(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記水添ブロック共重合体(A)の重合体ブロック(a)と重合体ブロック(b)との質量比[(a)/(b)]が1/99〜70/30である、請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物。
前記ファルネセン以外の共役ジエンが、ブタジエン、イソプレン及びミルセンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂組成物。
前記樹脂組成物が更に軟化剤(C)を含有し、前記水添ブロック共重合体(A)100質量部に対する前記軟化剤(C)の量が0.1〜300質量部である、請求項1〜7のいずれかに記載の樹脂組成物。
下記水添ブロック共重合体(A)からなる樹脂改質剤を用いる、ポリフェニレンエーテル系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂及びポリアミド系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂(B)の改質方法であり、
上記水添ブロック共重合体(A)と上記樹脂(B)との質量比[(A)/(B)]を1/99〜60/40で用いる改質方法。
〔水添ブロック共重合体(A)〕
芳香族ビニル化合物由来の構造単位からなる重合体ブロック(a)と、ファルネセン由来の構造単位(b1)を45〜100質量%含有し、ファルネセン以外の共役ジエン由来の構造単位(b2)を55〜0質量%含有する重合体ブロック(b)とを含有し、上記重合体ブロック(b)中の炭素−炭素二重結合が70〜100mol%水素添加された水添ブロック共重合体。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、芳香族ビニル化合物由来の構造単位からなる重合体ブロック(a)と、ファルネセン由来の構造単位(b1)を1〜100質量%含有し、ファルネセン以外の共役ジエン由来の構造単位(b2)を99〜0質量%含有する重合体ブロック(b)とを含有し、前記重合体ブロック(b)中の炭素−炭素二重結合が50mol%以上水素添加された水添ブロック共重合体(A)と、ポリフェニレンエーテル系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、及びポリアミド系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂(B)とを含有するものである。本発明の樹脂組成物において、水添ブロック共重合体(A)は前記樹脂(B)の樹脂改質剤として作用し、得られる樹脂組成物に柔軟性を付与し、流動性を向上させるため成形加工性を向上させることができる。
【0011】
<水添ブロック共重合体(A)>
本発明の樹脂組成物に用いられる水添ブロック共重合体(A)は、芳香族ビニル化合物由来の構造単位からなる重合体ブロック(a)と、ファルネセン由来の構造単位(b1)を1〜100質量%含有し、ファルネセン以外の共役ジエン由来の構造単位(b2)を99〜0質量%含有する重合体ブロック(b)とを含有し、前記重合体ブロック(b)中の炭素−炭素二重結合が50mol%以上水素添加されてなるものである。
【0012】
前記重合体ブロック(a)は、芳香族ビニル化合物由来の構造単位で構成される。かかる芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−t−ブチルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、N,N−ジエチル−4−アミノエチルスチレン、ビニルピリジン、4−メトキシスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン及びジビニルベンゼン等が挙げられる。これらの芳香族ビニル化合物は1種を単独で、又は2種以上を併用してもよい。中でも、スチレン、α−メチルスチレン及び4−メチルスチレンからなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましく、スチレンが更に好ましい。
【0013】
前記重合体ブロック(b)は、ファルネセン由来の構造単位(b1)を1〜100質量%含有し、ファルネセン以外の共役ジエン由来の構造単位(b2)を99〜0質量%含有する。
構造単位(b1)は、α−ファルネセン、又は下記式(I)で表されるβ−ファルネセン由来の構造単位のいずれでもよいが、水添ブロック共重合体(A)の製造容易性の観点から、β−ファルネセン由来の構造単位であることが好ましい。なお、α−ファルネセンとβ−ファルネセンとは組み合わせて用いてもよい。
【0015】
ファルネセン以外の共役ジエンに由来する構造単位(b2)を構成する共役ジエンとしては、例えばブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチルブタジエン、2−フェニルブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、1,3−オクタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、2−メチル−1,3−オクタジエン、1,3,7−オクタトリエン、ミルセン及びクロロプレン等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用してもよい。中でも、ブタジエン、イソプレン及びミルセンからなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましく、ブタジエン及びイソプレンから選ばれる1種以上が更に好ましい。
【0016】
重合体ブロック(b)は、ファルネセン由来の構造単位(b1)を1〜100質量%含有し、ファルネセン以外の共役ジエン由来の構造単位(b2)を99〜0質量%含有する。ファルネセンに由来する構造単位(b1)の含有量が1質量%未満であると、成形加工性に優れ、かつ柔軟性が高い成形体を与える樹脂組成物を得ることができない。重合体ブロック(b)中の構造単位(b1)の含有量は30〜100質量%が好ましく、45〜100質量%がより好ましい。なお、重合体ブロック(b)中の構造単位(b1)の含有量が100質量%であるものも好ましい態様の一つである。また、重合体ブロック(b)がファルネセン以外の共役ジエン由来の構造単位(b2)を含有する場合には、構造単位(b2)の含有量は70質量%以下が好ましく、55質量%以下がより好ましい。
