(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
更に、(D)加水分解性シラン及び/又はその部分加水分解縮合物を(B)成分100質量部に対して0.1〜30質量部含有する請求項2記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
更に、(F)前記(A)成分以外の接着促進剤を(B)成分100質量部に対して0.2〜30質量部含有する請求項2〜4のいずれか1項に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
前記シラン変性ポリブタジエン化合物の数平均分子量が1,000以上であることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明の室温硬化性樹脂組成物は、下記一般式(1)で表されるシラン変性ポリブタジエン化合物(即ち、重合性ビニル単量体の側鎖置換基として加水分解性シリルエチレン基を含有するポリブタジエン化合物)を含むことを特徴とする。
【化2】
(式中、R
1はそれぞれ独立に炭素数1〜12の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、R
2はそれぞれ独立に炭素数1〜12の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、fは0以上の数であり、e、gは0より大きい数であり、mは1〜3の整数である。ただし、各繰り返し単位の順序は任意である。)
【0010】
ここで、前記一般式(1)において、R
1の炭素数1〜12の非置換又は置換の一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、α−,β−ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、2−フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基等のアラルキル基;また、これらの基の水素原子の一部又は全部が、F、Cl、Br等のハロゲン原子やシアノ基等で置換された基、例えば、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、2−シアノエチル基等を例示することができる。これらの中でも、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数6〜10のアリール基が好ましく、メチル基、エチル基等のアルキル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0011】
次に、前記一般式(1)において、R
2で表される炭素数1〜12の非置換又は置換の一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、α−,β−ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、2−フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基等のアラルキル基;また、これらの基の水素原子の一部又は全部が、F、Cl、Br等のハロゲン原子やシアノ基等で置換された基、例えば、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、2−シアノエチル基等を例示することができる。これらの中でも、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数6〜10のアリール基が好ましく、メチル基、エチル基等のアルキル基がより好ましく、エチル基が特に好ましい。
【0012】
また、上記シラン変性ポリブタジエン化合物の数平均分子量は1,000以上であることが好ましく、1,000未満の場合は、室温硬化性樹脂組成物が十分な接着性を発揮しない場合がある。数平均分子量の上限には特に制限はないが、通常、1,000,000以下、好ましくは100,000以下、より好ましくは10,000以下程度であればよい。なお、分子量(又は重合度)は、通常、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)、クロロホルム等を展開溶媒として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析におけるポリスチレン換算の数平均分子量(又は数平均重合度)等として求めることができる。
【0013】
上記シラン変性ポリブタジエン化合物は、下式(i)の条件を満たすことが好ましい。
0.05≦g/(e+f+g)<1.0 ・・・(i)
上式の通り、加水分解性シリル基を含有する単位が全単位当たり5モル%以上含有していることが好ましい。更には、10モル%以上含有していることが好ましく、特にモル25%以上含有していることが好ましい。5モル%未満の場合は、室温硬化性樹脂組成物が十分な接着性を発揮しない場合がある。
【0014】
更に、上記シラン変性ポリブタジエン化合物は、下式(ii)の条件を満たすことが好ましい。
0.3≦g/(f+g)≦1.0 ・・・(ii)
上式の通り、加水分解性シリル基を含有する単位が加水分解性シリル基を含有する単位と末端ビニル基を含有する単位の和に対して30モル%以上含有していることが好ましい。特に50モル%以上含有していることが好ましく、30モル%未満の場合は、室温硬化性樹脂組成物が十分な接着性を発揮しない場合がある。
【0015】
前記シリル化ポリブタジエン化合物は、下式(2)で表される1,2−ビニル構造を有する繰り返し単位を含有するポリブタジエン化合物と
【化3】
(式中、e、f及びgは、上記と同様である。)
