(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
真空圧状態下で基板の搬送が行われる真空搬送室に対して、仕切弁により開閉される連通口を介して接続され、内部の圧力を大気圧状態と、真空圧状態とに切り替え可能なロードロック室を備えたロードロック装置であって、
複数の基板を収容し、着脱自在な蓋体が側面に設けられた基板容器の搬入出が行われる搬入出口と、この搬入出口を開閉する開閉扉とを備え、側面に前記連通口が形成されたロードロック室本体と、
前記ロードロック室内の、前記連通口と上下方向に並ぶ高さ位置に設けられ、前記基板容器に対する前記蓋体の着脱を実行する着脱位置と、この着脱位置から後退した後退位置との間を横方向に進退自在に構成された蓋体着脱機構と、
前記ロードロック室内に設けられ、前記基板容器が載置される載置台を備え、前記載置台に載置された前記基板容器の前記蓋体側の側面を、前記連通口に対向する高さ位置と、前記蓋体着脱機構に対向する高さ位置とに移動させるように、前記載置台を昇降させる昇降機構と、
前記基板容器内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給部と、を備え、
前記ロードロック室内に前記基板容器を搬入してから、前記蓋体着脱機構により前記基板容器の前記蓋体を取り外すまでの期間中、前記基板容器内の圧力を前記ロードロック室内の圧力よりも高い状態に維持するため、前記不活性ガス供給部より前記基板容器内に不活性ガスを供給することを特徴とするロードロック装置。
前記搬入出口は、前記ロードロック室本体の天井面に設けられ、前記昇降機構は、前記搬入出口を介して前記基板容器の搬入出が行われる高さ位置まで前記載置台を上昇させることを特徴とする請求項1に記載のロードロック装置。
前記制御部は、前記ロードロック室内を大気圧状態に切り替えるステップの実行中、前記基板容器内の圧力が前記ロードロック室内の圧力よりも高い状態に維持されるように、前記第1の不活性ガス供給部及び前記第2の不活性ガス供給部からの不活性ガスの供給量を調節することを特徴とする請求項5に記載のロードロック装置。
前記真空搬送室に接続され、前記基板処理室で処理された基板を前記ロードロック室内の前記基板容器に戻す前に、基板の冷却を行う冷却室を備えたことを特徴とする請求項8に記載の基板処理システム。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態として、処理対象のウエハWを所定枚数、例えば25枚収容した基板容器であるFOUP6の搬入出が行われるロードロック装置であるロードロックモジュール2を備えたウエハ処理システム(基板処理システム)1の例について
図1、
図2を参照しながら説明する。
図1に示すように、ウエハ処理システム1は、実施の形態に係る複数のロードロックモジュール2と、真空圧状態下でウエハWの搬送が行われる真空搬送室を成す真空搬送モジュール11と、ウエハWに処理を施すための処理室を備える処理モジュールPM1〜PM4と、を備えている。FOUP6の搬入出位置から見て、これらのモジュールは、ロードロックモジュール2、真空搬送モジュール11、処理モジュールPM1〜PM4の順に並んでおり、隣り合うモジュール同士はゲートバルブG1、G2を介して気密に接続されている。
【0014】
ロードロックモジュール2は、真空搬送モジュール11の1つの側壁面に横方向に並べて、例えば3個設けられている。これらロードロックモジュール2は、その内部にFOUP6全体を搬入して、大気圧状態と真空圧状態とを切り替え、真空搬送モジュール11へのウエハWの出し入れを行うことが可能な構成となっているが、その詳細な構成については後述する。
【0015】
図1に示すように真空搬送モジュール11は、概略の平面形状が多角形状に形成されていることにより、複数のロードロックモジュール2や処理モジュールPM1〜PM4などが接続される側壁面を備え、その内部は真空雰囲気となっている。既述の3個のロードロックモジュール2が設けられている面を手前側としたとき、手前側から見て左右の両側壁面、及び後方側の側壁面には、処理モジュールPM1〜PM4や、これら処理モジュールPM1〜PM4にて処理された後のウエハWの冷却を行うための冷却モジュールCMが接続される。真空搬送モジュール11内には、ロードロックモジュール2や各処理モジュールPM1〜PM4、冷却モジュールCM間でウエハWの搬送を行うウエハ搬送機構(基板搬送機構)12が設けられている。
【0016】
図1、
