特許第6582716号(P6582716)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6582716-二色性色素、液晶組成物、及び液晶素子 図000035
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6582716
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】二色性色素、液晶組成物、及び液晶素子
(51)【国際特許分類】
   C09B 31/053 20060101AFI20190919BHJP
   C09B 35/35 20060101ALI20190919BHJP
   C09B 31/18 20060101ALI20190919BHJP
   C09B 43/28 20060101ALI20190919BHJP
   C09K 19/60 20060101ALI20190919BHJP
   G02F 1/137 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
   C09B31/053CSP
   C09B35/35
   C09B31/18
   C09B43/28
   C09K19/60 A
   G02F1/137 500
【請求項の数】6
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2015-161038(P2015-161038)
(22)【出願日】2015年8月18日
(65)【公開番号】特開2017-39814(P2017-39814A)
(43)【公開日】2017年2月23日
【審査請求日】2018年5月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】門脇 智子
(72)【発明者】
【氏名】田中 由紀
【審査官】 伊佐地 公美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−057551(JP,A)
【文献】 特開2009−007486(JP,A)
【文献】 特開2009−007485(JP,A)
【文献】 特開2013−139521(JP,A)
【文献】 特開2012−082400(JP,A)
【文献】 特開2012−031384(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B
C09K
G02F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記式(I)で表され、部分構造として下記式(II)又は式(III)のいずれかを有する二色性色素。
【化1】
[式(I)中、
Ar1及びAr2は、各々独立して、置換基を有していても良い芳香環を示し、
1及びX2は、各々独立して、酸素原子又は−NR5−(R5は水素原子又は置換基を有していても良いアルキル基)を示し、
1及びR2は、各々独立して、水素原子、又は置換基を有していても良い、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基若しくはアルコシキシ基を示し、
1及びL2は、炭素数1〜10の直鎖状のアルキレン基を示し、
1〜A4は、各々独立して、置換基を有していてもよい、1,4−フェニレン基又は(E)−シクロヘキサン−1,4−ジイル基を示し、
1及びB2は、連結する直列部分が4原子以上である、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、エステル基、エーテル基又はカルボニル基を有する基を示し、
1〜n5は、1以上の整数であり、n1〜n5が2以上の整数である場合は、1分子中に存在するA1、A3、A4、Ar1及びAr2は同一であっても異なっていてもよく、
1、m3は、0又は1であり、m2は0以上の整数である。]
【化2】
〔式(II)中、
4は、酸素原子、又は−NR10−(R10は水素原子又は置換基を有していても良いアルキル基)を示し、
8は、水素原子、又は置換基を有していてもよいアルキル基を示し、
4は、直列部分の原子数が、4原子以上である、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、エステル基、エーテル基又はカルボニル基を有する基を示し、
6はアルキル基又はアルコキシ基を示し、
11、n12は、それぞれ独立に、0又は1を示し、
8、A9は各々独立して、置換基を有していてもよい1,4−フェニレン基、又は置換基を有していてもよい(E)−シクロヘキサン−1,4−ジイル基を示す。
式(III)中、
5は、酸素原子、又は−NR11−(R11は水素原子又は置換基を有していても良いアルキル基) を示し、
7は、水素原子、又は置換基を有していてもよいアルキル基を示し、
5は、直列部分の原子数が、4原子以上である、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、エステル基、エーテル基又はカルボニル基を有する基を示し、
9はアルキル基又はアルコキシ基を示し、
13、n14は、それぞれ独立に、0又は1を示し、
10、A11は各々独立して、置換基を有していてもよい1,4−フェニレン基、又は置換基を有していてもよい(E)−シクロヘキサン−1,4−ジイル基を示す。]
【請求項2】
1=m2=m3=1、n2=1である請求項1記載の二色性色素。
【請求項3】
1=m2=m3=0である請求項1記載の二色性色素。
【請求項4】
前記構造式(I)で表されるB2の直列部分の原子数が、偶数であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の二色性色素。
【請求項5】
請求項1乃至のいずれか1項に記載の二色性色素を有することを特徴とする液晶組成物。
【請求項6】
前記請求項に記載の液晶組成物を含有する液晶相を有することを特徴とする液晶素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示などに用いられる新規な二色性色素、並びに該色素を含有する液晶組成物及び液晶素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子として多くの方式が提案されている。例えば、ゲストホスト方式の液晶素子とは、液晶中に二色性色素を溶解させた液晶組成物をセル中に封印し、これに電場を与え、電場による液晶の動きにあわせて二色性色素の配向を変化させ、セルの吸光状態を変化させることで表示する方式の液晶素子である。このゲストホスト方式は、バックライトを用い電力消費の少ない反射液晶素子として期待されている。
【0003】
ここで、液晶と共に液晶組成物を構成する二色性色素には、適当な光吸収特性、高い二色比のオーダーパラメーター値(以下S値と表すことがある)、ホスト液晶に対する高い溶解性および耐久性などの性質が要求される。
液晶素子に用いられる二色性色素には、アントラキノン系色素とアゾ系色素が知られている。一般的にアントラキノン系の色素は、分子構造によりイエローからシアンまで種々の色を得ることができ、耐光性に優れているとされているが、吸光係数が小さく、吸収スペクトルがシャープであるという欠点がある。これに対して、一般的にアゾ系色素は、二色比が高く、かつ吸光係数が大きい。さらに吸収スペクトルがブロードであるため、他の二色性色素と混色することにより所望のブラックの液晶組成物を構成する用途において、混色する色素の数を、アントラキノン系の色素に比べて少なくでき、かつ添加量が少なくても高コントラスト化が可能であるという利点を有する。
【0004】
