(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和イミド樹脂、シアネート樹脂、イソシアネート樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、オキセタン樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アリル樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、シリコーン樹脂、トリアジン樹脂及びメラミン樹脂から選択される1種又は2種以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載のプリント配線板用の積層体。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の積層体、積層板、多層積層板、プリント配線板、及び積層板の製造方法について詳細に説明する。
なお、本発明において、積層体とは、その構成成分である熱硬化性樹脂が未硬化又は半硬化であるものを意味し、積層板とは、その構成成分である熱硬化性樹脂が硬化しているものを意味する。
【0013】
[積層体]
本発明の積層体は、1層以上の樹脂組成物層及び1層以上のガラス基板層を含む積層体であって、前記樹脂組成物層が、熱硬化性樹脂及び無機充填材を含む樹脂組成物からなるものである。
本発明の積層体の大きさは、取扱い性の観点から、幅10mm〜1000mm、長さ10mm〜3000mm(ロールで用いる場合は、長さは適宜適用される。)の範囲で選択されることが好ましい。特に、幅25mm〜550mm、長さ25mm〜550mmの範囲であることが好ましい。
本発明の積層体の厚さは、その用途により35μm〜20mmの範囲で選択されることが好ましい。積層体の厚さは、より好ましくは50〜1000μmであり、更に好ましくは100〜500μmであり、より更に好ましくは110〜300μmである。
本発明の積層体の樹脂組成物層を硬化させて樹脂硬化物層とすることにより得られる積層板は、シリコンチップと同程度に低熱膨張率かつ高弾性率であるガラス基板層を有するため、低熱膨張率及び高弾性率なものとなり、そりが抑制され、割れが生じ難いものとなる。特に、この積層板は耐熱性の高いガラス基板層を有するため、100℃から樹脂硬化物のTg未満の温度領域において低熱膨張性を顕著に有する。また、樹脂硬化物層中に無機充填材を含有しているため、樹脂硬化物層が低熱膨張率かつ高弾性率なものとなり、当該樹脂硬化物層を含む積層板は、より低膨張率かつ高弾性率なものとなる。
【0014】
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物は、熱硬化性樹脂及び無機充填材を含むものである。
≪熱硬化性樹脂≫
熱硬化性樹脂としては特に制限はなく、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和イミド樹脂、シアネート樹脂、イソシアネート樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、オキセタン樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アリル樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、シリコーン樹脂、トリアジン樹脂、メラミン樹脂が挙げられる。これらの中で、成形性や電気絶縁性に優れる点で、エポキシ樹脂及びシアネート樹脂が好ましい。
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリアジン骨格含有エポキシ樹脂、フルオレン骨格含有エポキシ樹脂、トリフェノールフェノールメタン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、キシリレン型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、多官能フェノール類及びアントラセン等の多環芳香族類のジグリシジルエーテル化合物が挙げられる。また、これらエポキシ樹脂にリン化合物を導入したリン含有エポキシ樹脂が挙げられる。これらの中で、耐熱性、難燃性の点からはビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂及びナフタレン型エポキシ樹脂が好ましい。これらは1種又は2種以上を混合して使用できる。
シアネート樹脂としては、例えば、ノボラック型シアネート樹脂、ビスフェノールA型シアネート樹脂、ビスフェノールE型シアネート樹脂、テトラメチルビスフェノールF型シアネート樹脂などのビスフェノール型シアネート樹脂、これらが一部トリアジン化したプレポリマーが挙げられる。これらの中で耐熱性、難燃性の点からはノボラック型シアネート樹脂が好ましい。これらは1種又は2種以上を混合して使用できる。
樹脂組成物に含まれる熱硬化性樹脂の含有量は、樹脂組成物の総量から無機充填材の含有量を差し引いた質量に対して、20〜80質量%の範囲であることが好ましく、40〜80質量%がより好ましく、50〜80質量%が更に好ましく、60〜75質量%がより更に好ましい。
【0015】
≪無機充填材≫
無機充填材としては、例えば、シリカ、アルミナ、タルク、マイカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ珪酸ガラスが挙げられる。
これらの中で、低熱膨張性の点からシリカが好ましく、さらに熱膨張率が0.6ppm/K程度と非常に小さく、樹脂に高充填した際の流動性の低下が少ない球状非晶質シリカがより好ましい。
球状非晶質シリカとしては、累積50%粒子径が0.01〜10μm、好ましくは0.03〜5μmのものが好ましい。
ここで累積50%粒子径とは、粉末の全体積を100%として粒子径による累積度数分布曲線を求めた時、ちょうど体積50%に相当する点の粒子径のことであり、レーザー回折散乱法を用いた粒度分布測定装置等で測定することができる。
樹脂組成物中の無機充填材の含有量は、樹脂組成物中の合計量の5〜75体積%が好ましく、15〜70体積%であることがより好ましく、30〜70体積%であることが更に好ましい。無機充填材の含有量が樹脂組成物の5〜75体積%であると、熱膨張率の低減効果が十分となり、かつ適度な流動性を有して成形性が優れる。すなわち、無機充填材の含有量が5体積%以上であると、熱膨張率の低減効果が十分なものとなり、75体積%以下であると、流動性が増加して成形性が良好になる。
