特許第6584296号(P6584296)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許65842963軸能動制御型磁気軸受及びその組立方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6584296
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】3軸能動制御型磁気軸受及びその組立方法
(51)【国際特許分類】
   F16C 32/04 20060101AFI20190919BHJP
   H02K 7/09 20060101ALI20190919BHJP
   H02K 15/02 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
   F16C32/04 A
   H02K7/09
   H02K15/02 Z
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-221158(P2015-221158)
(22)【出願日】2015年11月11日
(65)【公開番号】特開2017-89766(P2017-89766A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2018年9月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100078499
【弁理士】
【氏名又は名称】光石 俊郎
(74)【代理人】
【識別番号】230112449
【弁護士】
【氏名又は名称】光石 春平
(74)【代理人】
【識別番号】100102945
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 康幸
(74)【代理人】
【識別番号】100120673
【弁理士】
【氏名又は名称】松元 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100182224
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲三
(72)【発明者】
【氏名】竹本 真紹
(72)【発明者】
【氏名】松▲崎▼ 達也
(72)【発明者】
【氏名】太田 智
(72)【発明者】
【氏名】内山 翔
【審査官】 横山 幸弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−051995(JP,A)
【文献】 特開2006−177475(JP,A)
【文献】 実開昭61−085717(JP,U)
【文献】 特開2009−278838(JP,A)
【文献】 特開2002−345188(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 32/00−32/06
H02K 7/00− 7/20
H02K 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3軸方向に軸支持力を発生する3軸能動制御型磁気軸受において、
前記軸支持力を受けて回転可能な回転子と、
前記回転子を取り囲む円筒部分と、前記円筒部分の軸方向一方向側に配置された円環状部分とを備えた第1スラスト制御用固定子と、
前記円筒部分の軸方向他方向側に取り付けられる円環状部分である第2スラスト制御用固定子と、
前記第1及び第2スラスト制御用固定子に形成される空間内に収容されるラジアル制御用固定子、ラジアル巻線、永久磁石及びスラスト巻線とを備え、
前記ラジアル制御用固定子は、略リング状であり、内周側にティースが少なくとも3個以上備えられると共に外周部に周方向等間隔にスリットが形成され、
前記ラジアル巻線は、前記ティースに各々巻回され、
前記永久磁石は、前記スリットに各々挿入され、
