【実施例1】
【0016】
本発明における実施例1について図を用い説明する。
【0017】
最初に
図1を用い光積分器001について説明する。
【0018】
光積分器001は、長さL、高さH、幅Wの四角柱の形状をしており、その内部は所定の透明度の高い屈折率N1の媒質1で満たされている。また、光積分器001は、入出射面002、003と、TIR側面004ないし007がある。
【0019】
入出射面002、003は、光が入射する面、または出射する面である。
【0020】
スネルの法則より、臨界角より大きい入射角を持つ光線は屈折率の高い媒質から屈折率の低い媒質へ進行できず、内面反射(Total Internal Reflection 以下TIRと記す)することが知られている。このため、本実施例の中では、光積分器001の側面のことをTIR側面と記す。TIR側面004ないし007は、入出射面002、003から入射した光をTIRにより光積分器001無の内部に閉じ込める機能を有する面である。
【0021】
光積分器001の内部には、媒質1とは異なる屈折率2の透明度の高い媒質2で満たされた散乱粒子008がランダムに充填されている。前記スネルの法則に従い、光線は、屈折率の異なる媒質を通過するときに、入射する角度とは異なる角度で出射する。散乱粒子008は、その原理を用い、進行する光線の角度を変更させることで散乱させる機能を有する。
【0022】
屈折率1と屈折率2の差を大きくした方がスネルの法則に従い、より大きな拡散機能が得られる。
【0023】
散乱粒子は、球状、またはその他の形状でも構わない。汎用品である球状とすることがコスト面からは望ましい。
【0024】
散乱粒子を球状とした場合は、その直径が小さいほど光線の曲げられる角度が大きくなり、高い散乱性能が得られる。その直径は、入射する光線の波長より大きく、その波長の10倍以下にすることが望ましい。
【0025】
散乱粒子の直径が波長より小さいと、大きな散乱が得られる。しかし散乱粒子に光線が当たる確立が小さくなるため、均質性を確保するため、散乱粒子の充填率を増やすことになるが、効率の低下が問題となる。
【0026】
逆に直径が波長の10倍以上になると、光線の変更できる角度が小さくなり、所望の混色性と均質性を得るため光積分器001を長くすることになるが、目的とする小型化に寄与できなくなる。
【0027】
散乱粒子を球状以外で、その散乱粒子の表面に凹凸が無い場合は、概ね上記と同じことが言える。
【0028】
もちろん、散乱粒子の表面に波長オーダーの微細構造を設けても良い。この場合は、形状を任意にして、散乱粒子の最大直径を大きくしても、大きな散乱効果が得られることが期待できる。
【0029】
また、入出射面002、003の高さH、幅Wは、入射する光線と略同等か、少なくとも取り付けの公差を考慮した最小のサイズとすることが望ましい。もちろん、入出射面002、003の高さH、幅Wは、入射する光線と略同等とすることが最も望ましく、この場合は、取り付けの公差を考慮して、組立て時に調整すると良い。
【0030】
入出射面002、003を出射する光線の輝度は、面積に反比例する。このため、入射する光線の面積に対し、入出射面の面積を2倍にすると、輝度が半分になる。また、面積を大きくすると閉じ込めの効果が落ち、混色性能も小さくなる。このため、さらに散乱粒子の充填率を増加する必要があり、効率がさらに劣化する。
【0031】
逆に入射する光線より入出射面002、003の面積を小さくすると、光線を取り込めなくなり、効率が低下する。
【0032】
以上から、入出射面002、003の面積は、入射する光線サイズと略同等にして調整するか、組立ての公差を考慮して少なくとも2倍以下に設定した方が良い。
【0033】
入出射面002,003の幅Wと高さHは、幅W>高さHと定義する。この場合、長さLは、幅Wの3倍より長くとすると良い。
【0034】
通常の面光源は半値半幅が60°のランバシアンの分布をしている。一般的な透明材料の屈折率を1.5とすると、スネルの法則に従えば光積分器001の内部に取り込まれた光束は±35°の範囲内に分布しているといえる。35°の光線は、幅Wの3倍の長さLを進行すると、約2回反射することになる。すなわち、下記式(1)を満足することになる。
【0035】
L×Tan35°≧2×W・・・式(1)
約2回反射する程度の長さがあると、散乱粒子008の充填率を調整することで、混色性と均質性を満たす事ができる。
【0036】
幅Wの3倍を越える長さLに設定した場合は、充填率を減らす調整をすることで、混色性と均質性を満たしたままで効率を維持できる。
【0037】
例えば、幅W、高さHを1mm角とした場合、長さを4mm、散乱粒子008の直径を約2μm、屈折率1を1.48、屈折率2を1.58とした場合、媒質1の総体積に対する散乱粒子008の媒質2の総体積を0.5%ないし1.0%の範囲に設定すると良い。
【0038】
また、入射出面002,003は、略平行にすることが望ましい。垂直に入射する光の平均角度を保ったまま光の入出射が可能となり、効率面で望ましい。
