(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
充填領域を形成する工程において、前記蛍光体層の上面に垂直をなす一断面視において、前記透光性材料の面積と前記蛍光体粒子の面積との比率(透光性材料の面積/蛍光体粒子の面積)が1/17〜5/4となるように、前記透光性材料を前記空隙の一部に充填する請求項1又は2に記載の波長変換部材の製造方法。
前記蛍光体層を形成する工程において、前記蛍光体粒子と揮発性部材との混合物を前記基体の上面に塗布した後、前記揮発性部材の少なくとも一部を揮発させることにより、前記蛍光体層を前記基体の上面に形成する請求項1乃至3のいずれか一項に記載の波長変換部材の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について適宜図面を参照して説明する。但し、以下に説明する実施形態は、本発明の技術思想を具体化するためのものであって、特定的な記載がない限り、本発明を以下のものに限定しない。また、図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張していることがある。
【0010】
図1は、本実施形態に係る製造方法によって得られる波長変換部材10の概略断面図である。
波長変換部材10は、基体2と、基体2の上面に形成された蛍光体層3とを有する。蛍光体層3は、複数の蛍光体粒子31を含んでいる。複数の蛍光体粒子31の間には、空隙34が設けられている。また、蛍光体粒子31よりも屈折率が低い透光性材料32が空隙34の一部に充填されることにより、充填領域33が形成されている。
【0011】
波長変換部材10は、入射した光の一部又は全部を蛍光体層3の蛍光体粒子31によって吸収し、入射光とは異なる色の光に変換する。
【0012】
以下、波長変換部材10の製造方法について、
図2A〜2Bに示す模式断面図に基づいて詳細に説明する。
【0013】
(蛍光体層3を形成する工程)
基体2の上面に、複数の蛍光体粒子31を含む蛍光体層3を形成する。蛍光体層3を形成する工程においては、蛍光体粒子31と揮発性部材との混合物を基体2の上面に塗布し、その後、揮発性部材の少なくもと一部を揮発させることにより、基体2の上面に蛍光体粒子31の凝集体である蛍光体層3を形成することができる。これにより、空隙34を有する蛍光体層3を比較的容易に形成することができる。なお、波長変換部材10に無機フィラーや導電性粒子などの無機粒子を添加する場合は、蛍光体層3は、蛍光体粒子31と、これらの無機粒子との凝集体となる。
【0014】
揮発性部材は、蛍光体粒子31を分散させることができ、揮発性を有するものであれば特に限定されない。揮発性部材は、例えば、有機溶剤に樹脂が溶解された部材を用いることができる。このような部材としてはビヒクルを例示することができ、具体例として、エチルセルロース(樹脂)等の樹脂と、テルピオネール(溶剤)、2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール(溶剤)等の有機溶剤を用いて調合したものが挙げられる。
【0015】
揮発性部材には、蛍光体粒子31及び基体2、並びに蛍光体粒子31同士を結着させるための無機結着剤を添加することが好ましい。無機結着剤を添加することにより、蛍光体粒子31の凝集体を、後工程である充填領域33を形成する工程で充填領域33が形成されるまで、散逸させないようにすることができる。無機結着剤としては、例えば、Mgイオン、Caイオン、Srイオンなどのアルカリ土類金属イオンを用いることができる。添加したアルカリ土類金属イオンは、水酸化物や炭酸塩として析出して結着力を発揮する。これらの水酸化物や炭酸塩は、無色透明であるため、製造後の蛍光体層33中に残存しても色変換効率を低下することがない。また、無機物であるため、経時変化により色変換効率を低下させることもない。
【0016】
(充填領域33を形成する工程)
次に、空隙34が部分的に残るよう、蛍光体粒子31よりも屈折率が低い透光性材料32を空隙34の一部に充填することにより、充填領域33を形成する。充填領域33を形成する工程においては、透光性材料32を蛍光体層3の表面に塗布した後、硬化することにより形成する。
【0017】