下式(3)で表されるケイ素原子に結合した加水分解性基(−OR
1)とケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)とを分子中に有するオルガノハイドロジェンシラン等の有機ケイ素化合物を
【化4】
(式中、R
1、R
2及びmは、上記と同様である。)
白金化合物含有触媒と助触媒の存在下でヒドロシリル化することにより得られる。
【0016】
上式(2)で表されるポリブタジエン化合物は、1,2−ビニル構造を有する繰り返し単位と2,3−ビニル構造(トランス1,4構造)を有する繰り返し単位を異性体として含む。1,2−ビニル構造を有する繰り返し単位を5モル%以上、好ましくは10モル%以上、さらに好ましくは25モル%以上含有する。1,2−ビニル構造が5モル%未満の場合、シラン変性率が低下して室温硬化性樹脂組成物に配合した際に、十分な接着性向上効果を発現できない場合がある。また、1,2−ビニル構造を有する繰り返し単位の含有比率の上限については特に制限はないが、通常、98モル%以下、好ましくは95モル%以下程度であればよい。なお、1,2−ビニル構造を有する繰り返し単位と2,3−ビニル構造を有する繰り返し単位との合計は100モル%である。
【0017】
上式(2)で表されるポリブタジエン化合物としては、NISSO−PB B−1000、NISSO−PB B−2000、NISSO−PB B−3000(以上、日本曹達(株)製)、Ricon130、Ricon131、Ricon134、Ricon142、Ricon150、Ricon152、Ricon153、Ricon154、Ricon156、Ricon157(以上、CRAY VALLEY社製)、LBR−302、LBR−307、LBR−305、LBR−300、LBR−352、LBR−361(以上、(株)クラレ製)が上市されている。
【0018】
上式(3)で表される有機ケイ素化合物としては、トリメトキシシラン、メチルジメトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ジメチルエトキシシラン等のハイドロジェンアルコキシシランなどが挙げられる。
【0019】
本発明で用いられる白金化合物含有触媒としては特に制限はないが、具体的には塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン又はキシレン溶液、テトラキストリフェニルホスフィン白金、ジクロロビストリフェニルホスフィン白金、ジクロロビスアセトニトリル白金、ジクロロビスベンゾニトリル白金、ジクロロシクロオクタジエン白金、白金−炭素、白金−アルミナ、白金−シリカなどの担持触媒等が例示される。選択性の面から、好ましくは0価の白金錯体が用いられ、更に好ましくは白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン又はキシレン溶液が挙げられる。
【0020】
白金化合物含有触媒の使用量は特に限定されないが、反応性、生産性の点から、一般式(3)で示される有機ケイ素化合物1モルに対し、含有される白金原子が1×10
-7〜1×10
-2モルが好ましく、更に1×10
-7〜1×10
-3モルの範囲が好ましい。
【0021】
本発明で用いられる助触媒としては、無機酸のアンモニム塩、酸アミド化合物、カルボン酸が挙げられる。
【0022】
無機酸のアンモニウム塩の例として、例えば、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、アミド硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、リン酸二水素一アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ジ亜リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、硫化アンモニウム、ホウ酸アンモニウム、ホウフッ化アンモニウム等が挙げられ、pKaが2以上の無機酸のアンモニウム塩が好ましく、特に炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムが好ましい。
【0023】
酸アミド化合物の例としては、例えば、ホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピオンアミド、アクリルアミド、マロンアミド、スクシンアミド、マレアミド、フマルアミド、ベンズアミド、フタルアミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミドが挙げられる。
【0024】
カルボン酸の例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、メトキシ酢酸、ペンタン酸、カプロン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、乳酸、グリコール酸などが挙げられ、特にギ酸、酢酸、乳酸が好ましく、中でも酢酸が好ましい。
【0025】
助触媒の使用量としては特に制限はないが、反応性、選択性、コストの観点から一般式(3)で示される有機ケイ素化合物1モルに対して1×10
-5〜1×10
-1モルが好ましく、特に、1×10
-4〜5×10
-1モルの範囲が好ましい。
【0026】
なお、上記反応は無溶媒でも進行するが、溶媒を用いることもできる。用いられる溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素系溶媒等が例示される。これらの溶媒は1種を単独で使用してもよく、あるいは2種以上を混合して使用してもよい。
【0027】