特許文献1、2には、最大吸収波長が390nm〜600nmの範囲のアゾ系二色性色素が開示されており、アゾ系としては最も高いオーダーパラメーター(S値)の二色性色素群及び該色素を含む液晶組成物並びに、コントラストに優れた液晶素子が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-007485公報
【特許文献2】特開2009-007486公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載の二色性色素は、S値は非常に良好なものの、さらなる改善とし
て、溶解度をより高め、環境変化によるホスト液晶からの析出の恐れを減らし、かつ粘度上昇による表示能力の低下が少ないものが求められている。
本発明の課題は、高い二色比のオーダーパラメーター(S値)を保持しつつ、実用に耐えうる溶解度を有する、新規なアゾ系二色性色素を提供することを目的とする。また、本発明の課題は、新規なアゾ系二色性色素を用いることによりコントラストの高い表示を実現しうる、ゲストホスト方式の液晶組成物およびこれを含む液晶素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、下記構造式(I)で示されるアゾ系二色性色素の端部の6員環構造と6員環構造の間に可動性の大きい直鎖構造を導入することにより、高い二色比のオーダーパラメーター(S値)を有する二色性色素が実現
できることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて成し遂げられたものである。
すなわち、本発明の要旨は、以下のとおりである。
(1)下記式(I)で表される二色性色素。
【0008】
【化1】
【0009】
[式(I)中、
Ar及びArは、各々独立して、置換基を有していてもよい芳香環を示し、
及びXは、各々独立して、酸素原子又はーNR―(Rは水素原子又は置換基を有していても良いアルキル基)を示し、
及びRは、各々独立して、水素原子、又は置換基を有していてもよい、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基若しくはアルコシキシ基を示し、
及びLは、直接結合又は2価の連結基を示し、
〜Aは、各々独立して、置換基を有していてもよい、1,4−フェニレン基又は(E)−シクロヘキサンー1,4−ジイル基を示し、
及びBは、連結する直列部分が4原子以上の連結基を示し、
〜n5は、1以上の整数であり、n〜n5が2以上の整数である場合は、1分子中に存在するA、A、A、Ar及びArは同一であっても異なっていてもよく、
、mは、0又は1であり、mは0以上の整数である。]
(2)m=m=m=1、n=1であり、 L及びLは環状構造及びアゾ結合を含まない二価の連結基である(1)の二色性色素。
(3)m=m=m=0であり、L1はAとArが直接結合もしくは、連結する
直列部分が2原子である基であり、Lは環状構造及びアゾ結合を含まない二価の連結基である(1)の二色性色素。
(4)前記B1及びB2が、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、エステル基、エーテル基又はカルボニル基を有することを特徴とする前記(1)乃至(3)のいずれかに記載の二色性色素。
(5)前記式(I)で表されるBの直列部分の原子数が、偶数であることを特徴とする前記(1)乃至(4)に記載の二色性色素。
(6)部分構造として下記式(II)又は式(III) のいずれかを有する(1)乃至(5)のいずれかに記載の二色性色素。
【0010】
【化2】
【0011】
〔式(II)中、
は、酸素原子、又は-NR10-(R10は水素原子又は1価の置換基)を示し、
は、水素原子、又は置換基を有していてもよいアルキル基を示し、
は、直列部分の原子数が、4原子以上である2価の連結基を示し、
はアルキル基又はアルコキシ基を示し、
11、n12 は、それぞれ独立に、0又は1を示し、
、A9は各々独立して、置換基を有していてもよい1,4−フェニレン基、又は置換
基を有していてもよい(E)−シクロヘキサン−1,4−ジイル基を示す。
式(III)中、
は、酸素原子、又は-NR11-(R11は水素原子又は1価の置換基)を示し、
は、水素原子、又は置換基を有していてもよいアルキル基を示し、
は、直列部分の原子数が、4原子以上である2価の連結基を示し、
はアルキル基又はアルコキシ基を示し、
13、n14は、それぞれ独立に、0又は1を示し、
10、A11は各々独立して、置換基を有していてもよい1,4−フェニレン基、又は置換基を有していてもよい(E)−シクロヘキサン−1,4−ジイル基を示す。]
(7)前記(1)乃至(6)のいずれか1に記載の二色性色素を有することを特徴とする液晶組成物。
(8)前記(7)に記載の液晶組成物を含有する液晶相を有することを特徴とする液晶素子。
【発明の効果】
【0012】
本発明のアゾ系二色性色素は、高い二色比のオーダーパラメーター(S値)を有するため、非常にコントラストの高い表示を実現するために必要なゲストホスト方式の液晶組成物およびこれを含む液晶素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明のアゾ系二色性色素を用いて作製した液晶素子の一例を示す相転移モードゲストホスト型液晶表示素子の電圧印加状態における略示的断面図である。
図2】本発明のアゾ系二色性色素を用いて作製した液晶素子の一例を示す相転移モードゲストホスト型液晶表示素子の電圧無印加状態における略示的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の二色性色素は、式(I)で表される。
【0015】
【化3】
【0016】
(I)[式(I)中、
Ar及びArは、各々独立して、置換基を有していてもよい芳香環を示し、
及びXは、各々独立して、酸素原子又はーNR―(Rは水素原子又は置換基を有していても良いアルキル基)を示し、
及びRは、各々独立して、水素原子、又は置換基を有していてもよい、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基若しくはアルコシキシ基を示し、
及びLは、直接結合又は2価の連結基を示し、
〜Aは、各々独立して、置換基を有していてもよい、1,4−フェニレン基又は(E)−シクロヘキサンー1,4−ジイル基を示し、
及びBは、連結する直列部分が4原子以上の連結基を示し、
〜n5は、1以上の整数であり、n〜n5が2以上の整数である場合は、1分子中に存在するA、A、A、Ar及びArは同一であっても異なっていてもよく、
、mは、0又は1であり、mは0以上の整数である。]
1.Ar、Arについて
構造式(I)において、Ar1、Arはそれぞれ独立して置換基を有していてもよい
芳香環を示す。
【0017】
芳香環としては、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定はされず、5又は6員環の単環か、あるいはこれが2〜4個縮合してなる縮合環から、水素原子を2個除いて得られる基であり、具体例としては、フェニレン基、トリレン基、キシリレン基、ナフチレン基、キノリン基、チエニレン基、ピリジレン基、チエノチアゾール基等が挙げられる。この中でも1,4−フェニレン基または1,4−ナフチレン基が高い二色比のオーダーパラメーター(S値)を得られるため好ましい。特にm1=m2=m3=0の場合には、Arは、1,4−フェニレン基が好ましい。
【0018】
Ar1、Arが有していてもよい置換基としては、例えばアルコキシ基、アルキル基
等の電子供与性の置換基;あるいはシアノ基、ニトロ基、アルキルスルホニル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基などの電子吸引性の置換基が挙げられる。
Ar1、Arが有していてもよい置換基であるアルコキシ基としては、例えばメトキ
