(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリスチレン又はポリスチレン誘導体からなるブロックと、他の1種類以上のブロックとが結合したブロックコポリマーと、有機溶剤成分(S)とを含有するブロックコポリマー組成物であって、
前記ブロックコポリマーは、ポリスチレンもしくはポリスチレン誘導体からなるブロックと、(α置換)アクリル酸エステルから誘導される構成単位のブロックとが結合したブロックコポリマー;又はポリスチレンもしくはポリスチレン誘導体からなるブロックと、(α置換)アクリル酸から誘導される構成単位のブロックとが結合したブロックコポリマーであり、
前記有機溶剤成分(S)は、3−メトキシブチルアセテートであり、
相分離構造を含む構造体の製造方法に用いられる、ブロックコポリマー組成物。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書及び本特許請求の範囲において、「脂肪族」とは、芳香族に対する相対的な概念であって、芳香族性を持たない基、化合物等を意味するものと定義する。
「アルキル基」は、特に断りがない限り、直鎖状、分岐鎖状及び環状の1価の飽和炭化水素基を包含するものとする。
「アルキレン基」は、特に断りがない限り、直鎖状、分岐鎖状及び環状の2価の飽和炭化水素基を包含するものとする。アルコキシ基中のアルキル基も同様である。
「ハロゲン化アルキル基」は、アルキル基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換された基であり、該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
「フッ素化アルキル基」又は「フッ素化アルキレン基」は、アルキル基又はアルキレン基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された基をいう。
「構成単位」とは、高分子化合物(樹脂、重合体、共重合体)を構成するモノマー単位(単量体単位)を意味する。
「アクリル酸エステルから誘導される構成単位」とは、アクリル酸エステルのエチレン性二重結合が開裂して構成される構成単位を意味する。
「アクリル酸エステル」は、アクリル酸(CH
2=CH−COOH)のカルボキシ基末端の水素原子が有機基で置換された化合物である。
アクリル酸エステルは、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよい。該α位の炭素原子に結合した水素原子を置換する置換基(R
α)は、水素原子以外の原子又は基であり、たとえば炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基、ヒドロキシアルキル基等が挙げられる。なお、アクリル酸エステルのα位の炭素原子とは、特に断りがない限り、カルボニル基が結合している炭素原子のことである。
以下、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されたアクリル酸エステルをα置換アクリル酸エステルということがある。また、アクリル酸エステルとα置換アクリル酸エステルとを包括して「(α置換)アクリル酸エステル」ということがある。
「ヒドロキシスチレン若しくはヒドロキシスチレン誘導体から誘導される構成単位」とは、ヒドロキシスチレン若しくはヒドロキシスチレン誘導体のエチレン性二重結合が開裂して構成される構成単位を意味する。
「ヒドロキシスチレン誘導体」とは、ヒドロキシスチレンのα位の水素原子がアルキル基、ハロゲン化アルキル基等の他の置換基に置換されたもの、並びにそれらの誘導体を含む概念とする。それらの誘導体としては、α位の水素原子が置換基に置換されていてもよいヒドロキシスチレンの水酸基の水素原子を有機基で置換したもの、α位の水素原子が置換基に置換されていてもよいヒドロキシスチレンのベンゼン環に、水酸基以外の置換基が結合したもの、等が挙げられる。なお、α位(α位の炭素原子)とは、特に断りがない限り、ベンゼン環が結合している炭素原子のことをいう。
ヒドロキシスチレンのα位の水素原子を置換する置換基としては、前記α置換アクリル酸エステルにおいて、α位の置換基として挙げたものと同様のものが挙げられる。
「ビニル安息香酸若しくはビニル安息香酸誘導体から誘導される構成単位」とは、ビニル安息香酸若しくはビニル安息香酸誘導体のエチレン性二重結合が開裂して構成される構成単位を意味する。
「ビニル安息香酸誘導体」とは、ビニル安息香酸のα位の水素原子がアルキル基、ハロゲン化アルキル基等の他の置換基に置換されたもの、並びにそれらの誘導体を含む概念とする。それらの誘導体としては、α位の水素原子が置換基に置換されていてもよいビニル安息香酸のカルボキシ基の水素原子を有機基で置換したもの、α位の水素原子が置換基に置換されていてもよいビニル安息香酸のベンゼン環に、水酸基およびカルボキシ基以外の置換基が結合したもの、等が挙げられる。なお、α位(α位の炭素原子)とは、特に断りがない限り、ベンゼン環が結合している炭素原子のことをいう。