【0039】
また、入射出面002,003とは同じ形状にすることが望ましい。TIR側面での光の漏れを低減すると共に、TIR側面での効率のよい反射を行うことができ、ロスを低減できる。
【0040】
また、散乱粒子008の充填率は、光と散乱粒子008の衝突する平均的な距離である平均自由行程と反比例するものであり、光の透過率は、光と散乱粒子が衝突した回数分落ちるため、平均自由行程に比例すると言える。すなわち、散乱粒子008の充填率は、明るさに反比例する。散乱粒子008を充填しすぎると、効率が落ちるため、混色性および均質性と効率を考慮して、散乱粒子008の充填率を決めると良い。
また、TIR側面は、表面粗さを小さくすることが望ましい。TIR側面の表面粗さを小さくすることで反射側面からの漏れ光を低減し、高光量出力を可能とする。
【0041】
長さ方向の表面粗さは、長さ方向と直交する方向よりも小さくすることが望ましい。これは、加工方法等(切削や成型)によって異方性のある荒れが発生しやすいが、光軸方向の表面粗さを小さくすることで、反射側面からの漏れ光を低減し、高光量出力を可能とする。
【0042】
入出射側面002、003は、表面荒さが大きくしても良い。この場合、入出射面が荒れていることによって表面散乱による光の均一化が可能となる。
【0043】
本発明の光積分器は、媒質1と、該媒質1とは異なる屈折率を有し、伝搬する光を散乱せしめる散乱粒子(媒質2)が充填された構造であれば特に限定はないが、以下に説明する材料及び製造方法を用いることによって容易に得ることができる。
【0044】
<媒質1>
まず、媒質1の材質として、光を伝搬する観点から透明性の高い材料が選択される。本実施例ではアクリル系の光硬化樹脂を使用するが、透明度の高い材料であれば特に限定はなく、例えば、エポキシ系の熱硬化性の樹脂やアクリルやポリカーボネイト等の熱可塑性樹脂や、ガラス等を使用してもよい。
【0045】
光硬化性樹脂を用いると固形の媒質2を使用する際に該媒質2との混合が容易である観点、また硬化後に冷却や乾燥等の工程を必要としないため作業効率が向上する観点、所定の形状の光積分器を得られやすい観点からより好ましい。また、アクリル系の材料を使用すると透過率が高く、光の利用効率を高めることが可能となるため、より好ましい。
【0046】
<媒質2>
媒質2は、媒質1中に、媒質1と異なる屈折率の粒子を混合させることによって効率良く得ることができる。媒質2の材質として、本実施例では、架橋ポリスチレン微粒子を使用するが、透明度の高い材料であれば、その他の材質のプラスチック粒子やガラス粒子等、他の材料を使用してもよい。
【0047】
ただし、光を散乱させるためには屈折率差があることが重要であるため、媒質1と媒質2との間で屈折率差は0.005以上あることが望ましい。0.005以上0.015以下であると、媒質1と媒質2の比重を近接させやすくなり媒質2を媒質1に混合させるのが容易である観点及び、効率の低下を抑えたうえで、散乱の効果も得られやすいという観点からより好ましい。ここで、媒質1と媒質2の屈折率を比較したときに、どちらの屈折率が大きくてもよい。なお、本発明における屈折率差とは、媒質1又は媒質2のうち、高屈折率である媒質1又は媒質2の屈折率と、低屈折率である材質2又は媒質1の屈折率の差分から算出される値とする。
【0048】
<粒径>
媒質2の粒径は、0.5μm以上、5μm以下であることが望ましい。これは、前述のように、粒径が小さいと光が散乱しすぎて光の取り出し効率が低下してしまい、粒径が大きいと光が散乱しにくいためである。また、粒径は略均一である方が望ましいが、90%以上の粒子が上記粒径範囲内に含まれていれば効果は得られるため問題ない。
【0049】
<製造方法>
媒質1と媒質2を一体化する工法としては、例えば液状の媒質1を用意し、次いで媒質1と媒質2を混合させ、それを所定の形状に光硬化させて製作する方法があるが、熱プレス、射出成形、削りだし等、他の工法でも製作可能である。中でも液状の媒質1を用いると、媒質2を容易に混合させることができるため、より好ましく、媒質1に媒質2を混合させた状態も液状であると、所定の形状に加工しやすいためさらに好ましい。
【0050】
製品形状作成時には、製品の高さの板を製作後に外周を切断して製品サイズにしてもよいし、製品サイズの空間を持つ型を製作して、型に樹脂を流し込んで硬化させて製作してもよい。
【0051】
<表面粗さ>
本実施例の光積分器の表面粗さ(Ra;算術平均粗さ)は、側面の長さ方向では小さくすることが望ましい。これは光が側面にあたったときに側面の長さ方向で面が荒れていると、臨界角を超えて光が側面から抜けてしまうためである。長さ方向に垂直な方向では、光の伝搬に悪影響のない範囲で面が荒れていてもよい。また光入射面や光出射面については、光の拡散が高まる効果が見込めるため、光の出射に悪影響のない範囲で面が荒れていてもよい。以上の観点から側面の光軸方向の表面粗さは0μm超〜2.0μmであると良く、0μm超〜1.0μmであるとより良く、0μm超〜0.5μmであるとさらに良い。光入射面及び光出射面の表面粗さは、上記側面の表面粗さ以上であって、0.01μm〜10μmであると良く、0.5μm〜5μmであるとより良く、0.5μm〜3μmであるとさらに良い。尚、側面の光軸に対して垂直方向の表面粗さは0μm超であって、上限は上述した光入射面及び光出射面の表面粗さで列挙した値以下であると良い。
