(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6581978
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】半導体製造コンポーネント用高純度金属トップコート
(51)【国際特許分類】
C23C 28/00 20060101AFI20190912BHJP
C23C 24/04 20060101ALI20190912BHJP
【FI】
C23C28/00 C
C23C24/04
【請求項の数】15
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-526344(P2016-526344)
(86)(22)【出願日】2014年11月11日
(65)【公表番号】特表2016-537506(P2016-537506A)
(43)【公表日】2016年12月1日
(86)【国際出願番号】US2014065078
(87)【国際公開番号】WO2015073456
(87)【国際公開日】20150521
【審査請求日】2017年10月6日
(31)【優先権主張番号】14/079,586
(32)【優先日】2013年11月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100101502
【弁理士】
【氏名又は名称】安齋 嘉章
(72)【発明者】
【氏名】サン ジェニファー ワイ
(72)【発明者】
【氏名】フィロウズドア バヒド
【審査官】
萩原 周治
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2008/0241517(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0020665(US,A1)
【文献】
特表2008−519157(JP,A)
【文献】
特表2015−520795(JP,A)
【文献】
特開2005−013153(JP,A)
【文献】
特開2007−324353(JP,A)
【文献】
特表2016−514213(JP,A)
【文献】
特表2016−529404(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 24/00−30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造チャンバ内で使用するためのコンポーネントを提供する工程と、
堆積チャンバ内にコンポーネントをロードする工程と、
コンポーネント上にコーティングを形成するために、コンポーネント上に金属粉末をコールドスプレーコーティングする工程と、
陽極酸化層を形成するために、コーティングを陽極酸化する工程であって、陽極酸化層は、10〜50nmの直径を有する複数の柱状ナノ細孔を含み、陽極酸化層の少なくとも一部は40〜50%の空孔率を有している工程とを含む方法。
【請求項2】
コーティングを陽極酸化する前に、20マイクロインチ未満の平均表面粗さまでコンポーネントを研磨する工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
コンポーネント上にコールドスプレーコーティングされる金属粉末は、100m/s〜1500m/sの範囲内の速度を有し、窒素又はアルゴンのキャリアガスを介してスプレーされる、請求項1記載の方法。
【請求項4】
コンポーネントとコーティングとの間にバリア層を形成するため、コールドスプレーコーティング後のコンポーネントを、200℃〜1450℃の範囲内の温度に30分間を超えて加熱する工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
コーティングは、0.1mm〜40mmの範囲内の厚さを有する、請求項1記載の方法。
【請求項6】
コンポーネントは、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、チタン、チタン合金、マグネシウム、又はマグネシウム合金のうちの少なくとも1つを含み、金属粉末は、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金、ニオブ、ニオブ合金、ジルコニウム、ジルコニウム合金、銅、又は銅合金のうちの少なくとも1つを含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
陽極酸化層は2ミル〜10ミルの厚さを有し、コーティングを陽極酸化する工程は、
陽極酸化処理の開始時に第1電流密度を適用して、陽極酸化層の低空孔率層部を形成する工程であって、低空孔率層部は、40〜50%の空孔率よりも低い空孔率を有する工程と、
陽極酸化処理の残りの時間に第1電流密度よりも低い第2電流密度を適用して、陽極酸化層の多孔質柱状層部を形成する工程であって、多孔質柱状層部は、複数の柱状ナノ細孔を含み、40〜50%の空孔率を有している工程とを含んでいる、請求項1記載の方法。
【請求項8】
コンポーネントは、シャワーヘッド、カソードスリーブ、スリーブライナードア、カソードベース、チャンバライン、又は静電チャックベースである、請求項1記載の方法。
【請求項9】
製造チャンバ内で使用するためのコンポーネントと、
コンポーネント上の金属粉末コールドスプレーコーティングと、
金属粉末コールドスプレーコーティングで形成された陽極酸化層であって、陽極酸化層は、10〜50nmの直径を有する複数の柱状ナノ細孔を含み、陽極酸化層の少なくとも一部は40〜50%の空孔率を有する陽極酸化層を含む物品。
【請求項10】
コンポーネントは、20マイクロインチ未満の平均表面粗さを有する、請求項9記載の物品。
【請求項11】