また、成形加工性に優れ、かつ柔軟性が高い成形体を与える観点から、重合体ブロック(b)中における構成単位(b1)及び構成単位(b2)の合計含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、より更に好ましくは99質量%以上、より更に好ましくは100質量%である。
【0017】
水添ブロック共重合体(A)は、重合体ブロック(a)及び重合体ブロック(b)をそれぞれ少なくとも1個含む未水添のブロック共重合体(以下「ブロック共重合体(P)」ともいう)の水素添加物である。このブロック共重合体(P)の水素添加物は、重合体ブロック(a)を2個以上、及び重合体ブロック(b)を1個以上含むブロック共重合体(P)の水素添加物であることが好ましい。
重合体ブロック(a)及び重合体ブロック(b)の結合形態は特に制限されず、直線状、分岐状、放射状、又はそれらの2つ以上の組み合わせであってもよい。中でも、各ブロックが直線状に結合した形態が好ましく、重合体ブロック(a)をa、重合体ブロック(b)をbで表したときに、(a−b)
l、a−(b−a)
m、又はb−(a−b)
nで表される結合形態が好ましい。なお、前記l、m及びnはそれぞれ独立して1以上の整数を表す。
前記結合形態としては、成形加工性及び取り扱い性等の観点から、a−b−aで表されるトリブロック共重合体が好ましい。
また、ブロック共重合体(P)が、重合体ブロック(a)を2個以上又は重合体ブロック(b)を2個以上有する場合には、それぞれの重合体ブロックは、同じ構造単位からなる重合体ブロックであっても、異なる構造単位からなる重合体ブロックであってもよい。例えば、〔a−b−a〕で表されるトリブロック共重合体における2個の重合体ブロック(a)において、それぞれの芳香族ビニル化合物は、その種類が同じであっても異なっていてもよい。
【0018】
ブロック共重合体(P)は、前記重合体ブロック(a)と重合体ブロック(b)のほか、本発明の効果を阻害しない限り、他の単量体で構成される重合体ブロック(c)を含有していてもよい。
かかる他の単量体としては、例えばプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン等の不飽和炭化水素化合物;アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、2−アクリロイルエタンスルホン酸、2-メタクリロイルエタンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、酢酸ビニル、メチルビニルエーテル等の官能基含有不飽和化合物;等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用してもよい。
ブロック共重合体(P)が重合体ブロック(c)を有する場合、その含有量は、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更に好ましく、10質量%以下がより更に好ましい。
また、ブロック共重合体(P)中における、前記重合体ブロック(a)と重合体ブロック(b)の合計含有量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、より更に好ましくは90質量%以上である。
【0019】
水添ブロック共重合体(A)中の重合体ブロック(a)と重合体ブロック(b)との質量比[(a)/(b)]は、1/99〜70/30であることが好ましい。当該範囲内であると、水添ブロック共重合体(A)は適度な硬度を有し、後述する樹脂(B)とよく相容するため、成形加工性に優れ、かつ柔軟性が高い樹脂組成物を得ることができる。前記観点から、重合体ブロック(a)と重合体ブロック(b)との質量比[(a)/(b)]は10/90〜70/30が好ましく、10/90〜60/40がより好ましく、15/85〜55/45が更に好ましく、15/85〜50/50がより更に好ましい。
【0020】
水添ブロック共重合体(A)のピークトップ分子量(Mp)は、成形加工性の観点から、4,000〜1,500,000が好ましく、9,000〜1,200,000がより好ましく、30,000〜1,000,000が更に好ましく、50,000〜800,000がより更に好ましく、50,000〜500,000がより更に好ましく、70,000〜400,000が特に好ましい。なお、本明細書におけるピークトップ分子量(Mp)は後述する実施例に記載した方法で測定した値を意味する。
【0021】
水添ブロック共重合体(A)の分子量分布(Mw/Mn)は、1〜4が好ましく、1〜3がより好ましく、1〜2が更に好ましい。分子量分布が前記範囲内であると、水添ブロック共重合体(A)の粘度のばらつきが小さく、取り扱いが容易である。
【0022】
<水添ブロック共重合体(A)の製造方法>
水添ブロック共重合体(A)は、例えばブロック共重合体(P)をアニオン重合により得る重合工程、及び該ブロック共重合体(P)中の重合体ブロック(b)中の炭素−炭素二重結合を50mol%以上水素添加する工程により好適に製造できる。
〔重合工程〕
ブロック共重合体(P)は、溶液重合法又は特表2012−502135号公報、特表2012−502136号公報に記載の方法等により製造することができる。中でも溶液重合法が好ましく、例えば、アニオン重合やカチオン重合等のイオン重合法、ラジカル重合法等の公知の方法を適用できる。中でもアニオン重合法が好ましい。アニオン重合法としては、溶媒、アニオン重合開始剤、及び必要に応じてルイス塩基の存在下、芳香族ビニル化合物、ファルネセン及び/又はファルネセン以外の共役ジエンを逐次添加して、ブロック共重合体(P)を得る。
アニオン重合開始剤としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属;ランタン、ネオジム等のランタノイド系希土類金属;前記アルカリ金属、アルカリ土類金属、ランタノイド系希土類金属を含有する化合物等が挙げられる。中でもアルカリ金属及びアルカリ金属を含有する化合物、具体的には、有機アルカリ金属化合物が好ましい。