質量%で表記する場合、例えば無機充填材がシリカである時には、樹脂組成物中のシリカの含有量は、樹脂組成物の8〜85質量%であることが好ましく、24〜82質量%であることがより好ましく、44〜82質量%であることが更に好ましい。
また、無機充填材に平均一次粒径が1μm以下のシリカ(ナノシリカ)を用いることによって、積層板の樹脂硬化物層上に微細な配線を形成することができる。ナノシリカとしては、比表面積が20m
2/g以上であることが好ましい。また、めっきプロセスにおける粗化処理後の表面形状を小さくする観点から、平均一次粒径は100nm以下であることが好ましい。この比表面積は、BET法によって測定することができる。
なお、ここでいう「平均一次粒径」とは、凝集した粒子の平均径、つまり二次粒子径ではなく、凝集していない単体での平均粒子径をいう。当該平均一次粒径は、例えば、レーザー回折式粒度分布計により測定して求めることができる。このような無機充填材としては、ヒュームドシリカが好ましい。
さらに、無機充填材は、耐湿性を向上させるためにシランカップリング剤等の表面処理剤で処理を行っていることが好ましく、分散性を向上させるために疎水化処理されていることが好ましい。
積層板の樹脂硬化物層上に微細配線を形成する場合、無機充填材の含有量としては、樹脂組成物中の20質量%以下であることが好ましい。配合量が20質量%以下であると、粗化処理後の良好な表面形状を維持することができ、めっき特性及び層間の絶縁信頼性の低下を防ぐことができる。一方で、無機充填材を含有することで樹脂組成物の低熱膨張化、高弾性化が期待できることから、微細配線形成と共に低熱膨張化、高弾性化も重視する場合、無機充填材の含有量は3〜20質量%とするのが好ましく、5〜20質量とするのがより好ましい。
【0016】
≪その他の成分≫
この樹脂組成物には、上記成分以外に硬化剤、硬化促進剤、熱可塑性樹脂、エラストマー、難燃剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光重合開始剤、蛍光増白剤、密着性向上剤等を添加することができる。
硬化剤の例としては、例えば、エポキシ樹脂を用いる場合には、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等の多官能フェノール化合物;ジシアンジアミド、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン等のアミン化合物;無水フタル酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、無水マレイン酸共重合体等の酸無水物;ポリイミドを用いることができる。これら硬化剤は何種類かを併用することもできる。
硬化促進剤の例としては、例えばエポキシ樹脂の硬化促進剤として、イミダゾール類及びその誘導体;有機リン系化合物;第二級アミン類、第三級アミン類、及び第四級アンモニウム塩;が挙げられる。
紫外線吸収剤の例としては、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤が挙げられる。
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系やスチレン化フェノールの酸化防止剤が挙げられる。
光重合開始剤の例としては、ベンゾフェノン類、ベンジルケタール類、チオキサントン系などの光重合開始剤が挙げられる。
蛍光増白剤の例としては、スチルベン誘導体などの蛍光増白剤が挙げられる。
密着性向上剤の例としては、尿素シランなどの尿素化合物やシランカップリング剤等の密着性向上剤が挙げられる。
【0017】
<樹脂組成物層>
樹脂組成物層は、上記の樹脂組成物からなるものである。なお、樹脂組成物層には、樹脂組成物の未硬化物のほか、半硬化物も含まれる。
本発明の樹脂組成物層の大きさは、幅10mm〜1000mm、長さ10mm〜3000mm(ロールで用いる場合は、長さは適宜適用される。)の範囲で選択されることが好ましい。特に、幅25mm〜550mm、長さ25mm〜550mmの範囲であることが取り扱い性の面から好ましい。
本発明の樹脂組成物層の1層あたりの厚さは、3μm〜200μmの範囲で選択されることが好ましい。積層体および積層板の低熱膨張化、高弾性率化の観点から、樹脂組成物の1層あたりの厚さは3〜150μmであることが好ましく、3〜100μmであることがより好ましく、5〜50μmであることが更に好ましく、5〜30μmであることがより更に好ましい。
【0018】
<ガラス基板層>
積層体の薄型化を目的としていることや加工性の観点からガラス基板層の1層あたりの厚さは、30〜200μmが好ましく、取り扱いの容易性等など実用性を勘案すると厚さは50〜150μmがより好ましく、80〜120μmが特に好ましい。
ここでいうガラス基板層の厚さとは、ガラス基板層の平均の厚さを指す。ガラス基板層の平均の厚さは、マイクロメーターや膜厚測定器など、公知の厚さ測定機器を使用して測定することができる。例えば、長方形あるいは正方形のガラス基板層の場合は、4角および中央の厚さを、マイクロメーターを使用して測定し、その平均値をガラス基板層の平均の厚さとして求めることができる。また、ガラス基材板層の素材としては、ケイ酸アルカリ系ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス等のガラスを使用することができるが、低熱膨張性の観点からホウケイ酸ガラスが好ましい。
本発明のガラス基板層の大きさは、幅10mm〜1000mm、長さ10mm〜3000mm(ロールで用いる場合は、長さは適宜適用される。)の範囲で選択されることが好ましい。特に、幅25mm〜550mm、長さ25mm〜550mmの範囲であることが取り扱い性の面からより好ましい。
このガラス基板層の熱膨張率は、シリコンチップの熱膨張率(3ppm/℃程度)に近いほど積層体又はこの積層体から得られる積層板のそりが抑制されてよいが、好ましくは8ppm/℃以下であり、より好ましくは6ppm/℃以下であり、更に好ましくは4ppm/℃以下である。
このガラス基板層の40℃における貯蔵弾性率は、大きいほどよいが、好ましくは20GPa以上、より好ましくは25GPa以上、更に好ましくは30GPa以上である。
