(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
半導体の分野では、シリコン基板(Si基板)が基板材料として広く用いられているが、近年、このシリコン基板よりも物性の優れた炭化シリコン基板(SiC基板)が着目されている。
【0003】
しかし、炭化シリコン基板は、基板の物理的な硬度が高く、化学的にも安定な難エッチング材料のため、エッチング加工制御が難しく、所望なエッチング形状を得ることは容易ではない。
【0004】
そこで、炭化シリコン基板をエッチングする方法として、特許文献1には、10000nmを越える深いトレンチエッチングを実用性の高いプロセスにすると共に、トレンチ底部に電界集中を引き起こして耐圧特性に影響を及ぼす程度の鋭角を有する凹凸形状を形成することなく、平坦に整形することができるプラズマエッチング方法が開示されている。
【0005】
このプラズマエッチングは、所定形状のマスクパターンを備えたシリコン酸化膜(SiO
2膜)を炭化シリコン基板の表面に形成するマスク形成工程と、炭化シリコン基板を70〜100℃に加熱し、前記シリコン酸化膜をマスクとして、SF
6ガスとO
2ガスとArガスの混合ガスにより前記炭化シリコン基板をプラズマエッチングする第1のエッチング工程と、炭化シリコン基板を70〜100℃に加熱し、前記シリコン酸化膜をマスクとして、O
2ガスとArガスの混合ガスにより前記炭化シリコン基板をプラズマエッチングする第2のエッチング工程とを順次実施する。
【0006】
また、特許文献2には、トレンチ側面の平坦性を向上させつつ、トレンチ底部におけるサブトレンチの形成を抑制できるプラズマエッチング方法が開示されている。このプラズマエッチング方法は、炭化シリコン基板の表面にアモルファス構造または多結晶構造を有する材料からなるエッチングマスクを形成する工程と、前記エッチングマスクが形成された前記炭化シリコン基板の表面に、HBrガスを含むエッチングガスを供給する。
【0007】
さらに、特許文献3には、炭化シリコン基板を200℃以上に加熱し、SiF
4ガスまたはSiCl
4ガスを含むシリコン系ガス、並びにO
2ガスまたはN
2ガスを含む混合ガスを処理室内に供給してプラズマ化し、酸化シリコン膜または窒化シリコン膜を保護膜として前記炭化シリコン基板に形成しつつ、ボウイング形状やサブトレンチの形成を抑制するプラズマエッチング方法が開示されている。
【0008】
特許文献4には、シリコン酸化膜によるマスクパターンが形成された炭化シリコン基板に対して、SF
6ガスとO
2ガスとSiF
4ガスの混合ガスにより前記炭化シリコン基板をプラズマエッチングする方法が開示されている。この技術では、SF
6ガスとO
2ガスとSiF
4ガスの総流量に対するSiF
4ガスの添加割合が18.9%以上40%以下にすることで、前記シリコン酸化膜との選択比を向上させつつ、前記炭化シリコン基板の形状加工精度を向上させる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
【0024】
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0025】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0026】
同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0027】
また、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0028】
〈概要〉
本実施の形態による代表的なプラズマエッチング方法は、SF
6ガスとO
2ガスとArガスの混合ガスを用いてプラズマを生成し、処理室内に設置する試料台の温度を40〜150℃に制御する。また、時間的に変調した間欠的な周波数1kHz〜2MHzで、デューティー比が20〜50%である高周波のバイアスを印加して、エッチング量が150〜250nmとする第1のエッチング工程と、SF
6ガスとO
2ガスとArガスなどの混合ガスを用いてプラズマを生成し、連続した高周波のバイアスを炭化シリコン基板に印加し、所望のエッチング量とする第2のエッチング工程とを順次実施する。
