(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
医療分野において、生体組織や臓器の修復に人工材料が用いられることがある。これにより、生体組織や臓器がその機能を失い、又は大きな損傷を受けた場合でも、医療用の人工材料によってこれらの組織や臓器を置換し、又は再生することが可能となる。
例えば、特許文献1には、三次元網状構造を有する均質な多孔体からなる組織工学用スキャフォールド材(細胞足場材)及びそれを用いた人工血管が記載されている。
【0003】
一方で、生体材料は多くの血液に接触する。このため、生体材料には、抗血栓性や抗炎症性、すなわち高い血液適合性が要求される。
血液適合性の高い材料として、アルミナ(Al
2O
3)が知られている(特許文献2及び非特許文献1参照)。
例えば、特許文献2には、アルミニウム基金属でできた芯部と、アルミナよりなる表面層とからなる生体用人工弁が記載されている。また、同文献には、強固な表面層が形成できる成膜法として、スパッタ蒸着、イオンプレーティングが挙げられている。
また、非特許文献1には、スパッタ蒸着で形成されたアルミナ膜は血液適合性が高い旨、記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、アルミナは高い硬度を有するため、細胞足場材の被膜として用いられた場合、柔軟性や弾性などの細胞足場材特有の力学的特性が変化し、問題となることがあった。
【0007】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、細胞足場材の力学的特性を維持しつつ、高い血液適合性を有する生体材料、及びその製造方法、並びに人工血管用材料の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る生体材料の製造方法は、細胞足場材を準備する工程を含む。
上記細胞足場材の表面に、アルミニウムと酸素の化合物を含む無機膜が不連続に形成される。
【0009】
上記生体材料の製造方法は、細胞足場材上に無機膜を不連続に形成する工程を含むため、細胞足場材の柔軟性や弾性等、力学的特性を維持することができる。これにより、所望の組織や臓器において、適切な細胞の足場となり得る生体材料を提供することができる。
また、無機膜は、アルミニウムと酸素の化合物を含むことから、抗血栓性及び抗炎症性等の血液適合性を高めることができる。したがって、上記生体材料は、血管等の血液に多く接触する部位にも十分に適用することができる。
【0010】
上記生体材料の製造方法においては、上記無機膜を、ALD法により形成してもよい。
これにより、不連続でかつ薄い膜を容易に形成することができる。
【0011】
この場合、上記無機膜を、3nm以下の厚みで形成するように制御してもよい。
これにより、膜厚を制御することによって不連続な膜を形成することができる。
【0012】
また、上記細胞足場材は、セグメント化ポリウレタンを含む繊維により構成されていてもよい。
これにより、生体適合性が高く、かつ細胞接着性の高い細胞足場材を適用することができる。
【0013】
本発明の他の形態に係る人工血管用材料の製造方法は、細胞足場材を準備する工程を含む。
上記細胞足場材の表面に、アルミニウムと酸素の化合物を含む無機膜が不連続に形成される。
上述のように、上記製造方法により、血液適合性が高く、人工血管用材料として要求される柔軟性を有する人工血管用材料を製造することができる。
【0014】
本発明のさらに他の形態に係る生体材料は、
細胞足場材と、
アルミニウムと酸素の化合物を含み、上記細胞足場材の表面に不連続に形成された無機膜と
を具備する。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、細胞足場材の力学的特性を維持しつつ、高い血液適合性を有する生体材料、及びその製造方法、並びに人工血管用材料の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[生体材料]
図1Aは、本発明の一実施形態に係る生体材料を模式的に示す図であり、
図1Bは、
