(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載の電子顕微鏡装置であって、前記処理部は、前記第1検出部で前記2次電子を検出して得た信号の信号極大領域を抽出し、前記抽出した信号極大領域における前記第1検出部で前記2次電子を検出して得た信号と前記第2検出部で前記2次電子を検出して得た信号の比の情報を用いて前記パターンの段差を判定することを特徴とする電子顕微鏡装置。
請求項2に記載の電子顕微鏡装置であって、前記処理部は、前記抽出した信号極大領域における前記第1検出部で前記2次電子を検出して得た信号と前記第2検出部で前記2次電子を検出して得た信号の比の増減傾向から予め設定した判定条件に基づいて前記パターンの段差を判定することを特徴とする電子顕微鏡装置。
請求項1に記載の電子顕微鏡装置であって、画面を有する出力部を更に備え、前記検出部で前記測定対象から発生する2次電子を検出して得た画像と、前記処理部で取得した前記測定対象に形成されたパターンの段差の情報とを前記画面上に表示することを特徴とする電子顕微鏡装置。
請求項1に記載の電子顕微鏡装置であって、前記第1検出部で前記2次電子を検出して得た信号と前記第2検出部で前記2次電子を検出して得た信号の比の情報と前記パターンの段差の溝部の開口角の関係を記憶しておく記憶部を更に備え、前記処理部で求めた比の情報を用いて前記記憶部に記憶しておいた前記比の情報と前記パターンの段差の溝部の開口角の関係に基づいて前記パターンの段差の溝の深さを求めることを特徴とする電子顕微鏡装置。
請求項6に記載の電子顕微鏡装置であって、前記処理部は、前記第1検出部と前記第2検出部が出力する信号から前記測定対象に形成されたパターンの溝部の中心座標を求め、前記求めた中心座標における前記第1検出部と前記第2検出部が出力する信号の比を求めることを特徴とする電子顕微鏡装置。
請求項7に記載の電子顕微鏡装置であって、前記第1検出部で前記2次電子を検出して得た信号と前記第2検出部で前記2次電子を検出して得た信号の比の情報と前記パターンの段差の溝部の開口角の関係を記憶しておく記憶部を更に備え、前記処理部は、前記求めた中心座標における前記第1検出部と前記第2検出部が出力する信号の比の情報を用いて前記記憶部に記憶しておいた前記比の情報と前記パターンの段差の溝部の開口角の関係から前記測定対象に形成されたパターンの段差の開口角を求めることを特徴とする電子顕微鏡装置。
請求項8に記載の電子顕微鏡装置であって、前記処理部は、前記第1検出部が出力する信号から前記測定対象に形成されたパターンの溝部の幅を求め、前記求めたパターンの溝部の幅の情報と前記測定対象に形成されたパターンの段差の開口角の情報を用いて前記測定対象に形成されたパターンの段差に関する情報を取得することを特徴とする電子顕微鏡装置。
請求項6に記載の電子顕微鏡装置であって、画面を有する出力部を更に備え、前記検出部で前記測定対象から発生する2次電子を検出して得た画像と、前記処理部で取得した前記測定対象に形成されたパターンの段差の情報とを前記画面上に表示することを特徴とする電子顕微鏡装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、1次電子線を照射する線源と、測定対象へ1次電子線を照射することによって測定対象から発生する2次電子を検出する検出部と、検出部で検出した信号を処理する処理部とを備えた電子顕微鏡において、検出部は、測定対象に照射する1次電子線の光軸方向と2次電子の測定対象からの放出方向とのなす角が所定値以下の2次電子を検出する第1検出部と、測定対象に照射する1次電子線の光軸方向と2次電子の測定対象からの放出方向とのなす角が所定値より大きい2次電子を検出する第2検出部とを備え、処理部は、第1検出部と第2検出部が出力する信号の比を求めてこの求めた比に関する情報を用いて測定対象に形成されたパターンの段差の情報を取得するようにして、撮像対象段差パターンの溝部の材料と段差パターンの突起部の材料の組合せによらずパターンの段差を判定することができるようにしたものである。
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。本実施の形態を説明するための全図において同一機能を有するものは同一の符号を付すようにし、その繰り返しの説明は原則として省略する。
【0014】
ただし、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。本発明の思想ないし趣旨から逸脱しない範囲で、その具体的構成を変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。
