特許第6580215号(P6580215)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6580215
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】プラズマ処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20190912BHJP
   H05H 1/46 20060101ALN20190912BHJP
【FI】
   H01L21/302 105A
   !H05H1/46 M
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-119547(P2018-119547)
(22)【出願日】2018年6月25日
(62)【分割の表示】特願2017-538254(P2017-538254)の分割
【原出願日】2017年1月31日
(65)【公開番号】特開2018-160689(P2018-160689A)
(43)【公開日】2018年10月11日
【審査請求日】2018年6月25日
(31)【優先権主張番号】特願2016-62977(P2016-62977)
(32)【優先日】2016年3月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】寺倉 聡志
(72)【発明者】
【氏名】森 政士
(72)【発明者】
【氏名】荒瀬 高男
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 拓
【審査官】 佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2016/0005602(US,A1)
【文献】 特開2014−225501(JP,A)
【文献】 特表2007−507091(JP,A)
【文献】 特開2014−007370(JP,A)
【文献】 特開2010−283213(JP,A)
【文献】 特開平07−307328(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H05H 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホウ素が含有されたアモルファスカーボン膜を有する積層膜をプラズマエッチングすることによりマスクを形成するプラズマ処理方法において、
ガスとCHFガスとClガスとSiClガスの混合ガスを用いて前記ホウ素が含有されたアモルファスカーボン膜をプラズマエッチングし、
前記混合ガスに対する前記Clガスの流量比率は、前記混合ガスに対する前記CHFガスの流量比率より高いことを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項2】
ホウ素が含有されていないアモルファスカーボン膜を有する積層膜をプラズマエッチングすることによりマスクを形成するプラズマ処理方法において、
酸素ガスとフッ素含有ガスとハロゲンガスと四フッ化シリコンガスの混合ガスまたは酸素ガスとフッ素含有ガスとハロゲンガスと四塩化シリコンガスの混合ガスを用いて前記ホウ素が含有されていないアモルファスカーボン膜をプラズマエッチングすることを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項3】
請求項に記載のプラズマ処理方法において、
前記フッ素含有ガスは、CHFガス、CHガス、CHFガス、NFガス、CFガスまたはSFガスであって、
前記ハロゲンガスは、Clガス、HBrガスまたはHIガスであることを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のプラズマ処理方法において、
前記積層膜が成膜された試料を載置する試料台に1000W以上の高周波電力を供給または前記試料台に1350V以上のピーク間高周波電圧を印加することにより前記ホウ素が含有されたアモルファスカーボン膜をプラズマエッチングすることを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のプラズマ処理方法において、
圧力を4Pa以上として前記ホウ素が含有されたアモルファスカーボン膜をプラズマエッチングすることを特徴とするプラズマ処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造に関わるプラズマを用いて試料を処理するプラズマ処理方法、およびその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
