特許第6579886号(P6579886)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6579886
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】プリント配線基板、および半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/05 20060101AFI20190912BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20190912BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20190912BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20190912BHJP
【FI】
   H05K1/05 A
   H05K1/05 B
   H01L23/12 J
   H01L23/36 C
   H05K1/03 610H
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-188938(P2015-188938)
(22)【出願日】2015年9月25日
(65)【公開番号】特開2017-63161(P2017-63161A)
(43)【公開日】2017年3月30日
【審査請求日】2018年8月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】591252862
【氏名又は名称】ナミックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148219
【弁理士】
【氏名又は名称】渡會 祐介
(72)【発明者】
【氏名】高杉 寛史
(72)【発明者】
【氏名】寺木 慎
【審査官】 鹿野 博司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−243398(JP,A)
【文献】 特開2005−281509(JP,A)
【文献】 特開2013−008886(JP,A)
【文献】 特開2013−023503(JP,A)
【文献】 特開2015−130416(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/054388(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/05
H01L 23/12
H01L 23/36
H05K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱伝導率200W/m・K以上の金属板と、(A)エポキシ樹脂と、(B)ガラス転移温度が0〜50℃の可とう性フェノキシ樹脂とを含み、(B)成分を、(A)成分1質量部に対して、0.5〜5質量部含む絶縁層と、銅箔パターンとを、この順に有し、絶縁層の絶縁破壊電圧値が、50kV/mm以上であることを特徴とする、プリント配線基板。
【請求項2】
絶縁層の25〜125℃での弾性率が、10GPa未満であり、絶縁層の〔(−55℃での弾性率)/(125℃での弾性率)〕が、50未満である、請求項1記載のプリント配線基板。
【請求項3】
〔(絶縁層の厚さ)/(金属板の厚さ)〕が、0.04〜0.20である、請求項1または2記載のプリント配線基板。
【請求項4】
請求項記載のプリント配線基板を使用する、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線基板、および半導体装置に関し、特に、放熱性に優れ、信頼性の高い半導体装置を形成可能なプリント配線基板、およびこのプリント配線基板により製造される半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、モジュールや電子部品の高機能化、高密度化に伴い、モジュールや電子部品などの発熱体から発生する熱量が大きくなってきており、放熱性の高い高熱伝導の放熱基板が求められている。この放熱性の高い高熱伝導の放熱基板として、金属板をベースとする基板が検討されている。
【0003】
例えば、金属板をベースとする基板として、銅箔、絶縁接着層および金属板からなる金属ベース基板において、絶縁接着層の貯蔵弾性率が、−40〜75℃の範囲で10MPa〜5000MPaであり、75℃〜125℃の範囲において10MPa〜1000MPaであり、かつ熱伝導率が0.6W/m・K以上である金属ベース基板が、報告されている(特許文献1)。
【0004】