【実施例1】
【0015】
本実施例では、撮像対象のパターンの段差を判定する走査電子顕微鏡の例を説明する。
図1は、本実施例に係る走査電子顕微鏡100の構成図の例である。
走査電子顕微鏡100は、撮像部101、全体制御部102、信号処理部103、入出力部104および記憶部105を備えている。
【0016】
撮像部101は、電子銃106、電子銃106から照射された電子線107を加速する加速電極108、電子線107を集束する集束レンズ109、電子線107の軌道を偏向させる偏向レンズ110、電子線107の集束する高さを制御する対物レンズ111、撮像対象の試料112を載置するステージ113、電子線107が照射された試料112から発生した二次電子114の軌道を制御する二次電子アライナ115、二次電子114の検出角度を弁別するための検出絞り116、検出絞り116を通過した二次電子114を検出するための反射板117、反射板117に二次電子114が衝突して発生した三次電子118を検出する検出器1:119、検出絞り116に二次電子114が衝突して発生した三次電子120を検出する検出器2:121、を備え、全体制御部102により制御されている。
【0017】
検出器1:119および検出器2:121で検出された信号を、全体制御部102からの指示に従い、信号処理部103で画像データに変換する。
【0018】
本実施例では、試料の表面から二次電子が放出される角度を天頂角(試料の表面を平面と見たときに、試料表面に対して垂直な方向からの角度:試料112に照射する電子線107の光軸方向に対する角度)のある範囲(弁別境界天頂角;q
p)で区切って検出する。この二次電子の天頂角弁別検出を行う目的の一つは、段差パターンの溝部からの信号の選択的な検出である。そのために、弁別境界天頂角q
Dは、想定される評価対象の段差パターンの溝部の開口角と同程度の大きさとすることが望ましく、本実施例では30度とする。
【0019】
二次電子アライナ115の調整および検出絞り116の穴径の選択により、検出器1:119では弁別境界天頂角q
Dより小さい角度の二次電子を検出し、検出器2は弁別境界天頂角q
Dより大きい角度の二次電子を検出する。
【0020】
図2Aは、ライン状のパターンや溝、穴などの突起部と溝部とにより形成された段差のあるパターン(以下、段差パターンと記す)を有する試料の段差パターン部に電子線を照射した際に発生する二次電子の放出天頂角分布の模式図である。試料の段差パターンの溝部202は段差パターンの突起部201よりも二次電子放出率の高い材料で形成されている例で説明する。また、段差パターンの溝部の開口角q
c207は、弁別境界天頂角q
D211より少し大きくなっている。
【0021】
図2Bに示すように、段差パターンの突起部の中央の平坦部203に電子線を照射した場合に発生する二次電子の放出天頂角分布204は、45度付近を中心に対称な形状となっている。これに対し、段差パターンの溝部の中央の平坦部205に電子線を照射した場合に発生する二次電子の放出天頂角分布206は、材料の違いにより電子数が全体に増幅し、さらに照射点からの開口角q
c207より大きな天頂角の二次電子が減少する。
【0022】
これは、隣接する段差パターンの突起部の側壁により二次電子が遮蔽されることによる現象である。同様に、側壁部208に電子線を照射した場合に発生する二次電子209は、エッジ効果により電子数は全体に増幅するが、天頂角分布は段差パターンの溝部中央の平坦部に照射した場合と同様に、照射点からの開口角q
b210より大きな天頂角の二次電子が減少する傾向を示す。
【0023】
この現象を数式で表す。段差パターンの突起部の中央の平坦部203に電子線を照射した場合に検出器1:119で検出される二次電子数をS
1a、検出器2:121で検出される二次電子数をS
2a、側壁部208に電子線を照射した場合に検出器1:119で検出される二次電子数をS
1b、検出器2:121で検出される二次電子数をS
2b、側壁に遮蔽される二次電子数をS
Shade_b、段差パターンの溝部中央の平坦部205に電子線を照射した場合に検出器1:119で検出される二次電子数をS
1c、検出器2:121で検出される二次電子数をS
2c、側壁に遮蔽される二次電子数をS
Shade_c、とする。
【0024】
検出器1:119で検出される二次電子数S
1aは下記の式(数1)で表され、検出器2:121で検出される二次電子数S
2aは下記の式(数2)で表される。さらに、これらの比は下記の式(数3)で表される。αはエッジ効果による二次電子放出率の違いを補正する係数であり、βは材料の違いによる二次電子放出率の違いを補正する係数である。材料が均質な場合にはβは1と考えればよい。