「スチレン誘導体」とは、スチレンのα位の水素原子がアルキル基、ハロゲン化アルキル基等の他の置換基に置換されたものを意味する。
「スチレンから誘導される構成単位」、「スチレン誘導体から誘導される構成単位」とは、スチレン又はスチレン誘導体のエチレン性二重結合が開裂して構成される構成単位を意味する。
上記α位の置換基としてのアルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましく、具体的には、炭素数1〜5のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基)等が挙げられる。
また、α位の置換基としてのハロゲン化アルキル基は、具体的には、上記「α位の置換基としてのアルキル基」の水素原子の一部又は全部を、ハロゲン原子で置換した基が挙げられる。該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、特にフッ素原子が好ましい。
また、α位の置換基としてのヒドロキシアルキル基は、具体的には、上記「α位の置換基としてのアルキル基」の水素原子の一部又は全部を、水酸基で置換した基が挙げられる。該ヒドロキシアルキル基における水酸基の数は、1〜5が好ましく、1が最も好ましい。
「置換基を有していてもよい」と記載する場合、水素原子(−H)を1価の基で置換する場合と、メチレン基(−CH
2−)を2価の基で置換する場合の両方を含む。
「露光」は、放射線の照射全般を含む概念とする。
【0016】
<相分離構造を含む構造体の製造方法>
本発明の第一の態様は、支持体上に、ポリスチレン又はポリスチレン誘導体からなるブロックと、他の1種類以上のブロックとが結合したブロックコポリマーと、有機溶剤成分(S)とを含有するブロックコポリマー組成物を塗布し、ブロックコポリマーを含む層を形成する工程Aと、前記ブロックコポリマーを含む層を相分離させる工程Bと、を含み、前記有機溶剤成分(S)のハンセン溶解度パラメータと、前記ポリスチレン又はポリスチレン誘導体のハンセン溶解度パラメータとの相互作用間距離Ra
PS(MPa
1/2)の値が、以下の式(1)を満たすことを特徴とする、相分離構造を含む構造体の製造方法である。
【0018】
以下、本発明の相分離構造を含む構造体の製造方法について図面を参照しながら説明する。
【0019】
図1に、相分離構造を含む構造体の製造方法の概略工程の一例を示す。
この実施形態では、ポリスチレン又はポリスチレン誘導体のハンセン溶解度パラメーターとの相互作用間距離(Ra)の値が所定の範囲である有機溶剤成分を含有するブロックコポリマー組成物が用いられている。
まず、
図1(A)に示す支持体1上に、ポリスチレン又はポリスチレン誘導体からなるブロックと、他の1種類以上のブロックとが結合したブロックコポリマーを含有するブロックコポリマー組成物を塗布し、
図1(C)に示すように、支持体1上にブロックコポリマーを含む層3を形成する。
本実施形態においては、
図1(B)に示すように、支持体1上に、中性化膜2を形成し、該中性化膜2の上にブロックコポリマーを含む層3を形成することが好ましい。
次に、
図1(D)に示すように、ブロックコポリマーを含む層を相分離させ、P
Aブロックからなる相(
図1(D)における3a)とP
Bブロックからなる相(
図1(D)における3b)とに相分離させた相分離構造を含む構造体を得ることができる。
【0020】
≪工程A≫
工程Aは、支持体上に、ポリスチレン又はポリスチレン誘導体からなるブロックと、他の1種類以上のブロックとが結合したブロックコポリマーと、有機溶剤成分(S)とを含有するブロックコポリマー組成物を塗布し、ブロックコポリマーを含む層を形成する工程である。工程Aで用いるブロックコポリマー組成物については後述する。
ブロックコポリマーを含む層の形成は、従来公知の方法によって行うことができる。具体的には、たとえばブロックコポリマー組成物を支持体上にスピンナー等で塗布し、好ましくは80〜150℃の温度で40〜120秒間、より好ましくは60〜90秒間のベーク処理を施すことによりブロックコポリマーを含む層を形成できる。
ブロックコポリマーを含む層の厚さは、特に制限はなく、30〜250nmの範囲内であることが好ましく、50〜150nmがより好ましい。
【0021】
工程Aでは、支持体1上にブロックコポリマー組成物を塗布する前に、支持体上に中性化膜2(
図1(B)における中性化膜2)を形成することが好ましい。
中性化膜の形成は、中性化膜を形成するために用いられる樹脂組成物を、支持体上にスピンナー等で塗布し、100〜300℃の温度で40〜120秒間、好ましくは60〜90秒間のベーク処理を施すことにより中性化膜を形成できる。該ベーク処理の後、シンナー等の溶剤で支持体と未密着な部位を溶剤剥離し、中性化膜を形成することができる。
