特許第6583024号(P6583024)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6583024
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】塗料用ウレタン樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 175/04 20060101AFI20190919BHJP
   C09D 169/00 20060101ALI20190919BHJP
   C09D 167/00 20060101ALI20190919BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20190919BHJP
   C08G 18/44 20060101ALI20190919BHJP
   C09D 175/06 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
   C09D175/04
   C09D169/00
   C09D167/00
   C09D7/65
   C08G18/44
   C09D175/06
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-17260(P2016-17260)
(22)【出願日】2016年2月1日
(65)【公開番号】特開2017-2274(P2017-2274A)
(43)【公開日】2017年1月5日
【審査請求日】2019年1月21日
(31)【優先権主張番号】特願2015-117378(P2015-117378)
(32)【優先日】2015年6月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 鉄平
(72)【発明者】
【氏名】重安 真治
(72)【発明者】
【氏名】田中 高廣
(72)【発明者】
【氏名】城野 孝喜
【審査官】 菅野 芳男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−280665(JP,A)
【文献】 特開2008−37993(JP,A)
【文献】 特開2007−238797(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00−201/10
C08G 18/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネートジオール(a1)と水酸基官能基数が3以上であるポリエステルポリオール(a2)を含むポリオール(A)、ポリイソシアネート(B)、艶消し剤(C)を含むポリウレタン樹脂組成物において、ポリオール(A)の平均水酸基官能基数が2.3〜3.5、水酸基価が70〜285mgKOH/gであり、且つ(a1)と(a2)の質量比が(a1)/(a2)=75/25〜55/45であることを特徴とする塗料用ウレタン樹脂組成物。
【請求項2】
ポリカーボネートジオール(a1)と水酸基官能基数が3以上であるポリエステルポリオール(a2)と水酸基官能基数が2以上3未満であるポリエステルポリオール(a3)を含むポリオール(A)、ポリイソシアネート(B)、艶消し剤(C)を含むポリウレタン樹脂組成物において、ポリオール(A)の平均水酸基官能基数が2.3〜3.5、水酸基価が70〜285mgKOH/gであり、且つ(a1)と((a2)+(a3))の質量比が(a1)/((a2)+(a3))=75/25〜55/45であることを特徴とする塗料用ウレタン樹脂組成物。
【請求項3】
ポリエステルポリオール(a2)、(a3)が環状エステル化合物を開環付加重合することで得られるポリエステルポリオールであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の塗料用ウレタン樹脂組成物。
【請求項4】
ポリイソシアネート(B)が脂肪族イソシアネートの三量体を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の塗料用ウレタン樹脂組成物。
【請求項5】
艶消し剤(C)が無機微粉体及び/又は有機微粉体からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有する請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の塗料用ウレタン樹脂組成物。
【請求項6】
