特許第6582633号(P6582633)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立化成株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6582633-鉛蓄電池用複合集電体 図000002
  • 特許6582633-鉛蓄電池用複合集電体 図000003
  • 特許6582633-鉛蓄電池用複合集電体 図000004
  • 特許6582633-鉛蓄電池用複合集電体 図000005
  • 特許6582633-鉛蓄電池用複合集電体 図000006
  • 特許6582633-鉛蓄電池用複合集電体 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6582633
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】鉛蓄電池用複合集電体
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/73 20060101AFI20190919BHJP
   H01M 4/68 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
   H01M4/73 A
   H01M4/68 A
【請求項の数】15
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-134304(P2015-134304)
(22)【出願日】2015年7月3日
(65)【公開番号】特開2017-16943(P2017-16943A)
(43)【公開日】2017年1月19日
【審査請求日】2018年5月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】日立化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091443
【弁理士】
【氏名又は名称】西浦 ▲嗣▼晴
(74)【代理人】
【識別番号】100130720
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼見 良貴
(74)【代理人】
【識別番号】100130432
【弁理士】
【氏名又は名称】出山 匡
(74)【代理人】
【識別番号】100186819
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 俊尚
(72)【発明者】
【氏名】米谷 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】庄司 馨
(72)【発明者】
【氏名】坂田 昌之
【審査官】 立木 林
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭55−112161(JP,A)
【文献】 特開2013−196829(JP,A)
【文献】 実開昭55−136168(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/64−4/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の枠骨、第2の枠骨、第3の枠骨及び第4の枠骨が連続してつながって構成された枠部と、前記第1の枠骨の一端近傍に設けられて前記第1の枠骨から離れる方向に延びる耳部と、前記第1の枠骨と対向する第3の枠骨に設けられて前記耳部と対向する位置から前記耳部が延びる方向とは反対の方向に延びる第1の足部と、前記第1の足部との間に間隔を開けて前記第3の枠骨に設けられて前記耳部が延びる方向と反対の方向に延びる第2の足部と、前記第1及び第3の枠骨に沿って延び両端が前記第2及び第4の枠骨に連結されたm本の横骨(mは4以上の整数)及び前記第2及び第4の枠骨に沿って延び両端が前記第1及び第3の枠骨に連結されたn本の縦骨(nは4以上の正の整数)からなる格子部とを備えた第1の集電部及び第2の集電部を有し、前記第1の集電部の前記第1の足部と前記第2の集電部の前記第1の足部とが連結され且つ前記第1の集電部の前記第2の足部と前記第2の集電部の前記第2の足部とが連結されて構成された鉛または鉛合金から鋳造により形成された鉛蓄電池用複合集電体であって、
前記第1の集電部及び前記第2の集電部における前記m本の横骨(mは4以上の正の整数)は、前記第1の枠骨に隣接する第1の横骨から前記第3の枠骨に隣接する第mの横骨と定義され、
前記第1の集電部及び前記第2の集電部における前記n本の縦骨は、前記第2の枠骨に隣接する第1の縦骨から前記第4の枠骨に隣接する第nの縦骨と定義され、
前記第1の集電部及び前記第2の集電部における前記n本の縦骨のうち、前記縦骨の長手方向に延びる仮想延長線が前記耳部及び前記第1の足部を通る2本の前記縦骨の前記長手方向と直交する方向の断面積が、前記2本の縦骨と隣接する他の前記縦骨の長手方向と直交する方向の断面積よりも大きいことを特徴とする鉛蓄電池用複合集電体。
【請求項2】
前記耳部が第2の枠骨の近くに設けられており、
前記2本の縦骨が、前記第1の縦骨及び第2の縦骨である請求項1に記載の鉛蓄電池用複合集電体。
【請求項3】
前記第1の縦骨及び前記第2の縦骨の前記長手方向と直交する方向の断面の輪郭形状と前記2の枠骨の前記長手方向と直交する方向の断面の輪郭形状とが、相似形を呈している請求項2に記載の鉛蓄電池用複合集電体。
【請求項4】
