特許第6583006号(P6583006)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6583006-着色アクリル樹脂フィルム 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6583006
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】着色アクリル樹脂フィルム
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20190919BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20190919BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20190919BHJP
   G02B 5/12 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
   C08J5/18CEY
   B32B27/30 A
   B32B27/00 N
   G02B5/12
【請求項の数】7
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-5199(P2016-5199)
(22)【出願日】2016年1月14日
(65)【公開番号】特開2017-125130(P2017-125130A)
(43)【公開日】2017年7月20日
【審査請求日】2018年9月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【弁理士】
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(72)【発明者】
【氏名】阿部 純一
【審査官】 芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−126517(JP,A)
【文献】 特開2005−154720(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/024821(WO,A1)
【文献】 特開2008−208197(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/18
B32B
G02B 5/00−5/136
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚みを50〜100μmとした時に下記(1)〜(3)の条件を満たす、着色アクリル樹脂フィルム;
(1)ISO 13468−1に規定する方法で測定した時の全光線透過率が22〜35%、
(2)ISO 14782−1に規定する方法で測定した時のヘーズが2.0〜4.0%、
(3)該着色アクリル樹脂フィルムと、マンセル記号がN5.5のねずみ色の油性色紙とを重ね合わせ、着色アクリル樹脂フィルム側を、JIS Z8722に規定する照明及び受光の幾何学的条件a(45°照明、垂直受光)により、標準の光D65の条件で測定した時のXYZ表色系での色度座標(x,y)が、(0.016,0.381)、(0.185,0.340)、(0.317,0.436)及び(0.224,0.806)の範囲内であり、Y値が3〜5。
【請求項2】
フタロシアニン系着色剤、縮合多環状系着色剤、及び無機系着色剤からなる群から選択される少なくとも1種を含有する、請求項1に記載の着色アクリル樹脂フィルム。
【請求項3】
アクリル樹脂成分が、ゴム含有重合体からなる、請求項1又は2に記載の着色アクリル樹脂フィルム。
【請求項4】
請求項1に記載の着色アクリル樹脂フィルムを含む、再帰反射シートの表皮材。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の着色アクリル樹脂フィルムまたは請求項4に記載の表皮材と白色の再帰反射シートとが積層されてなる、再帰反射材。
【請求項6】
着色アクリル樹脂フィルムの製造方法であって、厚みを50〜100μmとした時に以下の条件を満たすようにフタロシアニン系着色剤(例えば、CI Pigment Green 7)と他の着色剤とをアクリル樹脂に混入することを含む、方法:
(1)ISO 13468−1に規定する方法で測定した時の全光線透過率が22〜35%、
(2)ISO 14782−1に規定する方法で測定した時のヘーズが2.0〜4.0%、
(3)該着色アクリル樹脂フィルムと、マンセル記号がN5.5のねずみ色の油性色紙とを重ね合わせ、着色アクリル樹脂フィルム側を、JIS Z8722に規定する照明及び受光の幾何学的条件a(45°照明、垂直受光)により、標準の光D65の条件で測定した時のXYZ表色系での色度座標(x,y)が、(0.016,0.381)、(0.185,0.340)、(0.317,0.436)及び(0.224,0.806)の範囲内、およびY値が3〜5。
【請求項7】
再帰反射材の製造方法であって、着色アクリル樹脂フィルムを請求項6に記載の方法により得ることと、得られたフィルムまたはこれを含む表皮材を白色の再帰反射シートに積層することとを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、看板や道路標識等に使用される再帰反射シート等の表面を保護する、透明で着色されたアクリル樹脂フィルムに関し、基材に意匠性を付与することができるアクリル樹脂フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
入射した光を光源方向に向けて反射させる再帰反射シートは、その再帰反射性、夜間における優れた視認性を利用して種々の分野で使用されている。例えば、再帰反射シートを用いた道路標識、工事標識等は、夜間において、走行する車両のヘッドライトからの光を光源方向、即ち、走行する車両の方向へ向けて反射させ、標識の視認者である車両の運転者に対し優れた視認性を提供し、明確な情報伝達を可能にするという優れた特性を有している。
このような道路標識、工事標識等として用いられる再帰反射シートは、視認性を良好にするために着色されており、更に、着色された再帰反射シートには、直接文字や模様がスクリーン印刷することにより形成されている。
【0003】
着色された再帰反射シートの色の種類としては、白、黄、赤、黄赤、緑、青があり、各色について、色の範囲や輝度率(β)の下限値が規格に定められている。例えば、JIS規格の場合は、JIS Z9117に、緑の再帰反射シートの色はJIS Z8722に規定する照明及び受光の幾何学的条件a(45°照明、垂直受光)により、標準の光D65の条件で測定した時のXYZ表色系での色度座標(x,y)が、(0.101,0.492)、(0.191,0.441)、(0.157,0.379)及び(0.116,0.387)の範囲であり、輝度率(β)の下限値は0.04である、と定められている。ここで、輝度率(β)は、完全拡散反射面の値を1.00とし、それに対する試料輝度の比率を示した値である。
また、ASTM D4956では、緑の再帰反射シートの色は、XYZ表色系での色度座標(x,y)が(0.026,0.399)、(0.166,0.364)、(0.286,0.446)及び(0.207,0.771)の範囲内であり、Y値の下限値が3.0であることが定められている。
【0004】
上述のような着色された再帰反射シートを得る方法としては、再帰反射シートの表層に印刷によって着色する方法の他に、フィルムを製造するまでの工程の何れかで着色剤を練り込み、得られた着色フィルムを保護層として再帰反射シートの基材に積層する方法等が考えられる。これら方法の中でも、再帰反射シートの反射性能や製造コストを考慮すると、後者の方が好ましい。
