【実施例】
【0052】
以下、実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は、これら実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0053】
[実験例1]
図1は、実施例に用いた食感推定装置100の構成を示す。食感推定装置100は、受信部10と、アンプ11と、プロセッサ12と、メモリ13と、操作部14と、表示部15とを含む。ただし、
図1で示す食感推定装置100の構成はあくまで一例であり、本発明の食感推定方法を実施する装置は、
図1の食感推定装置100に限定されるわけではない。
【0054】
図1におけるヒト(被験者)Hの頬には、咀嚼筋の筋電位を検出するパッチPが貼付されている。パッチPには二つの表面電極Eが設けられている。なお、本図では被験者Hの右頬にのみパッチPが貼付されているか、図面の奥側の被験者Hの左頬にもパッチPを貼付してもよい。また、例えば医療用のテープ等を用いて被験者Hの頬に表面電極Eを貼り付けてもよい。特に本例では、表面電極Eは、咀嚼筋のうち、咬筋に相当する位置に貼付されている。パッチPの表面電極EにはケーブルCが接続され、表面電極Eが検出した咀嚼筋の筋電位の電気情報(筋電位情報)が、ケーブルCを介して受信部10に入力される。
【0055】
受信部10は筋電位情報の如き電気情報を受信可能なインターフェースにより構成される。アンプ11は受信部10が受信した筋電位情報を増幅する。プロセッサ12は一般的な演算制御装置により構成され、食感推定装置100の全体の制御を行う。さらにプロセッサ12は、アンプ11が増幅した筋電位情報を処理する。
【0056】
メモリ13は、種々のデータやプログラムを記憶可能である。操作部14は、食感推定装置100の操作者が種々の操作を入力可能なスイッチ、ボタン、ダイヤル、タッチパネル等の入力機器により構成される。表示部15は、液晶ディスプレイ等の表示デバイスにより構成され、種々の情報を視覚可能に表示する。
【0057】
プロセッサ12は、メモリ13や自身が内蔵する記憶装置等に記憶された波形分析ソフトを読み込み、アンプ11が増幅した筋電位情報を当該ソフトにより分析して、筋活動量および最大筋活動比を算出する。また、プロセッサ12は、表示部15に波形分析ソフトにより作成された波形や数字等の形式による筋電位情報を表示する。またプロセッサ12は喫食時の筋電位情報(第1の筋電位情報)から喫食の開始時刻を判定することが可能である。また、プロセッサ12は喫食時の筋電位情報(第1の筋電位情報)から喫食の終了時刻(嚥下の終了時刻または咀嚼の終了時刻)を判定することが可能である。結果的に、プロセッサ12は試料の処理時間を測定することが可能である。ただし、プロセッサ12は、主として食感推定装置100の全体制御を担うのであり、特にその機能は限定されない。
【0058】
本実験例では、食感推定装置100を用いて算出した食べ方の異なる多様な食品の喫食中(全体)における最大筋活動比に基づき、食感(噛み応えや噛み心地)を定量的に推定し、評価できることを、被験者の2名(被験者A、被験者B)で検証した。ここで、被験者Aと被験者Bの各々の左右の咬筋には、表面電極Eとして、皿型表面電極EL258S(バイオパック社製)をいずれか又は両方の咀嚼筋に表面電極Eを1箇所(右または左)につき2個を貼り付けた。さらにアース電極を前額に貼付して、喉には、喉頭マイクロフォンを設置した。そして、筋電図用アンプEMG100C(バイオパック社製)に筋電図を取り込み、波形分析ソフトAcqKnowledge(バイオパック社製)を用いて解析した。以下、他の実験でも同様の装置を用いた。
【0059】
図2は、食感推定装置100により得られる筋電図(筋電位情報)の例を示す。この筋電図の波形は上で述べた試験により得られ、筋電位情報の一態様であり、表示部15が表示する。被験者が試料の食品を処理する処理時間において得られる筋電位図が上述した第1の筋電位情報に該当し、被験者が最大の力で噛みしめた時(最大咬合時)において得られる筋電位図が第2の筋電位情報に該当する。プロセッサ12は、この筋電位図について、横軸の時間で積分処理することにより筋活動量を算出する。第1の筋電位情報から処理時間における咀嚼筋の筋活動量が算出され、第2の筋電位情報から最大咬合時の1秒間当たりの咀嚼筋の筋活動量が算出される。
