特許第6580971号(P6580971)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6580971-比較電極 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6580971
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】比較電極
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/30 20060101AFI20190912BHJP
【FI】
   G01N27/30 311Z
   G01N27/30 315Z
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-243583(P2015-243583)
(22)【出願日】2015年12月14日
(65)【公開番号】特開2017-110948(P2017-110948A)
(43)【公開日】2017年6月22日
【審査請求日】2018年11月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000155023
【氏名又は名称】株式会社堀場製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(72)【発明者】
【氏名】宮村 和宏
(72)【発明者】
【氏名】箕輪 大輝
(72)【発明者】
【氏名】中井 陽子
【審査官】 黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−206630(JP,A)
【文献】 特開昭57−208447(JP,A)
【文献】 実開昭57−108151(JP,U)
【文献】 実開昭58−134763(JP,U)
【文献】 実開昭59−183655(JP,U)
【文献】 特開昭57−053648(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26−27/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間に内部液を貯留するケーシングと、前記内部空間の底面から起立して前記内部液に浸漬するように配置された内部電極とを具備する比較電極であって、
前記内部電極の側周面を取り囲むように前記底面から立ち上がる周囲壁と、
前記内部液を前記ケーシング内に補充するためのインレットポートとを具備し、
前記周囲壁は、その先端面が開放しているとともに、その高さが前記内部電極の高さよりも高いものであり、
前記インレットポートは、前記周囲壁の外側の空間に開口するものであることを特徴とする比較電極。
【請求項2】
前記インレットポートは、前記周囲壁の外側周面とケーシング内面との間の空間に開口するものであることを特徴とする請求項1記載の比較電極。
【請求項3】
内部液補充機構を具備し、前記内部液補充機構がサンプル測定中に前記内部液を連続的又は間欠的に補充するものであることを特徴とする請求項1又は2記載の比較電極。
【請求項4】
内部電極が、銀を芯材とし、その周囲を塩化銀でコーティングした銀塩化銀電極であるものにおいて、
前記内部電極の側周面と前記周囲壁の内側周面との間に形成された空間に充填された充填材をさらに具備することを特徴とする請求項1、2又は3記載の比較電極。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、pH測定装置等に用いられる比較電極に関するものである。
【背景技術】
【0002】
比較電極に内部液を補充すると、測定装置の出力値に誤差が生じる。その理由は以下の通りである。
【0003】
比較電極に使用される銀/塩化銀電極は、銀からなる棒状又は板状の芯材の周りに塩化銀の層を電着等により形成したものである。
【0004】
この銀/塩化銀電極の基準電位は、内部液中の塩化物イオンの濃度に依存することが知られているが、塩化銀の層に存在するクラック等から、銀イオンが溶出すると周囲の塩化銀が還元されて、内部液中に塩化物イオンが放出されるので、内部液中の塩化物イオン濃度が僅かに変化して、銀/塩化銀電極の基準電位が変化する。
【0005】
この基準電位の変化は、内部液中に銀イオンが飽和すると安定するが、新しい内部液を補充すると、再び内部電極から銀イオンの溶出が起こり、基準電位が変化するので、結果として内部液を補充する度に測定装置の測定値に誤差が生じることになる。
【0006】
