(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記液体流路は、二以上の液体流路からなり、前記二以上の液体流路を流れる液体は各流路毎に異なる温度に調整され、前記少なくとも1つのバッフルは、前記二以上の液体流路を分離するように配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の研磨装置。
前記パッド温度調整機構は、前記パッド接触部材を昇降させる昇降機構と、前記パッド接触部材を前記研磨パッドの上方にある所定の上昇位置と前記研磨テーブルの半径方向外側にある所定の退避位置との間で移動させる移動機構とをさらに備えたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の研磨装置。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスの高集積化・高密度化に伴い、回路の配線がますます微細化し、多層配線の層数も増加している。回路の微細化を図りながら多層配線を実現しようとすると、下側の層の表面凹凸を踏襲しながら段差がより大きくなるので、配線層数が増加するに従って、薄膜形成における段差形状に対する膜被覆性(ステップカバレッジ)が悪くなる。したがって、多層配線にするためには、このステップカバレッジを改善し、然るべき過程で平坦化処理しなければならない。また光リソグラフィの微細化とともに焦点深度が浅くなるため、半導体デバイスの表面の凹凸段差が焦点深度以下に収まるように半導体デバイス表面を平坦化処理する必要がある。
【0003】
従って、半導体デバイスの製造工程においては、半導体デバイス表面の平坦化技術がますます重要になっている。この平坦化技術のうち、最も重要な技術は、化学的機械研磨(CMP(Chemical Mechanical Polishing))である。この化学的機械的研磨は、研磨装置を用いて、シリカ(SiO
2)やセリア(CeO
2)等の砥粒を含んだ研磨液(スラリー)を研磨パッドに供給しつつ半導体ウエハなどの基板を研磨パッドに摺接させて研磨を行うものである。
【0004】
CMP(Chemical Mechanical Polishing)装置は、半導体デバイスの製造において、基板の表面を研磨する工程に使用される。CMP装置は、基板をトップリングで保持して基板を回転させ、さらに回転する研磨テーブル上の研磨パッドに基板を押し付けて基板の表面を研磨する。研磨中、研磨パッドには研磨液(スラリー)が供給され、基板の表面は、研磨液の化学的作用と研磨液に含まれる砥粒の機械的作用により平坦化される。
【0005】
基板の研磨レートは、基板の研磨パッドに対する研磨荷重のみならず、研磨パッドの表面温度にも依存する。これは、基板に対する研磨液の化学的作用が温度に依存するからである。したがって、半導体デバイスの製造においては、基板の研磨レートを上げて更に一定に保つために、基板研磨中の研磨パッドの表面温度を最適な値に保つことが重要とされる。
【0006】
そのため、本件出願人は、先に、特開2012−176449号公報(特許文献1)において、研磨パッドの表面に接触するパッド接触部材に温度調整された液体を供給して研磨パッドの表面温度を調整するパッド温度調整機構を備えた研磨装置を提案した。
特許文献1において提案されたパッド接触部材は、内部に液体流路を有した板状体からなり、板状体の内部の液体流路には複数のバッフルが配置されており、複数のバッフルによりジグザグ流路を形成している。パッド接触部材は、液体流路内を流れる温度調整された液体から研磨パッドの表面にできるだけ無駄なく熱を伝えるために、熱伝導率の高い材料、例えば、SiC(炭化ケイ素)で形成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、特許文献1に記載されるような液体流路にバッフルを備えたパッド接触部材を用いて研磨パッドの表面温度を調整する工程を繰り返し行う過程で以下のような知見を得たものである。
図17は、液体流路にバッフルを備えたパッド接触部材11を用いて研磨パッド3の表面温度を調整しているときの熱の流れの状態を示す模式図である。パッド接触部材11と研磨パッド3との間には液膜(スラリーなど)が介在している。
図17に示すように、パッド接触部材11は、研磨パッド3の表面に接触する接触面を有する板部材15と、内部に液体の流路が形成された流路形成部材16とを備えている。パッド接触部材11の内部には液体流路21が形成されており、液体流路21内にはバッフル25が配置されている。液体流路21を流れる液体が保有している熱は、太い矢印で示すように液体流路21の周囲の4方向に流れ、液体流路21から下方に流れた熱は、太い矢印Hで示すように板部材15の下面から研磨パッド3に伝達されて研磨パッド3の温度調整に寄与する。一方、液体流路21から左右に流れた熱は、流路形成部材16の側壁およびバッフル25に流れ、液体流路21から上方に流れた熱は、流路形成部材16の上部壁に流れる。そして、流路形成部材16の側壁、上部壁およびバッフル25に流れた熱は、それぞれ側壁、上部壁およびバッフル25内を流れ、一部の熱は細い矢印hで示すように板部材15の下面から研磨パッド3に伝達され、また一部の熱はバッフル25を通して隣の流路内の液体に移動し、さらに一部の熱は太い矢印Hで示すように流路形成部材16の外壁面から大気に放出される。