中性化膜の厚さは特に制限は無く、1〜20nmが好ましく、5〜15nmがより好ましい。
【0022】
中性化膜2は、支持体表面を、ブロックコポリマーを構成するいずれのポリマーとも親和性を有するように改質するために形成する。
中性化膜を形成することにより、相分離によって特定のポリマーからなる相のみが支持体表面に接することを抑制することができる。このため、相分離によって支持体表面に対して垂直方向に配向されたラメラ構造を形成させるためには、ブロックコポリマーを含む層を形成する前に、支持体表面に、用いるブロックコポリマーの種類に応じた中性化膜を形成しておくことが好ましい。
【0023】
具体的には、支持体表面に、ブロックコポリマーを構成するいずれのポリマーとも親和性を有する表面処理剤を含む中性化膜を形成する。
このような中性化膜としては、樹脂組成物からなる膜を用いることができる。中性化膜を形成するために用いられる樹脂組成物は、ブロックコポリマーを構成するポリマーの種類に応じて、薄膜形成に用いられる従来公知の樹脂組成物の中から適宜選択することができる。中性化膜を形成するために用いられる樹脂組成物は、熱重合性樹脂組成物であってもよく、ポジ型レジスト組成物やネガ型レジスト組成物等の感光性樹脂組成物であってもよい。
その他、化合物を表面処理剤とし、当該化合物を塗布して形成された非重合性膜を中性化膜としてもよい。例えば、フェネチルトリクロロシラン、オクタデシルトリクロロシラン、ヘキサメチルジシラザン等を表面処理剤として形成されたシロキサン系有機単分子膜も、中性化膜として好適に用いることができる。
これらの表面処理剤からなる中性化膜は、常法により形成することができる。
【0024】
このような表面処理剤としては、例えば、ブロックコポリマーを構成する各ポリマーの構成単位をいずれも含む樹脂組成物や、ブロックコポリマーを構成する各ポリマーと親和性の高い構成単位をいずれも含む樹脂等が挙げられる。
例えば、ポリスチレン(以下、「PS」と記載することがある。)とポリメタクリル酸メチル(以下、「PMMA」と記載することがある。)のブロックコポリマーを用いる場合には、表面処理剤として、PSとPMMAの両方を構成単位として含む物樹脂組成物や、芳香環等のPSと親和性が高い部位と、極性の高い官能基等のPMMAと親和性の高い部位の両方を含む化合物又は組成物を用いることが好ましい。
PSとPMMAの両方を構成単位として含む樹脂組成物としては、例えば、PSとPMMAのランダムコポリマー、PSとPMMAの交互ポリマー(各モノマーが交互に共重合しているもの)等が挙げられる。
【0025】
また、PSと親和性が高い部位とPMMAと親和性の高い部位の両方を含む組成物としては、例えば、モノマーとして、少なくとも、芳香環を有するモノマーと極性の高い置換基を有するモノマーとを重合させて得られる樹脂組成物が挙げられる。芳香環を有するモノマーとしては、フェニル基、ビフェニル(biphenyl)基、フルオレニル(fluorenyl)基、ナフチル基、アントリル(anthryl)基、フェナントリル基等の、芳香族炭化水素の環から水素原子を1つ除いた基、及びこれらの基の環を構成する炭素原子の一部が酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子で置換されたヘテロアリール基等を有するモノマーが挙げられる。また、極性の高い置換基を有するモノマーとしては、トリメトキシシリル基、トリクロロシリル基、カルボキシ基、水酸基、シアノ基、アルキル基の水素原子の一部がフッ素原子で置換されたヒドロキシアルキル基等を有するモノマーが挙げられる。
その他、PSと親和性が高い部位とPMMAと親和性の高い部位の両方を含む化合物としては、フェネチルトリクロロシラン等のアリール基と極性の高い置換基の両方を含む化合物や、アルキルシラン化合物等のアルキル基と極性の高い置換基の両方を含む化合物等が挙げられる。
【0026】
支持体は、その表面上にブロックコポリマー組成物を塗布し得るものであれば、その種類は特に限定されない。例えば、シリコン、銅、クロム、鉄、アルミニウム等の金属、ガラス、酸化チタン、シリカ、マイカなどの無機物からなる基板、アクリル板、ポリスチレン、セルロース、セルロースアセテート、フェノール樹脂などの有機化合物からなる基板などが挙げられる。
また、本実施形態において用いられる支持体の大きさや形状は、特に限定されるものではない。支持体は必ずしも平滑な表面を有する必要はなく、様々な材質や形状の支持体を適宜選択することができる。例えば、曲面を有する基板、表面が凹凸形状の平板、薄片状などの様々な形状のものまで多様に用いることができる。
【0027】
また、支持体の表面には、無機系および/又は有機系の膜が設けられていてもよい。無機系の膜としては、無機反射防止膜(無機BARC)が挙げられる。有機系の膜としては、有機反射防止膜(有機BARC)が挙げられる。