前記スラスト巻線の一方は、前記第1スラスト制御用固定子の前記円筒部分、前記円環状部分及び前記ラジアル制御用固定子との間において周方向に巻回され、前記スラスト巻線の他方は、前記第1スラスト制御用固定子の前記円筒部分、前記第2スラスト制御用固定子の前記円環状部分及び前記ラジアル制御用固定子との間において周方向に巻回され、
前記ラジアル巻線により前記ラジアル制御用固定子において径方向に発生するラジアル磁束と、前記永久磁石により前記ラジアル制御用固定子において放射状に、或いは、その逆に発生するバイアス磁束との重ね合わせによって生じる磁束密度の不平衡によって、前記回転子に対してラジアル方向2軸の軸支持力が発生する一方、
前記スラスト巻線により発生し、前記円環状部分から前記回転子又は前記円筒部分に向かって方向を変え、更に前記ラジアル制御用固定子へ方向を変えるスラスト磁束と、前記永久磁石により発生し、前記各円環状部分から前記回転子の中央に向かって、或いは、その逆に前記回転子の中央から前記各円環状部分に向かって方向をそれぞれ変えるバイアス磁束との重ね合わせによって生じる磁束密度の不平衡によって、前記回転子に対してスラスト方向1軸の軸支持力が発生する
ことを特徴とする3軸能動制御型磁気軸受。
【請求項2】
3軸方向に軸支持力を発生する3軸能動制御型磁気軸受において、
前記軸支持力を受けて回転可能な回転子と、
前記回転子を取り囲む円筒部分よりなる第1スラスト制御用固定子と、
前記円筒部分の軸方向一方向側に取り付けられる円環状部分である第2スラスト制御用固定子と、
前記円筒部分の軸方向他方向側に取り付けられる円環状部分である第3スラスト制御用固定子と、
前記第1、第2及び第3スラスト制御用固定子に形成される空間内に収容されるラジアル制御用固定子、ラジアル巻線、永久磁石及びスラスト巻線とを備え、
前記ラジアル制御用固定子は、略リング状であり、内周側にティースが少なくとも3個以上備えられると共に外周部に周方向等間隔にスリットが形成され、
前記ラジアル巻線は、前記ティースに各々巻回され、
前記永久磁石は、前記スリットに各々挿入され、
前記スラスト巻線の一方は、前記第1スラスト制御用固定子、前記第2スラスト制御用固定子及び前記ラジアル制御用固定子との間において周方向に巻回され、前記スラスト巻線の他方は、前記第1スラスト制御用固定子、前記第3スラスト制御用固定子及び前記ラジアル制御用固定子との間において周方向に巻回され、
前記ラジアル巻線により前記ラジアル制御用固定子において径方向に発生するラジアル磁束と、前記永久磁石により前記ラジアル制御用固定子において放射状に、或いは、その逆に発生するバイアス磁束との重ね合わせによって生じる磁束密度の不平衡によって、前記回転子に対してラジアル方向2軸の軸支持力が発生する一方、
前記スラスト巻線により発生し、前記円環状部分から前記回転子又は前記円筒部分に向かって方向を変え、更に前記ラジアル制御用固定子へ方向を変えるスラスト磁束と、前記永久磁石により発生し、前記各円環状部分から前記回転子の中央に向かって、或いは、その逆に前記回転子の中央から前記各円環状部分に向かって方向をそれぞれ変えるバイアス磁束との重ね合わせによって生じる磁束密度の不平衡によって、前記回転子に対してスラスト方向1軸の軸支持力が発生する
ことを特徴とする3軸能動制御型磁気軸受。
【請求項3】
前記永久磁石は、平板形状であることを特徴とする請求項1又は2記載の3軸能動制御型磁気軸受。
【請求項4】
請求項1記載の3軸能動制御型磁気軸受を組み立てる方法において、
(A)前記永久磁石を前記スリットに各々挿入する工程と、
(B)前記ラジアル巻線を前記ティースに各々巻回する工程と、
(C)前記スラスト巻線を第1スラスト制御用固定子内に収容する工程と、
(D)前記永久磁石が前記スリットに各々挿入されると共に前記ラジアル巻線が前記ティースに各々巻回された前記ラジアル制御用固定子を前記スラスト巻線が既に収容された前記第1スラスト制御用固定子内に更に収容する工程と、
(E)前記永久磁石が前記スリットに各々挿入されると共に前記ラジアル巻線が前記ティースに各々巻回された前記ラジアル制御用固定子及び前記スラスト巻線が既に収容された第1スラスト制御用固定子内に更に前記スラスト巻線を収容する工程と、