前記第nの縦骨の長手方向と直交する方向の断面積は、第3の縦骨から第n−1の縦骨のそれぞれの長手方向と直交する方向の断面積よりも大きい請求項1乃至3のいずれか1項に記載の鉛蓄電池用複合集電体。
【請求項5】
前記第1の集電部及び前記第2の集電部がそれぞれ正極板の集電部として用いられるものであり、
前記第1の集電部及び前記第2の集電部における前記第1の横骨から第mの横骨のうち、前記第1の枠骨に隣接する第1の横骨、前記第3の枠骨に隣接する第mの横骨及び第m−2の横骨のそれぞれの長手方向と直交する方向の断面積が、残りの前記横骨の長手方向と直交する方向の断面積よりも大きいことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の鉛蓄電池用複合集電体。
【請求項6】
前記第1の集電部及び前記第2の集電部がそれぞれ正極板の集電部として用いられるものであり、
前記第1の横骨及び前記m−2の横骨の前記断面積は、前記第mの横骨の前記断面積よりも大きい請求項5に記載の鉛蓄電池用複合集電体。
【請求項7】
前記第1の集電部及び前記第2の集電部がそれぞれ正極板の集電部として用いられるものであり、
前記第2の横骨から前記第m−3の横骨及び第m−1の横骨のそれぞれの長手方向と直交する方向の断面積及び断面の輪郭形状が同じであり、
前記第3の縦骨から第n−1の縦骨のそれぞれの長手方向と直交する方向の断面積及び断面の輪郭形状が同じである請求項6に記載の鉛蓄電池用複合集電体。
【請求項8】
前記第1の集電部及び前記第2の集電部がそれぞれ負極板の集電部として用いられるものであり、
記第1の集電部及び前記第2の集電部における前記第1の横骨から第mの横骨のうち、前記第2の横骨、第m−1の横骨及び第m−3は、それぞれの横骨の長手方向と直交する方向の断面積が、残りの横骨の長手方向と直交する方向の断面積よりも大きいことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の鉛蓄電池用複合集電体。
【請求項9】
前記第1の集電部及び前記第2の集電部は、それぞれ負極板の集電部として用いられるものであり、
前記第1乃至第4の枠骨の横断面積が3.00mm2〜3.50mm2であり、
前記第1及び第2の縦骨の横断面積が3.50mm2〜4.00mm2であり、
前記第3の縦骨から前記n−1の縦骨の横断面積が1.00mm2〜1.50mm2であり、
前記第nの縦骨の横断面積が1.60mm2〜2.00mm2であり、
前記第2の横骨及び第m−1の横骨の横断面積が3.20mm2〜3.70mm2であり、
前記第m−3の横骨の横断面積が2.80mm2〜3.30mm2である請求項8に記載の鉛蓄電池用複合集電体。
【請求項10】
前記第1の集電部及び前記第2の集電部は、それぞれ正極板の集電部として用いられるものであり、
前記第1乃至第4の枠骨の横断面積が8.40mm2〜8.70mm2であり、
前記第1及び第2の縦骨の横断面積が4.90mm2〜5.30mm2であり、
前記第3の縦骨から前記n−1の縦骨の横断面積が2.00mm2〜3.10mm2であり、
前記第nの縦骨の横断面積が4.90mm2〜5.30mm2であり、
前記第2の横骨及び第m−1の横骨の横断面積が3.20mm2〜3.70mm2であり、
前記第m−3の横骨の横断面積が2.80mm2〜3.30mm2である請求項に記載の鉛蓄電池用複合集電体。
【請求項11】
前記第1乃至第4の枠骨、前記m本の横骨及び前記n本の縦骨の横断面の輪郭形状が実質的に六角形状である請求項1乃至10のいずれか1項に記載の鉛蓄電池用複合集電体。
【請求項12】
第1の枠骨、第2の枠骨、第3の枠骨及び第4の枠骨が連続してつながって構成された枠部と、前記第1の枠骨の一端近傍に設けられて前記第1の枠骨から離れる方向に延びる耳部と、前記第1の枠骨と対向する第3の枠骨に設けられて前記耳部と対向する位置から前記耳部が延びる方向とは反対の方向に延びる第1の足部と、前記第1の足部との間に間隔を開けて前記第3の枠骨に設けられて前記耳部が延びる方向と反対の方向に延びる第2の足部と、前記第1及び第3の枠骨に沿って延び両端が前記第2及び第4の枠骨に連結されたm本の横骨(mは4以上の整数)及び前記第2及び第4の枠骨に沿って延び両端が前記第1及び第3の枠骨に連結されたn本の縦骨(nは4以上の正の整数)からなる格子部とを備えた第1の集電部及び第2の集電部を有し、
前記第1の集電部の前記耳部と前記第2の集電部の前記耳部とが連結され、
前記第1の集電部の前記耳部と前記第2の集電部の前記耳部と並行して配置されて前記第1の集電部の前記第1の枠骨と前記第2の集電部の第の枠骨とを連結する連結骨部によって前記第1の集電部と前記第2の集電部とが連結され、
前記第1の集電部の前記第1の足部及び第2の足部に耳状部を備えた第1の懸架部が設けられ、
前記第2の集電部の前記第1の足部及び第2の足部に耳状部を備えた第2の懸架部が設けられて構成された、鉛または鉛合金から鋳造により形成された鉛蓄電池用複合集電体であって、
前記第1の集電部及び前記第2の集電部における前記m本の横骨(mは4以上の正の整数)は、前記第1の枠骨に隣接する第1の横骨から前記第3の枠骨に隣接する第mの横骨と定義され、
前記第1の集電部及び前記第2の集電部における前記n本の縦骨は、前記第2の枠骨に隣接する第1の縦骨から前記第4の枠骨に隣接する第nの縦骨と定義され、
前記第1の集電部及び前記第2の集電部における前記n本の縦骨のうち、前記縦骨の長手方向に延びる仮想延長線が前記耳部及び前記第1の足部を通る2本の前記縦骨の前記長手方向と直交する方向の断面積が、前記2本の縦骨と隣接する他の前記縦骨の長手方向と直交する方向の断面積よりも大きいことを特徴とする鉛蓄電池用複合集電体。