【0028】
支持体上に中性化膜を形成する前に、支持体の表面を洗浄してもよい。支持体の表面を洗浄することにより、中性化膜を良好に形成できる場合がある。
洗浄処理としては、従来公知の方法を利用でき、例えば酸素プラズマ処理、水素プラズマ処理、オゾン酸化処理、酸アルカリ処理、化学修飾処理等が挙げられる。例えば、基板を硫酸/過酸化水素水溶液等の酸溶液に浸漬させた後、水洗し、乾燥させる。その後、当該基板の表面に、相分離構造形成用樹脂組成物層を形成することができる。
【0029】
≪工程B≫
工程Bは、前記工程Aで得たブロックコポリマーを含む層を相分離させる。
ブロックコポリマーを含む層(
図1における3)の相分離は、ブロックコポリマーを含む層が形成された後に熱処理し、相分離構造を形成させる。熱処理の温度は、用いるブロックコポリマーの混合物を含む層のガラス転移温度以上であり、かつ熱分解温度未満で行うことが好ましい。例えば、ブロックコポリマーが、PS−PMMA(Mn:150000−50000)の場合には、150〜270℃が好ましく、200〜250℃がより好ましく、210〜230℃が特に好ましい。熱処理時間としては、30〜3600秒間が好ましく、120〜600秒がより好ましい。
また、熱処理は、窒素等の反応性の低いガス中で行われることが好ましい。
【0030】
上記の熱処理により、ブロックコポリマーを含む層を、3aブロックからなる相と3bブロックからなる相とに相分離させた相分離構造を含む構造体を得ることができる。
【0031】
なお、本実施形態は、感光性樹脂組成物等を物理的なガイドに用いて相分離パターンの配向性を制御する手法(グラフォエピタキシー)を用いてもよい。
これにより、感光性樹脂パターンの向きに沿った相分離構造を含む構造体を得ることができる。
【0032】
≪任意工程≫
本実施形態において、前記工程Bの後、前記ブロックコポリマーを含む層のうち、前記ブロックコポリマーを構成する複数種類のブロックのうちの少なくとも一種類のブロックからなる相を選択的に除去することにより、パターンを形成してもよい。
具体的には、相分離構造を形成させた後の支持体上のブロックコポリマーを含む層のうち、P
Aブロックからなる相中のブロック(
図1(D)における相3a)を選択的に除去(低分子量化)することにより、P
Bブロックからなるパターン(
図1(E)における相3b)を形成することができる。
この時、P
Aブロックからなる相中のブロック(
図1(D)における相3a)の少なくとも一部を選択的に除去(低分子量化)することにより、パターンを形成してもよい。予めP
Aブロックの一部を選択的に除去することにより、現像液に対する溶解性を高められる結果、P
Aブロックからなる相がP
Bブロックからなる相よりも選択的に除去しやすくなる。
【0033】
このような選択的除去処理は、P
Bブロックに対しては影響せず、P
Aブロックを分解除去し得る処理であれば、特に限定されるものではなく、樹脂膜の除去に用いられる手法の中から、P
AブロックとP
Bブロックの種類に応じて、適宜選択して行うことができる。また、支持体表面に予め中性化膜が形成されている場合には、当該中性化膜もP
Aブロックからなる相と同様に除去される。このような除去処理としては、例えば、酸素プラズマ処理、オゾン処理、UV照射処理、熱分解処理、及び化学分解処理等が挙げられる。
【0034】
上記の様にしてブロックコポリマーを含む層の相分離によりパターンを形成させた支持体は、そのまま使用することもできるが、さらに熱処理を行うことにより、支持体上の高分子ナノ構造体の形状を変更することもできる。熱処理の温度は、用いるブロックコポリマーのガラス転移温度以上であり、かつ熱分解温度未満で行うことが好ましい。また、熱処理は、窒素等の反応性の低いガス中で行われることが好ましい。
【0035】
≪ブロックコポリマー組成物≫
工程Aにおいて、ブロックコポリマーを含む層を形成するために用いられるブロックコポリマー組成物は、ポリスチレン又はポリスチレン誘導体からなるブロックと、他の1種類以上のブロックとが結合したブロックコポリマーを含有するブロックコポリマー組成物を採用できる。
該ブロックコポリマー組成物は、有機溶剤成分(S)を含有し、該有機溶剤成分(S)のハンセン溶解度パラメーターと、前記ポリスチレン又はポリスチレン誘導体のハンセン溶解度パラメーターとの相互作用間距離Ra
PS(MPa
1/2)の値は、以下の式(1)を満たす。
【0037】
(有機溶剤成分(S))
有機溶剤成分(S)が満たす所定のハンセン溶解度パラメーターは、例えば、Charles M.Hansenによる「Hansen Solubility Parameters:A User’s Handbook」,CRC Press(2007)及びAllan F.M.Barton(1999)編集の「The CRC Handbook and Solubility Parameters and Cohesion Parameters,」(1999)において、Charles Hansenにより説明されている溶解度パラメーター及び凝集特性に基づいた、所定のパラメーターから算出できる。
