(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6581905
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】自動分析装置
(51)【国際特許分類】
G01N 35/10 20060101AFI20190912BHJP
G01N 35/02 20060101ALI20190912BHJP
G01N 35/00 20060101ALI20190912BHJP
G01N 33/86 20060101ALI20190912BHJP
【FI】
G01N35/10 C
G01N35/02 D
G01N35/00 B
G01N33/86
【請求項の数】14
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-550607(P2015-550607)
(86)(22)【出願日】2014年10月22日
(86)【国際出願番号】JP2014078008
(87)【国際公開番号】WO2015079829
(87)【国際公開日】20150604
【審査請求日】2017年7月26日
(31)【優先権主張番号】特願2013-243452(P2013-243452)
(32)【優先日】2013年11月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100091720
【弁理士】
【氏名又は名称】岩崎 重美
(72)【発明者】
【氏名】嶋守 敏之
(72)【発明者】
【氏名】牧野 彰久
(72)【発明者】
【氏名】石沢 雅人
【審査官】
北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−239334(JP,A)
【文献】
特開2008−046031(JP,A)
【文献】
特開2005−257491(JP,A)
【文献】
特開2010−271203(JP,A)
【文献】
特開平08−327507(JP,A)
【文献】
実開昭51−046387(JP,U)
【文献】
特開平07−260797(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00−35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液凝固反応用の試薬の吸引及び吐出を行うノズルと、
前記ノズルの位置を変化させるノズル駆動機構と、
前記ノズルの該試薬の吸引及び吐出、及び前記ノズル駆動機構の動作を制御する制御部と、
試料と該試薬とを混合する反応容器を載置し、該試料の凝固時間を検出する凝固時間検出部と、を備えた自動分析装置において、
前記制御部は、該試料が分注されている前記反応容器の中心位置において、該試薬の吐出を行う高さまで前記ノズルを下降させたのちに、前記ノズルを前記反応容器の内壁の側面に向かって一定量駆動させることで、少なくとも前記ノズルの径が略一定である領域を含む前記ノズルの側面を前記反応容器の内壁の側面に押し付け、前記内壁の側面に押し付けた状態であって、かつ前記ノズルの先端は前記内壁の側面に接触しない状態で、該試薬を前記反応容器に吐出するように、前記ノズルの動作を制御することを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記試薬と前記試料とは、他の撹拌機構を用いることなく、前記試薬が吐出された勢いで撹拌されることを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記凝固時間検出部は温調調節可能な加熱源を備えた検出部であることを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
血液凝固反応用の試薬の吸引及び吐出を行うノズルと、
前記ノズルの位置を変化させるノズル駆動機構と、
前記ノズルの該試薬の吸引及び吐出、及び前記ノズル駆動機構の動作を制御する制御部と、
試料と該試薬とを混合する反応容器を載置し、該試料の凝固時間を検出する凝固時間検出部と、を備えた自動分析装置において、
前記制御部は、該試料が分注されている前記反応容器の中心位置において、該試薬の吐出を行う高さまで前記ノズルを下降させたのちに、前記ノズルを前記反応容器の内壁の側面に向かって一定量駆動させることで、前記ノズルの側面を前記反応容器の内壁の側面に押し付け、前記内壁の側面に押し付けた状態で前記ノズルを上昇させながら該試薬を前記反応容器に吐出するように、前記ノズルの動作を制御することを特徴とする自動分析装置。
【請求項5】
血液凝固反応用の試薬の吸引及び吐出を行うノズルと、
前記ノズルの位置を変化させるノズル駆動機構と、