従来、容器に貯留された特性値が一定のサンプルを測定する場合には、内部液を測定前に補充して、測定装置の出力値が落ち着くのを待ってからサンプルを測定している。
【0007】
しかしながら、サンプル測定中に内部液を補充する場合、特に、測定値が変化し続けるようなサンプルや次々と供給されるサンプルを連続して測定し続けるような場合には、内部液を補充することによる測定値の誤差は大きな問題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−172539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、サンプル測定中に内部液を補充しても測定値の誤差を抑えることができる比較電極を提供すべく図ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち本発明に係る比較電極は、内部空間に内部液を貯留するケーシングと、前記内部空間の底面から起立して前記内部液に浸漬するように配置された内部電極とを具備する比較電極であって、前記内部電極の側周面を取り囲むように前記底面から立ち上がる周囲壁と、前記内部液を前記ケーシング内に補充するためのインレットポートとを具備し、前記周囲壁は、その先端面が開放しているとともに、その高さが前記内部電極の高さよりも高いものであり、前記インレットポートは、前記周囲壁の外側の空間に開口するものであることを特徴とするものである。
【0011】
このような比較電極によれば、内部液を補充する際に前記インレットポートから送り込まれた内部液は、まず前記周囲壁の外側に補充されて、周囲壁内側の内部電極から溶出した銀イオンを含む内部液とすぐには混ざらないので、内部液を補充した際に起こる測定値の誤差を抑えることができる。
【0012】
前記インレットポートは、前記周囲壁の外側周面とケーシング内面との間の空間に開口するものであることを特徴とする比較電極であれば、前記インレットポートから補充された新しい内部液が、前記周囲壁の外側から補充されても、周囲壁の高さがインレットポートの高さよりも高い位置にある為に、周囲壁を乗り越える必要があり、周囲壁の内側の内部液と、より混ざりにくくなるので、内部液を補充した際に起こる測定値の誤差をさらに効果的に抑えることができる。
【0013】
本発明の効果が特に顕著となる具体的な実施態様としては、内部液補充機構を具備し、前記内部液補充機構がサンプル測定中に前記内部液を連続的又は間欠的に補充するものであることを特徴とする比較電極が挙げられる。
【0014】
内部電極が、銀を芯材とし、その周囲を塩化銀でコーティングした銀塩化銀電極であるものにおいて、前記内部電極の側周面と前記周囲壁の内側周面との間に形成された空間に充填された充填材をさらに具備することを特徴とする比較電極であれば、前記充填材によって前記内部電極を保護して、前記内部液への銀イオンの溶出を抑えることができるので、内部液を補充した際に起こる測定値の誤差をさらに抑えることができる。
【発明の効果】
【0015】
このような比較電極によれば、内部液を補充する際に前記インレットポートから送り込まれた内部液は、まず前記周囲壁の外側に補充されて、周囲壁内側の内部電極から溶出した銀イオンを含む内部液とすぐには混ざらないので、内部液を補充した際に起こる測定値の誤差を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る測定装置の全体模式図。
図2】本実施形態に係る比較電極の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0018】
本実施形態に係る比較電極22は、例えば、半導体製造プロセス、例えば、配線工程の洗浄液、Cuメッキ液、配線等を加工するエッチング液、CMP(化学機械研磨)などに用いられる薬液等(以下「測定液」ともいう。)のpHを測定するために半導体製造装置に接続されて組み込まれる測定装置100に用いられるものである。
【0019】
この測定装置100は、図1に示すように、測定液が流れる本流路(図示しない)に接続されて、その一部をサンプリングするサンプリング機構1と、サンプリングした測定液のpHを測定するpH測定計2とを具備したものである。
【0020】
前記サンプリング機構1は、前記本流路に連通するサンプリング流路11と、該サンプリング流路11への測定サンプルである測定液の導入等を制御する流通制御機構12とを具備したものである。
【0021】
サンプリング流路11は、サンプリングされた測定液又は前記校正液が流れる流路であり、該測定液に対する耐蝕性を有した配管部材で形成されており、キャピラリー状をなす非常に細いものである。