【0052】
側面の光軸(図中長さLの方向)に対して垂直方向の表面粗さは上述の範囲内で小さい方が好ましいが、加工効率の観点から任意に選択して構わない。具体的には、例えば切削加工によって側面を形成する場合、切削方向の表面粗さと、切削方向と略垂直方向の表面粗さは、前者の切削方向の表面粗さの方が小さくなる傾向にあり、加工効率の向上のために切削速度等を変化させると、特に、切削方向と略垂直方向の表面粗さが荒くなる。この場合、切削方向を光軸方向とすることによって、作業効率を維持しつつ、光の伝搬効率を保持させることが可能となる。また、成形等を利用する場合であって、かつ成形鋳型側に切削痕等の表面粗さの方向性を有する場合、該表面粗さは、光積分器に転写される。この場合も同様に、光軸方向を表面粗さの小さい方向とすることによって、良好な光の伝搬効率を保持させることが可能となる。
【0053】
また、媒質2に固形の粒子を用いる場合、媒質2からなる散乱粒子が側面から突出することによる凸部又は/及び該散乱粒子が側面から脱落した跡による凹部からなる凹凸が表面荒さに寄与する程度に存在すると、上述したように側面からの光の漏れが発生する一因となる。以上のことから、さらに側面の表面粗さ(Ra)は、媒質2として導入する散乱粒子の平均粒径の1/2以下であると良い。これは、光積分器の側面から散乱粒子を突出させない状態又は、側面から突出する散乱粒子を研磨や切断等を用いて切断し、平滑化しておくことによって実現できる。
【0054】
次に
図2、光積分器001を用いた映像投射装置011について説明する。
【0055】
図2は映像投射装置011を示す概略図である。
【0056】
図2に示す映像投射装置011には、光源012、光積分器001、照明レンズ013、偏光フィルタ025、映像生成装置014、レンズユニット018、光軸変更素子019、出射窓020、光検出手段021がある。なお、破線で記載した光進路022は、光線の進行を説明するのに補助するため記載した仮想線である。
【0057】
光源012は、赤、緑、青の波長帯の光を出射するチップを搭載したマルチチップ光源である。光源012は一般的に購入できる安価なLEDを想定している。
【0058】
光源012から出射した3色の光線は、光積分器001に入射し、前述した散乱粒子で拡散され、また、光積分器001内に閉じ込められ、高い混色性と均質性が実現される。
【0059】
光積分器001を出射した光は、照明レンズ013を介し映像投射装置014に照明される。
【0060】
光は、照明レンズ013から、映像投射装置014に到達する前に、偏光フィル
タ025を進行し、所定方向の直線偏光の光に選択される。
【0061】
偏光フィルタ025で所定方向の偏光に選択された光は、映像投射装置014に照明される。
【0062】
ここで映像投射装置014はカラーフィルタの無い透過タイプの液晶素子を想定している。このため、カラーフィルタの有る液晶と比べ画素を1/3にできるため、高い解像度の映像が実現できる。映像投射装置014の表示エリア015は映像が生成される領域を示している。なお、カラー化は、光源012にある赤、緑、青の波長帯の光を時間毎に光らせるFSCの技術で実現される。
【0063】
表示エリア015は、画素毎に所定の偏光をその偏光とは垂直方向か平行方向かどちらかを選択する機能を有している。映像として有効にする場合は、偏光フィルタ025で選択された方向と平行な偏光を選択する。
【0064】
表示エリア015を進行する映像として有効な光線と無効な光線は、偏光フィルタ026に入射する。偏光フィルタ026では、映像として有効な偏光の光線のみが通過し、無効な偏光の光線は吸収または反射する。
【0065】
偏光フィルタ026で映像として有効な光線だけが、レンズユニット018に進行する。
【0066】
遮光開口016、017は表示エリア015の外側の余計な光線が出射しないように配置した遮光開口である。
【0067】
レンズユニット018は、複数枚のレンズを要する投射レンズであり、表示エリア015の映像をスクリーン(図示無し)に拡大結像させる機能を持つ。
【0068】
図では、3枚組で記載したが、投射する映像の拡大率や投射距離に応じて、さらに多くの枚数であっても、逆に少なくともなんら構わない。
【0069】
なお、レンズユニット018は、映像生成装置014から遠ざかる方向と近づく方向に動かせる機構を持たせることが望ましい。このような機構により投射距離に応じて映像の結像位置を変えるフォーカス機能を備えさせることができる。
【0070】