【0009】
図17に示す熱の流れから分かるように、液体流路21からバッフル25に流れた熱は、その一部は研磨パッド3の温度調整に利用されるが、残部はバッフル25を介して隣の流路内の液体に移動してしまうか、パッド接触部材11の外壁面から大気に放出されてしまい、研磨パッド3の温度調整に利用されることはない。
また、パッド接触部材11には、内部に高温液体が流れる高温液体流路と低温液体が流れる低温液体流路の二流路をバッフル(又は仕切り)によって完全に分離しているパッド接触部材もあるが、このパッド接触部材の場合には高温液体流路を流れる高温液体の熱がバッフルを介して低温液体流路を流れる低温液体に流れてしまい、高温液体の熱が低温液体に奪われてしまうという問題点がある。
【0010】
図18は、内部に高温液体が流れる高温液体流路と低温液体が流れる低温液体流路の二流路をバッフル(又は仕切り)によって完全に分離したパッド接触部材11を用いて研磨パッド3の表面温度を調整しているときの熱の流れの状態を示す模式図である。パッド接触部材11と研磨パッド3との間には液膜(スラリーなど)が介在している。
図18に示すように、パッド接触部材11の内部には、高温液体が流れる高温液体流路21Aと低温液体が流れる低温液体流路21Bの二流路が配置されている。高温液体流路21Aと低温液体流路21Bとは、バッフル(又は仕切り)25により完全に分離されている。また、高温液体流路21Aと低温液体流路21Bには、それぞれバッフル(図示せず)が配置され、ジグザグ流路になっている。
図18に示すように、高温液体流路21Aを流れる高温液体が保有している熱が、矢印で示すように低温液体流路21Bを流れる低温液体に流れてしまう。すなわち、高温液体流路21Aを流れる高温液体の熱が低温液体流路21Bを流れる低温液体に奪われてしまい、熱を無駄にするという問題点がある。
【0011】
本発明者らは、
図17に示すパッド接触部材11においては、液体流路21からバッフル25に流れる熱のうち、相当な量の熱が研磨パッド3の温度調整には利用されずに、隣の流路内の液体に移動してしまうか、大気に放出されてしまい、熱を無駄にすることを見出したものである。また、本発明者らは、
図18に示すように内部に2本以上の流路があるパッド接触部材11の場合には、高温液体流路21Aを流れる高温液体の熱がバッフル25を介して低温液体流路21Bを流れる低温液体に流れてしまい、高温液体の熱が低温液体に奪われてしまい、熱を無駄にすることを見出したものである。
【0012】
本発明は、上述の事情に鑑みなされたもので、内部の液体流路にバッフル(又は仕切り)を設けたパッド接触部材により研磨パッドの表面温度を調整する研磨装置において、パッド接触部材の液体流路を流れる液体が保有する熱を無駄にすることなく研磨パッドに効率的に伝達して研磨パッドの表面温度を調整することにより、研磨レートを向上させることができる研磨装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の目的を達成するため、本発明の研磨装置の一態様は、基板を研磨パッドに摺接させて基板を研磨する研磨装置において、前記研磨パッドを支持する研磨テーブルと、前記研磨テーブル上の前記研磨パッドに基板を押し付けるトップリングと、前記研磨パッドの表面温度を調整するパッド温度調整機構とを備え、前記パッド温度調整機構は、前記研磨パッドの表面に接触するパッド接触部材と、温度調整された液体を前記パッド接触部材に供給する液体供給システムとを有し、前記パッド接触部材は、その内部に液体流路を有しており、前記液体流路は、前記液体供給システムに接続された液体流入口および液体流出口に連通しており、前記液体流路には、少なくとも1つの板状のバッフルを配置し、前記少なくとも1つのバッフルは、交互に位置をずらして配置された複数のバッフルであり、前記複数のバッフルにより、前記液体流路はジグザグ流路を構成し、前記複数のバッフルは、各々、その内部に空間を有することにより、前記液体流入口から前記液体流出口にかけて前記液体流路と前記空間とが交互に配置され
、前記空間は、密閉空間であることを特徴とする。
本発明によれば、液体流路内に少なくとも1つの板状のバッフルを配置したパッド接触部材において、バッフルを挟んで隣接する流路間の熱の移動が防止され、無駄な熱の移動を防ぐことができる。
【0014】
本発明の
実施形態によれば、基板を研磨パッドに摺接させて基板を研磨する研磨装置において、前記研磨パッドを支持する研磨テーブルと、前記研磨テーブル上の前記研磨パッドに基板を押し付けるトップリングと、前記研磨パッドの表面温度を調整するパッド温度調整機構とを備え、前記パッド温度調整機構は、前記研磨パッドの表面に接触するパッド接触部材と、温度調整された液体を前記パッド接触部材に供給する液体供給システムとを有し、前記パッド接触部材は、その内部に液体流路を有しており、前記液体流路は、前記液体供給システムに接続された液体流入口および液体流出口に連通しており、前記液体流路には、少なくとも1つの板状のバッフルを配置し、前記バッフルは、その内部に空間を有し、前記空間は、前記パッド接触部材の周囲雰囲気に連通してい
