(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6582461
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】樹脂組成物及び易剥離性フィルム
(51)【国際特許分類】
C08L 23/08 20060101AFI20190919BHJP
C08L 23/06 20060101ALI20190919BHJP
C08L 23/10 20060101ALI20190919BHJP
C08L 91/06 20060101ALI20190919BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20190919BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
C08L23/08
C08L23/06
C08L23/10
C08L91/06
B32B27/32 103
B65D65/40 D
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-52564(P2015-52564)
(22)【出願日】2015年3月16日
(65)【公開番号】特開2016-172794(P2016-172794A)
(43)【公開日】2016年9月29日
【審査請求日】2018年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】森下 功
【審査官】
安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2004/067626(WO,A1)
【文献】
国際公開第2004/104088(WO,A1)
【文献】
特開2007−112955(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/08
C08L 23/06
C08L 23/10
C08L 91/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
JIS K6922−1(1998年)に準拠して測定したメルトマスフローレートが3〜50g/10分、密度が870〜920kg/m3であるエチレン・α−オレフィン共重合体樹脂(A)40〜87重量%、JIS K7210に準拠して測定したメルトマスフローレートが0.5〜10g/10分である結晶性ポリプロピレン(B)10〜40重量%、平均分子量1,000〜10,000の低分子量ポリエチレンワックス(C)3〜20重量%((A)、(B)、(C)の合計量は100重量%)を含み、全配合物をJIS K6922−1に準拠して測定したメルトマスフローレート(以下MFR(A+B+C))が5〜20g/10分であることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
エチレン・α−オレフィン共重合体樹脂(A)が、下記の(a)〜(c)の要件を満たすことを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
(a)重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が3以下
(b)示差走査型熱量計による昇温測定において得られる吸熱曲線の最大ピーク位置の温度(Tm(℃))と赤外線吸収スペクトルの測定から求められる炭素数1000個当りの短鎖分岐数(SCB)とが(1)式の関係を満たす
Tm<−1.8×SCB+140 (1)
(c)α−オレフィンの炭素数が4以上12以下
【請求項3】
エチレン・α−オレフィン共重合体樹脂(A)が、下記の(d)及び(e)の要件を満たすエチレン・α−オレフィン共重合体(A1)と(f)及び(g)の要件を満たすエチレン・α−オレフィン共重合体(A2)とからなり、エチレン・α−オレフィン共重合体(A1)とエチレン・α−オレフィン共重合体(A2)の配合比率が20/80重量%〜80/20重量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
(d)JIS K6922−1(1998年)による密度が870〜895kg/m3
(e)JIS K6922−1(1998年)によるメルトマスフローレートが0.1〜5g/10分
(f)JIS K6922−1(1998年)による密度が895〜920kg/m3
(g)JIS K6922−1(1998年)によるメルトマスフローレートが8〜30g/10分
【請求項4】