図1Aの拡大図である。
生体材料1は、例えば、人工血管又は人工皮膚等の人工臓器等に用いられる生体材料であり、患者自身の細胞を接着させることが可能なものである。生体材料1の例として、人工血管用材料が挙げられる。生体材料1は、後述するように、血液が豊富な組織に要求される高い抗血栓性及び抗炎症性を供え、かつ所望の組織に適合できる柔軟性を有する。
生体材料1は、
図1Aに示すように、例えばシート状に構成される。この場合、生体材料1の厚みは特に限定されず、例えば100〜500μmである。あるいは、生体材料1は、チューブ状等、他の形状を有していてもよい。
図1Bに示すように、生体材料1は、細胞足場材2と、無機膜3とを有する。
【0018】
細胞足場材2は、細胞接着が可能な基材である。細胞足場材2は、適用される組織に応じた柔軟性や弾性などの力学的特性を有するが、例えば全体として柔軟であり、わずかな外力により変形可能に構成される。
細胞足場材2は、例えば全体としてシート状に構成される。この場合、細胞足場材2の厚みは特に限定されず、例えば100〜500μmである。あるいは、細胞足場材2は、チューブ状等、他の形状を有していてもよい。
【0019】
図2は、細胞足場材2の拡大図である。
細胞足場材2は、微小な多孔質構造を有する。細胞足場材2は、同図に示すように、多孔質構造として、微小な繊維21が紡糸された構造を有していてもよい。あるいは、細胞足場材2は、微小な網状構造、ハニカム構造、スポンジ状構造等を有していてもよい。このような多孔質構造により、細胞足場材2の表面積を大きくし、細胞接着性を高めることができる。
細胞足場材2が繊維21により構成される場合、繊維21の径の平均値は、例えば50nm〜10μm程度とすることができる。
【0020】
細胞足場材2は、生体適合性に優れた材料を含んでいてもよい。このような材料としては、例えば、ポリウレタン、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)(PHEMA)、ポリ乳酸(例えばポリ−L−乳酸、PLLA)、ポリγグルタミン酸(PGA)、ポリ乳酸・グリコール酸(Copoly lactic acid/glycolic acid、PLGA)、ポリカプロラクトン、コラーゲン、アルギン酸、ゼラチン、エラスチン、キチン、キトサン、コンドロイチン硫酸、ペクチン、ヒアルロン酸、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene、PTFE)、ポリオレフィン、フッ素樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂等が挙げられる。また、細胞足場材2は、これらの材料のうちの複数の材料を含んでいてもよく、例えばある材料で形成された基材上に他の材料が被覆されていてもよい。
特に、細胞足場材2は、セグメント化ポリウレタン(Segmented Polyurethane、SPU)を含む繊維により構成されていてもよい。セグメント化ポリウレタンは、生体適合性が高く、微小な繊維構造を形成するのに適している。
【0021】
図1Bは、細胞足場材2の繊維21と、表面2aの無機膜3とを表している。
同図に示すように、無機膜3は、アルミニウム(Al)と酸素(O)の化合物を含み、細胞足場材2の表面2aに不連続に形成される。本実施形態において、細胞足場材2の表面2aは、細胞足場材2を構成する繊維21の表面となり得る。
無機膜3において、上記化合物におけるAlとOの原子数比は特に限定されない。なお、例えばAl:O=2:3となる場合、当該化合物はアルミナとなり得る。
無機膜3の細胞足場材2の表面2aにおける平面形状も特に限定されない。例えば無機膜3は、同図に示すように、複数の島状に構成されてもよい。あるいは、無機膜3は、その他のパターンを有していてもよい。
【0022】
無機膜3は、ALD(Atomic layer Deposition、原子層堆積)法により形成されていてもよい。これにより、不連続で非常に薄い膜を比較的容易に形成することができる。また、無機膜3は、ALD法の他、スパッタ法、蒸着法等のPVD法や、各種CVD法により形成されてもよい。