物品は、コンポーネントとコーティングとの間にバリア層を含み、バリア層は、0.1ミクロン〜5ミクロンの範囲内の厚さを有する、請求項9記載の物品。
【請求項12】
コーティングは、0.2mm〜5mmの範囲内の厚さを有する、請求項9記載の物品。
【請求項13】
コンポーネントは、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、チタン、チタン合金、マグネシウム、又はマグネシウム合金のうちの少なくとも1つを含む、請求項9記載の物品。
【請求項14】
金属粉末コールドスプレーコーティングは、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金、ニオブ、ニオブ合金、ジルコニウム、ジルコニウム合金、銅、又は銅合金を含む、請求項9記載の物品。
【請求項15】
陽極酸化層は2ミル〜10ミルの厚さを有し、陽極酸化層は、40〜50%よりも低い空孔率を有する低空孔率層部と、40〜50%の空孔率を有する多孔質柱状層部とを含んでいる、請求項9記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、概して、半導体製造コンポーネント上の金属コーティング、及び基板に金属コーティングを塗布する方法に関する。
【0002】
半導体産業では、ますます減少するサイズの構造を作る多くの製造プロセスによって、デバイスは製造される。いくつかの製造プロセス(例えば、プラズマエッチング及びプラズマ洗浄プロセス)は、基板をエッチング又は洗浄するために、プラズマの高速流に基板を曝露する。プラズマは非常に腐食性である可能性があり、処理チャンバ及びプラズマに曝露される他の表面を腐食するかもしれない。この腐食は、処理される基板をしばしば汚染する粒子を生成する可能性があり、デバイス欠陥(すなわち、ウェハ上の欠陥(例えば、粒子及び金属汚染))に寄与する。
【0003】
デバイスの幾何学形状が縮小するにつれて、欠陥への感受性は増加し、粒子汚染の許容レベルは縮小される可能性がある。プラズマエッチングプロセス及び/又はプラズマ洗浄プロセスによって導入される粒子汚染を最小限に抑えるために、プラズマに耐性のあるチャンバ材料が開発されてきた。異なる材料は、異なる材料特性(例えば、耐プラズマ性、剛性、曲げ強度、耐熱衝撃性など)を提供する。また、異なる材料は、異なる材料コストを有する。したがって、いくつかの材料は、優れた耐プラズマ性を有し、他の材料は、より低いコストを有し、更に他の材料は、優れた曲げ強度及び/又は耐熱衝撃性を有する。
【0004】
一実施形態では、本方法は、半導体製造チャンバ内で使用するためのコンポーネントを提供する工程と、堆積チャンバ内にコンポーネントをロードする工程と、コンポーネント上にコーティングを形成するために、コンポーネント上に金属粉末をコールドスプレーコーティングする工程と、陽極酸化層を形成するために、コーティングを陽極酸化する工程とを含む。
【0005】
本方法はまた、コーティングを陽極酸化する前に、コンポーネントの平均表面粗さが、約20マイクロインチ未満となるようにコンポーネントを研磨する工程を含むことができる。コンポーネント上にコールドスプレーコーティングされる金属粉末は、約100m/s〜約1500m/sの範囲内の速度を有することができる。粉末は、窒素又はアルゴンのキャリアガスを介してスプレーすることができる。
【0006】
本方法は、コンポーネントとコーティングとの間にバリア層を形成するため、コールドスプレーコーティング後のコンポーネントを、約200℃〜約1450℃の範囲内の温度に約30分間を超えて加熱する工程を含むことができる。
【0007】
コーティングは、約0.1mm〜約40mmの範囲内の厚さを有することができる。コンポーネントは、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、チタン、チタン合金、マグネシウム、又はマグネシウム合金を含むことができる。金属粉末は、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金、ニオブ、ニオブ合金、ジルコニウム、ジルコニウム合金、銅、又は銅合金を含むことができる。
【0008】
コーティングの約1〜約50%が陽極酸化層を形成するために消費されることができる。コンポーネントは、シャワーヘッド、カソードスリーブ、スリーブライナードア、カソードベース、チャンバライン、又は静電チャックベースとすることができる。
【0009】
一実施形態では、物品は、プラズマエッチング用半導体製造チャンバ内で使用するためのコンポーネントと、コンポーネント上の金属粉末コールドスプレーコーティングと、コーティングで形成された陽極酸化層を含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本開示は、添付図面の図の中で、限定としてではなく、例として示され、同様の参照符号は同様の要素を示す。この開示における「一」又は「1つの」実施形態への異なる参照は、必ずしも同じ実施形態への参照ではなく、そのような参照は、少なくとも1つを意味することに留意すべきである。
【
図1】本発明の一実施形態に係る、基板上のコーティングを示す。
【
図2】本発明の一実施形態に係る、製造システムの例示的なアーキテクチャを示す。
【
図3】本発明の一実施形態に係る、基板にコーティングを塗布するプロセスを示す。
【
図4】本発明の一実施形態に係る、基板上のコーティングを陽極酸化するプロセスを示す。
【
図5】本発明の一実施形態に係る、基板上にコーティングを形成する方法を示す。
【0011】