【請求項13】
前記耳部が第2の枠骨の近くに設けられており、
前記2本の縦骨が、前記第1の縦骨及び第2の縦骨である請求項12に記載の鉛蓄電池用複合集電体。
【請求項14】
前記第1の集電部及び前記第2の集電部がそれぞれ正極板の集電部として用いられるものであり、
前記第1の集電部及び前記第2の集電部における前記第1の横骨から第mの横骨のうち、前記第1の枠骨に隣接する第1の横骨、前記第3の枠骨に隣接する第mの横骨及び第m−2の横骨のそれぞれの長手方向と直交する方向の断面積が、残りの前記横骨の長手方向と直交する方向の断面積よりも大きいことを特徴とする請求項12及び13のいずれか1項に記載の鉛蓄電池用複合集電体。
【請求項15】
前記第1の集電部及び前記第2の集電部がそれぞれ正極板の集電部として用いられるものであり、
前記第2の横骨から前記第m−3の横骨及び第m−1の横骨のそれぞれの長手方向と直交する方向の断面積及び断面の輪郭形状が同じであり、
前記第3の縦骨から第n−1の縦骨のそれぞれの長手方向と直交する方向の断面積及び断面の輪郭形状が同じである請求項14に記載の鉛蓄電池用複合集電体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの集電部の足部が連結されてなる鉛蓄電池用複合集電体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
WO2014087473A1(特許文献1)には、集電体の両面にペースト状活物質が充填されてなるペースト状活物質層を備えた未乾燥極板を乾燥機に搬送する搬送ラインが開示されている。この搬送ラインでは、極板の搬送方向と直交する幅方向に所定の間隔を開けて配置されて移動する一対のループ状搬送レーンを備えている。そして一対のループ状搬送レーンには、極板が備えた一対の耳部を被懸架部として極板を垂下させた状態で搬送することを可能にする複数の係止部が、搬送方向に所定の間隔を開けて設けられている。このような搬送ラインで、2つの集電部の足部が連結されてなる鉛蓄電池用複合集電体にペースト状活物質を充填した充填済み鉛蓄電池用複合集電体を搬送することもある。この充填済み鉛蓄電池用複合集電体は、最終的に2つの極板に分離されて使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2014087473A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら鉛蓄電用複合集電体の厚みが薄くなってくると、製造過程において、ペースト状活物質を充填して荷重が加わった鉛蓄電用複合集電体が変形する問題が生じる。
【0005】
本発明の目的は、懸架した状態で搬送されても変形することのない鉛蓄電池用複合集電体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明が改良の対象とする鉛または鉛合金から鋳造により形成された鉛蓄電池用複合集電体は、第1の枠骨、第2の枠骨、第3の枠骨及び第4の枠骨が連続してつながって構成された枠部と、第1の枠骨の一端近傍に設けられて第1の枠骨から離れる方向に延びる耳部と、第1の枠骨と対向する第3の枠骨に設けられて耳部と対向する位置から耳部が延びる方向とは反対の方向に延びる第1の足部と、第1の足部との間に間隔を開けて第3の枠骨に設けられて耳部が延びる方向と反対の方向に延びる第2の足部と、第1及び第3の枠骨に沿って延び両端が第2及び第4の枠骨に連結されたm本の横骨(mは4以上の整数)及び第2及び第4の枠骨に沿って延び両端が第1及び第3の枠骨に連結されたn本の縦骨(nは4以上の正の整数)からなる格子部とを備えた第1の集電部及び第2の集電部を有し、第1の集電部の第1の足部と第2の集電部の第1の足部とが連結され且つ第1の集電部の第2の足部と第2の集電部の第2の足部とが連結されて構成されている。
【0007】
本願第1の発明において、第1の集電部及び第2の集電部におけるm本の横骨(mは4以上の正の整数)は、第1の枠骨に隣接する第1の横骨から第3の枠骨に隣接する第mの横骨と定義され、第1の集電部及び第2の集電部におけるn本の縦骨は、第2の枠骨に隣接する第1の縦骨から第4の枠骨に隣接する第nの縦骨と定義される。そして本願第1の発明では、第1の集電部及び第2の集電部におけるn本の縦骨のうち、縦骨の長手方向に延びる仮想延長線が耳部及び第1の足部を通る2本の縦骨の長手方向と直交する方向の断面積を、2本の縦骨と第nの縦骨を除く他の縦骨のそれぞれの長手方向と直交する方向の断面積よりも大きくする。
【0008】
発明者の研究によると、鉛蓄電池用複合集電体にペースト状活物質を充填した状態で2つの耳部を被懸架部として懸架した場合、耳部と、第1の集電部の第1の足部及び第2の足部と第2の集電部の第1の足部及び第2の足部の2箇所の連結部分に集中して比較的大きな応力が発生し、その応力が原因となって、第1及び第2の集電部の変形が発生することが分かった。この変形を確実に防止するためには、枠骨、縦骨及び横骨の断面積を大きくして集電部の強度を全体的に高めればよい。しかしながらこのような構成を採用すると、極板の重量が増大し、極板の価格が高くなる問題が生じる。そこで種々実験をした結果、本願第1の発明のように、第1の集電部の耳部と第1の足部との間に位置する縦骨及び第2の集電部の耳部と第1の足部との間に位置する2本の縦骨の断面積を、この2本の縦骨と隣接する他の縦骨の断面積よりも大きくすると、充填済み鉛蓄電池用複合集電体を懸架した場合において、集電部の変形を抑制できることが分かった。断面積をどの程度にするかは、集電部の枠部を構成する枠骨の厚みに応じて定まる。このようにすると、集電部の各部の厚みを全体的に薄くした場合でも、集電部にペースト状活物質を充填した状態で2つの耳部を被懸架部として懸架したときに、2つの耳部間で第2の枠骨が変形することを効果的に抑制することができる。
