(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
支持体(A)の上に、プライマー層(B)、金属ナノ粒子層(C)及び金属めっき層(D)が順次積層された積層体であって、前記プライマー層(B)が、エポキシ基と水酸基とを有する樹脂(b1)及び多価カルボン酸を含有する架橋剤(b2)の硬化物であり、前記樹脂(b1)が芳香環を有するアクリル樹脂であることを特徴とする積層体。
前記架橋剤(b2)中のカルボキシル基のモル数と前記樹脂(b1)中のエポキシ基のモル数のモル比[カルボキシル基/エポキシ基]が、0.3以上3以下である請求項1〜3のいずれか1項記載の積層体。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の積層体は、支持体(A)の上に、プライマー層(B)、金属ナノ粒子層(C)及び金属めっき層(D)が順次積層された積層体であって、前記プライマー層(B)が、エポキシ基と水酸基とを有する樹脂(b1)及び多価カルボン酸を含有する架橋剤(b2)の硬化物であるものである。
【0015】
本発明の積層体は、前記支持体(A)の片面に、プライマー層(B)等を順次積層した積層体であってもよく、前記支持体(A)の両面にプライマー層(B)等を順次積層した積層体であってもよい。
【0016】
前記支持体(A)としては、例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(以下、「ABS」と略記する。)樹脂、ABSとポリカーボネートとのポリマーアロイ、ポリ(メタ)アクリル酸メチル等のアクリル樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンスルホン(PPSU)、エポキシ樹脂、セルロースナノファイバー、シリコン、セラミックス、ガラス等からなる支持体、それらからなる多孔質の支持体、鋼板、銅等の金属からなる支持体、それらの表面をシリコンカーバイド、ダイヤモンドライクカーボン、アルミニウム、銅、チタン、ステンレス等を蒸着処理した支持体などが挙げられる。
【0017】
また、本発明の積層体をプリント配線板等に用いる場合は、前記支持体(A)として、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、エポキシ樹脂、ガラス、セルロースナノファイバーなどからなる支持体を用いることが好ましい。
【0018】
さらに、本発明の積層体をフレキシブルプリント配線板等に用いる場合は、前記支持体(A)として、折り曲げ可能な柔軟性を有するフィルム状又はシート状の支持体が好ましい。
【0019】
前記支持体(A)の形状がフィルム状又はシート状の場合、その厚さは、通常、1μm以上5,000μm以下が好ましく、1μm以上300μm以下がより好ましく、1μm以上200μm以下がさらに好ましい。
【0020】
また、前記支持体(A)と後述するプライマー層(B)との密着性をより向上できることから、必要に応じて、前記支持体(A)の表面に、平滑性を失わない程度の微細な凹凸を形成したり、その表面に付着した汚れを洗浄したり、ヒドロキシル基、カルボニル基、カルボキシル基等の官能基の導入のために表面処理したりしてもよい。具体的には、コロナ放電処理等のプラズマ放電処理、紫外線処理等の乾式処理、水、酸・アルカリ等の水溶液又は有機溶剤等を用いる湿式処理等の方法が挙げられる。
【0021】
前記プライマー層(B)は、エポキシ基と水酸基とを有する樹脂(b1)及び多価カルボン酸を含有する架橋剤(b2)の硬化物である。
【0022】
前記樹脂(b1)は、分子内にエポキシ基と水酸基とを有する樹脂であり、樹脂種としてはエポキシ樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。なお、前記樹脂(b1)が有する水酸基は、アルコール性水酸基であっても、フェノール性水酸基であってもよい。また、前記樹脂(b1)は、1種で用いることも、複数の樹脂種のものを2種以上併用することもできる。
【0023】
前記樹脂(b1)として用いるエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられる。ビスフェノールA型エポキシ樹脂及びビスフェノールF型エポキシ樹脂は、ビスフェノールA等とエピクロロヒドリンとを反応させたものであり、エポキシ基と水酸基とを同一分子内に有するため、そのまま前記樹脂(b1)として用いることができるため好ましい。また、フェノールノボラック型エポキシ樹脂は、フェノールノボラック樹脂とエピクロルヒドリンとを反応する際、フェノール性水酸基が残るように反応させることで前記樹脂(b1)として用いることができる。これらのエポキシ樹脂は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0024】
前記樹脂(b1)として用いるアクリル樹脂としては、例えば、エポキシ基を有する(メタ)アクリル単量体及び水酸基を有する(メタ)アクリル単量体を必須原料として、それらを共重合したものが挙げられる。なお、(メタ)アクリル単量体は、アクリル単量体及びメタクリル単量体のいずれか一方または両方をいう。また、(メタ)アクリル酸はアクリル酸及びメタクリル酸の一方または両方をいい、(メタ)アクリレートはアクリレート及びメタクリレートの一方または両方をいう。
【0025】
前記エポキシ基を有する(メタ)アクリル単量体としては、グリシジル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。これらのエポキシ基を有する(メタ)アクリル単量体の中でも、密着性がより向上できることから、グリシジルメタクリレートが好ましい。また、これらのエポキシ基を有する(メタ)アクリル単量体は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0026】