【0022】
前記流通制御機構12は、前記サンプリング流路11上に設けられたサンプリングポンプ121と、前記サンプリングポンプ121の動作を制御するサンプリング制御部とを具備したものである。
【0023】
サンプリング制御部は、この実施形態では、前記サンプリングポンプ121とは別に設けられた情報処理回路3がその役割を担う。この情報処理回路3は、CPUやメモリ、通信ポートなどから構成されたデジタル回路と、バッファーや増幅器などを具備するアナログ回路と、これらデジタル回路とアナログ回路とを仲立ちするADコンバータ、DAコンバータなどを具備したものである。そして、前記メモリに記憶させた所定のプログラムにしたがってCPUやその周辺機器が協働することにより、この情報処理回路3が前記サンプリング制御部としての機能を発揮する。
【0024】
そして、このサンプリング制御部からの指令信号によって、サンプリングポンプ121が稼動すると、前記本流路を流れる測定液の一部をサンプリング流路11に引き込み、サンプリングポンプ121が停止すると測定液のサンプリングを停止するように構成してある。
【0025】
pH測定計2は、ここでは、いわゆるガラス電極法に基づいてpHを算出するものであり、ガラス電極21及び比較電極22と、これら各電極21、22の電位差に基づいてpHを算出するpH算出部とを具備している。
【0026】
前記ガラス電極21は、図1に示すように、内部に第1内部液211を貯留した第1ボディ212と、該第1ボディ212に設けられた応答ガラスと、前記第1内部液211に浸漬された第1内部電極214とを具備したものである。
【0027】
第1ボディ212は、例えば、PVC(ポリ塩化ビニル)、PP(ポリプロピレン)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂)等の材質から形成された中空ブロック体状をなすものである。
【0028】
第1内部液211は、例えば、塩化カリウム、硝酸アンモニウム又は酢酸リチウム等の水溶液である。
【0029】
応答ガラスは、周知のように第1内部液211と測定対象である測定液との間に介在してそのpH差による電位を生じせしめるものであり、この実施形態では、この応答ガラスによって管体213を形成している。
【0030】
この応答ガラスによって形成された管体213は、第1ボディ212の一側面からその内部空間である第1内部空間を通って他側面に亘るように貫通させた前記サンプリング流路11と同様にキャピラリー状をなす非常に細いものである。
【0031】
この管体213の始端は、前記サンプリング流路11に接続されており、前記サンプリングポンプ121の稼動によって前記本流路から管体213の内部に測定液が導入されるようにしてある。
【0032】
このようにして、管体213の外表面が前記第1内部空間に充填された第1内部液211に接触する一方で、該管体213の内部に測定液が導入されることによって、前述したように、第1内部液211と測定対象である測定液との間に応答ガラス(管体213)が介在するようにしている。
【0033】
なお、この実勢形態では、管体213の全部を応答ガラスで形成してあるが、第1内部液211に接触する一部だけを応答ガラスにしてもよい。
【0034】
第1内部電極214は、例えば、銀/塩化銀から形成された棒状又は長板状をなすものであり、前記第1ボディ212の壁を貫通するように取り付けられて、その一部が第1内部液211に浸かるようにしてある。
【0035】
前記比較電極22は、図2に示すように、内部に第2内部液221を貯留するケーシングである第2ボディ222と、第2内部液221に浸漬して基準電位を出力する第2内部電極223と、液絡部224とを具備したものである。
【0036】
第2ボディ222は、例えば、PVC(ポリ塩化ビニル)、PP(ポリプロピレン)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂)等の材質から形成された中空ブロック体状をなすものであり、その内部空間である第2内部空間Sに、前記第2内部液221が充填されている。この第2内部液221は、例えば、例えば、塩化カリウム、硝酸アンモニウム又は酢酸リチウム等の水溶液である。
【0037】
この第2ボディ222には、前記第2内部空間Sの他に、測定液が導入される第1内部流路4が設けられている。第1内部流路4は、第2ボディ222の一側面から他側面に亘って貫通する貫通孔であり、その始端が、前記管体213の終端に連通されている。この構成により、測定液が前記管体213を通った後、この第1内部流路4に導入されるように構成してある。なお、この第1内部流路4は、前記管体213と同様にキャピラリー状をなす非常に細いものである。