シ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基などの炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜4、中で
も炭素数1〜3のアルコキシ基が挙げられる。
【0019】
Ar1、Arが有していてもよい置換基であるアルキル基としては、例えばメチル基
、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基
、tert-ブチル基などの炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜4、中でも炭素数1〜3
のアルキル基が挙げられる。
Ar1、Arが有していてもよい置換基であるアルコキシ基、アルキル基等の電子供
与性の置換基の中でも、ホスト液晶への溶解度の観点から、メチル基またはメトキシ基が特に好ましい。
【0020】
Ar1、Arが有していてもよい置換基であるアルキルスルホニル基としては、例え
ばメチルスルホニル基、エチルスルホニル基、イソプロピルスルホニル基、n-ブチルス
ルホニル基、イソブチルスルホニル基、sec-ブチルスルホニル基、tert-ブチルスルホニ
ル基などの炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜4、中でも炭素数1〜3のアルキルスルホニル基が挙げられる。
【0021】
Ar1、Arが有していてもよい置換基であるハロゲン化アルキル基としては、例え
ばトリフルオロメチル基、ペンタルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基などの炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜4、中でも炭素数1〜3の低級フルオロアルキル基が挙げられる。
Ar1、Arが有していてもよい置換基であるハロゲン原子としては、例えばフッ素
、塩素、臭素、ヨウ素、好ましくはフッ素、塩素、臭素が挙げられる。
【0022】
Ar1、Arが有していてもよい置換基であるアルコキシカルボニル基としては、メ
トキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec-ブトキシカ
ルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基などの炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜
4、中でも炭素数1〜3のアルコキシカルボニル基が挙げられる。
【0023】
Ar1、Arが有していてもよい置換基であるシアノ基、ニトロ基、アルキルスルホ
ニル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基などの電子吸引性の置換基としては、これらのなかでもホスト液晶への溶解度の観点から、シアノ基、トリフルオロメチル基、フッ素原子、塩素原子が特に好ましい。
【0024】
2.X1、X2について
式(I)において、X1、X2は、各々独立して酸素原子、又は-NR- を示す。R5は水素原子又はアルキル基を示す。R5のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基
、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基などの直鎖状又は分岐状の炭素数1〜10のアルキル基が挙げられる。なかでも好ましくは炭素数1〜4、さらに炭素数1〜3のアルキル基が溶解度の観点から好ましい。
【0025】
3.L1、L2について
式(I)において、L1、L2は、直接結合又は2価の連結基を示すが、好ましくは各々独立して環状構造及びアゾ結合を含まない、二価の連結基を示す。
環状構造及びアゾ結合を含まない、二価の連結基としては、特に限定されるものではないが、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、sec−ブチレン基、tert−ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基等の炭素数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基;ビニレン基、プロペニレン基、イソプロペニレン基、ブテニレン基、イソブテニレン基、sec−ブテニレン基、tert−ブテニレン基、ヘキセニレン基、オクテニレン基等の炭素数2〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルケニレン基;エチニレン基、プロピニレン基、イソプロピニレン基、ブチニレン基、イソブチニレン基、sec−ブチニレン基、tert−ブチニレン基、ヘキシニレン基、オクチニレン基等の炭素数2〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキニレン基;メチレンオキシカルボニル基、エチレンオキシカルボニル基、プロピレンオキシカルボニル基、イソプロピレンオキシカルボニル基、tert−ブチレンオキシカルボニル基、アセチレンオキシ基等の炭素数2〜20、好ましくは2〜10のエステル基;エーテル基;カルボニル基;それらを組み合わせた基等が挙げられる。
【0026】
本発明の構造において、より高い二色比のオーダーパラメータ(S値)を得るためには、分子の直線性を高くすることが好ましい。そのためには六員環構造を有する部分同士、つまりA及びA、A及びAを連結する直列部分の結合数が十分に長いことが好ましい。この場合十分長いとは5原子以上、より好ましくは7原子以上であることが好ましい。また、六員環構造を有する部分同士の間が、偶数個の原子でつながっていることも好ましい。この観点から、本発明の式(I)で表される構造であると、AとAの間のB、AとArの間のLとX、ArとAの間のXとL、AとAの間のBについては、その主鎖上の原子数が偶数になることが好ましい。このうち、六員環構造の間に2つの構造を有するLとX、XとLに関しては、X,Xが酸素原子か−NR−なので、主鎖上の原子数としては1になる。よって、L、Lの主鎖上の原子数は、奇数であることが好ましい。
【0027】
また、具体的な構造としては、L(A2とXの間)、L(A3とXの間)が、それぞれ独立して-CH2-基、-CH2CH2CH2-基、-CH2-C≡C-基、-CH(CH3)-基のいずれかである
ことが特に好ましい。
特にm=m=m=0の場合には、Xが存在しないため,Lは主鎖上の原子数が偶数になる、-O-CH2-、-O-C(=O)-、-CH=CH-、−O-C(=O)-、-C三C-基 などが好ましい
【0028】
4.A1、A2、A、A4について
式(I)において、A1、A2、A、及びA4は各々独立して、置換基を有していても
良い1,4−フェニレン基、又は置換基を有していても良い(E)−シクロヘキサン−1,4−ジイル基を示す。A1、A2、A、及びA4が有していてもよい置換基としては、
Ar1、Arが有していてもよい置換基と同様である。
【0029】
5.n1、n2、n3、n、n、m、m及びmについて
式(I)において、n1、n2、n3、n及びn5は、それぞれ独立に、1以上の整数を示し、n1、n2、n3、n及びn5が2以上の場合、式(I)で表される構造を有する二色性色素1分子中に2以上存在するA、Ar、Ar、A3、Aは同一であっても異なっていてもよい。
【0030】
またm、mは、0又は1を表す。mは0以上の整数である。m2が2以上の場合、式(I)で表される構造を有する二色性色素1分子中に2以上存在するAは同一であっ
ても異なっていてもよい。
このうち好ましい組み合わせとしては、m=m=m=1又はm=m=m=0である。
【0031】
また、ホスト液晶への溶解性の観点からn1とm2、nとn5の合計数が、それぞれ2
〜8であることが好ましく、3〜6であることがさらに好ましい。