前記ノズルの該試薬の吸引及び吐出、及び前記ノズル駆動機構の動作を制御する制御部と、
試料と該試薬とを混合する反応容器を載置し、該試料の凝固時間を検出する凝固時間検出部と、を備えた自動分析装置において、
前記凝固時間検出部は温調調節可能な加熱源を備えた検出部であって、
前記制御部は、該試料が分注されている前記反応容器の中心位置において、該試薬の吐出を行う高さまで前記ノズルを下降させたのちに、前記ノズルを前記反応容器の内壁の側面に向かって一定量駆動させることで、前記ノズルの側面を前記反応容器の内壁の側面に押し付け、前記内壁の側面に押し付けた状態で前記ノズルを上昇させながら該試薬を前記反応容器に吐出するように、前記ノズルの動作を制御することを特徴とする自動分析装置。
【請求項6】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記制御部は、前記ノズルを用いて前記試料の吸引及び吐出を行うことを特徴とする自動分析装置。
【請求項7】
請求項6記載の自動分析装置において、
前記制御部は、少なくとも前記ノズルの径が略一定である領域を含む前記ノズルの側面を前記反応容器の該内壁の側面に押し付けた状態で該試料を吐出し、
吐出された該試料の液面より上方かつ該内壁の側面に前記ノズルの側面を押し付けた状態で、該試薬を前記反応容器に吐出することを特徴とする自動分析装置。
【請求項8】
請求項6記載の自動分析装置において、
前記制御部は、前記ノズルの先端を前記反応容器の内壁の底面に接触させて該試料の分注を行い、分注された該試料の液面より上方かつ該内壁の側面に少なくとも前記ノズルの径が略一定である領域を含む前記ノズルの側面を押し付けた状態で該試薬を前記反応容器に吐出することを特徴とする自動分析装置。
【請求項9】
血液凝固反応用の試薬の吸引及び吐出を行うノズルと、
前記ノズルの位置を変化させるノズル駆動機構と、
前記ノズルの該試薬の吸引及び吐出、及び前記ノズル駆動機構の動作を制御する制御部と、
試料と該試薬とを混合する反応容器を載置し、該試料の凝固時間を検出する凝固時間検出部と、を備えた自動分析装置において、
前記凝固時間検出部は、前記反応容器の底面から光を照射する光源と、前記反応容器の側面に配置された対向する2つの検出器とを備え、
前記制御部は、該試料が分注されている前記反応容器の中心位置において、該試薬の吐出を行う高さまで前記ノズルを下降させたのちに、前記ノズルを前記2つの検出器を結ぶ直線に対し垂直な方向である、前記反応容器の内壁の側面に向かって一定量駆動させることで、前記ノズルの側面を前記反応容器の内壁の側面に押し付け、前記内壁の側面に押し付けた状態で該試薬を前記反応容器に吐出するように、前記ノズルの動作を制御することを特徴とする自動分析装置。
【請求項10】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記凝固時間検出部は、複数の反応容器を同時に搭載できる複数の検出部から成り、
前記制御部は、夫々の検出部に搭載された反応容器の中心位置において、前記ノズルを所定高さまで下降させたのちに、前記ノズルを前記反応容器の内壁の側面に向かって一定量駆動させることで、少なくとも前記ノズルの径が略一定である領域を含む前記ノズルの側面を前記反応容器の内壁の側面に押し付けるように、前記ノズルの動作を制御することを特徴とする自動分析装置。
【請求項11】
血液凝固反応用の試薬の吸引及び吐出を行うノズルと、
前記ノズルの位置を変化させるノズル駆動機構と、
前記ノズルの該試薬の吸引及び吐出、及び前記ノズル駆動機構の動作を制御する制御部と、
試料と該試薬とを混合する反応容器を載置し、該試料の凝固時間を検出する凝固時間検出部と、を備えた自動分析装置において、
前記凝固時間検出部は、前記反応容器の底面から光を照射する光源と、前記反応容器の側面に配置された複数の検出器とを備え、
前記制御部は、該試料が分注されている前記反応容器の中心位置において、該試薬の吐出を行う高さまで前記ノズルを下降させたのちに、前記ノズルを当該複数の検出器のうちの2つの検出器を結ぶ直線に対し垂直な方向である、前記反応容器の内壁の側面に向かって一定量駆動させることで、前記ノズルの側面を前記反応容器の内壁の側面に押し付け、前記内壁の側面に押し付けた状態で該試薬を前記反応容器に吐出するように、前記ノズルの動作を制御することを特徴とする自動分析装置。
【請求項12】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記制御部は、
該試薬を前記反応容器に吐出したのちに、前記ノズルを平行移動させ、当該平行移動ののちに上昇させるように、前記ノズルの動作を制御することを特徴とする自動分析装置。