再帰反射シート用カバーフィルムとしては、特許文献1に、JIS Z8722に規定する照明及び受光の幾何学的条件a(45°照明、垂直受光)により、標準の光D65の条件で測定した時のXYZ表色系での色度座標(x,y)及びY値がコントロールされた再帰反射シート表皮用着色アクリル樹脂フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−126517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、再帰反射シートとして使用した際に、再帰反射シートとしての規格を満足しつつ、更に色を判別しやすい着色アクリル樹脂フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、特許文献1で開示されている着色アクリル系樹脂フィルムは視認性が良好であるものの、積層する再帰反射シートが白色である場合に視認性やコントラストが悪いことを見出した。本発明者らはまた、緑色系の着色アクリル樹脂フィルムを製造する場合に、全光透過率、ヘーズおよびY値が一定の範囲に収まるように着色剤および必要に応じて補色剤を用いて着色することにより、再帰反射シートとして使用した際に視認性が高くなること、特に白色の再帰反射シートと重ねた場合に、視認性の高い着色アクリル樹脂フィルムが得られることを見出し、本発明に到達した。
【0008】
即ち、本発明は、以下の発明を提供する。
[1]厚みを50〜100μmとした時に下記(1)〜(3)の条件を満たす、着色アクリル樹脂フィルム;
(1)ISO 13468−1に規定する方法で測定した時の全光線透過率が22〜35%、
(2)ISO 14782−1に規定する方法で測定した時のヘーズが2.0〜4.0%、
(3)該着色アクリル樹脂フィルムと、マンセル記号がN5.5のねずみ色の油性色紙とを重ね合わせ、着色アクリル樹脂フィルム側を、JIS Z8722に規定する照明及び受光の幾何学的条件a(45°照明、垂直受光)により、標準の光D65の条件で測定した時のXYZ表色系での色度座標(x,y)が、(0.016,0.381)、(0.185,0.340)、(0.317,0.436)及び(0.224,0.806)の範囲内であり、Y値が3〜5。
[2]フタロシアニン系着色剤、縮合多環状系着色剤、及び無機系着色剤からなる群から選択される少なくとも1種を含有する、上記[1]に記載の着色アクリル樹脂フィルム。
[3]アクリル樹脂成分が、ゴム含有重合体からなる、上記[1]又は[2]に記載の着色アクリル樹脂フィルム。
[4]上記[1]に記載の着色アクリル樹脂フィルムを含む、再帰反射シートの表皮材。
[5]上記[1]〜[3]のいずれかに記載の着色アクリル樹脂フィルムまたは請求項4に記載の表皮材と白色の再帰反射シートとが積層されてなる、再帰反射材。
[6]着色アクリル樹脂フィルムの製造方法であって、厚みを50〜100μmとした時に以下の条件を満たすようにフタロシアニン系着色剤(例えば、CI Pigment Green 7)と他の着色剤とをアクリル樹脂に混入することを含む、方法:
(1)ISO 13468−1に規定する方法で測定した時の全光線透過率が22〜35%、
(2)ISO 14782−1に規定する方法で測定した時のヘーズが2.0〜4.0%、
(3)該着色アクリル樹脂フィルムと、マンセル記号がN5.5のねずみ色の油性色紙とを重ね合わせ、着色アクリル樹脂フィルム側を、JIS Z8722に規定する照明及び受光の幾何学的条件a(45°照明、垂直受光)により、標準の光D65の条件で測定した時のXYZ表色系での色度座標(x,y)が、(0.016,0.381)、(0.185,0.340)、(0.317,0.436)及び(0.224,0.806)の範囲内、およびY値が3〜5。
[7]再帰反射材の製造方法であって、着色アクリル樹脂フィルムを上記[6]に記載の方法により得ることと、得られたフィルムまたはこれを含む表皮材を白色の再帰反射シートに積層することとを含む、方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の着色アクリル樹脂フィルムは、再帰反射シートに積層した場合に、特に白色の再帰反射シートに積層した場合に視認性が高い。本発明の着色アクリル樹脂フィルムは、再帰反射シートに適用した場合に、必要となる反射性能を満足する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の再帰反射シート表皮用着色アクリル樹脂フィルムが基本的に備えるべき、XYZ表色系での色度座標(x,y)の範囲を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<着色アクリル樹脂フィルム>
本発明の着色アクリル樹脂フィルムは、厚みを50μm〜100μmとし、該着色アクリル樹脂フィルムとマンセル記号がN5.5のねずみ色の油性色紙とを重ね合わせ、着色アクリル樹脂フィルム側を、JIS Z8722に規定する照明及び受光の幾何学的条件a(45°照明、垂直受光)により、標準の光D65の条件で測定した時のXYZ表色系での色度座標(x,y)が、(0.016,0.381)、(0.185,0.340)、(0.317,0.436)及び(0.224,0.806)の範囲内でなければならない。
ここで、「(0.016,0.381)、(0.185,0.340)、(0.317,0.436)及び(0.224,0.806)の範囲」とは、図1に示すように、色度座標(x,y)における(0.016,0.381)、(0.185,0.340)、(0.317,0.436)、(0.224,0.806)そして最初の(0.016,0.381)の各座標を順に直線で結ぶことによって囲まれる領域(すなわち、上記4点を頂点とする四角形により区画される領域)を意味する。
この範囲の色度座標(x,y)を有する着色アクリル樹脂フィルムを再帰反射シートの表皮材として用いた場合、その再帰反射シートは、例えばJIS Z9117に記載の色相を満足することができ、反射シートの視認性を高めることができる。
好ましい色度座標(x,y)の範囲は、(0.016,0.381)、(0.185,0.340)、(0.317,0.436)及び(0.224,0.806)の範囲、より好ましくは(0.056,0.389)、(0.166,0.364)、(0.286,0.446)及び(0.219,0.720)の範囲、最も好ましくは(0.100,0.410)、(0.166,0.400)、(0.260,0.500)及び(0.230,0.620)の範囲である。
なお、2009年3月20に改正されたJIS Z8722に規定する照明及び受光の幾何学的条件aでは、以下の様に規定されている。幾何条件a[記号:照射光の方向が一方向であるときは(45°x:0°)、複数方向であるときは(45°c:0°)、全方向であるときは(45°a:0°)とする。]試料面の法線に対し45±2°の角度をなす一つ以上の光線束で試料を照射し,試料の法線となす角度が10°以下の方向の反射光を受光する。この場合、照射及び受光光線束には、それぞれの中心線に対し8°以上の傾きをもつ光線が含まれてはならない。また、受光の方向は,試料の法線と一致しないことが望ましい。
【0012】
マンセル記号がN5.5のねずみ色の油性色紙としては、日本色研事業(株)の標準色カード230のねずみ色(マンセル記号:N5.5)を用いることができる。前記油色紙を重ね合わせることにより、本発明においては、透明な着色アクリル樹脂フィルムの色を評価する。
【0013】
本発明の着色アクリル樹脂フィルムのY値は、該着色アクリル樹脂フィルムとマンセル記号がN5.5のねずみ色の油性色紙とを重ね合わせ、着色アクリル樹脂フィルム側を、JIS Z8722に規定する照明及び受光の幾何学的条件a(45°照明、垂直受光)により、標準の光D65の条件で測定した値(三刺激値XYZのうちのY値)であり、このY値が3〜5でなければならない。
Y値が3以上であれば、その着色アクリル樹脂フィルムを再帰反射シートの表皮材として用いた場合、その再帰反射シートの色相はASTM D4956の規格を満足することができ、道路標識等に使用した場合、視認性が良好になる。また、Y値が5以下であれば、特に、白の再帰反射シートと重ねた場合にコントラストが強くなるため、道路標識等に使用した場合、視認性が良好になる。