【0019】
<層間絶縁用組成物層>
本発明の積層体は、後述する導体層との密着性の向上のために、層間絶縁用組成物層を有していてもよい。
すなわち、後述するとおり、本発明の積層体を用いてプリント配線板を製造する際に、積層体を硬化してなる積層板の表面に対してめっき等により導体層を形成することがある。また、表面に金属箔(導体層)を有する金属箔付きの積層体や積層板とすることもある。これらの場合、上記の樹脂組成物層又はこれを硬化した樹脂硬化物層の上に導体層を形成してもよいが、当該樹脂組成物層又は樹脂硬化物層の上に更に層間絶縁用組成物層又はこれを硬化した層間絶縁層を設けておき、その上に導体層を形成してもよい。この場合、層間絶縁用組成物層として導体層との密着性の高いものを用いることにより、積層板と導体層との密着性が良好なものとなる。
また、後述するとおり、積層板に対してビアホールを形成した後に、デスミア処理を行うこともある。この場合、層間絶縁用組成物層として耐デスミア性に優れるものを設けておくことにより、積層板の表面(すなわち、層間絶縁用組成物層が硬化してなる層間絶縁層)が過剰に凹凸の大きいものとなることが防止され、その表面に精細な配線パターンを形成することが可能となる。
【0020】
このように積層体が層間絶縁用組成物層を有する場合の構造としては、例えば、
ガラス基板層/樹脂組成物層/層間絶縁用組成物層
のような3層構造であってもよく、
層間絶縁用組成物層/樹脂組成物層/ガラス基板層/樹脂組成物層/層間絶縁用組成物層
のような5層構造であってもよい。なお、「ガラス基板層/樹脂組成物層/層間絶縁用組成物層」との表記は、ガラス基板層、樹脂組成物層、及び層間絶縁用組成物層がこの順に積層していることを意味する。5層構造に関する表記も同様である。
上記例以外でも、導体層と本発明の積層体間に層間絶縁用組成物を配置可能な構成であればよく、上記例に特に限定されるものではない。
【0021】
この層間絶縁用組成物層の材料としては特に限定はなく、例えば、前述した樹脂組成物でもよいが、導体層との密着性向上の観点から樹脂を選択することが望ましい。また、層間絶縁用組成物層は、無機充填材を含有していてもよく、含有していなくてもよい。
【0022】
<接着層>
また、本発明の積層体は、熱硬化性樹脂及び無機充填材を含む樹脂組成物層を有するが、それ以外に、熱硬化性樹脂を含み無機充填材を含まない接着層を有していても構わない。接着層は、例えばガラス基板層と樹脂組成物層の間に配置し、両層の接着性を高めるなどの目的で使用することができる。
【0023】
<積層体中における各層の割合>
本発明の樹脂組成物層は、低熱膨張率でありかつ高弾性率である積層板を得る観点から、積層体全体に対して、5〜60体積%であることが好ましく、5〜55体積%であることがより好ましく、10〜50体積%であることが更に好ましく、20〜40体積%であることがより更に好ましい。
本発明のガラス基板層は、低熱膨張率でありかつ高弾性率である積層板を得る観点から、積層体全体に対して、20〜90体積%であることが好ましく、30〜85体積%であることがより好ましく、35〜80体積%であることが更に好ましく、40〜75体積%であることがより更に好ましい。
積層体が層間絶縁層を有する場合にあっては、層間絶縁層は、積層体全体に対して、1〜20体積%であることが好ましく、2〜15体積%であることがより好ましく、3〜10体積%であることが更に好ましい。
積層体が接着層を有する場合にあっては、接着層は、積層体全体に対して、1〜20体積%であることが好ましく、2〜15体積%であることがより好ましく、3〜10体積%であることが更に好ましい。
【0024】
<支持体フィルム及び保護フィルム>
上記の積層体は、その表面に支持体フィルムや保護フィルムを有していてもよい。これら支持体フィルム及び保護フィルムについては、次の積層体の製造方法の説明において詳細に説明する。
【0025】
[積層体の製造方法]
上記積層体の製造方法には特に制限はなく、樹脂組成物からなるフィルムのガラス基板へのラミネートや、樹脂組成物のガラス基板への塗布等によって製造することができる。これらのうちラミネートによる方法が、生産が容易である点から好ましい。
次に、各製造方法について詳細に説明する。
<ラミネートによる積層体の製造方法>
上記の積層体は、真空ラミネートやロールラミネートのような加圧ラミネートにより、前記樹脂組成物を用いた接着フィルムとガラス基板とをラミネートすることで好適に製造することができる。この接着フィルムについては後述する。また、真空ラミネートやロールラミネートは、市販の真空ラミネーター、ロールラミネーターを使用して行うことができる。
なお、上記の樹脂組成物中の熱硬化性樹脂及び上記の層間絶縁用組成物としては、ラミネート時の温度以下で溶融するものが好適に用いられる。例えば、真空ラミネーター又はロールラミネーターを用いてラミネートする場合、一般には140℃以下で行うことから、上記の樹脂組成物中の熱硬化性樹脂及び上記の層間絶縁用組成物は、140℃以下で溶融するものが好ましい。
先ず、上記接着フィルムについて説明し、次いで、この接着フィルムを用いたラミネート方法について説明する。
【0026】
≪接着フィルム≫
真空ラミネーターや加圧ラミネーターを用いて積層体を製造する場合、上記の樹脂組成物は接着フィルムとして調製するのが一般的である。
本発明に使用される接着フィルムとしては、次の積層構造を有するものが好適に使用される。
(1) 支持体フィルム/樹脂組成物層
(2) 支持体フィルム/層間絶縁用組成物層/樹脂組成物層
また、上記(1)及び(2)の積層構造において、更に保護フィルムを積層した次の積層構造を有するものも好適に使用される。
(3) 支持体フィルム/樹脂組成物層/保護フィルム
(4) 支持体フィルム/層間絶縁用組成物層/樹脂組成物層/保護フィルム
保護フィルムは、本発明の樹脂組成物層に対し支持体フィルムとは反対側に形成され、異物の付着やキズを防止する目的に使用するものである。
なお、これら接着フィルムから支持体フィルム及び保護フィルムを除いたものを、接着フィルム本体と称することがある。
【0027】
上記(1)〜(4)の積層構造を有する接着フィルムは、当業者の公知の方法に従って製造することができる。
