【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度、独立行政法人情報通信研究機構「高度通信・放送研究開発委託研究/革新的光ファイバの実用化に向けた研究開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図面を参照して本発明に係るマルチコアファイバの製造方法の実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、各図面において、同一または対応する要素には適宜同一の符号を付している。
【0017】
トレンチ型プロファイルを有するマルチコアファイバは、中心コア部と、中心コア部の外周に形成されており、中心コア部の最大屈折率よりも低い屈折率を有する内周コア層と、内周コア層の外周に形成されており、内周コア層よりも屈折率が低い外周コア層を備えるコア部を有する。通常、中心コア部はゲルマニアなどの屈折率を高めるドーパントが添加された石英系ガラスからなり、内周コア層は屈折率調整用のドーパントが添加されていない純石英ガラスからなり、外周コア層はフッ素などの屈折率を低めるドーパントが添加された石英系ガラスからなる。なお、コア部の外周には純石英ガラスからなり、中心コア部の最大屈折率よりも低く外周コア層よりも高い屈折率を有するクラッド部が形成されている。
【0018】
また、マルチコアファイバを製造する場合には、スタックアンドドロー法と穿孔法とがよく用いられる。スタックアンドドロー法は、コア部を形成するためのコア母材と、クラッド部の一部を形成するためのガラス棒を、クラッド部の一部を形成するためのガラス管(ジャケット管)内に束ねることで複雑な構造を有する光ファイバ母材を形成し、その光ファイバ母材を線引きすることでマルチコアファイバを得る製造方法である。また、穿孔法は、クラッド部を形成するためのクラッド母材に孔を穿設し、そこにコア母材を挿入して光ファイバ母材を形成し、その光ファイバ母材を線引きすることでマルチコアファイバを得る製造方法である。
【0019】
ここで、従来技術では、内周コア層の外周にVAD(Vapor phase Axial Deposition)法やOVD法(Outside Vapor phase Deposition)やMCVD(Modified Chemical Vapor Deposition)法などを用いて多孔質ガラス層を形成し、これをガラス化することで外周コア層を形成していた。以下、説明を簡易にするためにこの多孔質ガラス層も外周コア層と記載する場合がある。しかし、この場合、外周コア層はフッ素が添加されるため粘度が低くなるので、内周コア層と外周コア層とでは粘度が異なる。その結果、以下の問題が発生する場合がある。(1)外周コア層は、隣接する層とは粘度が異なるため、母材加工時や線引時に発生する歪み等で光ファイバ母材やマルチコアファイバが割れてしまう。(2)外周コア層を形成する際には、外周コア層となる多孔質ガラス層をOVD法等により堆積させてからその後のガラス化工程などでフッ素を気相で導入する場合は、フッ素を導入するのが外周面または内周面からだけになるので、フッ素を径方向で均一にドープできない、あるいは均一にドープするためには多孔質ガラス層の密度制御が必要であったり、時間をかけてフッ素の導入とをしなくてはならない。そのため、所望の屈折率プロファイルを得るのが困難である。(3)異種コアマルチコアファイバを作製する場合は、異種コアの種類の数だけ製造の条件だしを行わなければならない。特に光ファイバ母材が大型化してきた際には、(1)や(2)の問題はより大きな問題となる。
【0020】
これに対して、以下で説明する本発明の実施の形態では、コア母材の他に別途外周コア層を形成するための外周コア層形成管を準備し、コア母材を外周コア層形成管に収容することで光ファイバ母材を組み立てるので、上記課題を解決できることとなる。
【0021】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る製造方法により製造するマルチコアファイバの模式的な断面(
図1(a))およびコア部の屈折率プロファイル(
