(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ワークセンタは寸法や公差の管理が厳しく行われるのであるが、それでも完全に規定通りの形状(例えば真球)というわけにはいかない。ワークセンタからセンタ孔(内側テーパー面)を逆算するのは間接的な測定に過ぎず、軸物ワーク自体の形状を正確に測定しているとは言い難い。しかしながら、センタ孔にはワークセンタが嵌まっているのであるから、センタ孔のなかにプローブを差し入れることもできない。したがって、これまでの測定装置では、軸物ワークのセンタ孔(内側テーパー面)を正確に測定することができなかった。
【0007】
本発明の目的は、軸物ワークの端面形状を正確に測定できる測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の測定装置は、
両端にセンタ穴を有する長尺の軸物ワークを測定する測定装置であって、
前記軸物ワークの一端側を支持する一端側支持部と、
前記軸物ワークの他端側を支持する他端側支持部と、
前記一端側支持部と前記他端側支持部とで支持された前記軸物ワークを測定するプローブを有する測定機と、を備え、
前記一端側支持部は、前記軸物ワークの一端側のセンタ穴に着脱自在に嵌まる一端支持体を有し、
前記一端支持体は、少なくとも二つの切り欠きを有し、
前記一端支持体が前記センタ穴に嵌まった状態で前記センタ穴の内面が前記切り欠きを通して外部に臨み、
前記測定機は、前記プローブを前記切り欠きを通して前記センタ穴に差し入れ、前記センタ穴の内面を測定する
ことを特徴とする。
【0009】
本発明では、
前記他端側支持部は、回転テーブルと連結し、前記回転テーブルの回転に連動して前記軸物ワークを回転させ、
前記一端側支持部は回転不能に固定されており、前記一端支持体と前記軸物ワークとの間の滑りを許容する
ことが好ましい。
【0010】
本発明では、
前記一端側支持部は、前記一端支持体を前記軸物ワークの軸線の方向に前進および後退させ、かつ、前記一端支持体を前記軸物ワークに押し込む押込みユニットを有し、
前記押込みユニットは、前記一端支持体が前記軸物ワークから後退したときに、前記切り欠きに入るガイド突起部を有する
ことが好ましい。
【0011】
本発明では、
前記押込みユニットは、
前記一端支持体を前記軸物ワークに押し込む付勢力を与える付勢力付与部と、
前記軸物ワークが無い状態で前記一端支持体を前進させたときに、この一端支持体の前進をストップさせ、かつ、前記付勢力付与部の付勢力に抗する力を前記付勢力付与部に掛けるストッパを有する
ことが好ましい。
【0012】
本発明の軸物ワークの支持機構は、
両端にセンタ穴を有する長尺の軸物ワークを支持する軸物ワークの支持機構であって、
前記軸物ワークの一端側を支持する一端側支持部と、
前記軸物ワークの他端側を支持する他端側支持部と、を備え、
前記一端側支持部は、前記軸物ワークの一端側のセンタ穴に着脱自在に嵌まる一端支持体を有し、
前記一端支持体は、少なくとも二つの切り欠きを有し、
前記一端支持体が前記センタ穴に嵌まった状態で前記センタ穴の内面が前記切り欠きを通して外部に臨む
ことを特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態を図示するとともに図中の各要素に付した符号を参照して説明する。
(第1実施形態)
図1は、測定装置100を概略的に示す斜視図である。
図2は、筐体260を外して、三次元測定機200を概略的に示す斜視図である。
【0015】
測定装置100は、基部110と、三次元測定機200と、支持機構300と、を備える。
【0016】
基部110は、支持機構300および三次元測定機200を支持するフレーム部材であり、測定装置100が床面に載置された状態で、上面が略水平になるように設置される。さらに、基部110の上には回転テーブル120が設置されており、回転テーブル120は、上下方向の回転軸を中心に回転する。
【0017】
三次元測定機200は、縦向きに支持された軸物ワークWの側方(即ち、上下方向と直交する方向)に配置されており、所謂横型三次元測定機である。三次元測定機200は、軸物ワークWの側方(軸物ワークWの軸方向と直交する方向)から軸物ワークWにプローブ241をアプローチし、軸物ワークWの形状を測定する。
【0018】
三次元測定機200は、X軸駆動機構(X軸駆動部)210、Y軸駆動機構(Y軸駆動部)220、Z軸駆動機構(Z軸駆動部)230、プローブヘッド240処理装置250、及び、筐体260、を備える。
なお、
図1、
図2において、左から右方向をX軸、紙面奥から手前をY軸、下から上方向をZ軸、とした。