好ましいY値の範囲は、3〜5の範囲、より好ましくは3.2〜4.8の範囲、最も好ましくは3.2〜4.6の範囲である。なお、JIS Z9117によれば、白は、XYZ表色系での色度座標(x,y)が、(0.274,0.329)、(0.303,0.300)、(0.368,0.366)、及び(0.340,0.393)の範囲内であり、β値の下限値は0.27%である。
【0014】
本発明の着色アクリル樹脂フィルムの全光線透過率は、ISO 13468−1(JIS K7361−1)で測定した時の値で22〜35%である。全光線透過率が22%以上であれば、その着色アクリル樹脂フィルムを表皮材として製造した再帰反射シートは反射性能を満足することができる。また全光線透過率が35%以下であれば、その着色アクリル樹脂フィルムを表皮材として製造した再帰反射シートのコントラストを強くすることができる。
好ましい全光線透過率の範囲は、22〜35%の範囲、より好ましくは23〜34%の範囲、最も好ましくは24〜33%の範囲である。
なお、1996年のISO 13468−1(JIS K7361−1)では、CIE規格で指定する光源及びフォト検出器を備えたシングルビーム測光器を用いて測定される。測定装置は、安定化された光源、これと組み合わされた光学系及びフォトメーターと開口部の付いた積分球から構成される。
【0015】
本発明の着色アクリル樹脂フィルムのヘーズは、ISO 14782−1(JIS K7136)に規定する方法で測定した時の値が2.0〜4.0%である。ヘーズが2.0%以上であれば、その着色アクリル樹脂フィルムを表皮材として製造した再帰反射シートのコントラストを強くすることができる。また、ヘーズが4.0%以下であれば、その着色アクリル樹脂フィルムを表皮材として製造した再帰反射シートは反射性能を満足することができる。
好ましいヘーズの範囲は、2.0〜4.0%の範囲、好ましくは2.4〜4.0%の範囲、より好ましくは2.5〜3.7%の範囲、最も好ましくは2.8〜3.5%の範囲である。
なお、1999年のISO 14782−1(JIS K7136)では、光線の広角散乱に関する特定の光学的性質であるヘーズの求め方について規定されている。測定装置は、安定した光源、接続光学系、開口部を備えた積分球及び測光器から構成され、測光器は、受光器、信号処理装置及び表示装置又は記録計から構成される。使用する光源及び測光器は、フィルターを通ってその組合せの特性が、ISO/CIE 10527による等色関数y(λ)と等しい明所視標準視感効率V(λ)(IEC 60050−845で定義)と、ISO/CIE 10526に規定するCIE標準の光D65の組合せに相当する出力を与えるものである。
【0016】
上述のように、本発明の着色アクリル樹脂フィルムは、ISO 13468−1で測定した時の全光線透過率を22〜35%、ISO 14782−1に規定する方法で測定したヘーズを2.0〜4.0%の範囲内にし、着色アクリル樹脂フィルムとマンセル記号がN5.5のねずみ色の油性色紙とを重ね合わせ、着色アクリル樹脂フィルム側を、JIS Z8722に規定する照明及び受光の幾何学的条件a(45°照明、垂直受光)により、標準の光D65の条件で測定した時のXYZ表色系での色度座標(x,y)を(0.016,0.381)、(0.185,0.340)、(0.317,0.436)及び(0.224,0.806)の範囲内にし、Y値を3〜5にすることによって、これを表皮材として用いた再帰反射シートの色相を、JIS Z9117及びASTM D4956の両方の規格を満足しつつコントラストを強くすることができる。これにより、本発明の着色アクリル樹脂フィルムは、特に白色の再帰反射シートに積層して用いる場合に、良好な視認性をもたらす。ある好ましい態様では、上記において全光線透過率を24〜33%、ヘーズを2.4〜4.0%の範囲内にし、着色アクリル樹脂フィルムとマンセル記号がN5.5のねずみ色の油性色紙とを重ね合わせ、着色アクリル樹脂フィルム側を、JIS Z8722に規定する照明及び受光の幾何学的条件a(45°照明、垂直受光)により、標準の光D65の条件で測定した時のXYZ表色系での色度座標(x,y)を(0.016,0.381)、(0.185,0.340)、(0.317,0.436)及び(0.224,0.806)の範囲内にし、Y値を3〜5にすることができる。
【0017】
このように、ISO 13468−1で測定した時の全光線透過率を24〜33%、ISO 14782−1に規定する方法で測定したヘーズを2.0〜4.0%の範囲内にし、かつ、マンセル記号がN5.5のねずみ色の油性色紙とを重ね合わせ、着色アクリル樹脂フィルム側を、JIS Z8722に規定する照明及び受光の幾何学的条件a(45°照明、垂直受光)により、標準の光D65の条件で測定した時のY値を3〜5にすることにより、本発明の着色アクリル樹脂フィルムは、白色の再帰反射シートに積層して用いる場合に、良好な視認性をもたらす。
【0018】
上述のXYZ表色系での色度座標(x,y)、Y値、全光線透過率、ヘーズは着色アクリル樹脂フィルムの厚みを50μm〜100μmにした時の値である。
【0019】
<アクリル樹脂>
本発明の着色アクリル樹脂フィルムは、アクリル樹脂を主成分とし、これに着色剤等を添加したアクリル樹脂組成物からなるフィルムである。アクリル樹脂を用いることによって、フィルムに耐候性の優れた特性を付与できる。
本発明の着色アクリル樹脂フィルムに用いられる好ましいアクリル樹脂はゴム含有重合体を含むが、このゴム含有重合体は、以下に示すゴム含有重合体(G)であることが好ましい。
【0020】
以下、好ましい形態のアクリル樹脂について具体的に説明する。尚、以下の説明において「アクリル酸アルキル」及び「メタクリル酸アルキル」とは、各々、アクリル酸のアルキルエステル及びメタクリル酸のアルキルエステルを意味する。
また「(メタ)アクリル酸アルキル」とは、アクリル酸アルキル及び/又はメタクリル酸アルキルを意味する。
【0021】
ゴム含有重合体(G)は、アクリル酸アルキルを30質量%以上含む単量体成分(a)を重合してゴム重合体(A)を製造する工程、及び、該ゴム重合体(A)の存在下にメタクリル酸アルキルを51質量%以上含む単量体成分(b)を重合する工程を経て製造される重合体である。単量体成分(a)は、それを単独で重合して得られる重合体のガラス転移温度(Tg)が−50〜25℃となる成分であることが好ましい。また、単量体成分(b)は、それを単独で重合して得られる重合体のTgが70〜120℃となる成分であることが好ましい。
【0022】
単量体成分(a)の重合に先立ち、それを単独で重合して得られる重合体のTgが70〜120℃となる成分(s)を乳化重合する工程を含むことができる。また、単量体成分(a)の乳化重合工程と単量体成分(b)の乳化重合工程の間には、必要に応じて単量体成分(c)等を乳化重合する工程を含むことができる。
また、本発明において用いられるゴム含有重合体を含むアクリル樹脂(A)は、ゴム含有重合体(G)以外に、熱可塑性重合体を含むことができる。
【0023】
熱可塑性重合体としては、炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレート単位50〜100質量%、及び、少なくとも1種の他のビニル単量体単位0〜50質量%を含有し、重合体の還元粘度が0.1L/g以下である熱可塑性重合体が挙げられる。尚、この還元粘度は、重合体0.1gをクロロホルム100mlに溶解し、25℃で測定される。
前記アルキルメタクリレート単位の含有率は70〜100質量%が好ましい。また熱可塑性重合体は、Tgが80〜110℃であることが好ましい。このような熱可塑性重合体の具体例として、例えば、三菱レイヨン(株)製の「アクリペットVH」、「アクリペットMD」、「アクリペットMF」(いずれも商品名)が挙げられる。