また、無機膜3は、3nm以下の厚みで形成されてもよく、例えば0.5nm以下の厚みで形成されてもよい。ALD法において無機膜3を3nm以下の厚みで形成するように制御した場合、不連続な膜を形成することができる。
【0023】
[生体材料の製造方法]
図3は、上記構成を有する生体材料1の製造方法を示すフローチャートである。以下、同図を参照し、説明する。
【0024】
まず、細胞足場材2を準備する(ST11)。
細胞足場材2は、市販されているものを購入してもよいし、作製してもよい。一例として、SPUを含む細胞足場材2は、エレクトロスピニング法を用いて以下のように作製することができる(特開2013−122098号公報参照)。
まず、溶質としてSPU、溶媒としてテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran、THF)及び2,5−ジメチルフラン(dimethylfuran、DMF)を含む高分子溶液を生成する。続いて、当該高分子溶液をニードル型電極が先端に取り付けられたシリンジポンプに収容する。このシリンジポンプと、当該シリンジポンプから離間された陰極との間に高電圧を印加しつつ、高分子溶液を噴霧することで陰極上にSPUの繊維を紡糸することができる。このようにして、SPU繊維を含むシート状の細胞足場材2を得ることができる。
【0025】
続いて、細胞足場材2の表面に、アルミニウムと酸素の化合物を含む無機膜3を不連続に形成する(ST12)。本工程において、無機膜3は、例えばALD法により形成される。ALD法は、例えば、熱ALD法とすることができる。
無機膜3をALD法で形成する際の成膜条件は、特に限定されない。例えば、反応ガスは、トリメチルアルミニウム(TMA:Trimethylaluminium)及び水(H
2O)を用いることができる。成膜温度は、細胞足場材2の物性等を鑑みて設定することができ、例えば150℃以下、さらに100℃以下とすることができる。
【0026】
図4は、本工程に用いられる熱ALD装置の一例を示す模式的な図である。
同図に示すように、熱ALD装置100は、チャンバ101と、サンプル支持部102と、排気口103と、ガス供給部104とを備える。
チャンバ101は、真空チャンバであって、排気口103に接続された真空ポンプによって排気されることが可能に構成される。なお、図示しないが、熱ALD装置100は、チャンバ101全体を加熱する加熱源を有している。
サンプル支持部102は、サンプルSとしての細胞足場材2を支持する。熱ALD装置100のサンプル支持部102は、例えば、通常基板を支持するステージ102aと、ステージ102a上に配置されサンプルSの一部を支持することが可能な複数の支持具102bとを有していてもよい。これにより、サンプルSの、チャンバ101の天面に対向する面のみならず、その反対のステージ102aに対向する面にまでガスを流入させ、サンプルS全体に成膜することが可能となる。
排気口103は、例えば、チャンバ101の底部に配置されていてもよい。
ガス供給部104は、チャンバ101の内部に配置されたガスノズル105と、ガスノズル105に接続された2本のガス供給管106a、106bとを有する。ガスノズル105は、サンプルSの一主面と平行になるように配置されている。ガス供給管106a,106bは、それぞれ、反応ガスとパージガスのガス源の双方に接続されており、これらのガスを1つの供給管からガスノズル105へ供給できるように構成されている。例えば、ガス供給管106aは、TMAのガス源及びパージガスである窒素(N
2)のガス源に接続されており、ガス供給管106bは、H
2Oのガス源及びパージガスであるN
2のガス源に接続されている。
【0027】
図5は、熱ALD装置100を用いた場合の、ガスの供給タイミングの一例を示す図である。
同図に示す例では、まず、ガス供給管106aから反応ガスであるTMAを所定時間供給する。続いて、パージガスであるN
2によってTMAが排気される。なお、N
2は、排気時のみならず、反応ガスの供給時も含めて常時供給されていてもよい。
続いて、ガス供給管106bから反応ガスであるH
2Oを所定時間供給する。続いて、パージガスであるN