る。
上記実施形態によれば、研磨装置のハウジング内は空気で満たされているため、バッフル内の空間は空気で満たされている。バッフルの空間内の空気は断熱層となり、バッフルを挟んで隣接する流路間の熱の移動が防止され、無駄な熱の移動を防ぐことができる。
【0015】
本発明の好ましい態様によれば、前記密閉空間は、真空であることを特徴とする。
本発明によれば、バッフルの密閉空間内の真空は断熱層となり、バッフルを挟んで隣接する流路間の熱の移動が防止され、無駄な熱の移動を防ぐことができる。
【0016】
本発明の好ましい態様によれば、前記密閉空間は、気体が封入されていることを特徴とする。
本発明によれば、バッフルの密閉空間内の気体は断熱層となり、バッフルを挟んで隣接する流路間の熱の移動が防止され、無駄な熱の移動を防ぐことができる。バッフルの密閉空間内の気体の一例として空気があげられる。
【0017】
本発明の
実施形態によれば、前記少なくとも1つのバッフルは、互いに平行に配置された複数のバッフルであ
る。
【0018】
本発明の好ましい態様によれば、前記液体流路は、二以上の液体流路からなり、前記二以上の液体流路を流れる液体は各流路毎に異なる温度に調整され、前記少なくとも1つのバッフルは、前記二以上の液体流路を分離するように配置されていることを特徴とする。
本発明によれば、高温液体流路と低温液体流路とを含む二以上の流路を備え、高温液体流路と低温液体流路とをバッフル(又は仕切り)で完全に分離したパッド接触部材において、高温液体から低温液体への熱の移動が防止され、無駄な熱の移動を防ぐことができる。
【0019】
本発明の好ましい態様によれば、前記パッド接触部材は、その外面からの放射による放熱を防ぐ部材を備えていることを特徴とする。
本発明において、放射による放熱を防ぐ部材は、放射率が低いアルミニウムなどの金属箔が好ましい。
【0020】
本発明の好ましい態様によれば、前記パッド温度調整機構は、前記パッド接触部材を昇降させる昇降機構と、前記パッド接触部材を前記研磨パッドの上方にある所定の上昇位置と前記研磨テーブルの半径方向外側にある所定の退避位置との間で移動させる移動機構とをさらに備えたことを特徴とする。
本発明の研磨装置の他の態様は、基板を研磨パッドに摺接させて基板を研磨する研磨装置において、前記研磨パッドを支持する研磨テーブルと、前記研磨テーブル上の前記研磨パッドに基板を押し付けるトップリングと、前記研磨パッドの表面温度を調整するパッド温度調整機構とを備え、前記パッド温度調整機構は、前記研磨パッドの表面と熱交換可能な熱交換部材と、温度調整された液体を前記熱交換部材に供給する液体供給システムとを有し、前記熱交換部材は、その内部に液体流路を有しており、前記液体流路は、前記液体供給システムに接続された液体流入口および液体流出口に連通しており、前記液体流路には、少なくとも1つの板状のバッフルを配置し、前記少なくとも1つのバッフルは、交互に位置をずらして配置された複数のバッフルであり、前記複数のバッフルにより、前記液体流路はジグザグ流路を構成し、前記複数のバッフルは、各々、その内部に空間を有することにより、前記液体流入口から前記液体流出口にかけて前記液体流路と前記空間とが交互に配置され
、前記空間は、密閉空間であることを特徴とする。
本発明の
実施形態によれば、基板を研磨パッドに摺接させて基板を研磨する研磨装置において、前記研磨パッドを支持する研磨テーブルと、前記研磨テーブル上の前記研磨パッドに基板を押し付けるトップリングと、前記研磨パッドの表面温度を調整するパッド温度調整機構とを備え、前記パッド温度調整機構は、前記研磨パッドの表面と熱交換可能な熱交換部材と、温度調整された液体を前記熱交換部材に供給する液体供給システムとを有し、前記熱交換部材は、その内部に液体流路を有しており、前記液体流路は、前記液体供給システムに接続された液体流入口および液体流出口に連通しており、前記液体流路には、少なくとも1つの板状のバッフルを配置し、前記バッフルは、その内部に空間を有し、前記空間は、前記熱交換部材の周囲雰囲気に連通してい
る。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、以下に列挙する効果を奏する。
1)液体流路内に少なくとも1つの板状のバッフルを配置したパッド接触部材において、バッフルを挟んで隣接する流路間の熱の移動が防止され、無駄な熱の移動を防ぐことができる。したがって、パッド接触部材の液体流路を流れる液体が保有する熱を無駄にすることなく研磨パッドに伝達して研磨パッドの表面温度を調整することができる。
2)高温液体流路と低温液体流路とを含む二以上の流路を備え、高温液体流路と低温液体流路とをバッフル(又は仕切り)で完全に分離したパッド接触部材において、高温液体から低温液体への熱の移動が防止され、無駄な熱の移動を防ぐことができる。したがって、パッド接触部材の液体流路を流れる液体が保有する熱を無駄にすることなく研磨パッドに伝達して研磨パッドの表面温度を調整することができる。