(F)前記永久磁石が前記スリットに各々挿入されると共に前記ラジアル巻線が前記ティースに各々巻回された前記ラジアル制御用固定子及び二つの前記スラスト巻線が既に収容された前記第1スラスト制御用固定子に前記第2スラスト制御用固定子を取り付ける工程と、
を含むことを特徴とする3軸能動制御型磁気軸受の組立方法。
【請求項5】
請求項2記載の3軸能動制御型磁気軸受を組み立てる方法において、
(G)前記永久磁石を前記スリットに各々挿入する工程と、
(H)前記ラジアル巻線を前記ティースに各々巻回する工程と、
(I)前記永久磁石が前記スリットに各々挿入されると共に前記ラジアル巻線が前記ティースに各々巻回された前記ラジアル制御用固定子を前記第1スラスト制御用固定子内に収容する工程と、
(J)前記永久磁石が前記スリットに各々挿入されると共に前記ラジアル巻線が前記ティースに各々巻回された前記ラジアル制御用固定子が既に収容された第1スラスト制御用固定子内に更に二つの前記スラスト巻線を各々収容する工程と、
(K)前記永久磁石が前記スリットに各々挿入されると共に前記ラジアル巻線が前記ティースに各々巻回された前記ラジアル制御用固定子及び二つの前記スラスト巻線が既に収容された前記第1スラスト制御用固定子に前記第2及び第3スラスト制御用固定子を取り付ける工程と、
を含むことを特徴とする3軸能動制御型磁気軸受の組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,3軸能動制御型磁気軸受及びその組立方法に関する。特に、組立性を向上させたものである。
【背景技術】
【0002】
先行技術として、特許文献1の図1には、3軸能動制御型磁気軸受が記載されている。特許文献1の要約書には、「ラジアル巻線1によりラジアル制御用固定子2において各々の軸に対して同一方向に発生するラジアル磁束Ψy,Ψxと、永久磁石3によって放射状に発生するバイアス磁束Ψbとの重ね合わせによって生じる磁束密度の不平衡によって、ラジアル方向2軸の軸支持力Fy,Fxが発生する一方、スラスト巻線5により発生し、スラスト制御用固定子4において何れか一方の円環状部分4bから円筒状回転子7、他方の円環状部分4bへ方向を変えるスラスト磁束Ψzと、永久磁石3によって発生し各円環状部分4b,4bから円筒状回転子7の中央に向かうバイアス磁束Ψbとの重ね合わせによって生じる磁束密度の不平衡によって、スラスト方向1軸の軸支持力Fzが発生する。」と記載されている。
また、特許文献2のFIG5にも、同様な3軸能動制御型磁気軸受が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−85223号公報
【特許文献2】米国特許第5514924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
先行技術である特許文献1と特許文献2では、永久磁石を磁気軸受内にリング形状に組み込む構造である。
永久磁石は、磁性体へ吸着する力が強いが、強度は弱いため、リング形状にした大形の永久磁石を磁気軸受内に組み込む場合、装置内の磁性体部品への吸着によって破損せずに、所定の位置へ永久磁石を組み込むことが難しい。
そのため、磁気軸受の組立作業が煩雑になってしまう問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する本発明の請求項1に係る3軸能動制御型磁気軸受は、3軸方向に軸支持力を発生する3軸能動制御型磁気軸受において、前記軸支持力を受けて回転可能な回転子と、前記回転子を取り囲む円筒部分と、前記円筒部分の軸方向一方向側に配置された円環状部分とを備えた第1スラスト制御用固定子と、前記円筒部分の軸方向他方向側に取り付けられる円環状部分である第2スラスト制御用固定子と、前記第1及び第2スラスト制御用固定子に形成される空間内に収容されるラジアル制御用固定子、ラジアル巻線、永久磁石及びスラスト巻線とを備え、前記ラジアル制御用固定子は、略リング状であり、内周側にティースが少なくとも3個以上備えられると共に外周部に周方向等間隔にスリットが形成され、前記ラジアル巻線は、前記ティースに各々巻回