【0023】
有機アルカリ金属化合物としては、例えばメチルリチウム、エチルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、フェニルリチウム、スチルベンリチウム、ジリチオメタン、ジリチオナフタレン、1,4−ジリチオブタン、1,4−ジリチオ−2−エチルシクロヘキサン、1,3,5−トリリチオベンゼン等の有機リチウム化合物;ナトリウムナフタレン、カリウムナフタレン等が挙げられる。中でも有機リチウム化合物が好ましく、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウムがより好ましく、sec−ブチルリチウムが特に好ましい。なお、有機アルカリ金属化合物は、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジヘキシルアミン、ジベンジルアミン等の第2級アミンと反応させて、有機アルカリ金属アミドとして用いてもよい。
重合に用いる有機アルカリ金属化合物の使用量は、ブロック共重合体(P)の分子量によっても異なるが、通常、芳香族ビニル化合物とファルネセン及びファルネセン以外の共役ジエンの総量に対して0.01〜3質量%の範囲である。
【0024】
溶媒としては、アニオン重合反応に悪影響を及ぼさなければ特に制限はなく、例えば、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、イソオクタン等の飽和脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の飽和脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用してもよい。溶媒の使用量には特に制限はない。
【0025】
ブロック共重合体(P)の製造においては、ルイス塩基を用いることが好ましい。ルイス塩基は、ファルネセン由来の構造単位及びファルネセン以外の共役ジエン由来の構造単位におけるミクロ構造を制御する役割がある。かかるルイス塩基としては、例えばジブチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル化合物;ピリジン;N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、トリメチルアミン等の3級アミン;カリウムt−ブトキシド等のアルカリ金属アルコキシド;ホスフィン化合物等が挙げられる。ルイス塩基を使用する場合、その量は、通常、アニオン重合開始剤1molに対して0.01〜1000mol当量の範囲であることが好ましい。
【0026】
重合反応の温度は、通常−80〜150℃、好ましくは0〜100℃、より好ましくは10〜90℃の範囲である。重合反応の形式は回分式でも連続式でもよい。重合反応系中の芳香族ビニル化合物、ファルネセン及び/又はファルネセン以外の共役ジエンの存在量が特定範囲になるように、重合反応液中に各単量体を連続的あるいは断続的に供給するか、また、重合反応液中で各単量体が特定比となるように順次重合することで、ブロック共重合体(P)を製造できる。
重合反応は、メタノール、イソプロパノール等のアルコールを重合停止剤として添加して停止できる。得られた重合反応液をメタノール等の貧溶媒に注いでブロック共重合体(P)を析出させるか、重合反応液を水で洗浄し、分離後、乾燥することによりブロック共重合体(P)を単離できる。
【0027】
{変性共重合体}
本発明においては、後述の水素添加工程の前に前記ブロック共重合体(P)に対して官能基を導入して、ブロック共重合体(P)を変性してもよい。
導入可能な官能基としては、例えばアミノ基、アルコキシシリル基、水酸基、エポキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、メルカプト基、イソシアネート基、酸無水物等が挙げられる。
ブロック共重合体(P)の変性方法としては、例えば、重合停止剤を添加する前に、重合活性末端と反応し得る四塩化錫、テトラクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジメチルジエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、2,4−トリレンジイソシアネート等のカップリング剤や、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、N−ビニルピロリドン等の重合末端変性剤、又は特開2011−132298号公報に記載のその他の変性剤を添加する方法が挙げられる。また、単離後の共重合体に無水マレイン酸等をグラフト化してもよい。
官能基が導入される位置はブロック共重合体(P)の重合末端でも、側鎖でもよい。また上記官能基は1種を単独で又は2種以上を組み合わせてもよい。上記変性剤は、アニオン重合開始剤に対して、通常、0.01〜10mol当量の範囲であることが好ましい。
【0028】
〔水素添加工程〕
前記方法により得られたブロック共重合体(P)又は変性されたブロック共重合体(P)を水素添加する工程に付すことにより、水添ブロック共重合体(A)を得ることができる。水素添加する方法は公知の方法を用いることができる。例えば、水素添加反応に影響を及ぼさない溶媒にブロック共重合体(P)を溶解させた溶液に、チーグラー系触媒;カーボン、シリカ、けいそう土等に担持されたニッケル、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム金属触媒;コバルト、ニッケル、パラジウム、ロジウム、ルテニウム金属を有する有機金属錯体等を、水素添加触媒として存在させて水素化反応を行う。水素添加工程においては、前記したブロック共重合体(P)の製造方法によって得られたブロック共重合体(P)を含む重合反応液に水素添加触媒を添加して水素添加反応を行ってもよい。本発明においては、パラジウムをカーボンに担持させたパラジウムカーボンが好ましい。
水素添加反応において、水素圧力は0.1〜20MPaが好ましく、反応温度は100〜200℃が好ましく、反応時間は1〜20時間が好ましい。
【0029】