3)パッド接触部材の液体流路を流れる液体が保有する熱を研磨パッドに効率的に伝達することができ、研磨パッドの表面温度を研磨に最適な温度に調整することができる。したがって、研磨レートを向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る研磨装置の実施形態を
図1乃至
図16を参照して説明する。
図1乃至
図16において、同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
図1は、本発明の一実施形態に係る研磨装置を示す模式図である。
図1に示すように、研磨装置は、半導体ウエハなどの基板を保持して回転させるトップリング1と、研磨パッド3を支持する研磨テーブル2と、研磨パッド3の表面に研磨液(例えばスラリー)を供給する研磨液供給機構4と、研磨パッド3の表面温度を調整するパッド温度調整機構5とを備えている。
【0024】
トップリング1は、研磨ヘッド支持アーム7に支持されている。この研磨ヘッド支持アーム7には、エアシリンダーおよびモータ(図示せず)が配置されており、これらエアシリンダーおよびモータによってトップリング1は鉛直方向に移動し、かつその軸心周りに回転可能となっている。基板は、トップリング1の下面に真空吸着などによって保持される。研磨テーブル2にはモータ(図示せず)が連結されており、矢印で示す方向に回転可能となっている。
【0025】
研磨される基板は、トップリング1によって保持され、さらにトップリング1によって回転される。一方、研磨パッド3は、研磨テーブル2とともにその軸芯周りに回転される。この状態で、研磨パッド3の表面には研磨液供給機構4から研磨液が供給され、さらに基板の表面は、トップリング1によって研磨パッド3の表面(すなわち基板研磨面)に対して押し付けられる。基板の表面は、研磨液の存在下での研磨パッド3と基板との摺接により研磨される。
【0026】
パッド温度調整機構5は、研磨パッド3の表面に接触するパッド接触部材11と、このパッド接触部材11に温度調整された液体を供給する液体供給システム30とを備えている。パッド接触部材11は、該パッド接触部材11を昇降させる昇降機構としてのエアシリンダー12にアーム14を介して連結されている。さらに、パッド接触部材11は、移動機構としてのモータ13に連結されており、このモータ13によりパッド接触部材11は、研磨パッド3の上方の所定の上昇位置と、研磨テーブル2の径方向外側の所定の退避位置との間で移動される。
【0027】
図2は、パッド接触部材11に液体を供給するための液体供給システム30を示す模式図である。この液体供給システム30は、液体供給タンク31と、液体供給タンク31とパッド接触部材11とを連結する供給ライン32および戻りライン33とを備えている。熱媒体としての液体は、液体供給タンク31から供給ライン32を通じてパッド接触部材11に供給され、パッド接触部材11から戻りライン33を通じて液体供給タンク31に戻される。このように、液体は、液体供給タンク31とパッド接触部材11との間を循環する。液体供給タンク31は、液体を加熱するヒータ(図示せず)を有しており、液体はヒーターにより所定の温度に加熱される。すなわち、液体供給タンク31は温調機として機能する。
【0028】
液体供給システム30は、供給ライン32を流れる液体の圧力を一定にするレギュレータ35と、レギュレータ35を通過した液体の圧力を測定する圧力計36と、レギュレータ35を通過した液体の流量を測定する流量計37と、パッド接触部材11に供給される液体の流量を調整する流量制御バルブ38と、研磨パッド3の表面温度を測定するパッド表面温度計としての放射温度計39と、放射温度計39により測定されたパッド表面温度に基づいて流量制御バルブ38を制御する温度コントローラ40とを備えている。供給ライン32と戻りライン33とは連通ライン42を介して連通しているが、通常、連通ライン42はハンドバルブ43により閉じられている。
【0029】
放射温度計39は、非接触で研磨パッド3の表面温度を測定し、その測定値を温度コントローラ40に送る。温度コントローラ40は、研磨パッド3の表面温度が予め設定された目標温度になるように、研磨パッド3の表面温度の測定値に基づいて、流量制御バルブ38を制御する。流量制御バルブ38は、温度コントローラ40からの制御信号に基づいて動作し、パッド接触部材11に供給される液体の流量を制御する。研磨パッド3の表面温度は、パッド接触部材11を流れる液体と研磨パッド3との間での熱交換により調整される。
【0030】
このようなフィードバック制御により、研磨パッド3の表面温度は、所定の目標温度に維持される。温度コントローラ40としては、PIDコントローラを使用することができる。研磨パッド3の目標温度は、基板の種類または研磨プロセスに応じて決定され、決定された目標温度は、温度コントローラ40に予め入力される。
【0031】