図1(b))を示す図である。マルチコアファイバ10は、石英系ガラスからなり、複数(本実施の形態1では7つ)のコア部1と、複数のコア部1の外周に形成されているクラッド部2とを備えている。7つのコア部1は、マルチコアファイバ10の長手方向に垂直な断面において、正六角形の各頂点および中心に位置するように配置されている。また、マルチコアファイバ10は、各コア部1の屈折率プロファイルが同一である同種コアマルチコアファイバである。
【0022】
また、コア部1は、中心コア部1aaと、中心コア部1aaの外周に形成されている内周コア層1abとからなる中心コア領域1aと、中心コア領域1aの外周に形成されている外周コア層1bとを有している。
図1(b)の屈折率プロファイルP1が示すように、外周コア層1bは中心コア領域1aの最大屈折率よりも低い屈折率を有する。また、内周コア層1abは中心コア部1aaの最大屈折率よりも低くかつ外周コア層1bの屈折率よりも高い屈折率を有する。クラッド部2はコア部1の最大屈折率よりも低い屈折率を有する。また、内周コア層1abとクラッド部2の屈折率は略等しい。このように、コア部はトレンチ型の屈折率プロファイルP1を有する。外周コア層1bはトレンチ層とも呼ばれる。中心コア部1aaの直径はaであり、内周コア層1abの外径はbであり、外周コア層1bの外径はcである。また、Δ1はクラッド部2に対する中心コア部1aaの最大屈折率の部分の比屈折率差であり、Δ3はクラッド部2に対する外周コア層1bの最小比屈折率差である。
【0023】
中心コア部1aaは屈折率を高めるドーパントであるゲルマニアが添加された石英系ガラスからなり、内周コア層1abおよびクラッド部2は屈折率調整用のドーパントが添加されていない純石英ガラスからなり、外周コア層1bは屈折率を低めるドーパントであるフッ素が添加された石英系ガラスからなる。なお、フッ素は石英ガラスの粘度を低下させる作用を有するため、外周コア層1bは外周コア層1bに隣接する領域(内周コア層1abおよびクラッド部2)の粘度よりも低い粘度を有する。
【0024】
つぎに、本実施の形態1に係るマルチコアファイバの製造方法について説明する。
図2は、本実施の形態1に係る製造方法のフロー図である。本実施の形態1に係るマルチコアファイバの製造方法は、部材準備工程と、光ファイバ母材組立工程と、線引工程とを含む。
【0025】
まず、ステップS101において、部材準備工程を行う。
図3は、部材準備工程の説明図である。部材準備工程では、
図3(a)に示すように、中心コア領域1aを形成するための円柱形状のコア母材101と、コア母材101を収容できる内径を有する、外周コア層1bを形成するための外周コア層形成管102(第1の管状部材)と、外周コア層形成管102を収容できる内径の孔(内部)を有する、クラッド部2の少なくとも一部を形成するための管状のクラッド部形成部材103と、外周コア層形成管102を収容できる内径を有し、かつクラッド部形成部材103に収容できる外径を有し、クラッド部の少なくとも他の一部を形成するためのクラッド部形成管104(第2の管状部材)と、クラッド部2のさらに他の一部を形成するとともに隙間を埋めるためのガラスロッド105と、を準備する。クラッド部形成部材103はいわゆるジャケット管とも呼ばれる部材である。
【0026】
外周コア層形成管102については、内周側および外周側から気相によりフッ素を添加して形成した石英ガラス管を準備する。コア母材101、外周コア層形成管102、クラッド部形成管104はそれぞれ7つ準備し、クラッド部形成部材103は1つ準備し、ガラスロッド105は外径が異なるものを複数準備する。なお、準備する各部材は、形成すべき対象と同じ材料からなる。たとえば、クラッド部2の一部を形成するためのクラッド部形成管104は純石英ガラスからなる。
【0027】
また、
図3(b)に示すように、コア母材101は、中心コア部1aaを形成するための中心コア部101aと、内周コア層1abを形成するためのコア層101bとを備えている。コア母材101の屈折率プロファイルP1aはコア部1の中心コア領域1aの屈折率プロファイルP1と同じに設定されており、単峰型である。
【0028】
つづいて、ステップS102において、光ファイバ母材組立工程を行う。