艶消し剤(C)がシリカであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の塗料用ウレタン樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の塗料用ウレタン樹脂組成物を含む触感塗料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイソシアネート、特定のポリオール、艶消し剤を含有する塗料用ウレタン樹脂組成物、及び該組成物を用いた触感塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン樹脂は、耐摩耗性、屈曲性、可撓性、柔軟性、加工性、接着性、耐薬品性などの諸物性に優れ、且つ各種加工法への適性にも優れるため、電子機器部材、衣料、家具・家電、日用雑貨、建築・土木、及び自動車部材へのコーティング材、インキ、接着剤、塗料などの樹脂成分として、又はフィルム、シートなどの各種成形体として広く使用されている。イソシアネートと反応させるポリオール成分としてはポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールが用いられてきた。更には、近年、耐加水分解性、耐熱性、耐磨耗性、耐薬品性などの高い要求からポリカーボネートジオールを用いることが提案されている(特許文献1)。しかし、一方で手触りがソフトである触感塗料の要望に対して硬い手触りとなってしまうため、耐久性とソフトな触感を得るために特定の構造のポリカーボネートジオールを使用することも提案されている(特許文献2)。
【0003】
しかしながら、ソフトな触感と、化粧品などに含まれる紫外線吸収剤や虫除け剤に対する耐久性を両立することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−238797
【特許文献2】特開2009−280665
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は以上のような背景技術に鑑みてなされたものであり、紫外線吸収剤などへの耐薬品性、耐久性と柔軟な風合いを両立する塗料用ウレタン樹脂組成物及び触感塗料用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、少なくとも多官能ポリエステルポリオールを含有し、特定の範囲の水酸基官能基数を有するポリオール化合物(A)とポリイソシアネート化合物(B)を反応させて得られる触感塗料用組成物を使用することで、前記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明は、以下に示す実施形態を含む。
【0008】
[1]ポリカーボネートジオール(a1)と水酸基官能基数が3以上であるポリエステルポリオール(a2)を含むポリオール(A)、ポリイソシアネート(B)、艶消し剤(C)を含むポリウレタン樹脂組成物において、ポリオール(A)の平均水酸基官能基数が2.3〜3.5、水酸基価が70〜285mgKOH/gであり、且つ(a1)と(a2)の質量比が(a1)/(a2)=75/25〜55/45であることを特徴とする塗料用ウレタン樹脂組成物。
【0009】
[2]ポリカーボネートジオール(a1)と水酸基官能基数が3以上であるポリエステルポリオール(a2)と水酸基官能基数が2以上3未満であるポリエステルポリオール(a3)を含むポリオール(A)、ポリイソシアネート(B)、艶消し剤(C)を含むポリウレタン樹脂組成物において、ポリオール(A)の平均水酸基官能基数が2.3〜3.5、水酸基価が70〜285mgKOH/gであり、且つ(a1)と((a2)+(a3))の質量比が(a1)/((a2)+(a3))=75/25〜55/45であることを特徴とする塗料用ウレタン樹脂組成物。
【0010】
[3]ポリエステルポリオール(a2)、(a3)が環状エステル化合物を開環付加重合することで得られるポリエステルポリオールであることを特徴とする上記[1]又は上記[2]に記載の塗料用ウレタン樹脂組成物。
【0011】
[4]ポリイソシアネート(B)が脂肪族イソシアネートの三量体を含むことを特徴とする上記[1]乃至上記[3]のいずれかに記載の塗料用ウレタン樹脂組成物。
【0012】
[5]艶消し剤(C)が無機微粉体及び/又は有機微粉体からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有する上記[1]乃至上記[4]のいずれかに記載の塗料用ウレタン樹脂組成物。
【0013】
[6]艶消し剤(C)がシリカであることを特徴とする上記[1]乃至上記[4]のいずれかに記載の塗料用ウレタン樹脂組成物。
【0014】
[7]上記[1]乃至上記[6]のいずれかに記載の塗料用ウレタン樹脂組成物を含む触感塗料。
【発明の効果】
【0015】
本発明の塗料用ウレタン樹脂組成物は、耐薬品性とソフトな手触りを両立させた塗膜を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0017】
本発明は、ポリカーボネートジオール(a1)と水酸基官能基数が3以上であるポリエステルポリオール(a2)と水酸基官能基数が2以上3未満であるポリエステルポリオール(a3)を含むポリオール(A)とポリイソシアネート(B)と艶消し剤(C)を含むポリウレタン樹脂組成物において、ポリオール(A)の平均水酸基官能基数が2.3〜3.5、平均水酸基価が70〜285mgKOH/gであり、且つ(a1)と(a2)の質量比が(a1)/(a2)=75/25〜55/45、又は(a1)と((a2)+(a3))の質量比が(a1)/((a2)+(a3))=75/25〜55/45であることを特徴とする。