され、前記永久磁石は、前記スリットに各々挿入され、前記スラスト巻線の一方は、前記第1スラスト制御用固定子の前記円筒部分、前記円環状部分及び前記ラジアル制御用固定子との間において周方向に巻回され、前記スラスト巻線の他方は、前記第1スラスト制御用固定子の前記円筒部分、前記第2スラスト制御用固定子の前記円環状部分及び前記ラジアル制御用固定子との間において周方向に巻回され、前記ラジアル巻線により前記ラジアル制御用固定子において径方向に発生するラジアル磁束と、前記永久磁石により前記ラジアル制御用固定子において放射状に、或いは、その逆に発生するバイアス磁束との重ね合わせによって生じる磁束密度の不平衡によって、前記回転子に対してラジアル方向2軸の軸支持力が発生する一方、前記スラスト巻線により発生し、前記円環状部分から前記回転子又は前記円筒部分に向かって方向を変え、更に前記ラジアル制御用固定子へ方向を変えるスラスト磁束と、前記永久磁石により発生し、前記各円環状部分から前記回転子の中央に向かって、或いは、その逆に前記回転子の中央から前記各円環状部分に向かって方向をそれぞれ変えるバイアス磁束との重ね合わせによって生じる磁束密度の不平衡によって、前記回転子に対してスラスト方向1軸の軸支持力が発生することを特徴とする。
【0006】
上記課題を解決する本発明の請求項2に係る3軸能動制御型磁気軸受は、3軸方向に軸支持力を発生する3軸能動制御型磁気軸受において、前記軸支持力を受けて回転可能な回転子と、前記回転子を取り囲む円筒部分よりなる第1スラスト制御用固定子と、前記円筒部分の軸方向一方向側に取り付けられる円環状部分である第2スラスト制御用固定子と、前記円筒部分の軸方向他方向側に取り付けられる円環状部分である第3スラスト制御用固定子と、前記第1、第2及び第3スラスト制御用固定子に形成される空間内に収容されるラジアル制御用固定子、ラジアル巻線、永久磁石及びスラスト巻線とを備え、前記ラジアル制御用固定子は、略リング状であり、内周側にティースが少なくとも3個以上備えられると共に外周部に周方向等間隔にスリットが形成され、前記ラジアル巻線は、前記ティースに各々巻回され、前記永久磁石は、前記スリットに各々挿入され、前記前記スラスト巻線の一方は、前記第1スラスト制御用固定子、前記第2スラスト制御用固定子及び前記ラジアル制御用固定子との間において周方向に巻回され、前記スラスト巻線の他方は、前記第1スラスト制御用固定子、前記第3スラスト制御用固定子及び前記ラジアル制御用固定子との間において周方向に巻回され、前記ラジアル巻線により前記ラジアル制御用固定子において径方向に発生するラジアル磁束と、前記永久磁石により前記ラジアル制御用固定子において放射状に、或いは、その逆に発生するバイアス磁束との重ね合わせによって生じる磁束密度の不平衡によって、前記回転子に対してラジアル方向2軸の軸支持力が発生する一方、前記スラスト巻線により発生し、前記円環状部分から前記回転子又は前記円筒部分に向かって方向を変え、更に前記ラジアル制御用固定子へ方向を変えるスラスト磁束と、前記永久磁石により発生し、前記各円環状部分から前記回転子の中央に向かって、或いは、その逆に前記回転子の中央から前記各円環状部分に向かって方向をそれぞれ変えるバイアス磁束との重ね合わせによって生じる磁束密度の不平衡によって、前記回転子に対してスラスト方向1軸の軸支持力が発生することを特徴とする。
【0007】
上記課題を解決する本発明の請求項3に係る3軸能動制御型磁気軸受は、請求項1又は2において、前記永久磁石は、平板形状であることを特徴とする。
【0008】