結晶性ポリプロピレン(B)が、プロピレンとエチレンのランダム共重合体、プロピレンとエチレンと1−ブテンのランダム共重合体より選ばれる少なくとも1種以上である請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物からなる熱融着層を少なくとも基材の片面に備えた易剥離性フィルム。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物からなる熱融着層を備え、他層にプロピレン系樹脂又はエチレン系樹脂を用いて2層以上となるように共押出成形したことを特徴とする易剥離性フィルム。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の易剥離性フィルムから作成された包装袋。
【請求項8】
請求項5又は6に記載の易剥離性フィルムから作成された蓋材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン・α−オレフィン共重合体を含む樹脂組成物、及び易剥離性フィルムに関し、詳しくはシール層同士をヒートシールする包装袋に適した樹脂組成物及びそれよりなる易剥離性フィルムであり、更に詳しくは低温ヒートシール性に優れ、剥離強度と剥離外観に優れる樹脂組成物、及び易剥離性フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレンフィルムは、ヒートシール性や耐熱性、耐油性に優れることから、各種飲食品や医薬品の包装材料として広く用いられている。一方、これらの包装材料は、近年、様々な性能に対する要求が高度化してきている。例えば、使用者が容易に内容物を取り出すことができるような性質である易開封性が求められているが、ポリプロピレンフィルムは高いシール強度を示すことから、シール部を容易に開封することが困難であった。また、包装工程の生産性を向上させるため内容物充填の高速化も求められているが、ポリプロピレンは耐熱性に優れる反面、低温や短時間でのシール性に劣るため、高速充填が容易でなかった。
【0003】
かかる課題を解消するため、ヒートシール性が改良された易剥離性フィルムが提案され、例えば、ポリプロピレンを主成分とする材料同士が封着されてなる封着界面を有し、該封着界面を構成する材料の少なくとも一方にエチレン−プロピレン系合成ゴムを10〜30重量%配合したポリプロピレン組成物とすることを特徴とした剥離容易な密封包装容器が提案されている(例えば特許文献1参照。)。
【0004】
また、ポリプロピレン系樹脂、密度が930kg/m
3以下のエチレン・α−オレフィンランダム共重合樹脂及びポリエチレン組成物からなるシール層を有する多層シートが提案されている(例えば特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭47−35876号公報
【特許文献2】特開2000−355358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に提案されたポリプロピレン組成物や特許文献2に提案されたポリエチレン組成物を含むポリプロピレン組成物は、密封性と易開封性のバランスの点で必ずしも満足できるものではなく、特に易開封性が劣ったものとなる傾向のあるものであった。
【0007】
そこで、低温シール性、易剥離性、剥離強度、剥離外観に優れた積層体や包装袋を提供することのできる樹脂組成物、及び易剥離性フィルムが切望されていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題に対し鋭意検討した結果、特定のエチレン・α−オレフィン共重合樹脂と結晶性ポリプロピレンと低分子量ポリエチレンワックスを特定の割合で配合することにより、著しく低温シール性、易剥離性、剥離強度、剥離外観に優れた易剥離性フィルムや包装袋などを提供することのできる樹脂組成物となることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
即ち、本発明は、JIS K6922−1(1998年)に準拠して測定したメルトマスフローレートが3〜50g/10分、密度が870〜920kg/m
3であるエチレン・α−オレフィン共重合体樹脂(A)40〜87重量%、JIS K7210に準拠して測定したメルトマスフローレートが0.5〜10g/10分である結晶性ポリプロピレン(B)10〜40重量%、平均分子量1,000〜10,000の低分子量ポリエチレンワックス(C)3〜20重量%((A)、(B)、(C)の合計は100重量%)を含み、全配合物をJIS K6922−1に準拠して測定したメルトマスフローレート(以下、MFR(A+B+C))が5〜20g/10分であることを特徴とする樹脂組成物に関するものである。