アクリル樹脂(A)中に占めるゴム含有重合体(G)と前記熱可塑性重合体の含有率の比率は、95:5〜5:95(質量%)が好ましい。
【0024】
〔ゴム含有重合体(G)の製造方法〕
前記ゴム含有重合体(G)の製造方法として、先ず単量体成分を説明し、次いで重合方法を説明する。
【0025】
〔単量体成分(a)〕
単量体成分(a)は、単量体の総量100質量%を基準にして、アクリル酸アルキルを30質量%以上含む単量体混合物であって、一段目の重合の原料となる単量体混合物である。単量体成分(a)を原料として重合することによってゴム重合体(A)が製造される。
アクリル酸アルキル(以下、「単量体(a1)」という場合がある。)としては、アルキル基が直鎖状、分岐状のいずれでもよい。例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−,i−プロピル、アクリル酸n−,i−,t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、及びアクリル酸n−オクチルが挙げられる。
これらの中で、アクリル酸n−ブチルが好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
単量体成分(a)中のアクリル酸アルキル以外の単量体としては、メタクリル酸アルキル(以下、「単量体(a2)」という場合がある。)、他の単官能性単量体(以下、「単官能性単量体(a3)」という場合がある。)、及び多官能性単量体(以下、「多官能性単量体(a4)」という場合がある。)が挙げられる。
【0027】
メタクリル酸アルキルとしては、アルキル基が直鎖状又は分岐鎖状のものが挙げられる。例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−,i−プロピル及びメタクリル酸n−,i−,t−ブチルが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
単官能性単量体(a3)としては、例えば、アクリル酸アルコキシ、アクリル酸シアノエチル、アクリルアミド、(メタ)アクリル酸等のアクリル系単量体;スチレン、アルキル置換スチレン等の芳香族ビニル単量体;及びアクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
多官能性単量体(a4)としては、例えば、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,3−ブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,4−ブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸プロピレングリコール等のジ(メタ)アクリル酸アルキレングリコール;ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン等のポリビニルベンゼン;トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等のシアヌレート系単量体;及びメタクリル酸アリル等のα,β−不飽和カルボン酸又はジカルボン酸のアリル、メタリル又はクロチルエステルが挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
単量体成分(a)中の各成分の含有率は、次の範囲であることが好ましい。
アクリル酸アルキルが30〜99.9質量%、メタクリル酸アルキルが0〜69.9質量%、単官能性単量体(a3)が0〜20質量%、多官能性単量体(a4)が0.1〜10質量%。
【0031】
ゴム重合体(A)のTgは、フィルムとしての柔軟性の点から、−50〜25℃が好ましい。
尚、本発明において、Tgは、ポリマーハンドブック(J.Brandrup,Interscience,1989)に記載されている値を用いて、FOXの式から算出される値をいう。
また、ゴム含有重合体(G)中のゴム重合体(A)の含有率は、フィルムとしての製膜性の点から、5〜70質量%が好ましい。
ゴム含有重合体(G)中の単量体成分(a)は2段以上に分けて重合してもよい。
【0032】
〔単量体成分(b)〕
単量体成分(b)は最終段目の重合の原料となる単量体混合物であり、ゴム含有重合体(G)の成形性、機械的性質に関与する成分である。
単量体成分(b)中のメタクリル酸アルキルとしては、単量体成分(a)の説明において「単量体(a2)」として挙げた1種以上の単量体を用いることができる。
単量体成分(b)中の、他の単量体としては、アクリル酸アルキル、及び、他の単官能性単量体(以下、「単官能性単量体(b3)」という場合がある。)が挙げられる。
アクリル酸アルキルとしては、「単量体(a1)」として挙げた1種以上の単量体を用いることができる。
単官能性単量体(b3)としては、「単官能性単量体(a3)」として挙げた1種以上の単量体を用いることができる。
【0033】
単量体成分(b)を乳化重合する工程は、二段以上とすることができる。
単量体成分(b)中の各成分の含有率は、次の範囲であることが好ましい。
メタクリル酸アルキルが51〜100質量%、アクリル酸アルキルが0〜20質量%、単官能性単量体(b3)が0〜49質量%。
【0034】
重合方法の全工程において使用する単量体成分の総量100質量%に占める、単量体成分(b)の使用量は、フィルムとしての製膜性の点から、30〜95質量%が好ましい。
【0035】
〔単量体成分(s)〕
単量体成分(a)を重合してゴム重合体(A)を製造する工程に先立ち、それを単独で重合して得られる重合体のTgが70〜120℃となる成分(s)を乳化重合する工程を含むことができる。単量体成分(s)としては単量体成分(b)と同じものを挙げることができる。
【0036】
〔単量体成分(c)〕
単量体成分(a)を重合してゴム重合体(A)を製造する工程、及び、該ゴム重合体(A)の存在下に単量体成分(b)を重合する工程の間には、単量体成分(c)を乳化重合する工程を含むことができる。
単量体成分(c)としては、アクリル酸アルキル9.9〜90質量%、メタクリル酸アルキル0〜90質量%、他の単官能性単量体0〜20質量%、及び多官能性単量体0.1〜10質量%を含む混合物が挙げられる。
【0037】
ここで用いる他の単官能性単量体及び多官能性単量体としては、前述の単官能性単量体(a3)及び多官能性単量体(a4)を用いることができる。
単量体成分(c)を乳化重合する工程は、二段以上とすることができる。二段以上で重合する場合、単量体成分(c)の組成は同一でもよく異なっていてもよい。また、単量体成分(c)は界面活性剤を含んでいてもよく、更に水と混合・撹拌して乳化液として重合容器内に供給してもよい。
【0038】
〔重合方法〕
ゴム含有重合体(G)の製造法としては、例えば、逐次多段乳化重合法が挙げられる。3段階で重合する方法として、ゴム状重合体(A)を得るための単量体成分(a)、水及び界面活性剤を混合して乳化液とした状態で重合容器内に供給して重合した後に、単量体成分(c)を重合容器内に供給して重合し、更に単量体成分(b)、水及び界面活性剤を混合して乳化液とした状態で重合容器内に供給して重合する方法が挙げられる。
尚、単量体成分(c)を重合容器内に供給して重合する工程は、必要に応じて行われる工程である。
【0039】
上記の方法で製造されたゴム含有重合体(G)を用いて得られる重合体製品は、最終的に得られる重合体ラテックス中における粗大粒子が少ないという利点を有する。特にフィルムにおいては、フィッシュアイが少ない点で好ましい。
【0040】
逐次多段乳化重合法で製造する際に使用される界面活性剤としては、例えば、アニオン系、カチオン系及びノニオン系の界面活性剤が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