【0038】
ハンセン溶解度パラメーターは、数値定数として理論的に計算され、溶媒材料が特定の溶質を溶解させる能力を予測するのに有用なツールである。
ハンセン溶解度パラメーターは、実験的に及び理論的に誘導された下記3つのハンセン溶解度パラメーター(即ち、δD、δP及びδH)を組み合わせることにより、材料の全体的な強度及び選択性の尺度とすることができる。下記3つのハンセン溶解度パラメーターのそれぞれは、有機溶剤成分(S)の溶媒能の特徴を表す。溶解度パラメーターの単位は、MPa
1/2又は(J/cc)
0.5で付与される。
・δD:分子間の分散力に由来するエネルギー。
・δP:分子間の極性力に由来するエネルギー。
・δH:分子間の水素結合力に由来するエネルギー。
【0039】
これらの3つのパラメーター(即ち、δD、δP及びδH)を、ハンセン空間としても既知の3次元内の点に関する座標としてプロットする。
この3次元空間内で、有機溶剤成分(S)と、ポリスチレン又はポリスチレン誘導体の2種の分子がより接近する程、互いに溶解する可能性がより高くなることを示す。つまり、有機溶剤成分(S)と、ポリスチレン又はポリスチレン誘導体の2種の分子のパラメーターが近接しているか否かを決定するために、ハンセン空間内のハンセンパラメーター間の距離(Ra)を計算するには、以下の式を使用する。
【0040】
【数6】
[上記式において、
δ
d2は非極性の分散エネルギーによって発生する有機溶剤成分(S)の溶解度定数、
δ
p2は永久双極子による極性エネルギーによって発生する有機溶剤成分(S)の溶解度定数、
δ
h2は水素結合によるエネルギーのよって発生する有機溶剤成分(S)の溶解度定数を示す。
δ
d1は非極性の分散エネルギーによって発生するポリスチレン又はポリスチレン誘導体の溶解度定数、
δ
p1は永久双極子による極性エネルギーによって発生するポリスチレン又はポリスチレン誘導体の溶解度定数、
δ
h1は水素結合によるエネルギーのよって発生するポリスチレン又はポリスチレン誘導体の溶解度定数を示す。]
【0041】
ハンセン溶解度パラメーターは、「Molecular Modeling Pro」ソフトウェア,version 5.1.9(ChemSW,Fairfield CA,www.chemsw.com)又はDynacomp SoftwareからのHansen Solubilityにより計算することができる。
【0042】
本実施形態に用いられるブロックコポリマー組成物が含有する有機溶剤成分(S)は、該有機溶剤成分(S)のハンセン溶解度パラメーターと、前記ポリスチレン又はポリスチレン誘導体のハンセン溶解度パラメーターとの相互作用間距離Ra
PS(MPa
1/2)の値が、以下の式(1)を満たす。
【0044】
上記式(1)を満たす有機溶剤成分(S)は、ポリスチレン又はポリスチレン誘導体からなるブロックを含有するブロックコポリマーの溶解性が高いものである。上記式(1)を満たす有機溶剤成分(S)を採用したことにより、ブロックコポリマー組成物中の不純物の発生等を低減できるため、良好に相分離構造を形成することができる。
【0045】
上記式(1)を満たす有機溶剤としては、
例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン(Ra
PS:4.9)、シクロヘキサノン、メチル−n−ペンチルケトン、メチルイソペンチルケトン、2−ヘプタノンなどのケトン類;3−メトキシブチルアセテート(Ra
PS:8.3)等のエステル結合を有する化合物、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル(Ra
PS:6.4)、などのエステル類;が挙げられる。
これらの有機溶剤は単独で用いてもよく、2種以上の混合溶剤として用いてもよい。
【0046】
下記表1に、メチルアミルケトン、酢酸ブチル、3−メトキシブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの、δD、δP、δH及びポリスチレンのハンセン溶解度パラメーターとの相互作用間距離(表1中、「Ra
PS」と記載する。)を示す。
【0048】
本実施形態において、式(1)は、下記式(1−1)であることがより好ましく、下記式(1−1−1)であることが特に好ましい。
【0050】
本実施形態において、有機溶剤成分(S)は、上記式(1)に加え、該有機溶剤成分(S)のハンセン溶解度パラメータと、ポリエチレンのハンセン溶解度パラメータとの相互作用間距離Ra
PE(MPa
1/2)の値が、以下の式(2)を満たすことが好ましい。
【0052】