また、n3は、ホスト液晶への溶解性の観点から、1〜5が好ましく、1〜4がさらに
好ましい。
好ましいn2はm=m=m=1のときn=1となる。
【0032】
6.B1及びB2について
式(I)において、B及びB2は、それぞれ、A1 及びA2、A及びA、を連結
する直列部分が4原子以上である連結基を示す。
式(I)で表される構造を有するアゾ系二色性色素の端部の6員環構造と6員環構造の間(A1 とA2の間、AとA4の間)に、これらを連結する直列部分が4原子以上の可
動性の大きい直鎖構造を導入することにより、高い二色性比のオーダーパラメーター(S値)を有する二色性色素が実現できる。高い二色性比のオーダーパラメーターを有する理由は、構造が比較的固定化されているA1 とA2の間、AとA4の間、すなわち平面的
な形状を有する6員環構造と6員環構造の間に可動性の大きい鎖状構造を導入することで、6員環のみで連結した構造の場合と比較し、末端部の6員環構造が、ホスト液晶の長軸とより平行に配列しやすくなったためであると考えられる。
【0033】
及びB2としては、本発明の効果を損なわない範囲であり、A1 及びA2、A
びAを連結する直列部分が4原子以上であれば、特に限定されないが、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、エステル基、エーテル基又はカルボニル基を有することが高S値の観点から好ましい。特にB2はこれらの基であることが好ましい。またB
は、上記の基を組み合わせた基であっても良い。
【0034】
具体的には、アルキレン基としては、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基及びオクチレン基等の炭素数4〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基が挙げられる。
アルケニレン基としては、具体的には、ブテニレン基、ペンテニレン基、ヘキセニレン基、ヘプテニレン基及びオクテニレン基等の炭素数4〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルケニレン基が挙げられる。
【0035】
アルキニレン基としては、具体的には、ブチニレン基、ペンチニレン基、ヘキシレン基、ヘプチニレン基及びオクチニレン基等の炭素数4〜10の直鎖状もしくは分岐状のアル
キニレン基が挙げられる。
エステル基としては、具体的には、エトキシカルボニル基、プロピルオキシカルボニル基、sec-,iso-,tert-ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基等の炭素数4
〜20、好ましくは4〜10のエーテル結合を有する基が挙げられる。
【0036】
また、これらを組み合わせたものとしては、1,2−ジオキシエチレン基、1,3−ジオキシプロピレン基、1、4−ジオキシブチレン基などの炭素数4〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキレンジオキシ基;エチレンカーボネート、ブチレンカーボネートなどの炭素数4〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキレンカーボネート基等が挙げられる。
及びBとしては、A及びA、A及びAを連結する直列部分の結合数が偶数であるものが高S値化のためより好ましく、具体的には、-CH2CH2CH2CH2-基、-OCH2CH2O-基、-CH2CH2-C≡C-基(以上直列部分が4原子の例)、-OCH2CH2CH2CH2O-基、-C≡C-CH2CH2CH2CH2-基、-C≡C-CH2CH2CH2O-基(直列部分が6原子の例)、及び-OCH2CH2CH2CH2CH2CH2O-基(直列部分が8原子の例)等が挙げられる。また、A及びA、A及びAを連結する直列部分の結合数が5以上、より好ましくは7以上の場合には奇数でも分子全体から見て直線性が高い状態になるため、同様の効果が期待できる。また、上限としては特に限定されないが、合成上の困難性から20以下が好ましい。
【0037】
7.R及びR2について
式(I)において、R及びR2は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してい
てもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、を示す。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基等の炭素数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のものが好ましく、中でも、直鎖状のものが更に好ましく、炭素数3〜8の直鎖状のアルキル基が高溶解度化の観点から特に好ましい。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、へキシルオキシ基、オクチルオキシ基等の炭素数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のものが好ましく、中でも、直鎖状のものが更に好ましく、炭素数3〜8の直鎖状のアルコキシ基が高溶解度化の観点から特に好ましい。アルケニレン基としては、具体的には、ブテニレン基、ペンテニレン基、ヘキセニレン基、ヘプテニレン基及びオクテニレン基等の炭素数4〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルケニレン基が挙げられる。アルキニレン基としては、具体的には、ブチニレン基、ペンチニレン基、ヘキシレン基、ヘプチニレン基及びオクチニレン基等の炭素数4〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキニレン基が挙げられる。
【0038】
置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基の置換基は、特に限定されないが、アルコキシ基、アルキル基等の電子供与性の置換基;あるいはシアノ基、ニトロ基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基などの電子吸引性の置換基が挙げられ、その置換基も含めた炭素数がそれぞれの基について上述の範囲にあることが好ましい。
【0039】
8.式(II)と式(III)
本発明の前記式(I)で表される構造の中で、特に好ましくは、式(I)中のArを含む繰り返し単位をn−1回繰り返した後のアゾ結合から右側が下記式(II)又は式(III)で表される部分構造を有していることである。
【0040】
【化4】
【0041】
〔式(II)中、
は、酸素原子、又は-NR10-(R10は水素原子又は1価の置換基)を示し、
は、水素原子、又は置換基を有していてもよいアルキル基を示し、
は、直列部分の原子数が、4原子以上である2価の連結基を示し、
はアルキル基又はアルコキシ基を示し、
11、n12は、それぞれ独立に、0又は1を示し、
、Aは各々独立して、置換基を有していてもよい1,4−フェニレン基、又は置換基を有していてもよい(E)−シクロヘキサン−1,4−ジイル基を示す。
式(III)中、
は、酸素原子、又は-NR11-(R11は水素原子又は1価の置換基)を示し、
は、水素原子、又は置換基を有していてもよいアルキル基を示し、
は、直列部分の原子数が、4原子以上である2価の連結基を示し、
はアルキル基又はアルコキシ基を示し、
13、n14は、それぞれ独立に、0又は1を示し、
10、A11は各々独立して、置換基を有していてもよい1,4−フェニレン基、又は置換基を有していてもよい(E)−シクロヘキサン−1,4−ジイル基を示す。]
【0042】
9. X及びXについて
構造式(II)のXは、酸素原子、又は-NR10-基 を示し、構造式(III)のXは、酸素原子、又は-NR11-基 を示す。また、R10及びR11は、それぞれ独立に、水素原