3次元構造を持つフラッシュメモリ(3D−NAND等)のゲート製造工程においては、デバイスの大容量化に伴い、特許文献1に開示されているようにポリシリコン膜とシリコン酸化膜のペア層総数が48層、72層、96層、120層と増加してきており、プラズマエッチング加工の高アスペクト化が進行している。
【0003】
従来から、これら積層膜をエッチングする際は、パターニングされたフォトレジスト膜(PR)と反射防止膜(Bottom Anti−Reflection Coat:BARC)とアモルファスカーボン膜(Amorphous Carbon Layer:ACL、以下、ACL膜と称する)の積層膜がエッチングマスクとして使用されてきたが、高アスペクト化に伴い、アモルファスカーボン膜のマスクの厚さ不足が顕在化してきた。
【0004】
そのため、ACL膜にホウ素元素(B)をドープ(含有)し、耐プラズマ性を向上させたホウ素を含有するB−Doped ACL膜が採用されてきている。従来のACL膜をエッチングする際は、酸素を主体として、COSや窒素を添加、または、アルゴンやヘリウムで希釈したプラズマを用いてレジストのパターンをACL膜に転写していたが、10から40%程度のホウ素を含有するB−Doped ACL膜をこのガス系でエッチングすることは困難だった。
【0005】
この問題を解決するため、特許文献2には、ウェハステージの温度を100℃以上とすることによりホウ素の反応生成物の揮発性を増加させてエッチングを行う方法が開示され、特許文献3には、CH、Cl、SF、Oの混合ガスを用いてフッ化ホウ素とすることにより、反応生成物揮発性を増加させるとともにCl、CHで加工垂直性を制御することによって、10〜30℃の常温でエッチングする方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015−144158号公報
【特許文献2】特開2014−007370号公報
【特許文献3】US2015/0064914 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2に開示された方法では、PR/BARC/SiON/B−doped ACLのマスク構造のサンプルをエッチングする際、フォトレジスト膜が高温のため、炭化してパターンが損傷する。また、下層のシリコン/シリコン酸化膜のペア層のエッチ時には50℃以下の低温側でエッチングする必要があるため、同一チャンバーによるマスクから下地膜までのエッチング(いわゆる一貫処理)が出来ない。たとえ一貫処理が出来たとしても、温度待ち時間が長くエッチング処理のスループットが低下したりするという問題が生じた。
【0008】
また、特許文献3に開示された方法では、従来のACL膜のエッチング時より対シリコン酸窒化膜選択比が小さいため、従来のACL膜エッチング時に必要とされた30−40nm厚さのシリコン酸窒化膜を使用した場合、下層のSiO膜までエッチングが到達できない、もしくは、エッチング進行中、シリコン酸窒化膜の開口部の際から後退していくファセッティングが発生する問題が発生した。
【0009】
それら問題を回避するため、シリコン酸窒化膜を厚くしたりする方法を採用せざるを得ないが、マスク成膜工程でのスループットが大きく低下、ひいてはCoO(Cost of Owership)を大きく増加させる問題が発生している。
【0010】
さらに、上下層膜との組み合わせに応じて、ホウ素濃度や使用するステージ温度の中心値を適宜変更する可能性があるため、B−Doped ACL膜のエッチングする際には、その他の形状異常(サイドエッチ、ボーイング、エッチストップ)を解消できる形状制御性を有し、垂直に近いエッチング加工を実現できる必要がある。
【0011】
以上、本発明は、ホウ素が含有されたアモルファスカーボン膜を用いた積層膜をエッチングする際、高選択比、高エッチングレートを実現することで一貫加工を可能とし、マスク成膜工程を簡素化することにより前後工程含めた高スループット化を実現し、さらに、垂直加工の形状制御性を有するプラズマ処理方法、およびその処理装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、ホウ素が含有されたアモルファスカーボン膜を有する積層膜をプラズマエッチングすることによりマスクを形成するプラズマ処理方法において、酸素ガスとフッ素含有ガスとハロゲンガスと四フッ化シリコンガスの混合ガスまたは酸素ガスとフッ素含有ガスとハロゲンガスと四塩化シリコンガスの混合ガスを用いて前記ホウ素が含有されたアモルファスカーボン膜をプラズマエッチングすることを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