三次元測定機自体はよく知られたものであるので詳しい説明は省略するが、後の説明との兼ね合いから、ここでは、プローブヘッド240について簡単に説明しておく。
【0019】
プローブヘッド240は、Y軸駆動機構220のスライダに設けられている。プローブヘッド240としては、例えば、複数の回転軸(例えば6軸回転)でプローブ241の先端を自由に動かせるものもある。あるいは、測定箇所の形状に応じてプローブを交換できるようになっているものもある。
図3には、途中で直角に曲がったプローブ242を例示した。なお、接触式プローブに限らず、非接触式プローブでもよいことはもちろんである。
【0020】
支持機構300について説明する。
支持機構300は、軸物ワークWを支持するものであり、本実施形態では、軸物ワークWを縦向きの状態で支持する。
支持機構300は、下側支持部310と、回転防止部350と、上側支持部380と、を備える。
【0021】
図4は、下側支持部310の断面図である。
下側支持部310は、回転テーブル120上に設けられ、縦向きに置かれる軸物ワークWの下端部を支持する。
下側支持部310は、下側ワークセンタ320と、下側チャック340と、を備える。
【0022】
下側ワークセンタ320は、下支持体321と、シャフト322と、を有する。
下支持体321は、略真球であって、軸物ワークWの下端面に形成された凹部W1に嵌め込まれる。下支持体321は、凹部W1の傾斜面に接触し、軸物ワークWの下側を支持する。下支持体321と軸物ワークWの凹部W1とは滑りが無いようになっている。シャフト322は、下方に向かって縮径するテーパー形状の棒状部材であって、上端部に下支持体321が連結されている。なお、ここでは、下支持体321は真球であるとしたが、例えば、円錐体であってもよい。
【0023】
下側チャック340は、上下方向に長さを持つ棒状部材であって、回転テーブル120上に立設されている。下側チャック340は、シャフト322に対応する穴341を有し、この穴341にシャフト322が上方から差し込まれる。このとき、下支持体321の中心が回転テーブル120の回転軸上にくる。シャフト322は下側チャック340に対して着脱可能であり、軸物ワークWに応じて下側ワークセンタ320を交換することができるようになっている。
【0024】
回転テーブル120が回転駆動すれば、回転テーブル120と一体的に下側支持部310も回転する。したがって、回転テーブル120、下側支持部310および軸物ワークWは一体的に回転する。
【0025】
回転防止部350は、回転テーブル120に対する軸物ワークWの相対的回転を防止するものである。
回転防止部350は、回転テーブル120上に起立した状態で設置された起立部材360と、起立部材360に設けられたアーム370と、を有する。
アーム370を軸物ワークWに引っ掛けておくことで、軸物ワークWは回転テーブル120とともに回転する。
【0026】
上側支持部380を説明する。
上側支持部380は、軸物ワークWの上端部を支持する。
上側支持部380は、Z方向粗動機構390と、押込みユニット400と、を備える。
【0027】
Z方向粗動機構390は、押込みユニット400をZ方向に移動可能にするものであり、これにより押込みユニット400を軸物ワークWの直上まで移動させる。
Z方向粗動機構390は、Zコラム391と、Zスライダ392と、を備える。
Zコラム391は、縦向きに支持される軸物ワークWと平行になるように(上下方向に平行に)基部110に立設されている。Zスライダ392は、Zコラム391に沿ってZ方向にスライド移動可能に設けられている。そして、Zスライダ392は、ロック機構(不図示)により、所望の位置でその位置をロックされる。押込みユニット400は、Zスライダ392に固定的に設けられている。
【0028】
図5は、押込みユニット400の部分断面図である。
押込みユニット400は、軸物ワークWの上端を下方に向けて押し込むことにより、軸物ワークWの支持状態を維持する。
押込みユニット400は、筐体部401と、Z方向微動機構410と、上側チャック420と、上側ワークセンタ430と、切欠きガイド450と、付勢力付与部460と、ストッパ403と、を備える。
【0029】
筐体部401は、Zスライダ392に固定的に設けられ、Zスライダ392とともにZ方向に移動可能となっている。そして、Z方向微動機構410、上側チャック420および付勢力付与部460は筐体部401に収納されている。なお、筐体部401の下端面およびZスライダ392は、上側チャック420および上側ワークセンタ430を挿通するための挿通孔402を有する。