水添ブロック共重合体(A)中の重合体ブロック(b)中の炭素−炭素二重結合の水素添加率は、50〜100mol%である。前記水素添加率未満であると、成形加工性に優れ、かつ柔軟性に優れる樹脂組成物を得ることが難しい。前記観点から、前記水素添加率は、70〜100mol%が好ましく、80〜100mol%がより好ましく、85〜100mol%が更に好ましい。なお、水素添加率は、ブロック共重合体(P)及び水素添加後の水添ブロック共重合体(A)について
1H−NMRを測定することにより算出できる。
【0030】
<樹脂(B)>
本発明の樹脂組成物に用いられる樹脂(B)は、ポリフェニレンエーテル系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、及びポリアミド系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂である。本発明においては、これらの樹脂(B)に前記水添ブロック共重合体(A)を含有させることにより、柔軟性を付与することができ、かつ流動性が向上し、成形加工性を向上させた樹脂組成物とすることができる。また、特に樹脂(B)としてアクリル系樹脂を用いた場合、前記水添ブロック共重合体(A)との併用により、成形体の透明性を維持しつつ、樹脂組成物の柔軟性、流動性及び成形加工性を向上させることができる。
【0031】
〔ポリフェニレンエーテル系樹脂〕
ポリフェニレンエーテル系樹脂としては、例えば、下記一般式(II)で示される構造単位を有する樹脂を用いることができる。
【0033】
(式中、R
1、R
2、R
3、及びR
4はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、置換炭化水素基、アルコキシ基、シアノ基、フェノキシ基又はニトロ基を表し、mは重合度を示す整数である。)
【0034】
ポリフェニレンエーテル系樹脂としては、前記一般式(II)におけるR
1及びR
2がアルキル基、特に炭素原子数1〜4のアルキル基であるものが好ましい。また、R
3及びR
4が、水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基であるものが好ましい。
ポリフェニレンエーテル系樹脂の好ましい具体例としては、例えばポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジプロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジメトキシ−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジクロロメチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジブロモメチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジフェニル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジトリル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジベンジル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,5−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル等が挙げられる。中でも特に好ましいポリフェニレンエーテル系樹脂は、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルである。またこれらは極性基を有する変性剤により変性されていてもよい。極性基としては、例えば、酸ハライド、カルボニル基、酸無水物、酸アミド、カルボン酸エステル、酸アジド、スルフォン基、ニトリル基、シアノ基、イソシアン酸エステル、アミノ基、イミド基、水酸基、エポキシ基、オキサゾリン基、チオール基等が挙げられる。また、これらのポリフェニレンエーテル系樹脂は、ポリスチレン樹脂との混合物であってもよい。
また、ポリフェニレンエーテル系樹脂の温度250℃、荷重98Nにおけるメルトフローレート(MFR)は、0.1〜30g/10分が好ましく、0.2〜20g/10分がより好ましい。
【0035】
〔スチレン系樹脂〕
スチレン系樹脂としては、ポリスチレン、ポリメチルスチレン、ポリジメチルスチレン、ポリt−ブチルスチレン等のポリアルキルスチレン;ポリクロロスチレン、ポリブロモスチレン、ポリフルオロスチレン、ポリフルオロスチレン等のポリハロゲン化スチレン;ポリクロロメチルスチレン等のポリハロゲン置換アルキルスチレン;ポリメトキシスチレン、ポリエトキシスチレン等のポリアルコキシスチレン;ポリカルボキシメチルスチレン等のポリカルボキシアルキルスチレン;ポリビニルベンジルプロピルエーテル等のポリアルキルエーテルスチレン;ポリトリメチルシリルスチレン等のポリアルキルシリルスチレン;ポリ(ビニルベンジルジメトキシホスファイド)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体等が好ましく挙げられる。
これらの中でも、スチレン系樹脂としては、ポリスチレン、ポリメチルスチレン、ポリジメチルスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体が好ましい。
また、スチレン系樹脂の温度200℃、荷重49Nにおけるメルトフローレート(MFR)は、1.0〜100g/10分が好ましく、2.0〜50g/10分がより好ましい。
【0036】
〔アクリル系樹脂〕
アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構造単位から主としてなるアクリル系樹脂が挙げられ、アクリル系樹脂中における(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構造単位の割合は50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。
アクリル系樹脂を構成する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸のアルキルエステルが挙げられる。アクリル系樹脂は、これらの(メタ)アクリル酸エステルの1種又は2種以上から誘導される構造単位を有していることが好ましい。