【0025】
【数1】
【0026】
【数2】
【0027】
【数3】
【0028】
すなわち、検出器1:119の信号強度に対する検出器2:121の信号強度の比Rは、段差パターンの突起部と段差パターンの溝部の材料の違いによらず、段差パターンの突起部と比べて段差パターンの溝部の方が小さくなる特徴を有している。
【0029】
図3は、
図2Bに示した二次電子の放出天頂角分布の特性を利用した、パターンの段差の判定処理を説明するフローチャートの例である。
【0030】
はじめに、検出器1:119および検出器2:121の画像を取得する(S301)。
つぎに、検出器1:119の画像信号強度に対する検出器2:121の画像信号強度の比Rを画素ごとに算出し、比R画像を生成する(S302)。
【0031】
図4に、試料の断面形状411、検出器1:119の信号波形(画像信号)412、検出器2:121の信号波形(画像信号)413、および検出器1:119の信号波形(画像信号)412に対する検出器2:121の信号波形(画像信号)413の比R:414の波形及びパターン段差の判定結果415の模式図を示す。
図2Bで説明した通り、材料が均質な場合(
図4の401の列)でも、下層の材料の二次電子放出率が高く明るい場合(
図4の402の列)でも、比R:414の欄の波形は、段差パターンの突起部4011,4021に比べて段差パターンの溝部4012,4022の方が小さくなる。
【0032】
また、線幅が微細になると(
図4の403)、段差パターンの突起部4031の左右エッジ部における信号極大領域が、検出器1の信号波形412及び検出器2信号波形413の何れも、干渉してひとつになるが、比R:414は信号極大領域の数によらず段差パターンの突起部4031に比べて段差パターンの溝部4032が小さくなる。
【0033】
さらに、アスペクト比が低い場合(
図4の404)には、比R:414は段差パターンの溝部4042の側で一旦減少し、段差パターンの壁4043から離れるに従い段差パターンの突起部4041の比Rに近づいていく。これは、壁4043から離れるほど遮蔽効果がなくなるためである。
【0034】
次のステップとして、検出器1:119の信号波形412から信号の極大領域405を抽出する(S303)。
【0035】
二次電子信号強度はエッジ効果により側壁部で増大することから、エッジ部を検出するために信号の極大領域を抽出する。具体的な抽出方法としては、適切な信号量を基準とし、検出器1:119の信号波形412において基準より大きな信号となる領域を極大領域405として決定する。
【0036】
最後に、抽出した信号の極大領域405内の比R:414の増減傾向から、パターンの段差の判定条件に基づき、パターンの段差を判定する(S304)。
【0037】
図5の表にパターンの段差の判定条件を示す。検出器1信号極大領域波形511が波形521の場合に、検出器1:119の信号波形(画像信号)に対する検出器2:121の信号波形(画像信号)の比R:512を表す曲線がパターン501のように右下がりであれば、パターン段差の判定結果は右が段差パターンの溝部502であると判定する。
【0038】
また、検出器1信号極大領域波形511が波形522の場合に、検出器1:119の信号波形(画像信号)に対する検出器2:121の信号波形(画像信号)の比R:512を表す曲線がパターン503のように左下がりであれば、パターン段差の判定結果513は左が凹504であると判定する。
【0039】
さらに、検出器1信号極大領域波形511が波形523の場合に、検出器1:119の信号波形(画像信号)に対する検出器2:121の信号波形(画像信号)の比R:512を表す曲線がパターン505のように両下がりであれば、パターン段差の判定結果513は左右とも溝506、すなわち段差パターンの突起部と判定する。
【0040】
図4のパターンの段差の判定結果に示す通り、試料の材料や寸法、アスペクト比によらずパターンの段差を定性的に判定することができる。
【0041】
図6は、パターンの段差の判定結果の出力画面601の例である。
検出器1の撮像画像602や撮像画像の一部である信号波形603のほかに、比Rの波形604および得られたパターンの段差の判定結果605を表示する。ただし、撮像画像602は検出器2の画像であってもよく、検出器1と2との混合画像であってもよい。
【0042】
本実施例では、検出器1:119の信号波形から信号極大領域を抽出し、