アニオン系の界面活性剤としては、例えば、ロジン石鹸、オレイン酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、N−ラウロイルザルコシン酸ナトリウム、アルケニルコハク酸ジカリウム系等のカルボン酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム等の硫酸エステル塩;ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム系等のスルホン酸塩;及び、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸ナトリウム等のリン酸エステル塩が挙げられる。
これらの市販品としては、例えば、三洋化成工業(株)製のエレミノールNC−718;東邦化学工業(株)製のフォスファノールLO−529、フォスファノールRS−610NA、フォスファノールRS−620NA、フォスファノールRS−630NA、フォスファノールRS−640NA、フォスファノールRS−650NA及びフォスファノールRS−660NA;及び花王(株)製のラテムルP−0404、ラテムルP−0405、ラテムルP−0406、ラテムルP−0407が挙げられる。
【0041】
単量体成分、水及び界面活性剤を混合して乳化液を調製する方法としては、例えば以下の(1)〜(3)の方法が挙げられる。
(1)水中に単量体成分を仕込んだ後、界面活性剤を投入する方法、(2)水中に界面活性剤を仕込んだ後に単量体成分を投入する方法、及び(3)単量体成分中に界面活性剤を仕込んだ後に水を投入する方法。
【0042】
単量体成分を水及び界面活性剤と混合して乳化液を調製するための混合装置としては、例えば、攪拌翼を備えた攪拌機;ホモジナイザー、ホモミキサー等の強制乳化装置;及び膜乳化装置が挙げられる。
【0043】
上記乳化液としては、単量体成分の油中に水滴が分散したW/O型、水中に単量体成分の油滴が分散したO/W型のいずれの分散体でも使用することができる。
O/W型であって、且つ分散相の油滴の直径が100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましく、15μm以下であることが更に好ましい。
【0044】
上記乳化液の調製に用いる界面活性剤の量は、重合のすべての段階における単量体成分の総量を100質量部としたとき、0.5〜1.6質量部とすることが好ましい。
逐次多段重合体の粒径調整において、通常、一段目の界面活性剤の使用量により粒径が調整される。しかしながら、本発明においては、単量体成分に加える界面活性剤とは別に、重合容器内に予め仕込む水(水性媒体)中に界面活性剤を添加することにより、少ない界面活性剤の使用量で、ゴム含有重合体の粒子径を小さくすることができる。
【0045】
単量体成分(a)及び単量体成分(b)を重合する際、又は更に単量体成分(c)を重合する際に使用される重合開始剤及び連鎖移動剤としては公知のものが使用できる。重合開始剤及び連鎖移動剤の添加方法としては、水相中及び単量体相中のいずれか一方に添加する方法、又は両相中に添加する方法が挙げられる。
【0046】
重合開始剤としては、例えば、過酸化物、アゾ系開始剤及びレドックス系開始剤が挙げられる。
レドックス系開始剤とは、過酸化物と酸化剤又は還元剤を組み合わせた開始剤、及びアゾ系開始剤と酸化剤又は還元剤を組み合わせた開始剤である。具体的には、硫酸第一鉄、エチレンジアミン四酢酸ニナトリウム、ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート及びヒドロパーオキサイドを組み合わせたスルホキシレート系開始剤が挙げられる。
【0047】
連鎖移動剤としては、例えば、炭素数2〜20のアルキルメルカプタン、メルカプト酸類、チオフェノール及び四塩化炭素が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。例えば、n−オクチルメルカプタンが挙げられる。
【0048】
ゴム含有重合体(G)のラテックスの製造方法として、単量体成分(a)、水及び界面活性剤を混合して乳化液とした状態で反応器内に供給して重合した後に、単量体成分(c)を反応器内に供給して重合し、更に単量体成分(b)、水及び界面活性剤を混合して乳化液とした状態で反応器内に供給して重合する方法で製造する方法が挙げられる。
この場合、硫酸第一鉄、エチレンジアミン四酢酸ニナトリウム及びソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート2水和物を含む、反応器内の水溶液を重合温度まで昇温した後に、単量体成分(a)、水及び界面活性剤を混合した乳化液を反応器内に供給して重合した後に、単量体成分(c)を反応器内に供給して重合し、更に単量体成分(b)、水及び界面活性剤を混合した乳化液を反応器内に供給して重合する方法が好ましい。
【0049】
ゴム含有重合体(G)のラテックスを得るための重合温度としては、用いる重合開始剤の種類や量によって異なるが、例えば40〜120℃程度である。
上記の方法で得られたゴム含有重合体(G)のラテックスは、必要に応じて濾材を配した濾過装置を用いて処理することができる。
【0050】
このようにして得られたゴム含有重合体(G)のラテックスは、ラテックス状態のままで各種用途に使用することができる。また、塩析凝固法、酸析凝固法、凍結凝固法、スプレードライ法等、公知の方法により、ラテックス中からゴム含有重合体(G)を回収し、これを乾燥して、ゴム含有重合体(G)の粉体として使用することができる。更に、この粉体を溶融押し出ししてペレット化して、使用することができる。
【0051】
ゴム含有重合体(G)を、金属塩を用いた塩析処理による凝固法で回収する場合、最終的に得られたゴム含有重合体(G)中の残存金属含有量を800ppm以下にすることが好ましく、残存金属含有量は微量であるほど好ましい。
【0052】
<着色剤>
着色剤としては、アクリル樹脂をバインダーとして着色剤成分を配合した着色剤マスターバッチ、分散剤と着色剤成分とを配合したドライカラーが挙げられる。ここでいう着色剤マスターバッチとは、樹脂に着色剤成分を高濃度に配合した着色剤マスターバッチであり、形態としてはペレット状、軟らかい板状等が挙げられる。
バインダーとなる樹脂は、着色アクリル樹脂フィルムに用いられるアクリル樹脂と同種、又は類似したものが好ましい。
また、ドライカラーとは、分散性粉末着色剤を示し、適当な分散剤を添加して機械的に微粉末状にした着色剤である。好ましい分散剤としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウムが挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0053】
着色剤成分としては、フタロシアニン系着色剤、縮合多環状系着色剤、無機系着色剤等が挙げられる。
フタロシアニン系着色剤としては、例えば、CI Pigment Green 7、CI Pigment Green 36、CI Pigment Green 37、CI Pigment Green 38が挙げられる。
縮合多環状系着色剤としては、例えば、CI Pigment Green 47が挙げられる。
無機系着色剤としては、例えば、CI Pigment Green 17、CI Pigment Green 19、CI Pigment Green 50が挙げられる。
【0054】
特に、再帰反射シートの表皮材として必要な透明性、鮮明性の点でフタロシアニン系着色剤が好ましく、CI Pigment Green 7がより好ましい。
上記CI Pigment Green 7は、大日精化工業(株)製「DYMIC MBR 510」として工業的に入手可能である。これら着色剤成分は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0055】
また、補色の目的で黄、赤、橙、黒等の着色剤(以下、「補色剤」ともいう)を1種以上使用してもよい。