上記課題を解決する本発明の請求項4に係る3軸能動制御型磁気軸受の組立方法は、請求項1記載の3軸能動制御型磁気軸受を組み立てる方法において、(A)前記永久磁石を前記スリットに各々挿入する工程と、(B)前記ラジアル巻線を前記ティースに各々巻回する工程と、(C)前記スラスト巻線を第1スラスト制御用固定子内に収容する工程と、(D)前記永久磁石が前記スリットに各々挿入されると共に前記ラジアル巻線が前記ティースに各々巻回された前記ラジアル制御用固定子を前記スラスト巻線が既に収容された前記第1スラスト制御用固定子内に更に収容する工程と、(E)前記永久磁石が前記スリットに各々挿入されると共に前記ラジアル巻線が前記ティースに各々巻回された前記ラジアル制御用固定子及び前記スラスト巻線が既に収容された第1スラスト制御用固定子内に更に前記スラスト巻線を収容する工程と、(F)前記永久磁石が前記スリットに各々挿入されると共に前記ラジアル巻線が前記ティースに各々巻回された前記ラジアル制御用固定子及び二つの前記スラスト巻線が既に収容された前記第1スラスト制御用固定子に前記第2スラスト制御用固定子を取り付ける工程と、を含むことを特徴とする。
【0009】
上記課題を解決する本発明の請求項5に係る3軸能動制御型磁気軸受の組立方法は、請求項2記載の3軸能動制御型磁気軸受を組み立てる方法において、(G)前記永久磁石を前記スリットに各々挿入する工程と、(H)前記ラジアル巻線を前記ティースに各々巻回する工程と、(I)前記永久磁石が前記スリットに各々挿入されると共に前記ラジアル巻線が前記ティースに各々巻回された前記ラジアル制御用固定子を前記第1スラスト制御用固定子内に収容する工程と、(J)前記永久磁石が前記スリットに各々挿入されると共に前記ラジアル巻線が前記ティースに各々巻回された前記ラジアル制御用固定子が既に収容された第1スラスト制御用固定子内に更に二つの前記スラスト巻線を各々収容する工程と、(K)前記永久磁石が前記スリットに各々挿入されると共に前記ラジアル巻線が前記ティースに各々巻回された前記ラジアル制御用固定子及び二つの前記スラスト巻線が既に収容された前記第1スラスト制御用固定子に前記第2及び第3スラスト制御用固定子を取り付ける工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、ラジアル制御用固定子の外周部のスリットに永久磁石を各々挿入し、これら永久磁石を既に組み込んだラジアル制御用固定子をスラスト制御用固定子に形成される空間内に収容する構成である。
これにより、大形なリング形状の永久磁石を使用する従来構造に比べて、磁気軸受の組立性が向上する。
【0011】
特に、平板形状の小型の永久磁石を使用すると、組立性がより一層向上する。
更に、ラジアル制御用固定子の内周側のティースにラジアル巻線を各々巻回し、これら永久磁石及びラジアル巻線を既に組み込んだラジアル制御用固定子をスラスト制御用固定子に形成される空間内に収容する構成とすれば、組立性がより一層向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1(a)は、本発明の第1の実施例に係る3軸能動制御型磁気軸受の外観斜視図、図1(b)は、本発明の第1の実施例に係る3軸能動制御型磁気軸受の縦断面構造を示す斜視図である。
図2】本発明の第1の実施例に係る3軸能動制御型磁気軸受を組み立てる工程を示す斜視図である。
図3】本発明の第1の実施例に係る3軸能動制御型磁気軸受を組み立てる工程を示す斜視図である。
図4】本発明の第1の実施例に係る3軸能動制御型磁気軸受を組み立てる工程を示す斜視図である。
図5】本発明の第1の実施例に係る3軸能動制御型磁気軸受を組み立てる工程を示す斜視図である。
図6】本発明の第1の実施例に係る3軸能動制御型磁気軸受を組み立てる工程を示す斜視図である。
図7】本発明の第1の実施例に係る3軸能動制御型磁気軸受を組み立てる工程を示す斜視図である。
図8】スラスト支持力発生原理を説明するための3軸能動制御型磁気軸受の縦断面図である。
図9図9(a)はラジアル支持力発生原理を説明するための3軸能動制御型磁気軸受の縦断面図、図9(b)はラジアル支持力発生原理を説明するための同図(a)中のB−B線の横断面図である。
図10】本発明の第2の実施例に係る3軸能動制御型磁気軸受を組み立てる工程を示す斜視図である。
図11】本発明の第2の実施例に係る3軸能動制御型磁気軸受を組み立てる工程を示す斜視図である。
図12】本発明の第2の実施例に係る3軸能動制御型磁気軸受を組み立てる工程を示す斜視図である。
図13】本発明の第2の実施例に係る3軸能動制御型磁気軸受の外観斜視図である。