図4は、光ファイバ母材組立工程の説明図である。光ファイバ母材組立工程では、コア母材101を外周コア層形成管102に収容し、外周コア層形成管102をクラッド部形成管104に収容し、収容体を形成する。この収容体を7つ用意して六方最密状に束ね、クラッド部形成部材103の孔(内部)に収容する。そして、クラッド部形成部材103の孔(内部)の隙間を埋めるように適当な外径、個数のガラスロッド105を挿入する。これにより、光ファイバ母材110が組み立てられる。すなわち、本光ファイバ母材組立工程では、スタックアンドドロー法のスタック工程により光ファイバ母材110を組み立てる。なお、組立の順番は上記に記載の順番に限られない。
【0029】
つづいて、ステップS103において、線引工程を行う。線引工程は、スタックアンドドロー法のドロー工程に相当する。線引工程は、従来公知のように、光ファイバ母材110を線引炉にセットし、光ファイバ母材110の下端を加熱溶融し、光ファイバ母材110からマルチコアファイバを引き出すことにより行うことができる。これにより、
図1に示すマルチコアファイバ10を製造することができる。
【0030】
本実施の形態1に係る製造方法では、外周コア層をコア母材の部分に対して多孔質ガラス層の堆積により形成するのではなく、外周コア層形成管102を準備し、コア母材101を外周コア層形成管102に収容するようにしている。さらに、外周コア層形成管102をクラッド部形成管104に収容するようにしている。これにより、光ファイバ母材110において、外周コア層形成管102と光ファイバ母材110内で外周コア層形成管102に隣接する領域(コア母材101、クラッド部形成管104)とは密着せず、間隙が形成される。そのため、線引時には粘度の低い外周コア層形成管102がその内周側にも外周側にも流動的に動くことができるので、従来のように堆積させるよりも、線引時の熱による形状の歪みが抑制される。その結果、マルチコアファイバ10の割れが防止または抑制される。また、粘度の低い外周コア層形成管102が粘度の高い層に挟まれているので、変形が抑制される。その結果、マルチコアファイバ10の良品率が向上し、製造性が高くなる。
【0031】
特に、
図1における比屈折率差Δ2が−0.2%以下となるように外周コア層形成管102にフッ素が添加されているときに、クラッド部形成管104の厚さを、コア母材101の外径と外周コア層形成管102の厚さとの合計の1.2倍以上とすることで、クラッド部形成管104が、光ファイバ母材110の構造が崩れるのを抑制する役割を果たし、粘度の低い外周コア層1bに起因して線引時に発生するおそれのある構造の歪みをさらに緩和できる。なお、クラッド部形成管104の厚さは比屈折率差Δ2を小さくするときほど大きくすることが好ましい。実現可能なフッ素のドープ量を勘案すると、比屈折率差Δ2の下限は−0.7%程度である。
【0032】
また、外周コア層形成管102は別途準備するので、その製造時に、管の外周側及び内周側の両方からフッ素を導入できる。そのため、従来のようにたとえば外周側だけからフッ素を導入する場合には、
図5に破線で示すように、外周コア層1bにおいて外周側ではフッ素添加量が多いために屈折率が低いが、内周側に向かって添加量が少なくなるので屈折率が徐々に高くなる屈折率プロファイルとなる場合がある。これに対して、本実施の形態1によれば、外周コア層1bにおけるフッ素添加量および屈折率が径方向で均一となり、所望の屈折率プロファイルを容易に実現できる。
【0033】
以上説明したように、本実施の形態1によれば、所望の屈折率プロファイルを容易に実現でき、かつ製造性が高いマルチコアファイバの製造方法を実現できる。
【0034】
(実施の形態2)
つぎに、本発明の実施の形態2について説明する。本実施の形態2に係るマルチコアファイバの製造方法は、実施の形態1と同様に、部材準備工程と、光ファイバ母材組立工程と、線引工程とを含むが、穿孔法を用いている点が異なる。
【0035】
図6は、実施の形態2における部材準備工程の説明図である。部材準備工程では、コア母材101と、外周コア層形成管102と、クラッド部形成部材103Aと、を準備する。クラッド部形成部材103Aは、純石英ガラスからなる円柱状の部材に、長手方向にそって外周コア層形成管102を収容できる内径を有する円形の7つの孔103Aaを形成したものである。なお、7つの孔103Aaはクラッド部形成部材103Aの長手方向に垂直な断面において、正六角形の各頂点および中心に位置するように配置されている。このような孔103Aaは穿孔法により形成することができる。
【0036】