黄の着色剤としては、例えば、Pigment Yellow 93、CI Pigment Yellow 95、CI Pigment Yellow 128等の縮合アゾ系着色剤;CI Pigment Yellow 109、CI Pigment Yellow 110、CI Pigment Yellow 139等のイソインドリノン系着色剤;CI Pigment Yellow 24、CI Pigment Yellow 99、CI Pigment Yellow 108、CI Pigment Yellow 123、CI Pigment Yellow 147、CI Pigment Yellow 199、CI Solvent Yellow 163等のアンスラキノン系着色剤が挙げられる。
【0056】
赤の着色剤としては、例えば、CI Pigment Red 4、CI Pigment Red 166、CI Pigment Red 214、CI Pigment Red 221等の縮合アゾ系着色剤;CI Pigment Red 1、CI Pigment Red 2、CI Pigment Red 3、CI Pigment Red 4、CI Pigment Red 5、CI Pigment Red 6、CI Pigment Red7、Pigment Red 8、CI Pigment Red 9、CI Pigment Red 10、CI Pigment Red 11、CI Pigment Red 12、CI Pigment Red 14、CI Pigment Red 15、CI Pigment Red 16、CI Pigment Red 17、CI Pigment Red 18、CI Pigment Red 19、 CI Pigment Red 21、 CI Pigment Red 22、CI Pigment Red 30、CI Pigment Red 31、CI Pigment Red 32、CI Pigment Red 37、CI Pigment Red 38、CI Pigment Red 40、CI Pigment Red 41、CI Pigment Red 42、CI Pigment Red 49:2、CI Pigment Red 50:1、CI Pigment Red 52:1、CI Pigment Red 53:1、CI Pigment Red 57、CI Pigment Red 57:1、CI Pigment Red 58:2、CI Pigment Red 58:4、CI Pigment Red 60:1、CI Pigment Red 63:1、CI Pigment Red 63:2、CI Pigment Red 64:1、CI Pigment Red 114、CI Pigment Red 144、CI Pigment Red 146、CI Pigment Red 150、CI Pigment Red 151、CI Pigment Red 166、 CI Pigment Red 170、CI Pigment Red 171、CI Pigment Red 175、CI Pigment Red 176、CI Pigment Red 178、CI Pigment Red 185、CI Pigment Red 187、CI Pigment Red 193、CI Pigment Red 214、CI Pigment Red 220、CI Pigment Red 221、CI Pigment Red 243、CI Pigment Red 245、CI Solvent Red 24等のジアゾ系着色剤;CI Pigment Red 177、CI Pigment Red 216、CI Disperse Red 22、CI Disperse Red 57、CI Disperse Red 60、CI Solvent Red 4、CI Solvent Red 9、CI Solvent Red 11、CI Solvent Red 15、CI Solvent Red 52、CI Solvent Red 111、CI Solvent Red168、CI Solvent Red 207等のアンスラキノン系着色剤;CI Solvent Red 135、CI Solvent Red179等のペリノン系着色剤;CI Disperse Red 122、CI Disperse Red 202等のキナクリドン系着色剤;CI Disperse Red 254、CI Disperse Red 255、CI Disperse Red 264、CI Disperse Red 272等のジケトピロロピロール系着色剤が挙げられる。
【0057】
橙の着色剤としては、例えば、CI Pigment Orange 61等のイソインドリノン系着色剤;CI Disperse Orange 71、CI Disperse Orange 73等のジケトピロロピロール系着色剤が挙げられる。
【0058】
黒の着色剤としては、有機系着色剤、無機系着色剤がある。
有機系着色剤としては、例えば、CI Pigment Black 1等のアニリンブラック;CI Pigment Black 31等のペリレンブラックが挙げられる。
無機系着色剤としては、例えば、CI Pigment Black 7、CI Pigment Black 9、CI Pigment Black 31等のカーボンブラック;CI Pigment Black 11等の鉄黒;CI Pigment Black 13等のコバルト酸化物系顔料が挙げられる。
【0059】
特に、再帰反射シートの表皮材として必要な透明性、鮮明性の点で黄、赤、黒の着色剤を組み合わせて使用するのが好ましく、CI Solvent Yellow 163、CI Pigment Yellow 110、CI Pigment Red 177、CI Pigment Black 7を組み合わせて使用するのがより好ましい。
【0060】
上記CI Solvent Yellow 163は、大日精化工業(株)製「DYMIC MBR D−05 イエロー」、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製「ORACET Yellow GHS」として工業的に入手可能である。
【0061】
CI Pigment Red 110は、大日精化工業(株)製「DYMIC MBR 443 イエロー」、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製「CROMOPHTAL Yellow 2RLP」、「CROMOPHTAL Yellow 2RLTS」、「CROMOPHTAL Yellow 3RT」、「IRGAZIN Yellow 2RLT」、「IRGAZIN Yellow 3RLTN」、「MICROLITH Yellow 3R−K/KP」、「MICROLITH Yellow 3R−T」、「MICROLITH Yellow 3R−WA」、「MICROLEN Yellow 2RLTS−MC」、「MICROLEN Yellow 2RLTS−UA」、「UNISPERSE Yellow 2RLT−S」として工業的に入手可能である。
【0062】
CI Pigment Black 7は、大日精化工業(株)製「DYMIC MBR 717 ブラック」、「MICROLITH Black C−K/KP」、「MICROLEN Black B−MC」、「MICROLEN Black 782−MC」として工業的に入手可能である。
【0063】
また、補色の目的で、キナクリドン系、イソインドリン系、ペリレン系、ペリノン系、チオインジゴ系、キノフタロン系等の他の色の着色剤を添加してもよい。
【0064】
本発明の着色アクリル樹脂フィルムにおいては、補色剤は、着色アクリル樹脂フィルムとマンセル記号がN5.5のねずみ色の油性色紙とを重ね合わせ、着色アクリル樹脂フィルム側を、JIS Z8722に規定する照明及び受光の幾何学的条件a(45°照明、垂直受光)により、標準の光D65の条件で測定した時のXYZ表色系での色度座標(x,y)が、(0.016,0.381)、(0.185,0.340)、(0.317,0.436)及び(0.224,0.806)の範囲外にならないように添加される。