ここで、近年、半導体装置は、例えば、−55〜125℃のような、より厳しい環境での使用に耐えることが要求される場合がある。しかしながら、上記の金属ベース基板は、−55℃程度の低温を含む温度サイクルでの使用は、考慮されていない。また、近年の半導体装置には、より信頼性が要求され、信頼性試験における温度サイクル数が増加しているが、上記の金属ベース基板では、この点は考慮されていない。このため、上記の金属ベース基板は、近年の信頼性試験の基準に照らすと、耐久性に支障が生じるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−242606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、高放熱性であり、温度サイクル特性に優れるプリント配線基板、およびこのプリント配線基板を使用した半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の構成を有することによって上記問題を解決したプリント配線基板、半導体装置に関する。
〔1〕熱伝導率200W/m・K以上の金属板と、絶縁層と、銅箔パターンとを、この順に有し、絶縁層の絶縁破壊電圧値が、50kV/mm以上であることを特徴とする、プリント配線基板。
〔2〕絶縁層の25〜125℃での弾性率が、10GPa未満であり、絶縁層の〔(−55℃での弾性率)/(125℃での弾性率)〕が、50未満である、上記〔1〕記載のプリント配線基板。
〔3〕絶縁層が、ガラス転移温度が0〜50℃の熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物の硬化物である、上記〔1〕または〔2〕記載のプリント配線基板。
〔4〕〔(絶縁層の厚さ)/(金属板の厚さ)〕が、0.04〜0.20である、上記〔1〕〜〔3〕のいずれか記載のプリント配線基板。
〔5〕上記〔4〕記載のプリント配線基板を使用する、半導体装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明〔1〕によれば、高放熱性であり、温度サイクル特性に優れるプリント配線基板を提供することができる。
【0009】
本発明〔5〕によれば、高放熱性であり、温度サイクル特性に優れるプリント配線基板により、高信頼性の半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明のプリント配線基板の断面の模式図の一例である。
図2】本発明のプリント配線基板を使用する半導体装置の断面の模式図の一例である。
図3】掻き取り塗布の方法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のプリント配線基板(以下、プリント配線基板という)は、熱伝導率200W/m・K以上の金属板と、絶縁層と、銅箔パターンとを、この順に有し、絶縁層の絶縁破壊電圧値が、50kV/mm以上である。
【0012】
図1に、本発明のプリント配線基板の断面の模式図の一例を示す。図1では、プリント配線基板0は、熱伝導率200W/m・K以上の金属板1と、絶縁層2と、銅箔パターン3とを、この順に有し、絶縁層2の絶縁破壊電圧値が、50kV/mm以上である。
【0013】
〔金属板〕
金属板は、熱伝導率200W/m・K以上であり、熱伝導率、比重の観点から、アルミニウムまたはアルミニウム合金が好ましい。絶縁層の絶縁性の保持、引張強度の観点から、アルミニウム合金がより好ましく、熱伝導率の観点から、アルミニウムの純度の高いアルミニウム合金が、さらに好ましい。アルミニウム合金としては、JIS 5052(Al−Mg系合金)、昭和電工製Al合金(品名:ST60−T3、ST60−T8)が挙げられ、熱伝導率、引張強度、切削性(伸び率が低い)の観点から、アルミニウムの純度の高い昭和電工製Al合金(品名:ST60−T3)が、好ましい。なお、昭和電工製Al合金(品名:ST60−T3)の特性の一例は、熱伝導率:218W/m・K、引張強度:200N/mm以上、伸び率:15%以下である。従来、よく使用されているJIS 5052の熱伝導率の一例は、137W/m・Kである。
【0014】
金属板の厚さは、プリント配線基板の小型化の観点から、1〜3mmであると、好ましい。
【0015】
〔絶縁層〕
絶縁層は、(A)エポキシ樹脂、(B)ガラス転移温度(Tg)が0〜50℃の熱可塑性樹脂、および(C)高熱伝導性無機フィラーを含み、(A)成分1質量部に対して、(B)成分が0.5〜5質量部である樹脂組成物の硬化物や、この樹脂組成物から得られる接着フィルムの硬化物であると、弾性率の観点から、好ましい。ここで、(C)高熱伝導性無機フィラーとは、5W/m・K以上の無機フィラーをいう。
以下、絶縁層を形成する樹脂組成物の、各成分を説明する。
【0016】