図7は、光ファイバ母材組立工程の説明図である。光ファイバ母材組立工程では、コア母材101を外周コア層形成管102に収容し、収容体を形成する。この収容体を7つ用意して、それぞれを、クラッド部形成部材103Aの各孔103Aaに収容する。これにより、光ファイバ母材110Aが組み立てられる。その後、実施の形態1と同様に光ファイバ母材110Aに対して線引工程を行うことにより、
図1に示すマルチコアファイバ10を製造することができる。
【0037】
本実施の形態2によれば、実施の形態1と同様に、所望の屈折率プロファイルを容易に実現でき、かつ製造性が高いマルチコアファイバの製造方法を実現できる。
【0038】
(実施の形態3)
つぎに、本発明の実施の形態3について説明する。本実施の形態3に係るマルチコアファイバの製造方法は、実施の形態1と同様に、部材準備工程と、光ファイバ母材組立工程と、線引工程とを含み、スタックアンドドロー法を用いるが、クラッド部形成管104を用いない点が異なる。
【0039】
図8は、実施の形態3における部材準備工程の説明図である。部材準備工程では、コア母材101と、外周コア層形成管102Bと、クラッド部形成部材103と、ガラスロッド105と、を準備する。ここで、外周コア層形成管102Bとして、たとえば内径が外周コア層形成管102と同じで外径がクラッド部形成管104と同じものを準備する。
【0040】
図9は、光ファイバ母材組立工程の説明図である。光ファイバ母材組立工程では、コア母材101を外周コア層形成管102Bに収容し、収容体を形成する。この収容体を7つ用意して六方最密状に束ね、クラッド部形成部材103の孔(内部)に収容する。そして、クラッド部形成部材103の孔(内部)の隙間を埋めるように適当な外径、個数のガラスロッド105を挿入する。これにより、光ファイバ母材110Bが組み立てられる。このように、光ファイバ母材110Bでは、7つの外周コア層形成管102Bが互いに隣接するように配置される。その後、実施の形態1と同様に光ファイバ母材110Bに対して線引工程を行うことにより、
図10に示す構造のマルチコアファイバ10Bを製造することができる。
【0041】
マルチコアファイバ10Bは、石英系ガラスからなり、複数(7つ)のコア部1Bと、複数のコア部1Bの外周に形成されているクラッド部2とを備えている。7つのコア部1Bは、マルチコアファイバ10Bの長手方向に垂直な断面において、正六角形の各頂点および中心に位置するように配置されている。また、マルチコアファイバ10Bは、各コア部1Bの屈折率プロファイルが同一である同種コアマルチコアファイバである。
【0042】
また、コア部1Bは、中心コア部1aaと、中心コア部1aaの外周に形成されている内周コア層1abとからなる中心コア領域1aと、中心コア領域1aの外周に形成されている外周コア層1Bbとを有している。
図1、10を比較してわかるように、マルチコアファイバ10Bは、7つの外周コア層1Bbが互いに隣接している点で、マルチコアファイバ10とは異なる。
【0043】
本実施の形態3によれば、実施の形態1、2と同様に、所望の屈折率プロファイルを容易に実現でき、かつ製造性が高いマルチコアファイバの製造方法を実現できる。
【0044】
(実施の形態4)
つぎに、本発明の実施の形態4について説明する。本実施の形態4に係るマルチコアファイバの製造方法は、実施の形態2と同様に、部材準備工程と、光ファイバ母材組立工程と、線引工程とを含み、穿孔法を用いるが、屈折率が互いに異なる外周クラッド層形成管を用いて異種コアマルチコアファイバを製造する点が異なる。
【0045】
図11は、本実施の形態4に係る製造方法の説明(
図11(a))およびこれにより製造したマルチコアファイバの模式的な断面(
図11(b))を示す図である。
【0046】
図11(a)に示すように、部材準備工程では、7つのコア母材101と、互いにフッ素の添加量が異なることにより屈折率(および粘度)が異なる3種類の外周コア層形成管102Ca、102Cb、102Cc(それぞれ2つ、3つ、1つ)と、クラッド部形成部材103Aと、を準備する。そして、コア母材101を各外周コア層形成管102Ca、102Cb、102Ccに収容し、収容体を形成する。この収容体のそれぞれを、クラッド部形成部材103Aの各孔103Aaに収容する。このとき、外周コア層形成管102Ccを用いた収容体をクラッド部形成部材103Aの中心の孔103Aaに収容し、外周コア層形成管102Ca、102Cbを用いた収容体は、外周の各孔103Aaに交互に収容する。これにより、光ファイバ母材110Cが組み立てられる。その後、実施の形態1と同様に光ファイバ母材110Cに対して線引工程を行うことにより、