ここで、蛍光体層3に透光性材料32を含浸させることにより、蛍光体層3を蛍光体粒子31と透光性材料32の複合的な層構造とすることができる。この時、空隙34が透光性材料32で完全に埋まらないように、透光性材料32の塗布量を調整することにより、蛍光体粒子31の表面に透光性材料32の薄膜を設けることができる。これにより、蛍光体層3に入射した光が透光性材料32により伝搬されることによる発光サイズの肥大化を抑制しつつ、蛍光体層3の上面における全反射を緩和することができ、効率良く光を外部へ取り出すことができる。なお、ここでいう発光サイズとは、波長変換部材の光強度分布において、ピーク強度の1/e
2以上に相当する範囲をいう。透光性材料32を塗布する方法としては、スプレーによる吹き付け、ポッティング、インクジェット、印刷等を用いることができる。
【0018】
上記のような方法で充填領域33を形成することにより、蛍光体層3の下面側における空隙率を、上面側における空隙率よりも高くすることができる。これにより、蛍光体層3の上面において光の取り出し効率を高めることができるとともに、蛍光体層3の下面側において光の不要な伝搬や拡散を抑制することができる。なお、本明細書において蛍光体層3の下面側、上面側とは、波長変換部材の一断面視において、蛍光体層を厚み方向に二分する仮想の直線を基準にして、それよりも下方(
図1の下方)を下面側、それよりも上方(
図1の上方)を上面側とする。
【0019】
以上のようにして形成した波長変換部材10は、光の取り出し効率及び光の利用効率に優れている。
【0020】
以下、波長変換部材10の各構成要素について説明する。
【0021】
(基体2)
蛍光体層3は
図1に示すように基体2の上面に配置する。波長変換部材10では、半導
体レーザ素子からの光を透過させる透過型の基体2を用いている。透過型の基体2として
は、例えば、無アルカリガラス、硼珪酸ガラス、石英ガラス、水晶又はサファイア等を含
むホイールを使用することができる。
【0022】
(蛍光体層3)
蛍光体層3は、蛍光体粒子31の凝集体を含む。蛍光体層3は、基体2の上面を被覆するように設けられている。蛍光体層3は、入射する光の一部又は全部を吸収し、入射した光とは異なる波長の光を発光する波長変換機能を有する層である。
【0023】
蛍光体層3は複数の蛍光体粒子31を有し、蛍光体粒子31の少なくとも一部が、透光性材料32によって被覆されている。蛍光体層3の内部において、複数の蛍光体粒子31の間に空隙34が形成されている。蛍光体層3に入射した光は、この空隙34によって散乱され、蛍光体層3に含有される蛍光体粒子31に効率的に吸収されるため、空隙34を有さない場合に比べて高い波長変換効率を得ることができる。このため、同じ波長変換効率を得るためには、空隙34を有さない場合よりも蛍光体層3の厚さを薄くすることができる。
【0024】
蛍光体層3の表面は、蛍光体粒子31の粒径に起因した凹凸が形成されている。この凹凸により、蛍光体層3の表面での全反射を低減して蛍光体層3から効率良く光を取り出すことができる。
【0025】
蛍光体層3の厚さ(光源50からの光が通過する方向であって、
図1における蛍光体層3の上下方向の長さ)は、120μm以下とすることが好ましい。これにより、蛍光体層3から厚さ方向において光を取り出しやすくすることができるので、所望の明るさを得ることができる。
【0026】
蛍光体粒子31として用いる蛍光体は、公知のもののいずれをも使用することができる。例えば、特開2013−203822号公報及び特開2014−135400号公報等に例示したものを利用することができる。具体的には、セリウムで賦活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)系蛍光体、セリウムで賦活されたルテチウム・アルミニウム・ガーネット(LAG)、カルシウム‐α、ユウロピウムで賦活されたシリケート((Sr,Ba)
2SiO
4:Eu)系蛍光体、αサイアロン系又はβサイアロン系等の酸窒化物蛍光体、(Ba,Sr,Ca)
2Si
5N
8:Eu系、CASN(CaAlSiN
3:Eu(Ce))系又はSCASN((Sr,Ca)AlSiN
3:Eu(Ce))系蛍光体等の窒化物系蛍光体、KSF系蛍光体(K
2SiF