開示の実施形態は、基板(例えば、半導体製造チャンバ内で使用するためのコンポーネント)にコーティングを塗布するための方法に向けられている。半導体製造チャンバ内で使用するためのコンポーネントは、コンポーネント上にコーティングを形成する金属粉末でコールドスプレーコーティングすることができ、コーティングは、陽極酸化層を形成するために陽極酸化させることができる。金属粉末のコールドスプレーコーティングは、攻撃的なプラズマ化学への耐性を増加させた緻密で適合性のあるコーティングを提供することができる。コーティングは、チャンバ内部の金属汚染レベルを低減させるために、高純度の材料で形成することができる。陽極酸化層を有するコーティングは、コンポーネントの寿命を増加させ、それは耐食性があるため、半導体製造時のウェハ上の欠陥を低減させることができる。したがって、粒子汚染のレベルを低減させることができる。
【0012】
コールドスプレーコーティングされるコンポーネントは、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、チタン、チタン合金、マグネシウム、又はマグネシウム合金で形成することができる。コンポーネントは、シャワーヘッド、カソードスリーブ、スリーブライナードア、カソードベース、チャンバライン、静電チャックベース、又は処理チャンバの別のコンポーネントとすることができる。また、コンポーネントは、コーティングを陽極酸化する前に、平均表面粗さを低下させるために研磨することができる。更に、コンポーネントは、コンポーネントとコーティングとの間にバリア層を形成するコーティングのコールドスプレーコーティングの後に加熱することができる。
【0013】
コンポーネント上にコールドスプレーコーティングされる金属粉末は、約100m/s〜約1500m/sの範囲内の速度を有することができ、窒素又はアルゴンのキャリアガスを介してスプレーすることができる。コーティングは、約0.1mm〜約40mmの範囲内の厚さを有することができる。金属粉末は、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金、ニオブ、ニオブ合金、ジルコニウム、ジルコニウム合金、銅、又は銅合金とすることができる。コーティングの約1〜50%が陽極酸化層を形成するために陽極酸化されることができる。
【0014】
用語「約」又は「およそ」は、本明細書で使用される場合、これらは、提示された公称値が±10%以内で正確であることを意味することを意図している。いくつかの実施形態は、半導体製造用プラズマエッチング装置内で使用されるコンポーネントを参照して本明細書中に記載されていることにも留意すべきである。しかしながら、このようなプラズマエッチング装置は、マイクロ電気機械システム(MEMS)デバイスを製造するために使用されてもよいことが理解されるべきである。
【0015】
図1は、一実施形態に係るコーティングを有するコンポーネント100を示す。コンポーネント100は、コールドスプレーコーティング104と陽極酸化層108を有する基板102を示す。一実施形態では、基板102は、半導体製造チャンバ内で使用するためのコンポーネント(例えば、シャワーヘッド、カソードスリーブ、スリーブライナードア、カソードベース、チャンバライナー、静電チャックベースなど)とすることができる。例えば、基板102は、アルミニウム、アルミニウム合金(例えば、Al6061、Al5058など)、ステンレス鋼、チタン、チタン合金、マグネシウム、マグネシウム合金から形成することができる。チャンバコンポーネント100は、表示を目的として図示されており、必ずしも縮尺通りではない。
【0016】
一実施形態では、基板102の平均表面粗さは、コールドスプレーコーティング104の形成前に調整される。例えば、基板102の平均表面粗さは、約15マイクロインチ〜約300マイクロインチの範囲内とすることができる。一実施形態では、基板は、約120マイクロインチで始まる、又は約120マイクロインチに調整された平均表面粗さを有する。平均表面粗さは、(例えば、ビーズブラスト又は研削によって)増加させることができる、又は(例えば、サンディング又は研磨により)減少させることができる。しかしながら、物品の平均表面粗さは、コールドスプレーコーティングのために既に適切であるかもしれない。したがって、平均表面粗さの調整は、オプションとすることができる。
【0017】
コールドスプレーコーティング104は、コールドスプレープロセスを介して形成することができる。一実施形態では、コールドスプレーコーティングは、金属粉末(例えば、アルミニウム(例えば、高純度アルミニウム)、アルミニウム合金、チタン、チタン合金、ニオブ、ニオブ合金、ジルコニウム、ジルコニウム合金、銅、又は銅合金)から形成することができる。例えば、コールドスプレーコーティング104は、約0.1mm〜約40mmの範囲内の厚さを有することができる。一例では、コールドスプレーコーティングの厚さは約1mmである。コールドスプレープロセスは、以下でより詳細に説明される。
【0018】
一実施形態では、コンポーネント100は、コールドスプレーコーティング104の塗布後に熱処理することができる。熱処理は、コールドスプレーコーティング104と基板102との間に反応ゾーン106を形成することによって、コールドスプレーコーティング104の基板102への接着強度を改善することにより、コールドスプレーコーティングを最適化することができる。
【0019】
続いて、陽極酸化層108は、コールドスプレーコーティング104をシールし、保護
するために、陽極酸化プロセスを介してコールドスプレー層104から形成することがで
きる。コールドスプレーコーティング104がアルミニウムから形成される例では、陽極
酸化層108は、Al
2O
3を形成することができる。陽極酸化層108は、約2ミル〜
約10ミルの範囲内の厚さを有することができる。一実施形態では、陽極酸化プロセスは
、シュウ酸又は硬質陽極酸化プロセスである。一例では、陽極酸化プロセスは、コールド
スプレーコーティング104の約20%〜約100%の間で陽極酸化し、これによって陽