図5の表に示したようなパターンの段差の判定基準に基づいてパターンの段差を判定する手法を説明した。しかし、本実施例では、比Rが常に段差パターンの突起部より段差パターンの溝部で小さいような段差パターンの溝部のアスペクト比が十分大きい対象については、
図7に示すように、比R701が予め設定した基準値702より大きい領域を段差パターンの突起部と判定することも可能である。基準値702は、最大値と最小値との中間値で設定してもよい。
【0043】
ここまで、評価対象のパターンの段差を判定する処理について説明した。このパターンの段差の判定結果を用いて、自動で計測位置を決定するほか、パターンの段差の判定結果を用いてパターンの位置合わせや、テンプレートと類似のパターンの抽出を行うことができる。
【実施例2】
【0044】
本実施例では比Rを用いたテンプレートマッチング処理の例を説明する。実施例1では、パターンの段差の判定結果を用いてテンプレートと類似のパターンを抽出する処理について説明したが、本実施例では、パターンの段差の判定まで実施しない例を説明する。
【0045】
本実施例における走査電子顕微鏡の構成は実施例1で説明した
図1に示した構成と同じであるので、その説明を省略する。
【0046】
図8は、
図1に示した走査電子顕微鏡による、テンプレートマッチング処理を説明するフローチャートの例である。
【0047】
はじめに、検出器1:119および検出器2:121の画像を取得する(S801)。
つぎに、検出器1:119の画像信号に対する検出器2:121の画像信号の比Rを画素ごとに算出し、比R画像を生成する(S802)。
【0048】
取得した検出器1:119の画像901および算出した比R画像902の例を、
図9の工程Y:940に示す。
図9には、工程X(テンプレート)930と工程Y940について、検出器1で取得される検出器1画像910に関して画像911とその一部の信号波形912、パターンの断面形状913を示し、検出器1と検出器2の信号強度の比Rに基づいて得られる画像920に関して比R画像とその一部の信号波形922を示す。
【0049】
段差パターンの突起部と段差パターンの溝部の材料の違いにより、検出器1画像910で得られる画像911のうち工程Y:940で得られる画像901のA−B断面における画像信号波形9011は、断面形状9012に示す段差パターンの突起部90121に対応する信号波形90111よりも段差パターンの溝部90122に対応する信号波形90112が暗くなっている。
【0050】
また、検出器1の信号と検出器2の信号比較920で得られる比R画像921のうち工程Y940で得られる比R画像902のA−B断面における信号波形9021では、パターンの段差部境界の段差パターンの溝部側に極小領域90211が現れる。この現象は、実施例1で述べた遮蔽効果によるものである。
【0051】
つぎに、取得画像中で探索するテンプレートパターンの検出器1:119および検出器2:121の画像を読み込む。これは、あらかじめ取得し、記憶部105にて保存しておいたものである(S803)。
【0052】
テンプレートパターンの検出器1:119の画像903の例を、
図9の工程X930に示す。工程Y940とはパターンの段差9032の関係は同様だが材料が異なり、画像903におけるA−B断面における画像信号波形9031は、段差パターン9032の突起部90321の信号波形90311よりも段差パターン9032の溝部90322の信号波形90312が明るくなっている。本例では、画像信号を用いたテンプレートマッチングを実施すると、信号の大小関係が類似している間違った領域904を抽出する可能性がある。
【0053】
つぎに、テンプレートパターンの検出器1の画像信号強度に対する検出器2の画像信号強度の比Rを画素ごとに算出し比R画像を生成する(S804)。
【0054】
生成したテンプレートパターンの比R画像905とそのA−B断面における信号波形9051とを、
図9の工程X930に示す。信号波形9051には、工程Y940と同様に、画像信号によらず、パターンの段差の境界の段差パターン9032の溝部90322の側に極小領域90511が現れる。
【0055】
最後に、撮像画像の比R画像902におけるテンプレートパターンの比R画像905との類似領域906を抽出する(S805)。具体的な抽出方法としては、相関値が最大となる位置を決定するほか、一般的なテンプレートマッチング手法が適用可能である。
【0056】
図9に示したように、比R画像921を用いることで、材料起因の信号の違いがなくなるため、材料の異なる工程間でのマッチングに適した手法である。
【0057】
図10は、検出器1の信号に対する検出器2の信号の比Rを用いたテンプレートマッチング処理結果の出力画面1001の例である。
【0058】