本発明において用いるアクリル系樹脂は、必要に応じて、(メタ)アクリル酸エステル以外の不飽和単量体から誘導される構造単位の1種又は2種以上を有していてもよい。本発明においては、成形加工性に優れ、かつ柔軟性に優れる樹脂組成物を得る観点から、アクリル酸メチルとメタクリル酸メチルとの共重合体を用いることが好ましい。
また、アクリル系樹脂の温度230℃、荷重49Nにおけるメルトフローレート(MFR)は、0.1〜50g/10分が好ましく、0.5〜20g/10分がより好ましい。
【0037】
〔ポリカーボネート系樹脂〕
ポリカーボネート系樹脂としては、特に制限はないが、ビスフェノールA、ヒドロキノン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,4−ジヒドロキシジフェニルメタン、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン等の2価のフェノール類と、ホスゲン、ハロゲンホルメート、カーボネートエステル等のカーボネート前駆体とから製造されるポリカーボネート系樹脂が挙げられる。
中でも、入手容易性の観点から、2価のフェノール類としてビスフェノールAを、またカーボネート前駆体としてホスゲンを用いて製造されるポリカーボネート系樹脂が好ましい。
また、ポリカーボネート系樹脂の温度300℃、荷重21Nにおけるメルトフローレート(MFR)は、0.1〜100g/10分が好ましく、1.0〜60g/10分がより好ましい。
【0038】
〔ポリアミド系樹脂〕
ポリアミド系樹脂としては、アミド結合を有する樹脂であって、例えば、ポリカプロアミド(ナイロン−6)、ポリウンデカンアミド(ナイロン−11)、ポリラウリルラクタム(ナイロン−12)、ポリヘキサメチレンアジバミド(ナイロン−6,6)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン−6,12)等の単独重合体、カプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体(ナイロン−6/12)、カプロラクタム/アミノウンデカン酸共重合体(ナイロン−6/11)、カプロラクタム/ω−アミノノナン酸共重合体(ナイロン−6,9)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン−/6/6,6)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体(ナイロン−6/6、6/6,12)等の共重合体が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、ポリアミド系樹脂の温度230℃、荷重21Nにおけるメルトフローレート(MFR)は、1〜100g/10分が好ましく、2〜70g/10分がより好ましい。
【0039】
前記水添ブロック共重合体(A)と前記樹脂(B)との質量比[(A)/(B)]は、水添ブロック共重合体(A)の改質効果を高める観点から、1/99〜60/40が好ましく、5/95〜55/45がより好ましく、5/95〜51/49が更に好ましく、5/95〜35/65がより更に好ましく、5/95〜25/75が特に好ましい。なお、本発明の樹脂組成物中における水添ブロック共重合体(A)の含有量は特に制限されず、用いる樹脂(B)の種類、物性、用途などに応じて適宜調整できる。
【0040】
本発明の樹脂組成物は、前記水添ブロック共重合体(A)を含有することにより、上記樹脂(B)を含む樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)を所望の範囲に調整することができる。したがって、本発明の樹脂組成物のMFRの好適な範囲は、用いる樹脂(B)の種類、物性、用途、あるいは水添ブロック共重合体(A)と前記樹脂(B)との質量比などによって適宜定めることができる。
【0041】
<任意成分>
本発明の樹脂組成物は、柔軟性を更に高める目的から、軟化剤(C)を含有してもよい。かかる軟化剤(C)としては、例えばパラフィン系、ナフテン系、芳香族系のプロセスオイル;ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート等のフタル酸誘導体;ホワイトオイル;ミネラルオイル;エチレンとα−オレフィンとの液状コオリゴマー;流動パラフィン;ポリブテン;低分子量ポリイソブチレン;液状ポリブタジエン、液状ポリイソプレン、液状ポリイソプレン/ブタジエン共重合体、液状スチレン/ブタジエン共重合体、液状スチレン/イソプレン共重合体等の液状ポリジエン及びその水添物等が挙げられる。中でも、水添ブロック共重合体(A)との相容性の観点から、パラフィン系プロセスオイル;エチレンとα−オレフィンとの液状コオリゴマー;流動パラフィンが好ましい。
軟化剤(C)を含有する場合の軟化剤(C)の量は、成形加工性を向上させる観点から水添ブロック共重合体(A)100質量部に対して、0.1〜300質量部が好ましく、1〜150質量部が更に好ましい。
【0042】
本発明の樹脂組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、更に下記他の成分を含有してもよい。
他の成分としては、例えば無機充填剤が挙げられる。かかる無機充填剤の具体例としては、タルク、炭酸カルシウム、シリカ、ガラス繊維、カーボン繊維、マイカ、カオリン、酸化チタン等が挙げられるが、これらの中でもタルクが好ましい。
更に、本発明の樹脂組成物には、上記以外の他の添加剤、例えば熱老化防止剤、酸化防止剤、光安定剤、帯電防止剤、離型剤、難燃剤、発泡剤、顔料、染料、増白剤等を添加することができる。
前記他の成分を用いる場合、本発明の樹脂組成物中の他の成分の含有量は、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
【0043】
<樹脂組成物の製造方法>
本発明の樹脂組成物の製造方法に特に制限はなく、前記水添ブロック共重合体(A)、前記樹脂(B)及び必要に応じて前記その他の任意成分をプレブレンドして一括混合してから一軸押出機、多軸押出機、バンバリーミキサー、加熱ロール、各種ニーダー等を用いて溶融混練する方法、水添ブロック共重合体(A)、樹脂(B)及び必要に応じてその他の任意成分を別々の仕込み口から供給して溶融混練する方法等が挙げられる。なお、プレブレンドする方法としては、ヘンシェルミキサー、ハイスピードミキサー、Vブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダー、コニカルブレンダー等の混合機を用いる方法が挙げられる。なお、溶融混練時の温度は好ましくは150℃〜300℃の範囲で任意に選択することができる。