上記式(2)を満たす有機溶剤成分(S)は、ポリエチレンに対する溶解性が低いものである。ポリエチレンは、フィルター材料に採用されている樹脂であり、半導体フォトリソグラフィーに用いられる各種の溶剤の精製工程に用いられている。
上記式(2)を満たす有機溶剤成分(S)は、ポリエチレンに対する溶解性が低いものであるため、精製工程において、フィルターにダメージを与えにくく、フィルターから溶出する不純物の混入を防止できる。このため、ブロックコポリマー組成物中の不純物の混入を低減できるため、良好に相分離構造を形成することができる。
【0053】
下記表2に、メチルアミルケトン、酢酸ブチル、3−メトキシブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの、δD、δP、δH及びポリエチレンのハンセン溶解度パラメーターとの相互作用間距離(表2中、「Ra
PE」と記載する。)を示す。
【0055】
上記式(2)は、下記式(2−1)であることがより好ましく、下記式(2−1−1)であることが特に好ましい。
【0057】
本実施形態においては、上記の有機溶剤成分(S)として、3−メトキシブチルアセテートを採用することが好ましい。
【0058】
(ブロックコポリマー)
本実施形態においては、ポリスチレン又はポリスチレン誘導体からなるブロックと、他の1種類以上のブロックとが結合したブロックコポリマーを用いる。
ブロックコポリマーは、複数種類のブロック(同種の構成単位が繰り返し結合した部分構成成分)が結合した高分子である。ブロックコポリマーを構成するブロックは、2種類であってもよく、3種類以上であってもよい。
本実施形態においては、ブロックコポリマーを構成する複数種類のブロックは、ポリスチレン又はポリスチレン誘導体からなるブロックと、相分離が起こる組み合わせであれば特に限定されるものではないが、互いに非相溶であるブロック同士の組み合わせであることが好ましい。また、ブロックコポリマーを構成する複数種類のブロック中の少なくとも1種類のブロックからなる相が、他の種類のブロックからなる相よりも、容易に選択的に除去可能な組み合わせであることが好ましい。
また、ブロックコポリマーを構成する複数種類のブロック中の少なくとも1種類のブロックからなる相が、他の種類のブロックからなる相よりも、容易に選択的に除去可能な組み合わせであることが好ましい。容易に選択的に除去可能な組み合わせとしては、エッチング選択比が1よりも大きい、1種又は2種以上のブロックとが結合したブロックコポリマーが挙げられる。
【0059】
本発明において「ブロックコポリマーの周期」とは、相分離構造が形成された際に観察される相構造の周期を意味し、互いに非相溶である各相の長さの和である。具体的には、相分離構造が基板表面に対して垂直なシリンダー構造を形成する場合、ブロックコポリマーの周期は、隣接する2つのシリンダー構造の中心間距離(ピッチ)である。
ブロックコポリマーの周期は、重合度N、及び、フローリー−ハギンズ(Flory−Huggins)の相互作用パラメーターχ、などの固有重合特性によって決まる。すなわち、「χN」が大きくなるほど、ブロックコポリマーにおける異なるブロック間の相互反発は大きくなる。このため、χN>10(以下「強度分離限界点」という)のときには、ブロックコポリマーにおける異種類のブロック間の反発が大きく、相分離が起こる傾向が強くなる。そして、強度分離限界点においては、ブロックコポリマーの周期は、およそN
2/3χ
1/6となる。つまり、ブロックコポリマーの周期は、分子量Mnと、異なるブロック間の分子量比と、に相関する重合度Nに比例する。従って、用いるブロックコポリマーの組成及び総分子量を調整することにより、ブロックコポリマーの周期を調節することができる。
【0060】
ブロックコポリマーとしては、例えば、ポリスチレン又はポリスチレン誘導体からなるブロックと、(α置換)アクリル酸エステルから誘導される構成単位のブロックと、を結合させたブロックコポリマー;ポリスチレン又はポリスチレン誘導体からなるブロックと、(α置換)アクリル酸から誘導される構成単位のブロックと、を結合させたブロックコポリマー;ポリスチレン又はポリスチレン誘導体からなるブロックと、シロキサン又はその誘導体から誘導される構成単位のブロックと、を結合させたブロックコポリマー等が挙げられる。
【0061】
ポリスチレン誘導体としては、たとえば、ポリ−α−メチルスチレン、ポリ−2−メチルスチレン、ポリ−3−メチルスチレン、ポリ−4−メチルスチレン、ポリ−4−t−ブチルスチレン、ポリ−4−n−オクチルスチレン、ポリ−2,4,6−トリメチルスチレン、ポリ−4−メトキシスチレン、ポリ−4−t−ブトキシスチレン、ポリ−4−ヒドロキシスチレン、ポリ−4−ニトロスチレン、ポリ−3−ニトロスチレン、ポリ−4−クロロスチレン、ポリ−4−フルオロスチレン、ポリ−4−アセトキシビニルスチレン、ポリ−4−ビニルベンジルクロリド、ポリ−1−ビニルナフタレン、ポリ−4−ビニルビフェニル、ポリ−1−ビニル−2−ピロリドン、ポリ−9−ビニルアントラセン、ポリ−ビニルピリジン等が挙げられる。