本発明の製造方法において、反応温度は特に限定されず、室温下又は加熱下で行うことができる。適度な反応速度を得るためには加熱下で反応させることが好ましく、0〜200℃、更に40〜110℃が好ましく、特に40〜90℃が好ましい。また、反応時間も特に限定されないが、1〜60時間、更に1〜30時間、特に1〜20時間が好ましい。
【0028】
本発明の室温硬化性樹脂組成物は、上記一般式(1)で表されるシラン変性ポリブタジエン化合物を接着促進剤として使用した室温硬化性樹脂組成物であればいずれのものも包含し得るが、下記(A)〜(C)成分、及び必要により(D)〜(F)成分を含有する室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物であることが好ましい。
(A)上記一般式(1)で表されるシラン変性ポリブタジエン化合物
(B)分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水酸基又は加水分解性基含有シリル基を有し、該ケイ素原子結合水酸基又は加水分解性基含有シリル基で分子鎖両末端が封鎖され、主鎖が基本的にジオルガノシロキサン単位の繰返しからなる直鎖状構造のジオルガノポリシロキサン
(C)硬化触媒
(D)前記(A)成分以外の加水分解性シラン及び/又はその部分加水分解縮合物
(E)充填剤
(F)接着促進剤
【0029】
[(A)成分]
本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物に用いられる(A)成分は、上述した、上記一般式(1)で表される、ポリブタジエンのビニル基の一部がアルコキシシランで変性された化合物である。シラン変性ポリブタジエン化合物は、室温硬化性樹脂組成物(室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物)の接着性を向上させるものであり、室温硬化性樹脂組成物(室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物)の接着促進剤として作用するものである。
【0030】
(A)成分であるシラン変性ポリブタジエン化合物の配合量は、後述する(B)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して0.1〜30質量部が好ましく、特に0.2〜10質量部が好ましい。(A)成分の化合物が少なすぎると十分な接着性が得られない場合があり、多すぎると硬化不良や、あるいは硬化物が硬くなりすぎる場合がある。
【0031】
[(B)成分]
(B)成分であるオルガノポリシロキサンは、本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の主剤(ベースポリマー)であり、分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水酸基又は加水分解性基含有シリル基を有し、該ケイ素原子結合水酸基(即ち、シラノール基)又は加水分解性基含有シリル基で分子鎖両末端が封鎖され、主鎖が基本的にジオルガノシロキサン単位の繰返しからなる直鎖状構造のジオルガノポリシロキサンである。このようなジオルガノポリシロキサンとして、具体的には、下記一般式(4)又は(5)で表される分子鎖末端が水酸基又は加水分解性基で封鎖されたジオルガノポリシロキサンが用いられる。
【化5】
(式中、Rは上記R
1、R
2と同様であり、Xはそれぞれ独立に酸素原子又は炭素数1〜8の二価炭化水素基であり、Y’はそれぞれ独立に加水分解性基であり、bはそれぞれ独立に0又は1であり、mはこのジオルガノポリシロキサンの25℃における粘度を100〜1,000,000mPa・sとする整数であり、通常、10〜2,000、好ましくは20〜1,000、より好ましくは50〜500程度の整数である。)
【0032】
上記式(4)、(5)中、Xは、酸素原子又は炭素数1〜8の二価炭化水素基であり、炭素数1〜8の二価炭化水素基としては、−(CH
2CH
2)
p−又は−(CH=CH)
p−(pは1〜4を表す)等のアルキレン基、アルケニレン基などを挙げることができる。Xとしては、これらの中でも同時に酸素原子、−CH
2CH
2−、−CH=CH−が好ましい。
【0033】
Y’は、加水分解性基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1〜4のアルコキシ基;メトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基、メトキシプロポキシ基等の炭素数2〜4のアルコキシアルコキシ基、アセトキシ基、オクタノイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等の炭素数2〜8のアシロキシ基、ビニロキシ基、イソプロペニルオキシ基、1−エチル−2−メチルビニルオキシ基等の炭素数2〜6のアルケニルオキシ基、ジメチルケトオキシム基、メチルエチルケトオキシム基、ジエチルケトオキシム基等の炭素数3〜7のケトオキシム基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基等の炭素数2〜6のアミノ基、ジメチルアミノキシ基、ジエチルアミノキシ基等の炭素数2〜6のアミノキシ基、N−メチルアセトアミド基、N−エチルアセトアミド基、N−メチルベンズアミド基等の炭素数3〜8のアミド基等が挙げられる。これらの中でも、アルコキシ基が特に好ましい。
【0034】