2によってH
2Oが排気される。
これらの工程を1サイクルとして、1原子層が形成される。従って、このサイクル数を調整することにより、無機膜3を、3nm以下の厚みで形成するように制御することができる。
【0028】
[本実施形態の作用効果]
以上のように、本実施形態の生体材料によれば、細胞足場材2の表面にアルミニウムと酸素の化合物を含む無機膜が形成されているため、血液適合性が高い。これにより、当該生体材料を生体内の血液が豊富な組織や臓器に用いた場合でも、生体材料の表面や周囲における血栓の形成や炎症反応を効果的に抑制することができる。
また、一般にアルミニウムと酸素の化合物は高い硬度を有するが、本実施形態の無機膜は不連続に形成されているため、柔軟性や弾性など、細胞足場材特有の力学的特性を損なわない。これにより、上述のように高い血液適合性を有するとともに、人工血管用材料やその他の組織に適した生体材料を提供することができる。
さらに、アルミニウムと酸素の化合物からなる無機膜は、不連続に形成されていることから、生体材料全体の変形や伸展等によって生体内で膜の一部が破損する危険性を低減することができる。これにより、耐久性及び生体への安全性の高い生体材料を提供することができる。
【実施例】
【0029】
(実施例1)
実施例1として、表1に示すように、無機膜の膜厚が0.5nmの生体材料を作製した。
まず、SPU製の細胞足場材を準備した。当該細胞足場材は、エレクトロスピニング法を用いて作製された。すなわち、溶質としてSPU(型番「NKY−26」、宇部興産株式会社製、Mn(数平均分子量)=80,000、Mw(重量平均分子量)=160,000)、溶媒としてテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran、THF)及び2,5−ジメチルフラン(dimethylfuran、DMF)を7:3の割合で含む高分子溶液を生成した。この高分子溶液を、注射針状のニードル型電極が先端に取り付けられたシリンジポンプ内に収容した。一方、円筒型の陰極板を準備し、ニードル型電極に対向するように配置した。そして、ニードル型電極を陽極、ニードル型電極と対向する陰極板を陰極として、これらの間に高電圧を印加した。続いて、高分子を噴霧し、陰極板上にナノオーダーのSPU繊維を紡糸した。陰極板を自転又は移動させることで、シート状の細胞足場材を形成した。
続いて、細胞足場材の表面に、アルミニウムと酸素の化合物を含む無機膜を不連続に形成した。本工程では、
図4で示したような熱ALD装置を用いて、表1に示すように、成膜温度60℃、成膜圧力100Paで、0.5nmの厚みとなるように制御された無機膜を形成した。なお、ガスの供給条件は、
図5に示すようなタイミングで、アルミナを形成する条件を適用した。
この生体材料を、実施例1のサンプルとした。
【0030】
【表1】
【0031】
(実施例2)
実施例1と同様にSPU製の細胞足場材を準備し、当該細胞足場材の表面に無機膜を形成し、実施例2のサンプルとした。実施例2では、表1に示すように、成膜温度を100℃とし、0.5nmの厚みとなるように制御された無機膜を形成した。
【0032】
(比較例1)
実施例1と同様にSPU製の細胞足場材を準備し、当該細胞足場材の表面に無機膜を形成し、比較例1のサンプルとした。比較例1では、表1に示すように、成膜温度を60℃とし、5nmの厚みとなるように制御された無機膜を形成した。
【0033】
(比較例2)
実施例1と同様にSPU製の細胞足場材を準備し、当該細胞足場材の表面に無機膜を形成し、比較例2のサンプルとした。比較例2では、表1に示すように、成膜温度を60℃とし、50nmの厚みとなるように制御された無機膜を形成した。
【0034】
(比較例3)
実施例1と同様にSPU製の細胞足場材を準備し、当該細胞足場材の表面に無機膜を形成し、比較例3のサンプルとした。比較例3では、表1に示すように、成膜温度を100℃とし、50nmの厚みとなるように制御された無機膜を形成した。
【0035】
(比較例4)
実施例1と同様に形成されたSPU製の細胞足場材を、比較例4のサンプルとした。
【0036】
[試験例1]