【0010】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の樹脂組成物を構成するエチレン・α−オレフィン共重合体(A)としては、JIS K6922−1(1998年)によるメルトマスフローレート(以下、MFR−Aと記す場合がある。)が3〜50g/10分の範囲にあるものである。MFR−Aが3g/10分未満では、溶融せん断粘度が高くなって押出機への負荷が大きくなるとともに、ドロ−ダウン性も悪くなるために好ましくない。一方、50g/10分を超える場合は、溶融膜の安定性や厚み精度が悪いなど成形安定性が悪くなる。
【0011】
本発明の樹脂組成物を構成するエチレン・α−オレフィン共重合体(A)としては、JIS K6922−1(1998年)で測定した密度が870〜920kg/m
3の範囲にある。密度が920kg/m
3を超える場合は、エチレン・α−オレフィン共重合体(A)の融点が高く、低温ヒートシール性が悪化するため好ましくない。一方、密度が870kg/m
3未満であると、フィルムの自己粘着性が増して、ブロッキングが起こるので好ましくない。
【0012】
本発明の樹脂組成物を構成するエチレン・α−オレフィン共重合体(A)としては、一般にエチレン・α−オレフィン共重合体と称される範疇に属するものであれば如何なるものを用いることも可能である。α−オレフィンとしては特に限定はないものの、炭素数4〜12の1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデカン等が例示できる。これらのエチレン・α−オレフィン共重合体(A)はチーグラー系触媒またはクロム系触媒、メタロセン触媒を使用して、エチレンとα−オレフィンを共重合することにより、好適に製造することができる。重合方法としては、溶液重合法、高圧重合法、気相重合法等が挙げられる。さらに、このエチレン・α−オレフィン共重合体(A)は、ゲル浸透クロマトグラフィを用いて、以下に示す条件下で、単分散ポリスチレンでユニバーサルな検量線を測定し、直鎖のポリエチレンの分子量として計算した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が3以下であることが、低温ヒートシール性に優れるため好ましい。
機種:ウォーターズ社製 150C ALC/GPC
溶媒:1,2,4−トリクロロベンゼン
流速:1ml/min
温度:140℃
測定濃度:30mg/30ml
注入量:100μl
カラム:東ソー(株)製 TSKgel GMH HR−H 3本
また、このエチレン・α−オレフィン共重合体(A)は、示差走査型熱量計による昇温測定において得られる吸熱曲線の最大ピーク位置の温度(Tm(℃))と赤外線吸収スペクトルの測定から求められる炭素数1000個当りの短鎖分岐数(SCB)とが(1)式の関係を満たすものであると、エチレン・α−オレフィン共重合体の組成分布が狭く、低温ヒートシール性を悪化させる低密度(高分岐数)成分が少なく、好ましい。
【0013】
Tm<−1.8×SCB+140 (1)
さらに、このエチレン・α−オレフィン共重合体(A)は、エチレン・α−オレフィン共重合体(A)の5℃におけるキシレン可溶分率(Sx(重量%))と密度が(2)式で示される関係を満たすものが、低温ヒートシール性の経時変化が少ないため好ましい。
【0014】
Sx<250×(D−880)−1.5+0.5×log10MFR (2)
5℃におけるキシレン可溶分率とは、エチレン・α−オレフィン共重合体中に含まれるα−オレフィン濃度の高い低分子量エチレン・α−オレフィン共重合体の重量分率を表すものである。
【0015】
また、キシレン可溶分(Sx(重量%))が(2)式を満たす場合、該樹脂組成物をフィルム加工に供し得られる積層体から発生する臭気は少なくなるので好ましい。
このようなエチレン・α−オレフィン共重合体(A)は、例えば、以下に例示するような公報に開示されている方法によって製造することができる。
【0016】