6:Mn)、硫化物系蛍光体等が挙げられる。また、II−VI族、III−V族、IV−VI族半導体、具体的には、CdSe、コアシェル型のCdS
xSe
1−x/ZnS、GaP等のナノクリスタル、量子ドットと称される発光物質を用いてもよい。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。特に、紫外光から青色光を吸収して、青色光から赤色光を放出する材料であることが好ましい。
【0027】
蛍光体粒子31は、平均粒径が1〜50μm程度のものが好ましく、5〜20μm程度のものがより好ましい。平均粒径は、フィッシャー法(Fisher Sub-Sieve Sizer:F.S.S.S.)により測定することができる。フィッシャー法による平均粒径は、例えば、Fisher Scientific社製Fisher Sub−Sieve Sizer Model 95を用いて測定される。
【0028】
蛍光体粒子31は、平均粒径が1〜50μmであり、用いる蛍光体粒子31の全質量の50%以上の粒子の粒径が1μm以上であるものが好ましい。このような蛍光体粒子31を用いることにより、空隙34を有する蛍光体層3を比較的容易に形成することができる。
【0029】
蛍光体層3には、無機フィラーなどが含まれていてもよい。例えば、高屈折率の無機フィラーの添加によって、蛍光体層3に入射した光が蛍光体で変換された光を散乱させ、光の混合を促進させて、色むらをなくすことができる。高熱伝導の無機フィラーの添加によって、ストークスロスによる発熱を効率的に基体2に伝導することで、放熱性を向上させることができる。無機フィラーの添加によって、蛍光体層3中に占める空隙34の割合や形状、蛍光体層3の表面の凹凸形状等を調整することができる。
【0030】
高屈折率の無機フィラーとしては、例えばTiO
2、Ta
2O
5、Nb
2O
5、ZrO
2等の酸化物、SiC、ダイヤモンド等が挙げられる。高熱伝導の無機フィラーとしては、AlN、GaN等の窒化物、SiC、ダイヤモンド等が挙げられる。これらは単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。無機フィラーは、蛍光体粒子31の粒径と同程度のものを用いることができる。
【0031】
(透光性材料32)
透光性材料32は、蛍光体粒子31の間の空隙34の一部に充填されている。透光性材料32としては光透過率が高いものが好ましい。例えば、シリコーン樹脂若しくはエポキシ樹脂からなる有機材料、又はSiO
2、Al
2O
3若しくはガラスを用いることができ、中でもシリコーン樹脂を用いるのが好ましい。
【0032】
透過型の波長変換部材の場合、蛍光体層3の上面に垂直をなす一断面視において、透光性材料32の面積と蛍光体粒子31の面積との比率(透光性材料32の面積/蛍光体粒子31の面積)は、1/17〜5/4とすることが好ましい。これにより、発光サイズの肥大化の抑制と高い光取り出し効率の両方をバランスよく達成することができる。
【0033】
透光性材料32は、蛍光体粒子31の屈折率をn1、透光性材料32の屈折率をn2、空隙34の屈折率をn3としたときに、n1>n2>n3の関係を有するような材料を選択する。このように構成することにより、蛍光体粒子31、透光性材料32及び空隙34の各界面で全反射が低減され、蛍光体層3の上面方向に光を効率よく取り出すことができる。一方、波長変換部材10中の透光性材料32の含有量を多くすると、波長変換部材10の内部を光が伝搬し易くなるが、本実施形態によれば空隙34により光の伝搬が抑制できるので、発光サイズの肥大化を抑制しつつ、光取り出し効率を高めることができる。
【0034】
(発光装置100)
図3に基づいて、波長変換部材10を用いた発光装置100について説明する。発光装置100は、主として、光源50と、上述した波長変換部材10とを備える。発光装置100は、光源50が発光した光を波長変換部材10に入射させ、入射光を波長変換部材10によって波長変換して、入射光とは異なる波長の光を出力する。
図3に示す波長変換部材10は、基体2が円盤状であり、その中心に回転軸を備えている。波長変換部材10は、回転軸を中心として回転し、光源50からの光の照射位置が時間とともに移動するように構成されている。ここでは、透過型の基体2における回転軸の周囲に蛍光体層3を配置している。
【0035】
(光源50)