【0009】
耳部が第2の枠骨の近くに設けられている場合には、2本の縦骨は第1の縦骨及び第2の縦骨であるのが好ましい。このようにすると第2の枠骨の変形を最も効果的に抑制することができる。
【0010】
この場合、第1の縦骨及び第2の縦骨の長手方向と直交する方向の断面の輪郭形状と第2の枠骨の長手方向と直交する方向の断面の輪郭形状とが、相似形を呈しているのが好ましい。
【0011】
また第nの縦骨の長手方向と直交する方向の断面積を、第3の縦骨から第n−1の縦骨のそれぞれの長手方向と直交する方向の断面積よりも大きくするのが好ましい。このようにすると第nの縦骨の補強効果により、2つの耳部を被懸架部として懸架した場合において、第4の枠骨の変形を抑制して、活物質の脱落を効果的に防止できる。
【0012】
第1の集電部及び第2の集電部がそれぞれ正極板の集電部として用いられるものであれば、第1の集電部及び第2の集電部における第1の横骨から第mの横骨のうち、第1の枠骨に隣接する第1の横骨、第3の枠骨に隣接する第mの横骨及び第m−2の横骨のそれぞれの長手方向と直交する方向の断面積が、残りの横骨の長手方向と直交する方向の断面積よりも大きいことが好ましい。
【0013】
第1の集電部及び前記第2の集電部がそれぞれ正極板の集電部として用いられるものであれば、第1の横骨及び第m−2の横骨の断面積は、第mの横骨の断面積よりも大きいことが望ましい。この構成は試験により導きだされたものであり、このような構成すると第1の集電部及び第2の集電部の耳部から離れた位置における格子の変形を抑制できる。
【0014】
第1の集電部及び第2の集電部がそれぞれ正極板の集電部として用いられるものであれば、第2の横骨から第m−3の横骨及び第m−1の横骨のそれぞれの長手方向と直交する方向の断面積及び断面の輪郭形状が同じであることが好ましい。そして第3の縦骨から第n−1の縦骨のそれぞれの長手方向と直交する方向の断面積及び断面の輪郭形状も同じであることが好ましい。このようにすると縦骨及び横骨の太さを部分的に増大させた場合でも、正極活物質の充填量の低下を抑制できる。
【0015】
第1の集電部及び第2の集電部がそれぞれ負極板の集電部として用いられるものであれば、第1の集電部及び第2の集電部における第1の横骨から第mの横骨のうち、第2の横骨、第m−1の横骨及び第m−3は、それぞれの横骨の長手方向と直交する方向の断面積が、残りの横骨の長手方向と直交する方向の断面積よりも大きくすることが好ましい。この構成は試験により導きだされたものであり、このような構成すると第1の集電部及び第2の集電部の耳部から離れた位置における格子の変形を抑制できる。
【0016】
第1の集電部及び第2の集電部が、それぞれ負極板の集電部として用いられるものであれば、第1乃至第4の枠骨の横断面積を3.00mm2〜3.50mm2の範囲の値とし、第1及び第2の縦骨の横断面積を3.50mm2〜4.00mm2の範囲の値とし、第3の縦骨から前記n−1の縦骨の横断面積を1.00mm2〜1.50mm2の範囲の値とし、第nの縦骨の横断面積を1.60mm2〜2.00mm2の範囲の値とし、第2の横骨及び第m−1の横骨の横断面積を3.20mm2〜3.70mm2の範囲の値とし、第m−3の横骨の横断面積を2.80mm2〜3.30mm2の範囲の値とすることが好ましい。これらの数値範囲にすると、本発明の鉛蓄電池用複合集電体を負極板の製造に用いた場合に、ほぼ理想的な状態で、集電体の変形を抑制できる。
【0017】
第1の集電部及び第2の集電部が、それぞれ正極板の集電部として用いられるものの場合には、第1乃至第4の枠骨の横断面積を8.40mm2〜8.70mm2の範囲の値とし、第1及び第2の縦骨の横断面積を4.90mm2〜5.30mm2の範囲の値とし、第3の縦骨から第n−1の縦骨の横断面積を2.00mm2〜3.10mm2の範囲の値とし、第nの縦骨の横断面積を4.90mm2〜5.30mm2の範囲の値とし、第2の横骨及び第m−1の横骨の横断面積を3.20mm2〜3.70mm2の範囲の値とし、第m−3の横骨の横断面積を2.80mm2〜3.30mm2の範囲の値とするのが好ましい。これらの数値範囲にすると、本発明の鉛蓄電池用複合集電体を正極板の製造に用いた場合に、ほぼ理想的な状態で、集電体の変形を抑制できる。
【0018】
第1乃至第4の枠骨、m本の横骨及びn本の縦骨の横断面の輪郭形状が実質的に六角形状であることが好ましい。これらの骨のすべての横断面の輪郭形状が実質的に六角形状であると、活物質の脱落を有効に抑制することができる。
【0019】