【0065】
本発明の着色アクリル樹脂フィルムに含有される着色剤の濃度は、該着色アクリル樹脂フィルムとマンセル記号がN5.5のねずみ色の油性色紙とを重ね合わせ、着色アクリル樹脂フィルム側を、JIS Z8722に規定する照明及び受光の幾何学的条件a(45°照明、垂直受光)により、標準の光D65の条件で測定した時のXYZ表色系での色度座標(x,y)が、(0.016,0.381)、(0.185,0.340)、(0.317,0.436)及び(0.224,0.806)の範囲内にあり、Y値が3〜5になるような濃度にすればよい。
【0066】
例えば、緑の着色剤をベースにした場合、補色剤として黄の着色剤、赤の着色剤を併用して補色することができる。このとき、緑/黄/赤の着色剤の混合比は60〜97/2〜25/1〜15である。黄の着色剤は、染料と顔料を併用してもよい。また、赤の着色剤は色度座標(x,y)を維持しながら透明性をコントロールする点で顔料であることが好ましい。
CI Pigment Green 7/CI Solvent Yellow 163/CI Pigment Red 177/CI Pigment Yellow 110の組合せであれば、60〜97/1〜15/1〜10/1〜15の混合比が好ましく、その着色剤の合計量は1g/m2〜3g/m2が好ましく、1.5g/m2〜2.5g/m2がより好ましい。
【0067】
また、緑色の着色剤をベースにして、補色剤として黄の着色剤、黒の着色剤を併用して補色することもできる。このとき、緑/黄/黒の着色剤の混合比は70〜98/1〜20/1〜10である。
CI Pigment Green 7/CI Solvent Yellow 163/CI Pigment Black 7の組合せであれば、70〜98/1〜20/1〜10の混合比が好ましく、その着色剤の合計量は1g/m2〜4g/m2が好ましく、1.5g/m2〜3.5g/m2がより好ましく、2g/m2〜3g/m2が更に好ましい。
着色剤の濃度が高すぎる場合、Y値が低下するだけでなく、透明性も低下し、再帰反射シートに重要な反射性能が低下する傾向がある。また、着色剤濃度が低すぎる場合、色の視認性が低下する傾向がある。
すなわち、上記のようにして、フタロシアニン系着色剤(例えば、CI Pigment Green 7)にほかの着色剤(補色剤)を混入させることによって、アクリル樹脂フィルムを、上記で定義されたように、色度座標を設定し、Y値を3〜5とし、全光線透過率を24%〜33%とし、ヘーズを2.0%〜4.0%とすることができ、これにより、特に白色の再帰反射シートに積層して用いたときの視認性を格段に向上させることが可能となる。当業者であれば、フィルムの厚みに応じて着色剤の量を適宜決定することができる。
【0068】
<着色アクリル樹脂フィルムの製造>
本発明の着色アクリル樹脂フィルムを成形する方法としては、公知の溶液流延法、Tダイ法、インフレーション法等の溶融押出法等が挙げられ、このうち経済性の点でTダイ法が好ましい。
また、本発明の着色アクリル樹脂フィルムには、必要に応じて、一般の配合剤、例えば、安定剤、滑剤、加工助剤、可塑剤、耐衝撃助剤、発泡剤、充填剤、抗菌剤、防カビ剤、発泡剤、離型剤、帯電防止剤、艶消剤、紫外線吸収剤等を含むことができる。
特に基材(再帰反射シート)の保護の点では、耐候性を付与するために、紫外線吸収剤を添加することが好ましい。使用される紫外線吸収剤の分子量は300以上であることが好ましく、より好ましくは400以上である。分子量が300より小さな紫外線吸収剤を使用すると、フィルムを製造する際に転写ロール等に揮発し、ロール汚れを発生させることがある。
紫外線吸収剤としては、分子量400以上のベンゾトリアゾール系又は分子量400以上のトリアジン系のものが好ましく、前者の具体例としては、BASFジャパン(株)のチヌビン234、(株)ADEKAのアデカスタブLA−31RG、後者の具体例としては、BASFジャパン(株)のチヌビン1577が挙げられる。
上記配合剤の添加方法としては、アクリル樹脂を用いてフィルムを製膜するための製膜機に、アクリル樹脂と共に供給する方法と、予めアクリル樹脂に配合剤を添加した混合物を各種混練機にて混練混合する方法がある。
後者の方法に使用する混練機としては、通常の単軸押出機、二軸押出機、バンバリミキサー、ロール混練機が挙げられる。
【0069】
本発明の再帰反射シート表皮用着色アクリル樹脂フィルムの厚みは、フィルム物性の点で10〜500μmが好ましい。10〜500μmであれば、適度な剛性となり、ラミネート性、二次加工性等が良好となり、更に製膜性が安定してフィルムの製造が容易となる。
より好ましくは30〜200μm、更に好ましくは40〜150μmである。
【0070】
本発明によれば、例えば、着色アクリル樹脂フィルムの製造方法であって、厚みを50〜100μmとした時に以下の条件を満たすようにフタロシアニン系着色剤(例えば、CI Pigment Green 7)と他の着色剤(補色剤)とをアクリル樹脂に混入することを含む、方法:
(1)ISO 13468−1に規定する方法で測定した時の全光線透過率が22〜35%、
(2)ISO 14782−1に規定する方法で測定した時のヘーズが2.0〜4.0%、
(3)該着色アクリル樹脂フィルムと、マンセル記号がN5.5のねずみ色の油性色紙とを重ね合わせ、着色アクリル樹脂フィルム側を、JIS Z8722に規定する照明及び受光の幾何学的条件a(45°照明、垂直受光)により、標準の光D65の条件で測定した時のXYZ表色系での色度座標(x,y)が、(0.016,0.381)、(0.185,0.340)、(0.317,0.436)及び(0.224,0.806)の範囲内、およびY値が3〜5。このようにすることで、視認性が高い、特に白色の再帰反射シートに積層した場合に視認性の高い、着色アクリル樹脂フィルムが得られる。
【0071】
<再帰反射シート>
本発明の着色アクリル樹脂フィルムを表面に有する再帰反射シートは、主に、道路標識、表示板あるいは視認性を目的とした安全器具に使用される。
再帰反射シートの種類としては、アルミニウム蒸着を施したガラスビーズを基材に埋め込んだカプセル型再帰反射シート、プリズム加工した樹脂シートを反射体として使用したプリズム型再帰反射シート等があり、いずれのタイプにおいても本発明の着色アクリル樹脂フィルムは、再帰反射シートの表面に積層されて使用される。
【0072】
例えば、カプセル型再帰反射シートは以下のようにして製造される。
仮支持体層にガラスビーズの上半球部分を一旦埋め込み、ビーズの下半球部分とビーズ相互の間隙にわたって一面に金属膜を蒸着してから、これに密着して熱可塑性樹脂からなる支持フィルムを塗布形成し、その面を更に耐熱性樹脂等からなるフィルムで被覆して反対側の上記仮支持体層を剥離し、露呈したガラスビーズの上半球部の上に本発明の着色アクリル樹脂フィルムを重ね、所望の独立小区画空室を作るための凸形網目パターンを有する金型によって、耐熱性樹脂等からなるフィルム側から加熱プレスし、支持フィルムを熱溶融して着色アクリル樹脂フィルムと部分的に密着させ、上記パターンどおりの連結壁を形成して独立小区画空室を形成して、カプセル型再帰反射シートが製造される。
このとき、支持フィルムと着色アクリル樹脂フィルムの密着面積が大きいと、再帰反射シートとして重要な反射性能が損なわれる傾向がある。
【0073】
本発明では、本発明の着色アクリル樹脂フィルムと白色の再帰反射シートとが積層されてなる、再帰反射材が提供される。このような再帰反射材は、例えば、道路、軌道、トンネル内などにおける交通の安全及び交通の円滑化を図るための道路標識、その他道路の付属物、車両、電柱下部及び踏切柵に用いることができる。このような再起反射材はまた、工場、鉱山、建設作業所又はその他の事業所において、夜間又は暗所における災害防止のための保安機材、JIS Z9107に規定する安全標識、並びにJIS M7001に規定する鉱山保安警標及び保安帽にも用いることができる。