撮像画像1002のほかに、比R画像1003およびマッチング処理により選択された領域1004を表示する。
【0059】
本実施例によれば、評価対象(試料)の材質とテンプレートを作成した素材の材料とが異なる場合であっても、高い信頼度でパターンマッチングを行うことができる。
【実施例3】
【0060】
本実施例では、検出器1の信号に対する検出器2の信号の比Rを用いた段差パターンの溝部の深さ又は段差パターンの突起部の高さの評価処理の例を説明する。
【0061】
本実施例の走査電子顕微鏡の構成は実施例1で説明した走査電子顕微鏡100と同じであるので、説明を省略する。
【0062】
図11は、
図1に示した走査電子顕微鏡による、段差パターンの溝部の深さ評価処理を説明するフローチャートの例である。
【0063】
はじめに、検出器1および検出器2の画像を取得する(S1101)。
つぎに、取得画像における、深さ評価対象の段差パターンの溝部の中心座標を求める(S1102)。
つぎに、中心座標における検出器1の信号に対する検出器2の信号の比R
x_evを算出する(S1103)。
【0064】
図12Aに、高さが高い段差パターン1203と高さが低い段差パターン1204の断面におけるそれぞれのパターンの開口角q
Hとq
Lを示す。
図12Bのグラフには、開口角が異なるそれぞれの段差パターン1203と1204の溝部の中心座標1201における二次電子の放出天頂角分布1202を示す。
【0065】
段差パターンの溝部が深くなるほどアスペクト比は大きく、開口角q
xは小さくなる。すなわち、
図12Aに示したケースの場合、段差パターン1203では開口角q
xはq
H、段差パターン1204では開口角q
xはq
Lであり、q
H<q
Lとなる。開口角q
xが小さくなるほど検出器2で検出される信号が小さくなる。すなわち、
図13に示すように、中心座標(
図12Aの1201)における検出器1:119の検出信号に対する検出器2:121の検出信号の比R
xは開口角q
xが小さいほど小さくなる。
【0066】
つぎに、
図13のグラフに示す、段差パターンの溝部の検出器1の信号強度に対する検出器2の信号強度の比である比R
xと開口角q
xの関係1301を記憶部105から読み込む(S1104)。これは、あらかじめ取得し、記憶部105に保存しておいたものである。
【0067】
比R
xと開口角q
xの関係1301の取得は、実サンプルによる評価、シミュレーションによる評価、などにより実施する。
【0068】
つぎに、比R
xと開口角q
xの関係1301に基づき、算出した深さ評価対象の比R
x_ev1302に対応する段差パターンの溝部の開口角q
x_ev1303を求める(S1105)。
【0069】
つぎに深さを求めるために、検出器1の画像から、段差パターンの溝部の幅CDを計測する(S1106)。具体的な手法としては、段差パターンの側壁部に発生する信号極大座標間の距離を算出するほか、一般的に使用される電子顕微鏡画像を用いた寸法計測アルゴリズムにより計測する。
【0070】
最後に、下記の式に従い、深さ評価対象の開口角q
x_evと段差パターンの溝部の幅CDから段差パターンの溝部の深さHを算出する(1107)。
【0071】
【数4】
【0072】
図11に示したフロー図では、段差パターンの溝部の深さを求める例を示したが、これを段差パターンの高さを求めるとしてもよい。
【0073】
図14は、段差パターンの溝部の深さ評価における入出力画面1401の例である。
撮像画像1402や撮像画像の一部である信号波形1403のほかに、比R波形1404や段差パターンの溝部中心座標における検出器1の信号に対する検出器2の信号の比R
x_ev1302を表示する。また、開口角q
x_evを求めるために必要なデータベース1405を読み込むためのGUI1401を有し、読み込まれたデータベース1405を表示する。
【0074】
本実施例で用いる段差パターンの溝部中心座標における比R
xと開口角q
xの関係1301は、
図13に示したグラフ形式で保存するほか、下記のような数式で保存することもできる。
【0075】
【数5】
【0076】
ここで、関数f(q)は
図2Bに示した段差パターンの突起部201の中央に電子線を照射した場合の遮蔽がないときの二次電子放出天頂角特性(二次電子の放出天頂角分布)204を表す。一方、関数g(q)は、二次電子が遮蔽された場合であり、
図2Bに示した段差パターンの溝部202の中央に電子線を照射した場合の二次電子放出天頂角特性(二次電子の放出天頂角分布)206を示し、q
xが開口角q
cとなった場合を示し、f(q)と開口角q
xの交点と放出天頂角90度で二次電子数ゼロの点を結んだ直線を表す。