図10(b)に示す構造のマルチコアファイバ10Cを製造することができる。
【0047】
マルチコアファイバ10Cは、石英系ガラスからなり、複数のコア部1Ca、1Cb、1Ccと、その外周に形成されているクラッド部2とを備えている。コア部1Ca、1Cb、1Ccは、マルチコアファイバ10Cの長手方向に垂直な断面において、正六角形の各頂点および中心に位置するように配置されており、特に、コア部1Ccが中心、コア部1Ca、1Cbが交互に正六角形の各頂点に配置されている。ここで、コア部1Ca、1Cb、1Ccはいずれもトレンチ型の屈折率プロファイルを有するが、上述したようにそれぞれ屈折率が互いに異なる外周コア層形成管102Ca、102Cb、102Ccを用いているため、比屈折率差Δ2の値が異なる。このように、マルチコアファイバ10Cは、コア部1Ca、コア部1Cb、コア部1Ccの屈折率プロファイルが互いに異なる異種コアマルチコアファイバである。
【0048】
本実施の形態4によれば、実施の形態1〜3と同様に、所望の屈折率プロファイルを容易に実現でき、かつ製造性が高いマルチコアファイバの製造方法を実現できる。
さらに、本実施の形態4では、コア母材101としては1種類のコア母材を準備しておき、屈折率が互いに異なる外周コア層形成管102Ca、102Cb、102Ccを準備するだけで、容易に異種コアマルチコアファイバを製造できる。なお上述したように、従来この種の異種コアマルチコアファイバを製造する場合には、異種の外周コア層を形成するために、製造の条件だしを異種コアの種類の数だけ行わなければならなかったが、本実施の形態4によれば、従来と比較してきわめて容易に異種コアマルチコアファイバを製造できる。
【0049】
(実施の形態5)
つぎに、本発明の実施の形態5について説明する。本実施の形態5に係るマルチコアファイバの製造方法は、実施の形態2と同様に、部材準備工程と、光ファイバ母材組立工程と、線引工程とを含み、穿孔法を用いるが、中心に位置するコア部だけが単峰型屈折率プロファイルを有する異種コアマルチコアファイバを製造する点が異なる。
【0050】
図12は、本実施の形態5に係る製造方法の説明(
図12(a))およびこれにより製造したマルチコアファイバの模式的な断面(
図12(b))を示す図である。
【0051】
図12(a)に示すように、部材準備工程では、7つのコア母材101と、6つの外周コア層形成管102と、クラッド部形成部材103Dと、を準備する。クラッド部形成部材103Dは、純石英ガラスからなる円柱状の部材に、長手方向にそって外周コア層形成管102を収容できる内径を有する円形の6つの孔103Daと、コア母材101を収容できる内径を有する円形の1つの孔103Dbを形成したものである。孔103Da、Dbは、クラッド部形成部材103Dの長手方向に垂直な断面において、孔103Daが正六角形の各頂点、孔103Dbが正六角形の中心に位置するように配置されている。そして、6つのコア母材101を外周コア層形成管102に収容し、収容体を形成する。この収容体のそれぞれを、クラッド部形成部材103Dの各孔103Daに収容する。また、残りのコア母材101は外周コア層形成管102に収容することなく孔103Dbに収容する。これにより、コア母材101の外周を囲むようにコア母材101および外周コア層形成管102が配置され、光ファイバ母材110Dが組み立てられる。その後、実施の形態1と同様に光ファイバ母材110Dに対して線引工程を行うことにより、
図12(b)に示す構造のマルチコアファイバ10Dを製造することができる。
【0052】
マルチコアファイバ10Dは、石英系ガラスからなり、複数のコア部1Da、1Dbと、その外周に形成されているクラッド部2とを備えている。コア部1Da、Dbは、マルチコアファイバ10Dの長手方向に垂直な断面において、正六角形の各頂点および中心に位置するように配置されており、特に、コア部1Dbが中心、コア部1Daが正六角形の各頂点に配置されている。ここで、コア部1Daはいずれもトレンチ型の屈折率プロファイルを有するが、中心のコア部1Dbは単峰型の屈折率プロファイルを有している(