特開昭60−35006号公報、特開昭60−35007号公報、特開昭60−35008号公報、特開平3−163088号公報、特開昭61−296008号公報、特開昭63−22804号公報、特開昭58−19309号公報、特開昭63−61010号公報、特開昭63−152608号公報、特開昭63−264606号公報、特開昭63−280703号公報、特開昭64−6003号公報、特開平1−95110号公報、特開平3−62806号公報、特開平1−259004号公報、特開昭64−45406号公報、特開昭60−106808号公報、特開昭60−137911号公報、特開昭61−296008号公報、特許公表63−501369号公報、特開昭61−221207号公報、特開平2−22307号公報、特開平2−173110号公報、特開平2−302410号公報、特開平1−129003号公報、特開平1−210404号公報、特開平3−66710号公報、特開平3−70710号公報、特開平1−207248号公報、特開昭63−222177号公報、特開昭63−222178号公報、特開昭63−222179号公報、特開平1−12407号公報、特開平1−301704号公報、特開平1−319489号公報、特開平3−74412号公報、特開昭61−264010号公報、特開平1−275609号公報、特開昭63−251405号公報、特開昭64−74202号公報、特開平2−41303号公報、特開平1−31488号公報、特開平3−56508号公報、特開平3−70708号公報、特開平3−70709号公報などが挙げられる。また、該エチレン・α−オレフィン共重合体(A)は、市販品であっても良い。
【0017】
本発明の樹脂組成物を構成するエチレン・α−オレフィン共重合体(A)は、低温シール性と耐ブロッキング性が良好となるため、下記の(d)及び(e)の要件を満たすエチレン・α−オレフィン共重合体(A1)と(f)及び(g)の要件を満たすエチレン・α−オレフィン共重合体(A2)からなることが好ましい。
(d)JIS K6922−1(1998年)による密度が870〜895kg/m
3
(e)JIS K6922−1(1998年)によるメルトマスフローレートが0.1〜5g/10分
(f)JIS K6922−1(1998年)による密度が895〜920kg/m
3
(g)JIS 6922−1(1998年)によるメルトマスフローレートが8〜30g/10分
エチレン・α−オレフィン共重合体(A1)とエチレン・α−オレフィン共重合体(A2)の混合割合(A1/A2)は低温シール性と耐ブロッキング性が良好となるため20/80〜80/20重量%であることが好ましく、35/65〜65/35重量%であると更に好ましい。
【0018】
本発明の樹脂組成物を構成する結晶性ポリプロピレン(B)としては、一般にポリプロピレンと称される範疇に属するものであれば如何なるものを用いることも可能であり、通常、密度890〜930kg/m
3程度のプロピレン単独重合体、プロピレンと他の少量のα−オレフィンとの共重合体である。共重合体においては、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であっても良い。プロピレンの共重合体における他のα−オレフィンとしては、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテン、などの炭素原子数が2〜20程度のα−オレフィンを例示することができる。このような他のα−オレフィンは、1種単独で又は2種以上組み合わせて共重合させても良い。そして、その中でも特に、低温シール性、易剥離性、剥離強度、剥離外観に優れた易剥離性フィルムや積層体等を提供することが可能となる樹脂組成物となることから、プロピレンとエチレンのランダム共重合体、プロピレンとエチレンと1−ブテンのランダム共重合体より選ばれる少なくとも1種以上であることが好ましい。
【0019】
そして、該結晶性ポリプロピレン(B)の製造方法としては、ポリプロピレンが得られる限りにおいて如何なる方法を用いてもよく、例えば、典型的には固体状チタン触媒成分と有機金属化合物触媒成分から形成される触媒、あるいはこれら両成分及び電子供与体から形成される触媒、若しくはメタロセン触媒を代表例とするシングルサイト触媒の存在下でプロピレンを重合するかあるいはプロピレンと1種以上の他のα−オレフィンを共重合することにより得ることができる。また、該結晶性ポリプロピレン(B)は、市販品であっても良い。
【0020】
具体的な結晶性ポリプロピレン(B)としては、例えば日本ポリプロ株式会社製のポリプロピレン(商品名:ノバテック)などを使用することができる。
また、結晶性ポリプロピレン(B)としては、2種以上組み合わせて使用することもできる。
【0021】
該結晶性ポリプロピレン(B)としては、JIS K7210に準拠して230℃において測定したメルトマスフローレートの範囲が0.5〜10g/10分であると剥離強度と剥離外観に優れた樹脂組成物が得られるため好ましい。更に、好ましくは3〜7g/10分である。
