。伸縮回数250回ごとに被着体と硬化物との接着界面近傍における硬化物の亀裂を観察し、亀裂が2.5mm以上に達した時点の伸縮回数を記録した。伸縮回数が多いほど耐疲労性に優れる。
【0075】
(合成例1:重合体A1)
Mnが約2,000で、末端水酸基を2個有するポリオキシプロピレングリコールを開始剤として使用し、配位子がt−ブチルアルコールの亜鉛ヘキサシアノコバルテート錯体 (以下、「TBA−DMC触媒」という。)を触媒として使用してプロピレンオキシドを重合し、ポリオキシプロピレンを得た。ポリオキシプロピレンは、両末端に水酸基を有し、水酸基換算分子量は15,000であった。
得られたポリオキシプロピレンの水酸基に対して1.15モル当量のナトリウムメトキシドの濃度が28質量%であるメタノール溶液を添加した。減圧下でメタノールを留去した後、ポリオキシプロピレンの水酸基に対して1.05モル当量のアリルグリシジルエーテルを添加し、130℃で2時間反応させた。その後、0.28モル当量のナトリウムメトキシドのメタノール溶液を添加してメタノールを除去し、さらに2.10モル当量の塩化アリルを添加して130℃で2時間反応を行い、末端基をアリル基に変換し、減圧下で系中から未反応の塩化アリルを除去し、主鎖末端にアリル基を有するアリル基末端オキシアルキレン重合体を得た。系中には、副生塩としてNaClが含まれていた。
次いで、副生塩であるNaCl含むアリル基末端オキシアルキレン重合体の100質量部に対して、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロック共重合体を1質量部、及び水を5質量部加え、窒素雰囲気下、液温80℃で撹拌混合して、副生塩であるNaClを水で抽出した。
次いで、反応器内に窒素を流しながら、80℃に加温し5時間保持して水分を蒸発させてNaClの結晶を析出させた後、ろ過し、得られたろ液を減圧下で脱水して、主鎖末端にアリル基が導入されたポリオキシプロピレン重合体(重合体Q1)を得た。重合体Q1の1つの主鎖末端に導入されたアリル基は平均2.0個であった。
【0076】
次いで、白金ジビニルジシロキサン錯体の存在下、重合体Q1のアリル基に対して0.80モル当量のジメトキシメチルシランをシリル化剤として添加し、70℃にて5時間反応させた後、未反応のジメトキシメチルシランを減圧下で除去し、反応性ケイ素基としてジメトキシメチルシリル基が主鎖末端に導入された重合体(重合体A1)を得た。
得られた重合体A1について、Mn、Mw/Mn、シリル化率を表1に示す。また重合体A1の主鎖末端の数、前駆重合体(重合体Q1)における1分子あたりのアリル基の平均数、シリル化率に基づいて算出した1分子あたりの反応性ケイ素基の平均数及び1つの主鎖末端あたりの反応性ケイ素基の平均数を表1に示す(以下、同様。)。
【0077】
(合成例2:重合体A2)
重合体A1と同様にして重合体Q1を得た後、白金ジビニルジシロキサン錯体の存在下、重合体Q1のアリル基に対して0.60モル当量のジメトキシメチルシランをシリル化剤として添加し、70℃にて5時間反応させた後、未反応のジメトキシメチルシランを減圧下で除去し、ジメトキシメチルシリル基が主鎖末端に導入された重合体(重合体A2)を得た。
【0078】
(合成例3:重合体B1)
本例では、リビングラジカル重合法を用い、重合反応の終期にアルケニル基を2個有する化合物を反応させる方法で下記重合体B1を合成した。 2Lフラスコに臭化第一銅の8.39g、アセトニトリルの112mLを添加し、窒素気流下70℃で20分間加熱撹拌した。これに2,5−ジブロモアジピン酸ジエチルの17.6g、アクリル酸エチルの130mL、アクリル酸ブチルの720mL、アクリル酸ステアリルの251gを添加し、さらに70℃で40分間加熱撹拌した。これにペンタメチルジエチレントリアミン(以下、「トリアミン」という。)0.41mLを添加して反応を開始した。引き続き70℃で加熱撹拌を続け、さらにトリアミンの2.05mLを添加した。反応開始から330分後に1,7−オクタジエンの244mL及びトリアミンの4.1mLを添加し、引き続き70℃で加熱撹拌を続け、反応開始から570分後に加熱を停止した。
得られた反応溶液をトルエンで希釈してろ過し、ろ液を減圧加熱処理して、末端にアルケニル基を有するアクリル酸エステル重合体(重合体Q2)を得た。