また、前記水酸基を有する(メタ)アクリル単量体としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシブチルアクリルアミド等が挙げられる。これらの水酸基を有する(メタ)アクリル単量体の中でも、密着性がより向上できることから、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。また、これらの水酸基を有する(メタ)アクリル単量体は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0027】
また、前記アクリル樹脂の原料として、エポキシ基を有する(メタ)アクリル単量体、水酸基を有する(メタ)アクリル単量体以外のこれらと共重合可能なその他の重合性単量体を用いてもよい。このようなその他の重合性単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、β−(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル化合物;N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’−エチレンビス(メタ)アクリルアミド等のアクリルアミド化合物;スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン及びその誘導体などが挙げられる。これらのその他の重合性単量体の中でも、密着性がより向上できることから、スチレンが好ましい。また、これらのその他の重合性単量体は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0028】
前記アクリル樹脂は、前記(メタ)アクリル単量体等の混合物を、公知の方法で重合することによって製造することができる。この重合方法としては、例えば、有機溶剤中で重合を行う溶液重合法、水性媒体中で重合を行う乳化重合法、懸濁重合法、沈殿重合法、無溶剤下で重合する塊状重合法等が挙げられる。
【0029】
前記アクリル樹脂の製造の際に用いる重合開始剤としては、例えば、アゾニトリル、アゾエステル、アゾアミド、アゾアミジン、アゾイミダゾリン等のアゾ系開始剤;パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシエステル等の有機過酸化物;過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過酸化水素等の無機過酸化物などが挙げられる。
【0030】
また、前記過酸化物のみを用いてラジカル重合しても、前記過酸化物と、アスコルビン酸、エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシラートの金属塩、チオ硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、塩化第二鉄等の還元剤とを併用したレドックス重合開始剤系によって重合してもよい。
【0031】
前記樹脂(b1)中のエポキシ基濃度は、密着性がより向上できることから、0.05mmol/g以上8mmol/g以下が好ましく、0.5mmol/g以上3mmol/g以下がより好ましく、1mmol/g以上2mmol/g以下がさらに好ましい。
【0032】
また、前記樹脂(b1)中の水酸基濃度は、密着性がより向上できることから、0.05mmol/g以上3mmol/g以下が好ましく、0.1mmol/g以上2mmol/g以下がより好ましく、0.5mmol/g以上1.5mmol/g以下がさらに好ましい。
【0033】
前記樹脂(b1)として用いることのできる樹脂の中でも、密着性がより向上できることから、アクリル樹脂が好ましい。
【0034】
前記架橋剤(b2)は、多価カルボン酸を含有するものである。前記多価カルボン酸は、無水物のものも用いることができる。前記多価カルボン酸の具体例としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、メリト酸、ビフェニルジカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族多価カルボン酸及びこれらの無水物;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、メチルコハク酸無水物、エチルコハク酸無水物、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、マレイン酸、フマル酸、2,3−ブタンジカルボン酸、2,4−ペンタンジカルボン酸、3,5−ヘプタンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸、メチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、ドデシルコハク酸、ナジック酸、メチルナジック酸、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3−ジカルボン酸等の脂肪族多価カルボン酸及びこれらの無水物などが挙げられる。これらの多価カルボン酸の中でも、密着性がより向上できることから、トリメリット酸無水物が好ましい。これらの多価カルボン酸は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0035】
前記架橋剤(b2)中のカルボキシル基のモル数と前記樹脂(b1)中のエポキシ基のモル数のモル比[カルボキシル基/エポキシ基]は、密着性がより向上できることから、0.3以上3以下が好ましくとなる量が好ましく、0.5以上2.5以下がより好ましい。
【0036】
また、エポキシと多価カルボン酸の反応を促進するため、硬化触媒を使用してもよい。前記硬化触媒としては、第3級アミン、イミダゾール類、有機ホスフィン、ルイス酸触媒等が挙げられる。
【0037】