【0044】
[成形体]
本発明の成形体は、本発明の樹脂組成物からなるものである。
成形体の形状は、本発明の樹脂組成物を用いて製造できる成形体であればいずれでもよく、例えばペレット、フィルム、シート、プレート、パイプ、チューブ、棒状体、粒状体等種々の形状に成形することができる。この成形体の製造方法は特に制限はなく、従来からの各種成形法、例えば、射出成形、ブロー成形、プレス成形、押出成形、カレンダー成形等により成形することができる。本発明の樹脂組成物は成形加工性に優れるため、ハイサイクルの射出成形により、好適に成形体を得ることができる。
【0045】
本発明の樹脂組成物及び成形体は、柔軟性、及び成形加工性に優れるため、粘接着剤、シート、フィルム、チューブ、ホース、ベルト等の成形品として好適に用いることができる。具体的には、ホットメルト接着剤、粘着テープ、保護フィルムの粘着層等の粘接着材;防振ゴム、マット、シート、クッション、ダンパー、パッド、マウントゴム等の各種防振、制振部材;スポーツシューズ、ファッションサンダル等の履物;テレビ、ステレオ、掃除機、冷蔵庫等の家電用品部材;建築物の扉、窓枠用シーリング用パッキン等の建材;バンパー部品、ボディーパネル、ウェザーストリップ、グロメット、インパネ等の表皮、エアバッグカバー等の自動車内装、外装部品;はさみ、ドライバー、歯ブラシ、スキーストック等のグリップ;食品ラップフィルム等の食品用包装材;輸液バッグ、シリンジ、カテーテル等の医療用具;食品、飲料、薬等を貯蔵する容器用の栓、キャップライナー等に好適に用いることができる。
【0046】
[樹脂改質剤]
本発明の改質剤は、前記水添ブロック共重合体(A)からなり、ポリフェニレンエーテル系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂及びポリアミド系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂(B)用の樹脂改質剤である。
本発明の樹脂改質剤と前記樹脂(B)とを混合することにより、樹脂組成物に対して柔軟性を付与することができると共に流動性が向上するため、成形加工性に優れる樹脂組成物を得ることができる。
前記水添ブロック共重合体(A)の好適態様、前記樹脂(B)の好適態様、及び前記水添ブロック共重合体(A)と樹脂(B)との質量比の好適態様は、前記本発明の樹脂組成物の項に記載の好適態様と同様である。
【実施例】
【0047】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、β−ファルネセン(純度97.6質量% アミリス,インコーポレイティド社製)は、3Åのモレキュラーシーブにより精製し、窒素雰囲気下で蒸留することで、ジンギベレン、ビサボレン、ファルネセンエポキシド、ファルネソール異性体、E,E−ファルネソール、スクアレン、エルゴステロール及びファルネセンの数種の二量体等の炭化水素系不純物を除き、以下の重合に用いた。
【0048】
本実施例及び比較例において使用した各成分は以下のとおりである。
<水添ブロック共重合体(A)>
・後述の製造例1〜7の水添ブロック共重合体(A−1)〜(A−7)
<水添ブロック共重合体(A’)>
・後述の製造例8,9の水添ブロック共重合体(A’−1),(A’−2)
【0049】
<ポリフェニレンエーテル系樹脂(B−1)>
・変性ポリフェニレンエーテル;SABIC社製「PPO534」(MFR0.3g/10分[250℃, 98N])
【0050】
<スチレン系樹脂(B−2)>
・ポリスチレン;東洋スチレン株式会社製「トーヨースチロールG210C」(MFR8.0g/10分[200℃,49N])
【0051】
<アクリル系樹脂(B−3)>
・アクリル酸メチル−メタクリル酸メチル共重合体;株式会社クラレ製「パラペットEH」(MFR1.8g/10分[230℃,49N])
<アクリル系樹脂(B−3−2)>
・アクリル酸メチル−メタクリル酸メチル共重合体;EVONIC INDUSTRIES製「PLEXIGLAS 6N」(MFR12g/10分[230℃,49N])
【0052】
<ポリカーボネート系樹脂(B−4)>
・ポリカーボネート;三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製「ユーピロンS3000R」(MFR32g/10分[300℃,21N])
【0053】
<ポリアミド系樹脂(B−5)>
・ナイロン6;宇部興産株式会社製「UBEナイロン1013B」(MFR39g/10分[230℃,21N])
【0054】
<スチレン系樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)(B−6)>
・アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン;東レ株式会社製「トヨラック700−314」(MFR 20g/10分[220℃,98N]、2.6g/10分[200℃,49N])
【0055】
軟化剤(C−1):ダイアナプロセスオイルPW−90(水添パラフィン系オイル、動粘度95mm
2/s(40℃)、出光興産株式会社製)
【0056】
(1)分子量分布及びピークトップ分子量(Mp)の測定方法
水添ブロック共重合体のピークトップ分子量(Mp)及び分子量分布(Mw/Mn)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により標準ポリスチレン換算分子量で求め、分子量分布のピークの頂点の位置からピークトップ分子量(Mp)を求めた。測定装置及び条件は以下のとおりである。
・装置 :東ソー株式会社製GPC装置「GPC8020」
・分離カラム :東ソー株式会社製「TSKgelG4000HXL」
・検出器 :東ソー株式会社製「RI−8020」
・溶離液 :テトラヒドロフラン
・溶離液流量 :1.0ml/分
・サンプル濃度:5mg/10ml
・カラム温度 :40℃
【0057】
(2)水素添加率の測定方法