【0018】
本発明において、ポリオール(A)とは、ポリカーボネートジオール(a1)とポリエステルポリオール(a2)を含むもの、又はポリカーボネートジオール(a1)とポリエステルポリオール(a2)と(a3)を含むものである。
【0019】
ポリカーボネートジオール(a1)はジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート類、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のアルキレンカーボネート類、ジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ジアントリルカーボネート、ジフェナントリルカーボネート、ジインダニルカーボネート、テトラヒドロナフチルカーボネート等のジアリールカーボネート類等のカーボネート類と、グリコールとの反応によって得ることができる。
【0020】
グリコールとしてはエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ダイマー酸ジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド付加物、ビス(β−ヒドロキシエチル)ベンゼン、キシリレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の低分子ポリオール群の中から選ばれる。これらは単独で用いても2種類以上組み合わせて用いても良い。
【0021】
本発明におけるポリカーボネートジオール(a1)としては、カーボネート類としてアルキレンカーボネートを用い、グリコール類としては入手しやすさや耐薬品性の観点から1,6−ヘキサンジオールを用いて反応させたものが好ましい。
【0022】
本発明におけるポリエステルポリオール(a2)は、水酸基官能基数が3以上の多官能のものであり、特に多価アルコールを含むポリオールとジカルボン酸成分から得られるポリエステルポリオールや、多価アルコールを開始剤としてラクトン類などの環状エステル化合物を開環付加重合することで得られるポリオールが好ましい。
【0023】
上記の多価アルコールとしては、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなどが挙げられ、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコールなどの2官能アルコールを性能を低下させない範囲で併用しても良い。これらアルコールとシュウ酸、マロン酸、マレイン酸、アジピン酸、酒石酸、ピメリン酸、セバシン酸、フタル酸、テレフタル酸などの多塩基酸とを、公知の縮合方法によって作製したポリエステルポリオールを使用することができる。
【0024】
また、好ましいラクトン類としてはβ−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、β−バレロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、α−カプロラクトン、β−カプロラクトン、γ−カプロラクトン、δ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、α−メチル−ε−カプロラクトン、β−メチル−ε−カプロラクトン、4−メチルカプロラクトン、γ−カプリロラクトン、ε−カプリロラクトン、ε−パルミトラクトンなどが挙げられ、これらの中から選ばれる1種または2種以上を混合して使用することができる。中でもトリメチロールプロパンを開始剤としたε−カプロラクトンの開環付加重合体が重合時の安定性及び経済性の点から好ましい。
【0025】
本発明におけるポリエステルポリオール(a3)は、水酸基官能基数が2以上3未満であり、特にグリコールとジカルボン酸成分から得られるポリエステルポリオールや、グリコールを開始剤としてラクトン類などの環状エステル化合物を開環付加重合することで得られるポリオールが好ましい。
【0026】
上記のグリコールとしては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ダイマー酸ジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド付加物、ビス(β−ヒドロキシエチル)ベンゼン、キシリレングリコールなどが挙げられ、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなどが併用できる。これらアルコールとシュウ酸、マロン酸、マレイン酸、アジピン酸、酒石酸、ピメリン酸、セバシン酸、フタル酸、テレフタル酸などの多塩基酸とを、公知の縮合方法によって作製したポリエステルポリオールを使用することができる。
【0027】