本発明の樹脂組成物を構成する結晶性ポリプロピレン(B)の配合量は10〜40重量%の範囲であり、10重量%より少ないと易剥離性に劣るので好ましくなく、また40重量%を超えると剥離強度が低下し剥離外観も悪くなる。
【0022】
本発明の樹脂組成物を構成する低分子量ポリエチレンワックス(C)としては、GPC法による数平均分子量が1,000〜10,000のポリエチレンワックスであり、ポリエチレン樹脂[高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等]、エチレンと炭素数4〜12のα−オレフィンとの共重合体[エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体等]などの低分子量体をなどを挙げることができる。これらの密度は900〜950kg/m
3程度であり、結晶性または無定形のいずれの形でも良い。該低分子量ポリエチレンワックスは、エチレンの重合によって得られる重合型と、分子量の高いポリエチレンを熱分解することによって得られる分解型のどちらでも使用できる。また、これらは酸化やマレイン酸などにより変性などされていても良い。
【0023】
そして、具体的な低分子量ポリエチレンワックス(C)としては、例えば三洋化成工業株式会社製の低分子量ポリエチレンワックス(商品名:サンワックス)を使用することができる。
【0024】
本発明の樹脂組成物を構成する低分子量ポリエチレンワックス(C)の配合量は3〜20重量%の範囲であり、3重量%より少ないと剥離外観に劣るため好ましくなく、また20重量%を超えると成形加工安定性が悪くなる。
【0025】
本発明の樹脂組成物の製造方法としては、特に制限はなくエチレン・α−オレフィン共重合樹脂(A)と結晶性ポリプロピレン(B)と低分子量ポリエチレンワックス(C)を混合することが可能であれば如何なる方法を用いることも可能であり、例えばヘンシェルミキサー、Vブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダー等を用いたドライブレンドにより混合する方法;ドライブレンドを行った後、単軸押出機、2軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー、ロール等の溶融混練機を用い溶融混合体、更にはペレット等とする方法をも適用することができる。
さらに、本発明の樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で要求される特性に応じて他の添加剤、例えば他の熱可塑性樹脂やゴム、光安定剤、紫外線吸収剤、造核剤、帯電防止剤、酸化防止剤、ブロッキング防止剤、流動性改良剤、滑剤、離型剤、可塑剤、難燃剤、着色剤、中和剤、発泡剤、充填剤、耐熱剤、カップリング剤、ガラス繊維などを配合していても良い。
【0026】
これらの中で、特に、高圧法低密度ポリエチレンやエチレンプロピレンゴム、ロジンやテルペン、石油樹脂等の粘着付与剤は、易開封性やフィルム成形性を向上させる材料として用いることができる。
【0027】
本発明の樹脂組成物は、低温シール性、易剥離性、剥離強度、剥離外観に優れた易剥離性フィルムを提供することが可能となる。本発明の易剥離性フィルムは、上記樹脂組成物からなる熱融着層を基材の少なくとも片面に備えるフィルムである。例えば、上記樹脂組成物からなる単層フィルムを更に高分子フィルムやシート、紙、金属箔などの基材と貼り合わせたフィルムが挙げられる。また、上記樹脂組成物からなる熱融着層を備え他層にプロピレン系樹脂又はエチレン系樹脂を用いて2層以上となるように共押出成形した共押出成形フィルム、更に前記共押出フィルムを高分子フィルムやシート、紙、金属箔などの基材と貼り合わせたフィルムなどが挙げられる。単層フィルムの製造方法としては、公知の製造方法を適用することができ、例えば樹脂組成物を押出機で溶融混練し、Tダイによりフラットフィルム状に押し出し、キャスティングロール面上にキャスティングしてフィルムを冷却するキャスティング法などが適用される。また、環状ダイスより溶融押出しする上向き空気冷却インフレーション成形、下向き水冷却インフレーション成形も適用できる。
【0028】