【0077】
本実施例では、深さを求める手法を説明したが、製造プロセスのモニタなど定量的な深さ評価が不要な場合には、段差パターンの溝部中心座標における比R
x_evを開口角q
x_evの代わりに用いて出力してもよい。この場合、
図15に示すような比R
xのウエハ面内分布1501や、
図16に示す比R
xの経時変化をモニタすることができる。これにより、深さの変動の面内分布や時間変動を知ることができる。
【0078】
本実施例では、段差パターンの溝部中心座標における比R
xを用いているが、
図17に示すような、比Rの極小値1701や、比Rの極小値と壁の距離1702、比R波形の凹み部の面積1703なども、開口角q
xに応じて変化するため、これらの指標を用いて開口角q
xを求めることもできる。
【0079】
本実施例では、段差パターンの溝部中心座標における比R
xと開口角q
xの関係から評価対象の開口角q
xを求めて深さを算出したが、開口角q
xの代わりに段差パターンの溝部のアスペクト比を用いてもよい。例えば、
図13のグラフにおいて、横軸の開口角q
xをアスペクト比に置き換えたデータベースを作成すればよい。この場合、[数4]の右辺のうち、CD以外の項がアスペクト比に相当する。
【実施例4】
【0080】
実施例1から実施例3においては、
図1に示す走査電子顕微鏡100を用いているが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、この構成の他の二次電子の天頂角弁別を行う走査電子顕微鏡の構成の例を以下に示す。
【0081】
図18に示した走査電子顕微鏡100−1の例では、
図1に示した走査電子顕微鏡100における検出絞り116を通過した二次電子114を反射板117で反射して3次電子を検出器1:119で検出する構成に替えて、検出絞り116を通過した二次電子114の軌道を制御する二次電子アライナ122と直接検出器123で構成した。
【0082】
このような構成とすることにより、二次電子アライナ122により二次電子114の軌道を制御して直接検出器123で検出するようにした。
【0083】
図19に示した走査電子顕微鏡100−2の例では、
図1に示した走査電子顕微鏡100における二次電子114の検出角度を弁別するための検出絞り116、検出絞り116を通過した二次電子114を検出するための反射板117、反射板117に二次電子114が衝突して発生した三次電子118を検出する検出器1:119、検出絞り116に二次電子114が衝突して発生した三次電子120を検出する検出器2:121を備えた構成に替えて、直接検出器124と、直接検出器125を備えた構成とした。
【0084】
このような構成とすることにより、二次電子アライナ115を通過した二次電子114のうち、放出天頂角の大きい二次電子を直接検出器124で検出し、直接検出器124で検出される二次電子より放出天頂角の小さい二次電子を直接検出器125で検出するようにした。
【0085】
図20に示した走査電子顕微鏡100−3の例では、
図1に示した走査電子顕微鏡100における二次電子114の検出角度を弁別するための検出絞り116、検出絞り116を通過した二次電子114を検出するための反射板117、反射板117に二次電子114が衝突して発生した三次電子118を検出する検出器1:119、検出絞り116に二次電子114が衝突して発生した三次電子120を検出する検出器2:121を備えた構成に替えて、直接検出器124と二次電子アライナ122と直接検出器123を備えた構成とした。
【0086】
このような構成とすることにより、二次電子アライナ115を通過した二次電子114のうち、放出天頂角の大きい二次電子を直接検出器124で検出し、直接検出器124を通過した二次電子114の軌道を二次電子アライナ122で制御し、二次電子アライナ122で軌道を制御された二次電子114を直接検出器123で検出するようにした。
【0087】
図21に示した走査電子顕微鏡100−4の例では、
図1に示した走査電子顕微鏡100における検出絞り116、検出絞り116を通過した二次電子114を検出するための反射板117、反射板117に二次電子114が衝突して発生した三次電子118を検出する検出器1:119、検出絞り116に二次電子114が衝突して発生した三次電子120を検出する検出器2:121を備えた構成に替えて、二重ドーナッツ構造の直接検出器124と、その内側の直接検出器129で構成した。
【0088】
このような構成とすることにより、二次電子アライナ115を通過した二次電子114のうち放出天頂角の大きいものを直接検出器124で検出し、放出天頂角の小さいものを直接検出器129で検出するようにした。