本願第2の発明は、第1の集電部及び第2の集電部の耳部同士が連結されている鉛蓄電池用複合集電体にも適用できる。この場合、鉛蓄電池用複合集電体は、第1の枠骨、第2の枠骨、第3の枠骨及び第4の枠骨が連続してつながって構成された枠部と、第1の枠骨の一端近傍に設けられて第1の枠骨から離れる方向に延びる耳部と、第1の枠骨と対向する第3の枠骨に設けられて耳部と対向する位置から耳部が延びる方向とは反対の方向に延びる第1の足部と、第1の足部との間に間隔を開けて第3の枠骨に設けられて耳部が延びる方向と反対の方向に延びる第2の足部と、第1及び第3の枠骨に沿って延び両端が第2及び第4の枠骨に連結されたm本の横骨(mは4以上の整数)及び第2及び第4の枠骨に沿って延び両端が第1及び第3の枠骨に連結されたn本の縦骨(nは4以上の正の整数)からなる格子部とを備えた第1の集電部及び第2の集電部を有している。そして第1の集電部の耳部と第2の集電部の耳部とが連結されている。また第1の集電部の耳部と第2の集電部の耳部と並行して配置されて第1の集電部の第1の枠骨と第2の集電部の第の枠骨とを連結する連結骨部によって第1の集電部及び第2の集電部が連結されている。そして第1の集電部の第1の足部及び第2の足部に耳状部を備えた第1の懸架部が設けられている。また第2の集電部の第1の足部及び第2の足部に耳状部を備えた第2の懸架部が設けられている。この鉛蓄電池用複合集電体でも、第1の集電部及び第2の集電部におけるm本の横骨(mは4以上の正の整数)は、第1の枠骨に隣接する第1の横骨から第3の枠骨に隣接する第mの横骨と定義され、第1の集電部及び第2の集電部におけるn本の縦骨は、第2の枠骨に隣接する第1の縦骨から第4の枠骨に隣接する第nの縦骨と定義される。そして第1の集電部及び第2の集電部におけるn本の縦骨のうち、縦骨の長手方向に延びる仮想延長線が耳部及び第1の足部を通る2本の縦骨の長手方向と直交する方向の断面積が、2本の縦骨と隣接する他の縦骨の長手方向と直交する方向の断面積よりも大きい。その他の構成としては、前述の本願第1の発明と同様の構成を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の鉛蓄電池用複合集電体の第1の実施の形態であって、それぞれ2つの足部が連結された2枚の鉛蓄電池用複合集電体を示す正面図である。
図2】(a)乃至(e)は、図1の第1の実施の形態における枠骨、横骨及び縦骨の拡大横断面図である。
図3】本発明の鉛蓄電池用複合集電体の第2の実施の形態を示す図1と同様の図である。
図4図3の第2の実施の形態における図2と同様の図である。
図5】本発明の鉛蓄電池用複合集電体の第3の実施の形態であって、それぞれ耳部が連結された2枚の鉛蓄電池用複合集電体を示す正面図である。
図6】(a)乃至(e)は、図5の第2の実施の形態における枠骨、横骨及び縦骨の拡大横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ本発明の鉛蓄電池用複合集電体の実施の形態について説明する。
【0022】
(第1発明の第1の実施の形態)
図1は本発明の鉛蓄電池用複合集電体の第1の実施の形態のそれぞれの2つの足部が連結された状態を示す正面図であり、図2は第1の実施の形態の枠骨、横骨及び縦骨の長手方向と直交する方向の断面である横断面を拡大して示す図である。
【0023】
図1において、鉛または鉛合金から鋳造により形成された鉛蓄電池用複合集電体は、正極格子に適した第1集電部1及び第2集電部2を有し、第1集電部1の第1足部11と第2集電部2の第1足部21とが連結され、且つ第1集電部1の第2足部12と第2集電部2の第2足部22とが連結されて構成されている。第1集電部及び第2集電部は、それぞれ枠部13、23と耳部14、24と足部11、21、12、22と格子部15、25とを備えている。
【0024】
各枠部13、23は、第1枠骨131、231、第2枠骨132、232、第3枠骨133、233及び第4枠骨134、234がそれぞれ連続してつながって構成されている。
【0025】
耳部14、24はそれぞれ第1枠骨131、231の一端近傍に設けられて第1枠骨131、231から離れる方向に延びる。耳部14、24は足部11、21、12、22が連結された状態では、前述の一対のループ状搬送レーン(図示していない)に対する被懸架部として作用し、足部11、21、12、22が切り離されて第1集電部1及び第2集電部2が他の集電部と共に極板群を構成した後は、複数の耳部14、24がストラップ(図示していない)にまとめて接続され、完成した鉛蓄電池においてはストラップに設けられた極柱を通じて外部との間で充放電が行われる。
【0026】
第1足部11、21は、第1枠骨131、231とそれぞれ対向する第3枠骨133、233に設けられて耳部14、24とそれぞれ対向する位置から耳部14、24が延びる方向とは反対の方向に延びている。第2足部12、22は、第1足部11、21との間にそれぞれ間隔を開けて第3枠骨133、233に設けられて耳部14、24が延びる方向と反対の方向に延びている。
【0027】
格子部15、25はそれぞれ、第1及び第3枠骨131、231、133、233に沿って延び両端が第2及び第4枠骨132、232、134、234に連結された14本(m本)の横骨16、26及び第2及び第4の枠骨132、232、134、234に沿って延び両端が第1及び第3枠骨131、231、133、233に連結された8本(n本)の縦骨17、27からなる。
【0028】
なお図1では横骨16、26は図視上下方向に延び、縦骨17、27は図視左右方向に延びている。これは連結された状態の第1集電部1及び第2集電部2がループ状搬送レーンに懸架されて搬送されている際の姿勢が図1に示されているためであり、その後極板群を構成して電解液に浸された使用状態では耳部14、24が上方に向かう方向に延び、横骨16、26は水平方向に、縦骨17、27は垂直方向にそれぞれ沿った姿勢になる。
【0029】
第1の実施の形態において、第1集電部1及び第2集電部2におけるそれぞれ14本の横骨16、26は、第1枠骨131、231に隣接する第1横骨1601、2601から第3枠骨133、233に隣接する第14横骨1614、2614と定義され、第1集電部1及び第2集電部2におけるそれぞれ8本の縦骨17、27は、第2枠骨132、232に隣接する第1縦骨171、271から第4枠骨134、234に隣接する第8縦骨178、278と定義される。