、試料がプラズマ処理される処理室と、前記処理室内にプラズマを生成するための高周波電力を供給する高周波電源とを備えるプラズマ処理装置において、第一のガスと前記第一のガスへ混合されるガスである第二のガスを複数の領域を介して前記処理室内へ供給するガス供給機構をさらに備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明により無機膜をマスクとしてホウ素が含有されたアモルファスカーボン膜を高エッチングレートかつ高選択比でエッチングをすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る平行平板型の有磁場VHFドライエッチング装置の縦断面図で ある。
図2】本発明のプラズマ処理方法の一実施例におけるエッチング形状を示す図であ る。
図3】形状異常を示すエッチング断面の模式図である。
図4】本発明におけるB−Doped ACLエッチングレート及びマスク選択比 に対するバイアス電力依存性を示す図である。
図5】本発明におけるB−Doped ACLエッチングレート及びマスク選択比 に対する圧力依存性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施例を図1ないし図5により説明する。図1は本発明のプラズマ処理装置の一例である平行平板型の有磁場VHFドライエッチング装置の縦断面図である。
【0017】
円筒状の内部空間を有し処理室である真空容器101内の下部には、上面に試料であるウェハ102を載置する試料台103が設けられている。試料台103には第一の整合器104を介してバイアス印加用の高周波電源105およびウェハ静電吸着用の直流電源106が接続されている。また、試料台103には温調ユニット107が接続されている。
高周波電源105は、この場合、周波数4MHzを用いている。
【0018】
また、真空容器101内の下部には、排気口が設けられ、この排気口に図示を省略した排気装置が繋がる。真空容器101内の上部には、試料台103のウェハ載置面に対向して平板状のアンテナ108が設けられ第二の整合器109を介してプラズマ生成用の高周波電源110が接続されている。高周波電源110は、本実施例において周波数200MHzのVHF波を用いている。また、真空容器1外部の上面及び外周には、真空容器101内に磁場を形成するソレノイドコイル111が設けられている。ソレノイドコイル111は、真空容器101の軸方向で試料台103に向かう発散磁場を形成する。
【0019】
試料台103に対向するアンテナ108の下面には多数のガス供給孔を有するシャワープレート112が設けられ、アンテナ108とシャワープレート112との間に、内側空間と内側空間を囲む外側空間とが形成され、それぞれの空間にガス供給孔がつながっている。内側空間には内側ガス供給路113が設けられ、外側空間には外側ガス供給路114が設けられている。内側ガス供給路113にはメインガス系統115と内側添加ガス系統116とを混合して接続し、外側ガス供給路114にはメインガス系統115と外側添加ガス系統117とを混合して接続してある。
【0020】
メインガス系統115は、酸素とフッ素含有ガスとハロゲンガスと不活性ガスとから成る混合ガスである第一のガスのガス系統であり、本実施例においては、フッ素含有ガスはCHFであり、ハロゲンガスはClであり、不活性ガスはNである。メインガス系統115は、ガス源Oの流量を制御する流量制御器A118と、ガス源CHFの流量を制御する流量制御器B119と、ガス源Cl流量を制御する流量制御器C120と、ガス源Nの流量を制御する流量制御器D121aと、これら流量制御器118ないし121aにそれぞれ接続したストップバルブ123と、それぞれのストップバルブ123を介して混合されたガスが供給されるガス分流器124とから成る。
【0021】
内側添加ガス系統116および外側添加ガス系統117は、シリコン含有ガス(四塩化シリコンガスまたは四フッ化シリコンガス)と不活性ガスとから成る混合ガスである第二のガスのガス系統であり、本実施例においては、シリコン含有ガスはSiClであり、不活性ガスはNである。内側添加ガス系統116は、ガス源Nの流量を制御する流量制御器D121bと、ガス源SiClの流量を制御する流量制御器E122aと、これら流量制御器121bおよび122aにそれぞれ接続したストップバルブ123とから成り、それぞれのストップバルブ123を介して混合されたガスを供給する。外側添加ガス系統117は、ガス源Nの流量を制御する流量制御器D121cと、ガス源SiClの流量を制御する流量制御器E122bと、これら流量制御器D121cおよび122bにそれぞれ接続したストップバルブ123とから成り、それぞれのストップバルブ123を介して混合されたガスを供給する。