また、好ましいラクトン類としてはβ−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、β−バレロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、α−カプロラクトン、β−カプロラクトン、γ−カプロラクトン、δ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、α−メチル−ε−カプロラクトン、β−メチル−ε−カプロラクトン、4−メチルカプロラクトン、γ−カプリロラクトン、ε−カプリロラクトン、ε−パルミトラクトンなどが挙げられ、これらの中から選ばれる1種または2種以上を混合して使用することができる。中でもエチレングリコールを開始剤としたε−カプロラクトンの開環付加重合体が重合時の安定性及び経済性の点から好ましい。
【0028】
ポリカーボネートジオール(a1)とポリエステルポリオール(a2)、又は((a2)+(a3))の質量比は(a1)/(a2)=75/25〜55/45、(a1)/((a2)+(a3))=75/25〜55/45の範囲であり、より好ましくは(a1)/(a2)=70/30〜60/40、(a1)/((a2)+(a3))=70/30〜60/40の範囲である。(a1)/(a2)、又は((a2)+(a3))の質量比をこの範囲とすることでポリカーボネートジオールの凝集力とウレタン基濃度、ポリエステルポリオール含有量のバランスによりソフトな触感を与え、耐薬品性が向上する傾向となる。
【0029】
このポリカーボネートジオール(a1)とポリエステルポリオール(a2)、(a3)は、単純に混合して用いても良いが、エステル交換反応することによって得られるポリオールを用いることにより、耐薬品性とソフトな手触りを両立させる他、溶剤への溶解性も向上する。
【0030】
ポリオール(A)の平均水酸基官能基数は2.3〜3.5であり、2.5〜3.0の範囲がより好ましい。平均水酸基官能基数を2.3〜3.5とすることで架橋構造、ポリエステルポリオール含有量のバランスによりソフトな触感を与え、耐薬品性が向上する傾向となる。
【0031】
ポリオール(A)の平均水酸基価は75〜285mgKOH/gであり、90〜180mgKOH/gがより好ましい。平均水酸基価を75〜285mgKOH/gとすることでポリカーボネートジオールの凝集力とウレタン基濃度のバランスによりソフトな触感を与え、耐薬品性が向上する傾向となる。
【0032】
本発明においては、ソフトフィール性の発現のために艶消し剤(C)として粒径1〜30μmの無機微粉体及び有機微粉体からなる群より選ばれる少なくとも一種が使用される。無機微粉体としては、シリカが好ましく使用され、ガラス、マイカ、ゼオライト、珪藻土、グラファイト、クレー、タルク、炭酸カルシウムなどの塩類、金属、金属酸化物なども使用される。有機微粉体としては、ポリウレタンビーズが好ましく使用され、アクリル樹脂やポリアミドなどの各種の樹脂、シリコーンゴム、パルプ、セルロースなども使用できる。これらの微粉体は二種以上を併用してもよい。微粉体は好ましくは球状であり、粒径は1〜30μmのものが好ましく使用され、それを超えるとざらざらした触感になってしまう。配合量はポリウレタン樹脂組成物の1〜30質量%、好ましくは10〜20質量%である。
【0033】
本発明には、必要に応じて有機溶剤を使用しても良い。
【0034】
有機溶剤としては、有機溶剤の存在下で反応に影響を与えないものが適宜選ばれる。有機溶剤の具体例としては、オクタン等の脂肪族炭化水素類、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル等のエステル類、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネート等のグリコールエーテルエステル類、ジオキサン等のエーテル類、ヨウ化メチレン、モノクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホニルアミド等の極性非プロトン溶媒などが挙げられる。これらの溶媒は、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0035】
ポリオール(A)と反応するポリイソシアネート(B)の具体例としては、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート、これらのポリイソシアネートを原料として得られるイソシアヌレート基含有ポリイソシアネート、ウレトジオン基含有ポリイソシアネート、ウレトジオン基及びイソシアヌレート基含有ポリイソシアネート、ウレタン基含有ポリイソシアネート、アロファネート基含有ポリイソシアネート、ビュレット基含有ポリイソシアネート、ウレトンイミン基含有ポリイソシアネート等が挙げられ、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
ウレタン化反応は、無触媒でも反応が進行するが、公知のウレタン化反応触媒を使用し、反応を促進することもできる。ウレタン化反応に使用できる触媒の具体例としては、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート等の有機金属化合物や、トリエチレンジアミンやトリエチルアミン等の有機アミンやその塩を挙げることができる。