【0030】
そして第1の実施の形態では、第1集電部1及び第2集電部2におけるそれぞれ8本の縦骨171〜178、271〜278のうち、縦骨の長手方向に延びる仮想延長線が耳部14、24及び第1足部11、21を通るそれぞれ2本の縦骨、すなわち耳部14、24が第2枠骨132、232の近くに設けられているので第1及び第2縦骨171、172、271、272の長手方向と直交する方向の断面積を、それぞれ2本の縦骨171、172、271、272と第8の縦骨178、278を除く他の縦骨173〜177、273〜277のそれぞれの長手方向と直交する方向の断面積よりも大きくしている。
【0031】
図2(a)乃至8(e)は、各枠骨、縦骨及び横骨それぞれの横断面の輪郭形状を示す図である。但し、図2(a)乃至8(e)は正確な断面積を示すものではない。図2(a)は、第2枠骨132を含む各枠骨の横断面の輪郭形状を示しており、図2(b)は、第1及び第2縦骨171、172、271、272と第8の縦骨178、278の横断面の輪郭形状と第1横骨1601、2601及び第12横骨1612、2612の横断面の輪郭形状を示している。図2(c)は、他の縦骨173〜177、273〜277の横断面の輪郭形状が示されている。さらに図2(d)は第2〜第11横骨1602〜1611、2602〜2611及び第13横骨1613、2613、図2(e)は第14横骨1614、2614のそれぞれ横断面の輪郭形状である。第1及び第2縦骨171、172、271、272と第8の縦骨178、278の横断面の断面積は、他の縦骨173〜177、273〜277の横断面の断面積よりも大きい。また第14横骨1614、2614のそれぞれ横断面の断面積は、第1横骨1601、2601及び第12横骨1612、2612の横断面の断面積より小さいが、第2〜第11横骨1602〜1611、2602〜2611の横断面の断面積よりも大きい。
【0032】
第1縦骨171、271及び第2縦骨172、272の横断面の輪郭形状と第2枠骨132の横断面の輪郭形状とは、いずれも実質的に六角形状で相似している。
【0033】
第8縦骨178、278の長手方向と直交する方向の断面積も、第3縦骨から第7縦骨173〜177、273〜277のそれぞれの長手方向と直交する方向の断面積よりも大きくしてある。このようにすると第8縦骨178、278の補強効果により、2つの耳部14、24を被懸架部として懸架した場合において、第4枠骨134、234の変形を抑制して、活物質の脱落を効果的に防止できる。
【0034】
また、第1の実施の形態の第1集電部1及び第2集電部2はそれぞれ正極板の集電部として用いられるものであり、第1集電部1及び第2集電部2における第1横骨1601、2601から第14横骨1614、2614のうち、第1枠骨131、231に隣接する第1横骨1601、2601、第3枠骨133、233に隣接する第14横骨1614、2614及び第12横骨1612、2612のそれぞれの長手方向と直交する方向の断面積を、残りの横骨の長手方向と直交する方向の断面積よりも大きくすることが、第1集電部1及び第2集電部2の耳部14、24から離れた位置における格子の変形を抑制できることが実験より導出された。
【0035】
さらに、第1横骨1601、2601及び第12横骨1612、2612の断面積は、第14横骨1614、2614の断面積よりも大きくしてあり、これにより第1集電部1及び第2集電部2の耳部14、24から離れた位置における格子の変形をより効果的に抑制できることが実験より導出された。
【0036】
また第2〜第11横骨1602〜1611、2602〜2611及び第13横骨1613、2613のそれぞれの長手方向と直交する方向の断面積及び断面の輪郭形状は同じであり、第3〜第7縦骨173〜177、273〜277の横断面の断面積及び輪郭形状も同じであり、これにより縦骨及び横骨の太さを部分的に増大させた場合でも、正極活物質の充填量の低下を抑制できる。
【0037】
このように第1の実施の形態によれば、各縦骨171〜178、271〜278の断面積を調整することにより、第1集電部1及び第2集電部2の各部の厚みを全体的に薄くした場合でも、鉛蓄電池用複合集電体にペースト状活物質を充填した状態で2つの耳部14、24を被懸架部として懸架した場合、耳部14、24と、第1集電部1の第1足部11及び第2足部12と第の集電部2の第の足部21及び第2足部22の2箇所の連結部分に集中して比較的大きな応力が発生することによる第1集電部1及び第2集電部2の変形の発生を効果的に抑制することができる。
【0038】
なお第1の実施の形態において、枠骨13、23の横断面積を8.40mm2〜8.70mm2の範囲の値とし、第1及び第2の縦骨の171、172、271、272横断面積を4.90mm2〜5.30mm2の範囲の値とし、第3の縦骨から第7の縦骨173〜177、273〜277の横断面積を2.00mm2〜3.10mm2の範囲の値とし、第8の縦骨178、278の横断面積を4.90mm2〜5.30mm2の範囲の値とし、第1横骨1601、2601、第12横骨及び第14横骨の横断面積を3.20mm2〜3.70mm2の範囲の値とし、それ以外の横骨の横断面積を2.80mm2〜3.30mm2の範囲の値としている。これらの数値範囲にすると、第1の実施の形態の鉛蓄電池用複合集電体を正極板の製造に用いた場合に、ほぼ理想的な状態で、集電体の変形を抑制できる。