図2に示すように、ウエハ搬送機構12は、伸縮自在な例えば2本の搬送アーム121を備え、これらの搬送アーム121は鉛直軸周りに回転自在な基体部122に支持されている。この基体部122は、横移動レール123を備えたスライダー124上に設けられており、不図示の移動機構により横移動レール123に沿って、手前側から見て左右方向に移動できる。さらに当該スライダー124は、真空搬送モジュール11の床面に配置された前後移動レール125上に設けられ、不図示の移動機構により真空搬送モジュール11内を前後方向に移動できる。これらの構成により、各搬送アーム121は、3個のロードロックモジュール2、及び各処理モジュールPM1〜PM4、冷却モジュールCM内に進入して、これらのモジュール2、PM1〜PM4、CMとの間でウエハWの受け渡しを行うことが可能となっている。
さらに真空搬送モジュール11は、その内部の真空排気を行い、真空搬送モジュール11内を予め設定された圧力の真空圧状態に維持するための、不図示の真空排気機構に接続されている。
【0017】
処理モジュールPM1〜PM4は、真空圧状態の処理室内にウエハWを配置し、処理ガスを供給して、ウエハWに対する処理を行う。処理の種類としては、成膜ガスを用いてウエハWの表面に成膜を行う成膜処理や、アニールガスの供給雰囲気下で成膜処理後のウエハWの加熱処理を行うアニール処理、エッチングガスを用いてウエハWの表面に成膜された薄膜をエッチングするエッチング処理、アッシングガスを用いてウエハWの表面の不要なレジスト膜などを除去するアッシング処理などが挙げられる。処理モジュールPM1〜PM4には、必要に応じて、処理ガスの供給機構や処理ガスの反応性を向上させるためのプラズマ化機構、ウエハWの載置台や、載置台上のウエハWの加熱を行う加熱機構などが設けられる。
【0018】
真空搬送モジュール11に接続される処理モジュールPM1〜PM4は、ウエハWに対して互いに種類の異なる処理を行うものであってもよいし、共通の種類の処理を行うものであってもよい。異なる処理が行われる処理モジュールPM1〜PM4では、FOUP6から取り出されたウエハWは、予め設定された順序で各処理モジュールPM1〜PM4間を搬送されて複数の処理が実行され、必要な全ての処理を実施されたウエハWがFOUP6に戻される。このとき、処理時間などの要請に応じて、一部、または全ての処理の処理モジュールPM1〜PM4を複数組ずつ設けてもよい。
また、全ての処理モジュールPM1〜PM4にて共通の種類の処理が行われる場合には、FOUP6から取り出されたウエハWは所定の処理モジュールPM1〜PM4に搬送されて並列に処理が行われた後、FOUP6に戻される。
【0019】
さらに真空搬送モジュール11に対しては、冷却モジュールCMを接続してもよい。処理モジュールPM1〜PM4内にて実行される処理には、ウエハWの温度上昇を伴うものがあり、この場合には、処理後のウエハWは、FOUP6にて受け入れ可能な温度に冷却してから戻す必要がある。一方で、各処理モジュールPM1〜PM4や真空搬送モジュール11内は、高度の真空圧状態に維持されているため、これらのモジュールPM1〜PM4、11を搬送されている期間中にウエハWの温度が殆ど低下しない場合がある。冷却モジュールCMは、このような場合にウエハWの冷却を専用に行う。
【0020】
例えば冷却モジュールCMは、冷却室内に、1枚のウエハWが載置される載置台、または複数枚のウエハWが一枚ずつ載置される複数段の載置棚を備え、これら載置台や載置棚の各棚段には、載置されたウエハWを冷却する冷却機構が設けられている。冷却機構は、載置台や棚段の内部に冷媒を通流させる流路を設けてウエハWの冷却を行う方式でもよいし、ペルチェ素子などを用いてウエハWの冷却を行ってもよい。既述の処理モジュールPM1〜PM4や真空搬送モジュール11と同程度の真空圧状態下では、冷却機構によるウエハWの冷却を迅速に行うことが困難な場合には、ゲートバルブG2を閉じた後、冷却モジュールCM内に圧力調整用のガスを供給したり、ウエハWと載置台、棚段との隙間に伝熱用のガスを通流させたりしてもよい。
【0021】
以上に説明した処理モジュールPM1〜PM4、冷却モジュールCMの他、真空搬送モジュール11には、FOUP6から取り出されたウエハWを各処理モジュールPM1〜PM4に搬入する前に、各ウエハWの中心位置や周方向の向きの位置合わせを行うアラインメント室(不図示)を接続してもよい。アラインメント室を真空搬送モジュール11に接続する場合には、これらの位置合わせは真空雰囲気下で行われる。また、真空搬送モジュール11内に直接アライメント機構を設けてもよい。
【0022】
次いで、上述の構成を備えたウエハ処理システム1に接続されるロードロックモジュール2の詳細な構成について説明する。既述のように、真空搬送モジュール11の前面に例えば3個設けられているロードロックモジュール2は互いに共通の構成を備えている。