極酸化層108を形成する。一実施形態では、コールドスプレーコーティング104の約
50%が陽極酸化される。陽極酸化プロセスは、以下でより詳細に説明される。
【0020】
更に、コールドスプレーコーティング104は、形成後に、比較的高い平均表面粗さを有する(例えば、約200マイクロインチの平均表面粗さを有する)ことができる。一実施形態では、コールドスプレーコーティング104の平均表面粗さは、陽極酸化の前に変更される。例えば、コールドスプレーコーティング104の表面は、化学機械研磨(CMP)又は機械的研磨又は他の適切な方法によって平滑化することができる。一例では、コールドスプレーコーティング104の平均表面粗さは、約2〜20マイクロインチの範囲内の粗さを有するように変更される。
【0021】
図2は、チャンバコンポーネント(例えば、
図1のコンポーネント100)を製造するための製造システム200の例示的なアーキテクチャを示している。製造システム200は、半導体製造において使用するための物品(例えば、シャワーヘッド、カソードスリーブ、スリーブライナードア、カソードベース、チャンバライン、又は静電チャックベース)を製造するためのシステムとすることができる。一実施形態では、製造システム200は、機器自動化層215に接続された処理機器201を含む。処理機器201は、コールドスプレーコーター203、ヒーター204、及び/又は陽極酸化装置205を含むことができる。製造システム200は、機器自動化層215に接続された1以上のコンピューティングデバイス220を更に含むことができる。代替の実施形態では、製造システム200は、より多くの又はより少ないコンポーネントを含むことができる。例えば、製造システム200は、機器自動化層215又はコンピューティングデバイス220無しで手動操作(例えば、オフライン)の処理機器201を含んでもよい。
【0022】
一実施形態では、湿式洗浄装置は、物品を湿式浴内に浸漬させる湿式洗浄プロセスを用いて(例えば、平均表面粗さ調整後又はコーティング又は層形成前に)物品を洗浄する。他の実施形態では、物品を洗浄するために代替タイプの洗浄装置(例えば、乾式洗浄装置)を用いてもよい。乾式洗浄装置は、熱を印加する、気体を印加する、プラズマを印加するなどによって物品を洗浄することができる。
【0023】
コールドスプレーコーター203は、物品の表面に金属コーティングをするように構成されたシステムである。例えば、金属コーティングは、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金、ニオブ、ニオブ合金、ジルコニウム、ジルコニウム合金、銅、又は銅合金などの金属の金属粉末から形成することができる。一実施形態では、コールドスプレーコーター203は、アルミニウム粉末が、高い速度で物品上にノズルから推進されるコールドスプレープロセスによって物品上にアルミニウムコーティングを形成し、これは以下でより詳細に説明される。ここで、物品及び/又はコールドスプレーコーター203のノズルは、均一なコーティングを達成するように操作することができるので、物品の表面は、均一にコーティングすることができる。一実施形態では、コールドスプレーコーター203は、コーティング中に物品を保持するためのチャックを備えた固定具を有することができる。コールドスプレーコーティングの形成は、以下でより詳細に説明される。
【0024】
一実施形態では、物品は、コールドスプレーコーティングが形成された後、一定期間の間、ヒーター204内で焼成(又は熱処理)することができる。ヒーター204は、ガス又は電気炉とすることができる。例えば、物品は、コーティング及び基板材料に応じて、約60℃〜約1500℃の間の温度で、0.5時間〜12時間、熱処理することができる。この熱処理は、コールドスプレーコーティングと物品との間に反応ゾーン又はバリア層を形成することができ、これはコールドスプレーコーティングの物品への接着を改善することができる。
【0025】
一実施形態では、陽極酸化装置205は、コールドスプレーコーティング上に陽極酸化層を形成するように構成されたシステムである。陽極酸化装置205は、電流供給装置、陽極酸化浴、及びカソード本体を含むことができる。例えば、導電性物品とすることができる物品は、陽極酸化浴に浸漬される。陽極酸化浴は、硫酸又はシュウ酸を含むことができる。物品がアノードとして作用し、カソード本体がカソードとして作用するように、電流が物品に印加される。その後、陽極酸化層が、物品上のコールドスプレーコーティング上に形成され、これは、以下でより詳細に説明される。
【0026】
機器自動化レイヤー215は、製造機械201の一部又は全部をコンピューティングデバイス220と、他の製造機械と、計測ツール及び/又は他のデバイスと相互接続することができる。機器自動化レイヤー215は、ネットワーク(例えば、位置エリアネットワーク(LAN))、ルータ、ゲートウェイ、サーバ、データストアなどを含むことができる。製造機械201は、SEMI Equipment Communications Standard/Generic Equipment Model(SECS/GEM)インタフェースを介して、イーサネット(登録商標)インタフェースを介して、及び/又は他のインタフェースを介して、機器自動化レイヤー215に接続することができる。一実施形態では、機器自動化レイヤー215は、プロセスデータ(例えば、プロセス実行中に製造機械201によって収集されたデータ)をデータストア(図示せず)に保存可能にする。代替の一実施形態では、コンピューティングデバイス220は、1以上の製造機械201に直接接続する。
【0027】