子、又は置換基を有していても良いアルキル基を示す。
10及びR11のアルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基等の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基が挙げられる。このなかでも、高溶解度化の観点から、炭素数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のものが好ましく、中でも、直鎖状のものが更に好ましく、炭素数3〜8の直鎖状のアルキル基が特に好ましい。
【0043】
10. B及びBについて
式(II)及び式(III)において、B及びBは、それぞれ独立に、両末端の1,4−フェニレン基を連結する直列部分が4原子以上である2価の連結基を示す。2価の連結基としては、式(I)のBで例示したものと同義であり、好ましい基も同義である。
【0044】
11.R及びRについて
式(II)及び式(III)において、R及びRはそれぞれ独立して、アルキル基又はアルコキシ基を示す。
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基等の炭
素数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のものが好ましく、中でも、直鎖状のものが更に好ましく、炭素数3〜8の直鎖状のアルキル基が溶解度向上のため特に好ましい。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、へキシルオキシ基、オクチルオキシ基等の炭素数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のものが好ましく、中でも、直鎖状のものが更に好ましく、炭素数3〜8の直鎖状のアルコキシ基が高溶解度化のため、特に好ましい。
【0045】
12.A8、A9、A10及びA11について
式(II)及び式(III)において、A8、A9、A10及びA11は、各々独立して、置換基を有していてもよい1,4−フェニレン基、又は置換基を有していてもよい(E)−シクロヘキサン−1,4−ジイル基を示す。A8、A、A10及びA11が有していてもよ
い置換基としては、それぞれ独立に、例えばアルコキシ基、アルキル基等の電子供与性の置換基;あるいはシアノ基、ニトロ基、アルキルスルホニル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基などの電子吸引性の置換基が挙げられ、具体的には、Ar1で挙げたものと同義であり、好ましい基も同義である。
【0046】
13.R8及びR9について
8及びR9は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の置換基を示す。1価の置換基としては、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定されないが、例えばアルコキシ基、アルキル基等の電子供与性の置換基;あるいはシアノ基、ニトロ基、アルキルスルホニル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基などの電子吸引性の置換基が挙げられる。
これらの置換基の好ましい例は、Arが有していても良い置換基で挙げたものと同義であり、好ましい基も同義である。
【0047】
14.n11、n12、n13及びn14について
式(II)及び式(III)において、n11、n12、n13及びn14は、それぞれ独立に、0又は1を示す。コントラストのオーダーパラメーター(S値)の観点から、
またホスト液晶に対する溶解性を高める点から、n11又はn12のいずれか、n13又はn14のいずれかが、少なくとも1であることが好ましい。
【0048】
15.分子量
以上に説明した式(I)で表される本発明の二色性色素は、ホスト液晶への溶解性および応答速度の点から通常分子量4000以下、中でも3000以下であることが好ましい。下限値としては、特に限定されないが、m=m=m=1の場合660以上、m=m=m=0の場合500以上が好ましい。
【0049】
16.具体例
式(I)で表わされる二色性色素の具体例を以下に例示するが、本発明はその要旨をこえない限りこれらに限定されるものではない。
【0050】
【化5】
【0051】
【化6】
【0052】
17.合成方法
以下に本発明の式(I)で示される二色性色素の合成方法を、いくつか例を挙げて説明する。例えばm=m=1、n=1の構造の場合、中間体(V)と(VI)と(VII
)をアゾカップリング反応させることにより合成できる。またm=m=m=0の場合は、中間体(VIII)と中間体(IX)を、所望のモル比で混合し、反応させること
により、得ることができる。この反応の例を、下の化学式に示す。式(I)の構造に関し
ては、最も簡単に合成できる方法として、nが2以上の場合を示している。これらの反応条件に関しては、特に限定されず公知の方法を用いればよい。例えば特開昭58-38
756号公報に記載の方法を適用できる。
【0053】
そしてそれぞれの中間体(V)乃至中間体(IX)も、公知の方法により合成でき、例
えば特開昭58−38756号公報に記載の方法により合成できる。中間体(VII)、中
間体(IX)は、例えば実施例に記載の方法で合成できる。尚、中間体(V)から(IX)に使用される
からA、Ar、Ar、X、X、L、L、R、R、nからn5
、mからmの記号の意味は、式(I)に示したものと同じである。
【0054】
【化7】
【0055】
【化8】
【0056】
18.液晶組成物
本発明の二色性色素の1種又は2種以上を、日本学術振興会第142委員会編「液晶デバイスハンドブック」(日刊工業新聞社、1989年発行)の第154〜192頁及び第715〜722頁記載のネマチック或いはスメクチック相を示すビフェニル系、フェニルシクロヘキサン系、フェニルピリミジン系、シクロヘキシルシクロヘキサン系等の各種のホスト液晶化合物、又はそれらの化合物を含有するホスト液晶組成物に公知の方法で混合することにより、容易に液晶組成物を調製することができる。
【0057】
このような液晶化合物の例としては、特開平3−14892号公報などに記載の化合物があげられる。好ましいホスト液晶の種類は駆動方式により異なるが、例えばアクティブマトリックス系である場合はフッ素系液晶が好ましい。
前記液晶組成物における本発明の前記二色性色素の含有割合は、特に限定されるものではないが、2種以上を含有する場合も含めて、通常0.05〜10重量%であり、0.1〜5重量%であるのが好ましい。
【0058】
19.ホスト液晶
本発明のゲストホスト型液晶組成物に用いるホスト液晶材料としては、下記式(X) 〜
式(XIV)で表されるNp型液晶化合物、Nn型液晶化合物が挙げられる。
【0059】
【化9】
【0060】
式(X) 〜式(XIX)中、Eは、シクロヘキサン環、ベンゼン環、ジオキサン環、又はピリミジン環を示し、q は1〜3の整数を示す。Zは、単結合、−CO−O−基、−CH2CH2 −基、−CH=CH−基、又は−C≡C−基を示す。D1及びD3は各々独立して、水素原子、又は弗素原子、塩素原子等のハロゲン原子を示し、D2 は弗素原子、塩素原子等のハロゲン原子、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子を置換基として有する炭素数1〜7のアルキル基、同じくアルケニル基、同じくアルコキシ基、これらの置換アルキル基、置換アルケニル基、置換アルコキシ基を置換基として有するシクロヘキシル基、又はこれらの置換アルキル基、置換アルケニル基、置換アルコキシ基を置換基として有するフェニル基を示す。D7 及びD8 は各々独立して、シアノ基、又はフッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子を示す。D11及びD13はシアノ基を示す。D4 、D5 、D6 、D9 、D10、D12、及びD14は各々独立して、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、又は炭素数2〜10のアルコキシアルキル基を示す。