レンズユニット018を出射した光は、光軸変更素子019で反射し、出射窓020を経てスクリーン(図示無し)に投射される。
【0071】
光軸変更素子019は、映像を曲げる機能を有する。図示のようなプリズムか、単純な反射ミラーなどで実現できる。映像が歪まないよう光線の通過する面の面精度を確保することが望ましい。
【0072】
出射窓020は、外部から埃や水滴などが入ることを防止する機能を有する。光学的に透明な平板であり、効率のロスが減るように赤から青の領域(波長430nm〜670nmの範囲)で反射防止膜を形成することが望ましい。
【0073】
また、映像投射装置011には、光検出手段021が搭載されており、光源012から出射する光を検出することができる。例えば、光検出手段021は色毎の光を検出できるカラーフィルタ機能付きの光検出であることを想定している。FSC制御のため、光検出手段021に波長依存のない光検出器を用いることもできる。この場合は、FSCにより赤、緑、青が順次発光させるタイミングと同期させて光検出器の信号をモニタすれば良い。この場合、カラーフィルタ機能付きの光検出器を用いるより光検出手段021を安価にできる。
【0074】
この光検出手段021により、所定の色温度と明るさの設定にする光源012から出射する光の初期値を記憶しておいて、温度や経時劣化などで、光量が変化したときにフィードバック制御が出来る構成とすることが望ましい。
【0075】
次に
図3を用いて、光源012と光積分器001の配置関係を説明する
光源012は、赤、緑、青の波長帯の光を出射する赤チップ031、緑チップ032、青チップ033が1個の筐体内に搭載されたマルチチップ光源である。
【0076】
光源012から出射した赤、緑、青の波長帯の光は、光積分器001の入出射面002(または入出射面003)に入射する。光源012に搭載された赤チップ031、緑チップ032、青チップ033の最大外形の幅W
LEDと高さH
LEDよりも、光積分器001の入出射面002の幅Wと高さHの方が大きく設定する。また、設計上は、赤チップ031、緑チップ032、青チップ033の中心と、入出射面002の中心を一致させると良い(図では、線034、035が公差する点)。例えば、幅W
LEDと高さH
LEDとが1mmとした場合、搭載の公差±0.05mmとすれば、幅Wと高さHは1.1mm程度に設定すると良い。
【0077】
次に
図4を用いて、映像投射装置011を用いた表示装置101について説明する。
【0078】
図4は表示装置101の概略図であり、
図4Aは正面図、
図4B−1、2は側面図である。
【0079】
表示装置101は、スマートフォンやタブレットPCなどを想定しており、映像の表示と、静電容量を利用し指で表示装置101を制御するパネル102や、制御用のボタン103などがある。また表示装置101の図中上部には、映像投射装置011が配備されており、図中上部方向へ、映像が投射できる。
【0080】
また映像投射装置011は、表示装置101内で矢印105の方向に回転できる回転機構104を持っており、側面図である
図4Bに示すように、上方や後方に映像の投射する方向を選択できる。
【0081】
このような、モバイル用途の表示装置を実現するには、小型でなければならない。また、バッテリーを持続して使用するには高い光利用効率が求められる。
【0082】
上述したように小型で高効率な映像投射装置011を実現しようとした場合に、複数の光源を1個の筐体に搭載したマルチチップ光源を搭載した映像投射装置の光学系を小型化するため、混色性と均質性を高める小型の光積分器が求められている。
【0083】
次に
図5を用い表示装置101のシステムについて説明する。
【0084】
図5は、表示装置101のシステムブロックを図示したものである。
【0085】
表示装置101は、光モニタ(光検出手段)021、光源012、光源を制御する設定値を記憶させたデータテーブル120を備えた映投射装置011が具備されている。
【0086】
通信手段112は、WiFiやBluetooth(登録商標)のようなインターネット上の情報や使用者111が所持している電子機器などの外部サーバ119とアクセスして外部情報を取得する機能を有している。
【0087】
表示装置101は、パネル102を介して使用者111に情報を表示する表示手段113、電素子や静電容量などの原理で加速度を検知する加速度センサやGPSなどで外部環境をセンシングするセンシング手段114も具備している。
【0088】
表示装置101は、バッテリーなどから電力を供給する電力供給手段115、カメラなどで、外界映像を取得する撮像手段116も具備されている。
【0089】
表示装置101は、マイクによる使用者の言葉の音声認識や、パネル102のタッチセンサー、ボタン103などによる使用者が表示装置101を制御する制御手段117も具備している。
【0090】
また、表示装置101は、使用者の制御に応じて上記装置、手段をコントロールするメインチップであるコントローラ118も具備している。
【0091】