(A)成分は、硬化後の樹脂組成物(絶縁層)に、接着力や高熱伝導性を付与する。接着力向上の観点からは、ナフタレン型エポキシ樹脂が好ましい。高熱伝導率の観点からは、アミノフェノール型エポキシ樹脂が好ましい。
【0017】
ナフタレン型エポキシ樹脂とは、1分子内に少なくとも1個以上のナフタレン環を含んだ骨格を有するエポキシ樹脂であり、ナフトール系、ナフタレンジオール系等が挙げられる。ナフタレン型エポキシ樹脂としては、例えば、
1,3−ジグリシジルエーテルナフタレン、1,4−ジグリシジルエーテルナフタレン、1,5−ジグリシジルエーテルナフタレン、1,6−ジグリシジルエーテルナフタレン、2,6−ジグリシジルエーテルナフタレン、2,7−ジグリシジルエーテルナフタレン、1,3−ジグリシジルエステルナフタレン、1,4−ジグリシジルエステルナフタレン、1,5−ジグリシジルエステルナフタレン、1,6−ジグリシジルエステルナフタレン、2,6−ジグリシジルエステルナフタレン、2,7−ジグリシジルエステルナフタレン、1,3−テトラグリシジルアミンナフタレン、1,4−テトラグリシジルアミンナフタレン、1,5−テトラグリシジルアミンナフタレン、1,6−テトラグリシジルアミンナフタレン、1,8−テトラグリシジルアミンナフタレン、2,6−テトラグリシジルアミンナフタレン、2,7−テトラグリシジルアミンナフタレンなどのナフタレン型エポキシ樹脂が挙げられる。特に、液状の2官能ナフタレン型エポキシ樹脂が低粘度である点から好ましい。ナフタレン型エポキシ樹脂を用いることで、接着強度(ピール強度)が向上し、フィラーの充填量を増加することもできる。ナフタレン型エポキシ樹脂の市販品としては、DIC製ナフタレン型エポキシ樹脂(品名:HP4032D)が挙げられる。
【0018】
アミノフェノール型エポキシ樹脂とは、各種のアミノフェノール類を公知の方法でエポキシ化したものである。アミノフェノール類の例としては、2−アミノフェノール、3−アミノフェノール、4−アミノフェノール、2−アミノ−m−クレゾール、2−アミノ−p−クレゾール、3−アミノ−o−クレゾール、4−アミノ−m−クレゾール、6−アミノ−m−クレゾールなどのアミノフェノール、アミノクレゾール類などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
アミノフェノール型エポキシ樹脂としては、下記化学式(1):
【0020】
【化1】
【0021】
で示される、アミノフェノール型エポキシ樹脂が、硬化後の樹脂組成物(絶縁層)を高熱伝導性にするため、好ましい。アミノフェノール型エポキシ樹脂の市販品としては、三菱化学製アミノフェノール型エポキシ樹脂(品名:630)が挙げられる。(A)成分は、単独でも2種以上を併用してもよい。
【0022】
(B)成分は、硬化後の樹脂組成物(絶縁層)を適度に低弾性化する。(B)成分は、特に限定されるものではないが、熱伝導率向上の観点からフェノキシ樹脂であることが好ましい。フェノキシ樹脂は、特に限定されるものではなく、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、トリメチルシクロヘキサン骨格から選択される1種以上の骨格を有するものが、挙げられる。(B)成分のフェノキシ樹脂の市販品としては、三菱化学製可とう性フェノキシ樹脂(品名:YL7178、ガラス転移温度:15℃)が挙げられる。ここで、ガラス転移温度は、動的粘弾性測定(DMA)で測定する。具体的には、支持体上に、幅:40mm、長さ:70mm、厚さ:2mmに塗布した樹脂組成物を、180℃で120分間、加熱硬化させ、支持体から剥離した後、接着フィルムから試験片(10±0.5mm×50±1mm)を切り出し、試験片の幅、厚みを測定する。その後、SII製動的粘弾性測定装置(型番:DMS6100)で測定を行う(3℃/min 25−300℃)。tanDのピーク温度を読み取り、Tgとする。
【0023】
また、(B)成分として、熱可塑性エラストマーを使用することもできる。熱可塑性エラストマーとしては、ウレタンゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、ビニルアルキルエーテルゴム、ポリビニルアルコールゴム、ポリビニルピロリドンゴム、ポリアクリルアミドゴム、セルロースゴム、天然ゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレンゴム、スチレン・イソプレン・スチレンゴム、スチレン・イソブチレンゴム、イソプレンゴム、ポリイソブチレンゴム、ブチルゴム、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むモノマーの重合により得られる合成アクリルゴム、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBS)、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、ポリブタジエン(PB)、スチレン−(エチレン−エチレン/プロピレン)−スチレンブロック共重合体(SEEPS)、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体(例えば、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体など)、エチレン−不飽和カルボン酸エステル共重合体(例えば、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−エチルメタクリレート共重合体など)、並びにこれらの無水カルボン酸変性物(例えば無水マレイン酸変性物)からなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。(B)成分は、単独でも2種以上を併用してもよい。
【0024】
(C)成分としては、熱伝導率が、5W/m・K以上であれば、絶縁性を保持する観点から、一般的な無機フィラーを使用することができる。(C)成分は、熱伝導率、絶縁性および熱膨張係数の点から、MgO、Al、AlN、BN、ダイヤモンドフィラー、ZnO、およびSiCからなる群より選択される少なくとも1種以上の無機フィラーであると、好ましい。なお、ZnOおよびSiCには、必要に応じて絶縁処理をしてもよい。各材料の熱伝導率測定結果の一例としては(単位は、W/m・K)、MgOは37、Alは30、AlNは200、BNは30、ダイヤモンドは2000、ZnOは54、SiCは90である。(C)成分の市販品としては、堺化学工業製酸化マグネシウム粉末(品名:SMO−5、SMO−1、SMO−02、SMO−2)、昭和電工製アルミナ(Al)粉末(品名:CBA09S)、電気化学工業製アルミナ(Al)粉末(品名:DAW−03、ASFP−20)、住友化学製アルミナ(Al)粉末(品名:AA−18、AA−3、AA−04)、マイクロン製アルミナ(Al)粉末(品名:TA389)が挙げられる。
【0025】
(C)成分の平均粒径(粒状でない場合は、その平均最大径)は、特に限定されないが、0.05〜50μmであることが、樹脂組成物中に(C)成分を均一に分散させるうえで好ましい。0.05μm未満だと、樹脂組成物の粘度が上昇して、成形性が悪化するおそれがある。50μm超だと、樹脂組成物中に(C)成分を均一に分散させることが困難になるおそれがある。ここで、(C)成分の平均粒径は、動的光散乱式ナノトラック粒度分析計により測定する。(C)成分は、単独でも2種以上を併用してもよい。
【0026】
(A)成分は、樹脂組成物(溶剤を除く):100質量部に対して、1.5〜15質量部であると好ましく、2〜10質量部であると、より好ましい。
【0027】
(B)成分は、硬化後の樹脂組成物(絶縁層)の低弾性化、絶縁層の熱伝導率、耐熱性の観点から、(A)成分1質量部に対して、0.5〜5質量部であることが好ましい。(B)成分が、(A)成分1質量部に対して、0.5質量部未満では、絶縁層を低弾性化できなくなってしまい、5質量部を超えると、絶縁層の熱伝導率が低くなってしまう。また、(A)と(B)の合計は、絶縁層の低弾性化、熱伝導率、樹脂組成物の接着性の観点から樹脂組成物(溶剤を除く):100質量部に対して、4〜20質量部であると好ましい。
【0028】
(C)成分は、樹脂組成物の接着性、硬化後の樹脂組成物の絶縁性、および熱膨張係数の観点から、樹脂組成物(溶剤を除く):100質量部に対して、40〜95質量部であると好ましい。(C)成分が、95質量部を超えると、樹脂組成物の接着力が低下し易い。一方、(C)成分が、40質量部未満であると、高熱伝導性無機フィラーの熱伝導率が高くても、硬化後の樹脂組成物の熱伝導が不十分であるおそれがある。
【0029】
樹脂組成物は、さらに、(D)硬化剤を含む、と好ましい。(D)成分としては、フェノール系硬化剤、酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤、イミダゾール系硬化剤、カルボン酸ジヒドラジド硬化剤等が挙げられ、フェノール系硬化剤、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤およびイミダゾール系硬化剤からなる群より選択される少なくとも1種であると好ましい。また、樹脂組成物の接着性の観点から、フェノール系硬化剤がより好ましく、また、樹脂組成物の接着性の観点から、酸無水物系硬化剤がより好ましい。樹脂組成物の硬化物の耐湿性の観点からは、イミダゾール系硬化剤がより好ましい。
【0030】