【請求項13】
血液凝固反応用の試薬の吸引及び吐出を行うノズルと、
前記ノズルの位置を変化させるノズル駆動機構と、
前記ノズルの該試薬の吸引及び吐出、及び前記ノズル駆動機構の動作を制御する制御部と、
試料と該試薬とを混合する反応容器を載置し、該試料の凝固時間を検出する凝固時間検出部と、を備えた自動分析装置において、
前記凝固時間検出部は、前記反応容器の底面から光を照射する光源と、前記反応容器の側面に配置された少なくとも2つの検出器とを備え、
前記ノズル駆動機構は、該試料が分注されている前記反応容器の中心位置において、前記ノズルを前記反応容器の所定高さまで下降させたのちに、前記検出器が前記光源からの光を受光する受光軸に対して略垂直となる方向に一定量駆動させ、前記ノズルの側面を前記反応容器の内壁の側面に押し付けることを特徴とする自動分析装置。
【請求項14】
血液凝固反応用の試薬の吸引及び吐出を行うノズルと、
前記ノズルの位置を変化させるノズル駆動機構と、
前記ノズルの該試薬の吸引及び吐出、及び前記ノズル駆動機構の動作を制御する制御部と、
試料と該試薬とを混合する反応容器を搭置し、該試料の凝固時間を検出する凝固時間検出部と、を備えた自動分析装置において、
前記凝固時間検出部は、前記反応容器の底面から光を照射する光源と、前記反応容器の側面に配置された対向する2つの検出器とを備え、
前記制御部は、該試料が分注されている前記反応容器の中心位置において、該試薬の吐出を行う高さまで前記ノズルを下降させたのちに、前記検出器が前記光源からの光を受光する受光軸に対して略垂直となる方向に向かって一定量駆動させることで、前記ノズルの側面を前記反応容器の内壁の側面に押し付け、前記内壁の側面に押し付けた状態で該試薬を前記反応容器に吐出するように、前記ノズルの動作を制御することを特徴とする自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液や尿などの試料に含まれる成分量を分析する自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
試料(以下、サンプルや検体とも言う)に含まれる成分量を分析する分析装置として、光源からの光を、サンプルと試薬とが混合した反応液に照射して得られる単一又は複数の波長の透過光量または散乱光量を測定して、光量と濃度の関係から成分量を算出する自動分析装置が知られている。反応液の反応には、基質と酵素との呈色反応を用いる比色分析と、抗原と抗体との結合による凝集反応を用いるホモジニアス免疫分析の、大きく2種類の分析分野が存在し、後者のホモジニアス免疫分析では、免疫比濁法やラテックス凝集法などの測定方法が知られている。
【0003】
免疫比濁法では、抗体を含有した試薬を用い、サンプルに含まれる測定対象物(抗原)との免疫複合体を生成させ、これらを光学的に検出し、成分量を定量する。ラテックス凝集法では、表面に抗体を感作(結合)させたラテックス粒子を含有した試薬を用い、試料中に含まれる抗原との抗原抗体反応によりラテックス粒子を凝集させ、これらを光学的に検出し、成分量を定量する。さらに、化学発光や電気化学発光による検出技術とB/F分離技術によって、より高感度な免疫分析を行うヘテロジニアス免疫分析装置も知られている。
【0004】
また、血液の凝固能を測定する自動分析装置も存在する。血液は血管内部では流動性を保持して流れているが、一旦出血すると、血漿や血小板中に存在する凝固因子が連鎖的に活性化され、血漿中のフィブリノーゲンがフィブリンに変換され析出することで止血に至る。このような、血液凝固能には血管外に漏れ出した血液が凝固する外因性のものと、血管内で血液が凝固する内因性のものが存在する。血液凝固能(血液凝固時間)に関する測定項目としては、外因系血液凝固反応検査のプロトロンビン時間(PT)、内因系血液凝固反応検査の活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)と、フィブリノーゲン量(Fbg)等が存在する。
【0005】
これらの項目は、血液の凝固反応を安定して進行させるために、サンプルと試薬の混合液を十分撹拌する必要がある。そこで、自動分析装置で一般的な撹拌方法として特許文献1では、被撹拌物に撹拌棒を浸漬させて撹拌を行う方法が示されている。また、特許文献2では、サンプルと試薬の撹拌を、超音波を用いて行うことで非接触での撹拌を実現し、被撹拌物の成分を次の被撹拌物へ持ち込むリスクを無くしている。また、サンプルに試薬を添加する際、混合液中に気泡が混入すると、この気泡が外乱となり正確な光学的測定を行うことが出来なくなり、血液の凝固能の測定精度が低下してしまう恐れがある。そこで、特許文献3では、サンプルへ試薬を分注する際に混合液中に気泡を混入させない方法として、サンプルに試薬を分注する際、ノズルの先端が略円弧形状の分注機構を用いることで、試薬を分注する際に試薬が反応容器の内壁に沿って落下させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−57249号公報