【実施例】
【0074】
以下、実施例により本発明を説明する。
ここで、実施例及び比較例中の「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を表す。
また、調製例中の略号は以下のとおりである。
メチルメタクリレート:MMA
n−ブチルアクリレート:BA
メチルアクリレート:MA
スチレン:ST
アリルメタクリレート:AMA
1,3−ブチレングリコールジメタクリレート:1,3−BD
t−ブチルハイドロパーオキサイド:tBH
クメンハイドロパーオキサイド:CHP
n−オクチルメルカプタン:nOM
【0075】
また、実施例及び比較例において、調製した多層構造重合体の評価、着色アクリル樹脂フィルムの諸物性の測定は、以下の試験法により実施した。
【0076】
1)多層構造重合体の質量平均粒子径:
乳化重合にて得られた多層構造重合体のポリマーラテックスを大塚電子(株)製の光散乱光度計DLS−700を用い、動的光散乱法で測定し求めた。
【0077】
2)着色アクリル樹脂フィルムの全光線透過率:
ISO 13468−1に準拠して測定した。
【0078】
3)着色アクリル樹脂フィルムのヘーズ:
ISO 14782−1に準拠して測定した。
【0079】
4)着色アクリル樹脂フィルムの色度座標(x,y)及びY値:
日本色研事業(株)の標準色カード230(マンセル記号がN5.5のねずみ色)と着色アクリル樹脂フィルムとを重ね合わせ、着色アクリル樹脂フィルム側を、JIS Z8722に規定する照明及び受光の幾何学的条件a(45°照明、垂直受光)により、標準の光D65の条件で測定した。
【0080】
5)視認性
20cm四方の市販のカプセルレンズ型再帰反射シート(白)(ニッカポリマ(株)製(商品名:ニッカライトULS)の中央に10cm四方の着色アクリル樹脂フィルムを貼りあわせた。
この再帰反射シートを地面と垂直に設置して、再帰反射シートから約50m離れた距離に自動車を止め、その運転席から再帰反射物品を観察した。尚、再帰反射シートを照明する光としては、その自動車のヘッドライトを用いた。
以下の評点に基づいて、着色アクリル樹脂フィルムを白色の再帰反射シートに積層して得られた再帰反射材の視認性評価を行った。
【0081】
視認性の評点
○:着色部分が確認できる。
△:着色部分がぼやけて見える、もしくは着色部分の色が認識しにくい。
×:着色部分の色が認識できない。
【0082】
(調製例1)
ゴム含有重合体(I)の製造
調製例1では、ゴム含有重合体(G)に相当するゴム含有重合体(I)を製造した。
攪拌機を備えた容器内に脱イオン水10.8部を仕込んだ後、MMA0.3部、BA4.5部、1,3−BD0.2部、AMA0.05部及びCHP0.025部からなる混合物(単量体成分(a))を容器内に投入し、室温下にて攪拌混合した。
次いで、攪拌しながら、乳化剤(東邦化学工業(株)製、商品名「フォスファノールRS610NA」)1.1部を容器内に投入し、攪拌を20分間継続し、「乳化液1」を調製した。
次に、冷却器付き重合容器内に脱イオン水155.8部を投入し、75℃に昇温した。更に、脱イオン水2.0部に硫酸第一鉄0.0001部及びEDTA0.0003部を加えた混合物を調製し、この混合物を重合容器内に投入した。続いて、脱イオン水0.8部にソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.20部を添加して調製した溶液を重合容器内に一度に投入した。
次いで、窒素雰囲気下で攪拌しながら、乳化液1を8分間にわたって重合容器内に滴下した。その後、15分間反応を継続させ、ゴム重合体(弾性重合体とも称す)(I−a1)の重合を完了した。
【0083】
続いて、MMA1.5部、BA22.5部、1,3−BD1.0部、AMA0.25部及びCHP0.016部からなる混合物を、90分間にわたって重合容器内に滴下した。その後、60分間反応を継続させ、弾性重合体(I−a2)を生成した。このようにして弾性重合体(I−a1)及び弾性重合体(I−a2)を含む弾性重合体(I−A)を得た。
尚、弾性重合体(I−a1)用及び弾性重合体(I−a2)用の各混合物を、それぞれ別個に、上述の方法と同条件で重合した場合、弾性重合体(I−a1)、弾性重合体(I−a2)のTgはともに−48℃であった。
【0084】
続いて、MMA6部、BA4部及びAMA0.075部及びCHP0.0125部からなる混合物を、45分間にわたって重合容器内に滴下した。その後、60分間反応を継続させ、中間重合体(I−C)を形成した。
尚、中間重合体(I−C)用の混合物を、別個に、前記と同条件で重合した場合、中間重合体(I−C)のTgは20℃であった。
【0085】
続いて、MMA55.2部及びBA4.8部、nOM0.22部及びtBH0.075部からなる混合物(単量体成分(b))を、140分間にわたって重合容器内に滴下した。その後、140分間反応を継続させ、硬質重合体(I−B)を形成して、ゴム含有重合体(I)の重合体ラテックスを得た。重合後測定した質量平均粒子径は、0.12μmであった。
得られたゴム含有重合体(I)の重合体ラテックスを、濾材にSUS製のメッシュ(平均目開き:54μm)を取り付けた振動型濾過装置を用い、濾過した。その後、酢酸カルシウム3.0部を含む水溶液中で塩析させ、水洗し、重合体を回収した。その後、乾燥し、粉体状のゴム含有重合体(I)を得た。
【0086】
[実施例1〜6、比較例1〜2]
調製例1で得られたゴム含有重合体(I)100部に、紫外線吸収剤として(株)ADEKA製「アデカスタブLA−31RG(商品名)」、HALS(ヒンダードアミン系光安定剤)として(株)ADEKA製「アデカスタブLA−57(商品名)」、抗酸化剤としてBASF製「イルガノックス1076(商品名)」及び着色剤を表1に示す配合量で添加し、ヘンシェルミキサーを用いて混合し、得られた混合物を二軸押出機(東芝機械製のTEM35)で押し出し切断してペレット化した。
【0087】
【表1】
【0088】
ここで、着色剤としては、大日精化工業(株)製DYMIC MBR 510(商品名)(フタロシアニン系着色剤、CI Pigment Green 7)、大日精化工業(株)製DYMIC MBR D−05(商品名)(アンスラキノン系着色剤)、大日精化工業(株)製DYMIC MBR 165(商品名)(アンスラキノン系着色剤)、大日精化工業(株)製DYMIC MBR 443(商品名)(イソインドリノン系着色剤)、大日精化工業(株)製DYMIC MBR 717(商品名)(カーボンブラック)を使用した。
上記の方法で製造したペレットを80℃で一昼夜乾燥し、300mm幅のTダイを取り付けた40mmφのノンベントスクリュー型押出機(L/D=26)を用いてシリンダー温度200〜240℃、Tダイ温度250℃、冷却ロール温度70℃で表1に示す厚みの着色アクリル樹脂フィルムに製膜した。
得られた着色アクリル樹脂フィルムのXYZ表色系での色度座標(x,y)、Y値、全光線透過率、ヘーズを上記の方法に従って求め、視認性を評価した。結果を表1に示す。
【0089】
実施例及び比較例より、次のことが明らかとなった。
実施例1〜6(特に実施例1〜5)における着色アクリル樹脂フィルムは、白色の再帰反射シートに積層して使用した際に再帰反射シートとしての規格を満足しつつ、更に視認性が高く、工業的利用価値が高い。
一方、比較例1〜2における着色アクリル樹脂フィルムは、例えば再帰反射シートにした場合に色を視認しにくく、工業的利用価値が低い。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の着色アクリル樹脂フィルムを表面に有する再帰反射シートは、JIS Z9117、ASTM D4956の規格を満足するものであり、道路標識、工事標識等、様々な表示類に使用できる。このように、本発明の着色アクリル樹脂フィルムは、工業的利用価値が極めて高いものである。
図1