フェノール系硬化剤としては、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等が挙げられ、フェノールノボラックが好ましい。
【0031】
酸無水物としては、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸二無水物、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、グリセリンビス(アンヒドロトリメリテート)モノアセテート、ドデセニル無水コハク酸、脂肪族二塩基酸ポリ無水物、クロレンド酸無水物、メチルブテニルテトラヒドロフタル酸無水物、アルキル化テトラヒドロフタル酸無水物、メチルハイミック酸無水物、アルケニル基で置換されたコハク酸無水物、グルタル酸無水物等が挙げられる。
【0032】
アミン系硬化剤としては、鎖状脂肪族アミン、環状脂肪族アミン、脂肪芳香族アミン、芳香族アミン等が挙げられ、芳香族アミンが好ましい。カルボン酸ジヒドラジド硬化剤としては、アジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジド、ドデカン酸ジヒドラジド等が挙げられ、アジピン酸ジヒドラジドが好ましい。
【0033】
イミダゾール系硬化剤としては、マイクロカプセル化されたイミダゾール化合物硬化剤、アミンアダクト型硬化剤が、樹脂組成物の保存安定性の観点から好ましく、液状ビスフェノールA型等の液状エポキシ樹脂中に分散された、マイクロカプセル化イミダゾール化合物硬化剤が、樹脂組成物の作業性、硬化速度、保存安定性の点からより好ましい。イミダゾール硬化剤としては、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]エチル−s−トリアジン、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾール等を挙げることができ、2−エチル−4−メチルイミダゾールが、樹脂組成物の硬化速度、作業性、耐湿性の観点から好ましい。
【0034】
(D)成分の市販品としては、明和化成製フェノール硬化剤(品名:MEH8000、MEH8005)、三菱化学製酸無水物(グレード:YH306、YH307)、日立化成工業製3 or 4−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸(品名:HN−5500)、日本化薬製アミン硬化剤(品名:カヤハードA−A)、日本ファインケム製アジピン酸ジヒドラジド(品名:ADH)、旭化成イーマテリアルズ製マイクロカプセル化イミダゾール化合物硬化剤(品名:HX3722、HX3742、HX3932HP、HX3941HP)、味の素ファインテクノ製アミンアダクト型硬化剤(品名:PN−40J)、四国化成工業製2−エチル−4−メチルイミダゾール(品名:2E4MZ)等が挙げられるが、(D)成分は、これら品名に限定されるものではない。(D)成分は、単独でも2種以上を併用してもよい。
【0035】
(D)成分は、樹脂組成物の保存安定性、硬化性の観点から、樹脂組成物(溶剤を除く):100質量部に対して、0.1〜5質量部であると好ましい。
【0036】
なお、樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、カップリング剤、粘着性付与剤、消泡剤、流動調整剤、成膜補助剤、分散剤等の添加剤や、有機溶剤を含むことができる。
【0037】
上述の樹脂組成物は、接着フィルムの形成に、適している。(A)〜(D)成分等を含む原料を、有機溶剤に溶解又は分散等させることにより、樹脂組成物を得ることができる。
【0038】
樹脂組成物や樹脂組成物から形成された接着フィルムは、例えば、130〜200℃で、30〜180分間、熱硬化させて、被接着物である金属板と銅箔パターンとを接着する絶縁層にすることができる。絶縁層は、発熱体(例えば、半導体チップ)からの熱を受けた銅箔パターンからの熱を、受熱体である金属板側へ逃がし、受熱体である金属板へ放熱させる伝熱の役割を果たす。さらに、絶縁層は、銅箔パターンと金属板との間の熱膨張率の差に起因する応力を緩和する役割を果たす。
【0039】
絶縁層の厚さは、絶縁破壊電圧、プリント配線基板の小型化の観点から、好ましくは50μm以上300μm以下、より好ましくは50μm以上200μm以下である。50μm未満では所望する絶縁性を得られなくなるおそれがある。300μmを超えると、銅箔パターンからの熱を、十分に伝導できなくなるおそれがある。絶縁層の厚さが薄くなるに従って、銅箔パターンと金属板との距離が短くなるので、効率的な熱伝導の観点から、絶縁層の厚さは薄い方が好ましい。
【0040】
絶縁層の絶縁破壊電圧値は、50kV/mm以上であり、絶縁性に、非常に優れる。したがって、上述のように、絶縁層の厚さを薄くすることができる。