図1において、3個のロードロックモジュール2のうち、右側の図はロードロックモジュール2の横断平面図を示し、真ん中、及び左側のロードロックモジュール2は上面側からの外観平面図を示している。
図1、
図2に示すようにロードロックモジュール2は、その内部空間がロードロック室となるロードロック室本体21と、ロードロック室内でFOUP6を上下方向に移動させるための昇降機構3と、FOUP6の側面に設けられた蓋体62の着脱を行うための蓋体着脱機構4とを備える。
【0023】
ロードロック室本体21は、その内部にFOUP6を搬入し、且つ、搬入されたFOUP6を上下方向に移動させることが可能な内部空間を有する直方体形状の筐体として構成されている。ロードロック室本体21の側面には、真空搬送モジュール11内に設けられたウエハ搬送機構12の搬送アーム121を伸長させたとき、当該搬送アーム121をロードロック室本体21内に進入させることが可能な高さ位置に連通口211が開口している。連通口211は、仕切弁であるゲートバルブG1を介して真空搬送モジュール11側の開口と接続され、このゲートバルブG1の開閉により、ロードロック室本体21及び真空搬送モジュール11の内部雰囲気を互いに連通させ、また切り離すことができる。
【0024】
ロードロック室本体21の上面には、FOUP6の搬入出が行われる搬入出口212が開口している。本例のウエハ処理システム1が配置される工場の天井部には、
図1に示す3個のロードロックモジュール2の並び方向に沿って、FOUP6の搬送を行うOHT(Overhead Hoist Transport)のレール(不図示)が配置されている。
図9に示すように、OHTはFOUP6の上面に設けられたフランジ部61を把持部8(OHTの本体部側は不図示)にて把持してFOUP6を搬送することができる。この結果、OHTは、上記レールに沿って搬送してきたFOUP6を各ロードロック室本体21の搬入出口212に向けて降下させ、また搬入出口212を介して受け取ったFOUP6を持ち上げて、次の搬送先へ向けて搬送することができる。
【0025】
さらにロードロック室本体21の上面側には、搬入出口212を開閉するための開閉扉22が設けられている。開閉扉22はロードロック室本体21の上面に固定されたヒンジ部221に取り付けられ、当該ヒンジ部221内に設けられた不図示の駆動機構により、当該ヒンジ部221を中心軸とした中心軸周りに回動自在に構成されている。この開閉扉22により、ロードロック室本体21の内部空間は、FOUP6の搬入出時に、上方のOHTへ向けて搬入出口212を開放する開放状態(
図1の左側のロードロックモジュール2参照)と、搬入出口212により搬入出口212を閉じて、外部雰囲気からロードロック室本体21を区画する密閉状態(
図1の中央のロードロックモジュール2、及び
図2参照)とに切り替えられる。
【0026】
ロードロック室本体21内に設けられた昇降機構3は、既述の連通口211に対向するロードロック室本体21の内側壁面に沿って設けられると共に、上下方向に伸びるように配置された昇降レール33と、不図示の昇降機構により駆動され、昇降レール33に沿って上下方向に移動可能な昇降板32と、この昇降板32によって下面側から支持され、その上面側にFOUP6が載置される載置台31とを備える。
【0027】
載置台31の上面には、FOUP6の底面に設けられた不図示の位置決め孔に嵌合し、着脱自在な蓋体62側の面を連通口211へ向けてFOUP6を保持するための例えば3個の位置決めピン311が設けられている。
昇降板32は、昇降レール33の上端部側から、下端部側までの領域を自由に昇降することが可能であり、搬入出口212を介して載置台31上にFOUP6を受け取り、またOHT(把持部8)によって載置台31上のFOUP6が持ち上げられる高さ位置と、蓋体着脱機構4による蓋体62の着脱が実行される高さ位置と、FOUP6内のウエハWの出し入れが行われる高さ位置とを含む予め設定された高さ位置に、載置台31を移動させることができる。
【0028】
図2に示すように載置台31には、FOUP6内にパージ用の窒素ガスを供給するためのパージガス供給ライン503が接続されている。パージガス供給ライン503の下流端は、載置台31の上面に設けられた不図示のコネクタ部に接続されている。一方でパージガス供給ライン503の上流側は、開閉バルブV3を介して、工場の窒素ガス供給ラインなどからなる窒素供給源51に接続されている。
【0029】
ここで一般的なFOUP6の底面には、例えばバルブを有した2つの開口部(不図示)が設けられている。この開口部はフィルタを介してFOUP6内の雰囲気と外部の雰囲気とを連通し、FOUP6の内外の圧力をバランスさせるように作用する。