表示装置101は、使用者111だけが所定の映像を表示手段113で観察するだけでなく、使用者111と他の複数人が同時に映像を観察できる映像投射装置011を備えている。
【0092】
このため、例えば、センシング手段114で得られた情報を元にコントローラ118は、表示装置101の配置されている場所を検出し外部サーバ119から周囲の情報を選択し、映像投射装置011を駆動して、選択した情報をスクリーンに表示する機能を有していても良い。
【0093】
また、例えば、コントローラ118は、使用者111が保持している画像データリストを表示手段113にて使用者111が確認し、使用者111が選択した画像のみが映像投射装置011でスクリーンに表示して、使用者が他の複数人に映像を観察させられる機能なども有していても良い。
【0094】
また、例えば、コントローラ118は、使用者111が歩行している際に通路に小さい段などがあった場合、撮像手段116の映像情報で取得した映像信号をコントローラ118は処理し、段があることを認識して、映像投射装置011を発光させ“段差有り注意”といった情報を使用者111に知らせる機能なども有していても良い。
【0095】
また、電源供給手段115は、コントローラ118を介し装置に必要な電力を供給する。このときコントローラ118は、必要性に応じて、必要な装置にのみ電力を供給することで節電する機能を有していることが望ましい。
【0096】
また、コントローラ118は、映像投射装置011内にある光検出手段021からの光量情報をモニタし、光源012の出力を制御する機能を有していることが望ましい。
【0097】
図6を用いて、表示装置101の光源012の調整フローについて説明する。
【0098】
出荷前の初期値設定時に、映像投射装置011から出射される画像を指定の色座標になるよう光源012の赤、緑、青の波長帯の光量I0(R)、I0(G)、I0(B)をデータテーブル120に格納しておく。
【0099】
コントローラ118から映像投射装置011の映像投射する命令を受けると、映像投射装置011は光源012の発光を始める(図中131)。次に光検出手段021で光源012の光量I1(R)、I1(G)、I1(B)を検知する(図中132)。検知した光量I1(R)、I1(G)、I1(B)と初期の光量I0(R)、I0(G)、I0(B)を比較することで指定の色座標からの誤差がないかチェックする(図中133)
映像投射装置011が動作中である限り、色座標の誤差が無い場合は、所定の時間を置いて(図中135)、再度光検出手段021で光量を検知する(図中132)調整フローを繰り返す。
【0100】
LEDのような半導体光源は、温度により、出力が変化する特性がある。このため、環境の温度変化や、光源012近傍に配備された電子回路の発熱などで、光源012から出射される各色の光出力が変化する。出力が変化した場合は、誤差が補正されるように光源012内の赤チップ031、緑チップ032、青チップ033の光量を制御する(図中134)。光量の制御は、駆動電流を変える方法や、発光時間を変えるなどの方法で実現できる。
【0101】
光量制御の調整が完了した後に、再度光量を検知し(図中132)所定の色になっているかをチェックする(図中133)。
【0102】
このように映像投射装置011は色座標が一定の範囲を超えないようにフィードバック制御することが望ましい。
【0103】
光積分器001は、樹脂であることを想定している。このため、経時的であってり、紫外線を受けるなどで劣化して、透過率が落ちることが想定される。また、光源012が経時劣化して発光する光量自体が落ちることも想定される。
【0104】
斯様な場合に備えて、明るさの制御を行う方法について
図6Bを用いて説明する。
【0105】
コントローラ118から映像投射装置011の映像投射する命令を受け、
図6Bに示すように、映像投射装置011は光源012の発光を始める(図中131)。次に光検出手段021で光源012の光量I2(R)、I2(G)、I2(B)を検知する(図中140)。検知した光量I2(R)、I2(G)、I2(B)の加算値IT2と初期の光量I0(R)、I0(G)、I0(B)の加算値IT0を比較する(図中141)
光量の差が所定の設定値より小さい場合は、光源012か光検出器001のどちらかが劣化したものと想定し、初期の光量I0(R)、I0(G)、I0(B)をIT2とIT0の比率に応じて初期光量の設定を光量I0(R)、I0(G)、I0(B)に変更してデータテーブル120の設定値を更新する(図中142)。
【0106】
設定値の更新後に、再度、光検出手段021で光源012の光量I2(R)、I2(G)、I2(B)を検知する(図中140)。検知した光量I2(R)、I2(G)、I2(B)の加算値IT2と初期の光量I0(R)、I0(G)、I0(B)の加算値IT0を比較する(図中141)。光量の差が所定の設定値の範囲内であることが確認できた場合は、次に光検出手段021で、光量I3(R)、I3(G)、I3(B)を検知する(図中132)。検知した光量I3(R)、I3(G)、I3(B)と再設定された初期の光量I0(R)、I0(G)、I0(B)を比較することで所定の色からの誤差がないかチェックする(図中133)