なお、本発明のゲストホスト型液晶組成物に用いるホスト液晶材料は、好ましくは以下の特性を有する。
【0061】
(NI点)
ネマチック相−等方性液体相転移温度(NI点)が60℃以上、好ましくは80℃以上であり、また、130℃以下、好ましくは110℃以下である。本発明の式(I)の色素と組み合わせて使用する場合、NI点を上述の範囲とすることにより動作温度範囲を広くできる。また上限値を超えないことにより、応答性能が向上する。
【0062】
(誘電率異方性Δε)
Δεの絶対値が2以上、好ましくは3以上であり、また、20以下、好ましくは10以下である。本発明の式(I)の色素と組み合わせて使用する場合、Δεを上述の範囲とすることにより駆動電圧を低くすることができる。一方、上述の上限値の範囲内であればホ
スト液晶の粘度が増大せず、高い応答性能が期待できる。
【0063】
更に上記の液晶化合物にはコレステリルノナノエートのような光学活性物質、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の添加物を含有しても良い。
また、本発明の二色性色素組成物は、フッ素系化合物を含むホスト材料との組み合わせにおいて、特に良好な二色性比を有する。
本発明の二色性色素またはこれを含有する液晶組成物は、好ましくは0.80以上、さらに好ましくは0.84以上、最も好ましくは0.86以上の高いオーダーパラメーター(S値)を有する。本発明の液晶組成物は、コンピューター、時計、電卓用等の表示素子、電子光学シャッター、電子光学絞り、光通信光路切替スイッチ、光変調器等の種々の電子光学デバイスとして好適に利用することができる。
【0064】
尚、色素のコントラストのオーダーパラメーター(S値)は、分光学的な測定に基づき、前述の日本学術振興会第142委員会編「液晶デバイスハンドブック」に記載の次式から求めることができる。
S=(A//−A⊥)/(2A⊥+A//)
ここで、「A//」及び「A⊥」は、それぞれ、液晶の配向方向に対して平行及び垂直に偏光した光に対する色素の吸光度であり、S値は、理論上は0〜1の範囲の値をとり、その値が1に近づく程、ゲストホスト型液晶素子としてのコントラストが向上することとなる。
【0065】
20.液晶素子
本発明の前記二色性色素を含有する前記液晶組成物を含む液晶層を、少なくとも一方が透明な2枚の電極付基板間に挟持することにより、松本正一、角田市良著「液晶の最新技術」(工業調査会、1983年発行)第34頁、J.L.Fergason,SID85Digest,68(1985)、日本学術振興会第142委員会編「液晶デバイスハンドブック」(日刊工業新聞社、1989発行)第315〜329頁、等に記載されているHeilmeier型ゲストホスト、相転移型ゲストホスト等のゲストホスト効果を利用した。このように、本発明では、液晶素子のモードは種々のものが使用可能であるが、ネマチック液晶組成物中に光学活性物質を加えることにより得られる相転移モードでは、偏光板を用いなくてもコントラストが高く表示が明るいため、反射型液晶表示素子として特に好ましい。
【0066】
本発明の液晶素子の一例として、図1及び図2にアクティブ駆動方式の相転移モードゲストホスト型液晶表示素子の略示的断面図を示す。図1は液晶表示素子の電圧印加状態を表し、図2は電圧無印加状態を表す。図中、1は入射光、3は透明ガラス板、4は透明電極、5は配向膜、6は液晶化合物分子、7は二色性色素分子、9は反射層、10は反射光を示す。
【0067】
電圧無印加時(図2)では、液晶化合物分子6はコレステリック相を示し、二色性色素分子7も液晶化合物分子6と共にコレステリック構造を示すので、入射光1は自然光であっても、偏光板を用いることなく二色性色素分子7に吸収される。電圧を印加すると(図1)、液晶化合物分子6と二色性色素分子7は電界方向に配列するため、光は透過し反射層9によって反射される。このように、液晶素子では、電界の有無によって、光の透過、吸収を制御することができる。
【0068】
以下本発明を実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0069】
[中間体合成1(比較例2で使用する中間体M01の合成)]
【0070】
【化10】
【0071】
中間体M01は、特開2009-7486号公報に記載の手法で合成した。
[中間体合成2(比較例5で使用する中間体M04の合成)]
【0072】
【化11】
【0073】
中間体M04は、特開2009-7485号公報に記載の手法で合成した。
[中間体合成3(比較例5で使用する中間体M05の合成)]
【0074】
【化12】
【0075】
中間体M05は、特開2009-7485号公報に記載の手法で合成した。
[中間体合成4(実施例2及び実施例4にて使用する中間体M20と、M20に至る中間体M16〜19の合成)]
【0076】
【化13】
【0077】
<中間体M16の合成>
中間体M07(関東科学、7.5g 30.6mmol)及び1,4-ジブロモブタン(19.8g, 91.8mmol, 3MR)をアセトン(60ml, 30.6mmol)に希釈し、炭酸カリウム(8.5g, 61.2mmol, 2MR)を
添加し、18時間加熱還流した。反応液を室温に冷却後、ろ過して得られたろ液を濃縮し、メタノール(150ml)を添加して氷冷下激しく攪拌した。析出した固体をろ過し、白色固体
として中間体M16(9.62g,収率82%)を取得した。
【0078】
中間体M16が得られていることを、1H-NMR(400MHz,CDCl3)により以下のピークが得ら
れたことにより確認できた。:7.12-7.16(m, 2H), 6.82-6.86(m, 2H), 4.00(t, J=6.0Hz, 2H), 3.51(t, J=6.8Hz, 2H), 2.39-2.47(m, 1H), 2.05-2.12(m, 2H), 1.87-1.98(m, 6
H), 1.21-1.48(m, 13H), 1.00-1.11(m, 2H), 0.92(t, J=7.0Hz, 3H)
【0079】
<中間体M17の合成>
中間体M09(東京化成、15.0g, 70.0mmol)をエタノール(300ml, 20VR)に希釈し、98%硫酸(0.5ml)を添加して還流下で16時間反応した。反応液を室温に冷却し、エタノールを留
去し、析出した固体をヘキサン(50ml)、酢酸エチル(10ml)にて懸洗し、白色固体として中間体M10(14.3g, 収率85%)を取得した。
【0080】
中間体M10が得られていることを、1H-NMR(400MHz,CDCl3)により、以下のピークが得
られたことから確認できた。:8.10-8.11(m, 2H), 7.62-7.64(m, 2H), 7.54-7.56(m, 2H), 6.95-6.97(m, 2H), 4.40-4.45(m, 2H), 1.44(t, J=7.2Hz, 3H)。
この中間体M10(3.49g, 14.4mmol)及び中間体M16(5.50g, 14.4mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド(50ml,14VR)に希釈し、炭酸カリウム(3.98g, 28.8mmol, 2MR)を添加して60
℃に加温して1時間反応した。室温に冷却後、水(50ml)を添加し、析出した固体をろ過し
、メタノール(50ml)にて洗浄して白色固体として中間体M17(8.01g, LCarea97%)を取得し
た。
【0081】