前記第3級アミンとしては、具体的には、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリアミルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン、トリラウリルアミン、ジメチルエチルアミン、ジメチルプロピルアミン、ジメチルブチルアミン、ジメチルアミルアミン、ジメチルヘキシルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジメチルオクチルアミン、ジメチルラウリルアミン、トリアリルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、トリエチレンジアミン(トリエチレンテトラミン:TETA)、N−メチルモルフォリン、4,4’−(オキシジ−2,1−エタンジイル)ビス−モルフォリン、N,N−ジメチルベンジルアミン、ピリジン、ピコリン、ジメチルアミノメチルフェノール、トリスジメチルアミノメチルフェノール、トリエタノールアミン、N,N’−ジメチルピペラジン、テトラメチルブタンジアミン、ビス(2,2−モルフォリノエチル)エーテル、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N’,N’’−トリス(ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ−s−トリアジン、N,N’,N’’−トリス(ジメチルアミノエチル)ヘキサヒドロ−s−トリアジン、N,N’,N’’−トリス(2−ヒドロキシエチル)ヘキサヒドロ−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−1、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク−7−エン(DBU)などが挙げられる。
【0038】
前記イミダゾール化合物としては、具体的には、例えば、1−ベンジル−2−イミダゾール(1B2MZ)、2−エチル−4−イミダゾール、2−ウンデルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール(2P4MHZ)などが挙げられる。
【0039】
有機ホスフィンとしては、具体的には、例えば、トリフェニルホスフィン(TPP)、トリフェニルホスフィン−トリフェニルボレート、トリス(p−メトキシフェニル)ホスフィン、テトラフェニルホスフォニウム・テトラフェニルボレートなどが挙げられる。
【0040】
ルイス酸触媒としては、具体的には、例えば、三フッ化ホウ素アミン錯体、三塩化ホウ素アミン錯体、三フッ化ホウ素エチルアミン錯体などのルイス酸触媒などが挙げられる。
【0041】
これらの硬化触媒の中でも、密着性がより向上できることから、第3級アミン、イミダゾール化合物を用いることが好ましい。また、これらの硬化触媒は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0042】
前記プライマー層(B)を前記支持体(A)上に形成するために、前記樹脂(b1)及び前記架橋剤(b2)を含有するプライマー組成物(b)を調製し、前記プライマー組成物(b)を前記支持体(A)上に塗工することが好ましい。前記プライマー組成物(b)には、必要に応じて、前記樹脂(b1)及び前記架橋剤(b2)以外のその他の樹脂を配合してもよい。その他の樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ブロックイソシアネート樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。これらのその他の樹脂は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0043】
また、前記プライマー組成物(b)には、前記支持体(A)へ塗工する際に、塗工しやすい粘度とするため、有機溶剤を配合することが好ましい。前記有機溶剤としては、例えば、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
【0044】
前記有機溶剤の使用量は、前記支持体(A)へ塗工する際に用いる塗工方法、前記プライマー層(B)の所望とする膜厚により、適宜調整することが好ましい。
【0045】
また、前記プライマー組成物(b)には、必要に応じて、皮膜形成助剤、レベリング剤、増粘剤、撥水剤、消泡剤、酸化防止剤、等の公知の添加剤を適宜添加して使用してもよい。
【0046】
前記プライマー層(B)は、例えば、前記支持体(A)の表面の一部又は全部に前記プライマー組成物(b)を塗工し、前記プライマー組成物(b)中に含まれる有機溶剤を除去することによって形成することができる。
【0047】
前記プライマー組成物(b)を前記支持体(A)の表面に塗工する方法としては、例えば、グラビア方式、コーティング方式、スクリーン方式、ローラー方式、ロータリー方式、スプレー方式、キャピラリー方式等の方法が挙げられる。
【0048】
前記プライマー組成物(b)を前記支持体(A)の表面に塗工した後、その塗工層に含まれる有機溶剤を除去する方法としては、例えば、乾燥機を用いて乾燥させ、有機溶剤を揮発させる方法が一般的である。乾燥温度としては、用いた有機溶剤を揮発させることが可能で、かつ前記支持体(A)に熱変形等の悪影響を与えない範囲の温度に設定すればよい。
【0049】
前記プライマー組成物(b)を用いて形成するプライマー層(B)の膜厚は、本発明の積層体を用いる用途によって異なるが、前記支持体(A)と後述する金属ナノ粒子層(C)との密着性をより向上できる範囲が好ましく、前記プライマー層の膜厚は、10nm以上30μm以下が好ましく、10nm以上1μm以下がより好ましく、10nm以上500nm以下がさらに好ましい。
【0050】
前記プライマー層(B)の表面は、前記金属ナノ粒子層(C)との密着性をより向上できることから、必要に応じて、コロナ放電処理法等のプラズマ放電処理法、紫外線処理法等の乾式処理法、水や酸性又はアルカリ性薬液、有機溶剤等を用いた湿式処理法によって、表面処理してもよい。
【0051】