上述したように、研磨パッド3の表面温度は、パッド接触部材11に供給される液体の流量を調整することにより制御される。パッド接触部材11に供給される液体(熱媒体)としては、水が使用される。水の温度は、液体供給タンク31のヒーターにより、例えば約80℃に加熱されて温水とされる。より速やかに研磨パッド3の表面温度を上昇させる場合には、シリコーンオイルを熱媒体として使用してもよい。シリコーンオイルを使用する場合には、シリコーンオイルは液体供給タンク31のヒーターにより100℃以上(例えば、約120℃)に加熱される。
【0032】
図3は、
図1および
図2に示すパッド接触部材11の一実施形態を示す斜視図である。
図3に示すように、三角形の平面形状を有したパッド接触部材11は、研磨パッド3の表面に接触する接触面を有する板部材15と、内部に液体の流路が形成された流路形成部材16とを備えている。板部材15は、流路形成部材16の下部に固定されている。流路形成部材16の上面には、液体流入口23と液体流出口24とが形成されている。
【0033】
図4は、
図3に示す流路形成部材16を下から見た図である。
図5は、
図3のV−V線断面図である。
図4および
図5に示すように、流路形成部材16は、三角形の平面形状を有した平板16aと、三角形状の平板16aの外縁から垂直方向に延びる三つの側壁16bとを備え、全体として容器状をなしている。流路形成部材16の内部には、液体流路21が形成されている。液体流路21の始端部は、液体流入口23に連通しており、液体流路21の末端部は、液体流出口24に連通している。
【0034】
液体供給システム30の液体供給タンク31からの液体は、液体流入口23を介して液体流路21に供給される。液体は、液体流路21を流れ、液体と研磨パッド3との間で熱交換が行われる。液体は、液体流路21を流れた後に液体流出口24から排出され、液体供給システム30の液体供給タンク31に戻される。
【0035】
液体流路21内には、複数の(
図4に示す例では5個の)バッフル(リブ)25が配置されている。これらバッフル25は、三角形の平面形状の底辺から斜辺側に延びるバッフルと、斜辺から底辺側に延びるバッフルとからなり、互いに平行に配列されている。バッフル25は、交互にずらして配置されており、これにより液体流路21はジグザグ流路を構成している。バッフル25は研磨テーブル2の半径方向に延びており、液体流路21内の液体は、研磨テーブル2の中心方向と、研磨テーブル2の外周方向に交互に進行する。
【0036】
図6は、バッフル25の詳細を示す図であり、
図4のVI―VI線断面図である。
図6に示すように、バッフル25は、平板16aから垂直方向に延びる二枚のプレート25a,25aからなり、二枚のプレート25a,25aは互いに平行に配置されている。
図4に示すように、各バッフル25における2枚のプレート25a,25aの一端部は、側壁16bに接続されており、この接続部では2枚のプレート25a,25a間に開口(又は隙間)25cが形成されている。また、2枚のプレート25a,25aの他端部は、互いに接続されて閉塞部25eを形成している。したがって、各バッフル25における二枚のプレート25a,25a間には、パッド接触部材11の周囲雰囲気に連通している空間Sが形成されている。
【0037】
板部材15は、CVD(Chemical Vapor Deposition)によりSiC(炭化ケイ素)を板状に堆積させることによって形成されている。このようなCVD技術を使用することにより、薄い板部材15を形成することができる。例えば、
図3および
図5に示す板部材15の厚さは、0.7〜1.0mmである。また、CVDにより形成されたSiCは、焼結SiCよりも熱伝導率に優れている。したがって、CVDにより形成された薄いSiC板部材15を使用することにより、液体と研磨パッド3との熱交換効率を向上させることができる。なお、製造コストなどの観点から、焼結SiCにより板部材15を形成してもよい。この場合も、板部材15はできるだけ薄くすることが好ましい。例えば、焼結SiCから形成された板部材15の厚さは約1.0mmとされる。
【0038】
流路形成部材16は、セラミックから形成されている。流路形成部材16は、下端開口部を有した容器の形状を有しており、その下端開口部は板部材15により閉じられている。流路形成部材16の側壁16bと板部材15とは、接着剤によって互いに接合されている。接着剤としては、フリットガラスを使用することができる。フリットガラスは、ガラス接合技術に基づいた接着剤であり、セラミックとSiCとを接合することが可能である。フリットガラスの線膨張係数は、セラミックおよびSiCの線膨張係数とほぼ同じであり、フリットガラスを用いることにより熱応力を抑制することができる。
【0039】
パッド接触部材11を流れる液体の熱により、流路形成部材16および板部材15はある程度変形する。このような熱膨張の影響をできるだけ少なくするために、流路形成部材16を形成するセラミックは、板部材15を形成するSiCと実質的に同じ線膨張係数を有することが好ましい。
【0040】
板部材15は、流路形成部材16の側壁16bのみならず、複数のバッフル25にも接合されている。すなわち、板部材15と、流路形成部材16における各側壁16bの下端および各バッフル15の下端とが接着剤により接合されている。したがって、薄い板部材15の機械的強度が補強され、液体の圧力による板部材15の変形が防止される。このように、複数のバッフル25により板部材15が支持されるので、より薄い板部材15を使用することができ、結果として熱交換効率を上げることができる。