(B)成分のジオルガノポリシロキサンは、25℃における粘度が100〜1,000,000mPa・sが好ましく、より好ましくは300〜500,000mPa・s、特に好ましくは500〜100,000mPa・s、とりわけ1,000〜80,000mPa・sである。上記ジオルガノポリシロキサンの粘度が100mPa・s未満であると、物理的・機械的強度に優れたコーティング塗膜を得ることが困難となる場合があり、1,000,000mPa・sを超えると組成物の粘度が高くなりすぎて使用時における作業性が悪くなる場合がある。ここで、粘度は回転粘度計(例えば、BL型、BH型、BS型、コーンプレート型、レオメーター等)により測定することができる。また、本発明において、上記一般式(4)又は(5)におけるジオルガノシロキサン単位の繰返し数(m、m+1又はm+3)等として示される重合度(又は分子量)は、例えば、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)等を展開溶媒としてゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析における数平均重合度(又は数平均分子量)等として求めることができる。
【0035】
(B)成分のジオルガノポリシロキサンの具体例としては、例えば、下記のものが挙げられる。
【化6】
(式中、R、Y’、b、mは上記と同様である。)
【0036】
(B)成分のジオルガノポリシロキサンは、1種単独でも構造や分子量の異なる2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0037】
[(C)成分]
(C)成分は硬化触媒であり、この組成物を硬化させるために使用される。硬化触媒としては、有機金属触媒を用いることが好ましい。有機金属触媒としては、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクトエート等のアルキル錫エステル化合物、テトライソプロポキシチタン、テトラn−ブトキシチタン、テトラキス(2−エチルヘキソキシ)チタン、ジプロポキシビス(アセチルアセトナト)チタン、チタニウムイソプロポキシオクチレングリコール等のチタン酸エステル又はチタンキレート化合物、ナフテン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、亜鉛−2−エチルオクトエート、鉄−2−エチルヘキソエート、コバルト−2−エチルヘキソエート、マンガン−2−エチルヘキソエート、ナフテン酸コバルト、アルコキシアルミニウム化合物、アルミニウムキレート化合物等の有機金属化合物、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノアルキル基置換アルコキシシラン、ヘキシルアミン、リン酸ドデシルアミン等のアミン化合物及びその塩、ベンジルトリエチルアンモニウムアセテート等の第4級アンモニウム塩、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、シュウ酸リチウム等のアルカリ金属の低級脂肪酸塩、ジメチルヒドロキシルアミン、ジエチルヒドロキシルアミン等のジアルキルヒドロキシルアミン、テトラメチルグアニジルプロピルトリメトキシシラン、テトラメチルグアニジルプロピルメチルジメトキシシラン、テトラメチルグアニジルプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン等のグアニジル基を含有するシラン又はシロキサン、N,N,N',N',N'',N''−ヘキサメチル−N'''−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−ホスホリミディックトリアミド等のホスファゼン塩基を含有するシラン又はシロキサン等が例示されるが、これらはその1種に限定されず、2種以上の混合物として使用してもよい。
【0038】
なお、(C)成分である硬化触媒の配合量は、上記(B)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して0.01〜15質量部が好ましく、特に0.01〜5質量部が好ましい。(C)成分が少なすぎると十分な硬化速度が得られない場合があり、多すぎると硬化速度が速すぎて十分な作業性が確保できない場合がある。
【0039】
[(D)成分]
(D)成分である加水分解性(オルガノ)シラン及び/又はその部分加水分解縮合物は、必要に応じて添加してもよい任意成分であり、前記(A)成分と同様に架橋剤として作用し得るものである。この(D)成分中の加水分解性基としては、例えば、ケトオキシム基、アルコキシ基、アセトキシ基等のアシルオキシ基、イソプロペノキシ基等のアルケニルオキシ基などが挙げられ、アルコキシ基、イソプロペノキシ基が好ましい。なお、本発明において、部分加水分解縮合物とは、加水分解性シラン化合物同士が部分的に加水分解・縮合して生成する、分子中に少なくとも2個、好ましくは3個以上の残存加水分解性基を有するオルガノシロキサンオリゴマーを意味する。また、(D)成分は、後述する(F)成分とも異なるものである。
【0040】
(D)成分の具体例としては、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン、メチルトリイソプロペノキシシラン、エチルトリイソプロペノキシシラン、ビニルトリイソプロペノキシシラン、フェニルトリイソプロペノキシシラン等のイソプロペノキシ基含有シラン、メチルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン等のアセトキシシラン等の、分子中に加水分解性基を2〜4個、特には2個又は3個有するオルガノシランや、エチルシリケート、メチルシリケート、並びにこれらのシランの部分加水分解縮合物が挙げられる。これらは1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0041】