【0030】
(実施の形態1)
〈プラズマエッチング装置の構成例〉
図1は、本実施の形態1によるプラズマエッチング装置における構成の一例を示す説明図である。本実施の形態では、プラズマを形成する技術として、マイクロ波と磁界を利用したマイクロ波エッチング装置を示している。
【0031】
プラズマエッチング装置は、
図1に示すように、アルミニウムまたはステンレス鋼などから構成される円筒状のエッチング処理室101を有し、被処理基板110を載置する試料台109が内設されている。
【0032】
エッチング処理室101には、ガス導入部106から多孔構造、例えば石英からなる透過窓107を介して、SF
6(六フッ化硫黄、以下SF
6と記載)ガス、O
2(酸素、以下O
2と記載)ガス、Ar(アルゴン、以下Arと記載)、SiF
4(四フッ化シリコン、以下SiF
4と記載)ガスなどの混合ガスであるエッチングガスが供給される。
【0033】
また、マイクロ波発生器102で発振されたマイクロ波は、整合器103および導波管104を介して伝送され、マイクロ波導入窓105によりエッチング処理室101にマイクロ波を伝播させて、エッチング処理室101に供給されたエッチングガスをプラズマ化する。
【0034】
磁場発生用のソレノイドコイル108は、エッチング処理室101の周辺に配設されており、これにより発生する磁界と入射されるマイクロ波との相互作用により、電子サイクロトロン共鳴(ECR:Electron Cyclotron Resonance)が発生し、高密度プラズマを形成できる構造となっている。
【0035】
エッチング処理室101には、試料台109があり、該試料台109の上に被処理基板110を載置して、マイクロ波とソレノイドコイル108により発生した磁場により生成されたガスプラズマにより被処理基板110をプラズマエッチングする。
【0036】
被処理基板110を載置する試料台109には、高周波電源111が接続されている。この、高周波電源111は、400kHz程度から13.56MHz程度の高周波バイアス電力を試料台109に供給する。
【0037】
また、高周波電源111は、図示しないパルス発生器を備えており、時間変調された間欠的な高周波電力であるTM(Time Moderation)バイアス、あるいは連続的な高周波電力であるCW(Continuous Wave)バイアスを選択的に試料台109に供給する。
【0038】
試料台109表面には、静電吸着電源112より直流電圧を印加することにより静電吸着力が発生し、その静電吸着力により、被処理基板110が試料台109表面に吸着される。
【0039】
また、試料台109の表面には、溝が形成されており、試料台109表面に吸着された被処理基板110裏面との間で形成される図示しない流路に、冷却ガス供給口113からHe(ヘリウム、以下Heと記載)ガス、Arガス、O
2ガスなどの冷却ガスを供給し、流路内を所定圧力に維持できる構造となっている。
【0040】
被処理基板110の表面の温度上昇は、流路におけるガス伝熱と接触面からの熱伝導にて、試料台109表面へ熱伝達され、一定温度に維持される。
【0041】
被処理基板110を所定の温度に維持するため、試料台109に埋設された図示しない冷媒循環路には、チラーユニット114により所定の温度に制御された冷媒が循環される。
【0042】
被処理基板110の周囲には、セラミックスや石英製の図示しない絶縁カバーが配置されている。なお、エッチング処理室101に導入されたエッチングガスは、プラズマエッチング処理中、排気ポンプ115および図示しない排気配管により、エッチング処理室101の外に排気される。
【0043】
続いて、上記した
図1のプラズマエッチング装置を用いたエッチング方法について説明する。
【0044】
〈被処理基板の構造例〉
まず、エッチングされる被処理基板110の構造について、
図2を用いて説明する。
【0045】
図2は、
図1のプラズマエッチング装置によってエッチングされる被処理基板110の構造の一例を示す説明図である。
【0046】
被処理基板110は、