【0089】
図22に示した走査電子顕微鏡100−5の例では、
図1に示した走査電子顕微鏡100における検出絞り116、検出絞り116を通過した二次電子114を検出するための反射板117、反射板117に二次電子114が衝突して発生した三次電子118を検出する検出器1:119、検出絞り116に二次電子114が衝突して発生した三次電子120を検出する検出器2:121を備えた構成に替えて、二次電子アライナ122と軸対称に配置した直接検出器130と直接検出器131とを備えて構成した。
【0090】
このような構成とすることにより、二次電子アライナ115を通過した二次電子114を更に二次電子アライナ122を通過させることにより、放出天頂角が小さい二次電子を直接検出器131の方向に偏向し、放出天頂角が大きい二次電子を直接検出器130の方向に偏向させてそれぞれの検出器で検出するようにした。
【実施例5】
【0091】
本実施例では、撮像対象のパターンの段差を判定する走査電子顕微鏡の例を説明する。実施例1では検出器が二個の例を説明したが、本実施例では三個の例を説明する。
【0092】
図23は、本実施例に係る走査電子顕微鏡150の構成図の例である。
基本的な構成は実施例1で
図1を用いて説明した走査電子顕微鏡100の構成と同じだが、検出絞りが二段構成となっており、検出絞り1:116に対して試料112の側に検出絞り2:126と検出器3:128とが追加されている。このような構成で、二次電子アライナ115を通過した二次電子114が検出絞り2:126に衝突し、発生した三次電子127を検出器3:128で検出される。
【0093】
図24は、
図23に示した走査電子顕微鏡150による、パターンの段差の判定処理を説明するフローチャートの例である。
【0094】
はじめに、各検出器の画像を取得する(S2201)。
つぎに、検出器の組合せをかえて、検出器間の画像信号の比を算出する(S2202)。
つづけて、比の変化量が最大となる組合せを、最適な組み合わせとして選択する(S2203)。
【0095】
例えば、
図12Aに示すアスペクト比が大きい段差パターン1203においては、検出器1:119の信号に対する検出器2:121と検出器3:128の信号の和の比をとると、段差パターンの突起部における比Rと段差パターンの溝部における比Rの差が大きくなる。またアスペクト比が小さい段差パターン1204においては、検出器1:119と検出器2:121の信号の和に対する検出器3:128の信号の比をとると、段差パターンの突起部における比Rと段差パターンの溝部における比Rの差が大きくなる。
【0096】
以降の処理、検出器1の画像から信号極大領域を抽出するステップ(S2204)と信号極大領域内の比の増減傾向からパターンの段差判定条件に基づきパターンの段差を判定するステップ(S2205)は、
図3のパターンの段差の判定処理を行うフローチャートのS303とS304と同じであるので、説明を省略する。
【0097】
本実施例において対象にアスペクトの大きいパターンと小さいパターンが混在する場合には、上述した二種類の比を算出し、それぞれからパターンの段差を抽出した結果を重ね合わせるとよい。
【0098】
本実施例によれば、アスペクト比が小さい段差パターンであっても、より確実にパターンの段差を検出することができる。
【実施例6】
【0099】
本実施例では、実施例1から実施例5で用いていた、検出器1:119の信号に対する検出器2:121の信号の比Rの代わりに、別の指標値を用いる例を説明する。
【0100】
特許文献1には、検出器1の信号と検出器2の信号の差Dを用いて、パターンの段差の判定を行っているが、下式(数6)の通り、単純な差を用いると、材料の違いによる二次電子放出率の違いβ次第で、段差パターンの溝部と差と段差パターンの突起部の差の大小関係が逆転する可能性がある。
【0101】
【数6】
【0102】
そこで、本実施例では、平坦膜を対象に、各検出器での検出信号の違いを補正する係数γをあらかじめ求めておき、以下の式(数7)で表すように、各検出器の信号を補正係数γで補正した後に差D
cを求めるようにした。このような差D
cを用いることにより、材料の違いによらず、段差パターンの溝部の差(S
2c−γS
1c)が常に負数となる結果が得られる。これにより確実にパターンの段差判定を行うことができる。
【0103】
【数7】
【0104】
実施例1から実施例5で説明した検出器1:119の信号に対する検出器2:121の信号の比Rの代わりに、(数7)で表される差D
cを用いてパターンの段差判定を行う処理を行うようにしてもよい。