上記(1)の接着フィルムを製造する一例としては、有機溶剤に上記の樹脂組成物を溶解し、無機充填材が分散したワニスを調製する。次いで、支持体フィルムを支持体として、このワニスを塗布し、加熱や熱風吹きつけ等によって有機溶剤を乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成すればよい。
(2)の接着フィルムを製造する一例としては、有機溶剤に層間絶縁用組成物層を溶解し、ワニスを調製する。次いで、支持体フィルムにワニスを塗布し、加熱や熱風吹きつけ等によって有機溶剤を乾燥させることにより、層間絶縁用組成物層を形成する。その後、この層間絶縁用組成物層の表面に、上記(1)と同様にして樹脂組成物層を形成すればよい。
(3)の接着フィルムを製造する一例としては、有機溶剤に上記の樹脂組成物を溶解し、無機充填材が分散したワニスを調製する。次いで、支持体フィルム及び保護フィルムの一方に対してこのワニスを塗布し、このワニス上に支持体フィルム及び保護フィルムの他方を配置し、加熱や熱風吹きつけ等によってこのワニスの有機溶剤を乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成すればよい。
上記(4)の接着フィルムを製造する一例としては、有機溶剤に上記の層間絶縁用組成物を溶解してワニスを調製し、上記支持体フィルムにこのワニスを塗布し、加熱や熱風吹きつけ等によって有機溶剤を乾燥させることにより、層間絶縁用組成物層を形成する。次いで、この積層物の層間絶縁用組成物側の面と、上記(1)のようにして予め製造された積層物の樹脂組成物層側の面とを当接し、後述する真空ラミネーターやロールラミネーターのような加圧ラミネーターを用いてラミネートすればよい。他の例としては、支持体フィルムにワニスを用いて層間絶縁層を形成し、次いでその上に樹脂組成物用ワニスを塗布すると共にその上に保護フィルムを配置し、加熱や熱風吹きつけ等によってこのワニスの有機溶剤を乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成すればよい。
【0028】
これら層間絶縁用組成物層及び樹脂組成物層の塗工装置としては、コンマコーター、バーコーター、キスコーター、ロールコーター、グラビアコーター、ダイコーターなど、当業者に公知の塗工装置を用いることができ、作製する膜厚によって、適宜選択することが好ましい。
なお、上記の接着フィルムにおいて、層間絶縁用組成物層及び樹脂組成物層は半硬化させておいてもよい。
上記の支持体フィルムは、接着フィルムを製造する際の支持体となるものであり、多層プリント配線板を製造する際に、通常、使用する場合に、剥離、又は除去されるものである。
【0029】
支持体フィルムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリ塩化ビニルなどのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」と省略することがある)、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、更には離型紙や銅箔、アルミニウム箔などの金属箔などを挙げることができる。支持体フィルムに銅箔を用いた場合には、銅箔をそのまま導体層とし、回路形成することもできる。この場合、銅箔としては、圧延銅、電解銅箔などがあげられ、厚さが2μm〜36μmのものが一般的に用いられる。厚さの薄い銅箔を用いる場合には、作業性を向上させるために、キャリア付き銅箔を使用してもよい。
支持体フィルムには、マット処理、コロナ処理の他、離型処理を施してあってもよい。
【0030】
支持体フィルムの厚さは、通常、10μm〜150μmであり、好ましくは、25〜50μmである。10μmよりも薄い場合、取扱い性が困難となる。一方、支持体フィルムは、前記のとおり、通常、最終的に剥離、又は除去されるため、150μmを超える厚さになると、省エネの観点から好ましくない。
なお、上記の保護フィルムは、ラミネートや熱プレスの前に剥離する。なお、保護フィルムとして、支持体フィルムと同様の材料を用いてもよく、異なる材料を用いてもよい。保護フィルムの厚さは特に限定されるものではなく支持フィルムと同様でよいが、より好ましくは1〜40μmの範囲である。
【0031】
≪上記の接着フィルムを用いたラミネート方法≫
次に、上記の接着フィルムを用いたラミネート方法の一例について説明する。
接着フィルムが保護フィルムを有している場合には、保護フィルムを除去した後、接着フィルムを加圧及び加熱しながらガラス基板に圧着する。ラミネートの条件は、接着フィルム及びガラス基板を必要によりプレヒートし、圧着温度(ラミネート温度)を好ましくは60℃〜140℃、圧着圧力を好ましくは1〜11kgf/cm
2でラミネートすることが好ましい。また、真空ラミネーターを用いる場合、空気圧20mmHg(26.7hPa)以下の減圧下でラミネートすることが好ましい。また、ラミネートの方法は、バッチ式であっても、ロールでの連続式であってもよい。
上記のように、接着フィルムをガラス基板にラミネートした後、室温付近に冷却する。支持体フィルムは必要に応じて剥離する。
【0032】
<塗布による積層体の製造方法>
塗布による積層体の製造方法には特に制限はない。例えば、有機溶剤に上記の樹脂組成物を溶解し、無機充填材が分散したワニスを調製する。このワニスをガラス基板に塗布し、加熱や熱風吹きつけ等によって有機溶剤を乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成する。この樹脂組成物層は、更に半硬化させてもよい。このようにして、積層体を製造することができる。
【0033】
[積層板]
本発明の積層板は、1層以上の樹脂硬化物層及び1層以上のガラス基板層を含む積層板であって、前記樹脂硬化物層が、熱硬化性樹脂及び無機充填材を含む樹脂組成物の硬化物からなるものである。
本発明の積層板の大きさは、幅10mm〜1000mm、長さ10mm〜3000mm(ロールで用いる場合は、長さは適宜適用される。)の範囲で選択されることが好ましい。特に、幅25mm〜550mm、長さ25mm〜550mmの範囲であることが取り扱い性の面からより好ましい。
本発明の積層板の厚さは、その用途により36μm〜20mmの範囲で選択されることが好ましい。積層板の厚さは、より好ましくは50〜1000μmであり、更に好ましくは100〜500μmであり、より更に好ましくは120〜300μmである。
この積層板は、前述の積層体の樹脂組成物層を樹脂硬化物層とした構造であることが好適である。