図2に示すように、炭化シリコン基板203の上にシリコン酸化膜202と、リソグラフィー技術などによって予めパターンニングされたホトレジスト膜201とが形成されている。
【0047】
〈ハードマスクの形成例〉
次に、ハードマスクの形成方法について説明する。ホトレジスト膜201をマスクに炭化シリコン基板203をエッチングすると、マスクとの選択比不足により所望の深さまでエッチングすることができない。よって、シリコン酸化膜202などのハードマスクを用いて炭化シリコン基板203をエッチングするのが一般的である。
【0048】
ホトレジスト膜201のパターン形成後、プラズマエッチング装置にてホトレジスト膜201をマスクにして、シリコン酸化膜202をドライエッチングする。エッチング処理室101にCF
4(四フッ化メタン、以下CF
4と記載)ガスとCHF
3(三フッ化メタン、以下CHF
3と記載)ガスを導入し、所定の圧力でマイクロ波パワーと高周波電力を印加してエッチングする。
【0049】
パターニングされたマスクの間口寸法は、本実施の形態では1000nmである。シリコン酸化膜202のドライエッチング後に、アッシング処理室において、プラズマ化されたO
2ガスよって、残ったホトレジスト膜201を除去し、
図3に示すように、炭化シリコン基板203の上にパターニングされたシリコン酸化膜202が形成される。
図3は、パターニングされた
図2の被処理基板110の断面図である。
【0050】
〈エッチング例〉
続いて、炭化シリコン基板203に対して、2000nmを越える深いトレンチ形状を形成するエッチング方法について説明する。このエッチング処理において、炭化シリコン基板203のプラズマエッチングは、2段階にエッチング条件を変化させて行うことを特徴とする。
【0051】
まず、シリコン酸化膜202によりパターニングされた炭化シリコン基板203をエッチング処理室101内に搬入し、試料台109上に載置する。その後、エッチング処理室101内に供給するSF
6ガス、O
2ガス、Arガスの供給流量などを制御して第1のエッチング工程および第2のエッチング工程を順次実施する。
【0052】
第1のエッチング工程は、トレンチ底面にサブトレンチがなく、トレンチ側壁が底面に対して垂直な、エッチング量150〜250nmとするエッチング工程である。第2のエッチング工程は、保護膜を形成しつつトレンチ底面にサブトレンチがなく、トレンチ側壁が底面に対して垂直な、エッチング量2000nm以上とするエッチング工程である。
【0053】
上記した第1のエッチング工程では、炭化シリコン基板203を40℃〜150℃程度の温度に制御し、ガス導入部106からSF
6ガス、O
2ガス、Arガスをエッチング処理室101内にそれぞれ供給する。そして、排気ポンプ115によってエッチング処理室101内を所定の圧力とし、高周波電源111によって試料台109に高周波バイアス電力を供給する。
【0054】
なお、O
2ガスの流量は、SF
6ガス、O
2ガス、Arガスの総流量に対する割合が10%以下であり、SF
6ガスの流量は、SF
6ガス、O
2ガス、Arガスの総流量に対する割合が5%以下にすることが好ましい。
【0055】
図4は、O
2ガスおよびSF
6ガスの流量に対するプラズマエッチングによるトレンチ形状の一例を示す説明図である。
【0056】
例えばO
2ガスの供給流量が多い場合には、
図4(a)に示すように、テーパ形状になる。また、SF
6ガスの供給流量が多い場合には、
図4(b)に示すように、ボウイング形状になるからである。
【0057】
また、炭化シリコン基板203は、シリコン基板に比べて、原子間距離が短く、結合エネルギが高いため、エッチングするには大きなエネルギを加えなければならず、シリコン基板のエッチング時より高い高周波バイアス電力が必要になる。しかし、高い高周波バイアス電力にてエッチングを行うと、
図4(c)に示すように、トレンチ底面にサブトレンチが発生する。
【0058】
これらのエッチング形状が好ましくない理由としては、次の工程でトレンチ内部に絶縁膜や電極を埋め込む際、巣が発生して側壁の膜厚が不均一になり、電界集中や応力が生じて素子の信頼性が低下したりなど、いずれも製品不良を招くからである。