各製造例で得られたブロック共重合体(P)及び水素添加後の水添ブロック共重合体(A)をそれぞれ重クロロホルム溶媒に溶解し、日本電子社製「Lambda−500」を用いて50℃で
1H−NMRを測定した。水添ブロック共重合体(A)中の重合体ブロック(b)の水素添加率は、得られたスペクトルの4.5〜6.0ppmに現れる炭素−炭素二重結合が有するプロトンのピークから、下記式により算出した。
水素添加率={1−(水添ブロック共重合体(A)1molあたりに含まれる炭素−炭素二重結合のmol数)/(ブロック共重合体(P)1molあたりに含まれる炭素−炭素二重結合のmol数)}×100(mol%)
【0058】
(3)メルトフローレート(MFR)の測定方法
各実施例及び比較例で得られた樹脂組成物をメルトインデクサL244(テクノ・セブン製)を用いて、下記に示す温度、荷重の条件で測定した。なお、MFR値が高いほど成形加工性に優れる。
<測定温度、荷重>
・ポリフェニレンエーテル系樹脂を含む樹脂組成物:250℃、98N
・スチレン系樹脂を含む樹脂組成物:200℃、49N
・アクリル系樹脂を含む樹脂組成物:230℃、49N
・ポリカーボネート系樹脂を含む樹脂組成物:300℃、21N
・ポリアミド系樹脂を含む樹脂組成物:230℃、21N
・アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体を含む樹脂組成物:220℃、98N
・ポリカーボネート系樹脂とアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体を含む樹脂組成物:250℃、21N
【0059】
(4)曲げ弾性率の測定方法
各実施例及び比較例で得られた樹脂組成物を下記温度、10MPaにて3分間圧縮成形することによって成形体(縦60mm、横10mm、厚さ3mm)を得た。この試験片を用い、23℃の温度条件及び2mm/minの試験速度でインストロン万能試験機を用いて、JIS K 7171に準じて曲げ弾性率を測定した。曲げ弾性率が低いほど柔軟性に優れる。
<成形温度>
・ポリフェニレンエーテル系樹脂を含む樹脂組成物:280℃
・スチレン系樹脂を含む樹脂組成物:210℃
・アクリル系樹脂を含む樹脂組成物:230℃
・ポリカーボネート系樹脂を含む樹脂組成物:250℃
・ポリアミド系樹脂を含む樹脂組成物:250℃
・アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体を含む樹脂組成物:240℃
・ポリカーボネート系樹脂とアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体を含む樹脂組成物:260℃
【0060】
(5)全光線透過率の測定方法
実施例20及び比較例9で得られた樹脂組成物を、10MPaにて3分間圧縮成形することによって成形体(縦15mm、横15mm、厚さ2mm)を得た。この成形体をヘイズメーター(株式会社村上色彩技術研究所製「HR−100」)を用いて、JIS K7375に準拠して、全光線透過率を測定した。
【0061】
<水添ブロック共重合体(A)及び(A’)>
〔製造例1〕
窒素置換し、乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン50.0kg、アニオン重合開始剤としてsec−ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)35.1g(sec−ブチルリチウム3.7g)を仕込み、50℃に昇温した後、スチレン(1)1.87kgを加えて1時間重合させ、引き続いてβ−ファルネセン8.75kgを加えて2時間重合を行い、更にスチレン(2)1.87kgを加えて1時間重合することにより、ポリスチレン−ポリ(β−ファルネセン)−ポリスチレントリブロック共重合体を含む反応液を得た。この反応液に、水素添加触媒としてパラジウムカーボン(パラジウム担持量:5質量%)を前記ブロック共重合体に対して5質量%添加し、水素圧力2MPa、150℃の条件で10時間反応を行った。放冷、放圧後、濾過によりパラジウムカーボンを除去し、濾液を濃縮し、更に真空乾燥することにより、ポリスチレン−ポリ(β−ファルネセン)−ポリスチレントリブロック共重合体の水素添加物(以下、水添ブロック共重合体(A−1)と称する)を得た。水添ブロック共重合体(A−1)について前記評価を行った。結果を表1に示す。
【0062】
〔製造例2〜8〕
表1に記載の配合にしたがったこと以外は、製造例1と同様にして水添ブロック共重合体(A−2)〜(A−7)、(A’−1)を製造した。得られた水添ブロック共重合体(A−2)〜(A−7)、(A’−1)について前記評価を行った。結果を表1に示す。
【0063】
〔製造例9〕
水添ブロック共重合体(A’−2)は、溶媒のシクロヘキサン50.0kgにテトラヒドロフラン108gを混合し、表1に記載の配合にしたがったこと以外は、製造例1と同様にして水添ブロック共重合体(A’−2)を製造した。得られた水添ブロック共重合体(A’−2)について前記評価を行った。結果を表1に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
〔実施例1〜10及び比較例1〜6:ポリフェニレンエーテル系樹脂を含む樹脂組成物〕
前記水添ブロック共重合体(A−1)〜(A−6)及び(A’−1)、(A’−2)と、ポリフェニレンエーテル系樹脂(B−1)とを表2、表3に示す配合にてドライブレンドした後、2軸押出機(株式会社日本製鋼所製「TEX−44XCT」)を使用して、シリンダー温度310℃、スクリュー回転数200rpmで溶融混練した後、ストランド状に押し出し、切断してポリフェニレンエーテル系樹脂を含む樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物について前記評価を行った。結果を表2、表3に示す。
【0066】
【表2】
【0067】
【表3】
【0068】
上記表2、3の結果から、ポリフェニレンエーテル系樹脂の含有量が同じ組成で比較した場合、実施例1〜10は比較例1〜6に比べて、メルトフローレートが高い値であり、また曲げ弾性率が低い値であることから、成形性及び柔軟性に優れることがわかる。
【0069】
〔実施例11〜14及び比較例7:スチレン系樹脂を含む樹脂組成物〕