【0060】
最初に、食感推定装置100は、被験者Aと被験者Bが5秒間以上、最大の力(最大咬合に相当する)で噛みしめた際に得られる筋電位情報である、第2の筋電位情報を取得した。さらにプロセッサ12は、第2の筋電位情報から、筋電位情報の波形が安定した1秒間の咀嚼筋(咬筋)の筋活動量を「最大咬合時の1秒間当たりの咀嚼筋(咬筋)の筋活動量」としてプロセッサで算出した。その後に、食感推定装置100は、被験者Aと被験者Bが表1の試料の所定量を喫食した際における、被験者Aと被験者Bの喫食の開始から最後の嚥下の終了までの咀嚼筋(咬筋)の筋活動量と、喫食の開始から最後の(食品の全部の)嚥下までの時間(処理時間)を測定した。
【0061】
【表1】
【0062】
なお、上記商品名のうち、アーモンドチョコレート以外はすべて登録商標である。また、マクビティ(登録商標)の1口の喫食量は、被験者Aで2.3g、被験者Bで1.8gであった。
【0063】
ここで、咀嚼筋(咬筋)の筋活動量として左右の平均値を用いて、各試料の喫食時における最大筋活動比を以下の式(1)によって算出した。
【0064】
最大筋活動比(%)= 試料の処理時間における咀嚼筋(咬筋)の筋活動量÷(最大咬合時の1秒間当たりの咀嚼筋(咬筋)の筋活動量×処理時間)×100・・・(1)
【0065】
さらに、被験者が試料を喫食して、実際に感ずる食感(噛み応えや噛み心地)を評価する官能評価を行い、当該官能評価の評価情報を取得した。ここでは、被験者Aと被験者Bの各々が各試料の喫食時の食感(噛み応え)を7段階の尺度で評価した(−3:全くない、−2:ない、−1:ややない、0:どちらでもない、1:ややある、2:ある、3:かなりある)。すなわち、この評価が、官能評価の評価情報に該当する。そして、最大筋活動比と食感(噛み応え)の評価である官能評価の評価情報の相関関係を確認した。評価した結果を表2に示した。被験者Aと被験者Bの両者において、1回分の喫食量として粒や個や口等で単位容量や単位数が異なっても、最大筋活動比の順位と食感の順位がほぼ一致していた。
【0066】
このとき、被験者Aでは、試料1、試料3の食感(噛み応え)が「ややある(1)」、「ある(2)」と評価したのに対し、被験者Bでは、試料1、試料3の食感が「ある(2)」、「とてもある(3)」と評価した。また、被験者Aでは、試料4、試料6、試料7の食感(噛み応え)が「ない(−2)」、「ややない(−1)」、「ない(−2)」と評価したのに対し、被験者Bでは、試料4、試料6、試料7の食感が「ややない(−1)」、「どちらでもない(0)」、「どちらでもない(0)」と評価した。つまり、被験者Aに比べて、被験者Bでは、食感を強く感じ、食感の評価が高く、最大筋活動比が高かった。
【0067】
【表2】
【0068】
図3は被験者Aの最大筋活動比と食感の評価(官能評価の評価情報)の相関関係を示すグラフであり、
図4は被験者Bの最大筋活動比と食感の評価の相関関係を示すグラフである。被験者Aと被験者Bの両者において、最大筋活動比と食感の評価(官能評価の評価情報)の相関係数が0.4以上と高い相関関係を示した。このとき、同じ食品を喫食しても、食感には、個人差があることを確認できた。例えば、同じ食品を喫食しても、咀嚼力の強い人では、食感が小さくなり(弱くなり)、咀嚼力の弱い人では、食感が大きくなった(強くなった)。そして、試料の喫食量に拘わらず、最大筋活動比には、食感の個人差が反映されることを確認できた。つまり、最大筋活動比は食感の評価と高い相関関係を示したことから、最大筋活動比を用いて、食感(噛み応えや噛み心地)を定量的に推定することは妥当であると考えられた。このように、官能評価を実施することにより、評価情報と最大筋活動比の相関関係を考慮することにより、算出した最大筋活動比の妥当性を確認することができる。この結果、被験者毎の食感をより定量的かつ客観的に推定できる。
【0069】
[実験例2]