【0059】
そこで、炭化シリコン基板203に高周波バイアス電力を時間的に変調した間欠的な高周波電力、すなわちパルス変調された高周波電力であるTMバイアスを印加する。これによって、高垂直性で入射するイオンを発生させ、TMバイアスのデューティー比および印加する周期により、反応生成物の付着時間を制御し、炭化シリコン基板203の底面に発生するサブトレンチを抑制することができる。なお、デューティー比とは、高周波バイアス電力の印加と停止のトータル時間を100%とし、トータル時間に対する印加時間の比率である。
【0060】
図5は、デューティー比に対するトレンチ形状の依存性の一例を示す説明図である。
図5(a)は、デューティー比20%の場合を示しており、
図5(b)は、デューティー比50%を示している。
図5(c)は、デューティー比100%、つまり連続的な高周波電力CWバイアスの場合を示している。
【0061】
この時の電力パワーは、全て150Wである。また、
図5(d)に印加方法の比較例として、CWバイアスで電力パワー30Wのトレンチ形状を示す。これは、
図5(a)のTMバイアスの電力パワー150W、デューティー比20%の平均バイアス電力パワーに相当する。
【0062】
図5(a)と
図5(b)の結果より、デューティー比が20〜50%では、トレンチ底面にサブトレンチがなく、トレンチ側壁が底面に対して垂直なエッチング形状が得られた。また、
図5(c)と
図5(d)の結果より、CWバイアスでは、電力パワー値に関わらず、トレンチ底面にサブトレンチが発生した。
【0063】
TMバイアスのデューティー比20〜50%において、トレンチ底面に発生するサブトレンチを抑制できた理由については、現時点では定かではないが、以下の様なメカニズムが推測される。
【0064】
サブトレンチの発生は、一般的に、パターン側壁でのイオンの反射により、トレンチ底面の側壁近傍にイオンが集中して入射するため、
図4の(c)に示すように、パターン側壁のエッチング量がトレンチ底面の中央部より多くなる。
【0065】
そこで、時間的に変調した間欠的なTMバイアス場合、バイアス印加が間欠的になるため、バイアス印加時は、前記記載と同じエッチングが進行するが、バイアス停止時は、イオンの入射がなくなるため、側壁近傍のイオンの集中も低減する。さらに、このバイアス停止期間中、エッチングで発生した反応生成物がトレンチ底面に付着して、トレンチ底面の保護として働くため、バイアス印加時にイオンが集中しても、偏ったエッチングを防止することができる。デューティー比を小さくすればするほど、トレンチ底面への反応生成物の付着時間が確保されるため、サブトレンチが減少することは言うまでのない。
【0066】
しかしながら、高周波バイアスの電力パワーが一定で、デューティー比を小さくすると、高周波バイアス電力の印加時間が少なくなるため、炭化シリコン基板203のエッチングレートが遅くなり、実際の半導体デバイスの生産に適用することが困難であった。
【0067】
そこで、試料台109に印加する高周波バイアス電力を2段階以上にて制御する方法が有効であることを見出した。すなわち、第1のエッチング工程では、サブトレンチを抑制するため、時間的に変調した間欠的なTMバイアスを印加し、炭化シリコン基板203を150〜250nmまでエッチングを行う。
【0068】
第2のエッチング工程では、速いエッチングレートを得るため、連続的なCWバイアスを印加し、炭化シリコン基板203を2000nm以上のエッチングを行う。これにより、生産性に適用した炭化シリコン基板203のエッチングが可能となる。
【0069】
図6は、第1のエッチング工程にて炭化シリコン基板203がエッチングされるエッチング量と炭化シリコン基板203を2000nmまでエッチングする処理時間との関係の一例を示した説明図である。
【0070】
この
図6では、2段階によって炭化シリコン基板203のエッチングを行っている。この図より、第1のエッチング工程でのエッチング量が多いほど、2000nmまでの処理時間が長くなり、エッチング量が250nmを超えると、炭化シリコン基板203のエッチングレートが300nm/min以下となる。そのため、第1のエッチング工程でのエッチング量が多すぎると、デバイスの生産性に支障をきたすことになる。