【特許文献2】特開2003−035715号公報
【特許文献3】特開2008−070355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
血液の凝固反応を安定して進行させるために、サンプルと試薬の混合液を十分撹拌する必要がある。
【0008】
特許文献1では、被撹拌物に撹拌棒を浸漬させて撹拌を行う方法が示されている。しかし、血液の凝固反応は、サンプルに試薬を分注した直後から凝固反応が始まるため、撹拌棒を用いて撹拌を行うと、撹拌棒に血液の凝固物が付着しやすくなる。そのため、次の被撹拌物を撹拌する際に前の被撹拌物の成分の持ち込みのリスクが高まり、正確な分析を出来なくなる恐れがある。特許文献2では、サンプルと試薬の撹拌を、超音波を用いて行うことで非接触での撹拌を実現し、被撹拌物の成分を次の被撹拌物へ持ち込むリスクを無くしている。しかし、凝固反応はサンプルに試薬を添加した瞬間から反応が始まり、早いものでは10秒程度で反応が終わってしまう。比色分析やホモジニアス免疫分析では、反応が数分間あり、その反応過程の数点を測定すれば分析結果を得ることが出来る。しかし、凝固反応は通常、反応開始から反応終了まで常に反応過程を測定しなければ良好な測定結果を得ることはできない。そのため、サンプルに試薬を添加後、撹拌機構等で撹拌を数秒行うと、正確な反応過程を測定することが出来ず、良好な測定結果を得ることはできない。また、サンプルに試薬を添加する際、混合液中に気泡が混入すると、この気泡が外乱となり正確な光学的測定を行うことが出来なくなり、血液の凝固能の測定精度が低下してしまう恐れがある。
【0009】
一方、特許文献3では、サンプルへ試薬を分注する際に混合液中に気泡を混入させない方法として、サンプルに試薬を分注する際、ノズルの先端が略円弧形状の分注機構を用いることで、試薬を分注する際に試薬が反応容器の内壁に沿って落下するようにしている。しかし、この方法では試薬を分注する位置が試薬の分注機構の停止精度や検出部個々の寸法誤差に依存してしまう。そのため、試薬を分注するノズルと反応容器の内壁との距離が一定にならず、サンプルへ試薬を分注する条件がその都度異なり、気泡が混入する可能性がある。また、サンプルへ試薬を分注する条件がその都度異なるため、測定結果の再現性の課題が生じる虞がある。また、別途でサンプルと試薬を撹拌する構造が必要となる。現在、血液や尿などの試料に含まれる成分量を分析する自動分析装置の市場ニーズとして、高性能でありながら省スペースで安価な自動分析装置が求められている。
【0010】
よって、本発明の目的としては、サンプルと試薬の混合を、試薬を吐出する際の勢いで行うことで撹拌機構が不要となりコストの削減と省スペース化を可能にする。さらに、試薬の分注を行う位置が分注機構の停止精度や検出部個々の寸法誤差に依存することなく、毎回同じ位置で停止し、センサ等の停止位置を制御する部品を用いないことでコスト削減を実現することを特徴とする自動分析装置を提供することである。さらに、測定結果の再現性の高い自動分析装置を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明の代表例は、血液凝固反応用の試薬の吸引及び吐出を行うノズルと、前記ノズルの該試薬の吸引及び吐出を制御する制御部と、前記ノズルの位置を変化させるノズル駆動機構と、試料と該試薬とを混合する反応容器を載置し、該試料の凝固時間を検出する凝固時間検出部と、を備えた自動分析装置において、前記ノズル駆動機構は、該試料が分注されている該反応容器に対し、前記ノズルを該反応容器の内壁の側面に押し付け、前記制御部は、該内壁の側面に押し付けた状態で該試薬を該反応容器に吐出する自動分析装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、試薬を分注するノズルを、反応容器の内壁の側面に押し当てることで、試薬を分注する位置を一定に保つことが出来る。また、試薬を分注するノズルを反応容器の内壁の側面に押しつけることで、試薬は反応容器の内壁に沿うように落下し、サンプルと試薬の混合液中に気泡が混入させずに試薬を分注することが可能となる。気泡を混入させないことで正確な光学的測定を行う妨げとなる外乱を防ぎ、血液の凝固能の測定精度が低下すること防ぐことが出来る。また、試薬の吐出位置が分注機構の停止精度等に影響を受け難いので、測定結果の再現性の高い自動分析装置を提供することができる。さらに、試薬を分注する位置が一定でかつサンプルと試薬の混合液中に気泡が混入しない試薬の分注において、試薬を吐出する時の勢いでサンプルと試薬の撹拌を行うことで、撹拌機構が不要となりコスト削減と省スペース化が可能となる自動分析装置を実現することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施例の血液凝固時間測定装置の全体構成を示すシステムブロック図である。