図14】本発明の第2の実施例に係る3軸能動制御型磁気軸受の縦断面である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の3軸能動制御型磁気軸受について、図面に示す実施例を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0014】
本発明の第1の実施例に係る3軸能動制御型磁気軸受を図1に示す。図1(a)が3軸能動制御型磁気軸受の外観斜視図、図1(b)が3軸能動制御型磁気軸受の縦断面構造を示す斜視図である。
【0015】
本実施例の3軸能動制御型磁気軸受は、図1に示す通り、第1スラスト制御用固定子である第1スラストステータコア(材質:磁性材 無垢材)1と、第2スラスト制御用固定子である第2スラストステータコア(材質:磁性材 無垢材)2と、二つのスラスト巻線3,4と、ラジアル制御用固定子であるラジアルステータコア(材質:磁性材 積層鋼板)5と、複数のラジアル巻線6と、複数の永久磁石7と、回転子であるロータコア(材質:磁性材 無垢材)8と、シャフト(材質:磁性材 無垢材)9とから構成される。
【0016】
スラスト巻線3,4、ラジアルステータコア5、ラジアル巻線6及び永久磁石7は、第1スラストステータコア1及び第2スラストステータコア2に形成される空間内に収容される(図8図9参照)。
ロータコア8及びシャフト9は、第1スラストステータコア1及び第2スラストステータコア2よりなる円筒状部分の中心を貫通している(図8図9参照)。
この3軸能動制御型磁気軸受においては、軸支持力の発生原理は後述する通りであり、ロータコア8及びシャフト9が3軸支持力を受けて回転可能である。
【0017】
この3軸能動制御型磁気軸受は、図2図7に示すように、次の手順で組み立てられる。
先ず、図2に矢印で示すように、径方向に磁化された複数の永久磁石7をラジアルステータコア5の外周部に周方向等間隔に形成されたスリット5aへ各々挿入する(埋め込む)。
ラジアルステータコア5は、略リング状であり、スリット5aに挿入された永久磁石7の間には隙間を設ける。各永久磁石7として、平板形状の小型のものを使用すると、簡単に挿入でき、組立性が向上する。
【0018】
次に、図3に示すように、ラジアルステータコア5の内周側に形成された4ヶ所のティース5bにラジアル巻線6を各々巻く(巻回する)。
ラジアルステータコア5は、ティース5bを少なくとも3個以上備える。
【0019】
引き続き、図4に矢印で示すように、半径方向に巻いた一方のスラスト巻線3を第1スラストステータコア1に入れ(収容し)、接着剤で固定する。
第1スラストステータコア1は、ロータコア8及びシャフト9を取り囲む円筒部分1aと、円筒部分1aの軸方向一方向側(紙面奥側)内向きに配置された円環状部分1bとからなる(図1図8図9参照)。
【0020】
そして、図5に矢印で示すように、スラスト巻線3を既に収容した第1スラストステータコア1に、永久磁石7及びラジアル巻線6を既に組み込んだラジアルステータコア5を圧入または焼嵌めにより収容する。
永久磁石7及びラジアル巻線6は、ラジアルステータコア5に既に組み込まれた状態で、第1スラストステータコア1に収容されるので、取り扱いが容易であり、組立性が向上する。
特に、リング形状にした大形の永久磁石を磁気軸受内に組み込む場合には、装置内の磁性体部品への吸着によって破損せずに、所定の位置へ永久磁石を組み込むことが難しかったが、そのようなことも起こらない。
【0021】
更に、図6に矢印で示すように、永久磁石7及びラジアル巻線6を既に組み込んだラジアルステータコア5及びスラスト巻線3を既に収容した第1スラストステータコア1に他方のスラスト巻線4を入れ(収容し)、接着で固定する。
【0022】
その後、図7に矢印で示すように、永久磁石7及びラジアル巻線6を既に組み込んだラジアルステータコア5及びスラスト巻線3,4を既に収容した第1スラストステータコア1に第2スラストステータコア2を圧入、焼嵌めにより収容し、ボルト(図示省略)による締結等で固定する。
第2スラストステータコア2は、円筒部分1aの軸方向他方向側(紙面手前側)内向きに取り付けられる円環状部分である。