共押出成形フィルムの製造方法としては、フィードブロックやマルチマニホールドTダイ備える多層フィルム成型機の熱融着層に樹脂組成物、他の1層以上の層にプロピレンなどの他の樹脂を投入して溶融混練し、Tダイによりフラットフィルム状に共押し出し、キャスティングロール面上にキャスティングしてフィルムを冷却し共押出成形フィルムを得る共押出キャスティング法なども適用される。また、フラット状に製造されたフィルムを連続して、または別工程で延伸することも適用できる。また、多層フィルム成型機の熱融着層に樹脂組成物、他の一層以上の層に他の樹脂を投入して環状ダイスより溶融押出しする上向き空気冷却共押出インフレーション成形、下向き水冷却共押出インフレーション成形も適用できる。これらの共押出成形の製造方法により得られるフィルム構成としては、例えば、ポリプロピレン/樹脂組成物、ポリプロピレン/ポリプロピレン/樹脂組成物、ポリエチレン/樹脂組成物などが挙げられる。これらの製造方法により得られるフィルム厚みは、15〜100μmであることが好ましく、共押出フィルムにおいては樹脂組成物層は3〜10μmであることが好ましい。
【0029】
本発明の樹脂組成物からなる易剥離性フィルムは、フィルム単独で使用することも可能であるが、それ以外の高分子フィルムやシート、紙、金属箔などの基材と貼り合わせ積層体にすることもできる。この積層体にする方法は特に制限されず、例えば樹脂組成物を含むフィルムと他の1種もしくは2種以上の基材とを接着剤で接着させるドライラミネート法や加熱ロールなどにより接着させるサーマルラミネート法などを適用できる。また、本発明の樹脂組成物を含むフィルムをTダイより押出した直後に基材と貼り合わせる押出サンドウィッチラミネート法も挙げられる。また、本発明の樹脂組成物を基材上にポリプロピレンやポリエチレン等と同時に押出す共押出ラミネート法も適用できる。
【0030】
本発明の易剥離性フィルム、積層体は食品包装用や工業包装用として、ラミネート用フィルムや各種プラスチック基材とのラミネートフィルムとして包装袋や容器蓋材、容器などに用いることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の樹脂組成物は、低温シール性、易剥離性、剥離強度、剥離外観に優れた易剥離性フィルムや包装袋を提供することが可能となるものである。
【実施例】
【0032】
以下、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0033】
なお、実施例、比較例に用いたエチレン・α−オレフィン共重合体(A)の物性を表1に示す。
以下に、物性の測定方法と評価方法を示す。
(1)メルトマスフローレート(MFR)
JIS K6922−1(1998年)に準拠。
(2)密度
JIS K6922−1(1998年)に準拠。
(3)キシレン可溶分
実施例により合成されたエチレン・α−オレフィン共重合体を200℃のホットプレート上でキシレンに完全に溶解させる。これを5℃まで冷却後濾過する。濾過残分を乾燥させ、秤量し、可溶分を計算することで求めた。
(4)重量平均分子量
ゲル浸透クロマトグラフィを用いて、以下に示す条件下で、単分散ポリスチレンでユニバーサルな検量線を測定し、直鎖のポリエチレンの分子量として計算した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を求めた。
機種:ウォーターズ社製 150C ALC/GPC
溶媒:1,2,4−トリクロロベンゼン
流速:1ml/min
温度:140℃
測定濃度:30mg/30ml
注入量:100μl
カラム:東ソー(株)製 TSKgel GMH HR−H 3本
(5)吸熱曲線の最大ピーク温度(Tm)
示差走査型熱量計[パーキンエルマー(株)製 DSC−7]を用いて測定した。装置内で試料を200℃で5分間溶融させた後、10℃/分で30℃まで冷却したものについて、再度10℃/分で昇温させた時に得られる吸熱曲線の最大ピーク位置の温度(Tm)を求めた。
(6)短鎖分岐数(SCB)
分子鎖中の短鎖分岐数(SCB)は、フーリエ変換型赤外吸収スペクトル装置[パーキンエルマー(株)製 FT−IRスペクトロメーター1760X]を用いて、1378cm−1に位置するメチル基に対応する吸収バンドの強度と4515〜3735cm
−1に位置するメチレン連鎖に対応する強度の比を換算し求めた。
【0034】
以下に、低温シール性、易剥離性、剥離強度、剥離外観の評価方法を示す。
(7)低温シール性評価
ヒートシールテスター(テスター産業社製)にて、作成したフィルム厚み0.03mm、試料幅100mm幅の樹脂組成物層が向い合せになるように易剥離性フィルム2枚を重ねあわせ、更にシールバーへの融着防止を目的にポリエステルフィルム(東洋紡社製、商品名:E5100 0.012mm)を易剥離性フィルム2枚の上下に重ね合わせ圧力0.2MPa、時間0.5秒、シール温度を120℃から150℃まで10℃毎に変更した条件にてそれぞれヒートシールバーにより押さえて加熱接着を行った。試験片の該加熱接着部分を、引張試験機(島津製作所(株)社製、商品名オートグラフDCS500)を用いて、剥離速度300mm/分、T字剥離にて剥離強度を測定した。