【0041】
流路形成部材16には、上述した液体流入口23および液体流出口24が形成されている。液体流入口23および液体流出口24は、いずれも研磨パッド3の外周側部位の上方に位置している。液体流入口23は、研磨テーブル2(研磨パッド3)の回転方向に関して、液体流出口24よりも下流側に位置している。これは、液体を研磨パッド3の回転方向と反対の方向に流すことで、液体と研磨パッド3との熱交換の効率を上げるためである。液体流路21は複数のバッフル15によりジグザグ流路を形成しているが、全体としては研磨パッド3の半径方向に延びている。したがって、液体は、液体流路21を蛇行しながら、研磨パッド3の半径方向に進行する。
【0042】
基板の研磨中、研磨パッド3はその中心周りに回転するため、研磨パッド3の外周側部位の温度は、研磨パッド3の中心側部位の温度よりも低くなる。このため、研磨中の研磨パッド3の表面には、その半径方向に沿って温度勾配が存在する。この温度勾配は、基板の研磨に悪影響を与えることがあるため、研磨パッド3の温度勾配をなくすことが好ましい。そこで、研磨パッド3の温度勾配を解消するために、パッド接触部材11の幅は、研磨テーブル2(研磨パッド3)の中心に向かって徐々に小さくなっている。
【0043】
図7および
図8は、パッド接触部材の他の実施形態を示す図である。
図7は流路形成部材16を下から見た図であり、
図4に対応する図である。
図8は
図7のVIII-VIII線断面図であり、
図6に対応した図である。
図7に示すように、流路形成部材16は、三角形の平面形状を有した平板16aと、三角形状の平板16aの外縁から垂直方向に延びる三つの側壁16bとを備え、全体として容器状をなしている。
図7に示す例においては、側壁16bには開口(又は隙間)は形成されていない。流路形成部材16の内部には、液体流路21が形成されており、液体流路21の始端部は、液体流入口23に連通しており、液体流路21の末端部は、液体流出口24に連通している。
【0044】
図8に示すように、バッフル25は、平板16aから垂直方向に延びる二枚のプレート25a,25aからなり、二枚のプレート25a,25aは互いに平行に配置されている。
図7に示すように、各バッフル25における2枚のプレート25a,25aの一端部は、側壁16bに接続されている。また、2枚のプレート25a,25aの他端部は、互いに接続されて閉塞部25eを形成している。したがって、各バッフル25における二枚のプレート25a,25a、閉塞部25eおよび側壁16bの一部によって、バッフル25内には空間Sが形成されている。
【0045】
図7および
図8に示す流路形成部材16の下端開口部を閉塞する板部材は、
図3および
図5に示す板部材15と同様の構成である。したがって、
図7および
図8に示す流路形成部材16の下端開口部を板部材15で閉塞することにより形成されたパッド接触部材11は、各バッフル25内に密閉された空間Sを有することになる。その他の構成は、
図3乃至
図6に示すパッド接触部材11と同様である。
【0046】
図9(a),(b)は、比較例のパッド接触部材と本発明のパッド接触部材とを対比して示す図であり、
図9(a)は比較例のパッド接触部材を示す模式図、
図9(b)は
図3乃至
図6に示す本発明のパッド接触部材を示す模式図である。
図9(a)に示す比較例のパッド接触部材11は、流路形成部材16をSUSや樹脂など比較的熱伝導率の悪い材料で製作し、板部材15をSiCなど比較的熱伝導率の良い材料で製作し、板部材15と流路形成部材16とを接合して構成している。液体流路21内には複数のバッフル25が配置されている。
図9(a)に示すパッド接触部材11では、板部材15と流路形成部材16の線膨張係数の違いにより、パッド接触部材11に反りが発生し、研磨パッドから浮き上がる部分が発生し、伝熱効率が悪くなるという問題点がある。また、バッフル25を通しての研磨パッド側への伝熱が接合部の熱抵抗により妨げられるなどの問題点がある。
【0047】
図9(b)に示す本発明のパッド接触部材11は、液体流路21内に設置されたバッフル25により相隣接する流路間を端部を除いて仕切ることにより、ジグザグ流路を形成している。バッフル25を構成する2枚のプレート25a,25a間には、空間Sが形成されている。空間Sはパッド接触部材11の周囲雰囲気に連通している。
図1に示す研磨装置のハウジング内は空気で満たされているため、空間Sは空気で満たされている。バッフル25の空間S内の空気は断熱層となり、バッフル25を挟んで隣接する流路間の熱の移動が防止され、無駄な熱の移動を防ぐことができる。また、板部材15と流路形成部材16は実質的に同一の線膨張係数であるため、パッド接触部材11に反りが発生することはない。したがって、比較例のパッド接触部材11のような伝熱効率の悪化や接合部の熱抵抗等の問題点はない。
【0048】
図10は、
図7および
図8に示す本発明のパッド接触部材11を示す模式図である。