前記金属ナノ粒子層(C)は、前記プライマー層(B)上に形成されたものであり、前記金属ナノ粒子層(C)を構成する金属としては、遷移金属又はその化合物が挙げられ、中でもイオン性の遷移金属が好ましい。このイオン性の遷移金属としては、銅、銀、金、ニッケル、パラジウム、白金、コバルト等が挙げられる。これらの中でも、前記金属めっき層(D)を形成しやすいことから銀が好ましい。
【0052】
また、前記金属めっき層(D)を構成する金属としては、銅、ニッケル、クロム、コバルト、スズ等が挙げられる。これらの中でも、電気抵抗が低く、腐食に強いプリント配線板に用いることができる積層体が得られることから銅が好ましい。
【0053】
本発明の積層体の製造方法としては、まず、支持体(A)の上に、プライマー層(B)を形成し、その後、ナノサイズの金属ナノ粒子(c)を含有する流動体を塗工し、流動体中に含まれる有機溶剤等を乾燥により除去することによって、金属ナノ粒子層(C)を形成した後、電解めっきもしく無電解めっき、又はその両方により前記金属めっき層(D)を形成する方法が挙げられる。
【0054】
前記金属ナノ粒子層(C)の形成に用いる前記金属ナノ粒子(c)の形状は、粒子状又繊維状のものが好ましい。また、前記金属ナノ粒子(c)の大きさはナノサイズのものを用いるが、具体的には、前記金属ナノ粒子(c)の形状が粒子状の場合は、微細な導電性パターンを形成でき、抵抗値をより低減できることから、平均粒子径が1nm以上100nm以下が好ましく、1nm以上50nm以下がより好ましい。なお、前記「平均粒子径」は、前記導電性物質を分散良溶媒にて希釈し、動的光散乱法により測定した体積平均値である。この測定にはマイクロトラック社製「ナノトラックUPA−150」を用いることができる。
【0055】
一方、前記金属ナノ粒子(c)の形状が繊維状の場合も、微細な導電性パターンを形成でき、抵抗値をより低減できることから、繊維の直径が5nm以上100nm以下の範囲が好ましく、5nm以上50nm以下の範囲がより好ましい。また、繊維の長さは、0.1μm以上100μm以下が好ましく、0.1μm以上30μm以下がより好ましい。
【0056】
前記流動体中の前記金属ナノ粒子(c)の含有率は、1質量%以上90質量%以下が好ましく、1質量%以上60質量%以下がより好ましく、1質量%以上10質量%以下がさらに好ましい。
【0057】
前記流動体に配合される成分としては、前記金属ナノ粒子(c)を溶媒中に分散させるための分散剤や溶媒、また必要に応じて、後述する界面活性剤、レベリング剤、粘度調整剤、成膜助剤、消泡剤、防腐剤等が挙げられる。
【0058】
前記金属ナノ粒子(c)を溶媒中に分散させるため、低分子量又は高分子量の分散剤を用いることが好ましい。前記分散剤としては、例えば、ドデカンチオール、1−オクタンチオール、トリフェニルホスフィン、ドデシルアミン、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドン;ミリスチン酸、オクタン酸、ステアリン酸等の脂肪酸;コール酸、グリシルジン酸、アビンチン酸等のカルボキシル基を有する多環式炭化水素化合物などが挙げられる。これらの中でも、前記金属ナノ粒子層(C)と前記金属めっき層(D)との密着性を向上できることから、高分子分散剤が好ましく、この高分子分散剤としては、ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミン等のポリアルキレンイミン、前記ポリアルキレンイミンにポリオキシアルキレンが付加した化合物、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、前記ウレタン樹脂や前記アクリル樹脂にリン酸基を含有する化合物等が挙げられる。
【0059】
前記金属ナノ粒子(c)を分散させるために必要な前記分散剤の使用量は、前記金属ナノ粒子(c)100質量部に対し、0.01質量部以上50質量部以下が好ましく、0.01質量部以上10質量部以下がより好ましい。
【0060】
前記流動体に用いる溶媒としては、水性媒体や有機溶剤を用いることができる。前記水性媒体としては、例えば、蒸留水、イオン交換水、純水、超純水等が挙げられる。また、前記有機溶剤としては、アルコール化合物、エーテル化合物、エステル化合物、ケトン化合物等が挙げられる。
【0061】
前記アルコール化合物としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブチルアルコール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、ヘプタノール、ヘキサノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ステアリルアルコール、アリルアルコール、シクロヘキサノール、テルピネオール、ターピネオール、ジヒドロターピネオール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。
【0062】
また、前記流動体には、前記金属ナノ粒子(c)、溶媒の他に、必要に応じてエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、イソプレングリコール等を用いることができる。
【0063】
前記界面活性剤としては、一般的な界面活性剤を用いることができ、例えば、ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ヘキサメタリン酸塩等が挙げられる。
【0064】
前記レベリング剤としては、一般的なレベリング剤を用いることができ、例えば、シリコーン系化合物、アセチレンジオール系化合物、フッ素系化合物等が挙げられる。
【0065】
前記粘度調整剤としては、一般的な増粘剤を用いることができ、例えば、アルカリ性に調整することによって増粘可能なアクリル重合体や合成ゴムラテックス、分子が会合することによって増粘可能なウレタン樹脂、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、水添加ヒマシ油、アマイドワックス、酸化ポリエチレン、金属石鹸、ジベンジリデンソルビトールなどが挙げられる。
【0066】