【0022】
流量制御器118ないし121aによって各ガス源からのガス流量を各設定流量に調整された各ガスは、ガス流量分流器115によって内側ガス供給路113と外側ガス供給路114とに所定の比率で分流され流される。流量制御器121bおよび122aによって各ガス源からのガス流量を各設定流量に調整された各ガスは、ガス流量分流器115によって内側ガス供給路113へ分流されたガスと混合されてシャワープレート112の内側空間に供給され、ガス供給孔を介して真空容器101の中央側に供給される。
【0023】
流量制御器121cおよび122bによって各ガス源からのガス流量を各設定流量に調整された各ガスは、ガス流量分流器115によって外側ガス供給路114へ分流されたガスと混合されてシャワープレート112の外側空間に供給され、ガス供給孔を介して真空容器101の中央部を囲む外側に供給される。
【0024】
すなわち、メインガスはガス流量分流器124によってシャワープレートの分離された内外領域に合わせ所定の比率で分割し、それぞれに流量調整した添加ガスを所定比率で分割された各メインガスに合流させて、シャワープレートの内外領域に供給する。これにより、真空容器101内のシャワープレート112下方半径方向に、各ガス成分を任意に調整した面内分布を得ることができる。
【0025】
なお、本実施例ではシャワープレート112内のガス溜め空間を内外の2領域に分離したが、3領域以上でも良く、また、円周方向に複数分離しても良く、分離された数に合わせてガス流量分流器124の分割数を設定し、同一ガス種の添加ガス系統の数を設ければ良い。
【0026】
また、このようなガス領域分割の効果は、シャワープレート112と試料台103との距離が狭いほど効果がある。
【0027】
上述のように構成された装置により次のように処理が行われる。
【0028】
図示省略の搬送装置により真空容器101内に搬入されたウェハ102が試料台103上に配置され、直流電源106からの電圧印加によりウェハ102が試料台103上に静電吸着される。試料台103に吸着・保持されたウェハ102の裏面には伝熱ガスであるHガスが供給され、温調ユニット107によって温度調整された試料台103との間で熱伝達が行われてウェハ102が所定の処理温度に維持される。
【0029】
ウェハ102が試料台103に保持された後、真空容器101内に、メインガス系統115、内側添加ガス系統116および外側添加ガス系統117から内側ガス供給路113および外側ガス供給路114にそれぞれ流量制御された処理ガスであるO、CHF、Cl、SiCl、Nの混合ガスが供給される。供給された混合ガスは、シャワープレート112を介して真空容器内に供給され、真空容器101内で所定の処理圧力に維持されて、高周波電源110からの200MHzの高周波電力とともにソレノイドコイル111からの磁場の作用によって混合ガスが励起されプラズマ化される。
【0030】
プラズマが生成された後は、高周波電源105により試料台103にバイアス用の高周波電力を供給する。これによりプラズマ中のイオンがウェハ2に入射し、ウェハ102のエッチング処理が行われる。この時、真空容器101内に供給する各ガス成分を半径方向で任意に調整されており、プラズマ中においてはその面内分布に応じて解離されたガス成分のラジカルやイオンが分布し、ウェハ102面内のエッチング処理に均一に作用するよう調整されている。
【0031】
ここで、被エッチング材であるウェハ102は、図2(a)に示す積層膜を有する。ウェハ基板上にはペア層201、本実施例においては、シリコン酸化膜(SiO2)とポリシリコン膜(Poly−Si)とを交互に積層した積層膜が設けられ、ペア層201上に順次、ACL膜(B−Doped ACL膜)202、シリコン酸窒化膜(SiON)203、反射防止膜(BARC)204、フォトレジスト膜(PR)205が設けられている。
【0032】
次に上述構造の膜のエッチング処理について説明する。まず、図2(b)に示すように、回路パターンを露光されたフォトレジスト膜205をマスクとして反射防止膜204、シリコン酸窒化膜203をエッチングによりパターンを転写する。このシリコン酸窒化膜203のエッチング処理では、CHFガスとSFガスの混合ガスを用いる。また、この時、フォトレジスト膜205及び反射防止膜204を除去する処理を入れても良い。続いて図2(c)に示すようにシリコン酸窒化膜203をマスクとしてB−doped ACL202をエッチングする。
【0033】