【0038】
前記本流路、サンプリング流路11、管体及び第1内部流路4の接続部はそれぞれ封止部材等によって密閉されており、前記サンプリング流路11、管体及び第1内部流路4の内部は、常にサンプルや校正液、又は洗浄液等の他の液体によって満たされた状態となっている。
【0039】
第2内部電極223は、例えば、銀/塩化銀から形成された円柱状のものであり、前記第2ボディ222の底壁を貫通して前記第2内部空間Sに起立するように取り付けられて、前記第2内部液221に浸かるようにしてある。
【0040】
前記第2内部電極223は、例えば、銀からなる細い棒状の芯材223Aと、芯材223Aの表面の一部を覆う塩化銀からなる層223Bを具備し、長さを内部電極として機能を発揮できる範囲内で出来るだけ短くした前記芯材223Aの一部を、例えば、溶解した塩化銀中に浸漬して形成したのち、アニーリングと呼ばれる熱処理を行って製造されたものである。
【0041】
前記第2内部電極223の周囲には、前記第2ボディ222の底壁の前記第2内部電極223とは偏位した箇所から前記第2内部電極223の側周面を取り囲むように立ち上がり、前記第2内部液221中に浸漬された第2内部電極223の先端を越えて円筒形に形成された周囲壁223Wが設けられている。
【0042】
前記周囲壁223Wは、例えば、PVC(ポリ塩化ビニル)、PP(ポリプロピレン)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂)、エポキシ樹脂等の材質から形成されたものであり、前記周囲壁223Wの前記第2ボディ222と密接している基端部とは別の先端面は開放されており、円形の開放部223Hが形成されている。
【0043】
前記第2内部電極223の側周面と前記周囲壁223Wの内側周面と間に形成された空間は、例えば、エポキシ系接着剤などの充填材223Fによって充填されている。
【0044】
前記充填材223Fは前記第2内部電極223を保護するものであり、前記充填材223Fは、前記第2内部電極223の先端が少し突出する高さまで充填されている。
【0045】
具体的には、前記充填材223Fによる充填高さは、前記芯材223Aの先端よりも低い場合、前記芯材223Aの先端と同じである場合、前記芯材223Aの先端と前記塩化銀からなる層223Bの先端との間にある場合とがある。
【0046】
前記第2内部空間Sは、前記周囲壁223Wによって、周囲壁223Wの外側の空間である外側領域aと、前記第2内部電極223が収容されている内側領域bとの2つの領域に分けられており、前記外側領域aと前記内側領域bとが前記開放部223Hを介して接している。
【0047】
前記外側領域aは、前記周囲壁223Wで囲まれた内側領域bの外側の領域であり、上方空間も外側領域aに含まれる。
【0048】
前記液絡部224は、第1内部流路4と、前記第2ボディ222に、前記第2内部空間S及び前記第1内部流路4とは別に形成され、その端部が前記第1内部流路4に達するように外部から穿孔された第2内部流路5とが接触する部位に形成してある。
【0049】
具体的に説明すると、前記第2内部空間Sは、第2内部極223が挿入された領域よりも図中上側、すなわち、底壁の反対側端部において、その内径が小径に形成されており、この小径部分の先端が前記第2ボディ222の外に向かって開口する部分において、前記液絡部224と前記第2内部空間Sの間を所定の距離だけ離間させる内部液迂回流路6によって前記第2内部流路5に接続されている。前記第2内部流路5内には板状の多孔質部材が配置されており、第2内部流路5内の第2内部液221が、この多孔質部材を介して前記第1内部流路4に接触するように液絡部224が形成されている。
【0050】
ところで、前記第2内部液221は前記液絡部224からの流出や水分の蒸発によって減少するので、前記比較電極22が内部液補充機構8を具備し、前記第2ボディ222の外側から穿孔され、前記外側領域aに開口する、すなわち、前記周囲壁223Wの外側周面に対向する前記第2ボディ222の内側周面に開口するインレットポート7から前記内部液補充機構8によって前記第2内部空間Sへ第2内部液221が補充されるように構成されている。
【0051】
前記インレットポート7は前記周囲壁223Wの外側周面と前記第2ボディ222の内側周面との間の空間に、すなわち前記開放部223Hよりも図2中下側に開口しており、前記インレットポート7から補充された第2内部液221が前記開放部223Hから前記内側領域bに直接流入しないように構成されている。