【0062】
(α置換)アクリル酸は、アクリル酸、又は、アクリル酸におけるα位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されているもの、の一方又は両方を意味する。該置換基としては、炭素数1〜5のアルキル基等が挙げられる。
(α置換)アクリル酸としては、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸などが挙げられる。
【0063】
(α置換)アクリル酸エステルは、アクリル酸エステル、又は、アクリル酸エステルにおけるα位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されているもの、の一方又は両方を意味する。該置換基としては、炭素数1〜5のアルキル基等が挙げられる。
(α置換)アクリル酸エステルとしては、たとえば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ノニル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸アントラセン、アクリル酸グリシジル、アクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシルメタン、アクリル酸プロピルトリメトキシシラン等のアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸アントラセン、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシルメタン、メタクリル酸プロピルトリメトキシシラン等のメタクリル酸エステルなどが挙げられる。
これらのなかでも、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸t−ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸t−ブチルが好ましい。
【0064】
ブロックコポリマーの数平均分子量(Mn)(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算基準)は、150000以上である。本発明においては、160000以上であることが好ましく、180000以上であることがより好ましい。
またブロックコポリマーの分散度(Mw/Mn)は1.0〜3.0が好ましく、1.0〜1.5がより好ましく、1.0〜1.3がさらに好ましい。なお、Mwは質量平均分子量を示す。
【0065】
<ブロックコポリマー組成物>
本発明の第2の態様は、ポリスチレン又はポリスチレン誘導体からなるブロックと、他の1種類以上のブロックとが結合したブロックコポリマーと、有機溶剤成分(S)とを含有するブロックコポリマー組成物であって、前記有機溶剤成分(S)のハンセン溶解度パラメータと前記ポリスチレン又はポリスチレン誘導体のハンセン溶解度パラメータとの相互作用間距離Ra
PS(MPa
1/2)の値が、以下の式(1)を満たすことを特徴とする、ブロックコポリマー組成物である。
【0067】
本発明の第2の態様のブロックコポリマー組成物に関する説明は、前記本発明の第1の態様の、相分離構造を含む構造体の製造方法において説明した、ブロックコポリマー組成物に関する説明と同様である。
【0068】
<有機溶剤>
本発明の第3の態様は、支持体上に、ポリスチレン又はポリスチレン誘導体からなるブロックと、他の1種類以上のブロックとが結合したブロックコポリマーと、有機溶剤成分(S)とを含有するブロックコポリマー組成物を塗布し、ブロックコポリマーを含む層を形成する工程Aと、前記ブロックコポリマーを含む層を相分離させる工程Bとを含む、相分離構造を含む構造体の製造方法に用いられるブロックコポリマー組成物用の有機溶剤であって、前記有機溶剤のハンセン溶解度パラメータと前記ポリスチレン又はポリスチレン誘導体のハンセン溶解度パラメータとの相互作用間距離Ra
PS(MPa
1/2)の値が、以下の式(1)を満たすことを特徴とする、ブロックコポリマー組成物に用いる有機溶剤である。
【0070】
本発明の第3の態様の有機溶剤に関する説明は、前記本発明の第1の態様の、相分離構造を含む構造体の製造方法において説明した、ブロックコポリマー組成物が含有する有機溶剤に関する説明と同様である。
【実施例】
【0071】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0072】
<ブロックコポリマー組成物の調製>
(実施例1〜3、参考例1)