このガラス基板層及び樹脂組成物の詳細は、前述の積層体に関する記載で説明したとおりである。
【0034】
<樹脂硬化物層>
この樹脂硬化物層の厚さは、好ましくは3〜200μmであることが好ましい。3μm以上であると、積層板の割れが抑制される。200μm以下であると、相対的にガラス基板層の厚さが大きくなって積層板の低熱膨張率化及び高弾性率化が可能となる。この観点から、樹脂硬化物層の厚さは、より好ましくは3〜150μmであり、更に好ましくは3〜100μmであり、より更に好ましくは5〜50μmであり、より更に好ましくは5〜30μmである。ただし、ガラス基板層の厚さや層の数、及び樹脂硬化物層の種類や層の数によって樹脂硬化物層の厚さの適正範囲は異なるため、適宜調整することも可能である。
この樹脂硬化物層の40℃における貯蔵弾性率は、好ましくは1〜80GPaである。1GPa以上であると、ガラス基板層が保護され、積層板の割れが抑制される。80GPa以下であると、ガラス基板層と樹脂硬化物層との熱膨張率の差による応力が抑制され、積層板のそり及び割れが抑制される。この観点から、樹脂硬化物層の貯蔵弾性率は、より好ましくは3〜70GPaであり、更に好ましくは5〜60GPaであり、より更に好ましくは10〜50GPaであり、より更に好ましくは20〜50GPaである。
積層板の片面又は両面に、銅、アルミニウムやニッケルなどの金属箔を有していてもよい。金属箔は、電気絶縁材料用途で用いるものであれば、特に制限されない。
【0035】
<層間絶縁層>
積層板は、層間絶縁層を有していてもよい。この層間絶縁層は、例えば、前記の積層体における層間絶縁用組成物層の硬化によって得られるものである。
このように積層板が層間絶縁層を有する場合の構造としては、例えば、
ガラス基板層/樹脂硬化物層/層間絶縁層
のような3層構造であってもよく、
層間絶縁層/樹脂硬化物層/ガラス基板層/樹脂硬化物層/層間絶縁層
のような5層構造であってもよい。
上記例以外でも、導体層と本発明の積層体間に層間絶縁用組成物を配置可能な構成であればよく、上記例に特に限定されるものではない。
【0036】
<積層板の特性>
積層板の40℃における貯蔵弾性率は、積層板のそり及び割れを抑制する観点から、好ましくは10〜70GPaであり、より好ましくは20〜60GPaであり、更に好ましくは25〜50GPaであり、より更に好ましくは25〜45GPaである。
積層板の50〜120℃の範囲における平均の熱膨張率は、積層板のそり及び割れを抑制する観点から、好ましくは1〜10ppm/℃であり、より好ましくは2〜8ppm/℃であり、更に好ましくは2〜6ppm/℃であり、より更に好ましくは2〜5ppm/℃である。
積層板の120〜190℃の範囲における平均の熱膨張率は、積層板のそり及び割れを抑制する観点から、好ましくは1〜15ppm/℃であり、より好ましくは2〜10ppm/℃であり、更に好ましくは2〜8ppm/℃であり、より更に好ましくは2〜6ppm/℃である。
【0037】
<積層板中における各層の割合>
本発明の樹脂硬化物層は、低熱膨張率でありかつ高弾性率である積層板を得る観点から、積層板全体に対して、10〜60体積%であることが好ましく、15〜55体積%であることがより好ましく、20〜50体積%であることが更に好ましく、20〜40体積%であることがより更に好ましい。
本発明のガラス基板層は、低熱膨張率でありかつ高弾性率である積層板を得る観点から、積層板全体に対して、20〜90体積%であることが好ましく、30〜85体積%であることがより好ましく、35〜80体積%であることが更に好ましく、40〜75体積%であることがより更に好ましい。
積層板が層間絶縁層を有する場合にあっては、層間絶縁層は、積層板全体に対して、1〜20体積%であることが好ましく、2〜15体積%であることがより好ましく、3〜10体積%であることが更に好ましい。
積層板が接着層を有する場合にあっては、接着層は、積層板全体に対して、1〜20体積%であることが好ましく、2〜15体積%であることがより好ましく、3〜10体積%であることが更に好ましい。
【0038】
[積層板の製造方法]
上記の積層板の製造方法には特に制限はない。次に、積層板の製造方法の具体例を説明する。
<積層体の加熱硬化による製造例>
前記のラミネートによって得られた積層体において、必要に応じて支持体フィルムを剥離した後、樹脂組成物層を加熱硬化させることにより、積層板を製造することができる。
加熱硬化の条件は、150℃〜220℃で20分〜80分の範囲で選択され、より好ましくは、160℃〜200℃で30分〜120分である。離型処理の施された支持体フィルムを使用した場合には、加熱硬化させた後に、支持体フィルムを剥離してもよい。
この方法によると、積層板の製造時に加圧する必要がないため、製造時に割れが生じることが抑制される。
【0039】
<プレス法による製造例>
また、本発明に係る積層板は、プレス法によって製造することができる。
例えば、前記のラミネートによって得られた積層体を、プレス法により加熱、加圧して硬化することにより、積層板を製造することができる。
また、前記の接着フィルム及び/又は当該接着フィルムから支持体フィルムや保護フィルムを除去してなる接着フィルム本体と、ガラス基板とを重ね合せ、プレス法により加熱、加圧して硬化することにより、積層板を製造することもできる。
さらに、ガラス基板に樹脂組成物を塗工・乾燥してBステージ状態としたものを重ね合せ、プレス法により加熱、加圧して硬化することにより、積層板を製造することもできる。
【0040】
[多層積層板及びその製造方法]
本発明の多層積層板は、複数個の積層板を含む多層積層板であって、少なくとも1個の積層板が前述した本発明の積層板であるものである。
この多層積層板の製造方法には特に制限はない。
例えば、前述の積層板を、前述の接着フィルムから支持体フィルムや保護フィルムを除去してなる接着フィルム本体を介して複数積層して多層化すればよい。
または、前記の積層体を複数枚(例えば、2〜20枚)重ね、積層成形することにより、多層積層板を製造することもできる。具体的には、多段プレス、多段真空プレス、連続成形機、オートクレーブ成形機などを使用し、温度100〜250℃程度、圧力2〜100MPa程度、及び加熱時間0.1〜5時間程度の範囲で成形することができる。
【0041】
[プリント配線板及びその製造方法]