一実施形態では、一部又は全部の製造機械201は、プロセスレシピをロード、ストア、及び実行することができるプログラマブルコントローラを含む。プログラマブルコントローラは、製造機械201の温度設定、ガス及び/又は真空の設定、時間の設定等を制御することができる。プログラマブルコントローラは、メインメモリ(例えば、リードオンリーメモリ(ROM)、フラッシュメモリ、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)、スタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)など)、及び/又は二次メモリ(例えば、データ記憶装置(例えば、ディスクドライブ))を含むことができる。メインメモリ及び/又は二次メモリは、本明細書に記載の熱処理プロセスを実行するための命令を記憶することができる。
【0028】
プログラマブルコントローラはまた、メインメモリ及び/又は二次メモリに(例えば、バスを介して)結合された処理デバイスを含み、これによって命令を実行することができる。処理デバイスは、汎用処理デバイス(例えば、マイクロプロセッサ、中央処理装置等)であってもよい。処理デバイスはまた、専用処理デバイス(例えば、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、ネットワークプロセッサ等)であってもよい。一実施形態では、プログラマブルコントローラは、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)である。
【0029】
図3は、物品又は基板上にコールドスプレーコーティングを形成するためのコールドスプレープロセス製造システム300の例示的なアーキテクチャを示している。製造システム300は、基板306を載置するためのステージ304(又は固定具)を含むことができる堆積チャンバ302を含む。一実施形態では、基板306は、
図1の基板102とすることができる。酸化を回避するために、堆積チャンバ302内の空気圧は、真空システム308を介して低減させることができる。金属粉末316(例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金、ニオブ、ニオブ合金、ジルコニウム、ジルコニウム合金、銅、又は銅合金)を含む粉末チャンバ310は、金属粉末316を推進させるためのキャリアガス318を含むガス容器312に結合される。コールドスプレーコーティングを形成するために基板306上に金属粉末316を向けるためのノズル314は、粉末チャンバ310に結合される。
【0030】
基板306は、半導体製造用に使用されるコンポーネントとすることができる。コンポーネントは、エッチングリアクタ又は熱反応器のコンポーネント、半導体処理チャンバのコンポーネントなどとすることができる。コンポーネントの例は、シャワーヘッド、カソードスリーブ、スリーブライナードア、カソードベース、チャンバライナー、静電チャックベースなどを含む。基板306は、アルミニウム、アルミニウム合金(例えば、Al6061、Al5058など)、ステンレス鋼、チタン、チタン合金、マグネシウム、及びマグネシウム合金、又は半導体製造チャンバのコンポーネントで使用される任意の他の導電性材料から部分的に又は全体的に形成することができる。
【0031】
一実施形態では、基板306の表面は、コールドスプレーコーティングの形成前に、コーティングの接着性を向上させるために、約100マイクロインチ未満の平均表面粗さに粗面化することができる。
【0032】
基板306は、コーティングの堆積中に堆積チャンバ302内のステージ304上に取り付けることができる。ステージ304は、一次元、二次元、又は三次元に移動させることができる、及び/又は1以上の方向の周りに回転/傾斜させることができる可動ステージ(例えば、電動ステージ)であってもよい。したがって、ステージ304は、キャリアガス中でノズル314から推進される金属粉末316による基板306のコーティングを促進するために、異なる位置に移動させることができる。例えば、コールドスプレーを介したコーティングの塗布は、直進的プロセスであるので、基板306の異なる部分又は面をコーティングするために、ステージ304を移動させることができる。コーティングが必要な異なる面又は複雑な幾何学的形状を基板306が有する場合、アセンブリ全体をコーティングすることができるように、ステージ304は、ノズル314に対して基板306の位置を調整することができる。換言すれば、ノズル314は、様々な角度及び向きから、基板306の特定の部分に選択的に向けることができる。一実施形態では、ステージ304はまた、コーティング形成中に物品の温度を調節するための冷却又は加熱チャネルを有することができる。
【0033】
一実施形態では、製造システム300の堆積チャンバ302は、堆積チャンバ302内に真空が存在するように、真空システム308を用いて排気することができる。例えば、堆積室302内の圧力は、約0.1ミリトール未満まで低減させることができる。堆積チャンバ302内に真空を提供することは、コーティングの塗布を促進することができる。例えば、堆積チャンバ302が真空下にある場合、ノズルから推進される金属粉末316は、金属粉末316が基板306へと進むとき、より少ない抵抗に遭遇する。したがって、金属粉末316は、より高い速度で基板306に衝突することができ、これは基板306への付着及びコーティングの形成を促進し、アルミニウムのような高純度材料の酸化レベルを低下させるのを助けることができる。
【0034】
ガス容器312は、加圧されたキャリアガス318(例えば、窒素又はアルゴン)を保持している。加圧されたキャリアガス318は、ガス容器312から粉末チャンバ310まで圧力下で進む。加圧されたキャリアガス318が、粉末チャンバ310からノズル314まで進むとき、キャリアガス318は、金属粉末316の一部をノズル314へ向けて推進する。一例では、ガス圧は、約50〜約1000psiの範囲内とすることができる。一例では、ガス圧は、アルミニウム粉末に対して約500psiである。別の一例では、ガス圧は、錫及び亜鉛粉末に対して約100psi未満である。