前記成膜助剤としては、一般的な成膜助剤を用いることができ、例えば、アニオン系界面活性剤(ジオクチルスルホコハク酸エステルソーダ塩など)、疎水性ノニオン系界面活性剤(ソルビタンモノオレエートなど)、ポリエーテル変性シロキサン、シリコーンオイル等が挙げられる。
【0067】
前記消泡剤としては、一般的な消泡剤を用いることができ、例えば、シリコーン系消泡剤、ノニオン系界面活性剤、ポリエーテル,高級アルコール、ポリマー系界面活性剤等が挙げられる。
【0068】
前記防腐剤としては、一般的な防腐剤を用いることができ、例えば、イソチアゾリン系防腐剤、トリアジン系防腐剤、イミダゾール系防腐剤、ピリジン系防腐剤、アゾール系防腐剤、ヨード系防腐剤、ピリチオン系防腐剤等が挙げられる。
【0069】
前記流動体の粘度(25℃でB型粘度計を用いて測定した値)は、0.1mPa・s以上500,000mPa・s以下が好ましく、0.2mPa・s以上10,000mPa・s以下がより好ましい。また、前記流動体を、後述するインクジェット印刷法、凸版反転印刷等の方法によって塗工(印刷)する場合には、その粘度は5mPa・s以上20mPa・s以下が好ましい。
【0070】
前記プライマー層(B)の上に前記流動体を塗工や印刷する方法としては、例えば、インクジェット印刷法、反転印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ダイコート法、スリットコート法、ロールコート法、ディップコート法、パッド印刷、フレキソ印刷法等が挙げられる。
【0071】
これらの塗工方法の中でも、例えば、電子回路等の高密度化を実現する際に求められる0.01μm以上100μm以下の細線状でパターン化された前記金属ナノ粒子層(C)を形成する場合には、インクジェット印刷法、反転印刷法を用いることが好ましい。
【0072】
前記インクジェット印刷法としては、一般にインクジェットプリンターといわれるものを用いることができる。具体的には、コニカミノルタEB100、XY100(コニカミノルタIJ株式会社製)、ダイマティックス・マテリアルプリンターDMP−3000、ダイマティックス・マテリアルプリンターDMP−2831(富士フィルム株式会社製)等が挙げられる。
【0073】
また、反転印刷法としては、凸版反転印刷法、凹版反転印刷法が知られており、例えば、各種ブランケットの表面に前記流動体を塗工し、非画線部が突出した版と接触させ、前記非画線部に対応する流動体を前記版の表面に選択的に転写させることによって、前記ブランケット等の表面に前記パターンを形成し、次いで、前記パターンを、前記支持体(A)の上(表面)に転写させる方法が挙げられる。
【0074】
また、立体成形品へのパターンの印刷については、パッド印刷法が知られている。これは、凹版の上にインクを載せ、スキージで書き取ることでインクを均質に凹部に充填し、インクを載せた版上に、シリコンゴムやウレタンゴム製のパッドを押し当て、パターンをパッド上に転写し、立体成形品へ転写させる方法である。
【0075】
前記金属ナノ粒子層(C)の単位面積当たりの質量は、1mg/m
2以上30,000mg/m
2以下が好ましく、1mg/m
2以上5,000mg/m
2以下が好ましい。前記金属ナノ粒子層(C)の厚さは、前記金属めっき層(D)の形成する際のめっき処理工程における処理時間、電流密度、めっき用添加剤の使用量等を制御することによって調整することができる。
【0076】
本発明の積層体を構成する金属めっき層(D)は、例えば、前記積層体をプリント配線板等に用いる場合に、長期間にわたり断線等を生じることなく、良好な通電性を維持可能な信頼性の高い配線パターンを形成することを目的として設けられる層である。
【0077】
前記金属めっき層(D)は、前記金属ナノ粒子層(C)の上に形成される層であるが、その形成方法としては、めっき処理によって形成する方法が好ましい。このめっき処理としては、簡便に前記金属めっき層(D)を形成できる電解めっき法、無電解めっき法等の湿式めっき法が挙げられる。また、これらのめっき法を2つ以上組み合わせてもよい。例えば、無電解めっきを施した後、電解めっきを施して、前記金属めっき層(D)を形成してもよい。
【0078】
上記の無電解めっき法は、例えば、前記金属ナノ粒子層(C)を構成する金属に、無電解めっき液を接触させることで、無電解めっき液中に含まれる銅等の金属を析出させ金属皮膜からなる無電解めっき層(皮膜)を形成する方法である。
【0079】
前記無電解めっき液としては、例えば、銅、ニッケル、クロム、コバルト、スズ、金、銀等の金属と、還元剤と、水性媒体、有機溶剤等の溶媒とを含有するものが挙げられる。
【0080】
前記還元剤としては、例えば、ジメチルアミノボラン、次亜燐酸、次亜燐酸ナトリウム、ジメチルアミンボラン、ヒドラジン、ホルムアルデヒド、水素化ホウ素ナトリウム、フェノール等が挙げられる。
【0081】
また、前記無電解めっき液としては、必要に応じて、蟻酸、酢酸等のモノカルボン酸;マロン酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸等のジカルボン酸化合物;リンゴ酸、乳酸、グリコール酸、グルコン酸、クエン酸等のヒドロキシカルボン酸化合物;グリシン、アラニン、イミノジ酢酸、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸等のアミノ酸化合物;イミノジ酢酸、ニトリロトリ酢酸、エチレンジアミンジ酢酸、エチレンジアミンテトラ酢酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸等のアミノポリカルボン酸化合物などの有機酸、又はこれらの有機酸の可溶性塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等)、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のアミン化合物等の錯化剤を含有するものを用いることができる。
【0082】
前記無電解めっき液は、20℃以上98℃以下で用いることが好ましい。