本発明のプリント配線板は、上記の積層板又は多層積層板と、積層板又は多層積層板の表面に設けられた配線とを有するものである。
次に、このプリント配線板の製造方法について説明する。
【0042】
<ビアホール等の形成>
上記の積層板を、必要に応じてドリル、レーザー、プラズマ、又はこれらの組み合わせ等の方法により穴あけを行い、ビアホールやスルーホールを形成する。レーザーとしては、炭酸ガスレーザーやYAGレーザー、UVレーザー、エキシマレーザーなどが一般的に用いられる。ビアホール等の形成後、酸化剤を用いてデスミア処理してもよい。酸化剤としては、過マンガン酸塩(過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム等)、重クロム酸塩、オゾン、過酸化水素/硫酸(すなわち、過酸化水素と硫酸との混合物)、硝酸が好適であり、過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム等の水酸化ナトリウム水溶液(アルカリ性過マンガン酸水溶液)がより好適である。
【0043】
<導体層の形成>
次いで、乾式メッキ又は湿式メッキにより、積層板の表面の樹脂硬化物層上に導体層を形成する。
乾式メッキとしては、蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の公知の方法を使用することができる。
湿式メッキの場合は、まず、樹脂硬化物層の表面を、過マンガン酸塩(過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム等)、重クロム酸塩、オゾン、過酸化水素/硫酸、硝酸等の酸化剤で粗化処理し、凸凹のアンカーを形成する。酸化剤としては、特に過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム等の水酸化ナトリウム水溶液(アルカリ性過マンガン酸水溶液)が好ましく用いられる。この粗化処理は、上記のデスミア処理を兼ねていてもよい。次いで、無電解メッキと電解メッキとを組み合わせた方法で導体層を形成する。また導体層とは逆パターンのメッキレジストを形成し、無電解メッキのみで導体層を形成することもできる。
なお、積層体として、表面に金属箔よりなる支持体フィルムを有するものを用いる場合には、この導体層の形成工程は省略することができる。
【0044】
<配線パターンの形成>
その後のパターン形成の方法として、例えば、公知のサブトラクティブ法、セミアディティブ法などを用いることができる。
【0045】
[多層プリント配線板及びその製造方法]
上記のプリント配線板の一形態として、上記のようにして配線パターンを形成した積層板を複数積層して、多層プリント配線板としてもよい。
この多層プリント配線板を製造するには、上記の配線パターンを形成した積層板を、前述の接着フィルム本体を介して複数積層することによって多層化する。その後、ドリル加工又はレーザー加工によるスルーホール又はブラインドビアホールの形成と、メッキ又は導電性ペーストによる層間配線の形成を行う。このようにして、多層プリント配線板を製造することができる。
【0046】
[金属箔付きの積層板及び多層積層板、並びにそれらの製造方法]
なお、前記の積層板及び多層積層板は、片面又は両面に銅、アルミニウムやニッケル等の金属箔を有する金属箔付きの積層板及び多層積層板であってもよい。
この金属箔付き積層板の製造方法には特に制限はない。例えば、前述のとおり、支持体フィルムとして金属箔を用いることにより、金属箔付き積層板を製造することができる。また、前記のラミネートや塗工により得られた積層体を1枚又は複数枚(例えば2〜20枚)重ね、その片面又は両面に金属箔を配置した構成で積層成形することにより、金属箔付き積層板を製造することもできる。
成形条件は、電気絶縁材料用積層板や多層板の手法が適用でき、例えば、多段プレス、多段真空プレス、連続成形機、オートクレーブ成形機などを使用し、温度100〜250℃程度、圧力2〜100MPa程度、及び加熱時間0.1〜5時間程度の範囲で成形することができる。
<熱膨張率の評価方法>
積層板の熱膨張率は、熱機械分析装置(TMA:Thermal Mecanical Analysis)、温度依存3次元変位測定装置(DIC:Degital Image Correlation)、レーザー干渉法などの装置を用いて測定することができる。
<弾性率の評価方法>
積層板の弾性率は、広域粘弾性測定装置による貯蔵弾性率の測定をはじめ、静的な弾性率として曲げ弾性率を測定することができる。曲げ弾性率は、3点曲げ試験を行うことなどにより求めることができる。
【実施例】
【0047】
次に、実施例及び比較例を用いて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの記載に限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例において、「部」及び「%」とは、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。
また、
図1は、実施例1及び実施例2の製造方法を説明する模式的な断面図である。
図2は、実施例4の製造方法を説明する模式的な断面図である。
【0048】
[実施例1]
<樹脂フィルム(層間絶縁用組成物層2と支持体フィルム1との積層物)3の製造>
ジメチルアセトアミド溶剤で濃度10%になるように溶解した日本化薬株式会社製のポリアミド樹脂「BPAM−155」(製品名)を135.4部に対して、熱硬化性樹脂として日本化薬株式会社製のエポキシ樹脂「NC3000−H」(商品名、濃度100%)を62.0部、硬化剤としてDIC株式会社製のトリアジン含有フェノール性ノボラック樹脂「LA−1356−60P」(商品名、濃度60%)を23.5部、硬化促進剤として四国化成工業株式会社製の2−フェニルイミダゾール「2PZ」(商品名、濃度100%)を0.6部、無機充填材として日本アエロジル株式会社製のヒュームドシリカ「AEROSIL R972」(商品名、濃度100%、一次粒子の平均粒子径:16nm、BET法による比表面積:110±20m
2/g)を8.8部、その他の成分としてBYKケミー・ジャパン株式会社製のポリエステル変性ポリジメチルシロキサン「BYK−310」(商品名、濃度25%)を3.6部添加した後、更にジメチルアセトアミド溶剤を314.3部追加し、溶解、混合、ビーズミル分散処理を施して、ワニスを作製した。