【0030】
本例の載置台31にFOUP6を載置すると、前述のパージガス供給ライン503のコネクタ部が2つの開口部の一方側に接続され、FOUP6内にパージガスとして窒素ガスを供給することができる構成となっている(便宜上、
図2、
図11〜
図18には、パージガス供給ライン503の下流端がFOUP6内に挿入された状態にて図示してある)。2つの開口部の他方は、不図示の排気ラインへ接続され、FOUP6内の気体を外部へ排出することができる構成となっている。
ロードロック室本体21内に配設されたパージガス供給ライン503や、FOUP6の排気ラインは、可撓性の配管部材などにより構成され、昇降レール33上のいずれの位置においても、載置台31へのパージガスの供給、排気を行うことができる。パージガス供給ライン503は、FOUP6に不活性ガスを供給する不活性ガス供給部(第1の不活性ガス供給部)に相当する。
【0031】
さらに、ロードロック室本体21内には、既述の連通口211と上下方向に並ぶ位置、例えば連通口211の下方側位置に、蓋体着脱機構4が配置されている。蓋体着脱機構4は、FOUP6の側面に設けられた蓋体62の着脱を実行する着脱部41と、当該着脱が実行される着脱位置と、この着脱位置から後退した後退位置との間で着脱部41を
図2において横方向に移動させる駆動部42とを備える。
ここで、真空圧状態に切り替えられるロードロックモジュール2内では、一般的に利用されている真空吸着式の蓋体着脱機構を採用することが困難である。そこで、本例のロードロックモジュール2は、ラッチキー411を用いて蓋体62の着脱を行うメカラッチ方式の蓋体着脱機構4が設けられている。
【0032】
図3は、蓋体62、及びFOUP62を正面側から見た一部破断図であり、
図4、
図5はFOUP6に対する蓋体62の固定機構63の拡大図である。
蓋体62は、FOUP6の正面側に形成された開口に嵌合可能な、四角形の板状の部材として構成されている。蓋体62は内部が中空になっており、その内部には、蓋体62をFOUP6に対して固定した状態と、この固定を解除した状態との切り替えを行う固定機構63が内蔵されている。
【0033】
図3に示すように本例の蓋体62を正面側から見たとき、固定機構63は、蓋体62の左右2箇所に設けられている。各固定機構63は、蓋体62の高さ方向のほぼ中央部に配置され、中心周りに回動可能に設けられた円板状のディスク板631と、このディスク板631から上下方向に向けて延設されたロックプレート634とを備える。
【0034】
各ディスク板631には、その周方向に沿って2本の溝カム632が設けられている。各溝カム632は、螺旋の一部を切り取った形状に形成され、一端側の位置(
図4にて、後述の連結ピン635が挿入されている位置)から、他端側の位置(
図5にて、前記連結ピン635が挿入されている位置)に向けて、ディスク板631の中心からの径方向の距離が短くなっている。
上下の各ロックプレート634の基端部(ディスク板631の側の端部)には連結ピン635が取り付けられ、各連結ピン635は対応する溝カム632内に挿入されている。これら連結ピン635は、例えば蓋体62の互いに対向する内側面に形成された不図示の溝内に挿入され、上下方向に移動自在に保持されている。
【0035】
ディスク板631の正面側には、一対の突起体633が設けられている。
図4に示すように、固定機構63によって蓋体62が固定された状態において、一対の突起体633は、ほぼ水平な方向を向いている。一方で
図3に示すように、蓋体6を正面から見たとき、前記突起体633が配置されている位置には、後述する着脱部41側のラッチキー411を挿入するための鍵穴620が設けられている。ラッチキー411は、これら突起体633の間に嵌合可能な向きで鍵穴620に挿入される。
さらに
図3に示すように、各ロックプレート634が配置されている領域のFOUP6の上下の内壁面には、これらロックプレート634の上端部、下端部を嵌合させることが可能な嵌合穴601が設けられている。
【0036】
図6は、蓋体着脱機構4を構成する着脱部41における、蓋体62との対向面を示している。当該対向面には、蓋体62側に形成されている鍵穴620に対応する位置に、既述の一対の突起体633の間に嵌合可能な形状のラッチキー411が設けられている。ラッチキー411は、着脱部41に設けられている不図示の駆動機構により、前記突起体633の間に嵌合する向き(
図4)と、これら突起体633の間に嵌合した状態で、反時計回りに90°回転した向き(
図5)との間を回転自在に構成されている。