映像投射装置011が動作中である限り、色座標の誤差が無い場合は、所定の時間を置いて(図中135)、再度光検出手段021で光量を検知する(図中132)調整フローを繰り返す。
【0107】
光量の出力に誤差がある場合は、誤差を補正するように光源012内の赤チップ031、緑チップ032、青チップ033の光量を制御する(図中134)。
【0108】
光量制御の調整が完了した後に、再度光量を検知し(図中132)所定の色座標になっているかをチェックする(図中133)。
【0109】
以上のように明るさもモニタすることで、経時劣化による明るさ低下による色座標の調整ができなくなる不具合を回避できる。
【0110】
図6Bに示したように、経時劣化による明るさの変化は、起動時だけチェックすることで、補正できるので、起動時以外は、図中132と135のフローを繰り返し制御すれば良い。
【実施例2】
【0111】
本発明における実施例2について図を用い説明する。
【0112】
ここでは、光積分器001の変形例について説明する。
【0113】
まず
図7の光積分器201について説明する。
【0114】
光積分器201は、
図1の光積分器001の形状を四角柱から円柱に変えた例である。光積分器201は、長さL、直径W、円柱の形状をしており、その内部は所定の透明度の高い屈折率N1の媒質1で満たされている。
【0115】
また、光積分器201は、入出射面202、203と、TIR側面204がある。
【0116】
光積分器201の内部には、媒質1とは異なる屈折率2の透明度の高い媒質2で満たされた散乱粒子008がランダムに充填されている。光積分器001同様、進行する光線の角度を変更させることで散乱させる機能を有する。
【0117】
通常、ロッド型の光積分器では、円柱形状にすると、進行距離に強弱が発生するため、良好な均質性が得られないことが知られている。これに対して、光積分器201は、内部に散乱粒子008が配備されているため、円柱形状であっても問題なく、混色性と均質性が得られる。
【0118】
例えば、ファイバーのように延伸して製造する方法が実現でき、コスト面でメリットが得られる。
【0119】
また、入出射面202、003の直径Wは入射する光線よりも取り付けの公差などを考慮して、入射する光線の面積より大きく、少なくとも2倍以下に設定することが望ましい。前述したように、輝度が面積に反比例するためである。
【0120】
次に
図8を用い光積分器211について説明する。
【0121】
光積分器211は、光積分器001の形状を四角柱から三角柱に変えた例である。光積分器211は、長さL、一辺の長さWの三角柱の形状をしており、その内部は所定の透明度の高い屈折率N1の媒質1で満たされている。
【0122】
また、光積分器211は、入出射面212、213と、TIR側面214ないし216がある。
【0123】
光積分器211の内部には、媒質1とは異なる屈折率2の透明度の高い媒質2で満たされた散乱粒子008がランダムに充填されている。光積分器001同様、進行する光線の角度を変更させることで散乱させる機能を有する。
【0124】
光源012内の赤チップ031、緑チップ032、青チップ033が
図3で示したようにトライアングルの形状をしている場合に合わせて形状を三角柱にしている。
【0125】
入出射面212、213の長さWは入射する光線よりも取り付けの公差などを考慮して、入射する光線の面積より大きく、少なくとも2倍以下に設定することが望ましい。前述したように、輝度が面積に反比例するためである。
【0126】
光積分器211は、トライアングル形状をした光源012と組み合わせた場合に、四角柱よりも無駄な空間を減らすことで、混色性と均質性を確保したまま効率を向上する効果が得られる。
【0127】
次に
図9を用い光積分器221について説明する。
【0128】
光積分器221は、光積分器001の形状を湾曲に変えた例である。光積分器221は、長手方向の長さL、幅W、高さHの湾曲した形状をしており、その内部は所定の透明度の高い屈折率N1の媒質1で満たされている。
【0129】
また、光積分器221は、入出射面222、223と、TIR側面224ないし227がある。
【0130】
光積分器221の内部には、媒質1とは異なる屈折率2の透明度の高い媒質2で満たされた散乱粒子008がランダムに充填されている。光積分器001同様、進行する光線の角度を変更させることで散乱させる機能を有する。
【0131】
光積分器221は、入出射面222と223の法線が異なる点が特徴であり、実装上、光源012と照明レンズ013の間を曲げることが容易に可能になる。
【0132】
混色性と均質性を確保し、実装設計上の自由度が高くできる効果が得られる。
【0133】
次に
図10を用い光積分器231について説明する。
【0134】