【0039】
本実施の形態の鉛蓄電池用複合集電体に正極活物質ペーストを充填して乾燥した後、第1の集電部1の第1の足部11と第2の集電部2の第1の足部21との連結部を分離し、第1の集電部1の第2の足部12と第2の集電部2の第2の足部22との連結部を分離することにより、2枚の正極板が完成する。
【0040】
(第1発明の第2の実施の形態)
図3は本発明の第2の実施の形態の鉛蓄電池用複合集電体を示す図1と同様の図であり、図4は第2の実施の形態における図2と同様の図である。
【0041】
図3において、第2の実施の形態は負極格子に適したものであり、第1集電部3及び第4集電部4は、それぞれ枠部33、43、耳部34、44、足部31、41、32、42、格子部35、45を有する主たる構成は第1の実施の形態と同様であり、また同様に格子部35、45は14本の横骨3601〜3614、4601〜4614と8本の縦骨371〜378、471〜478を有する。各部材の連結や位置関係については第1の実施の形態と同様なので詳細な説明は省略する。
【0042】
図4に、各枠骨、横骨及び縦骨の横断面の輪郭形状を示す。なおこれらの図は、各横断面の輪郭形状を示すものであって、各図の横断面の面積は、実際の枠骨、横骨及び縦骨の横断面面積と比例するものではない。
【0043】
なお、第1の集電部及び前記第2の集電部は、それぞれ負極板の集電部として用いられるものである。第1の実施の形態の正極板と第2の実施の形態の負極板とで形状が異なるのは、主として正極板の格子の腐食の進み方により決定する鉛蓄電池の寿命を可能な限り延ばすことができるように、正極板の方が多く鉛を使用しており、従って重量がより重くなるとともに、荷重の偏る箇所も異なってくるためである。
【0044】
具体的に、第2の実施の形態においては、図4(a)に横断面の輪郭形状を示す第1乃至第4の枠骨331〜334及び431〜4234の横断面積が3.00mm2〜3.50mm2であり、図4(b)に横断面の輪郭形状を示す第1及び第2の縦骨371,372,471,472の横断面積が3.50mm2〜4.00mm2であり、図4(c)に横断面の輪郭形状を示す第3の縦骨373,473からn−1の縦骨377,477の横断面積が1.00mm2〜1.50mm2であり、図4(d)に横断面の輪郭形状を示す前記第nの縦骨378,478の横断面積が1.60mm2〜2.00mm2であり、図4(e)に横断面の輪郭形状を示す第2の横骨3602,4602及び第m−1の横骨3613,4613の横断面積が3.20mm2〜3.70mm2であり、図4(f)に横断面の輪郭形状を示す第m−3の横骨の横断面積が2.80mm2〜3.30mm2である。
【0045】
(第2発明の第1の実施の形態)
図5は、本願第2発明の第1の実施の形態の蓄電池用複合集電体の平面図である。図6は本願第2発明の第1の実施の形態の枠骨、横骨及び縦骨の長手方向と直交する方向の断面である横断面を拡大して示す図である。図5においては、図1に示した実施の形態と同様の部分に、図1に付した符号の数に40または400の数を加えた数を符号として付してある。本実施の形態では、第1の集電部41の耳部54と第2の集電部42の耳部64とが連結されている。また第1の集電部41と第2の集電部42とが、連結された2つの耳部54,64と並行する連結骨部70によって連結されている。そして第1の集電部41の第1の足部51及び第2の足部52に耳状部55Aを備えた第1の懸架部58が設けられ、第2の集電部42の第1の足部61及び第2の足部62に耳状部65Aを備えた第2の懸架部68が設けられている。本実施の形態の鋳造により製造される鉛蓄電池用複合集電体では、第1の懸架部58の耳状部58Aと第2の懸架部68の耳状部68Aが、前述の一対のループ状搬送レーン(図示していない)に対する被懸架部として作用する。
【0046】
第1の集電部41及び第2の集電部42に正極活物質ペーストが充填されて乾燥された後、耳部54、64の連結が切り離され、連結骨部70が切り離され、第1の懸架部58及び第2の懸架部68が取り除かれて、2枚の正極板が完成する。
【0047】
格子部55、65はそれぞれ、第1及び第3枠骨531、631、533、633に沿って延び両端が第2及び第4枠532、632、534、634に連結された14本の横骨56、66及び第2及び第4の枠骨532、632、534、634に沿って延び両端が第1及び第3枠骨531、631、533、633に連結された11本の縦骨57、67からなる。
【0048】
本実施の形態において、第1集電部41及び第2集電部42におけるそれぞれ14本の横骨56、66は、第1枠骨531、631に隣接する第1横骨5601、6601から第3枠骨533、633に隣接する第14横骨5614、6614と定義され、第1集電部41及び第2集電部42におけるそれぞれ11本の縦骨17、27は、第2枠骨532、632に隣接する第1縦骨571、671から第4枠骨534、634に隣接する第11縦骨581、681と定義される。
【0049】
そして本実施の形態では、第1集電部41及び第2集電部42におけるそれぞれ11本の縦骨571〜581、671〜681のうち、縦骨の長手方向に延びる仮想延長線が耳部44、64及び第1足部51、61を通るそれぞれ2本の縦骨、すなわち耳部44、64が第2枠骨532、632の近くに設けられているので第1及び第2縦骨571、572、671、672の長手方向と直交する方向の断面積を、それぞれ2本の縦骨571、572、671、672と第11の縦骨581、681を除く他の縦骨573〜580、673〜680のそれぞれの長手方向と直交する方向の断面積よりも大きくしている。図6は、各枠骨、縦骨及び横骨それぞれの横断面の輪郭形状を示す図であり、第1及び第2縦骨571、572、671、672と第11の縦骨581、681の横断面の輪郭形状が図6(b)に、他の縦骨573〜580、673〜680の横断面の輪郭形状が図6(c)にそれぞれ示されている。