発光装置100では、励起光源50として半導体レーザ素子を用いている。一般に半導体レーザ素子は光の放射角が狭いため、波長変換部材に光が照射される領域を小さくすることができる。半導体レーザ素子から出射される光の主波長は、例えば、400nm〜480nmの範囲とすることができる。半導体レーザ素子は、1個のみ配置してもよく、複数個並べて配置してもよい。
【0036】
(レンズ60)
発光装置100は、波長変換部材10からの光を制御するレンズ60を備えている。レンズ60は半導体レーザ素子からの光および蛍光体粒子31からの光の配向を制御するための部材である。波長変換部材10から発する光は一定の広がりをもって放出するため、レンズ60への光の取り込みを考慮して、波長変換部材10に近い位置にレンズ60を配置することが好ましい。これにより、光の広がりが小さいうちにレンズ60に集光されるので、レンズ60を小型化でき、発光装置100の小型化とコストの低減を両立できる。なお、レンズ60は単数のレンズであっても複数枚のレンズであってもよい。
【0037】
レンズ60の材料は、樹脂、ガラスなどが挙げられる。短波長の光、例えば400〜480nmの光を本発明の光源50として使用する場合は、短波長の光に対する耐性が高いガラスを用いるのが好ましい。レンズ60としては、コリメートレンズ、集光レンズ、ロッドレンズなど各種レンズを用いることができる。
【0038】
(フィルタ)
光をより効率よく取り出すために、蛍光体層3の上面や下面には用途に合わせたフィルタを配置することができる。フィルタとしては、所定の波長よりも短波長の光を透過し長波長の光を反射するショートパスフィルタ、所定の波長よりも長波長の光を透過し短波長の光を反射するロングパスフィルタ、特定範囲の波長の光のみを透過するバンドパスフィルタ、無反射フィルタなどが挙げられる。
【0039】
図4は、フィルタの配置の一例を示す概略断面図である。光源50と蛍光体層3との間には、光源50からの光を透過し蛍光体層3からの光を反射するショートパスフィルタを第1フィルタ41として設けることができる。このようにすることで、下側へと向かう光も無駄なく上側へと取り出すことができる。
【0040】
また、蛍光体層3とレンズ60との間には、光源50からの光を反射し蛍光体層3からの光を透過するロングパスフィルタを第2フィルタ42として設けることができる。これにより、波長変換されていない光を蛍光体層3へと反射し、励起させることができる。特に、第1フィルタ41と組み合わせることにより、反射し励起させた光も再度第1フィルタ41で反射させることができるため、波長変換された光を増やすことができる。
【0041】
第2フィルタ42としては、特定範囲の波長の光のみを透過させるバンドパスフィルタを蛍光体層3とレンズ60との間に設けることもできる。つまり、必要な範囲の波長よりも短波又は長波の光を反射させるフィルタとすることもできる。これにより、放出される波長幅を制御することができ、所望の発光を放出することができる。
【0042】
第2フィルタ42と蛍光体層3との間には透明層を介在させることができる。透明層を設けることにより、蛍光体層3の上面を透明層で平坦化させることができ、第2フィルタ42の効果をより得やすくすることができる。
【0043】
(プロジェクタ200)
図5に基づいて、発光装置100を用いたプロジェクタ200について説明する。プロジェクタ200は、主として、上述した発光装置100と、レンズ70と、合波光学部品80とを備える。
【0044】
レンズ70は、発光装置100が出射する光を集光する集光レンズである。レンズ70は、単数のレンズであっても複数枚のレンズであってもよい。レンズ70は、合波光学部品80の入射側に配置され、レンズ70で集光された光は合波光学部品80の入射面に照射される。合波光学部品80は、レンズ70で集光された光を合波するものであり、例えばロッドインテグレータ又はライトパイプからなる。
【0045】
プロジェクタ200は、光変調器や投射レンズをさらに備えることができる。光変調器は、合波光学部品80で合波された光を変調するものである。光変調器は、例えばデジタルマイクロミラーデバイス(DMD)や液晶素子などからなる。投射レンズは、光変調器で変調された光を図示しないスクリーンに投射するためのレンズである。
【実施例】