(D)成分の配合量は、前記(B)成分100質量部に対して通常0〜30質量部が好ましいが、配合する場合には0.1〜20質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜15質量部である。前記配合量が30質量部を超えると硬化物が硬くなりすぎたり、経済的に不利となるという問題が発生する場合がある。
【0042】
[(E)成分]
(E)成分は充填剤であり、この組成物から形成される硬化物に十分な機械的強度を与えるために必要に応じて使用される任意成分である。この充填剤としては公知のものを使用することができ、例えば表面疎水化処理又は無処理の(即ち、疎水性又は親水性の)、焼成シリカ、煙霧質シリカ(ヒュームドシリカ)、シリカエアロゲル等の乾式シリカ、沈降シリカ、ゾル−ゲル法シリカ等の湿式シリカ、けいそう土、中空シリカなどのシリカ系微粉末、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタンなどの金属酸化物、あるいはこれらの表面をシラン化合物等で疎水化処理したもの、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛などの金属炭酸塩、アスベスト、ガラスウール、カーボンブラック、微粉マイカ、溶融シリカ粉末、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレンなどの合成樹脂粉末等の1種又は2種以上が使用される。
【0043】
この充填剤の配合量は、前記(B)成分100質量部当たり、0〜1,000質量部が好ましいが、配合する場合には、1〜400質量部とすることが好ましく、特に5〜200質量部とすることが好ましい。1質量部未満ではこの組成物から得られる硬化物が十分な機械的強度を示さないものとなる傾向があり、また1,000質量部よりも多量に使用すると、組成物の粘度が増大して作業性が悪くなるばかりでなく、硬化後のゴム強度が低下してゴム弾性が得難くなる傾向がある。
【0044】
また、本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物には、添加剤として、顔料、染料、老化防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、酸化アンチモン、塩化パラフィン等の難燃剤などの公知の添加剤を配合することができる。更に、チクソ性向上剤としてのポリエーテル、防かび剤、抗菌剤、接着促進剤を配合することもできる。
【0045】
[(F)成分]
(F)成分は、(A)成分とは別に必要に応じて配合される接着促進剤であり、この接着促進剤としては、通常、シランカップリング剤(例えば、(メタ)アクリロキシ官能性基、エポキシ官能性基、アミノ官能性基、メルカプト官能性基、ハロゲン原子等の官能性基含有一価炭化水素基(いわゆるカーボンファンクショナル基)を含有する加水分解性オルガノシラン化合物及びこれらの反応物など)を挙げることができ、特にγ−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−2−(アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン類、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン類、イソシアネートシラン等から選ばれる1種又は2種以上を配合することが好ましい。
【0046】
接着促進剤の配合量は、(B)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して0〜30質量部が好ましいが、配合する場合には、特に0.2〜10質量部が好ましい。接着促進剤が多すぎると組成物が硬化不良を起こす場合がある。
【0047】
本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、上記(A)〜(C)成分、必要に応じて(D)〜(F)成分及びその他の成分を、常法に準じて均一に混合することにより調製することができる。
【0048】
本発明のシラン変性ポリブタジエン化合物を含むことを特徴とする、室温硬化性樹脂組成物(又は室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物)は、難接着基材に接着可能な室温硬化性樹脂として好適である。
【0049】
本発明の室温硬化性樹脂組成物(又は室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物)は、コーティング剤、接着剤又はシーリング剤として好適に用いることができ、例えば、自動車用ECU、パワーモジュールやLED等の半導体デバイス周辺部品、コイルやコンデンサ、基盤等の電子部品等の物品に、該組成物の硬化物をコーティング、接着又はシーリングすることができる。
【0050】
例えば、本発明の室温硬化性樹脂組成物(又は室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物)を、固体基材の表面に塗布し、硬化させて被覆層(コーティング層)を形成することで、硬化物品である被覆固体基材が得られる。また、本発明の室温硬化性樹脂組成物(又は室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物)を固体基材の表面に塗布し、更にその上に他の固体基材を積層した後、組成物を硬化させて接着層を形成することで、硬化物品である接着積層体が得られる。また、本発明の室温硬化性樹脂組成物(又は室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物)を固体基材同士が接触して形成された目地に塗布し、硬化させてシーリング層を形成することで硬化物品であるシーリング固体基材が得られる。
【0051】