支持体フィルム1として、38μm厚さのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)を用い、コンマコーターにてこのワニスを塗工・乾燥した。塗工厚さは5μmになるように設定し、乾燥温度;140℃、乾燥時間3分になるように設定することにより、支持体フィルム1上に層間絶縁用組成物層2を形成してなる幅270mmの樹脂フィルム3を得た(
図1(a))。
【0049】
<樹脂組成物層用のワニスの製造>
熱硬化性樹脂として日本化薬株式会社製のエポキシ樹脂「NC3000−H」(商品名、濃度100%)を31.8部、硬化剤としてDIC株式会社製のトリアジン含有クレゾールノボラック「LA−3018−50P」(商品名、濃度;50%)を7.2部及びリン含有のフェノール性樹脂である三光株式会社製の「HCA−HQ」(商品名、濃度100%)を5.1部、DIC株式会社製のフェノールノボラック「TD2131」(濃度100%)を4.4部、硬化促進剤として四国化成工業株式会社製の1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト「2PZCNS−PW」(商品名、濃度100%)を0.1部、無機充填材として固形分が70%となるようにメチルイソブチルケトン溶剤中でアミノシランカップリング剤処理を施したアドマファインテクノ株式会社製のシリカフィラー「SO−C2」(商品名、濃度100%、一次粒子の平均粒子径:500nm、BET法による比表面積:6.8m
2/g)を78.6部、のそれぞれを配合した後、更に追加溶剤としてメチルエチルケトンを42.7部配合し、溶解、混合、ビーズミル分散処理を施して、樹脂組成物層用のワニスを作製した。
【0050】
<接着フィルム(支持体フィルム1/層間絶縁用組成物層2/樹脂組成物層4)5aの製造>
樹脂フィルム3の上に、樹脂組成物層4を形成することにより、接着フィルム5aを製造した。
方法としては、上記樹脂フィルム3(支持体フィルム1/層間絶縁用組成物層2)を用い、コンマコーターにて層間絶縁用組成物層2側に樹脂組成物層用のワニスを塗工・乾燥した。塗工厚さが40μm(層間絶縁用組成物層2;5μm樹脂組成物層4;35μm設定)になるように設定し、乾燥温度105℃、乾燥時間1.2分になるように設定して樹脂組成物層4とすることにより、幅270mmの接着フィルム5aを得た(
図1(b))。
【0051】
<積層板(層間絶縁層/樹脂硬化物層/ガラス基板層/樹脂硬化物層/層間絶縁層)の製造>
ガラス基板層6として、日本電気硝子製の極薄ガラスフィルム「OA−10G」(商品名、厚さ100μm、250mm×250mm)を用いた。このガラス基板層6の両面上に、前記の接着フィルム5aをその樹脂組成物層4がガラス基板層6に当接するように配置し、バッチ式の真空加圧ラミネーター「MVLP−500」(名機株式会社製、商品名)を用いてラミネートによって積層した(
図1(c)、(d))。この際の真空度は30mmHg以下であり、温度は90℃、圧力は0.5MPaの設定とした。
室温に冷却後、支持体フィルム1を剥がし、180℃の設定の乾燥気中で60分間硬化した。この硬化により、層間絶縁用組成物層2及び樹脂組成物層4が、それぞれ、層間絶縁層2a及び樹脂硬化物層4aとなった。このようにして、5層構造の積層板(層間絶縁層/樹脂硬化物層/ガラス基板層/樹脂硬化物層/層間絶縁層)7aを得た(
図1(e))。
【0052】
[実施例2]
<接着フィルム(支持体フィルム/層間絶縁用組成物層/樹脂組成物層)5bの製造>
ワニスの塗工厚さを40μmに代えて30μm(層間絶縁用組成物層2;5μm、樹脂組成物層4;25μm設定)になるように設定したこと以外は実施例1の接着フィルム5aと同様の操作を行い、接着フィルム5bを得た。
<積層板(層間絶縁層/樹脂硬化物層/ガラス基板層/樹脂硬化物層/層間絶縁層)の製造>
ガラス基板層6として、日本電気硝子製の極薄ガラスフィルム「OA−10G」(商品名、厚さ50μm、250mm×250mm)を用いた。このガラス基板層6の両面上に前記の接着フィルム5bを用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、5層構造の積層板(層間絶縁層/樹脂硬化物層/ガラス基板層/樹脂硬化物層/層間絶縁層)を得た。
[実施例3]
<積層板(層間絶縁層/樹脂硬化物層/ガラス基板層/樹脂硬化物層/層間絶縁層)の製造>
ガラス基板層6として、日本電気硝子製の極薄ガラスフィルム「OA−10G(商品名、厚さ150μm、250mm×250mm)を用いた以外は、実施例2と同様の操作を行い、5層構造の積層板(層物層/ガラス基板層/樹脂硬化物層/層間絶縁層)を得た。
[実施例4]
<樹脂組成物層用のワニスの製造>
ジメチルアセトアミド溶剤で濃度10%になるように溶解した日本化薬株式会社製のポリアミド樹脂「BPAM−155」(製品名)を135.4部に対して、熱硬化性樹脂として日本化薬株式会社製のエポキシ樹脂「NC3000−H」(商品名、濃度100%)を62.0部、硬化剤としてDIC株式会社製のトリアジン含有フェノール性ノボラック樹脂「LA−1356−60P」(商品名、濃度60%)を23.5部、硬化促進剤として四国化成工業株式会社製の2−フェニルイミダゾール「2PZ」(商品名、濃度100%)を0.6部、無機充填材として日本アエロジル株式会社製のヒュームドシリカ「AEROSIL R972」(商品名、濃度100%)を4.8部、その他の成分としてBYKケミー・ジャパン株式会社製のポリエステル変性ポリジメチルシロキサン「BYK−310」(商品名、濃度25%)を1.7部添加した後、更にジメチルアセトアミド溶剤を66.3部追加した。その後、分散機(ナノマイザー、商品名、吉田機械興業株式会社製)を用いて、均一な樹脂ワニスを得た。
<接着フィルム(支持体フィルム1/樹脂組成物層4)5cの製造>
支持体フィルム1の上に、樹脂組成物層4を形成することにより、接着フィルム5cを製造した(
図2(a))。
方法としては、樹脂ワニスを支持体フィルムである離型処理ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(PET−38X、リンテック社製、商品名)の離型処理面に乾燥後の厚さが20μmになるようにコンマコーターを用いて塗布し、140℃で5分間乾燥させて樹脂組成物層4と支持体フィルム1からなる幅270mm接着フィルム5cを形成した。