重合体Q2のMnは22,800、分子量分布は1.40、
1H−NMR分析より求めた重合体Q2の1分子あたりのアルケニル基の平均数は2.8個であった。
【0079】
窒素雰囲気下、2Lフラスコに、得られた上記重合体Q2の全量、酢酸カリウムの17.2g、N,N−ジメチルアセトアミドメチル(以下、「DMAc」という。)の700mLを添加し、100℃で10時間加熱撹拌した。反応溶液を減圧加熱してDMAcを除去し、トルエンを添加してろ過した。ろ液を減圧加熱して揮発分を除去した残りを2Lフラスコに添加し、吸着剤(キョーワード500SNとキョーワード700SN(いずれも協和化学製品名)の質量比で1対1の混合物)の100gを添加し、窒素気流下130℃で9時間加熱撹拌した。トルエンで希釈し、ろ過して吸着剤を除去し、ろ液中のトルエンを減圧留去して重合体(重合体Q3)を得た。
【0080】
1L耐圧反応容器に、重合体Q3の700g、ジメトキシメチルヒドロシランの22.2mL、オルトぎ酸メチルの7.71mL及び白金触媒(0価白金の1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジビニルジシロキサン錯体)を添加した。ただし、白金触媒の使用量は、重合体Q3のアルケニル基に対して9×10
−3モル当量とした。反応容器内の混合物を100℃で195分加熱撹拌した。混合物の揮発分を減圧留去して、主鎖末端にジメトキシメチルシリル基を有する重合体(重合体B1)を得た。
1分子あたりの反応性ケイ素基の平均数を、
1H−NMR分析により求めたところ2.0個であった。
【0081】
(合成例4:重合体C1)
プロピレングリコールを開始剤とし、配位子がグライムの亜鉛ヘキサシアノコバルテート錯体の存在下に、プロピレンオキシドを重合し、水酸基換算分子量が20,000の前駆重合体c1を得た。次いで、前駆重合体c1の水酸基に対して1.05モル当量のナトリウムメトキシドのメタノール溶液を添加して前駆重合体c1をアルコラート化した。次に、加熱減圧によりメタノールを留去し、さらに前駆重合体c1の水酸基量に対して過剰量の塩化アリルを添加して主鎖末端における末端基をアリル基に変換した。次に、塩化白金酸六水和物の存在下、前駆重合体c1の変換されたアリル基に対して0.75モル当量のジメトキシメチルシランをシリル化剤として添加し、70℃にて5時間反応させ、反応性ケイ素基としてジメトキシメチルシリル基が主鎖末端に導入されたオキシプロピレン重合体(重合体C1)を得た。
【0082】
(合成例5:重合体C2)
プロピレングリコールを開始剤とし、TBA−DMC触媒の存在下に、プロピレンオキシドを重合し、水酸基換算分子量が18,000の前駆重合体c2を得た。次いで、合成例4と同様にして得られた、末端基がアリル基に変換された前駆重合体c2のアリル基に対して0.73モル当量のジメトキシメチルシランをシリル化剤として添加する他は、合成例4と同様にして、反応性ケイ素基としてジメトキシメチルシリル基が主鎖末端に導入されたオキシプロピレン重合体(重合体C2)を得た。
【0083】
(合成例6:重合体C3)
グリセリンを開始剤とし、TBA−DMC触媒の存在下に、プロピレンオキシドを重合し、水酸基換算分子量が15,000の前駆重合体c3を得た。末端基がアリル基に変換された前駆重合体c3のアリル基に対して0.70モル当量のジメトキシメチルシランをシリル化剤として添加する他は、合成例4と同様にして、反応性ケイ素基としてジメトキシメチルシリル基が主鎖末端に導入されたオキシプロピレン重合体(重合体C3)を得た。
【0084】
(合成例7:重合体D1)
n−ブチルアルコールを開始剤とし、TBA−DMC触媒の存在下に、プロピレンオキシドを重合し、水酸基換算分子量が5,000の前駆重合体d1を得た。前駆重合体d1の水酸基側の末端基がアリル基に変換された前駆重合体d1のアリル基に対して0.80モル当量のジメトキシメチルシランをシリル化剤として添加し、70℃にて5時間反応させ、反応性ケイ素基としてジメトキシメチルシリル基が主鎖末端に導入されたオキシプロピレン重合体(重合体D1)を得た。
【0085】
(合成例8:重合体E1)