図3(b)参照)。このように、マルチコアファイバ10Dは、コア部1Da、コア部1Dbの屈折率プロファイルが互いに異なる異種コアマルチコアファイバである。
【0053】
本実施の形態5によれば、実施の形態1〜4と同様に、所望の屈折率プロファイルを容易に実現でき、かつ製造性が高いマルチコアファイバの製造方法を実現できる。さらに、本実施の形態5では、コア母材101としては1種類のコア母材を準備しておくことで、容易に1つのコア部だけが単峰型屈折率プロファイルを有する異種コアマルチコアファイバを製造できる。なお、本実施の形態5では、中心に単峰型の屈折率プロファイルを有するコア部が配置されているが、単峰型の屈折率プロファイルを有するコア部の配置位置は特に限定されない。
【0054】
また、
図13に実施の形態6として示すように、
図12(b)に示すマルチコアファイバ10Dは、純石英ガラスからなる円柱状の部材の中心に単峰型の屈折率プロファイルを有するコア部103Ebが形成され、かつその外周を囲むように長手方向にそって外周コア層形成管102を収容できる内径を有する円形の6つの孔103Eaとが形成されたクラッド部形成部材103Eを準備し、この各孔103Eaにコア母材101と外周コア層形成管102とからなる収容体を収容し、光ファイバ母材110Eを組立て、これを線引きすることによっても製造することができる。
【0055】
(実施の形態7)
つぎに、本発明の実施の形態7について説明する。本実施の形態7に係るマルチコアファイバの製造方法は、実施の形態2と同様に、部材準備工程と、光ファイバ母材組立工程と、線引工程とを含み、穿孔法を用いるが、外周コア層の屈折率が他のコア部とは異なるコア部を含むようにして、マーカとして用いる点が異なる。
【0056】
図14は、本実施の形態7に係る製造方法の説明図である。
図14に示すように、部材準備工程では、7つのコア母材101と、互いにフッ素の添加量が異なることにより屈折率(および粘度)が異なる2種類の外周コア層形成管102Ca、102Cb(それぞれ1つ、6つ)と、クラッド部形成部材103Aと、を準備する。そして、コア母材101を各外周コア層形成管102Ca、102Cbに収容し、収容体を形成する。この収容体のそれぞれを、クラッド部形成部材103Aの各孔103Aaに収容する。このとき、外周コア層形成管102Caを用いた収容体をクラッド部形成部材103Aの外周の孔103Aaの一つに収容する。これにより、光ファイバ母材110Fが組み立てられる。その後、実施の形態1と同様に光ファイバ母材110Fに対して線引工程を行うことにより、マルチコアファイバを製造することができる。
【0057】
製造されたマルチコアファイバは、
図1に示すマルチコアファイバ10と同様の構成を有するが、外周コア層形成管102Caを用いて形成したコア部については、たとえばマルチコアファイバの断面を顕微鏡等で観測したときに、屈折率の差異により、外周コア層形成管102Cbを用いて形成した他のコア部とは異なる見え方をする。その結果、外周コア層形成管102Caを用いて形成したコア部は、マルチコアファイバにおいてコア部の位置関係を特定するマーカの機能を有するものとなる。
【0058】
本実施の形態7によれば、実施の形態1〜6と同様に、所望の屈折率プロファイルを容易に実現でき、かつ製造性が高いマルチコアファイバの製造方法を実現できる。さらに、本実施の形態7では、特定の外周コア層をマーカとして利用できるので、マーカを形成するための別の部材を使用しなくてよいので、使用部材点数を減らすことができ、製造性のさらなる向上と低コスト化が可能になる。
【0059】
(実施の形態8)
つぎに、本発明の実施の形態8について説明する。本実施の形態8に係るマルチコアファイバの製造方法は、実施の形態7と同様に、外周コア層の屈折率が他のコア部とは異なるコア部を含むようにして、マーカとして用いるが、屈折率が互いに異なる2層構造からなるコア部を含むように、外周コア層形成管が2重の管で構成されている点が異なる。
【0060】
図15は、本実施の形態8に係る製造方法の説明図である。