【0052】
前記インレットポート7は、前記第2ボディ222の前記第2内部空間Sにおける側周面に限らず、前記第2ボディ222の前記第2内部空間Sにおける底面に開口するものとしても良い。
【0053】
前記内部液補充機構8は、図1に示すように、内部液補充流路81と、内部液の流れを制御する内部液流通機構82と、内部液を貯留しておく内部液貯留タンク83と、を具備するものである。
【0054】
前記内部液補充流路81は、前記内部液迂回流路6と、前記第2内部流路5とともに内部液流路9を形成するものであり、前記内部液補充流路81は、前記インレットポート7と前記内部液貯留タンク83内に貯留された内部液とを接続するものである。
【0055】
前記内部液流通機構82は、前記内部液補充流路81上に設けられた内部液補充ポンプ82Pと内部液制御部とを具備したものである。
【0056】
前記内部液制御部は、この実施形態では、前記情報処理回路3がそのメモリに記憶させた所定のプログラムにしたがってCPUやその周辺機器が協働することにより、該内部液制御部としての機能を発揮する。
【0057】
前記内部液制御部は、例えば、前記サンプリングポンプの稼働状況によって、前記測定装置100が、サンプルを測定している測定状態、校正液によって測定値を校正する校正状態又はサンプル測定や校正を待機している待機状態のいずれにあるのかを判断するように構成されている。
【0058】
そして、この内部液制御部からの指令信号によって、内部液補充ポンプ82Pが稼動すると、前記内部液貯留タンク83から内部液が前記内部液補充流路81を経由して前記第2内部空間Sに送り込まれて補充されるように構成してある。
【0059】
前記内部液貯留タンク83から第2内部空間S及び前記内部液流路9を経由して、前記液絡部224に達するまでの間の流路及び空間は、それぞれの接続部が封止部材等によって封止されて密閉されており、また内部液補充流路81を形成するチューブの先端が前記内部液貯留タンク83内の内部液に浸漬されていることで、前記内部液貯留タンク83から前記液絡部224までの間の流路及び空間は第2内部液221によって満たされている。
【0060】
なお、前記インレットポート7及び前記内部液補充機構8は、第2内部液221が入っていない状態から前記比較電極22に第2内部液221を充填する際にも内部液を補充する際と同様に、第2内部液221を前記第2内部空間Sに送り込んで充填するものである。
【0061】
pH算出部は、図1に示すように、前記第1内部極214と第2内部極223との電位差を測定し、その電位差に基づいて前記測定液のpHを算出するものであり、この実施形態では、前記情報処理回路3がそのメモリに記憶させた所定のプログラムにしたがってCPUやその周辺機器が協働することにより、該pH算出部としての機能を発揮する。
【0062】
次に、以上のように構成した測定装置100の動作の一例を簡単に説明する。
【0063】
前記内部液補充機構8により内部液を充填する場合には、前記内部液制御部が、前記内部液補充ポンプ82Pに指示して、前記内部液貯留タンク83から前記内部液補充流路81及び前記インレットポート7を経由して、前記第2内部空間Sの前記外側領域aに前記第2内部液221を補充する。
【0064】
前記外側領域aに送りこまれた前記第2内部液221が、前記周囲壁223Wの開放部223Hまで到達すると、前記第2内部液221は前記開放部223Hから前記内側領域bへと流入する。その後、さらに第2内部液221が送り込まれて、前記外側領域a及び内側領域bが全て前記第2内部液221で満たされることによって、前記第2内部空間Sに前記第2内部液221が充填される。
【0065】
このようにして、第2内部空間Sに充填された第2内部液221の余剰分は前記内部液迂回流路6を通って、前記第2内部流路5を満たし、前記液絡部224から流出する。
【0066】
前記内部液補充機構8により、内部液を補充する場合には、まず前記内部液制御部が、前記測定装置100が測定状態、校正状態又は待機状態のいずれの状態にあるのかを判断した後、前記内部液制御部が前記内部液補充ポンプ82Pに指示して、前記内部液貯留タンク83から前記内部液補充流路81及び前インレットポート7を経由して、前記第2内部空間Sの前記外側領域aにそれぞれの状態に応じた補充頻度、補充量で第2内部液221を補充する。
【0067】