ポリスチレン(PS)とポリメタクリル酸メチル(PMMA)とのブロックコポリマー(Mw146000、PS/PMMA組成比(モル比)74.1/25.9、分散度1.01、周期47.2nm)を表3に示す各溶剤に溶解し、実施例1〜3、参考例1のブロックコポリマー組成物を調製した。
下記表3中に、各溶剤と、ポリスチレンとのハンセン溶解度パラメーターの相互作用間距離Ra
PS(MPa
1/2)の値を「Ra
PS」として記載する。
【0073】
【表3】
【0074】
<相分離構造を含む構造体の製造方法>
≪工程A0≫
8インチのシリコンウェーハ上に、中性化膜として、下記樹脂1(l/m/n=80/14/6からなるMw:44000、Mw/Mn:1.73の共重合体)を、PGMEAに0.4質量%の濃度で溶解し、調製した樹脂組成物をスピンナーを用いて塗布し、250℃、1分間ベークして乾燥させることにより、膜厚10nmの中性化膜を支持体上に形成した。その後、PMシンナーを用いて、ウェーハと未密着な部位を溶剤剥離し、中性化膜をウェーハ上に得た。
【0075】
【化1】
【0076】
≪工程A≫
次いで、中性化膜上に、上記で得た実施例1〜3、参考例1のブロックコポリマー組成物(2.8質量%)をそれぞれスピンコート(回転数1500rpm、60秒)し、ブロックコポリマーを含む層を形成した。ブロックコポリマー組成物の塗布量は3ccとした。
【0077】
≪工程B≫
上記工程Aで形成した層をベーク(100℃、60秒間)後、前記層が形成された支持体を、窒素気流下、210℃又は230℃で300秒間加熱させてアニールすることにより、相分離構造を形成させた。
【0078】
その後、ブロックの選択的除去処理を行い、ホールパターンを形成した。
【0079】
[開口率]
形成されたホールパターンを画像解析し、開口率を求めた。その結果を「開口率(%)」として、表3に記載する。
【0080】
[パターン寸法の面内均一性(CDU/CD)の評価]
形成したホールパターンについて、パターン寸法の面内均一性(CDU/CD)を評価した。
ホールパターン中の100個のホールを、測長SEM(走査型電子顕微鏡、加速電圧300V、商品名:S−9380、日立ハイテクノロジーズ社製)により、CHパターン上空から観察し、各ホールのホール直径(CD;nm)を測定した。そして、その測定結果から算出した標準偏差(σ)の3倍値(3σ)を求め、「CDU(nm)」とした。
このようにして求められる3σは、その値が小さいほど、該レジスト膜に形成された複数のホールの寸法(CD)均一性が高いことを意味する。
このようにして得られた「CDU(nm)」を、各ホールのホール直径(CD;nm)で除した結果を「CDU/CD」として、表3に記載する。
【0081】
[相分離性能]
上記の方法で算出した開口率と、CDU/CDの値を考慮し、「相分離性能」として、「○」又は「△」で評価した。その結果を表3に記載する。「○」又は「△」は以下の評価内容を意味する。
○:開口率及びCDU/CDの結果が共に良好であった。
△:開口率又はCDU/CDのいずれか一方の結果が良好であった。
【0082】
上記結果に示したとおり、ポリスチレンとのハンセン溶解度パラメーターの相互作用間距離Ra
PSの値が4.1以上9以下の範囲にある、酢酸ブチル、メチルアミルケトン、3−メトキシ−ブチルアセテートを溶剤に採用したブロックコポリマー溶液は、PGMEAを溶剤として採用した場合と、同等又はそれ以上の相分離性能を有していた。
【0083】
<溶剤通液試験>
表4に示す各溶剤を、ポアサイズ35nmの超高分子量ポリエチレン(UPE)製の濾過フィルターを用いて減圧濾過し(窒素加圧下、0.04MPa)、表4に示す積算流量(単位:LR)を通液後にサンプリングし、各溶剤のフィルターに対するダメージを評価した。
下記表4中に、各溶剤と、ポリエチレンとのハンセン溶解度パラメーターの相互作用間距離Ra
PE(MPa
1/2)の値を「Ra
PE」として記載する。
【0084】
[パーティクル評価]
通液後の表4に示す各溶剤について、パーティクル評価を行った。直径300mmのシリコンウェーハ上(ウエハー1及びウエハー2)に、通液後の表2に示す各溶剤をそれぞれスピンナーを用いて塗布し(1500rpm、1分間)、ホットプレート上で80℃、60秒間ベークした。その後、シリコンウェーハ上のパーティクルを、KLAテンコール社製の表面観察装置SURFSCANSP2で観察し、パーティクル数とした。その結果を「パーティクル数(個)」として表4に示す。
表4中、「over load」は、フィルターからの溶出に起因するパーティクル数が多く、数えきれなかったことを意味する。
フィルターダメージの評価として、フィルターからの溶出に起因するパーティクル数が少なかったものを「○」、フィルターからの溶出に起因するパーティクル数が多かったものを「×」として、表4に記載する。
【0085】
【表4】
【0086】
上記結果に示したとおり、3−メトキシ−ブチルアセテートは、フィルターの通液後のパーティクル数が少なく、PGMEAと同程度に良好であった。