攪拌機付きの耐圧反応器にイソブタノールの50gを添加し、約80℃に昇温した。反応容器内温を約80℃に保ち、窒素雰囲気下、攪拌しながら、メタクリル酸メチルの1.65g、アクリル酸−n−ブチルの373.1g、アクリル酸ステアリルの110.0g、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン(KBM−502、信越シリコーン社製品名)の6.5g及び2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル(V−65、和光純薬工業社製品名)の7.3gの混合溶液を、イソブタノール中に2時間かけて滴下して重合し、側鎖にジメトキシメチルシリル基を有する(メタ)アクリル酸エステル重合体(重合体E1)を得た。
【0086】
(その他の成分)
表2に記載の重合体F及び添加剤は以下の通りである。
ホワイトンSB:重質炭酸カルシウム、白石工業社製品名。
Viscolite EL20:膠質炭酸カルシウム、白石工業社製品名。
バルーン80GCA:有機バルーン、松本油脂社製品名。
UP−1171:ARUFON UP−1171、Mw3,000のアクリルポリマー、東亜合成社製品名。
S4012:プレミノール S4012、1分子あたり水酸基を2個有し、水酸基1個当たりのMnが10,000である高分子量ポリオール、旭硝子社製品名。
N−12:ノルマルパラフィン(n−ドデカン99.0%)、日鉱石油化学社製品名。
サンソサイザーEPS:4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸−ジ−2−エチルヘキシル、新日本理化社製品名。
ディスパロン#6500:水添ひまし油系チキソ性付与剤、楠本化成社製品名。
IRGANOX1135:ヒンダードフェノール系酸化防止剤、BASF社製品名。
TINUVIN326:ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、BASF社製品名。
TINUVIN765:3級アミン含有ヒンダードアミン系光安定剤、BASF社製品名。
LA−63P:アデカスタブLA−63P、ADEKA社製品名。
KBM−1003:ビニルトリメトキシシラン、信越化学社製品名。
KBM−403:3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学社製品名。
KBM−603:3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、信越化学社製品名。
ファーミンCS:ココナットアミン、花王社製品名。
TMP−3TMS:トリメチロールプロパンのトリストリメチルシリル体。
桐油:空気酸化硬化性化合物、木村社製。
M−309:アロニックスM−309、東亜合成社製品名。
SCAT−32A:錫触媒、日東化成社製品名。
触媒組成物:スタノクト(オクチル酸第一錫、吉富製薬社品名)と、ラウリルアミン(試薬、純正化学社製、)とを質量比が6対1となるように混合した混合物の4質量部、サンソサイザーDINP(ジイソノニルフタレート、新日本理化社製品名)の6質量部、ホワイトンSB(重質炭酸カルシウム、白石カルシウム工業社製品名)の15質量部及びグロマックスLL(焼成カオリン、竹原化学工業社製品名)の5質量部を混合して得た組成物。
【0087】
<硬化性組成物の調製>
例1、2及び6〜10は実施例、例3〜5は比較例である。
【0088】
(例1〜7)
表3に示す配合の反応性ケイ素を有する重合体及び表2に示す配合量の添加剤を添加して硬化性組成物を調製した。
得られた硬化性組成物を、温度23℃、湿度65%で1週間養生し、更に温度50℃、湿度65%で1週間養生して得られた試験体について、上記のH型試験及び耐疲労試験を実施した。結果を表3に示す。
【0089】
(例8〜10)
表3の例1に示す配合において、添加剤1を表2に示す添加剤4〜6にそれぞれ変更して硬化性組成物を調製し、上記と同様にして硬化物を得た。例8〜10の硬化性組成物は良好に硬化した。
【0090】
【表1】
【0091】
【表2】
【0092】
【表3】
【0093】
表3に示されるように、硬化性組成物が重合体Aと重合体Bを含む例1、2は、重合体Bの代わりに重合体Eを用いた例3、4、重合体Aの代わりに重合体Cを用いた例5に比べて、最大点凝集力、最大点伸び及び耐疲労性が向上し、M50はほぼ同等であった。
また、重合体A、重合体Bと重合体Cの組み合わせ(例1、2)の方が、重合体A、重合体Eと重合体Cの組み合わせ(例3、4)よりも、伸び物性が向上することがわかる。