【0037】
さらに着脱部41には、四角形状の蓋体62(
図6中、破線で示してある)の四隅に対応する位置に、蓋体62を安定した状態で保持するための押圧ピン412が設けられている。
図7に示すように各押圧ピン412は、板状の着脱部41を貫通するように設けられている。押圧ピン412の後端側にはガイド部413が設けられ、ガイド部413は、着脱部41の背面側に固定されたカバー体415内に挿入されている。これらガイド部413とカバー体415の内壁面との間には、ばね414が介挿され、押圧ピン412は着脱部41の前記対向面から突出する方向へ向けて付勢されている。
着脱部41は、上述の対向面を蓋体62側へ向けた状態で支持部421に支持され、この支持部421を介して駆動部42に連結されている。
【0038】
上述の構成を備えた着脱部41を用いてFOUP6に対する蓋体62の着脱を行う動作について簡単に説明しておく。
図11に示すように、載置台31上に載置されたFOUP6の蓋体62を着脱部41に対向する高さ位置まで降下させ、駆動部42により着脱部41を着脱位置までFOUP6側へ前進させると、蓋体62側の鍵穴620に着脱部41側のラッチキー411が挿入される。
【0039】
鍵穴620を介して蓋体6の内部に進入したラッチキー411は、一対の突起体633の間に嵌合した状態となる(
図4)。しかる後、着脱部41側の不図示の駆動機構により、ラッチキー411を中心軸周りに反時計回りの方向へ回転させると、突起体633を介してディスク板631がラッチキー411と同軸に反時計回りに回転する。この結果、溝カム632に案内された連結ピン635がディスク板631の径方向内側へ向けて移動する動作(
図5)に対応して、上下のロックプレート634の先端部が、FOUP6側の嵌合穴601から抜き出される。しかる後、着脱部41を後退位置まで後退させると、FOUP6から蓋体62が取り外される。
【0040】
着脱部41に保持された蓋体62に対しては、四隅の押圧ピン412によって、着脱部41の対向面から遠ざかる方向へ押し戻される力が働く一方、当該蓋体62は、鍵穴620内に挿入されたラッチキー411によって係止されている。これら押圧ピン412及びラッチキー411から受ける力が釣り合うことにより、FOUP6から取り外された蓋体62は、着脱部41によって安定した状態で保持される。
取り外された蓋体62の装着は、上述の動作の反対の手順により実行される。
【0041】
ここで
図2に示すように、蓋体62の着脱を実行する着脱部41の上端(蓋体62に対向する対向面の上端)は、連通口211を介してロードロック室本体21内に進入してくる搬送アーム121の進入経路(ウエハWの搬送経路)よりも下方側に設定されている。
【0042】
さらに
図2に示すように、ロードロック室本体21にはロードロック室本体21の内部の真空排気を行う排気ライン502、及びロードロック室本体21内に不活性ガスである窒素ガスを供給する窒素供給ライン501が接続されている。排気ライン502の下流側には、開閉バルブV2を介して真空排気部52が接続されている。また、窒素供給ライン501の上流側には、開閉バルブV1を介して窒素供給源51が接続されている。
【0043】
ウエハWの表面に形成される集積回路の微細化に伴い、ウエハWの周囲の水分子や酸素分子などが回路特性に与える影響が大きくなり、ある処理を行ってから次の処理を行うまでに許容される最大の待ち時間であるQタイム(Queuing Time)が短くなる傾向にある。しかしながらQタイムが過度に短くなると、工場内でのウエハWの処理スケジュールの制約が大きくなってしまうため、上述の水分子や酸素分子などの影響を抑える必要が生じている。そこで本例のロードロックモジュール2では、ロードロック室本体21に不活性ガスである窒素ガスを供給することにより、処理モジュールPM1〜PM4による処理を終えたウエハWを収容したFOUP6も不活性ガスである窒素ガスで満たすようにしている。これにより、ウエハWの周囲の水分子や酸素分子の濃度を低減してQタイムの短時間化を抑えている。
【0044】
窒素供給ライン501、排気ライン502や真空排気部52などは、ロードロックモジュール2内の圧力の切り替えを実行する圧力切替機構に相当し、窒素供給ライン501は当該圧力切替機構に設けられた第2の不活性ガス供給部に相当する。なお、
図2、
図11〜
図18以外の図においては、窒素供給ライン501、排気ライン502、パージガス供給ライン503、窒素供給源51や真空排気部52などの記載は省略してある。
【0045】
また
図1、