図10に示す本発明のパッド接触部材11は、液体流路21内に設置されたバッフル25により相隣接する流路間を端部を除いて仕切ることにより、ジグザグ流路を形成している。バッフル25を構成する2枚のプレート25a,25a間には、密閉空間Sが形成されている。密閉空間Sは真空になっている。密閉空間S内の真空は断熱層となり、バッフル25を挟んで隣接する流路間の熱の移動が防止され、無駄な熱の移動を防ぐことができる。密閉空間Sの上下面は極力薄くして部材内の熱伝導を抑えることが好ましい。なお、密閉空間Sに気体を封入することにより断熱層を形成してもよい。
【0049】
図11は、
図9(b)に示す本発明のパッド接触部材11に放射率の低い材料を貼り付けて放射による放熱を防ぐように構成した実施形態を示す模式図である。
図11に示すように、本実施形態においては、流路形成部材16の外面の全面にアルミニウムなどの金属箔17を貼り付けることにより、流路形成部材16の外面からの放射による放熱を防ぐようにしている。アルミニウムなどの金属は、放射率が0.1〜0.04程度と低く、放射による放熱を防ぐ材料として好適である。ただし、金属による伝熱を抑えるために、金属箔(厚さ数μm)にして流路形成部材16の外面からの放射による放熱を防ぐようにしている。
【0050】
図12は、
図10に示す本発明のパッド接触部材11に放射率の低い材料を貼り付けて放射による放熱を防ぐように構成した実施形態を示す模式図である。
図12に示すように、本実施形態においては、流路形成部材16の外面の全面にアルミニウムなどの金属箔17を貼り付けることにより、流路形成部材16の外面からの放射による放熱を防ぐようにしている。
【0051】
次に、本発明のパッド接触部材11の構成を伝熱理論に基づいて説明する。
図13は、所定の厚さを有した平板を熱が移動する場合を示す模式図である。
伝熱面積A、厚さb、熱伝導率λの平板で、左面が高温Th、右面が低温Tcに保たれている場合、平板を高温面から低温面へ定常的に移動する熱量Qは、(1)式で与えられる。
【数1】
図13に示す平板を本発明のパッド接触部材11におけるバッフル25と仮定すれば、(1)式から、バッフル25の厚さbを厚くすれば、高温面から低温面へ移動する熱量Qを小さくすることができることが分かる。
【0052】
しかしながら、パッド接触部材11のサイズ(大きさ)は、変更することなく同一と仮定すれば、バッフル25の厚さbを厚くすることは、液体流路21の断面積が減少することを意味し、液体流路21内の液体から研磨パッド3に伝わる熱量が減少することになる。したがって、バッフル25を介して移動する熱量Qを小さくするために、バッフル25の厚さbを厚くする対策は、(1)式から好ましくないことが分かる。
【0053】
図14は、所定の厚さを有した平板を介して高温液体が低温液体と熱交換している場合を示す模式図である。
伝熱面積A、厚さxb、熱伝導率λの平板を介して、温度T1の高温液体が温度T4の低温液体と熱交換している場合、高温液体から低温液体へ定常的に移動する熱量Qは、(2)式で与えられる。ここで、T1:高温液体の温度、T2:平板の表面温度(高温液体側)、T3:平板の表面温度(低温液体側)、T4:低温液体の温度であり、T1>T2>T3>T4とする。また、ha:高温液体と平板間の熱伝達率、λb:平板の熱伝導率、hc:低温液体と平板間の熱伝達率である。
【数2】
【0054】
図14に示す平板を本発明のパッド接触部材11におけるバッフル25と仮定すれば、(2)式から、高温液体と接触するバッフル25の面積Aを小さくすれば、高温液体から低温液体に移動する熱量Qを小さくすることができることが分かる。
【0055】
しかしながら、パッド接触部材11のサイズ(大きさ)は、変更することなく同一と仮定すれば、高温液体と接触するバッフル25の面積Aを小さくすることは、液体流路21を囲っている面積が減少することになり、バッフル25から研磨パッド3に伝わる熱量が減少することになる。したがって、高温液体から低温液体にバッフル25を介して移動する熱量Qを小さくするために、バッフル25の面積Aを小さくする対策は、(2)式から好ましくないことが分かる。
【0056】
以上のように、(1)式および(2)式から、バッフル25の厚さbを厚くすることなく、かつ液体と接触するバッフル25の面積Aを小さくすることなく、高温液体側から低温液体側にバッフル25を移動する熱量Qを小さくするために、本発明のパッド接触部材11においては、バッフル25に断熱層を形成する空間Sを形成したものである。空間Sは、気体が満たされているか、又は真空になっており、熱伝導を抑える断熱層になっている。空間Sに満たされる気体の一例として空気があげられる。
【0057】
図15は、平板と平板の間に薄い気体の層を設けた場合の断熱効果を示す模式図である。以下、気体の層として空気層をあげ説明する。
平板と平板の間に薄い空気層を設ける場合、厚みの薄い空気層のため空気自体の対流や流れがほぼ無いものとすると、
図14において空気層の部分の温度は一定であると考えられる。すなわち、空気層の熱伝達を無視することができるため空気層を平板の一部とみなすことができる。空気の熱伝導率は、一般的に0.02W/mk程度であり、ステンレス(約20W/mk)やSiC(約200W/mk)に比べてとても小さい。すなわち、空気は熱を伝えにくいといえる。