このようにして、前記第2内部空間Sの前記外側領域aに第2内部液221が補充されると、前記外側領域aを満たした前記第2内部液221は、周囲壁223Wに囲まれた内側領域bの第2内部液221とはほとんど流通することなく、前記内部液迂回流路6及び前記第2内部流路5へと流れ、液絡部224へと達する。この時余剰の内部液は、液絡部224から前記サンプリング流路11へと流出する。
【0068】
ここで、前記測定状態及び校正状態において、前記内部液補充機構8によって補充される前記第2内部液221の補充頻度と補充量は、例えば、1時間に1回の頻度で、毎回50μlずつ補充されるといったものである。
【0069】
また、前記待機状態における前記第2内部液221の補充頻度と補充量は、例えば、1日に1回の頻度で、毎回50μlずつ補充されるといったものである。
【0070】
このような構成の比較電極22によれば、前記第2内部電極223の周囲に周囲壁223Wが設けられているので、前記内側領域b内の前記第2内部液221が流動して新しく補充された第2内部液221と入れ替わるのを抑え、前記第2内部液221が補充されたときに生じる測定値の誤差を抑えることができる。
【0071】
また、内部液を補充する際のインレットポート7を前記周囲壁223Wの外側周面と前記第2ボディの内面との間であり、前記周囲壁223Wの開放部223Wよりも図2中下側に設けることで、前記インレットポート7から補充された第2内部液221が前記周囲壁223Wを乗り越えて内部領域bに流入するまでに時間を要し、前記開放部223Hから新しい内部液がすぐに前記内側領域bに流れ込むのを抑えて、前記内部電極223周辺の第2内部液221の流動をより効果的に抑えることができるので、第2内部液221を補充したときの測定値の誤差をより効果的に抑えることができる。
【0072】
第2内部電極223の塩化銀層223Bが前記芯材223Aを溶解した塩化銀に浸漬することで形成され、さらに熱処理を施されているので、クラック等の発生が抑えられ、前記内側領域b内の第2内部液221中への前記芯材223Aからの銀イオンの溶出を抑えることができる。
【0073】
前記芯材223Aの長さを短くし、前記充填材223Fによって前記第2内部電極223の先端が少しでるように前記第2内部電極223の側周面と前記周囲壁223Wの内側周面と間に形成された空間を充填することで、前記第2内部電極223を保護して、前記第2内部液221への銀イオンの溶出を抑えることができるので、内部液を補充した際に起こる測定値の誤差をさらに抑えることができる。
【0074】
前記第2内部電極223の銀芯材223Aを短くすることで、前記内側領域bを前記周囲壁223Wの長手方向に広く確保することができ、前記内部電極223周辺の第2内部液221の流動を効果的に抑えることができるので、第2内部液221を補充したときの測定値の誤差を抑えることができる。
【0075】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0076】
前記周囲壁の形状は、前記第2内部電極の側周面を取り囲むものであれば、円筒状のものに限らず、多角形や異形の筒でも良く、前記開放部の形状は前記周囲壁の基端部の断面形状と同じものに限らず、筒の途中で変形しても良いし、また基端部よりも径方向に広がっていても、また狭くなっていても良い。
【0077】
前記インレットポートは前記周囲壁の外周面と前記第2ボディの内面との間に形成されたものに限らず、前記周囲壁の外側に設けられていれば良い。
【0078】
前記第2内部電極は円柱状のものに限らずその径方向の断面が多角形や異形の柱状のものでも良いし、板状のものでも良い。
【0079】
前記第2内部電極の塩化銀の層は、前記芯材を溶解した塩化銀に1回又は複数回浸漬して形成されたものでも良い。
【0080】
前記第2内部電極の塩化銀の層は、前記芯材に泳動電着や、蒸着法、めっき法により形成しても良いし、鋳型等を用いて形成しても良い。
【0081】
また、前記熱処理をしなくても良いし、他の温度での熱処理を行っても良い。
【0082】
前記塩化銀の層は、塩化銀のみからなるものに限らず他の、例えば硫化銀などを含んでも良い。
【0083】
前記比較電極はpHに限らず、酸化還元電位、イオン濃度、導電率等の測定に使用されるものとしても良い。
【0084】
前記比較電極は、半導体製造プロセスに限らず、他のさまざまな分野への応用が可能である。
【0085】
その他、本発明は、前記図示例に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0086】
比較電極・・・22
周囲壁・・・223W
インレットポート・・・7
内部液補充機構・・・8
図1
図2