【0041】
絶縁層の25〜125℃での弾性率は、絶縁層に係る応力緩和の観点から、0.1〜10GPa未満であると好ましく、0.5〜10GPa未満であるとより好ましい。絶縁層の25〜125℃での弾性率が、10GPaを超えると、半導体装置のはんだにかかる応力が大きくなりすぎ、信頼性を損ない易くなる。
【0042】
絶縁層の〔(−55℃での弾性率)/(125℃での弾性率)〕は、50未満であると、好ましい。後述する比較例1のように、〔(−55℃での弾性率)/(125℃での弾性率)〕が、50を超えると、絶縁層に係る応力が大きくなり過ぎたため、信頼性試験の結果が悪くなり易い傾向がある。絶縁層の〔(−55℃での弾性率)/(125℃での弾性率)〕の下限値は、1であると、好ましい。
【0043】
また、絶縁層は、熱伝導率が2W/m・K以上であるとより好ましい。また、絶縁層の熱伝導率が2W/m・K未満の場合には、銅箔パターンからの金属板への伝熱が不十分となるおそれがある。絶縁層の体積抵抗率と熱伝導率は、(C)成分の種類と含有量によって、制御することができる。
【0044】
〔銅箔パターン〕
銅箔パターンのパターンは、銅箔への被着物のパターンに応じて、エッチング等で形成することができる。銅箔は、特に、限定されないが、圧延銅箔、電解銅箔、めっき銅膜等を使用することができる。
【0045】
銅箔パターンの厚さは、通常、15〜35μmである。銅箔パターンを通過する電流値に応じて70μm、105μm、と、適宜厚くしてもよい。
【0046】
〔プリント配線基板〕
上述のとおり、プリント配線基板は、金属板と、絶縁層と、銅箔パターンとを、この順に有する。
【0047】
〔(絶縁層の厚さ)/(金属板の厚さ)〕は、0.04〜0.20であると、好ましい。0.04未満では、絶縁性を保てなくなるおそれがある。相対的に、金属板の熱伝導率は高く、絶縁層の熱伝導率は低いため、〔(絶縁層の厚さ)/(金属板の厚さ)〕は、低いほど、プリント配線基板の熱伝導率は、低くなる。しかし、例えば、発熱量が多いチップやモジュールの場合には、要求される放熱量が大きいことに加え、高い絶縁性が求められるため、絶縁層を厚くする必要がある。この要求を満たすために、〔(絶縁層の厚さ)/(金属板の厚さ)〕は、0.04以上が、好ましい。発熱が多い0.20超では、プリント配線基板の熱伝導率が低くなるおそれがある。
【0048】
また、本発明のプリント配線基板では、熱伝導率200W/m・K以上の金属板を用いているため、〔(絶縁層の厚さ)/(金属板の厚さ)〕が0.04以上のとき、特にメリットがある。上述のとおり、昭和電工製Al合金(品名:ST60−T3)の熱伝導率の一例は、218W/m・Kであり、JIS 5052の熱伝導率の一例は、137W/m・Kであるので、金属板の熱伝導率は、1.59倍である。例えば、金属板が2mm、絶縁層(2.7W/m・K)が80μmの場合、〔(絶縁層の厚さ)/(金属板の厚さ)〕は、0.04である。このとき、金属板として、218W/m・KのAl合金(使用するプリント配線基板の熱伝導率は、128W/m・K)を用いると、137W/m・KのAl合金(使用するプリント配線基板の熱伝導率は、103W/m・K)を用いた場合に比べ、プリント配線基板の熱伝導率は1.24倍となる。これと同条件で、金属板を1mmとした場合には、〔(絶縁層の厚さ)/(金属板の厚さ)〕は0.08である。このときのプリント配線基板の熱伝導率は1.53倍(218W/m・KのAl合金を使用したプリント配線基板の熱伝導率が、72W/m・Kであるのに対して、137W/m・KのAl合金をプリント配線基板の熱伝導率は、47W/m・K)となる。これらのことから、プリント配線板中の金属板が薄いほど、絶縁層が厚いほど、熱伝導率200W/m・K以上の金属板を使用したときの熱伝導率向上の効果が大きいといえる。
【0049】
〔半導体装置〕
本発明の半導体装置は、上述のプリント配線基板を使用する。図2に、本発明のプリント配線基板を使用する半導体装置の断面の模式図の一例を示す。図2では、半導体装置10は、金属板1と、絶縁層2と、銅箔パターン3とを、この順に有するプリント配線基板上に、はんだ4、電極5、半導体チップ6を、この順に有する。図2の半導体装置10では、半導体チップ6の発熱が、電極5、はんだ4を介して、銅箔パターン3に伝わり、銅箔パターン3から、絶縁層2を介して、金属板1から放熱される。
【実施例】
【0050】
本発明について、実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の実施例において、部、%はことわりのない限り、質量部、質量%を示す。
【0051】
〔実施例1〜5、比較例1〜2、参考例1〕