【0071】
図7は、第1のエッチング工程のエッチング量に対する第2のエッチング工程を実施した際のエッチング形状の一例を示す説明図である。
図7(a)は、エッチング量50nmの場合を示しており、
図7(b)は、エッチング量150nmの場合を示している。
図7(c)は、エッチング量250nmの場合である。
【0072】
〈エッチング条件〉
また、
図8は本実施の形態1による第1のエッチング工程および第2のエッチング工程におけるエッチング条件の一例を示す説明図である。
【0073】
エッチング量が150〜250nmでは、トレンチ底面にサブトレンチがなく、トレンチ側壁が底面に対して垂直なエッチング形状が得られる結果となった。従って、エッチングの初期段階でサブトレンチがなく垂直なエッチング形状を形成すれば、その後、連続的なCWバイアスを印加しても、サブトレンチやボウイングを抑制することが可能となる。
【0074】
例えば、
図8に示すように、第1のエッチング工程では、SF
6ガス14ml/minと、O
2ガス20ml/minと、Arガス250ml/minの混合ガスを用いる、また、高周波バイアス電力の印加方法はTMとし、高周波バイアス電力パワー150W、デューティー比20%、周波数2000Hzとするエッチング条件で、炭化シリコン基板203を150nmまでエッチングを行う。この時のエッチング時間は、予め炭化シリコン基板203のエッチングレートを調べて算出する。
【0075】
引き続き、第2のエッチング工程では、
図8に示すように、SF
6ガス14ml/minと、O
2ガス20ml/minと、Arガス250ml/minの混合ガスを用いる。高周波バイアス電力の印加方法はCWとし、高周波バイアス電力パワー300Wとするエッチング条件で、炭化シリコン基板203を2000nmまでエッチングを行う。この時のエッチング時間は、予め炭化シリコン基板203のエッチングレートを調べて算出する。
【0076】
このようなプラズマエッチングにより、
図7(b)に示すように、トレンチ底面にサブトレンチがなく、トレンチ側壁が底面に対して垂直な、エッチング量2000nmのトレンチ形状を得ることができる。
【0077】
以上により、トレンチ側壁に発生するサイドエッチを抑制することができる。また、マスク材との高選択比および高エッチングレートを得ることが可能となる。それにより、高精度のエッチング加工制御を行うことができる。
【0078】
(実施の形態2)
本実施の形態2においては、前記実施の形態1の
図1に示したプラズマエッチング装置を用いた他のエッチング方法について説明する。
【0079】
〈被処理基板の構造例〉
最初に、被処理基板110の構造について説明する。被処理基板110は、前記実施の形態1の
図2と同様であり、炭化シリコン基板203の上にシリコン酸化膜202と、リソグラフィー技術などによって予めパターンニングされたホトレジスト膜201とが形成されている。
【0080】
続いて、ハードマスクの形成方法について説明する。
【0081】
これは、前記実施の形態1と同様であり、ホトレジスト膜201のパターン形成後、
図1のプラズマエッチング装置によりホトレジスト膜201をマスクにしてシリコン酸化膜202をドライエッチングする。エッチング処理室101にCF
4ガスとCHF
3ガスを導入し、所定の圧力でマイクロ波パワーと高周波電力を印加してエッチングする。
【0082】
パターニングされたマスクの間口寸法は、例えば1000nmである。シリコン酸化膜202のドライエッチング後に、アッシング処理室において、プラズマ化されたO
2ガスより、残ったホトレジスト膜201を除去し、
図3に示すように、炭化シリコン基板203の上にパターニングされたシリコン酸化膜202が形成される。
【0083】
〈エッチング例〉
続いて、炭化シリコン基板203に対して、2000nmを越える深いトレンチ形状を形成するエッチング方法について説明する。ここでも、前記実施の形態1と同様に、炭化シリコン基板203のプラズマエッチングは2段階にエッチング条件を変化させて行うことが特徴である。
【0084】