このような薄い空気層をバッフル内部の空間に設けることにより、高温液体から低温液体に移動する熱量Qを小さくすることができる、すなわち断熱効果を得ることができる。
バッフル内部の密閉空間を真空にする場合には、放射による伝熱はあるが壁面の温度差が小さければ無視できるため、さらに断熱効果が期待できる。
【0058】
以下、流体の熱伝達率について述べる。流体の熱伝達率は、一般的に以下の(3)式で求められる。
h=k×Nu/L ・・・ (3)
ここで、h:流体の熱伝達率、k:流体の熱伝導率、Nu:ヌセルト数、L:代表長さである。
上記の(3)式から明らかなように、流体の熱伝達率hはヌセルト数Nuに比例し、ヌセルト数Nuは、一般的に以下の(4)式で表されるように、レイノルズ数の関数である。
Nu=f(Re、Pr、・・・) ・・・(4)
ここで、Nu:ヌセルト数、Pr:プラントル数、Re:レイノルズ数である。
また、レイノルズ数Reは、以下の(5)式で表されるように流体の流速に比例する。
Re=v×L/ν ・・・(5)
ここで、Re:レイノルズ数、L:代表長さ、v:流体の相対速度、ν:流体の動粘性係数である。
すなわち、流体の熱伝達率hは、その流体の流速の関数であると言える。
したがって、流体が止まっていれば、熱伝達率はほぼゼロとなる。特に密閉空間内の流体についてみると、流体の流れは重力による自然対流による流れのみであり、その速度は小さいため熱伝達率はほぼゼロと考えることができる。
このような流体の熱伝達率の特性を利用してバッフル内部の空間に気体層(空気層)を設けることにより、バッフルの断熱効果を得ることができる。
【0059】
図16(a),(b)は、本発明のパッド接触部材11の他の実施形態を示す模式図である。なお、
図16(a),(b)は、パッド接触部材11を上から見た図であるが、液体流路内のバッフルを実線で図示するとともに液体流路内の液体の流れを矢印で図示している。
図16(a)に示すパッド接触部材11においては、流路形成部材16の内部の液体流路21に、三角形の底辺の中央から頂点に向かって延びる中央のバッフル25Aが配置されており、さらに三角形の斜辺と中央のバッフル25Aとの間で互いに平行でかつ交互にずらして複数のバッフル25Bが配置されている。複数のバッフル25Bは、中央のバッフル25Aを挟んで左右に対称的に配列されており、中央のバッフル25Aの端部側で互いに連通した2本のジグザグ流路を形成している。
図16(a)に示すパッド接触部材11においては、矢印で示すように、液体流入口23から流入した液体が2本のジグザグ流路を通って液体流出口24から流出するようになっている。
図16(a)に示すバッフル25A,25Bの内部には、
図3乃至
図9に示した空間Sと同様の空間(図示せず)が形成されている。
【0060】
図16(b)に示すパッド接触部材11においては、円板形状の流路形成部材16の内部には、高温液体が流れる高温液体流路21Aと低温液体が流れる低温液体流路21Bの二流路が配置されている。高温液体流路21Aと低温液体流路21Bとは、中央のバッフル(又は仕切り)25Cにより完全に分離されている。また、高温液体流路21Aと低温液体流路21Bには、それぞれ複数のバッフル25Dが互いに平行でかつ交互にずらして配置され、2本のジグザグ流路を形成している。
図16(b)に示すパッド接触部材11においては、矢印で示すように、液体流入口23Aから流入した高温液体がジグザグ流路を通って液体流出口24Aから流出し、液体流入口23Bから流入した低温液体がジグザグ流路を通って液体流出口24Bから流出するようになっている。
図16(b)に示すバッフル25C,25Dの内部には、
図3乃至
図9に示した空間Sと同様の空間(図示せず)が形成されている。
【0061】
図16(b)に示すパッド接触部材11によれば、高温液体流路21Aと低温液体流路21Bとを分離するバッフル(又は仕切り)25Cに断熱層を形成する空間を設けることにより、バッフル25Cを挟んで隣接する流路間の熱の移動が防止され、無駄な熱の移動を防ぐことができる。
図16(b)に示すパッド接触部材11を用いて研磨パッド3の表面温度を調整する場合、パッド接触部材11のバッフル(又は仕切り)25Cを研磨パッド3の半径方向に位置させるようにパッド接触部材11を研磨パッド3上に配置する第1の方法と、パッド接触部材11のバッフル(又は仕切り)25Cを研磨パッド3の半径方向と直交する方向に位置させるようにパッド接触部材11を研磨パッド3上に配置する第2の方法が考えられる。第1の方法では、パッド接触部材11が接触する研磨パッド3上の領域は、高温液体流路21Aに供給される高温液体と低温液体流路21Bに供給される低温液体の中間の温度に制御される。また、第2の方法では、パッド接触部材11が接触する研磨パッド3上の領域は、研磨パッド3の半径方向において、高温液体により温度調整された高温領域と低温液体により温度調整された低温領域に分かれる。
【0062】
これまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術思想の範囲内において、種々の異なる形態で実施されてよいことは勿論である。