ヒートシール温度120℃条件にて3N/15mm以上の剥離強度が得られ、易剥離性が得られるものを低温シール性〇、3N/15mm未満のものを×とした。
(8)剥離強度、易剥離性評価
ヒートシールテスター(テスター産業社製)にて、作成したフィルム厚み0.03mm、試料幅100mm幅の樹脂組成物層が向い合せになるように易剥離性フィルム2枚を重ねあわせ、更にシールバーへの融着防止を目的にポリエステルフィルム(東洋紡社製、商品名:E5100 0.012mm)を易剥離性フィルム2枚の上下に重ね合わせ圧力0.2MPa、時間0.5秒、シール温度を120℃から150℃まで10℃毎に変更した条件にてそれぞれヒートシールバーにより押さえて加熱接着を行った。試験片の該加熱接着部分を、引張試験機(島津製作所(株)社製、商品名オートグラフDCS500)を用いて、剥離速度300mm/分、T字剥離にて剥離強度を測定した。
【0035】
得られた剥離強度がヒートシール温度120℃〜150℃条件にて3〜10N/15mmの範囲にあるものを易剥離性〇、それ以外の範囲のもの、剥離不可のものを易剥離性×とした。
(9)剥離外観評価
ヒートシールテスター(テスター産業社製)にて、作成したフィルム厚み0.03mm、試料幅100mm幅の樹脂組成物層が向い合せになるように易剥離性フィルム2枚を重ねあわせ、更にシールバーへの融着防止を目的にポリエステルフィルム(東洋紡社製、商品名:E5100 0.012mm)を易剥離性フィルム2枚の上下に重ね合わせ圧力0.2MPa、時間0.5秒、シール温度を120℃から150℃まで10℃毎に変更した条件にてそれぞれヒートシールバーにより押さえて加熱接着を行った。試験片の該加熱接着部分を、引張試験機(島津製作所(株)社製、商品名オートグラフDCS500)を用いて、剥離速度300mm/分、T字剥離にて剥離強度を測定した。
【0036】
剥離後の剥離面を目視観察し、糸ひきが全くないものとわずかにみられるものを〇、部分的に小さな糸ひきが見られるものを△、全面に糸ひきが見られるものを×とした。
【0037】
実施例および比較例におけるエチレン・α−オレフィン共重合体[(A1)〜(A4)]としては、表1に示す共重合体を用いた。いずれもメタロセン触媒を用いて参考例1に示す方法に従い重合されたものである。
【0038】
参考例1
エチレン・α−オレフィン共重合体(A1−1)の合成
[触媒溶液の調製]
予め乾燥し、窒素雰囲気下にした撹拌装置を備えた反応器に、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロライドを3.25mmol、トルエン2.5lおよびトリイソブチルアルミニウムのトルエン溶液(トリイソブチルアルミニウム20重量%希釈品)をアルミニウム原子当たり812mmol加えて1時間撹拌し、混合溶液を調製した。次に、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート 3.9mmolをトルエン3lに懸濁させた溶液を前記の混合溶液に加え、1時間撹拌して触媒溶液とした(ジルコニウム濃度0.5mmol/l)。
【0039】
[重合]
槽型反応器を用いて重合を行った。エチレンおよび1−ヘキセンを連続的に反応器内に圧入して、全圧を900kg/cm
2、エチレン濃度を47.0mol%、および1−ヘキセン濃度を52.8mol%になるように設定した。そして、水素を1時間当たり180Nl供給しながら反応器を1500rpmで撹拌した。
【0040】
そして、調製した触媒を連続的に反応器へ供給して、平均温度が180℃に保たれるように重合を行った。その結果を表1に示す。
【0041】
なお、エチレン・α−オレフィン共重合体(A1−2)、(A2−1)、(A2−2)も条件を変えて同様に合成した。
【0042】
実施例1
〜フィルムの製造方法〜
エチレン・α−オレフィン共重合体樹脂(A)として、エチレン・α−オレフィン共重合体樹脂(A1)にエチレン・α−オレフィン共重合体樹脂(A1−1)30重量%、エチレン・α−オレフィン共重合体樹脂(A2)にエチレン・α−オレフィン共重合体樹脂(A2−1)30重量%、結晶性ポリプロピレン(B)として、プロピレン・1−ブテン・エチレン共重合体(B1)(日本ポリプロ(株)社製、商品名FW4B;MFR=6.5)30重量%及び 低分子量ポリエチレンワックス(C)として、GPCによる数平均分子量が2,600のの低分子量ワックス(C1)(三洋化成株式会社製 サンワックス151−P)10重量%をタンブラーブレンダーを用いて混合した。得られた混合物を2軸押出機(東芝機械(株)社製、TEM50B)を用いて樹脂温度180℃にて溶融混練し樹脂組成物ペレットを得た。