まず、シリコン酸化膜202でパターニングされた炭化シリコン基板203をエッチング処理室101内に搬入し、試料台109上に載置する。その後、エッチング処理室101内に供給するSF
6ガス、O
2ガス、Arガスの供給流量などを制御して、第1および第2のエッチング工程を実施する。
【0085】
第1のエッチング工程は、トレンチ底面にサブトレンチがなく、トレンチ側壁が底面に対して垂直な、エッチング量150〜250nmとする工程であり、第2のエッチング工程は、保護膜を形成しつつトレンチ底面にサブトレンチがなく、トレンチ側壁が底面に対して垂直な、エッチング量2000nm以上とするエッチング工程である。
【0086】
第1のエッチング工程では、炭化シリコン基板203を40℃〜150℃の温度に制御して、ガス導入部106からSF
6ガス、O
2ガス、Arガスをエッチング処理室101内にそれぞれ供給する。
【0087】
また、排気ポンプ115によってエッチング処理室101内を所定の圧力とし、高周波電源111によって試料台109に時間的に変調した間欠的な高周波バイアス電力であるTMバイアスをデューティー比20〜50%にて供給する。
【0088】
なお、O
2ガスの流量は、SF
6ガス、O
2ガス、Arガスの総流量に対する割合が10%以下であり、SF
6ガスの流量は、SF
6ガス、O
2ガス、Arガスの総流量に対する割合が5%以下にすることが好ましい。これにより、トレンチ底面にサブトレンチがなく、トレンチ側壁が底面に対して垂直なエッチング形状が可能となる。
【0089】
第2のエッチング工程では、炭化シリコン基板203を40℃〜150℃の温度に制御し、ガス導入部106からSF
6ガス、O
2ガス、Arガスをエッチング処理室101内にそれぞれ供給し、排気ポンプ115によってエッチング処理室101内を所定の圧力とし、高周波電源111によって試料台109に連続的な高周波バイアス電力であるCWバイアスを供給する。
【0090】
なお、炭化シリコン基板203に対して、生産性を向上のため、300Wより高い高周波バイアス電力を印加すると、炭化シリコン膜のエッチングレートは向上するものの、シリコン酸化膜202の残膜量が低下し、マスク開口部204が広がってしまう。マスク開口部204が広がると、炭化シリコン基板203が削れてしまい、デバイスの製品不良を招く可能性がある。
【0091】
そこで、本実施の形態2では、第2のエッチング工程において、SiF
4ガスを添加する。これによって、マスク開口部204の寸法を維持しつつ、トレンチ底面にサブトレンチがなく、トレンチ側壁が底面に対して垂直なエッチング形状を形成し、更に炭化シリコン膜のエッチングレートを向上されることが可能である。
【0092】
つまり、第2のエッチング工程のガス流量について、O
2ガスの流量は、SF
6ガス、O
2ガス、Arガス、SiF
4ガスの総流量に対する割合が10%以下であり、SF
6ガスの流量は、SF
6ガス、O
2ガス、Arガス、SiF
4ガスの総流量に対する割合が5%以下である。SiF
4ガスの流量は、SF
6ガス、O
2ガス、Arガス、SiF
4ガスの総流量に対する割合を2〜6%の範囲で添加することが好ましい。
【0093】
図9は、SiF
4ガスの総流量に対する割合と炭化シリコン膜/シリコン酸化膜の選択比との関係を示す説明図である。
【0094】
SiF
4ガスの総流量に対する割合が多いほど、炭化シリコン膜/シリコン酸化膜の選択比は増加する。但し、6%を超えると炭化シリコン膜のエッチングレートが低下し、それに伴って炭化シリコン膜/シリコン酸化膜の選択比が低下する。これは、SiF
4ガスに含まれるシリコンの炭化シリコン膜への付着が、炭化シリコン膜のエッチングより上回るからである。
【0095】
図10は、SiF
4ガスの総流量割合に対するエッチング形状の一例を示す説明図である。
図10(a)は、SiF
4ガスの総流量割合0%の場合を示している。
図10(b)は、SiF
4ガスの総流量割合2%の場合を示している。
図10(c)は、SiF
4ガスの総流量割合6%を示しており、
図10(d)は、SiF
4ガスの総流量割合8%の場合を示している。
【0096】
SiF