【0023】
本実施例に係る3軸能動制御型磁気軸受の支持力発生原理を図8図9に示す。
図8ではスラスト力の発生原理を示し、永久磁石7によって発生する磁束φaを太い破線、スラスト巻線3,4に流れる電流によって発生する磁束φbを細い破線で示している。
【0024】
図8に示すように、永久磁石7は、内周側がS極であり、外周側がN極であるため、永久磁石7によって発生する磁束φaは、ラジアルステータコア5を放射状に外径方向に流れ、第1スラストステータコア1の円筒部分1aで二つに分かれ、一方の磁束φaは円筒部分1aを図中右側に流れ、円環状部分1bで内径側に流れ、ロータコア8において図中左側に流れ、ラジアルステータコア5に戻る一方、他方の磁束φaは円筒部分1aを図中左側に流れ、第2スラストステータコア2を内径側に流れ、ロータコア8において図中右側に流れ、ラジアルステータコア5に戻る。また、スラスト巻線3,4に流れる電流によって発生する磁束φbは、右ネジの法則に従い、ラジアルステータコア5、第1スラストステータコア1、第2スラストステータコア2及びロータコア8において図中時計回りに流れる。
【0025】
そのため、第1スラストステータコア1の右側部である円環状部分1bとロータコア8の間(図中、一点鎖線で囲む領域A)では、太い破線で示す磁束φaと細い破線で示す磁束φbが同じ方向に発生するため磁束が強め合う一方、第2スラストステータコア2である左側部とロータコア8の間(図中、一点鎖線で囲む領域B)では、太い破線で示す磁束φaと細い破線で示す磁束φbが反対の方向に発生するため磁束が弱め合う。これにより、ロータコア8には不平衡吸引力が生じて、図中矢印で示すように右向きにスラスト力Fが発生する。
【0026】
図9ではラジアル力の発生原理を示しており、永久磁石7によって発生する磁束φcを太い破線、ラジアル巻線6に流れる電流によって発生する磁束φdを細い破線で示している。
【0027】
図9に示すように、永久磁石7は、内周側がS極であり、外周側がN極であるため、永久磁石7によって発生する磁束φcは、ラジアルステータコア5を放射状に外径方向に流れる一方、ラジアル巻線6に流れる電流によって発生する磁束φdは、右ネジの法則に従い、ラジアルステータコア5及びロータコア8において、交互に図中時計回り又は反時計回りに流れる。
【0028】
そのため、ラジアルステータコア5の右上および左上部(図中、一点鎖線で囲む領域C)では、太い破線で示す磁束φcと細い破線で示す磁束φdが同じ方向に発生するため磁束が強め合う一方、ラジアルステータコア5の右下および左下部(図中、一点鎖線で囲む領域D)では、太い破線で示す磁束φcと細い破線で示す磁束φdが反対の方向に発生するため磁束が弱め合う。これにより、ロータコア8には不平衡吸引力によって、図中矢印で示すように、上向きにラジアル力Gが発生する。
【0029】
以上、実施例に基づいて具体的に説明した通り、本実施例の3軸能動制御型磁気軸受は、ラジアルステータコア5に平板形状の小形の永久磁石7を挿入し、永久磁石7を既に組み込んだラジアルステータコア5を第1スラストステータコア1に取り付ける構成である。
これにより、大形なリング形状の永久磁石を使用する従来構造に比べて磁気軸受装置の組立性が向上する。
【0030】
特に、平板形状の小型の永久磁石7を使用すると、組立性がより一層向上する。
更に、ラジアルステータコア5の内周側のティース5bにラジアル巻線6を各々巻回し、これら永久磁石7及びラジアル巻線6を既に組み込んだラジアルステータコア5を第1スラストステータコア1及び第2スラストステータコア2に形成される空間内に収容する構成とすれば、組立性がより一層向上する。
【実施例2】
【0031】
本発明の第2の実施例に係る3軸能動制御型磁気軸受を図10図14に示す。図13は、3軸能動制御型磁気軸受の外観斜視図、図14は、3軸能動制御型磁気軸受の縦断面図である。図10図12は、3軸能動制御型磁気軸受を組み立てる工程を示す斜視図である。
【0032】
本実施例の3軸能動制御型磁気軸受は、実施例1における第1スラストステータコア1を2部品から構成したものである。