【0043】
得られた樹脂組成物ペレットのMFRは9g/10分であった。
次いで、この樹脂組成物ペレットを20/20/32mmΦのスクリューを有し、Tダイを備えた3層キャストフィルム成形機((株)プラスチック工学研究所社製)の内層の20mmφ押出機へ供給し、基材層として他の中間層20mmφ、外層32mmφ押出機にはポリプロピレン(日本ポリプロ(株)社製、商品名FW4B)を供給し、240℃の温度でTダイより共押し出し、キャスティングロール面上にキャスティングして内層/中間層/外層=5/10/15μmとなる厚み0.03mmの易剥離性フィルムを得た。
【0044】
得られた易剥離性フィルムを用いて、低温シール性、易剥離性、剥離強度、剥離外観を評価した。その結果を表2に示す。
【0045】
実施例2
エチレン・α−オレフィン共重合体樹脂(A1−1)30重量%及の代わりに、エチレン・α−オレフィン共重合体樹脂(A1−2)30重量%とした以外は、実施例1と同様にして易剥離性フィルムを得た。
【0046】
得られた易剥離性フィルムを用いて、低温シール性、易剥離性、剥離強度、剥離外観を評価した。その結果を表2に示す。
【0047】
実施例3
エチレン・α−オレフィン共重合体樹脂(A2−1)30重量%及の代わりに、エチレン・α−オレフィン共重合体樹脂(A2−2)30重量%とした以外は、実施例2と同様にして易剥離性フィルムを得た。
【0048】
得られた易剥離性フィルムを用いて、低温シール性、易剥離性、剥離強度、剥離外観を評価した。その結果を表2に示す。
【0049】
参考例
1
結晶性ポリプロピレン(B1)30重量%及の代わりに、結晶性ポリプロピレン(B2)30重量%とした以外は、実施例2と同様にして易剥離性フィルムを得た。
【0050】
得られた易剥離性フィルムを用いて、低温シール性、易剥離性、剥離強度、剥離外観を評価した。その結果を表2に示す。
【0051】
実施例
4
フィルム成形時の基材層樹脂をポリプロピレン及の代わりに、直鎖状低密度ポリエチレン(東ソー(株)社製、商品名:ニポロン−ZZF330:MFR=2g/10分、密度920kg/m
3)とした以外は、実施例2と同様にして易剥離性フィルムを得た。
【0052】
得られた易剥離性フィルムを用いて、低温シール性、易剥離性、剥離強度、剥離外観を評価した。その結果を表2に示す。
【0053】
比較例1
エチレン・α−オレフィン共重合体樹脂(A1−1)30重量%及の代わりに、エチレン・α−オレフィン共重合体樹脂(A1−1)35重量%、エチレン・α−オレフィン共重合体樹脂(A2−1)30重量%及の代わりに、エチレン・α−オレフィン共重合体樹脂(A2−1)35重量%、低分子量ポリエチレンワックス(C)10重量%及の代わりに、分子量ポリエチレンワックス(C)0重量%及とした以外は、実施例1と同様にして易剥離性フィルムを得た。
【0054】
得られた易剥離性フィルムを用いて、低温シール性、易剥離性、剥離強度、剥離外観を評価した。その結果を表3に示す。
【0055】
得られた易剥離性フィルムは、易剥離性に劣るものであった。
【0056】
比較例2
エチレン・α−オレフィン共重合体樹脂(A1−2)30重量%及の代わりに、エチレン・α−オレフィン共重合体樹脂(A1−2)20重量%、エチレン・α−オレフィン共重合体樹脂(A2−2)30重量%及の代わりに、エチレン・α−オレフィン共重合体樹脂(A2−2)20重量%、結晶性ポリプロピレン(B1)30重量%及の代わりに、結晶性ポリプロピレン(B1)50重量%及とした以外は、実施例3と同様にして易剥離性フィルムを得た。
【0057】
得られた易剥離性フィルムを用いて、低温シール性、易剥離性、剥離強度、剥離外観を評価した。その結果を表3に示す。
【0058】
得られた易剥離性フィルムは、剥離外観に劣るものであった。
【0059】
比較例3
エチレン・α−オレフィン共重合体樹脂(A1−2)30重量%及の代わりに、エチレン・α−オレフィン共重合体樹脂(A1−2)20重量%、エチレン・α−オレフィン共重合体樹脂(A2−2)30重量%及の代わりに、エチレン・α−オレフィン共重合体樹脂(A2−2)20重量%、低分子量ポリエチレンワックス(C)10重量%及の代わりに、分子量ポリエチレンワックス(C)30重量%及とした以外は、実施例1と同様にして成形加工したが成形加工安定性に劣り、易剥離性フィルムは得られなかった。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
【表3】