本実験例では、食感推定装置100を用いて算出した食べ方の異なる多様な食品の喫食中(全体)における最大筋活動比の推移によって、食感(噛み応えや噛み心地)の経時的な推移を定量的に評価できることを、被験者の2名(被験者A、被験者B)で検証した。まずは、被験者Aと被験者Bが表3の試料の所定量を喫食した際に筋電位計測を行い、得られた筋電図情報より、喫食の開始から最後の(食品の全部の)嚥下の終了までの時間(処理時間)を抽出した。その後に、その喫食の処理時間を、前半、中盤、後半に約3分割し、それぞれの時間における咀嚼筋(咬筋)の筋活動量を算出した。ここで、左右各々の咀嚼筋(咬筋)の筋活動量を用いて、各試料の最大筋活動比を実験例1と同じ式によって算出し、左右各々の最大筋活動比を平均した。さらに、実験例1と同様にして、被験者Aと被験者Bの各々が各試料の喫食の時間における食感(噛み応え)を7段階の尺度で評価して、官能評価の評価情報である食感を取得した。そして、最大咬筋活動比と食感(官能評価の評価情報)の相関関係を評価した。
【0070】
【表3】
【0071】
図5は被験者Aの食感の評価(官能評価の評価情報)の推移(経時変化)を示すグラフであり、
図6は被験者Bの食感の評価(官能評価の評価情報)の推移(経時変化)を示すグラフである。また、
図7は被験者Aの最大筋活動比の推移(経時変化)を示すグラフであり、
図8は被験者Bの最大筋活動比の推移(経時変化)を示すグラフである。
図9は被験者Aの最大筋活動比と食感の評価(官能評価の評価情報)の相関関係を示すグラフであり、
図10は被験者Bの最大筋活動比と食感の評価(官能評価の評価情報)の相関関係を示すグラフである。
【0072】
被験者Aと被験者Bの両者において、喫食の開始から最後の(食品の全部の)嚥下の終了まで経時的に、それぞれの食感の評価が変化していた。そして、被験者Aと被験者Bの両者において、喫食の開始から最後の最後の(食品の全部の)嚥下の終了まで経時的に、それぞれの最大筋活動比が変化していた。このとき、実施例1と同様にして、被験者Aと被験者Bの両者において、最大筋活動比の順位と食感の評価の順位がほぼ一致していた。そして、被験者Aに比べて、被験者Bでは、食感を強く感じ、食感の評価が高く、最大筋活動比が高かった。また、被験者Aに比べて、被験者Bでは、食感の評価や最大筋活動比が経時的に、緩やかに低下していた。
【0073】
さらに、被験者Aと被験者Bの両者において、最大筋活動比の推移と食感の評価の推移の相関係数が0.5以上と高い相関関係を示した。このとき、同じ食品を喫食しても、食感の評価の推移(経時変化)には、個人差があることを確認できた。同じ食品を喫食しても、咀嚼力の強い人では、食感の評価の推移(減少)が早く小さくなり(弱くなり)、咀嚼力の弱い人では、食感の推移(減少)が遅く小さくなった(弱くなった)。つまり、最大筋活動比の推移は食感の推移と高い相関関係を示したことから、最大筋活動比の推移を用いて、経時的な食感の推移を推定することは妥当であると考えられた。
【0074】
[実験例3]
本実験例では、食感推定装置100を用いて算出した食べ方の異なる多様な食品の喫食中(全体)における最大筋活動比の最大ピーク値によって、食感(噛み応えや噛み心地)を定量的に評価できることを、被験者の2名(被験者A、被験者B)で検証した。まずは、被験者Aと被験者Bが表1の試料の所定量を喫食した際に、喫食の開始から最後の(食品の全部の)嚥下の終了までの時間(処理時間)を測定した。その後に、被験者Aと被験者Bの喫食の処理時間を、前半、中盤、後半に約3分割して、それぞれの時間における咀嚼筋(咬筋)の筋活動量を算出し、そこから最大ピーク値を算出した。ここで、左右各々の咀嚼筋(咬筋)の筋活動量を用いて、各試料の最大筋活動比を実験例1と同じ式によって算出し、左右各々の最大筋活動比を平均した。さらに、実験例1と同様にして、被験者Aと被験者Bの各々が各試料の喫食の時間における食感(噛み応え)を7段階の尺度で評価して、官能評価の評価情報である食感を取得した。そして、最大筋活動比の最大ピーク値と食感(官能評価の評価情報)の相関関係を評価した。
【0075】