前記水添ブロック共重合体(A−1)〜(A−3),(A−5)及び(A’−1)と、スチレン系樹脂(B−2)とを表4に示す配合にてドライブレンドした後、2軸押出機(株式会社日本製鋼所製「TEX−44XCT」)を使用して、シリンダー温度210℃、スクリュー回転数200rpmで溶融混練した後、ストランド状に押し出し、切断してスチレン系樹脂を含む樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物について前記評価を行った。結果を表4に示す。
【0070】
【表4】
【0071】
上記表4の結果から、実施例11〜14は比較例7に比べて、メルトフローレートが高い値であり、また曲げ弾性率が低い値であることから、成形性及び柔軟性に優れることがわかる。
【0072】
〔実施例15〜22及び比較例8,9:アクリル系樹脂を含む樹脂組成物〕
前記水添ブロック共重合体(A−1)〜(A−3),(A−5),(A−7)及び(A’−1)と、アクリル系樹脂(B−3)及び(B−3−2)と、軟化剤(C−1)とを表5,6に示す配合にてドライブレンドした後、2軸押出機(株式会社日本製鋼所製「TEX−44XCT」)を使用して、シリンダー温度240℃、スクリュー回転数200rpmで溶融混練した後、ストランド状に押し出し、切断してアクリル系樹脂を含む樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物について前記評価を行った。結果を表5,6に示す。
【0073】
【表5】
【0074】
【表6】
【0075】
上記表5の結果から、実施例15〜21は比較例8に比べて、メルトフローレートが高い値であり、また曲げ弾性率が低い値であることから、成形性及び柔軟性に優れることがわかる。また、上記表6の結果から、実施例22の樹脂組成物より得られた成形体は比較例9に比べ全光線透過率の値が高く、透明性に優れることがわかる。このことから、本発明で用いられる水添ブロック共重合体(A)をアクリル系樹脂の改質剤として用いた際に、透明性を損ねることなく、成形性及び柔軟性を向上させることができることがわかる。
【0076】
〔実施例23〜27及び比較例10:ポリカーボネート系樹脂を含む樹脂組成物〕
前記水添ブロック共重合体(A−1)〜(A−5)及び(A’−1)と、ポリカーボネート系樹脂(B−4)とを表7に示す配合にてドライブレンドした後、2軸押出機(株式会社日本製鋼所製「TEX−44XCT」)を使用して、シリンダー温度280℃、スクリュー回転数200rpmで溶融混練した後、ストランド状に押し出し、切断してポリカーボネート系樹脂を含む樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物について、前記評価を行った。結果を表7に示す。
【0077】
【表7】
【0078】
上記表7の結果から、実施例23〜27は比較例10に比べて、メルトフローレートが高い値であり、また曲げ弾性率が低い値であることから、成形性及び柔軟性に優れることがわかる。
【0079】
〔実施例28〜31及び比較例11:ポリアミド系樹脂を含む樹脂組成物〕
前記水添ブロック共重合体(A−1)〜(A−3),(A−5)及び(A’−1)と、ポリアミド系樹脂(B−5)とを表8に示す配合にてドライブレンドした後、2軸押出機(株式会社日本製鋼所製「TEX−44XCT」)を使用して、シリンダー温度260℃、スクリュー回転数200rpmで溶融混練した後、ストランド状に押し出し、切断してポリアミド系樹脂を含む樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物について、前記評価を行った。結果を表8に示す。
【0080】
【表8】
【0081】
上記表8の結果から、実施例28〜31は比較例11に比べて、メルトフローレートが高い値であり、また曲げ弾性率が低い値であることから、成形性及び柔軟性に優れることがわかる。
【0082】
〔実施例32〜36及び比較例12:アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体を含む樹脂組成物〕
前記水添ブロック共重合体(A−1)〜(A−5)及び(A’−1)と、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(B−6)とを表9に示す配合にてドライブレンドした後、2軸押出機(株式会社日本製鋼所製「TEX−44XCT」)を使用して、シリンダー温度240℃、スクリュー回転数200rpmで溶融混練した後、ストランド状に押し出し、切断してアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体を含む樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物について、前記評価を行った。結果を表9に示す。
【0083】
【表9】
【0084】
上記表9の結果から、実施例32〜36は比較例12に比べて、メルトフローレートが高い値であり、また曲げ弾性率が低い値であることから、成形性及び柔軟性に優れることがわかる。
【0085】
〔実施例37〜40及び比較例13:ポリカーボネート系樹脂とアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体を含む樹脂組成物〕
前記水添ブロック共重合体(A−1)〜(A−3),(A−5)及び(A’−1)と、ポリカーボネート系樹脂(B−4)とアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(B−6)とを表10に示す配合にてドライブレンドした後、2軸押出機(株式会社日本製鋼所製「TEX−44XCT」)を使用して、シリンダー温度260℃、スクリュー回転数200rpmで溶融混練した後、ストランド状に押し出し、切断してポリカーボネート系樹脂とアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体を含む樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物について、前記評価を行った。結果を表10に示す。
【0086】
【表10】
【0087】
上記表10の結果から、実施例37〜40は比較例13に比べて、メルトフローレートが高い値であり、また曲げ弾性率が低い値であることから、成形性及び柔軟性に優れることがわかる。