<積層板(樹脂硬化物層/ガラス基板層/樹脂硬化物層)の製造>
ガラス基板層6として、日本電気硝子製の極薄ガラスフィルム「OA−10G」(商品名、厚さ150μm、250mm×250mm)を用いた。このガラス基板層6の両面上に、前記の接着フィルム5cをその樹脂組成物層4がガラス基板層6に当接するように配置し、バッチ式の真空加圧ラミネーター「MVLP−500」(名機株式会社製、商品名)を用いてラミネートによって積層した(
図2(b)、(c))。この際の真空度は30mmHg以下であり、温度は120℃、圧力は0.5MPaの設定とした。
室温に冷却後、支持体フィルム1を剥がし、180℃の設定の乾燥気中で60分間硬化した。この硬化により、樹脂組成物層4が樹脂硬化物層4aとなった。このようにして、3層構造の積層板(樹脂硬化物層/ガラス基板層/樹脂硬化物層)7bを得た(
図2(d))。
【0053】
[比較例1]
<樹脂フィルムの製造>
無機充填材(ヒュームドシリカ)を添加しなかったこと以外は実施例1の樹脂フィルム3と同様の操作を行い、樹脂フィルムを製造した。
<ワニスの製造>
無機充填材(シリカフィラー)を添加しなかったこと以外は実施例1の樹脂組成物層用のワニスと同様の操作を行い、ワニスを製造した。
<接着フィルムの製造>
実施例1の樹脂フィルム3及び樹脂組成物層用のワニスに代えて上記の樹脂フィルム及びワニスを用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行い、接着フィルム(支持体フィルム/層間絶縁用組成物層/樹脂組成物層)を製造した。
<積層板(層間絶縁層/樹脂硬化物層/ガラス基板層/樹脂硬化物層/層間絶縁層)の製造>
実施例1の接着フィルム5aに代えて上記接着フィルムを用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行い、5層構造の積層板(層間絶縁層/樹脂硬化物層/ガラス基板層/樹脂硬化物層/層間絶縁層)を得た。
【0054】
[参考例1]
次に、一般的に半導体パッケージやプリント配線板用の積層板として一般的な、プリプレグを用いた積層板積層板を、次のとおりに製造する。
<不飽和マレイミド基を有する樹脂組成物の溶液の製造>
温度計、攪拌装置、還流冷却管付き水分定量器の付いた加熱及び冷却可能な容積2リットルの反応容器に、4、4'−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル:69.10g、ビス(4−マレイミドフェニル)スルホン:429.90g、p−アミノフェノール:41.00g、及びプロピレングリコールモノメチルエーテル:360.00gを入れ、還流温度で2時間反応させて、酸性置換基と不飽和マレイミド基を有する樹脂組成物の溶液を得た。
【0055】
<熱硬化性樹脂組成物を含有するワニスの製造>
(1)硬化剤(A)として、上記の不飽和マレイミド基を有する樹脂組成物の溶液、
(2)熱硬化性樹脂(B)として、2官能ナフタレン型エポキシ樹脂〔大日本インキ化学工業(株)製、商品名、HP−4032D〕、
(3)変性イミダゾール(C)として、イソシアネートマスクイミダゾール〔第一工業製薬(株)製、商品名:G8009L〕、
(4)無機充填材(D)として、溶融シリカ〔アドマテック(株)製、商品名:SC2050−KC、濃度70%、一次粒子の平均粒子径:500nm、BET法による比表面積:6.8m
2/g〕、
(5)難燃性を付与するリン含有化合物(E)として、リン含有フェノール樹脂〔三光化学(株)製、商品名:HCA−HQ、リン含有量9.6質量%〕、
(6)化学粗化可能な化合物(F)として、架橋アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)粒子[〔JSR(株)製、商品名:XER−91〕、
(7)希釈溶剤として、メチルエチルケトン、
を使用し、表1に示した配合割合(質量部)で混合して、樹脂含有量(樹脂成分の合計)65質量%の均一なワニス(G)を作製した。
【0056】
【表1】
【0057】
<熱硬化性樹脂組成物からなるプリプレグの製造>
上記ワニス(G)を厚さの異なるEガラスクロスにそれぞれ含浸塗工し、160℃で10分加熱乾燥して250mm×250mmのプリプレグを得た。Eガラスクロスの種類は、旭化成イーマテリアルズのIPC規格2116を用い、作製したプリプレグの樹脂含有量は50質量%であった。これらのプリプレグを3枚組み合わせ、厚さ12μmの電解銅箔を上下に配置し、圧力3.0MPa、温度235℃で120分間プレスを行って、銅張積層板を作製した。
【0058】
[測定]
上記の実施例、比較例及び参考例で得られた積層板について、以下の方法で性能を測定・評価した。
(1)熱膨張率の測定
積層板から4mm×30mmの試験片を切り出した。銅張積層板を使用する場合は、銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を取り除いた後、試験片を切り出した。
TMA試験装置(デュポン社製、TMA2940)を用い、試験片のTg未満の熱膨張特性を観察することにより評価した。具体的には、昇温速度5℃/min、1st run、測定範囲20〜200℃、2nd run測定範囲−10〜280℃、加重5g、チャック間10mmで引っ張り法にて測定し、50〜120℃の範囲及び120〜190℃の範囲の平均の熱膨張率をそれぞれ求めた。その結果を表2に示す。
(2)貯蔵弾性率の測定
積層板から5mm×30mmの試験片を切り出した。銅張積層板を使用する場合は、銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を取り除いた後、試験片を切り出した。
広域粘弾性測定装置(レオロジ社製、DVE−V4型)を用い、スパン間を20mm、周波数を10Hz、振動変位1〜3μm(ストップ加振)の条件で、40℃における引張貯蔵弾性率を測定した。その結果を表2に示す。
【0059】
【表2】
【0060】
表2から明らかなように、本発明の実施例1〜4は、50〜120℃における低熱膨張性、40℃における高弾性に優れる。また、120〜190℃の高温領域においても、参考例1では低温領域(50〜120℃)に比べて熱膨張率が上昇しているのに対し、実施例1〜4では低温領域とほぼ同程度の低熱膨張性を有することが分かる。したがって本発明の実施例1〜4は、低温領域だけでなく高温領域においても低熱膨張性を維持している。