4ガスの総流量割合が2〜6%では、マスク開口寸法を維持しつつ、トレンチ底面にサブトレンチがなく、トレンチ側壁が底面に対して垂直なエッチング形状が得られる結果となった。
【0097】
通常、炭化シリコン膜/シリコン酸化膜の選択比が低いと、炭化シリコン基板203のエッチング時マスク材であるシリコン酸化膜202が薄くなり、マスク開口部204近傍におけるエッチング作用が活発となる。その結果、シリコン酸化膜202の横方向にもエッチングされ易くなる。そのため、
図10(a)のように、マスク開口部204が広がってしまう。
【0098】
そこで、前述したようにSiF
4ガスを添加することによって、SiF
4ガス中のSiとO
2ガス中のOが反応して、新たなSiO
2膜が生成される。このようにマスク材と同じであるシリコン酸化膜の増加によりシリコン酸化膜202のエッチングを抑制することができる。
【0099】
但し、SiF
4ガスの添加量が多すぎると、炭化シリコン基板203のエッチングより反応生成物の付着の方が上回るため、
図10(d)のように、テーパ形状が形成されてしまう。
【0100】
従って、高周波バイアス電力300W以上を印加しても、SiF
4ガスの総流量割合が2〜6%であれば、マスク開口寸法を広げることなく、生産性の高い炭化シリコン基板203のエッチングが可能となる。
【0101】
〈エッチング例〉
図11は、本実施の形態2による第1のエッチング工程および第2のエッチング工程におけるエッチング条件の一例を示す説明図である。
【0102】
例えば、
図11に示すように、第1のエッチング工程においては、第1の混合ガスとなるSF
6ガス14ml/minと、O
2ガス20ml/minと、Arガス250ml/minの混合ガスを用いる。
【0103】
そして、高周波バイアス電力の印加方法をTMとし、高周波バイアス電力パワー150W、デューティー比20%、周波数2000Hzとするエッチング条件で、炭化シリコン基板203を150nmまでエッチングを行う。この時のエッチング時間は、予め炭化シリコン基板203のエッチングレートを調べて算出する。
【0104】
引き続き、第2のエッチング工程では、第2の混合ガスとなるSF
6ガス14ml/min、O
2ガス20ml/min、Arガス250ml/min、およびSiF
4ガス10ml/minの混合ガスを用いる。また、高周波バイアス電力の印加方法はCWとし、高周波バイアス電力パワー400Wとするエッチング条件で、炭化シリコン基板203を2000nmまでエッチングを行う。この時のエッチング時間は、予め炭化シリコン基板203のエッチングレートを調べて算出する。
【0105】
このようなプラズマエッチングにより、
図10(c)に示すように、トレンチ底面にサブトレンチがなく、トレンチ側壁が底面に対して垂直な、エッチング量2000nmのトレンチ形状を得ることができる。
【0106】
なお、本実施の形態では、マイクロ波を用いたECR方式のマイクロ波プラズマエッチング装置を用いたが、プラズマエッチング装置は、これに限定されるものではなく、ヘリコン波プラズマエッチング装置、誘導結合型プラズマエッチング装置、容量結合型プラズマエッチング装置などにも適用することができる。
【0107】
また、上記した実施の形態は、一例を示したものであり、例えば、試料台構造、電源周波数、プラズマ密度、エッチングガス等の装置構成やプロセス条件によって、エッチング形状は変化するため、使用するエッチング装置、エッチングガスに応じて、最適値を選択することが望ましい。
【0108】
以上においても、高精度のエッチング加工制御を行うことができる。
【0109】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0110】
なお、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0111】
また、ある実施の形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施の形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることが可能である。