図11は被験者Aの最大筋活動比の最大ピーク値と食感の評価(官能評価の評価情報)の相関関係を示すグラフであり、
図12は被験者Bの最大筋活動比の最大ピーク値と食感の評価(官能評価の評価情報)の相関関係を示すグラフである。ここで、被験者Aと被験者Bの両者において、最大筋活動比の最大ピーク値と食感の相関係数が0.45以上と高い相関関係を示した。このとき、試料の喫食量に拘わらず、最大筋活動比の最大ピーク値には、食感の個人差が反映されることを確認できた。つまり、最大筋活動比の最大ピーク値は食感と高い相関関係を示したことから、最大筋活動比の最大ピーク値を用いて、食感を推定することは妥当であると考えられた。
【0076】
なお、最大筋活動比と食感の評価の相関係数に比べて、最大筋活動比の最大ピーク値と食感の評価の相関係数が高かったことから、食べ方の異なる多様な食品の喫食中(全体)における食感を評価する場合には、最大筋活動比の最大ピーク値を用いることが好ましいと考えられた。
【0077】
実験例1〜3より、最大筋活動比と食感の評価の間に所定の高い相関が見受けられることが理解される。よって、被験者が得る食感に関する官能評価の評価情報を取得し、この 評価情報を目標とした食品を設計することにより、被験者の特性に応じた適切な食品を製造することが可能となる、すなわち適切な食品製造方法を得ることが可能となる。評価情報には種々の要素が含まれ得るが、実験例に示した噛み応えや噛み心地が代表的な要素である。
図13は、目標とすべき噛み応えや噛み心地の種々の表現例を示す表であり、予め取得した最大筋活動比と食感の評価の相関を考慮して、表現例で表される噛み応えや噛み心地を有する食品を目標とした食品を設計することが可能である。
図13(a)は噛み応えの程度に関する表現例を示す表であり、
図13(b)は噛み応えの有無に関する表現例を示す表であり、
図13(c)は噛み応えの硬さに関する表現例を示す表であり、
図13(d)は噛み応えおよび噛み心地の良し悪しに関する表現例を示す表であり、
図13(e)は噛む力に関する表現例を示す表であり、
図13(f)は咀嚼の可否のレベルに関する表現例を示す表である。特定の食品に関し、例えば
図13の表に示す所定の表現で評価される食品を得たい場合、予め取得した最大筋活動比と食感の評価の相関が得られている試料に基づき、その配合や製造条件を変更して食品を設計し、製造することにより、表の表現例に適合した適切な食品を得ることができる。なお、
図13は、噛み応えまたは噛み心地に関する全ての表現を網羅しているわけではなく、あくまでこの例のように規定した食感を有する食品を目標として、食品を設計し、製造することが可能である。もちろん他の表現で表される食感を目標として、食品を設計し、製造してもよい。
【0078】
当業者は、食品の設計および製造に関して、食感に影響を与えるパラメータにつき、複数の水準を準備して、当該水準毎の食品を準備することができる。その食品について、被験者が喫食し、筋電図(筋電位情報)および筋活動比を取得することができる。さらに官能評価を行い、官能評価の評価情報を取得することができる。ここでのパラメータとしては、力学的特性(レオロジー的性質等)、幾何学的特性(形状等)、水、油脂の含量が存在する。これらのパラメータについては、当業者はその知識を用いて製造工程(切断、加熱、冷却、圧縮、エージング、混練、膨化、成型等の条件)や原料や食品添加物等の選定や量を調整することが可能である。例えば、筋活動比および官能評価の結果からより弱い食感を目指すことが目標とされたなら、パラメータに関する既知の調整量に従って、製造工程を調整して、形状を小さくしたり、薄くしたり、空隙を増したり、素材、食品添加物等の配合比を調整する、また、より強い食感を目指すことが目標とされたなら、製造工程を調整して、形状を大きくしたり、厚さを厚くしたり、空隙を減らしたり、素材、食品添加物等の配合比を調整する。このようにして、目標とする食品を設計し、製造することが可能である。
【0079】
[実験例4]