【0030】
Z方向微動機構410は、上側ワークセンタ430がZスライダ392に対してZ方向に僅かに相対変位することを許容する。
Z方向微動機構410は、ガイド軸411と、微動スライダ412と、を有する。
ガイド軸411は、上下方向(Z方向)に延在するように筐体部401内に設けられている。微動スライダ412は、ガイド軸411に沿ってZ方向に移動可能になるようにガイド軸411に設けられている。微動スライダ412には、上側チャック420が固定的に取り付けられている。
【0031】
上側チャック420は、上下方向(Z方向)に延在する棒状部材であって、その上端付近が微動スライダ412に固定されている。上側チャック420は、微動スライダ412から垂下し、挿通孔402を通ってその先端は筐体部401の外に出ている。上側チャック420は、上下方向(Z方向)に穿設された孔421を有し、その内壁は、下方に向かうに従って拡径するテーパーになっている。この孔421には上側ワークセンタ430が差し込まれる。ちなみに、上側チャック420は微動スライダ412に固定的に取り付けられており、下側チャック340と違って、上側チャック420は回転しない。
【0032】
図6は、上側ワークセンタ430で軸物ワークWの上端面W2を支持している状態の斜視図である。
上側ワークセンタ430は、上支持体440と、シャフト431と、を有する。
【0033】
上支持体440は、軸物ワークWの上面端に形成された凹部W2に嵌め込まれ、凹部W2の傾斜面に接触する。シャフト431は、上方に向かって縮径するテーパーをもつ棒状部材であって、下端部に上支持体440が連結されている。なお、シャフト431と上支持体440とは一体成型されていてもよい。
【0034】
シャフト431を上側チャック420に差し込んだとき、上支持体440の中心が回転テーブル120の回転軸上にくるようになっている。なお、上側ワークセンタ430は、固定された上側チャック420に固定的に差し込まれており、下側ワークセンタ320と違って、上側ワークセンタ430は回転しない。したがって、上支持体440と軸物ワークWの上側凹部W2との間には必然的に滑りが生じる。このため、上支持体440は、摩耗しにくい材料、例えば、超硬質の合金(例えばタングステンカーバイド)で形成され、さらに、滑りやすいようにその表面が鏡面に仕上げられている。
【0035】
ここで、
図6に示すように、上支持体440の全体的な輪郭は真球であるが、上支持体440は、二つの切り欠き441、442を有している。切り欠き441、442の位置を説明する。
図7は、シャフト431を断面して、上側ワークセンタ430を上方から見た図である。
図7中、左から右がX軸に相当する。また、
図7中、上から下がY軸に相当する。説明のため、
図7中、座標の中心を上支持体440の中心にとり、さらに、X軸の正の方向から左回りに角度をとる。
【0036】
上支持体440を上から見たとき、0°の位置と180°の位置とに切り欠き441、442がある。0°の位置の切り欠きを右切り欠き442とし、180°の位置の切り欠きを左切り欠き441とする。
切り欠き441、442は、上支持体440の球の中心を通り、且つ、シャフト431の軸に対して直交する面で切ったときに略半円形となっており、また、シャフト431の軸に平行な方向(Z方向)に貫通した状態で形成されている。この切り欠き441、442は、上記形状に限定されるものではなく、例えば、断面形状が矩形や三角形となるように切り込んでもよい。なお、上支持体440には直径方向に二つの切り欠きがあるわけであるが、切り欠きの位置が測定装置100の座標系(マシン座標系)から見て0°と180°とに合うように位置合わせしてから、シャフト431を上側チャック420に差し込んだと解釈されたい。そして、
図7のように軸物ワークWの上端面W2に上支持体440を嵌め、これを上から見たとき、切り欠き441、442を通して軸物ワークWの内側テーパー面(W2)が見えるようになる。三次元測定機200は、プローブヘッド240をY軸方向に移動させてプローブ242を軸物ワークWに向けてアプローチする。さらに、プローブ242を下方に移動させることで、
図7、
図8に示すように、切り欠き441、442からプローブ242を差し入れ、軸物ワークWの内側テーパー面(W2)にアタックすることができる。
【0037】
次に、
図9は、Zスライダ392の下面を下から見た図である。切り欠きガイド450は、Zスライダ392の下面において、挿通孔402のすぐ横に設けられている。
切り欠きガイド450は、第1立設片450Aと、第2立設片450Bと、ガイド片451と、を有する。