【
図2】本発明の一実施の形態である試薬分注機構の概略図である。
【
図3】従来の一実施の形態である液体保持部の概略図である。
【
図4】本発明の一実施の形態である液体保持部の概略図である。
【
図5】本発明の一実施の形態であるヒートブロックの温度勾配を示した模式図である。
【
図6】本発明の一実施の形態である分注方法を示す図である。
【
図7】本発明の一実施の形態である分注方法を示す図である。
【
図8】
図7の分注方法について上から見た図である。
【
図9】
図8の検出器の配置の他の例について示す図である。
【
図10】
図8の検出器の配置のさらに他の例について示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、図面には本発明の実施形態の一例を示すもので、本発明の実施形態を限定するものではない。また、本実施の形態を説明するための全図において同一機能を有するものは原則として同一の符号を付すようにし、その繰り返しの説明は可能な限り省略するようにしている。
【0015】
図1は、本発明の一実施例のベースとなる血液凝固能測定装置の全体構成を示すシステムブロック図である。
図1に示すように、血液凝固能測定装置は凝固時間検出部12を複数備えた反応容器温調ブロック11、測定に使用されるディスポーザブル反応容器13が複数ストックされている反応容器供給部14、ディスポーザブル反応容器13を移送する反応容器移送機構16、試薬昇温機能付き試薬分注機構17、反応容器廃棄部18、検体分注機構20、検体ディスク21、試薬ディスク23、コンピュータ31から構成されている。
【0016】
次に、血液凝固時間測定の機構動作の概略を説明する。反応容器移送機構16により、反応容器供給部14からディスポーザブル反応容器13が凝固時間検体分注ポジション15に移送される。検体分注機構20に分注された検体は、生化学分析部の検体分注ポジションを通過して、凝固時間検体分注ポジション15のディスポーザブル反応容器13に分注される。反応容器移送機構16により検体が分注されたディスポーザブル反応容器13は、反応容器温調ブロック11に備わる凝固時間検出部12へと移送され、検体は37℃まで昇温される。血液凝固反応用の試薬は試薬容器24から試薬昇温機能付き試薬分注機構17により吸引され、37℃にプリヒートされる。プリヒートが完了した試薬は、検体が入ったディスポーザブル反応容器13へ吐出される。このとき、試薬吐出の勢いにより検体と試薬の攪拌も実施され、血液凝固時間測定が開始する。血液凝固時間測定が完了したディスポーザブル反応容器13は、反応容器移送機構16により、反応容器廃棄部18に廃棄される。
【0017】
次に、
図1の自動分析装置1における制御系及び信号処理系について簡単に説明する。コンピュータ31(制御部)は、インターフェース32を介して、反応容器移送機構制御部19、検体分注制御部33、試薬分注制御部34、A/D変換器35に接続されている。コンピュータ31は、反応容器移送機構制御部19に対して指令を送り、反応容器移送動作を制御する。また、コンピュータ31は、検体分注制御部33に対して指令を送り、検体の分注動作を制御する。また、コンピュータ31は、試薬分注制御部34に対して指令を送り、試薬の分注動作を制御する。
【0018】
A/D変換器35によってデジタル信号に変換された測光値は、コンピュータ31に取り込まれる。コンピュータ31は、取り込まれた測定値を基に、検体の凝固時間を求める。
【0019】
インターフェース32には、印字するためのプリンタ36、記憶装置であるメモリ37や外部出力メディア38、操作指令等を入力するためのキーボード39、画面表示するためのCRTディスプレイ(表示装置)40が接続されている。表示装置40としては、CRTディスプレイの他に液晶ディスプレイなどを採用できる。メモリ37は、例えばハードディスクメモリまたは外部メモリにより構成される。メモリ37には、各操作者のパスワード、各画面の表示レベル、分析パラメータ、分析項目依頼内容、キャリブレーション結果、分析結果等の情報が記憶される。
【0020】