図2に示すように、ウエハ処理システム1には制御部7が設けられている。制御部7は不図示のCPU(Central Processing Unit)と記憶部とを備えたコンピュータからなり、この記憶部には上述したロードロックモジュール2、真空搬送モジュール11、処理モジュールPM1〜PM4や冷却モジュールCMの各動作を実行させる制御信号を出力するためのステップ(命令)群が組まれたプログラムが記録されている。このプログラムは、例えばハードディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスク、メモリカードなどの記憶媒体に格納され、そこから記憶部にインストールされる。
【0046】
以上に説明した構成を備えるロードロックモジュール2の作用について
図8〜
図18を参照しながら説明する。
図8はロードロックモジュール2へのFOUP6の搬入から、FOUP6内のウエハWを処理してFOUP6を搬出するまでの動作に係る工程図であり、
図9〜
図18は各動作時におけるロードロックモジュール2の作用図である。
初めに、処理対象のウエハWを収容したFOUP6が工場内のOHTによって搬送され、当該FOUP6が搬入されるロードロックモジュール2の上方位置に到達する。このとき、ロードロックモジュール2は、搬入出口212を開放状態とし、昇降機構3は載置台31を搬入出口212付近の高さ位置まで上昇させて待機し、OHTは、当該載置台31へ向けてFOUP6を降下させる(
図9)。またこのとき、ゲートバルブG1は閉状態となっていてロードロックモジュール2は真空搬送モジュール11から切り離されている。
【0047】
FOUP6が載置台31上に載置されて、位置決めピン311によって所定の位置に保持されると、OHTは把持部8によるフランジ部61の把持を解除して、把持部8を上方側へ退避させる(
図8のP1、
図10)。しかる後、蓋体62が設けられているFOUP6の側面が蓋体着脱機構4の着脱部41に対向する高さ位置まで載置台31を降下させて、FOUP6をロードロックモジュール2内に搬入すると共に、開閉扉22により搬入出口212を閉じて密閉状態とする(
図8のP2、
図11)。
【0048】
次いで、着脱部41を着脱位置まで前進させ、
図4、
図5を用いて説明した手法により蓋体62の固定を解除する動作を実行する(
図12)。
ここで、開閉扉22を開いた際に、搬入出口212を介してウエハ処理システム1の載置雰囲気と連通するロードロック室本体21の内部は、FOUP6内と比較してパーティクルが多い状態となっているおそれがある。この状態で蓋体62を取り外したとき、FOUP6内の圧力がロードロック室本体21内の圧力よりも低くなっていると、FOUP6内にパーティクルが進入し、ウエハWを汚染する可能性もある。このような状態の発生を抑えるため、本例のロードロックモジュール2は、FOUP6内の圧力がロードロック室本体21内の圧力よりも高い状態に維持されるように圧力調節を行うことができる。
【0049】
具体的な手法としては、
図11に示すように排気ライン502の開閉弁V2を開き、真空排気部52を作動させて、ロードロック室本体21内の圧力を大気圧状態よりも少し低い減圧状態(真空圧状態以上の圧力)に調節する。また、同図に示すように、パージガス供給ライン503の開閉弁V3を開き、FOUP6内にパージガスを導入する一方、不図示の排気ラインからの排気量を調節して、FOUP6内の圧力がロードロック室本体21内の圧力よりも高くなるように調節してもよい。
これらの手法は、いずれか一方を採用してもよいし、両方を採用してもよい。
【0050】
このように、FOUP6の内部と、ロードロック室本体21の内部との間に圧力差が形成される場合には、着脱部41により蓋体62の固定を解除すると、着脱位置から後退させる方向に着脱部41を押し戻す力が働く。
この着脱部41を移動させる駆動部42の駆動機構がエアーシリンダなどにより構成されている場合には、この当該着脱部41を押し戻す力(FOUP6内の圧力)が、予め設定された値となったことを条件として、着脱部41を後退させる構成としてもよい。また駆動部42の駆動機構がリニアモータなどにより構成されている場合には、エンコーダなどを用いた位置制御により、FOUP6と蓋体62との隙間が僅かに開いた位置にて停止させ、FOUP6からロードロック室本体21内へ向けて流れる気流を形成してもよい。
【0051】
上述の圧力調節を行った後、着脱部41を後退位置まで後退させてFOUP6から蓋体62を取り外す(
図8のP3、
図13)。その後、真空排気部52による排気量を増加させて、真空搬送モジュール11と連通可能な真空圧状態までロードロック室本体21の内部(ロードロック室)の真空排気を実行する(
図8のP4、
図14)。
【0052】