第1立設片450Aは、Zスライダ392の下面からYZ平面に沿って立設されている。
第2立設片450Bは、第1立設片450Aと直交し且つZスライダ392の下面からXZ平面に沿って立設されている。
ガイド片451は、第1立設片450Aの先端部分(Zスライダ392の下面側と反対側の先端部)において、XY平面に平行に突き出た薄板である。
【0038】
ガイド片451は、ガイド片451のY方向と平行で且つ第1立設片450Aと反対側の端部側でX方向と平行な一辺側付近において、第1立設片450Aと反対側のX方向に向かって張り出したガイド突起部452を有する。つまり、ガイド片451は、平面視略L字状となっている。
ガイド片451のガイド突起部452は、微動スライダ412によって上側ワークセンタ430が上方に移動したときに、上支持体440の切り欠き441に入るようになっている。
ガイド突起部452は、X軸に平行に突き出ており、ここでは、X軸方向の負から正の方向、
図9では、左から右の方向に突き出ている。したがって、ガイド突起部452は、上側ワークセンタ430が上方に移動したとき、上支持体440の左切り欠き441に入る。
また、第2立設片450Bの高さ(Z方向と平行な辺の長さ)は、第1立設片450Aの高さよりも高くされている。(第2立設片450Bの方が、第1立設片450Aよりも下側に迫り出した構成となっている)。このため、微動スライダ412によって上側ワークセンタ430が上方に移動して、上支持体440の切り欠き441にガイド突起部452が入った状態のとき、第2立設片450Bの先端部分によって、上支持体440の一部が保護された状態となる。
【0039】
前述のように、測定装置100の座標系(マシン座標系)から見て切り欠き441、442の位置が0°と180°とに合うように上側ワークセンタ430を上側チャック420に差し込む。この位置合わせが正しくできているかどうかは、ガイド突起部452が左切り欠き441に入ることを確かめればよい。逆に、Z方向微動機構410で上側ワークセンタ430を上方に移動させたときに上支持体440がガイド突起部452につっかえてしまうような場合には、切り欠き441、442の位置合わせがズレているということである。
【0040】
付勢力付与部460は、軸物ワークWの上端面W2に上側ワークセンタ430を押し付けた状態を維持する。付勢力付与部460は、筐体部401内に収容されており、微動スライダ412に連結されている。付勢力付与部460としては、微動スライダ412に下方に向かう付勢力を与えられる機構であればよく、例えば、エアシリンダや弾性体(バネ、ゴム)等で構成されてもよい。
【0041】
ストッパ403は、付勢力付与部460の付勢力に抗する突起であって、筐体部401の内側において底面から上方に向けて突起している。ここでは、ストッパネジ403をZスライダ392および筐体部401の下から螺入し、ストッパネジ403の先端が筐体部401の内側に突き出るようにしている。
図10は、軸物ワークWを外して、上側ワークセンタ430を一番下まで下げた状態を示す図である。このとき、微動スライダ412は一番下まで下がって、微動スライダ412の裏面がストッパ403の先端に突き当たる。この状態で、付勢力付与部460で微動スライダ412を下方に付勢すると、微動スライダ412がストッパ403に押し付けられ、これにより、微動スライダ412の位置が固定される。すなわち、軸物ワークWが無くても、上側ワークセンタ430の位置が固定されることになる。
【0042】
(測定時の操作および動作)
次に、測定装置で軸物ワークWを測定する操作および動作を説明する。
まず、軸物ワークWを支持機構300で支持する。軸物ワークWを縦向きにして、軸物ワークWの下側凹部W1を下支持体321に載せる。次に、Z方向粗動機構390でZスライダ392を上方に引き上げ、Zスライダ392が軸物ワークWの直上付近にきたところでZスライダ392の位置をロックする。そして、上支持体440を軸物ワークWの上側凹部W1に嵌め込んで、さらに、付勢力付与部460にて上側ワークセンタ430を下方に押し込む。これにより、軸物ワークWが縦向きに支持される。さらに、回転防止部350のアーム370を軸物ワークWに引っ掛けておく。
【0043】
この状態で回転テーブル120を回転させる。すると、回転テーブル120とともに下側ワークセンタ320および回転防止部350が回転し、これにより軸物ワークWも回転テーブル120とともに回転する。三次元測定機200は、X軸駆動機構210、Y軸駆動機構220およびZ軸駆動機構230を駆動させて、プローブ241を軸物ワークWの側面に接触させ、軸物ワークWの形状測定を行う。ちなみに、上側ワークセンタ430は回転せず、固定された上支持体440に対して軸物ワークWの上端面(W2)は滑る。