本発明では、シリコン酸窒化膜203をマスクとしてACL膜202中のホウ素をエッチングするため、従来ACLのエッチャントである酸素に加え、フッ素含有ガスとハロゲンガスと四塩化シリコンガス(SiCl)または四フッ化シリコンガス(SiF)の混合ガスを用いることを特徴とする。
【0034】
この時、ガス全体に対するハロゲンガスの割合は、B−Doped ACL202に含まれるホウ素の含有量(例えば5−70%)と温調ユニット107の設定温度に応じて適宣設定する。本実施例では、55%のホウ素濃度のB−Doped ACL膜をエッチングする場合、温調ユニット107の温度を50℃とし、OガスとCHFガスとClガスとSiClガスの混合ガスを使用した。この場合、各ガス種の傾向は、以下のようになる。
【0035】
まず、ガス全体の流量に対しCHFの割合が高いとフッ素ラジカルの供給が過剰となり、ホウ素はもとより、カーボンとの反応も促進され、図3(a)に示すようにB−Doped ACL膜202にサイドエッチ301やボーイング302が発生する。また、CHFの割合が低いとエッチングが進行せず、図3(b)に示すようにエッチストップ303となる。そして、Clを添加し、CHFとのガス比を適宜制御することによりサイドエッチ抑制と高エッチングレートを両立することが可能となる。
【0036】
また、一般に試料台103の温度は、B−Doped ACL膜の上方の膜から下方の膜までの一貫処理において高スループットを維持するため、B−Doped ACL膜の上方の膜から下方の膜までのエッチングに適切な各々の温度の差が±10℃以内となるように設定(ステップ間の変化率1℃/sの場合、温度変化待ち時間10s以内)することが好ましい。また、B−Doped ACL膜の上方及び下方の層の材質変更に応じて試料台103の温度を変化させることが一般的である。
【0037】
従って、B−Doped ACL膜の上方の膜から下方の膜までを一貫処理する際、試料台103の温度を必要に応じて上げ、CHFの流量比は、それぞれの膜で低下、増加させた上で高エッチレートを維持し、さらにCHFガスに対するClガス比率を制御することにより高エッチングレートと垂直性を両立することが可能となる。逆に試料台103の温度を低くする場合は、温度低下によりフッ素ラジカルの反応確率が低減することによりサイドエッチを低減させることが出来るため、CHFガスに対するClガス比率は低下させるとよい。すなわち、試料台103の温度を調整することによりボーイング形状やテーパ形状の角度の調整をすることも出来る。
【0038】
CHFガスに対するClガス比率を高く設定することにより異方性の高い形状を得ることが出来るが、さらに高バイアス電力、高圧力領域を使用することにより従来のACLエッチングと同等以上の高レートな処理が可能となる。また、高バイアス化は、反応生成物の増加による側壁保護増加の効果があり、サイドエッチングやボーイング形状となるのを抑制する効果がある。さらに図4に示すようにB−Doped ACL膜のエッチングレート401は、バイアス電力が1000W以下の領域においてバイアス電力の増加に伴い、大きく増加するが、1000W以上の領域では緩やかに増加する。
【0039】
また、マスク選択比402は、バイアス電力の増加に伴い、緩やかに減少するが、減少幅は、小さい。すなわち、B−Doped ACL膜を高エッチングレートで処理するには、バイアス電源の電力設定は1000W以上とすることが好ましい。この時、4MHzの1000Wでは、正弦波のピーク間電圧であるVppが1350Vであるため、バイアス周波数が異なる場合は、このVpp以上となる電源電力、もしくは直接Vpp制御することにより調整できる。
【0040】
さらに高圧化は、ラジカルフラックスが増加し、プラズマ密度が低下するため、図5に示すように高圧化に伴い、B−Doped ACL膜のエッチングレート501は増加し、選択比も増加する。選択比502は、圧力が4Pa以上の領域では飽和しているため、圧力設定は4Pa以上とすることが好ましい。
【0041】
そして、本発明では、四塩化シリコンガスまたは四フッ化シリコンガスを添加することによりシリコン酸化化合物がマスクであるシリコン酸窒化膜203に堆積し、シリコン酸窒化膜203のエッチング量が減少するため、選択比を増加させることが出来る。また、マスクの残り量が増加するため、マスクの後退を減少させることが出来、図3(c)に示すように形状の上部のファセッティング304を抑制することや、マスク膜厚を例えば、30−40nmといった従来のACLエッチング処理程度の厚さにすることが出来る。このことによりマスク成膜工程の複雑化を回避し、スループット、CoO向上することが可能となる。
【0042】