<中間体M18の合成>
LiAlH4(1.09g, 28.8mmol, 2MR)を脱水THF(関東化学品、405VR)ml)にて懸濁させ、氷
冷下、中間体M17(7.82g, 14.4mmol)の脱水THF(40ml,5VR)懸濁溶液を少しずつ滴下した
。反応を室温に昇温し、さらに1時間反応させた後、氷冷していた1N塩酸水溶液(160ml)にゆっくり滴下した。この溶液を室温にもどし、クロロホルム(200ml)にて抽出し、有機
層を硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。白色固体として中間体M18(5.74g, 収率80%)を取得した。
【0082】
<中間体M19の合成>
中間体M18(5.7g, 11.4mmol)をクロロホルム(60ml, 10VR)に希釈し、トリフェニルホ
スフィン(4.49g,17.1mmol)、四臭化炭素(5.31g, 6.0mmol)を添加して12時間反応した。反応液にメタノール(120ml)を滴下し、析出した固体をろ過し、淡黄白色固体として中
間体M19(5.78g、収率90%)を取得した。
【0083】
<中間体M20の合成>
中間体M19(5.7g,10.3mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド(57ml, 10VR)に希釈し、炭酸カリウム(1.71g, 12.4mmol, 1.2MR)を添加して60℃にて1時間反応させた。反応液を
室温に冷却し、水(100ml)をゆっくり滴下し、析出した固体をろ過し、メタノール(20ml)
にて結晶を洗浄した。白色結晶として中間体M20(5.60g, LCaraea92%, 収率87%)を取得した。
【0084】
[中間体合成5(実施例1及び3で使用する中間体M14とM14に至る中間体M08、11〜13
の合成)]
【0085】
【化14】
【0086】
<中間体M08の合成>
1,4-ジブロモブタンのかわりに、1,6-ジブロモヘキサンを用いた以外は中間体M16の合成と同様に行い、中間体M08を取得した。
<中間体M11の合成>
中間体 M16のかわりに、中間体M08をN,N-ジメチルホルムアミドに希釈した以外は、中
間体M17の合成と同様に行い、中間体M11を得た。
【0087】
<中間体M12の合成>
中間体 M17のかわりに、中間体M11の脱水THF懸濁溶液を少しずつ滴下した以外は中間体M18の合成同様に行い、中間体M12を得た。
<中間体M13の合成>
中間体 M18のかわりに、中間体M12を用いた以外は中間体M19の合成と同様に行い、中
間体M13を得た。
【0088】
<中間体M14の合成>
中間体 M19のかわりに、中間体M13を用いた以外は中間体M20の合成と同様に行い、中
間体M14を得た。
[中間体合成6(実施例3で使用する中間体M22の合成)]
【0089】
【化15】
【0090】
中間体M22は、特開2010-155924号公報に記載の手法で合成した。
[中間体合成7(実施例4で使用する中間体M23の合成)]
【0091】
【化16】
【0092】
中間体M23は、特開2010-155924号公報に記載の手法で合成した。
[中間体合成8(実施例5で使用する中間体M25とM25に至る中間体M24の合成)]
【0093】
【化17】
【0094】
中間体M24は、特開2009-007485号公報に記載の方法で合成した。また、中間体M25は中
間体M24より、特開2009-007486号公報に記載の方法で合成した。
[中間体合成9(実施例6で使用される中間体M26と実施例5で使用される中間体M27の
合成)]
【0095】
【化18】
【0096】
<中間体M27の合成>
中間体M07のかわりに、中間体M33(Synthon Chamical社製)を用いた以外は中間体M16の合成と同様に行い、中間体M34を取得した。
中間体 M16のかわりに中間体M34をN,N-ジメチルホルムアミドに希釈した以外は、中間
体M17の合成と同様に行い、中間体M35を得た。
【0097】
中間体 M17のかわりに、中間体M35の脱水THF懸濁溶液を少しずつ滴下した以外は中間体M18の合成同様に行い、中間体M36を得た。
中間体 M18のかわりに、中間体M36を用いた以外は中間体M19の合成と同様に行い、中
間体M26を得た。
中間体 M19のかわりに、中間体M26を用いた以外は中間体M20の合成と同様に行い、中
間体M27を得た。
【0098】
[中間体合成10(実施例6で使用する中間体M28の合成)]
【0099】
【化19】
【0100】
<中間体M28の合成>
中間体M28 は、中間体M24より、特開2009-007486号公報に記載の手法で合成した。
<実施化合物の合成>
[実施例1]
【0101】
【化20】
【0102】
中間体M31(Pyram社製)及び中間体M14を用いて、特開2009-007486号公報に記載
の手法で実施例化合物1を合成した。
実施例化合物1は、Rがペンチル基、n=2でAが1,4−フェニレン基と(E
)−シクロヘキサンー1,4−ジイル基が一つづつ、m=1でBが-OCH2CH2CH2CH2CH2CH2O-基、m=2でAが1,4−フェニレン基、Lが主鎖上の原子数が奇数である1であるメチレン基で、m=1でXが−NH―、n=1でArが1,4−ナフチレン基、n=3でArが、1,4−フェニレン基と1,4−ナフチレン基、Xが−NH―、Lが主鎖上の原子数が奇数である1であるメチレン基で、n=2でAが1,4−フェニレン基、B2が-OCH2CH2CH2CH2CH2CH2O-基、n=2でAが1,4−フェニレン基と(E)−シクロヘキサンー1,4−ジイル基が一つづつ、R2がペンチル基であり、式(I)に含まれる構造である。
[実施例2]
【0103】
【化21】
【0104】
中間体M31及び中間体M20を用いて、特開2009-007486号公報に記載の手法で実施
例化合物2を合成した。
実施例化合物2は、Rがペンチル基、n=2でAが1,4−フェニレン基と(E
)−シクロヘキサンー1,4−ジイル基が一つづつ、m=1でBが-OCH2CH2CH2CH2O-基、m=2でAが1,4−フェニレン基、Lが主鎖上の原子数が奇数である1であるメチレン基で、m=1でXが−NH―、n=1でArが1,4−ナフチレン基、n=3でArが、1,4−フェニレン基と1,4−ナフチレン基、Xが−NH―、Lが主鎖上の原子数が奇数である1であるメチレン基で、n=2でAが1,4−フェニレン基、B2が-OCH2CH2CH2CH2CH2CH2O-基、n=2でAが1,4−フェニレン基と(E)−シクロヘキサンー1,4−ジイル基が一つづつ、R2がペンチル基であり、式(I)に含まれる構造である。
実施例1及び2の化合物は、式(I)に相当する二色性色素である。
[実施例3]
【0105】
【化22】
【0106】
中間体M22(630mg, 1mmol)をジメチルホルムアミド:N-メチルー2-ピロリドン=17:8(63ml, 100VR)にて希釈し、氷浴にて冷却後、35%塩酸水溶液(0.28ml, 3MR)、亜硝酸ナト
リウム(70mg, 1.05mmol, 1.05MR)の飽和水溶液を5℃以下を保って順次ゆっくり滴下し、
ジアゾ二ウム塩溶液とした。別の容器に中間体M14(653mg, 1mmol)、THF(63ml, 100VR)
を仕込み、氷浴にて冷却し、ここに前述のジアゾ二ウム塩溶液を5℃以下を保ってゆっく
りと滴下した。30分反応後、室温に昇温し、酢酸ナトリウム(3.0g)、水(50ml)を滴下して析出した固体をろ過した。得られた残渣をシリカゲルカラム(吸着法、関東科学N60中
性、200ml、クロロホルム100%)にて精製し、留出部を濃縮し、クロロホルム(100ml)、酢酸エチル(200ml)を添加して懸洗、ろ過し、黒色固体として実施例化合物3(370mg, 収