光積分器231は、光積分器001の入出射面の比率を変更した例である。
【0135】
光積分器231は、入射面232、出射面233の、TIR側面234ないし237がある。その内部は所定の透明度の高い屈折率N1の媒質1で満たされている。入出面232は幅Wiの正方形、出射面233は幅W0の正方形、長さLであり、入射面232、出射面233のサイズが異なる点に特徴がある。
【0136】
光積分器231の内部には、媒質1とは異なる屈折率2の透明度の高い媒質2で満たされた散乱粒子008がランダムに充填されている。光積分器001同様、進行する光線の角度を変更させることで散乱させる機能を有する。
【0137】
立体角当たりの光量は保存させる物理法則のエタンデユーの関係に従えば、光源が小さく、表示エリアが大きい方が高効率である。光積分器231は、入射面232と出射面233のサイズを異ならせて、入射面232を光源012側とし、入出射面233を照明レンズ013側に配置する。このように配置すると、照明レンズ013から表示エリア015までの伝達効率を向上できる。
【0138】
次に
図11を用いてマルチチップ光源のチップ配置と、光積分器の入出射面の関係および変形例について説明する。
【0139】
図11Aは、光積分器201、
図11Bは、光積分器211の入出射面212、
図11Cは、光積分器221の入出射面222、
図11Dは光積分器231の入射面232を各々用いた例である。
【0140】
円柱形状の光積分器201には、入出射面202の内部に配置されるように 赤チップ031、緑チップ032、青チップ033をトライアングルに配置すると、無駄が少なく、効率面で有利である。また、同様に光積分器211においても、入出射面212の内部にトライアングルに配置すると、無駄が少なく、効率面で有利である。
【0141】
光積分器221のように四角の入出射面222では、赤チップ031、緑チップ032を2個、青チップ033の4個配置することができる。このような場合は、人の眼が明るく感じる緑チップを増設することで、明るさを向上できる効果が期待できる。
【0142】
光積分器231のように四角の入射面232では、赤チップ031、緑チップ032、青チップ033を1列に配置しても良い。現在入手可能な3色のチップ搭載したマルチチップ光源は、前述のトライアングル配置のものと、1列に配置されたものなどがある。
図11Dのように1列のものでも入射面232のサイズをチップ最外形と等しくするか、またはそれよりも大きくすることで、混色性と、均質性が確保できる。すなわち、チップの配置によらず、入出射面の面積をチップ最外形と等しくするか、またはそれよりも大きくすることで、混色性と、均質性が確保できる。
【0143】
効率性を重視する場合は、
図11Dのように入出射面232の形状を正方形でなく、チップの配置に合わせて長方形にする方が望ましい。
【実施例3】
【0144】
本発明における実施例3について図を用い説明する。
【0145】
ここでは、映像投射装置011の変形例について説明する。
【0146】
図12は映像投射装置301を示す概略図である。映像投射装置301は、ヘッドマウントディスプレイなどのように眼に直接映像を投射する虚像方式を採用した光学系である。
【0147】
図12に示す映像投射装置301は、
図2の映像投射装置011と異なるレンズユニット302を配置した点が異なる。
【0148】
レンズユニット302は、入射面303、ビームスプリット面304、反射レンズ305、出射面306、透過面307、反射面308がある。
【0149】
入射面303、出射面306、透過面307は、透明な平面である。ビームスプリット面は、所定の光を通過させ、残りを反射させる光分岐機能を備える。このような光分岐機能は、誘電体の多層膜で実現できる。
【0150】
反射レンズ面303の面は反射コートされたレンズ面である。図中上面の光進路022の矢印の方向に眼がある。眼からの映像までの距離Lは、反射レンズ面305の焦点距離Fと表示エリア015と反射レンズ面までの光学的な距離Aから下記式(2)に示す一般的なレンズの式で概算できる。なお、距離Lは、虚像であるため、符号が負になることが特徴である。
【0151】
1/F=1/A+1/L・・・式(2)
反射面308は、光検出手段021に光が進行するように設けた反射面である。反射レンズ面305や反射面308などは、一般的に誘電体多層膜か、または、アルミニウムや銀合金等の金属コートで実現できる。
【0152】
偏光フィルタ026で映像として有効な光線だけが、レンズユニット302の入射面303に進行する。入射面303を通過した光線は、ビームスプリット面304に進行する。ビームスプリット面で一部の光は、透過して反射レンズ面305に到達する。反射レンズ面でレンズ効果が光線に付与され、反射し、再度ビームスプリット面304に到達する。ビームスプリット面304では、一部の光が反射し、出射面306を経て眼に直接投射される。
【0153】