図2は本発明に関わる試薬分注機構17の液体保持部と、液体保持部の位置を変化させる駆動部と、液体56の保持位置を変化させる機構の概略図を示している。まず各構成について説明する。液体保持部は、血液凝固反応用の試薬の吸引及び吐出を行うノズル41、液体56を加温するヒートブロック43、ノズル41とヒートブロック43を接続させるノズル接続部42、液体保持部と液体56の保持位置を変化させる機構とを接続する流路45、流路45とヒートブロック43を接続する流路接続部44から構成される。
【0021】
液体保持部の位置を変化させるノズル駆動機構は、上下ベース50にモータ46が固定され、モータ46と上下ベース50にそれぞれプーリ47を固定し、プーリ47間をベルト48で繋ぎ、駆動機構接続部49でベルト48と試薬分注機構17を固定している。左右ベース51にモータ46が固定され、モータ46と左右ベース51にそれぞれプーリ47を固定し、プーリ47間をベルト48で繋ぎ、左右ベース51のベルト48と上下ベース50を固定している。ここに示す駆動方法や固定方法は、一例であり本発明を限定するものではない。
【0022】
液体保持部は、ノズル41と後述のシリンジ部(駆動機構)との間に配置されている。流路は液体保持部とシリンジ部(駆動機構)とを繋いでいる。ヒートブロック43はヒータで加温し、ヒートブロックを介して液体56を加温する。これは、液体56の加温方法を限定するものではなく、加温方法としてヒータに類するものを使用してもよい。例えば、電熱線やペルチェ素子による液体56の加温が考えられる。なお、厳密には熱電対やペルチェ素子に代表されるヒータとヒートブロック43とは別体であるが、本明細書ではヒータを含めたヒートブロック43をヒータと称する。液体56の保持位置を変化させる機構は、シリンジ部として外筒52とプランジャー53、プランジャー53を上下動作させるラック54とモータ46、ラック54にモータ46の動きを伝達するギア55とで構成される。シリンジ部(駆動機構)により、ノズル41内の圧力を変化させることで試薬の吸引及び吐出が行われる。シリンジ部(駆動機構)は、試薬分注制御部34(制御部)により制御される。従い、試薬分注制御部34によりノズル41の試薬の吸引及び吐出が制御される。
【0023】
次に動作について説明する。まず試薬分注機構17の上下動作は、上下ベース50に固定されたモータ46の回転動作をプーリ47とベルト48を介して上下動作に変換している。また、試薬分注機構17の左右動作は左右ベース51に固定されたモータ46の回転動作をプーリ47とベルト48を介して左右動作に変換している。シリンジ部(駆動機構)の動作は、モータ46の回転運動をギア55を介してラック54に伝わり上下運動へと変換している。ラック54と接続しているプランジャー53が上下に動作することで、ノズル41の先端から液体56を吸引し、ヒートブロック43まで液体56を引き込み、液体56を加温する。
【0024】
この時の液体56とは、試薬のみを示すものではなく、希釈液やサンプルも含む。つまり、ノズル41は、分析項目によってはサンプルの吸引や吐出を行うこともでき、ノズル41は試薬とサンプルに対して共用で使用することが可能である。
【0025】
図3は試薬を分注する位置が一定でかつサンプルと試薬の混合液中に気泡が混入しない試薬の分注において、試薬を吐出する時の勢いでサンプルと試薬の撹拌を行う適切なノズル41の位置と、ノズル41をディスポーザブル反応容器13の内壁にノズル41の弾性の範囲内で押し当てることで、毎回同じ位置に停止することが可能となる条件について説明するものである。
【0026】
まず試薬を分注する際の適切なノズル41の位置について説明する。ディスポーザブル反応容器13の中心位置から内壁までの間で、中心位置から順にノズル41の位置をa、b、cとする。まずaの位置で試薬を分注した場合、液体56の液面を叩くように試薬が分注されるため、液体56と試薬の混合液中に気泡が混入しやすく、2液の混合もうまく行われない。bの位置で試薬を分注した場合、aの位置に比べ気泡の混入を防ぎ、2液の混合もうまく行われるが、気泡の混入が排除しきれず適切な試薬の分注位置とは言えない。次にcの位置で試薬の分注を行った場合、試薬はディスポーザブル反応容器13の内壁に沿って分注されるため、混合液中に気泡が混入することを防ぐことが出来る。また、2液の混合もうまく行われるため、適切な試薬の分注位置であると言える。また、ノズル41の停止精度においても、ノズル41をディスポーザブル反応容器13の内壁の側面にノズル41を押し当てることで、毎回同じ位置に停止させることが可能となる。ノズル41は、垂直方向に対して細長い形状であるため、水平方向に対して弾性変化が可能であり、ノズル41を押し当てることで、ノズル41の停止精度のばらつきを吸収することができるためである。
【0027】