率30%)を取得した。実施例化合物3は、Rがペンチル基、n=2でAが1,4−フェニレン基と(E)−シクロヘキサンー1,4−ジイル基が一つづつ、m=0、m=0、Lが直接結合で、m=0で、n=1でArが1,4−フェニレン基、n=3でArが1,4−ナフチレン基、Xが−NH―、Lが主鎖上の原子数が奇数であ
る1であるメチレン基で、n=2でAが1,4−フェニレン基、B2が-OCH2CH2CH2CH2CH2CH2O-基、n=2でAが1,4−フェニレン基と(E)−シクロヘキサンー1,4−ジイル基が一つづつ、R2がペンチル基であり、式(I)に含まれる構造である。
[実施例4]
【0107】
【化23】
【0108】
中間体M22のかわりに中間体M23、中間体M14のかわりに中間体M20を用いた以外は実施例3と同様の手法にて実施例化合物4を合成した。実施例化合物4は、Rがペンチル基、
=2でAが1,4−フェニレン基と(E)−シクロヘキサンー1,4−ジイル基が一つづつ、m=0、m=0、Lが直接結合で、m=0で、n=1でArが1,4−フェニレン基、n=2でArが1,4−ナフチレン基、Xが−NH―、L
が主鎖上の原子数が奇数である1であるメチレン基で、n=2でAが1,4−フェニレン基、B2が-OCH2CH2CH2CH2O-基、n=2でAが1,4−フェニレン基と(E)−シクロヘキサンー1,4−ジイル基が一つづつ、R2がペンチル基であり、式(I)に含まれる構造である。
[実施例5]
【0109】
【化24】
【0110】
中間体M22のかわりに中間体M25、中間体M14のかわりに中間体M27を用いた以外は実施例3と同様の手法にて実施例化合物5を合成した。実施例化合物5は、Rがペンチル基、n
=2でAが1,4−フェニレン基と(E)−シクロヘキサンー1,4−ジイル基が一つづつ、m=0、m=0、Lが直接結合で、m=0で、n=1でArが1,4−フェニレン基、n=2でArが1,4−ナフチレン基、Xが−NH―、L
主鎖上の原子数が奇数である1であるメチレン基で、n=2でAが1,4−フェニレン基、B2が-OCH2CH2CH2CH2O-基、n=2でAが1,4−フェニレン基と(E)−シクロヘキサンー1,4−ジイル基が一つづつ、R2がヘプチル基であり、式(I)に含まれる構造である。
[実施例6]
【0111】
【化25】
【0112】
中間体M28 (0.150g, 0.258 mmol) と中間体M26(0.152 g, 0.258 mmol) をN,N-ジメチルホルムアミド (5 mL) に溶解させ、炭酸カリウム (0.071 g, 0.516 mmol) を添加し、60 ℃で2 時間攪拌した。反応液を室温にもどし、水 (10 mL) を加え、水層をクロロホルム
にて抽出し、有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムにて乾燥し、ろ過後のろ液を濃縮し、得られた残渣をカラムクロマトグラフィー (関東科学社製N60シリカゲル 中性、クロロホルム: 200mL) にて精製し、留出部をエバポレーターにより徐々に溶媒留去した。析出した固体をろ取し、実施例化合物6(25 mg, 収率
9%) を得た。実施例化合物6は、Rがペンチル基、n=2でAが1,4−フェニレン基と(E)−シクロヘキサンー1,4−ジイル基が一つづつ、m=0、m=0、Lが直接結合で、m=0で、n=1でArが1,4−フェニレン基、n=2でA
が1,4−ナフチレン基と1,4−フェニレン基、Xが酸素原子で、Lが主鎖上の原子数が奇数である1であるメチレン基で、n=2でAが1,4−フェニレン基、B2が-OCH2CH2CH2CH2O-基、n=2でAが1,4−フェニレン基と(E)−シクロヘキサンー1,4−ジイル基が一つづつ、R2がヘプチル基であり、式(I)に含まれる構造である。
[比較例1]
【0113】
【化26】
【0114】
比較例化合物1は特開2009-007486号公報に記載の手法で合成した。
[比較例2]
【0115】
【化27】
【0116】
比較例化合物2は中間体M01と中間体M31から特開2009-007486号公報に記載の手法で
合成した。
[比較例3]
【0117】
【化28】
【0118】
比較例化合物3は特開2010-155924号公報に記載の手法で合成した。
[比較例4]
【0119】
【化29】
【0120】
比較例化合物4は、特開2009-007485号公報に記載の手法で合成した。
[比較例5]
【0121】
【化30】
【0122】
比較例化合物5は、中間体M04と中間体M05から特開2009-007486号公報に記載の手法で
合成した。
【0123】
〔二色性色素のλmaxおよびオーダーパラメーター(S値)の評価〕
<実施例化合物1、2、6及び比較例化合物1、2、5の評価>
得られた二色性色素「実施例化合物1、2、6」および「比較例化合物1、2、5」を、フッ素系化合物を主成分とするNn型液晶混合物で、NI点が90℃でΔεが−4.2のものにそれぞれ0.1重量%の濃度で溶解させ、ゲストホスト液晶組成物を調整した。これを、ポリイミド系樹脂を塗布、硬化、ラビング処理した透明電極付きガラス基板を対向させ、液晶が平行配向となるように構成したギャップ50μmのセルに封入した。この着色したセルの配向方向に平行な直線偏光に対する吸光度(A//)及び配向方向に垂直な偏光に対する吸光度(A⊥)を測定し、その吸収ピーク(λmax)におけるオーダーパラ
メーター(S値)を下記の式から求めた。
S=(A//−A⊥)/(2A⊥+A//)
【0124】
<実施例化合物3、4、5及び比較例化合物3、4の評価>
得られた二色性色素「実施例化合物3、4、5」および「比較例化合物3、4」をフッ素系化合物を主成分とするNn型液晶混合物で、NI点が90℃でΔεが−4.2のものにそれぞれ0.5重量%の濃度で溶解させ、ゲストホスト液晶組成物を調整した。これを、ポリイミド系樹脂を塗布、硬化、ラビング処理した透明電極付きガラス基板を対向させ、
液晶が垂直配向となるように構成したギャップ12μmのセルに封入した。セルにファンクションジェネレーター33120A(アジレント社製)で矩形波1Kz5Vをバイポーラ
電源(菊水電子社製)で増幅し振幅20Vを印加したときの吸光度(A20V)及び電圧無印加時の吸光度(A0V)を測定し、その吸収ピーク(λmax)におけるオーダーパラメータ
ー(S値)を下記の式から求めた。
S=(A20V−A0V)/(2A0V+A20V)
この結果を表1に示した。
【0125】
【表1】
【0126】
表1から、アゾ系二色性色素の側鎖部の両末端もしくは片側末端の6員環構造と6員環構造の間に可動性のある直鎖構造を導入した実施例化合物は、6員環構造を直接連結させた比較例化合物よりも、S値の値を向上させられることが分かる。
本分野の一般則として、側鎖部の直列している6員環構造を増やすとS値は向上するが
、溶解度は低下する。ただし、6員環構造の直列でS値が向上するのは、比較例1、2の比較からも明らかな様に3基までであり、比較例2では比較例1よりもS値、溶解度ともに低下している。しかし、実施例1、2では、B1、B2部分を導入したことにより、S値を比較例2の0.86から、それぞれ0.89、0.88に向上させることができ、実施例2では溶解度も向上させられている。
また、比較例3と実施例3の比較、比較例4と実施例5の比較それぞれでは(実施例3は新しいモノの方が使いやすいと思います)、色味を決定する主骨格が共通しているが、それぞれ6員環構造が2基、2基増えており、溶解度が低下するはずだが溶解度はむしろ向上しており、さらにS値が向上していることがわかる。また、比較例5と実施例6の比較では、側鎖部の合計の6員環構造の数は同じであるが、B1,B2部分の導入にとって、S値も溶解度も向上していることがわかる。
このように、本発明は従来の手法では頭打ちであったS値の向上に寄与する画期的なものであることがわかる。
【符号の説明】
【0127】
1;入射光
3;透明ガラス基板
4;透明電極
5;配向膜
6;液晶化合物分子
7;二色性色素分子
9;反射層
10;反射光
図1
図2