【0044】
さらに、本実施形態に特徴的なこととして、軸物ワークWの上側凹部W2の形状を測定する。すなわち、上側凹部W2のテーパーの面精度を測定するとともに、中心軸を求める。ここで、上側ワークセンタ430は回転しないのであるから、取り付けたときの状態のままを維持している。すなわち、切り欠き441、442の位置は、測定装置100の座標系(マシン座標系)から見て0°と180°になっている。三次元測定機200のプローブを、例えば
図3のような直角に屈曲したプローブ242に交換する。そして、
図7、
図8に図示するように、上支持体440の左右の切り欠き441、442からプローブ242を差し入れ、軸物ワークWの上側凹部W2を直接測定する。なお、上側凹部W2の測定に当たっては、そのためのパートプログラムを組んでおいてもよい。すなわち、このパートプログラムには、上支持体440の大きさ(直径)、切り欠き441、442の位置(マシン座標系から見て0°と180°)および、切り欠き441、442の大きさを勘案して、二箇所の切り欠き441、442にプローブ242を差し入れる経路をセットしておく。
【0045】
このようにして、軸物ワークWの内側および外側の形状が測定される。
【0046】
(上支持体の摩耗管理)
上記に説明したように、上支持体440は固定されているので、上支持体440と軸物ワークWの上側凹部W2との間には必然的に滑りが生じる。上支持体440は、超硬質の合金(例えばタングステンカーバイド)で形成され、さらに、滑りやすいように表面を鏡面に仕上げてあるわけであるが、やはり、軸物ワークWとの摩擦により摩耗していく可能性はある。そこで、上支持体440の形状測定を定期的に実施する。この場合、
図10に示すように、軸物ワークWを外して、上側ワークセンタ430を一番下まで下げる。このとき、微動スライダ412の下面がストッパ403に突き当たる。さらに、付勢力付与部460で微動スライダ412を下方に付勢する。すると、ストッパ403に押し当てられた状態で微動スライダ412の位置が固定される。そして、
図10に示すように、上支持体440の形状をプローブ241で測定する。このとき、微動スライダ412の位置が固定されている。すなわち、上支持体440が止まっているので、安定した状態で上支持体440を高精度に測定することができる。
【0047】
このような構成を備える第1実施形態によれば次の効果を奏する。
(1)本実施形態では、上支持体440に二箇所の切り欠き441、442を設けている。
この切り欠き441、442からプローブ242を差し入れることにより、軸物ワークWの内側面W2を直接に測定できる。
【0048】
(2)本実施形態では、上側ワークセンタ430は回転しないものとしている。これにより、上支持体440の切り欠き441、442の位置が不動となり、二箇所の切り欠き441、442に対して障害なくプローブ242を差し入れることができる。ここで、仮に上支持体440が回転したとしても、切り欠き441、442を狙ってプローブ242を差し入れればよいとも考えられる。しかし、次のような問題が予想される。切り欠き441、442の位置が毎回異なると、毎回、マニュアル操作でプローブ242を切り欠き441、442に差し入れなければならない。が、マニュアル操作は極めて高度な技量を要し、時間も掛かる。ワークごとにこれを実行するのは現実的に不可能である。では、切り欠き441、442の位置が毎回決まった位置(マシン座標系から見て0°と180°)になるように回転テーブル120を回転させることも考えられる。が、やはり、回転テーブル120の位相(角度)をマニュアルで入力指示するというのは高度な技量を要し、時間も掛かる。もし、切り欠き441、442の位置が所期の位置から僅かでもズレていると、
図11に示すように、プローブ242が上支持体440に衝突する恐れがある。この点、本実施形態のように上側ワークセンタ430の回転を止めてしまえば、切り欠き441、442の位置は常に変わらないのであり、例えばパートプログラムを利用して自動的に切り欠きに対して障害なくプローブ242を差し入れることができる。
【0049】