以上のようにClガスに対するCHFガスの比とバイアス電力により垂直性の調整は可能であるため、ウェハステージは100℃以下であれば良い。しかし、B−Doped ACL膜の上方及び下方の積層膜を1チャンバーで一貫加工して高スループットを維持するためには、0℃以上60℃以下とすることが好ましい。
【0043】
また、本実施例ではフッ素含有ガスとしてCHFガスを使用したが、その他CHガス、CHFガス、NFガス、CFガス、SFガスを使用しても良い。また、Clガスの他にBr含有ガスのHBrガス、HIガスを使用しても良い。さらにSiClガスのほかにSiFガスを使用してもよい。例えば、CHFガスより多量のフッ素を発生させるNFガス、CFガス、SFガス等を使用した場合、フッ素系ガス比をCHFガスの使用時より低下させる、または、試料台103の設定温度を低下させることにより垂直形状を維持することができる。
【0044】
さらに本実施例では、酸素ガスとフッ素含有ガスとハロゲンガスと四塩化シリコンガスの混合ガスまたは酸素ガスとフッ素含有ガスとハロゲンガスと四フッ化シリコンガスの混合ガスを用いてホウ素を含有するアモルファスカーボン膜をプラズマエッチングする例であったが、酸素ガスとフッ素含有ガスとハロゲンガスと四塩化シリコンガスの混合ガスまたは酸素ガスとフッ素含有ガスとハロゲンガスと四フッ化シリコンガスの混合ガスをNガス、Arガス、Heガス、Xeガス、Krガス等の不活性ガスにより希釈しても本実施例と同等の効果を奏することができる。
【0045】
また、HBrガスを使用した場合は、Clガスより反応性が低いため、Clガスより小流量で調整可能である。SiFガスを使用した際は、酸化膜の前駆体であると同時にフッ素元素の供給源でもあるため、フッ素系ガスの量を低下させつつ、適宜流量を調整することにより高選択比を実現できる。
【0046】
また、本実施例では、ホウ素が含有されたアモルファスカーボン膜であるB−Doped ACL膜のマスク形成例であったが、本発明に係るドライエッチングをホウ素が含有されていないアモルファスカーボン膜に適用しても本実施例と同等の効果を得ることができる。つまり、本発明に係るドライエッチングを従来のアモルファスカーボン膜に適用しても本実施例と同等の効果を得ることができる。
【0047】
なぜならば、ホウ素が含有されていないアモルファスカーボン膜の主成分がホウ素を含有するアモルファスカーボン膜の主成分と同じ有機材であり、四塩化シリコンガスまたは四フッ化シリコンガスを添加することによりシリコン酸化化合物がマスクであるシリコン酸窒化膜203に堆積し、シリコン酸窒化膜203のエッチング量が減少することによって選択比を向上させているからである。
【0048】
さらに本発明に係るドライエッチング方法を実施するには、上述したガス種を備え、かつ3000W程度のバイアスが印加でき、4Pa以上の高圧力で均一なエッチング装置が必要である。本実施例では、図1に示した平行平板構造のVHFエッチング装置を用いたが、他のCapasitively Coupled Plasma(CCP)、Inductively Coupled Plasma(ICP)、Micro Wave Electron Cyclotron Resonance(μ波ECR)等の他のプラズマ源を用いたプラズマエッチング装置においても、圧力、ガス流量、ガス比、バイアス電力、周波数、ステージ温度等を調整することにより本実施例と同様な効果を得ることが出来る。
【0049】
以上、本発明により、無機膜をマスクとしてアモルファスカーボン膜を高エッチングレートかつ高選択比でエッチングをすることが出来るため、前後工程含めた一貫エッチング処理を可能とし、マスク成膜工程を簡素化することによる前後工程含めた高スループット化を実現することが可能となる。
【符号の説明】
【0050】
101:真空容器
102:ウェハ
103:試料台
104:第一の整合器
105:バイアス印加用の高周波電源
106:直流電源
107:温調ユニット
108:アンテナ
109:第二の整合器
110:プラズマ生成用の高周波電源
111:ソレノイドコイル
112:シャワープレート
113:内側ガス供給路
114:外側ガス供給路
115:メインガス系統
116:内側添加ガス系統
117:外側添加ガス系統
118:流量制御器A
119:流量制御器B
120:流量制御器C
121a:流量制御器D
121b:流量制御器D
121c:流量制御器D
122a:流量制御器E
122b:流量制御器E
123:ストップバルブ
124:ガス分流器
201:シリコン酸化膜とポリシリコン膜のペア層
202:B−Doped ACL膜
203:シリコン酸窒化膜
204:反射防止膜
205:フォトレジスト膜
301:サイドエッチ
302:ボーイング
303:エッチストップ
304:ファセッティング
図1
図2
図3
図4
図5