【0083】
前記電解めっき法は、例えば、前記金属ナノ粒子層(C)を構成する金属、又は、前記無電解処理によって形成された無電解めっき層(皮膜)の表面に、電解めっき液を接触した状態で通電することにより、前記電解めっき液中に含まれる銅等の金属を、カソードに設置した前記金属ナノ粒子層(C)を構成する導電性物質又は前記無電解処理によって形成された無電解めっき層(皮膜)の表面に析出させ、電解めっき層(金属皮膜)を形成する方法である。
【0084】
前記電解めっき液としては、例えば、銅、ニッケル、クロム、コバルト、スズ等の金属の硫化物と、硫酸と、水性媒体とを含有するもの等が挙げられる。具体的には、硫酸銅と硫酸と水性媒体とを含有するものが挙げられる。
【0085】
前記電解めっき液は、20℃以上98℃以下の範囲で用いることが好ましい。
【0086】
前記金属めっき層(D)の形成方法としては、前記金属めっき層(D)の膜厚を、薄膜から厚膜まで所望とする膜厚に制御しやすいことから、無電解めっきを施した後、電解めっきを施す方法が好ましい。
【0087】
前記金属めっき層(D)の膜厚は、1μm以上50μm以下の範囲が好ましい。前記金属めっき層(D)の膜厚は、前記金属めっき層(D)の形成する際のめっき処理工程における処理時間、電流密度、めっき用添加剤の使用量等を制御することによって調整することができる。
【実施例】
【0088】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。
【0089】
(製造例1:プライマー用アクリル樹脂(1)の製造)
攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、単量体混合物滴下用滴下漏斗及び重合触媒滴下用滴下漏斗を備えた反応容器に、酢酸エチル180質量部を入れ、窒素を吹き込みながら90℃まで昇温した。90℃まで昇温した反応容器内に、攪拌下、グリシジルメタクリレート25質量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート12質量部、スチレン55質量部及びメチルメタクリレート8質量部を含有する単量体混合物と、アゾイソブチロニトリル1質量部及び酢酸エチル20質量部を含有する重合開始剤溶液を、各々別の滴下漏斗から反応容器内温度を90±1℃に保ちながら240分間かけて滴下し重合した。滴下終了後、同温度にて120分間攪拌した後、前記反応容器内の温度を30℃に冷却した。次いで、酢酸エチルで希釈し、プライマー用アクリル樹脂(1)の2質量%溶液を得た。
【0090】
(製造例2:プライマー用アクリル樹脂(2)の製造)
攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、単量体混合物滴下用滴下漏斗及び重合触媒滴下用滴下漏斗を備えた反応容器に、酢酸エチル180質量部を入れ、窒素を吹き込みながら90℃まで昇温した。90℃まで昇温した反応容器内に、攪拌下、グリシジルメタクリレート10質量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート20質量部、スチレン30質量部及びメチルメタクリレート40質量部を含有する単量体混合物と、アゾイソブチロニトリル1質量部及び酢酸エチル20質量部を含有する重合開始剤溶液を、各々別の滴下漏斗から反応容器内温度を90±1℃に保ちながら240分間かけて滴下し重合した。滴下終了後、同温度にて120分間攪拌した後、前記反応容器内の温度を30℃に冷却した。次いで、酢酸エチルで希釈し、プライマー用アクリル樹脂(2)の2質量%溶液を得た。
【0091】
(製造例3:プライマー用アクリル樹脂(3)の製造)
攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、単量体混合物滴下用滴下漏斗及び重合触媒滴下用滴下漏斗を備えた反応容器に、酢酸エチル180質量部を入れ、窒素を吹き込みながら90℃まで昇温した。90℃まで昇温した反応容器内に、攪拌下、グリシジルメタクリレート40質量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート5質量部、スチレン20質量部及びメチルメタクリレート35質量部を含有する単量体混合物と、アゾイソブチロニトリル1質量部及び酢酸エチル20質量部を含有する重合開始剤溶液を、各々別の滴下漏斗から反応容器内温度を90±1℃に保ちながら240分間かけて滴下し重合した。滴下終了後、同温度にて120分間攪拌した後、前記反応容器内の温度を30℃に冷却した。次いで、酢酸エチルで希釈し、プライマー用アクリル樹脂(3)の2質量%溶液を得た。
【0092】
(製造例4:プライマー用アクリル樹脂(4)の製造)
攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、単量体混合物滴下用滴下漏斗及び重合触媒滴下用滴下漏斗を備えた反応容器に、酢酸エチル180質量部を入れ、窒素を吹き込みながら90℃まで昇温した。90℃まで昇温した反応容器内に、攪拌下、グリシジルメタクリレート20質量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート15質量部、n−ブチルアクリレート30質量部及びメチルメタクリレート35質量部を含有する単量体混合物と、アゾイソブチロニトリル1質量部及び酢酸エチル20質量部を含有する重合開始剤溶液を、各々別の滴下漏斗から反応容器内温度を90±1℃に保ちながら240分間かけて滴下し重合した。滴下終了後、同温度にて120分間攪拌した後、前記反応容器内の温度を30℃に冷却した。次いで、酢酸エチルで希釈し、プライマー用アクリル樹脂(4)の2質量%溶液を得た。
【0093】
(製造例5:プライマー用アクリル樹脂(5)の製造)
攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、単量体混合物滴下用滴下漏斗及び重合触媒滴下用滴下漏斗を備えた反応容器に、酢酸エチル180質量部を入れ、窒素を吹き込みながら90℃まで昇温した。90℃まで昇温した反応容器内に、攪拌下、グリシジルメタクリレート1質量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート1質量部、スチレン40質量部、メチルメタクリレート39質量部及びn−ブチルアクリレート19質量部を含有する単量体混合物と、アゾイソブチロニトリル1質量部及び酢酸エチル20質量部を含有する重合開始剤溶液を、各々別の滴下漏斗から反応容器内温度を90±1℃に保ちながら240分間かけて滴下し重合した。滴下終了後、同温度にて120分間攪拌した後、前記反応容器内の温度を30℃に冷却した。次いで、酢酸エチルで希釈し、プライマー用アクリル樹脂(5)の2質量%溶液を得た。
【0094】
(製造例6:プライマー用アクリル樹脂(6)の製造)
攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、単量体混合物滴下用滴下漏斗及び重合触媒滴下用滴下漏斗を備えた反応容器に、酢酸エチル200質量部を入れ、窒素を吹き込みながら90℃まで昇温した。90℃まで昇温した反応容器内に、攪拌下、2−ヒドロキシエチルメタクリレート15質量部、スチレン38質量部、アクリル酸nーブチル30質量部、メチルメタクリレート17質量部を含有する単量体混合物と、アゾイソブチロニトリル1質量部及び酢酸エチル20質量部を含有する重合開始剤溶液を、各々別の滴下漏斗から反応容器内温度を90±1℃に保ちながら240分間かけて滴下し重合した。滴下終了後、同温度にて120分間攪拌した後、前記反応容器内の温度を30℃に冷却した。次いで、酢酸エチルで希釈し、プライマー用アクリル樹脂(6)の2質量%溶液を得た。
【0095】
(製造例7:プライマー用アクリル樹脂(7)の製造)
攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、単量体混合物滴下用滴下漏斗及び重合触媒滴下用滴下漏斗を備えた反応容器に、酢酸エチル180質量部を入れ、窒素を吹き込みながら90℃まで昇温した。90℃まで昇温した反応容器内に、攪拌下、グリシジルメタクリレート30質量部、スチレン55質量部、メチルメタクリレート15質量部を含有する単量体混合物と、アゾイソブチロニトリル1質量部及び酢酸エチル20質量部を含有する重合開始剤溶液を、各々別の滴下漏斗から反応容器内温度を90±1℃に保ちながら240分間かけて滴下し重合した。滴下終了後、同温度にて120分間攪拌した後、前記反応容器内の温度を30℃に冷却した。次いで、酢酸エチルで希釈し、プライマー用アクリル樹脂(7)の2質量%溶液を得た。
【0096】
(調製例1:プライマー組成物(1)の調製)
エポキシ樹脂(DIC株式会社製「EPICLON 1050」;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量475g/当量)をメチルエチルケトンで希釈して固形分を2質量%にした溶液100質量部に、硬化剤として無水ピロメリット酸の2質量%メチルエチルケトン溶液11.5質量部を均一に混合して、プライマー組成物(1)を得た。
【0097】
(調製例2:プライマー組成物(2)の調製)
エポキシ樹脂(DIC株式会社製「EPICLON 830S」;ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシ当量170g/当量)をメチルエチルケトンで希釈して固形分を2質量%にした溶液100質量部に、硬化剤として無水トリメリット酸の2質量%メチルエチルケトン溶液38.9質量部を均一に混合して、プライマー組成物(2)を得た。
【0098】
(調製例3:プライマー組成物(3)の調製)
製造例1で得られたプライマー用アクリル樹脂(1)の2質量%溶液100質量部に、無水トリメリット酸をメチルエチルケトンで希釈した2質量%溶液11.6質量部を均一に混合して、プライマー組成物(3)を得た。
【0099】
(調製例4:プライマー組成物(4)の調製)
製造例1で得られたプライマー用アクリル樹脂(1)の2質量%溶液100質量部に、無水トリメリット酸をメチルエチルケトンで希釈した2質量%溶液17.4質量部を均一に混合して、プライマー組成物(4)を得た。
【0100】
(調製例5:プライマー組成物(5)の調製)
製造例1で得られたプライマー用アクリル樹脂(1)の2質量%溶液100質量部に、無水トリメリット酸をメチルエチルケトンで希釈した固形分2質量%の溶液23.2質量部を均一に混合して、プライマー組成物(5)を得た。
【0101】
(調製例6:プライマー組成物(6)の調製)
製造例1で得られたプライマー用アクリル樹脂(1)の2質量%溶液100質量部に、ドデカン二酸をイソプロピルアルコールで希釈した固形分2質量%の溶液20.3質量部を均一に混合して、プライマー組成物(6)を得た。
【0102】
(調製例7:プライマー組成物(7)の調製)
製造例2で得られたプライマー用アクリル樹脂(2)の2質量%溶液100質量部に、無水トリメリット酸をメチルエチルケトンで希釈した固形分2質量%の溶液4.6質量部を均一に混合して、プライマー組成物(7)を得た。
【0103】
(調製例8:プライマー組成物(8)の調製)
製造例3で得られたプライマー用アクリル樹脂(3)の2質量%溶液100質量部に、無水ピロメリット酸をメチルエチルケトンで希釈した2質量%溶液15.4質量部を均一に混合して、プライマー組成物(8)を得た。
【0104】
(調製例9:プライマー組成物(9)の調製)
製造例4で得られたプライマー用アクリル樹脂(4)の2質量%100質量部に、無水トリメリット酸をメチルエチルケトンで希釈した2質量%溶液9.3質量部を均一に混合して、プライマー組成物(9)を得た。
【0105】
(調製例10:プライマー組成物(10)の調製)
製造例5で得られたプライマー用アクリル樹脂(5)の2質量%100質量部に、無水トリメリット酸をメチルエチルケトンで希釈した2質量%溶液0.46質量部を均一に混合して、プライマー組成物(10)を得た。
【0106】
(調製例11:プライマー組成物(R1)の調製)