虚像方式では、眼のレンズ機能と組み合わされて人は映像を認識する。通常のプロジェクタのようにスクリーンに投射された映像をみる実像に対して、人の眼のレンズ機能と組み合わせた仮のスクリーンに映像が生成されることから虚像と呼ばれる。
【0154】
なお、ヘッドマウントディスプレイでは、眼に映像を直接投射するため、レンズユニット032越しにしか、眼で外界を見ることができない。この外界の見易さであるシースルー性を確保するため、出射面306、透過面307は光学透明度の高い面とすることが望ましい。
【0155】
以上説明したように映像投射装置301では、レンズユニット302と光積分器001を搭載することで、ヘッドマウントディスプレイに用いる虚像方式を採用した光学系を小型に実現できる。
【0156】
図13は映像投射装置331を示す概略図である。映像投射装置331は、映像投射装置301の変形例であり、ヘッドマウントディスプレイなどのように眼に直接映像を投射する虚像方式を採用した光学系である。
【0157】
図2に示す映像投射装置331は、映像投射装置301と異なる映像生成装置334を搭載している。映像生成装置334は反射型の液晶素子を想定している。
【0158】
照明レンズ013を出射した光は、偏光ビームスプリッタ333に入射する。偏光ビームスプリッタ333は所定の偏光を反射し、その偏光とは直交する偏光を透過する一般的な光学素子である。
【0159】
偏光ビームスプリッタ333で反射した光線は、光検出手段021に進行し光量のモニタに用いられる。偏光ビームスプリッタ333を透過した光は、映像生成装置334に照明される。
【0160】
反射型の液晶素子は、カラーフィルタの無い液晶を想定している。このため、カラーフィルタの有る液晶と比べ画素を1/3にできるため、高い解像度の映像が実現できる。映像投射装置333の表示エリア335は映像が生成される領域を示している。なお、カラー化は、光源012にある赤、緑、青の波長帯の光を時間毎に光らせるFSCの技術で実現される。
【0161】
表示エリア335は、画素毎に所定の偏光をその偏光とは垂直方向か平行方向かどちらかを選択する機能を有している。映像として有効にする場合は、偏光ビームスプリッタ333で反射する偏光と平行な方向の偏光を選択する。
【0162】
表示エリア335を反射した映像として有効な光線と無効な光線は、偏光ビームスプリッタ333に再度入射し、映像として有効な偏光の光線のみが反射する。反射した映像として有効な光線は、レンズユニット302に進行して、前述したように眼に投射される。
【0163】
遮光開口016、017は表示エリア015の外側の余計な光線が出射しないように配置した遮光開口である。
【0164】
透過型の液晶素子に比べ、反射型の液晶素子は、液晶層の厚みを薄くできるため、偏光の選択スピードを高速にできる。このため、カラーブレイクと呼ばれるチラつきが改善される効果が得られる。
【0165】
次に映像投射装置011の変形例について説明する。
【0166】
図14は映像投射装置341を示す概略図である。映像投射装置341は、プロジェクタに用いる実像の光学系であり、映像投射装置011とは、光軸変更素子019が削除された点が異なる。映像投射装置341は、光源012から完全にストレートな構成である。光軸変更素子019が削除された点でコスト面が有利になる。
【0167】
次に
図15を用いて表示装置101の変形例について説明する。
【0168】
図15Aは、映像投射装置301を用いた表示装置351、
図15Bは、映像投射装置341を用いた表示装置353、
図15Cは映像投射装置341を用いた表示装置356の概略を示した図である。
【0169】
図15Aに示す表示装置351は、ヘッドマウントディスプレイである。表示装置351は、使用者111の頭部に装着されており、表示装置351の内部に搭載された映像投射装置301から使用者111の眼に映像が投射される。使用者は、空中に浮かんでいるような映像である虚像352が視認できる。
【0170】
図15Bに示す表示装置353は、ポケットプロジェクタである。表示装置353の内部に搭載された映像投射装置341からスクリーン355に映像354が投射される。使用者111はスクリーンに映った映像を実像として視認できる。
【0171】
図15Cに示す表示装置356は、ヘッドアップディスプレイである。表示装置356の内部に搭載された映像投射装置341から映像が虚像生成手段357に投射される。虚像生成手段は、一部の光を透過させ、残りを反射させるビームスプリッタの機能と、曲面構造であり、使用者111の眼に映像を直接投射することで虚像を生成するレンズ機能も有している。
【0172】
使用者111は、使用者は、空中に浮かんでいるような映像である虚像352が視認できる。このようなヘッドアップディスプレイは、車の運転手用のアシスト機能や、デジタルサイネージなどに適用が期待されている。
【0173】
いずれの表示装置においても、小型で、明るいことが望まれており、本発明の光積分器を用いることで、小型で明るい映像投射装置を実現できる。