上記ロードロックモジュール2内の真空排気と並行して、蓋体62が取り外されたFOUP6の側面が連通口211に対向した状態となる高さ位置まで載置台31を上昇させる。詳細には、昇降機構3はFOUP6から最初に取り出されるウエハWが保持されたスロット(不図示)に向けて、搬送アーム121を進入させることが可能な高さ位置にFOUP6を位置させる(
図14)。
【0053】
真空排気が完了し、ロードロック室本体21の内部(ロードロック室内)が予め設定した圧力の真空圧状態となったら、真空排気部52による真空排気を継続しながら、ゲートバルブG1を開き、ロードロックモジュール2と真空搬送モジュール11とを連通させる。そして、搬送アーム121をロードロックモジュール2内に進入させ、当該搬送アーム121をFOUP6の内部に挿入してウエハWを取り出す(
図8のP5、
図15)。
【0054】
例えば、FOUP6内の上下方向に棚段状に形成されたスロットの最上段から下方側へ向けてウエハWを取り出していく場合、1枚目のウエハWが取り出されると、昇降機構3はFOUP6をスロット1段分だけ上昇させる。このFOUP6へ搬送アーム121を挿入して2枚目のウエハWを取り出し、これらの動作を繰り返すことにより、順次、ウエハWを取り出していく(
図16)。
【0055】
FOUP6から取り出されたウエハWは、真空搬送モジュール11内に搬入され、アラインメント機構により位置合わせが行われた後、処理モジュールPM1〜PM4に搬入されて所定の処理が実行される。処理モジュールPM1〜PM4にて処理が行われたウエハWは、必要な場合は冷却モジュールCMにて冷却された後、ロードロックモジュール2内で待機しているFOUP6に戻される(
図8のP5)。ここで制御部7は、各ウエハWと、これらウエハWを保持するFOUP6内のスロットとの対応関係を記憶しており、処理後のウエハWをFOUP6に戻す際に、そのウエハWが保持されていたスロットに戻るように、昇降機構3によってFOUP6を昇降させる制御を行う。
【0056】
これらウエハWの出し入れ動作において、本実施の形態のロードロックモジュール2は、連通口211の下方側に配置されている着脱部41(蓋体着脱機構4)の上端が、搬送アーム121の進入経路(ウエハWの搬送経路)よりも下方側に配置され、着脱部41と搬送アーム121とが干渉しない構成となっている。この結果、ウエハWの搬送経路から着脱部41を退避させる独自の昇降機構を設けなくても、共通の昇降機構3のみを用いてFOUP6を移動させるだけで、蓋体62の着脱やウエハWの出し入れを行うことができる。
【0057】
また、FOUP6から蓋体62を取り外し、ウエハWの出し入れ動作を行っている期間中もパージガス供給ライン503からFOUP6へのパージガスの供給動作は継続されている(
図13〜
図16)。パージガスの供給を継続することにより、処理後のウエハWから発生するガスによる、処理前のウエハWのクロスコンタミネーションを防止することが可能となる。
蓋体62を取り外した状態において、FOUP6は、真空圧状態となっているロードロック室本体21の内部と連通した状態となっている。この結果、大気圧状態下でウエハWの搬入出を行う場合と比較して、ウエハWに成膜された膜や処理に用いた処理ガスの飽和蒸気圧の関係から、処理後のウエハWからのガスの発生が起こりやすくなる場合がある(真空昇華)。蓋体62を取り外した状態でのFOUP6内へのパージガスの供給の継続は、このようにガスの発生しやすい条件下でのウエハWの出し入れに有効である。
【0058】
全てのウエハWの処理が完了してFOUP6に全てのウエハWが戻されたら、ゲートバルブG1を閉じ、FOUP6内へのパージガスの供給を継続したまま、着脱部41と対向する位置までFOUP6を降下させる。しかる後、着脱部41を着脱位置まで移動させて、FOUP6に蓋体62を取り付ける(
図8のP6、
図17)。そして、真空排気を停止すると共に、窒素供給ライン501よりロードロック室本体21内に窒素ガスを導入して、当該ロードロック室本体21内の圧力を大気圧状態にする(
図18)。
【0059】
また、蓋体62を閉じる際にFOUP6内へのパージガスの供給を継続し、このとき不図示の排気ラインからの排気量を調節することにより、FOUP6内の圧力をロードロック室本体21の内部の圧力よりも高い状態に維持することができる。そして、FOUP6内の圧力がロードロック室本体21内の圧力よりも高い状態が維持されるように、これらの空間への窒素ガスの供給流量を調節する。しかる後、ロードロック室本体21の内部が大気圧状態となり、FOUP6内の圧力が大気圧よりも少し高い圧力状態(FOUP6に過大な応力が加わらない程度の圧力状態)となったら、ロードロック室本体21内へのパージガスの導入を停止する(