噛み応えのある食品として、プロセスチーズを作製した。具体的には、ケトル型の溶融釜に、モッツァレラチーズ; 1800g、クリームチーズ; 1200g、ポリリン酸ナトリウム;6g、食塩; 7.5g、水; 260gを投入してから、撹拌翼を回転(180rpm)させながら、90℃に昇温させて加熱溶融させた。その後に、所定の容器型に充填して成形してから、10℃以下に冷却させて、通常と異なる独自のプロセスチーズを作製した。そして、このプロセスチーズを縦; 2cm × 横; 1.5cm× 高さ; 1cmの寸法に切断して、試料を調製した。
【0080】
被験者C〜被験者Kとして、咬合力の弱い被験者を選抜して、咬合力に合わせた咀嚼の訓練用の食品(試料)の設計の可能性について検証した。具体的には、被験者C〜被験者Kとして、歯科用咬合力計(オクルーザル フォースメーター、型式: GM10、長野計器社)において、咬合力が300N以下の男性3名と女性5名を選抜した。そして、通常のプロセスチーズを喫食した際と同程度の速度で、各被験者が各試料を喫食し、その喫食の所要時間を、前半、中盤、後半に約3分割して、それぞれの時間における咬筋の筋活動量を測定した。ここで、咬筋の筋活動量として左右の平均値を用いて、各試料の最大筋活動比を実験例1と同じ式によって算出した。
【0081】
被験者C〜被験者Kの喫食の処理時間の「前半」、「中盤」、「後半」における最大筋活動比を表4に示した。ここで、被験者C〜被験者Kの「前半」における最大筋活動比は 24〜49%の範囲内であった。そして、被験者C〜被験者Kの「中盤」における最大筋活動比は20〜39%の範囲内であった。 また、被験者C〜被験者Kの「後半」における最大筋活動比は15〜37%の範囲内であった。
【0082】
ところで、実験例1の結果において、最大筋活動比が20〜30%では、やや噛み応えがあり、最大筋活動比が30〜50%では、噛み応えがあると評価されていた。このことから、独自のプロセスチーズは、噛み応えがある食品(試料)であることが確認された。
【0083】
さらに、最大筋活動比が70%超では、噛み心地が悪い(無理な負荷が掛かる)と評価されていた。このことから、独自のプロセスチーズは、噛み心地が悪くない(噛み心地が良い)食品であることが確認された。
【0084】
以上から、独自のプロセスチーズは、咬合力の弱い乳幼児や高齢者等における咀嚼の訓練用の(咀嚼を鍛える)食品として妥当であることを検証できた。
【0085】
【表4】
【0086】
本発明によれば、ヒト(被験者)の喫食中における食感や食感の推移(経時変化)の客観的かつ定量的な推定方法を提供することができる。具体的には、個人や特定の集団の咀嚼能力(咬合力(噛む力)等)や処理時間等を考慮した、被験者毎の噛み応えや噛み心地等の推定方法が提供される。この場合、食感や食感の推移の推定結果は、食品を設計する際に有用な情報として活用可能である。
【0087】
本発明によれば、この推定方法を利用して設計した食品の製造方法や、この製造方法を利用して得られた食品を用いる咀嚼の訓練方法(強化方法)を提供することもできる。具体的には、個人や特定の集団として、咀嚼能力が弱い乳幼児等に、本発明に基づく噛み応えのある食品や噛み応えの良い食品を喫食させれば、乳幼児等の咬合力を増強して、歯や顎骨の形成を順調に発達させることを期待できる。また、個人や特定の集団として、咀嚼能力が弱りかけている高齢者等に、本発明に基づく噛み応えの良い食品や噛み応えのある食品を喫食させれば、高齢者等の咬合力を維持や改善して、消化機能の低下や舌機能の減退等を抑制や予防し、要介護の状態を引き起こさずに済ますことを期待できる。つまり、個人や特定の集団に、噛み応えのある食品や噛み応えの良い食品を単独や組合せて喫食させることで、咀嚼機能を無理なく増強や維持や改善することに貢献できることとなる。
【0088】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態において示された事項に限定されず、特許請求の範囲及び明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者がその変更又は応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。