【0037】
本発明には、より物性を高め、また、各種物性を付加するために、添加剤として汎用されている、界面活性剤、レベリング剤、粘度調節剤、ゲル化防止剤、難燃剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、加水分解抑制剤、抗菌剤、充填剤、内部離型剤、補強材、導電性付与剤、帯電制御剤、帯電防止剤、分散剤、滑剤、染料、顔料その他の加工助剤を用いることができる。
【0038】
本発明の塗料用ウレタン樹脂組成物は、ソフトフィール塗料として、家電製品、OA製品、携帯電話、自動車内装部品、皮革表面処理などに用いる事ができ、ソフトな触感と、化粧品などに含まれる紫外線吸収剤や虫除け剤に対する耐久性を両立することができる。
【0039】
ここで、本発明の効果で挙げられている耐紫外線吸収剤性の評価の指標に用いられる紫外線吸収剤について説明する。紫外線吸収剤としては、主に化粧品などに含まれるパラアミノ安息香酸系、けい皮酸系、ベンゾフェノン系、サリチル酸系、ベンゾイルトリアゾール系、その他の芳香族系紫外線吸収剤、及びこれら一種類以上からなる混合物であり、これらの物質が成形体やコーティング材のポリウレタン樹脂組成物に移行することで、成形体表面の外観劣化や粘着性を帯びるといった現象が見られる。
【0040】
これらの紫外線吸収剤の中でも、特に、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、サリチル酸2−エチルヘキシル、サリチル酸3,3,5−トリメチルシクロヘキシル、4−tert−ブチルベンゾイル(4−メトキシベンゾイル)メタン、3,3−ジフェニル−2−シアノアクリル酸2−エチルヘキシルが成形体やコーティング材の耐紫外線吸収剤性の大きな阻害要因となり得る。
【0041】
虫除け剤としてはN,N−ジエチル−3−メチルベンズアミド(DEET)が多く使用され、優れた蚊の忌避効果があるが、皮膚に浸透したり、合成皮革やプラスチックを損傷することが知られている。
【実施例】
【0042】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定して解釈されるものではない。
【0043】
〔ポリオールの製造1〕
攪拌機、温度計、加熱装置、蒸留塔を組んだ反応装置に、グリコールとして1,6−ヘキサンジオール(以下1,6−HGと略す。)のジエチルカーボネート(以下DECと略す。)に対する配合割合がモル比で1.08になるように、1,6−HGを830g、DECを771g仕込むとともに、さらに反応触媒としてテトラブチルチタネート(以下、TBTと略す。)を0.05g仕込み窒素気流下にて徐々に190℃まで温度を上昇させた。エタノールの留出が緩慢となり蒸留塔の塔頂温度が50℃以下となった時点で、反応温度は190℃のまま、1.3kPaまで徐々に減圧を行ない、1.3kPaの圧力でさらに7時間反応させた。さらに190℃の反応温度で1.3kPa以下の減圧下、反応物の水酸基価が54〜58(mg−KOH/g)になるまで反応を続行し、ポリオールを得た(Polyol−1)。得られたポリオールの水酸基価は55.6(mg−KOH/g)であった。
【0044】
〔ポリオールの製造2〕
ポリオール化合物の製造1で得られたポリオール(Polyol−1)を645g、ポリカプロラクトントリオール(PCL−305)を350g、1,6−HGを4.85g仕込み、190℃でエステル交換反応を5時間行い、ポリオールを得た(Polyol−2)。得られたポリオールの水酸基価は150.8(mg−KOH/g)であった。
【0045】
〔ポリオールの製造3〕
ポリオールの製造1で得られたポリオール(Polyol−1)を687g、ポリカプロラクトントリオール(PCL−305)を300g、1,6−HGを13.1g仕込み、190℃でエステル交換反応を5時間行い、ポリオールを得た(Polyol−3)。得られたポリオールの水酸基価は143.2(mg−KOH/g)であった。
【0046】
〔ポリオールの製造4〕
ポリオールの製造1で得られたポリカーボネートジオール(Polyol−1)を503g、ポリカプロラクトンジオール(PCL−220)を215g仕込み、190℃でエステル交換反応を5時間行い、ポリオールを得た(Polyol−4)。得られたポリオールの水酸基価は56.6(mg−KOH/g)であった。
【0047】
〔ポリオールの製造5〕
攪拌機、温度計、加熱装置、蒸留塔を組んだ反応装置に、グリコールとして1,6−HGのジエチルカーボネート(以下DECと略す。)に対する配合割合がモル比で1.16になるように、1,6−HGを841g、DECを723g仕込むとともに、さらに反応触媒としてテトラブチルチタネート(以下、TBTと略す。)を0.05g仕込み窒素気流下にて徐々に190℃まで温度を上昇させた。エタノールの留出が緩慢となり蒸留塔の塔頂温度が50℃以下となった時点で、反応温度は190℃のまま、1.3kPaまで徐々に減圧を行ない、1.3kPaの圧力でさらに7時間反応させた。さらに190℃の反応温度で1.3kPa以下の減圧下、反応物の水酸基価が110〜114(mg−KOH/g)になるまで反応を続行し、ポリオールを得た(Polyol−5)。得られたポリオールの水酸基価は112.4(mg−KOH/g)であった。