固体基材の具体例としては、ポリプロピレン樹脂、ポリ(エチレンテレフタレート)やポリ(ブチレンテレフタレート)等のポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ(メタクリル酸メチル)等のアクリル系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ブタジエンゴム等の有機樹脂基材;金属基材;塗料塗布面;ガラス;セラミック;コンクリート;スレート板;テキスタイル;(中空)シリカ、チタニア、ジルコニア、アルミナ等の無機フィラー;ガラス繊維をはじめとしたガラスクロス、ガラステープ、ガラスマット、ガラスペーパー等のガラス繊維製品などが挙げられ、基材の材質及び形状については特に限定されることはない。
【実施例】
【0052】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記例において、粘度は25℃において回転粘度計により測定したものである。
【0053】
[合成例1]
シラン変性ポリブタジエン化合物1の合成
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた1Lセパラブルフラスコに、B−1000(日本曹達社製、数平均分子量 1100、1,2−ビニル構造単位量:90モル%、2,3−ビニル構造(トランス1,4構造)単位数:10モル%)100g、トルエン200g、白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液(白金原子として1.6×10
-4モル)、酢酸1.0g(1.6×10
-2モル)を納め、トリエトキシシラン263g(1.6モル)を内温75〜85℃で2時間かけて滴下した。その後、80℃で1時間撹拌した。更に、減圧濃縮、濾過することで、粘度が11000mPa・sの褐色透明液体を得た。得られた反応物をGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフ)で分子量を測定した結果、数平均分子量は3900であった。
【0054】
[合成例2]
シラン変性ポリブタジエン化合物2の合成
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた1Lセパラブルフラスコに、B−1000(日本曹達社製、数平均分子量 1100、1,2−ビニル構造単位量:90モル%、2,3−ビニル構造(トランス1,4構造)単位数:10モル%)100g、トルエン200g、白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液(白金原子として0.8×10
-4モル)、酢酸0.5g(0.8×10
-2モル)を納め、トリエトキシシラン132g(0.8モル)を内温75〜85℃で2時間かけて滴下した。その後、80℃で1時間撹拌した。更に、減圧濃縮、濾過することで、粘度が8000mPa・sの褐色透明液体を得た。得られた反応物をGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフ)で分子量を測定した結果、数平均分子量は2500であった。
【0055】
[実施例1]
粘度50,000mPa・sの分子鎖両末端が水酸基(シラノール基)で封鎖されたジメチルポリシロキサン60質量部(以下、部と示す)と、粘度100mPa・sの分子鎖両末端がトリメチルシリル基で封鎖されたジメチルポリシロキサン25部と、表面疎水化処理シリカ10部を加えて常圧下にて30分混合した後、減圧下にて再度15分混合した。合成例1のシラン変性ポリブタジエン化合物1を0.5部と、メチルトリ(メチルエチルケトオキシム)シラン4部、アミノプロピルトリエトキシシラン0.5部を添加し、常圧下にて10分混合した後、減圧下で30分混合した。減圧混合終了後、ジブチル錫ジラウレート0.1部を加え、減圧下に60分混合して組成物1を得た。
【0056】
[実施例2]
合成例1のシラン変性ポリブタジエン化合物1の添加部数を1.0部とした以外は実施例1と同様にして組成物2を調製した。
【0057】
[実施例3]
合成例1のシラン変性ポリブタジエン化合物に変えて合成例2のシラン変性ポリブタジエン化合物2を0.5部添加した以外は実施例1と同様にして組成物3を調製した。
【0058】
[実施例4]
合成例2のシラン変性ポリブタジエン化合物2の添加部数を1.0部とした以外は実施例
3と同様にして組成物4を調製した。
【0059】
[比較例1]
シラン変性ポリブタジエン化合物を添加しなかった以外は実施例1と同様にして組成物5を調製した。
【0060】
[比較例2]
合成例1のシラン変性ポリブタジエン化合物1の添加部数を0.05部とした以外は実施例1と同様にして組成物6を調製した。
【0061】
[比較例3]
合成例2のシラン変性ポリブタジエン化合物2の添加部数を0.05部とした以外は実施例
3と同様にして組成物7を調製した。
【0062】
〔試験〕
実施例1〜4及び比較例1〜3で調製された各組成物を板状の被着体(材質:ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン、ブチルゴム、アクリル、ガラス、アルマイト)に塗布し、23℃、50%RHで7日間養生後、接着性を確認した。
【0063】
接着性は、JIS K−5600のクロスカット法(碁盤目(25升)テープ剥離テスト)に準拠して調べた。このとき、○:接着(剥離なし)、△:一部剥離(剥離面積30%以下)、×:剥離(剥離面積30%超)で評価した。
これらの結果を下記表1に示した。
【0064】
【表1】
【0065】
表1の結果より、実施例1〜4は対応する比較例1と比べて、難接着基材に対する接着性が高いことが明らかになった。
【0066】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。