次にノズル41の試薬を吐出する位置への動作方法を説明する。まず軸方向に対してノズル41が毎回同じ位置に停止することが可能となる条件について説明する。ここでは、凝固時間検出部が複数の反応容器を同時に搭載できる複数の検出部からなり、検出部に個々の寸法誤差が生じている場合で説明する。検出部個々の寸法誤差により生じるディスポーザブル反応容器13に対するノズル41の位置の誤差をdとする。次に試薬分注機構17の停止精度による位置の誤差をeとする。最後にノズル41の水平方向の弾性変化の範囲をfとした場合、毎回同じ位置に停止することが可能となる条件として、d+e≦fの関係が成り立つ。なお、ここで水平方向の弾性変化の範囲とは、ノズル先端を水平方向に撓ませ、元に戻した場合にノズルが変形せずに元の形状に戻ることができる、ノズル先端とノズル根元の水平方向のずれ量を言う。
【0028】
図4はノズル41の試薬を吐出する位置への動作方法と、試薬を分注した後の動作方法について説明する。まずノズル41の試薬を吐出する位置への動作方法について、ノズル41がディスポーザブル反応容器13の中心位置に来たら、試薬の吐出を行う高さまで下降動作を行う。次にディスポーザブル反応容器13の内壁の側面に押し当るまで平行動作を行い、該側面に押し付けた状態で試薬の吐出を行う。この吐出の勢いで、予め分注されているサンプルとの撹拌が行われる。従い、撹拌機構を用いて撹拌する必要がない。先にディスポーザブル反応容器13の中心位置で下降動作を行うことで、ノズル41の先端がディスポーザブル反応容器13に接触することを防いでいる。なお、このときの平行動作の量は、ディスポーザブル反応容器13の半径に対して、少なくとも誤差d+eを加えることで、検出部個々の寸法誤差やノズル41の位置の誤差があっても、ディスポーザブル反応容器13の内壁の側面にノズル41を接触させることができる。また、d+eはf以下であることは前述のとおりである。このように、ノズル駆動機構は、ノズルの水平方向の弾性変化の範囲内、かつ、内壁の側面に向かって上記の誤差を無視できる一定量駆動させることで、常に同じ試薬吐出位置で試薬を吐出することができる。
【0029】
次に試薬を吐出した後の動作方法について説明する。試薬を分注した後は、平行動作を行いその後上昇する。先に上昇動作ではなく平行移動をすることでノズル41に蓄積された弾性力によるノズル41先端の振動を防ぎ、ノズル41先端から試薬が飛び散ることを防いでいる。
【0030】
図5は液体をディスポーザブル反応容器13に分注する際、液温が低下することを防ぐ方法を示している。ノズル41は、ヒートブロック43から離れているため十分加温することは困難である。その為、液体がノズル41内を通過する際、液温が低下することが予想される。液温が低下すると体内で行われる反応を再現することが困難となり所望の測定結果を得られない可能性がある。そこで、ノズル41を十分加温する為に、断熱材で全面を覆うことやノズル41を短くしてヒートブロック43と可能な限り近付けることが考えられる。しかし、サンプルや試薬の分注、洗浄等を考慮すると被覆がない状態のノズル41先端長さを確保することが不可欠となるため、現実的な解決策とはならない。この課題に対する解決方法として、ノズル41を反応容器温調ブロック11内で温調しているディスポーザブル反応容器13に接触させることが考えられる。試薬を所望の温度に加温する為にはヒートブロック43で保持する時間がある。この保持時間でノズル41を温調されているディスポーザブル反応容器13に接触させることで余計な時間を使うことなく温調することが可能となる。このように、温度調節可能な加熱源として反応容器温調ブロック11を凝固時間検出部が備え、かつ、ディスポーザブル反応容器の内壁の側面に押し付けることで、液温の低下を抑制することができる。
【0031】
図6は液体を分注する時、液体がノズル41とディスポーザブル反応容器13のわずかな隙間に入り込むことを防ぐ分注方法を示している。ノズル41をディスポーザブル反応容器13に密着させていても、わずかに隙間が生じることが予想される。その為、液体を分注する際に毛細管現象でその隙間に液体が入り込み正確な分注の妨げとなる可能性がある。そこで、分注をしながらノズル41を上昇させることでディスポーザブル反応容器13とのわずかな隙間に液体が入り込むことを防ぐ。このように、ディスポーザブル反応容器の内壁の側面に押し付けた状態でノズルを上昇させながら試薬の吐出を行うことで、液体の入り込みを防ぐことができ正確な分注が実現できる。
【0032】
図8は
図7を上から見たものであり、検出器57を複数使用する場合の最適なノズルの押し付け方向を示している。一例として検出器57を2個使用する場合の例を示す。凝固時間を測定する際のノイズの影響を低減する為に、検出器57を複数使用することが考えられる。この場合、凝固時間検出部は、ディスポーザブル反応容器13の底面から光を照射する光源と、ディスポーザブル反応容器13の側面に配置された対向する2つの検出器を備える。この2つの検出器は、サンプルで散乱された光を検出し、この検出結果から凝固時間が算出される。