【0048】
〔ポリオールの製造6〕
ポリオールの製造1で得られたポリオール(Polyol−1)を854g、ポリカプロラクトントリオール(PCL−305)を100g、1,6−HGを46.2g仕込み、190℃でエステル交換反応を5時間行い、ポリオールを得た(Polyol−6)。得られたポリオールの水酸基価は122.4(mg−KOH/g)であった。
【0049】
〔ポリオールの製造7〕
攪拌機、温度計、加熱装置、蒸留塔を組んだ反応装置に、グリコールとして1,6−HGのDECに対する配合割合がモル比で1.05になるように、1,6−HGを826g、DECを787g仕込むとともに、さらに反応触媒としてテトラブチルチタネート(以下、TBTと略す。)を0.05g仕込み窒素気流下にて徐々に190℃まで温度を上昇させた。エタノールの留出が緩慢となり蒸留塔の塔頂温度が50℃以下となった時点で、反応温度は190℃のまま、1.3kPaまで徐々に減圧を行ない、1.3kPaの圧力でさらに7時間反応させた。さらに190℃の反応温度で1.3kPa以下の減圧下、反応物の水酸基価が35〜39(mg−KOH/g)になるまで反応を続行し、ポリオールを得た。得られたポリオールの水酸基価は37.6(mg−KOH/g)であった。次にこの得られたポリオールを575g、ポリカプロラクトントリオール(PCL−305)を400g、ポリカプロラクトンジオール(PCL−210)を25g仕込み、190℃でエステル交換反応を5時間行い、ポリオールを得た(Polyol−7)。得られたポリオールの水酸基価は145.3(mg−KOH/g)であった。
【0050】
〔評価用塗膜の作成〕
表1の実施例1の通り、ポリオール20部に対して艶消し剤ACEMATT OK900(EVONIK社製 シリカ、粒径7.5μm)を5部、レベリング剤BYK−331(ビックケミー・ジャパン社製)を0.25部、触媒DOTDL(キシダ化学品)を0.05部、さらに硬化剤も考慮して固形分=30%となるように酢酸ブチルを81.3g添加後、混合して主剤を得た。次に主剤水酸基モル数と硬化剤イソシアネート基モル数が1/1となるように硬化剤C−HXLVを9.5部主剤と混合し基材(ABS樹脂)に乾燥膜圧が60μmとなるように塗布し、80℃/2時間乾燥、さらに25℃/96時間養生させることにより塗膜を作製した。この塗膜を用いて物性の評価を行った。
実施例2〜5、比較例1〜6についても実施例1と同様に塗膜を作成し、物性の評価を行った。
【0051】
その他、本発明で使用した原料を下記に示す。
PCL−305 ポリカプロラクトントリオール(分子量=550、水酸基価=305、官能基数=3) ダイセル社製
PCL−312 ポリカプロラクトントリオール(分子量=1250、水酸基価=135、官能基数=3) ダイセル社製
PCL−220 ポリカプロラクトンジオール(分子量=2000、水酸基価=56.1、官能基数=2) ダイセル社製
PCL−210 ポリカプロラクトンジオール(分子量=1000、水酸基価=112、官能基数=2) ダイセル社製
C−HXLV ポリイソシアネート硬化剤(NCO含量=23.2%) 東ソー社製
【0052】
得られた塗膜については以下の項目について評価し、表1に結果を記載した。
【0053】
1.触感
塗膜の表面を摩擦感テスターKSE−SE(カトーテック社製)を用い、ピアノ線摩擦子、荷重25gでグリップ感の指標となる摩擦力(μ)とざらつき感の指標となる摩擦力標準偏差(μMD)を測定した。0.5≦μ≦1.0,μMD≦0.012を満たすものを「○」、満たさないものを「×」とした。
【0054】
2−1.耐薬品性
<耐紫外線吸収剤性>
下記化合物のグリセリン3%溶液をそれぞれ調製し、塗膜に各調製液を1滴垂らし、40℃で1時間放置後、拭き取り外観を目視で評価した。
<化合物>
(1)2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン
(2)サリチル酸2−エチルヘキシル
(3)サリチル酸3,3,5−トリメチルシクロヘキシル
(4)4−tert−ブチルベンゾイル(4−メトキシベンゾイル)メタン
(5)3,3−ジフェニル−2−シアノアクリル酸2−エチルヘキシル
<評価基準>
・塗膜の大部分に膨潤、皺、溶解を生じたもの(評価:×)
・塗膜の大部分に皺を生じたもの(評価:△)
・塗膜に滴下痕が残る程度に僅かにふくれを生じたもの(評価:○)
・塗膜に変化が見られないもの(評価:◎)
【0055】
<耐虫除け剤性>
DEETのエタノール10%溶液を調製し、塗膜に調製液を1滴垂らし、40℃で1時間放置後、拭き取り外観を目視で評価した。
<評価基準>
・塗膜の大部分に膨潤、皺、溶解を生じたもの(評価:×)
・塗膜の大部分に皺を生じたもの(評価:△)
・塗膜に滴下痕が残る程度に僅かにふくれを生じたもの(評価:○)
・塗膜に変化が見られないもの(評価:◎)
【0056】
【表1】