【0035】
一実施形態では、ガス温度は、約100〜約1000℃の範囲内である。別の一例では、ガス温度は、約325〜約500℃の範囲内である。一実施形態では、ノズルでのガス温度は、約120〜約200℃の範囲内である。基板306に衝突する金属粉末の温度は、ガス温度、移動速度、及び基板306の大きさに依存する可能性がある。
【0036】
一実施形態では、コーティング粉末316は、一定の流動性を有する。一例では、粒子
は、約1ミクロン〜約200ミクロンの範囲内の直径を有することができる。一例では、
粒子は、約1ミクロン〜約50ミクロンの範囲内の直径を有することができる。
【0037】
金属粉末316の懸濁物を推進するキャリアガス318が、ノズル314の開口部から堆積チャンバ302に入るとき、金属粉末316は、基板306に向かって推進される。一実施形態では、キャリアガス318は、コーティング粉末316が約100m/s〜約1500m/sの速度で基板306に向かって推進されるように加圧される。例えば、コーティング粉末は、約300m/s〜約800m/sの速度で基板に向かって推進されることができる。
【0038】
一実施形態では、ノズル314は、耐摩耗性であるように形成される。高い速度でノズル314を通してコーティング粉末316を移動させるので、ノズル314は、急速に摩耗し劣化する可能性がある。しかしながら、ノズル314は、摩耗を最小化又は低減するような、及び/又はノズルを消耗部品とすることができるような形状に及び材料から形成することができる。一実施形態では、ノズルの直径は、約1ミリメートル(mm)〜約15mmの範囲内とすることができる。一例では、ノズルの直径は、約3mm〜約12mmの範囲内とすることができる。例えば、ノズルの直径は、アルミニウム粉末に対して約6.3mmとすることができる。一実施形態では、ノズルスタンドオフ(すなわち、ノズル314から基板306までの距離)は、約5mm〜約200mmの範囲内とすることができる。例えば、ノズルスタンドオフは、約10mm〜約50mmの範囲内とすることができる。
【0039】
基板306に衝突すると、金属粉末316の粒子は、運動エネルギーから破砕・変形し、これによって基板306に接着するアンカー層を生成する。金属粉末316の塗布が継続するとき、粒子は互いに接着することによってコールドスプレーコーティング又はフィルムとなる。基板306上のコールドスプレーコーティングは、基板306上でのコーティング粉末316の粒子の連続的な衝突によって成長し続ける。換言すると、粒子は互いに及び基板と高速で機械的に衝突し、これによって緻密な層を形成するようにより小さな破片に砕ける。特に、コールドスプレーでは、粒子は、溶融・リフローしない可能性がある。
【0040】
一実施形態では、金属粉末316の粒子の粒子結晶構造は、基板306への塗布後も維持する。一実施形態では、粒子が基板306に衝突する際により小さな破片に砕けることに起因して運動エネルギーが熱エネルギーに変換するとき、部分溶融が発生する可能性がある。これらの粒子は、密に結合される可能性がある。上述のように、基板306上での金属粉末の温度は、ガス温度、移動速度、及び基板306の大きさ(例えば、熱質量)に依存する可能性がある。
【0041】
一実施形態では、コーティング堆積速度は、約1〜約50グラム/分の範囲内とすることができる。例えば、コーティング堆積速度は、アルミニウム粉末に対して、約1〜約20グラム/分の範囲内とすることができる。より緻密なコーティングは、より遅い供給とより高速なラスター(すなわち、移動速度)を達成することができる。一実施形態では、効率は、約10パーセント〜約90パーセントの範囲内である。例えば、効率は、約30%〜約70%の範囲内とすることができる。より高い温度及びより高いガス圧は、高効率につながることができる。
【0042】
一実施形態では、約2マイクロインチ〜約300マイクロインチの範囲内の平均表面粗さ(特定の一実施形態では、約120マイクロインチの表面粗さ)を達成するために、コーティングの平均表面粗さは、(例えば、ビーズブラスト又は研削によって)増加させることができる、又は(例えば、サンディング又は研磨によって)減少させることができる。例えば、コーティングは、約20ミクロン〜約300ミクロンの範囲内の直径を有するAl
2O
3粒子でビーズブラストすることができる。一例では、粒子は、約100ミクロン〜約150ミクロンの範囲内の直径を有することができる。一実施形態では、コーティングの約10パーセント〜約50パーセントが、平均表面粗さの調整の際に除去される可能性がある。しかしながら、物品の平均表面粗さは、既に適切である可能性があるので、平均表面粗さの調整は、オプションとすることができる。
【0043】
(高温で行われる熱的手法である)プラズマ溶射を介するコーティングの塗布とは異なり、一実施形態を介するコールドスプレーコーティングの塗布は、室温又は室温付近で行うことができる。例えば、コールドスプレーコーティングの塗布は、ガス温度、移動速度、及びコンポーネントのサイズに応じて、約15℃〜約100℃で行うことができる。コールドスプレー堆積の場合、基板は加熱されず、塗布プロセスはコーティングされる基板の温度を大幅に増加させない。
【0044】
更に、実施形態に係るコーティングは、凝固収縮に起因して、酸化物含有物をほとんど又は全く有さず、低い多孔性を有することができる。
【0045】
一実施形態では、コールドスプレーコーティングは、非常に緻密(例えば、約99%を超える密度)とすることができる。また、コールドスプレーコーティングは、中間層無しで、基板への良好な接着性(例えば、アルミニウムコーティングに対して、約4500psi)を有することができる。