図8のP7)。パージガス供給ライン503からのFOUP6内への窒素ガスの導入は、ロードロック室本体21内へのパージガスの導入停止に合わせて停止してもよいし、ロードロック室本体21への導入停止前、あるいはFOUP6が搬出された後に停止してもよい。
【0060】
これらの操作の結果、FOUP6内は窒素ガスで満たされ、ウエハWの周囲の水分子や酸素分子濃度が低い状態となる。
ここで真空圧状態のFOUP6内に窒素ガスを供給することにより、例えば空気によりロードロック室本体21内の圧力を大気圧状態に調節し、蓋体62を閉じてからFOUP6内を窒素ガス雰囲気に置換する場合と比べて、効率よく窒素ガスの充てんを行うことができる。
【0061】
FOUP6内、及びロードロック室本体21内が所定の圧力状態となったら、開閉扉22を開いて搬入出口212を開放状態とする。しかる後、OHTへの受け渡し位置までFOUP6を上昇させると、OHTの把持部8によってFOUP6のフランジ部61が把持され、FOUP6が持ち上げられることにより搬出動作が完了する(
図8のP8)。なお、開閉扉22を開放する際にロードロックモジュール2内から窒素ガスが流出することを抑えるため、FOUP6に蓋体62を取り付けた後、さらにロードロックモジュール2内を空気で置換してもよい。また、搬入出口212にエアカーテンを形成して大気(空気)とロードロックモジュール2内の窒素ガス雰囲気とを隔絶してもよい。
【0062】
本実施の形態に係るロードロックモジュール2によれば以下の効果がある。FOUP6に対する蓋体62の着脱を実行する蓋体着脱機構4と、FOUP6からのウエハWの出し入れが行われる真空搬送モジュール11への連通口211とが上下に並べて配置されているので、共通の昇降機構3を用いてFOUP6を昇降させるだけで、蓋体着脱機構4に対向する高さ位置と、連通口211に対向する高さ位置とにFOUP6を移動させることができる。
【0063】
この結果、蓋体着脱機構4に独自の昇降機構を設けて連通口211から退避させる動作を行わなくても昇降機構3のみを利用して、蓋体62の着脱動作、及びFOUP6からのウエハWの出し入れを行うことが可能となる。
さらに搬入出口212がロードロックモジュール2の天井面に開口していることにより、昇降機構3によるFOUP6の昇降動作を利用して、蓋体62の着脱、ウエハWの出し入れに加え、ロードロックモジュール2に対するFOUP6の搬入出動作も実行することができる。
【0064】
但し、FOUP6の搬入出はロードロックモジュール2の天井面側の搬入出口212を介して行う場合に限定されない。例えば、
図1に示す左右両脇のロードロックモジュール2については、各々左側、右側の側壁面にも搬入出口212を設け、AGV(Automated Guided Vehicle)など、工場内の床面上を移動する搬送機構により搬送されてきたFOUP6を受け入れ可能な構成としてもよい。また
図1において、昇降機構3が設けられているロードロックモジュール2の側壁面を前後方向に引出し可能、且つ、鉛直方向に伸びる回転軸周りに回転自在に構成し、各ロードロックモジュール2の前面側から搬送されてきたFOUP6を載置台31上に載置することが可能な構成としてもよい。
【0065】
図19、
図20は、蓋体62を取り外した後の開口部にノズル341を挿入し、当該開口部を介してFOUP6内にパージガスである窒素ガスを供給するパージガス供給部(不活性ガス供給部)の一例を示している。
図20に示すように、載置台31の左右両側面には、鉛直軸方向に伸びるようにパージガス供給管342が延設され、各パージガス供給管342の高さ方向に沿って、複数本のノズル341が互いに間隔を開けて設けられている。パージガス供給管342の基端部には、パージガス供給管342を鉛直軸周りに回転させる回転駆動部343が設けられている。
【0066】
図19に示すように、ノズル341の平面形状は、パージガス供給管342を基端として、鉤状に屈曲した形状となっている。かかる構成を備えたパージガス供給部は、パージガス供給管342を鉛直軸周りに回転させることにより、パージガス供給時に、蓋体62が取り外されたFOUP6の開口部内にノズル341の先端を挿入した状態と、蓋体62の取り付け時に開口部からノズル341を退避させた状態との間を移動させることができる。
【0067】
さらに蓋体着脱機構4の配置位置については、
図2などに示すように連通口211の下方側に配置する場合に限定されるものではない。例えば、蓋体着脱機構4を上下反転してロードロック室本体21の天井面から吊り下げ、連通口211の上方側に蓋体着脱機構4(着脱部41)を配置する構成としてもよい。