表1、表2に示す配合で、各成分を、回転数50〜150rpmで回転させながら、常圧混合を2〜5時間、プラネタリーミキサーにより分散し、その後、必要に応じてビーズミル分散を行い、接着フィルム用樹脂組成物を作製した。
【0052】
得られた接着フィルム用樹脂組成物を、離型剤を施した50μm厚のPETフィルム上に、乾燥後の膜厚が80〜180μmになるように掻き取り塗布した。図3に、掻き取り塗布の方法を説明するための模式図を示す。まず、離型剤付きPETフィルム上に、適切な厚さとなるように、2列にスペーサーを重ねた後、粘着テープで貼付する(図3(A))。離型剤付きPETフィルム上に、接着フィルム用組成物を適量注ぐ(図3(B))。スライドガラスをスペーサー上に置き、接着フィルム用組成物を掻き取って塗布する(図3(C)〜(E))。次に、塗布した接着フィルム用組成物を、十分乾燥し、接着フィルムを得た。
【0053】
次に、長さ:40mm、幅:40mmに切断した、金属板と、接着フィルムと、厚さ:35μmの銅箔を積層し、真空プレス機を用いて、180℃×120分、0.1MPaの条件で硬化させた。その後、銅箔をエッチングして回路を形成し、プリント配線基板を得た。銅箔の面積は、7.5mmであった。ここで、実施例1〜5、比較例1〜2の金属板には、昭和電工製Al合金(品名:ST60−T3)を、参考例1の金属板には、JIS 5052のアルミ合金板を、使用した。絶縁層、金属板の厚さは、マイクロメーターにより、測定した。
【0054】
〔評価方法〕
【0055】
1.熱伝導率の測定
180℃×120分、0.1MPaの条件で硬化させた絶縁層(接着フィルム硬化物)、使用した金属板と、得られたプリント配線基板の銅箔のない箇所を、それぞれ10×10mmに裁断し、熱伝導率測定用試験片を作製した。作製した熱伝導率測定用試験片の熱伝導率を、NETZSCH社製熱伝導率計(Xeフラッシュアナライザー、型番:LFA447Nanoflash)で測定した。表1、表2に、熱伝導率の測定結果を示す。プリント配線基板の熱伝導率は、50W/m・K以上が、好ましい。
【0056】
2.絶縁層の絶縁破壊電圧の測定
180℃×120分、0.1MPaの条件で硬化させた硬化体を40mm×40mmに切り出し、試験片とした。この試験片を絶縁油中に浸漬し、室温で交流電圧を印加し、総研電気社製DAC−6041耐電圧試験システムにて、絶縁破壊電圧を測定した。なお、耐電圧の単位はkVである。表1、表2に、結果を示す。
【0057】
3.絶縁層の弾性率の測定
上述の方法で、膜厚が約150μmになるように、接着フィルム用組成物を塗布し、180℃×120分でシート状に硬化させた。40mm×10mmの短冊状に切り出し、エスアイアイ・ナノテクノロジー社製のDMS6100を用いて、−55℃〜125℃の貯蔵弾性率を求めた。表1、表2に、測定結果を示す。
【0058】
4.信頼性試験
銅箔をエッチングして回路を形成し、これにチップ抵抗素子(幅:3.0mm、長さ:2.5mm)をはんだ接続した半導体装置を、−55℃で30分間、125℃で30分間放置を1サイクルとし、3000サイクル経過後のはんだ接続部の表面及び断面を観察し、はんだクラック発生の有無を調査した。また、併せてプリント配線基板の割れやクラックの有無を調査した。はんだクラックの発生があるものや、プリント配線基板に割れやクラックの発生があるものを不良(×)と判定し、これらの発生がないものを良好(○)と判定した。なお、銅箔の面積は、7.5mmであった。表1、表2に、結果を示す。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
表1、表2からわかるように、実施例1〜5のすべてにおいて、プリント配線基板の熱伝導率、信頼性試験の結果が良好であった。これに対して、絶縁層の絶縁破壊電圧が50kV/mm未満の比較例1と比較例2は、熱伝導率200W/m・K以上の金属板を使用しても、信頼性試験の結果が悪かった。なお、比較例1は、絶縁層の〔(−55℃での弾性率)/(125℃での弾性率)〕が125と、弾性率の差が大きかったため、絶縁層に係る応力が大きくなり過ぎ、信頼性試験の結果が悪かったと、考えられる。一方、比較例2は、絶縁層の25℃〜125℃における弾性率が10GPa未満でなく、絶縁層が高弾性率であるため、はんだ部への応力が大きくなり過ぎ、信頼性試験の結果が悪かったと、考えられる。参考例1は、金属基板の熱伝導率が、低すぎるため、プリント配線基板の熱伝導率も低かった。
【0062】
上記のように、本発明のプリント配線基板は、高放熱性であり、温度サイクル特性に優れるため、高信頼性の半導体装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0063】
0 プリント配線基板
1 金属板
2 絶縁層
3 銅箔パターン
4 はんだ
5 電極
6 半導体チップ
図1
図2
図3