【0046】
典型的には、粉末とコールドスプレーコーティングとの間の熱誘導の差異は、ほとんど又は全く無い。換言すれば、粉末内にあるものは、コーティング内にある。また、典型的には、コールドスプレー中に、基板又はコンポーネントの微細構造にほとんど又は全く損傷を与えない。また、コールドスプレーコーティングは、一般的に、高硬度及び冷間加工微細構造を示す。大量の冷間加工は、延性コーティング材料の激しい塑性変形によって生じ、これはコーティングの機械的特性及び腐食特性に対して有益である非常に微細な粒子構造をもたらす。
【0047】
コールドスプレーコーティングは、一般的に、コーティング層内でのコーティングの剥離又はマクロ又はミクロな割れを低減するのに役立つ圧縮モードである。
【0048】
一実施形態では、傾斜堆積は、所望の機械的特性及び腐食特性を有する複合層を達成するために使用することができる。例えば、アルミニウム層が最初に堆積され、銅層がアルミニウム層の上に堆積される。
【0049】
一実施形態では、コーティングされた基板306は、ポストコーティング処理を施すことができる。ポスト洗浄プロセスは、コーティングと基板との間のコーティング界面を更に制御し、これによって接着性を改善及び/又はバリア層又は反応ゾーンを作成することができる熱処理とすることができる。一実施形態では、コーティングされた基板は、約30分を超える間、約200℃〜約1450℃の範囲内の温度に加熱することができる。例えば、Y層は、約750℃に加熱し、これによってY層の表面をY
2O
3に酸化し、こうして耐食性を向上させることができる。
【0050】
一実施形態では、コーティングと基板との間のバリア層又は反応ゾーンの形成は、コーティングを貫通するプロセス化学の下地基板との反応を禁止する。これは、剥離の発生を最小限に抑えることができる。反応ゾーンは、セラミックスコーティングの接着強度を高めることができ、剥離を最小に抑えることができる。例えば、バリア層は、2つの材料間に形成された金属間化合物又は固溶体(例えば、Al層とTi層との間のAlTiの金属間物質又は固溶体)の領域とすることができる。
【0051】
反応ゾーンは、温度と時間に依存した速度で成長する。温度と熱処理時間が増加するにつれて、反応ゾーンの厚さも増加する。したがって、コンポーネントを熱処理するために使用される温度(又は複数の温度)と時間は、約5ミクロンよりも厚くない反応ゾーンを形成するように選択されるべきである。一実施形態では、温度及び時間は、約0.1ミクロン〜約5ミクロンの反応ゾーンを形成させるように選択される。一実施形態では、反応ゾーンは、処理中にガスがセラミックス基板と反応するのを防止するのに十分な最小厚さ(例えば、約0.1ミクロン)を有する。一実施形態では、バリア層は、1〜2ミクロンの目標厚さを有する。
【0052】
図4は、一実施形態に係る、コールドスプレーコーティング409から陽極酸化層411を形成するために、物品403を陽極酸化するためのプロセス400を示す。例えば、物品403は、
図1の基板102とすることができる。陽極酸化は、物品403の表面の微細組織を変化させる。したがって、
図4は、例示のみを目的としており、一定の縮尺でない可能性がある。陽極酸化処理の前に、物品403は、硝酸浴中で洗浄することができる。洗浄は、陽極酸化前に脱酸素を行ってもよい。
【0053】
コールドスプレーコーティング409を有する物品403は、カソード本体405と共に陽極酸化浴401に浸漬される。陽極酸化浴は、酸性溶液を含むことができる。アルミニウムコーティングを陽極酸化するためのカソード本体の例は、アルミニウム合金(例えば、Al6061及びAl3003)並びに炭素体を含む。陽極酸化層411は、物品403がアノード(正極)である電流供給装置407を介して、電解質又は酸性溶液を通して電流を流すことにより、物品403上のコールドスプレーコーティング409から成長される。電流供給装置407は、電池又は他の電源とすることができる。電流は、カソード本体405(例えば、負電極)で水素を放出し、コールドスプレーコーティング409の表面で酸素を放出し、これによってコールドスプレーコーティング409上に陽極酸化層411を形成する。陽極酸化層は、アルミニウムコールドスプレーコーティング409の場合、酸化アルミニウムである。一実施形態では、種々の溶液を用いて陽極酸化を可能にする電圧は、1〜300Vの範囲である。一実施形態では、電圧は、15〜21Vの範囲である。陽極酸化電流は、陽極酸化されるアルミニウム本体405の面積によって異なり、30〜300アンペア/メートル
2(2.8〜28アンペア/ft
2)の範囲とすることができる。
【0054】
酸性溶液が、細孔(例えば、柱状ナノ細孔)の層を形成するために、コールドスプレーコーティング409の表面を溶解(すなわち、消費又は変質)する。陽極酸化層411は、ナノ細孔のこの層から成長し続ける。ナノ細孔は、約10nm〜約50nmの範囲内の直径を有することができる。一実施形態では、ナノ細孔は、約30nmの平均直径を有する。
【0055】
酸溶液は、シュウ酸、硫酸、シュウ酸と硫酸との組み合わせとすることができる。シュ
ウ酸については、陽極酸化層成長に対する物品の消費量の比率は、約1:1である。電解
質濃度、酸性度、溶液温度、及び電流は、コールドスプレーコーティング409から一貫
した酸化アルミニウムの陽極酸化層411を形成するように制御される。一実施形態では
、陽極酸化層411は、約300nm〜約200ミクロンの範囲内の厚さを有するように
成長させることができる。一実施形態では、陽極酸化層の形成は、約5パーセント〜約1
00パーセントの範囲内のコールドスプレーコーティングの割合を消費する。一例では、
陽極酸化層の形成は、コールドスプレーコーティングの約50%を消費する。
【0056】