(3)本実施形態では、ストッパ403を設け、軸物ワークWが無いときでも上側ワークセンタ430の位置を固定できるようにしている。上記のように上側ワークセンタ430を止めてしまうと、上支持体440と軸物ワークWとの間で摩擦が生じる。したがって、上支持体440の摩耗管理が必要になってくる。ここで、仮にストッパが無い状態では、付勢力付与部460による下向き付勢力も十分には発揮されず、上支持体440の位置が浮動的になってしまう。そして、プローブ241の測定圧が上支持体440に加わると、上支持体440が揺れ動いてしまう。実際、プローブ241の測定圧により上支持体440が20μm程度変位してしまい、これでは上支持体440の真球度を正確に測ることはできない。この点、ストッパ403があることで付勢力付与部460の付勢力が十分に発揮される。(すなわち、付勢力付与部460の弾性体やシリンダ内空気を十分に圧縮できるので、大きな付勢力が発揮される。)これにより、上支持体440の変位が(例えば1μm以下に)抑えられた。
【0050】
(4)本実施形態では、切欠きガイド450を設けている。
前述のように、切り欠き441、442の位置が所期の位置から僅かでもズレていると、プローブ242が上支持体440に衝突する恐れがある。
この点、ガイド突起部452が切り欠き441に入って、ガイド片451と上支持体440とが衝突しなければ、切り欠き441、442の位置が適正であることが確かめられる。
【0051】
(変形例1)
上記第1実施形態においては、上支持体440は略真球であって直径方向に二つの切り欠き441、442を二つ有していた。もちろん、軸物ワークWの内側面(W2)を直接測定できるのであれば、上支持体440の形状は変更可能である。例えば、切り欠きの位置を変更してもよい。ただ、プローブ242をY軸方向に動かしていって切り欠きにアプローチしなければならないが、
図12に図示するように、シャフト431が存在するので、シャフト431を間にして三次元測定機200の反対側に切り欠きがあってもアプローチできない。
図12中、点描を付した領域は、シャフト431が障害となってプローブ242を差し込めない領域である。(もちろん、測定に使用できないというだけで、切り欠きがこの領域にあってもよい。)
【0052】
図13は、上支持体440を円錐形にした場合の例である。
図14は、120°間隔で3つの切り欠き443、444、445を設けた場合の例示である。
図15は、90°間隔で4つの切り欠き446、447、448、449を設けた場合の例示である。
【0053】
(変形例2)
上記第1実施形態においては、上側ワークセンタ430は回転しないものとして説明した。これは、プローブ242と上支持体440との衝突を防止するため方策であった。
プローブ242と上支持体440との衝突を回避できるのであれば、上側ワークセンタ430の回転を許容してもよい。
上側ワークセンタ430(上支持体440)が回転すると、測定装置100としては、切り欠きがどこにあるのかすぐには判らなくなってしまう。しかしながら、何らかの方法で切り欠きの位置を検出できるのであれば、プローブ242と上支持体440との衝突を回避することは可能である。例えば、軸物ワークWの凹部W2を測定する前に、まず上支持体440を倣い測定して、切り欠き位置を確かめるようにしてもよい。あるいは、上支持体440に複数の方向からレーザーを照射し、レーザー測距によって切り欠きの位置を確かめるようにしてもよい。
【0054】
あるいは、上支持体440を上に上げたときに上支持体440の切欠き441、442を所定位置にあわせておき、そのままの状態を保って(回転させないで)軸物ワークWの凹部W2に上支持体440を嵌め込む。そして、最初の測定項目として、凹部W2の内側テーパ面を測定する。つまり、軸物ワークWとともに上支持体440が回転する前に、切欠き441、442からプローブ242を差し込んで凹部W2の内側テーパ面を測定してしまう。
この方法(操作順序)であれば、上支持体440の回転を許容してもよい。
【0055】
上支持体440を上に上げたときに上支持体440の切欠き441、442を所期の位置に合わせるには、前述のガイド突起部452を利用することができる。
さらに、ガイド突起部452の下面に下に尖った錐体を設けたり、上支持体440の切り欠きの数を多くしたり(例えば、3つ、4つ、それ以上にする)すれば、上支持体440が上に上がったときに切り欠きがガイド突起部452に合うように上支持体440の角度が誘導されるようになる。
従って、上支持体440を持ち上げた状態からただ下に下げるという自然な操作で上支持体440の切欠き441、442が所期の位置に合った状態で軸物ワークを保持することができる。
【0056】
なお、本発明は上記実施形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
上記では軸物ワークを縦向きに支持する場合を例示したが、軸物ワークを横向きに支持するようにしてもよい。
三次元測定機は、いわゆる横型三次元測定機に限らず、縦型三次元測定機であってもよい。