図15に示すように、部材準備工程では、7つのコア母材101と、外周コア層形成管102Cb(6つ)と、コア母材101を収容できる内径を有する第1外周コア層形成管102Fa(内側管状部材)と、第1外周コア層形成管102Faを収容できる内径を有し、第1外周コア層形成管102Faとは異なる屈折率を有する第2外周コア層形成管102Fb(外側管状部材)と、クラッド部形成部材103Aと、を準備する。すなわち、本実施の形態8では、一部の第1の管状部材(第1外周コア層形成管)として、互いに異なる屈折率を有する2つの管状部材である第1外周コア層形成管102Faと第2外周コア層形成管102Fbとを備える第1外周コア層形成管を準備する。そして、コア母材101を各外周コア層形成管102Cb、第1外周コア層形成管102Faに収容し、さらに第1外周コア層形成管102Faは第2外周コア層形成管102Fbに収容し、収容体を形成する。なお、このとき第2外周コア層形成管102Fbの外径を外周コア層形成管102Cbの外径と同じとすると、製造が容易である。この収容体のそれぞれを、クラッド部形成部材103Aの各孔103Aaに収容する。このとき、第1外周コア層形成管102Fa、第2外周コア層形成管102Fbを用いた収容体をクラッド部形成部材103Aの外周の孔103Aaの一つに収容する。これにより、光ファイバ母材110Fが組み立てられる。その後、実施の形態1と同様に光ファイバ母材110Fに対して線引工程を行うことにより、マルチコアファイバを製造することができる。
【0061】
製造されたマルチコアファイバは、
図1に示すマルチコアファイバと同様の構成を有するが、第1外周コア層形成管102Fa、第2外周コア層形成管102Fbを用いて形成したコア部については、たとえばマルチコアファイバの断面を顕微鏡等で観測したときに、屈折率の差異により外周コア層形成管102Cbを用いて形成した他のコア部とは異なる見え方をする。その結果、第1外周コア層形成管102Fa、第2外周コア層形成管102Fbを用いて形成したコア部は、マルチコアファイバにおいてコア部の位置関係を特定するマーカの機能を有するものとなる。
なお、このとき第1外周コア層形成管102Faの屈折率を他の外周コア層形成管102Cbと同じにすることで、他のコア部により近い特性を有するコア部とすることができる。
【0062】
本実施の形態8によれば、実施の形態1〜7と同様に、所望の屈折率プロファイルを容易に実現でき、かつ製造性が高いマルチコアファイバの製造方法を実現できる。さらに、本実施の形態8では、特定の外周コア層をマーカとして利用できるので、マーカを形成するための別の部材を使用しなくてよいので、使用部材点数を減らすことができ、製造性のさらなる向上と低コスト化が可能になる。さらに、第1外周コア層形成管102Fa、第2外周コア層形成管102Fbを用いているので、これらの厚さや屈折率の関係の調整により、外周コア層形成管102Cbを用いた場合と同様の特性を有するコア部とすることもできる。
【0063】
なお、上記実施の形態では、コア部の数はいずれも7つであるが、コア部の数は特に限定されず、たとえば4や19でもよい。
また、ステップS102の光ファイバ母材組立工程の後であって、ステップS103の線引き工程の前に、組み立てられた光ファイバ母材加熱して一体化する一体化工程を設けてもよい。
【0064】
また、上記実施の形態では、外周コア層形成管をトレンチ型屈折率プロファイルのコア部におけるトレンチ層を形成するために使用しているが、本発明の適用範囲はトレンチ型屈折率プロファイルに限られない。たとえば、外周コア層形成管をW型屈折率プロファイルのコア部におけるフッ素をドープしたディプレスト層や、セグメント型屈折率プロファイルのコア部におけるゲルマニアをドープしたセグメント層を形成するために利用できる。ディプレスト層やセグメント層は、これに隣接する領域よりも粘度が低い場合があるので、これらの層に本発明の外周コア層形成管を適用することで、線引時の熱による形状の歪みの抑制効果が得られる。また、外周コア層形成管に添加されるドーパントは、フッ素やゲルマニアに限らず、石英ガラスの粘性を低下させるものであればよく、たとえばアルカリ金属でもよい。また、上記実施の形態に係るマルチコアファイバでは、外周コア層形成管を用いて形成したコア部が複数あるが、少なくとも一つそのようなコア部があればよい。さらには、第1の管状部材はコア部を形成するコア層を形成する場合だけでなく、マルチコアファイバ内において隣接する領域の粘度よりも低い粘度を有する領域を形成する場合にも使用できる。
【0065】
また、上記実施の形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。