一実施形態では、電流密度は、陽極酸化層の非常に緻密な(>99%)バリア層部分を成長させるために、最初は高く(>99%)、その後、電流密度は、陽極酸化層の多孔質柱状層部分を成長させるために低減される。陽極酸化層を形成するためにシュウ酸が使用される一実施形態では、空孔率は、約40%〜約50%の範囲内にあり、孔は、約10nm〜約50nmの範囲内の直径を有する。
【0057】
一実施形態では、陽極酸化層の平均表面粗さ(Ra)は、約15マイクロインチ〜約300マイクロインチの範囲内であり、これは物品の初期粗さと同様である可能性がある。一実施形態では、平均表面粗さは、約120マイクロインチである。
【0058】
表Aは、Al6061物品、及びAl6061物品上の陽極酸化されたコールドスプレー高純度Alコーティング内における金属不純物を検出するために使用された誘導結合プラズマ質量分析(ICPMS)の結果を示す。この例では、Al6061物品上の陽極酸化されたコールドスプレー高純度Alコーティングは、コーティング無しの6061Alコンポーネントよりもかなり微量の金属汚染を示した。
【表A】
【0059】
図5は、本開示の実施形態に係る、コーティングされたコンポーネントを製造するための方法500を示すフローチャートである。方法500は、
図2の製造システム200を用いて実行することができる。
【0060】
ブロック502では、半導体製造環境で使用するためのコンポーネントが提供される。例えば、コンポーネントは、上述したような基板(例えば、シャワーヘッド、カソードスリーブ、スリーブライナードア、カソードベース、チャンバライナー、静電チャックベースなど)とすることができる。例えば、基板は、アルミニウム、アルミニウム合金(例えば、Al6061、Al5058など)、ステンレス鋼、チタン、チタン合金、マグネシウム、及びマグネシウム合金から形成することができる。
【0061】
ブロック504では、コンポーネントは、堆積チャンバ内にロードされる。堆積チャンバは、上述の堆積チャンバ302とすることができる。
【0062】
ブロック506では、コールドスプレーコーティングは、コンポーネント上にナノ金属粉末を噴霧することにより、コンポーネント上にコーティングされ、そこでコールドスプレーコーティングは、約0.5mm〜約2mmの範囲内の厚さを有することができる。例えば、金属粉末は、アルミニウム(例えば、高純度アルミニウム)、アルミニウム合金、チタン、チタン合金、ニオブ、ニオブ合金、ジルコニウム、ジルコニウム合金、銅、又は銅合金を含むことができる。金属粉末は、気体(例えば、窒素又はアルゴン)中に懸濁させてもよい。
【0063】
ブロック508では、本方法は、一実施形態によれば、コンポーネントとコーティングとの間に反応ゾーン又はバリア層を形成するために、コーティングされたコンポーネントを熱処理する工程を更に含む。例えば、コーティングされたコンポーネントは、30分間を超えて1450℃に加熱することができる。
【0064】
ブロック510では、本方法は、一実施形態によれば、コンポーネントの表面を準備する工程を更に含む。例えば、コールドスプレーコーティングは、理想的ではない平均表面粗さを有する可能性がある。したがって、コールドスプレーコーティングの平均表面粗さは、平均表面粗さを低下させるために(例えば、研磨によって)平滑化することができ、又は平均表面粗さを高めるために(例えば、ビーズブラスト又は研削によって)粗くすることができる。
【0065】
ブロック512では、コールドスプレーコーティングは、陽極酸化層を形成するために陽極酸化される。コールドスプレーコーティングがアルミニウムである一例では、陽極酸化層は、酸化アルミニウムとすることができ、陽極酸化層の形成は、約5パーセント〜約100%の範囲内でコールドスプレーコーティングの割合を消費することができる。
【0066】
前述の説明は、本開示のいくつかの実施形態の良好な理解を提供するために、具体的なシステム、コンポーネント、方法等の例などの多数の具体的な詳細を説明している。しかしながら、本開示の少なくともいくつかの実施形態は、これらの具体的な詳細なしに実施することができることが当業者には明らかであろう。他の例では、周知のコンポーネント又は方法は、本開示を不必要に不明瞭にしないために、詳細には説明しないか、単純なブロック図形式で提示されている。したがって、説明された具体的な詳細は、単なる例示である。特定の実装では、これらの例示的な詳細とは異なる場合があるが、依然として本発明の範囲内にあることが理解される。
【0067】
本明細書全体を通して「1つの実施形態」又は「一実施形態」への参照は、その実施形態に関連して記載された特定の構成、構造、又は特性が少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味している。したがって、本明細書を通じて様々な場所における「1つの実施形態では」又は「一実施形態では」という語句の出現は、必ずしも全て同じ実施形態を指すものではない。また、用語「又は」は、排他的な「又は」ではなく包含的な「又は」を意味することを意図している。
【0068】
本明細書内の本方法の操作が、特定の順序で図示され説明されているが、特定の操作を逆の順序で行うように、又は特定の操作を少なくとも部分的に他の操作と同時に実行するように、各方法の操作の順序を変更することができる。別の一実施形態では、異なる操作の命令又は副操作は、断続的及び/又は交互の方法とすることができる。
【0069】
なお、上記の説明は例示であり、限定的ではないことを意図していることが理解されるべきである。上記の説明を読み理解することにより、多くの他の実施形態が当業者にとって明らかとなるであろう。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲を、そのような特許請求の範囲が権利を与える均等物の全範囲と共に参照して決定されるべきである。