【0050】
このとき、第1縦骨571、671及び第2縦骨572、672の横断面の輪郭形状と第2枠骨532の横断面の輪郭形状とが、相似形を呈しているのが好ましい。
【0051】
図6(a)は第2枠骨532を含む各枠骨の横断面の輪郭形状、図6(b)は第1縦骨571、571、第2縦骨572、572及び第11縦骨581、681の横断面の輪郭形状であり、いずれも実質的に六角形状で相似している。
【0052】
第11縦骨581、681の長手方向と直交する方向の断面積は、第3縦骨から第10縦骨573〜580、673〜680のそれぞれの長手方向と直交する方向の断面積よりも大きくしてある。このようにすると第11縦骨581、681の補強効果により、2つの耳状部58A、68Aを被懸架部として懸架した場合において、第4枠骨534、634の変形を抑制して、活物質の脱落を効果的に防止できる。
【0053】
また、本実施の形態の第1集電部41及び第2集電部2はそれぞれ正極板の集電部として用いられるものであり、第1集電部41及び第2集電部42における第1横骨5601、6601から第14横骨5614、6614のうち、第1枠骨531、631に隣接する第1横骨5601、6601、第3枠骨533、633に隣接する第14横骨5614、6614及び第12横骨5612、6612のそれぞれの長手方向と直交する方向の断面積を、残りの横骨の長手方向と直交する方向の断面積よりも大きくしている。このようにすると第1集電部1及び第2集電部2の耳部54、64から離れた位置における格子の変形を抑制できることが実験より導出された。
【0054】
図6(e)は第1横骨5601、6601及び第12横骨5612、6612、,5614,6614、図6(d)は第2〜第11横骨5602〜5611、6602〜6611及び第13横骨5613、6613の輪郭形状である。
【0055】
第1横骨5601、6601及び第12横骨5612、6612の断面積は、第14横骨1614、2614の断面積よりも大きくしてあり、これにより第1集電部1及び第2集電部2の耳部14、24から離れた位置における格子の変形をより効果的に抑制できることが実験より導出された。
【0056】
また第2〜第11横骨5602〜5611、6602〜6611及び第13横骨5613、6613のそれぞれの長手方向と直交する方向の断面積及び断面の輪郭形状は同じであり、第3〜第10縦骨573〜580、573〜680の横断面の断面積及び輪郭形状も同じであり、これにより縦骨及び横骨の太さを部分的に増大させた場合でも、正極活物質の充填量の低下を抑制できる。
【0057】
このように本実施の形態によれば、各縦骨571〜581、671〜681の断面積を調整することにより、第1集電部41及び第2集電部42の各部の厚みを全体的に薄くした場合でも、鉛蓄電池用複合集電体にペースト状活物質を充填した状態で2つの耳状部58A、68Aを被懸架部として懸架した場合、耳部54、64と、第1集電部41の第1足部51及び第2足部52と第2集電部42の第の足部61及び第2足部62の2箇所の連結部分と、連結骨部70に集中して比較的大きな応力が発生することによる第1集電部41及び第2集電部42の変形の発生を効果的に抑制することができる。
【0058】
なお本実施の形態において、枠骨53、63の横断面積を8.47mm2〜8.67mm2の範囲の値とし、第1及び第2の縦骨の571、572、571、572横断面積を5.02mm2〜5.22mm2の範囲の値とし、第3の縦骨から第10の縦骨573〜580、673〜680の横断面積を2.09mm2〜3.10mm2の範囲の値とし、第11の縦骨581、681の横断面積を5.02mm2〜5.22mm2の範囲の値とし、第2の横骨5602、6602〜第11の横骨5611,6611及び第13の横骨5613、6613の横断面積を3.36mm2〜3.56mm2の範囲の値とし、第1の横骨5601,6601、第11横骨5611、6611、第14の横骨5614、6614の横断面積を2.94mm2〜3.14mm2の範囲の値としている。これらの数値範囲にすると、本実施の形態の鉛蓄電池用複合集電体を正極板の製造に用いた場合に、ほぼ理想的な状態で、集電体の変形を抑制できる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明によると、格子部を構成する縦骨の一部の横断面の断面積を大きくすることにより、2つの耳部を被懸架部として懸架した状態で搬送されても、鉛蓄電池用複合集電体が変形することがない。
【符号の説明】
【0060】
1 第1集電体
2 第2集電体
11、21 第1足部
12、22 第2足部
13、23 枠骨
131、231 第1枠骨
132、232 第2枠骨
133、233 第3枠骨
134、234 第4枠骨
14、24 耳部
15、25 格子部
16、26 横骨
1601、2601 第1横骨
1602、2602 第2横骨
1611、2611 第11横骨
1612、2612 第12横骨
1613、2613 第13横骨
1614、1614 第14横骨
17、27 縦骨
171、271 第1縦骨
172、272 第2縦骨
177、277 第7縦骨
178、278 第8縦骨
図1
図2
図3
図4
図5
図6