【0033】
この時、検出器57の配置との関係で、ノズルの押し付け方向を考慮する必要がある。その理由として、
図7に示すように液体吐出時には液体の回転方向が存在する。その為この回転方向の軸線上から外れた位置に検出器57を配置した場合、液体の撹拌状態が異なる2方向から検知してしまうため、2つの検出器57で検出したデータの違いが撹拌状態の違いによるものかノイズの影響によるものなのか判断することが難しい。そこで、
図8に示すように検出器57が液体の回転軸上にくるようにノズルの押し付け方向を制御することが望ましい。つまり、ノズル駆動機構は、ノズルを反応容器の所定深さまで下降させた後に、2つの検出器を結ぶ直線に対し、垂直方向に駆動させ、ノズルを反応容器に押し付けて試薬を吐出することが望ましい。なお、ここで言う垂直方向とは、厳密な垂直を意味するものではなく、ある一定量の誤差を含め実質的に垂直であればよい。
【0034】
検知器57の配置は、液体の回転軸に対して左右対称であればよいので、
図9、10に示す配置も可能である。検知器57を複数個配置する場合、ここでは2個用いる場合を例とするが、
図8のように検知器同士が向かい合っている場合や、
図9,10のように検知器がある程度角度をもって配置されることが考えられる。この中で望ましい検知器57の配置は
図8に示す向かい合った配置である。血液凝固検査では、前述したように反応過程を終始測定するため、血液凝固検出部12を反応終了まで1つの検知が占有してしまう。そのため、処理能力、コスト、温調性を考慮すると検出部を複数個繋げる必要がある。このとき、検知器57を向かい合わせで配置することで、他の配置よりも検出部構造が簡素化し、かつ低コストで製造可能となる。また、コスト低減を考慮すると、検知器57を1つにする場合が考えられる。この場合、検知器57をどこに配置してもよいが、検出部が複数個ある場合、検出部同士の相関を見るため検出器57は同一方向についていることが望ましい。
【0035】
なお、ノズル41でサンプルを吐出することが可能であることも述べたが、サンプルのディスポーザブル反応容器13への吐出に際し、試薬と同様に反応容器の内壁の側面に押し付けた状態で吐出してもよいし、異なる吐出方法として、ディスポーザブル反応容器13の内壁の底面にノズルを接触させてサンプルの分注を行ってもよい。言うまでもないが、これらのサンプルの分注方法に限らず、試薬は分注されたサンプルの液面より上方から吐出される。
【0036】
本実施例のような構成をとることで、試薬を分注する軸方向に対して垂直方向に弾性のあるノズルを、反応容器の内壁の側面にノズルの弾性の範囲内で押し付けることで、試薬を分注する位置を一定に保つことが出来る。また、試薬を分注するノズルを反応容器の内壁に押し付けることで、試薬は反応容器の内壁の側面に沿うように落下し、サンプルと試薬の混合液中に気泡が混入させずに試薬を分注することが可能となる。気泡を混入させないことで正確な光学的測定を行う妨げとなる外乱を防ぎ、血液の凝固能の測定精度が低下すること防ぐことが出来る。さらに、試薬を分注する位置が一定でかつサンプルと試薬の混合液中に気泡が混入しない試薬の分注において、試薬を吐出する時の勢いでサンプルと試薬の撹拌を行うことで、撹拌機構が不要となりコスト削減と省スペース化が可能となる自動分析装置を実現することが出来る。さらに、測定結果の再現性の高い自動分析装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 血液凝固能測定装置
11 反応容器温調ブロック
12 凝固時間検出部
13 ディスポーサブル反応容器
14 反応容器供給部
15 凝固時間検体分注ポジション
16 反応容器移送機構
17 試薬昇温機能付き試薬分注機構
18 反応容器廃棄部
19 反応容器移送機構制御部
20 検体分注機構
21 検体ディスク
22 検体容器
23 試薬ディスク
24 試薬容器
31 コンピュータ
32 インターフェース
33 検体分注制御部
34 試薬分注制御部
35 A/D変換機
36 プリンタ
37 メモリ
38 外部出力メディア
39 キーボード
40 CRTディスプレイ(表示装置)
41 ノズル
42 ノズル接続部
43 ヒートブロック
44 流路接続部
45 流路
46 モータ
47 プーリ
48 ベルト
49 駆動機構接続部
50 上下ベース
51 左右ベース
52 外筒
53 プランジャー
54 ラック
55 ギア
56 液体
57 検出器