製造例6で得られたプライマー用アクリル樹脂(6)の2質量%溶液100質量部に、無水トリメリット酸をメチルエチルケトンで希釈した2質量%溶液11.6質量部を均一に混合して、プライマー組成物(R1)を得た。
【0107】
(調製例12:プライマー組成物(R2)の調製)
製造例7で得られたプライマー用アクリル樹脂(7)の2質量%溶液100質量部に、無水トリメリット酸をメチルエチルケトンで希釈した2質量%溶液13.9質量部を均一に混合して、プライマー組成物(R2)を得た。
【0108】
(調製例13:プライマー組成物(R3)の調製)
製造例1で得られたプライマー用アクリル樹脂(1)の2質量%溶液100質量部をそのままプライマー組成物(R3)として用いた。
【0109】
[流動体(1)の調製]
特許第4573138号公報記載の実施例1にしたがって、銀ナノ粒子とカチオン性基(アミノ基)を有する有機化合物の複合体である灰緑色の金属光沢があるフレーク状の塊からなるカチオン性銀ナノ粒子を得た。その後、この銀ナノ粒子の粉末を、エチレングリコール45質量部と、イオン交換水55質量部との混合溶媒に分散させて、カチオン性銀ナノ粒子が5質量%の流動体(1)を調製した。
【0110】
(実施例1)
ポリイミドフィルム(東レ・デュポン株式会社製「カプトン100H」;厚さ25μm)の表面に、調製例1で得られたプライマー組成物(1)を、卓上型小型コーター(RKプリントコートインストルメント社製「Kプリンティングプローファー」)を用いて、その乾燥後の厚さが100nmとなるように塗工した。次いで、熱風乾燥機を用いて150℃で5分間乾燥することによって、ポリイミドフィルムの表面にプライマー層を形成した。
【0111】
上記で形成したプライマー層の表面に、上記で得られた流動体(1)を、バーコーターを用いて塗工した。次いで、150℃で5分間乾燥することによって、前記金属ナノ粒子層(C)に相当する銀層(膜厚20nm)を形成した。
【0112】
上記で形成した銀層を無電解銅めっき液(奥野製薬工業株式会社製「OICカッパー」、pH12.5)中に45℃で12分間浸漬し、無電解銅めっきを行い、無電解めっきによる銅めっき層(膜厚0.2μm)を形成した。
【0113】
上記で得られた無電解銅めっきによる銅めっき層をカソード側に設定し、含リン銅をアノード側に設定し、硫酸銅を含有する電解めっき液を用いて電流密度2.5A/dm
2で30分間電解めっきを行うことによって、無電解銅めっきによる銅めっき層の表面に、電解銅めっきによる銅めっき層(膜厚15μm)を形成した。前記電解めっき液としては、硫酸銅70g/L、硫酸200g/L、塩素イオン50mg/L、添加剤(奥野製薬工業(株)製「トップルチナSF−M」)5ml/Lを用いた。なお、無電解銅めっきによる銅めっき層及びその上に形成した電解銅めっきによる銅めっき層を合わせたものが、前記金属めっき層(D)に相当する。
【0114】
以上の方法によって、支持体(A)、プライマー層(B)、金属ナノ粒子層(C)、及び金属めっき層(D)が順次積層された積層体(1)を得た。
【0115】
(実施例2〜10及び比較例1〜3)
実施例1で用いたプライマー組成物(1)の代わりにプライマー組成物(2)〜(10)及び(R1)〜(R3)を用いたこと以外は、実施例1と同様に行い、積層体(2)〜(10)及び(R1)〜(R3)を得た。
【0116】
上記の実施例1〜10及び比較例1〜3で得られた積層体(1)〜(10)及び(R1)〜(R3)について、下記の測定及び評価を行った。
【0117】
[加熱前の剥離強度の測定]
上記で得られた各積層体について、株式会社島津製作所製「オートグラフAGS−X 500N」を用いて剥離強度を測定した。なお、測定に用いるリード幅は5mm、そのピールの角度は90°とした。また、ピール強度は、金属めっき層の厚さが厚くなるほど高い値を示す傾向にあるが、本発明でのピール強度の測定は、金属めっき層の厚さ15μmにおける測定値を基準として実施した。
【0118】
[密着性の評価]
上記で測定した加熱前の剥離強度の値から、下記の基準にしたがって密着性を評価した。
A:剥離強度の値が650N/m以上である。
B:剥離強度の値が450N/m以上、650N/m未満である。
C:剥離強度の値が250N/m以上、450N/m未満である。
D:剥離強度の値が250N/m未満である。
【0119】
[加熱後の剥離強度の測定]
上記で得られた各積層体について、それぞれ150℃に設定した乾燥機内に168時間保管して加熱した。加熱後、上記と同様の方法でピール強度を測定した。
【0120】
[耐熱性の評価]
上記で測定した加熱前後のピール強度値を用いて、加熱前後での保持率を算出し、下記の基準にしたがって耐熱性を評価した。
A:保持率が85%以上である。
B:保持率が70%以上85%未満である。
C:保持率が55%以上70%未満である。
D:保持率が55%未満である。
【0121】
実施例1〜10及び比較例1〜3で用いたプライマー組成物の種類、加熱前後の剥離強度の測定結果、密着性及び耐熱性の評価結果を表1〜3に示す。
【0122】
【表1】
【0123】
【表2】
【0124】
【表3】
【0125】
本発明の積層体である実施例1〜10で得られた積層体(1)〜(10)は、初期(加熱前)の密着性が充分に高く、また、加熱後の剥離強度の低下もわずかで耐熱性にも優れていることを確認できた。
【0126】
一方、比較例1の積層体(R1)は、プライマー層に用いるプライマー用樹脂にエポキシ基を有さないアクリル樹脂を用いた例であるが、初期(加熱前)の密着性が極めて低く、加熱後の剥離強度は、0kN/mとなり、密着性に問題があることが確認できた。
【0127】
比較例2の積層体(R2)は、プライマー層に用いるプライマー用樹脂に水酸基を有さないアクリル樹脂を用いた例であるが、初期(加熱前)の密着性が極めて低く、加熱後の剥離強度は、0kN/mとなり、密着性に問題があることが確認できた。
【0128】
比較例3の積層体(R3)は、架橋剤を用いなかった例であるが、初期(加熱前)の密着性は比較的高いものの、加熱後の剥離強度の保持率は53%となり、耐熱性に問題があることが確認できた。