【0046】
以下、本発明に係る実施例について詳述する。
【0047】
(実施例1)
図1は、実施例1に係る製造方法により得られた波長変換部材10を示す概略断面図である。
揮発性部材として、有機溶剤と樹脂とからなるビヒクルを用いた。揮発性部材には、ホウ酸系やアルミナ系の結着剤を少量添加した。この揮発性部材10gをバインダとして、平均粒径が10μmのYAG蛍光体20gを混合したものを、スクリーン印刷機でガラス製の基体2に揮発後の蛍光体層3の膜厚が約70μmとなるように塗布した。そして、揮発性部材を揮発させることにより、蛍光体層3を形成した。このように形成した蛍光体層3では、基体2の側に比較的多くの空隙が残る。
【0048】
次に、蛍光体層3に、スプレーによる吹き付けにより、フェニル系シリコーン樹脂からなる透光性材料32を塗布した。このとき、透光性材料32の塗布量は、平板状に透光性部材32を形成した場合に膜の厚みが約10μmとなるように調整した。さらに、180℃で5時間加熱することで透光性材料32を硬化させて充填領域33を形成した。
【0049】
得られた波長変換部材10をプロジェクタのカラーホイールとして用い、このカラーホイールを7200rpmで回転させた状態で、青色半導体レーザ素子(波長:445nm、投入電流:1mA)の光を照射して、波長変換部材を発光させた。波長変換部材の発光画像を解析し、光強度分布におけるピーク強度の1/e
2以上に相当するピクセルの数を発光サイズとすると、発光サイズは132であった。
【0050】
さらに、波長変換部材10を
図5に示すプロジェクタ200の波長変換部材10として用い、光源50として青色半導体レーザ素子(波長:445nm、出力:72W)を用いたときのプロジェクタの出力を測定した。後述する比較例1の出力を100%とした場合の実施例1の出力は、106.9%であった。
【0051】
(実施例2)
実施例2は、実施例1と比べて、透光性材料32の塗布量を、平板状に透光性部材32を形成した場合に形成される膜の厚みが23μmになるように調整した点が異なる。このように形成した蛍光体層3では、実施例1ほどではないものの、基体2の側に空隙が残る。得られた波長変換部材の発光サイズは、143であった。また、この波長変換部材を用いたプロジェクタの出力は、比較例1の出力に対する相対値が106.3%であった。
【0052】
(実施例3)
実施例3は、実施例1と比べて、透光性材料32の塗布量を、平板状に透光性部材32を形成した場合に膜の厚みが29μmになるように調整した点が異なる。このように形成した蛍光体層3では、実施例2ほどではないものの、基体2の側に空隙が残る。得られた波長変換部材の発光サイズは、146であった。また、この波長変換部材を用いたプロジェクタの出力は、比較例1の出力に対する相対値が106.0%であった。
【0053】
(比較例1)
比較例1として、充填領域33を形成しない点以外は実施例1と同様に波長変換部材を形成した。得られた波長変換部材の発光サイズは、128であった。
【0054】
(比較例2)
比較例2として、空隙を有する蛍光体層3の代わりに、実質的に空隙を有さない蛍光体と樹脂との混合物を用いた点以外は実施例1と同様に波長変換部材を形成した。具体的には、以下の手順により波長変換部材を形成した。シリコーン樹脂10gをバインダとして、粒径10μmのYAG蛍光体20gを混合したものを、スクリーン印刷機でガラス製の基体2に塗布した。さらに、180℃で5時間加熱することでシリコーン樹脂を硬化させた。得られた蛍光体層3は、平均110μmの厚みであった。得られた波長変換部材の発光サイズは、153であった。また、この波長変換部材を用いたプロジェクタの出力は、比較例1の出力に対する相対値が96.6%であった。
【0055】
各実施例と比較例より得られる発光サイズとプロジェクタの出力の関係を表1に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
表1に示すように、いずれの実施例においても、充填領域33を形成しない比較例1に比べて出力が向上した。また、いずれの実施例においても、蛍光体層3が蛍光体と樹脂を混合して成形したものである比較例2に比べて発光サイズが小さくなった。これより、実施形態1〜3では、出力と発光サイズの双方を制御できることが理解できる。