比較例4に係るSPU製の細胞足場材は、柔軟な繊維状のシートで構成される。一方で、アルミニウムと酸素の化合物であるアルミナは、比較的硬度が高いため、成膜条件によっては細胞足場材本来の柔軟性が失われる可能性がある。
そこで、試験例1として、実施例1,2及び比較例1〜3の各サンプルについて、比較例4の細胞足場材と柔軟性を比較し、同等の柔軟性を有するか否かを評価した。
表1中の「柔軟性評価」は試験例1の結果を示し、○は比較例4のサンプルと同等の柔軟性を維持していること、×は比較例4のサンプルと比較して柔軟性が消失し、硬化していることを示す。なお、柔軟性の評価は、実施例1,2及び比較例1〜3の各サンプルに係るシートにおける外力による変形のしやすさを、比較例4のサンプルと比較することにより行った。
【0037】
表1を参照し、膜厚が5nm及び50nmとなるように制御された比較例1〜3のサンプルは、いずれも硬化しており、比較例4に対して柔軟性が失われていた。
一方、膜厚が0.5nmとなるように制御された実施例1及び実施例2のサンプルは、いずれも比較例4と同等の柔軟性が維持されており、細胞足場材本来の力学的特性が維持されていた。
以上の結果より、少なくとも0.5nm以下の厚みとなるように制御して無機膜を形成することで、細胞足場材の柔軟性を維持できることが確認された。
また、ALD法で形成された膜は、3nm以下の厚みで形成するように制御した場合、不連続となることから、実施例1及び2で見られた柔軟性は、無機膜の不連続性に起因すると推認される。したがって、ALD法により3nm以下の厚みで無機膜を形成するように制御した場合、無機膜が連続的に形成されないため、それによって柔軟性を維持できるものと考えられる。
【0038】
[試験例2]
試験例2として、柔軟であることが確認された実施例1のサンプルと、比較例4のサンプルとを山羊の血管内膜にインプラントし、血液適合性を評価した。
図6は、山羊の大動脈周囲における血管の走行を示す図であり、本試験例におけるサンプルのインプラント箇所を破線で示している。同図において、符号A1は腕頭動脈、A2は上行大動脈、A3は左総頸動脈、A4は左鎖骨下動脈、A5は大動脈弓、A6は下行大動脈、S1は比較例4のサンプルの位置、S2は実施例1のサンプルの位置をそれぞれ示す。
同図に示すように、本試験例における2つのサンプルS1,S2は、下行大動脈A6の内膜に、相互に近接してインプラントされた。インプラントは、具体的には、動脈の内膜にサンプルを縫い付けることにより行った。なお、
図6では、模式的に各サンプルS1,S2の位置を示している。
インプラントから42日後、サンプルS1,S2がインプラントされた下行大動脈を摘出した。
摘出された下行大動脈の内膜を目視により確認し、各サンプルS1,S2がインプラントされた領域の内膜化や炎症反応、血栓の形成等の状態を確認した。
【0039】
図7は、摘出された下行大動脈の内膜の状態を示す写真であり、符号R1は、比較例4のサンプルがインプラントされた領域を示し、符号R2は、実施例1のサンプルがインプラントされた領域を示す。
同図に示すように、領域R1では、炎症反応(茶色の領域)や、血栓形成(赤色の領域)が見られた。
一方、領域R2では、領域R1と比較して、内膜化が促進され、炎症反応や血栓の形成が抑制されていることが確認された。
これにより、細胞足場材に上記無機膜を形成した本実施形態の生体材料は、高い血液適合性を有することが確認された。すなわち、アルミニウムと酸素の化合物を含む無機膜が、血栓の基質化による内膜形成促進効果、及び炎症反応の抑制効果を有し、抗血栓性を付加できることが確認された。
【0040】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形が可能である。
【0041】
例えば、細胞足場材の材料は、SPUに限定されない。
また、無機膜は、不連続に形成できれば、厚みは限定されず、無機膜の形成方法もALD法に限定されない。
【0042】
また、熱ALD装置の構成は上記に限定されず、例えばサンプルを立てて支持することができるように構成されていてもよい。あるいは、ガスノズルやガス供給管の配置及び構成も上記に限定されない。