即ち、実施例1では、第1スラストステータコア1は円筒部分1aと円環状部分1bとが一体であるところ、本実施例では、円筒部分1aを第1スラスト制御用固定子(第1スラストステータコア)11aとし、環状部分1bを第2スラスト制御用固定子(第2スラストステータコア)11bとし、これら第1スラストステータコア11aと第2スラストステータコア11bとを別部品とした。
【0033】
更に、本実施例では、実施例1における第2スラストステータコア2を第3スラスト制御用固定子(第3スラストステータコア)12とした。
つまり、スラスト制御用固定子は、実施例1では2部品より構成されるのに対し、本実施例では3部品より構成される。
従って、本実施例においては、図14に示すように、第1スラストステータコア11aの円筒部分の軸方向一方向側(図中右側)に第2スラストステータコア11bが取り付けられると共に第1スラストステータコア11aの円筒部分の軸方向他方向側(図中左側)に第3スラストステータコア12が取り付けられる。
【0034】
そして、図13及び図14に示すように、第1、第2及び第3スラスト制御用固定子である第1スラストステータコア11a、第2スラストステータコア11b及び第3スラストステータコア12に形成される空間内に、二つのスラスト巻線3,4と、ラジアル制御用固定子であるラジアルステータコア(材質:磁性材 積層鋼板)5と、複数のラジアル巻線6と、複数の永久磁石7とが収容される。
なお、図13及び図14では、回転子であるロータコア及びシャフトは省略した。
上述した以外の構造については、実施例1に示す3軸能動制御型磁気軸受の構造と同様である。
【0035】
この様な3軸能動制御型磁気軸受は、次の手順で組み立てられる。
先ず、実施例1と同様に、図2に矢印で示すように、径方向に磁化された複数の永久磁石7をラジアルステータコア5の外周部に周方向等間隔に形成されたスリット5aへ各々挿入する(埋め込む)。
次に、実施例1と同様に、図3に示すように、ラジアルステータコア5の内周側に形成された4ヶ所のティースにラジアル巻線6を各々巻く(巻回する)。
【0036】
引き続き、図10に矢印で示すように、永久磁石7及びラジアル巻線6を既に組み込んだラジアルステータコア5を圧入または焼嵌めにより第1スラストステータコア11aに収容する。
永久磁石7及びラジアル巻線6は、ラジアルステータコア5に既に組み込まれた状態で、第1スラストステータコア11aに収容されるので、取り扱いが容易であり、組立性が向上する点については実施例1と同様である。
特に、リング形状にした大形の永久磁石を磁気軸受内に組み込む場合には、装置内の磁性体部品への吸着によって破損せずに、所定の位置へ永久磁石を組み込むことが難しかったが、そのようなことも起こらない点についても実施例1と同様である。
【0037】
更に、図11に矢印で示すように、永久磁石7及びラジアル巻線6を組み込んだラジアルステータコア5を既に収容した第1スラストステータコア11aに二つのスラスト巻線3,4を入れ(収容し)、接着で固定する。
即ち、永久磁石7及びラジアル巻線6を組み込んだラジアルステータコア5を間に挟んで、半径方向に巻いた二つのスラスト巻線3,4を第1スラストステータコア11aに収容する。
【0038】
その後、図12に矢印で示すように、永久磁石7及びラジアル巻線6を既に組み込んだラジアルステータコア5及びスラスト巻線3,4を既に収容した第1スラストステータコア11aに第2スラストステータコア11b及び第3スラストステータコア12を圧入、焼嵌めにより収容し、ボルト(図示省略)による締結等で固定する。
即ち、図12に示すように、永久磁石7及びラジアル巻線6を既に組み込んだラジアルステータコア5及びスラスト巻線3,4を間に挟んで、第1スラストステータコア11aの円筒部分の軸方向一方向側(図中奥側)に第2スラストステータコア11bを取り付けると共に第1スラストステータコア11aの円筒部分の軸方向他方向側(図中奥側)に第3スラストステータコア12を取り付ける。
なお、本実施例に係る3軸能動制御型磁気軸受の支持力発生原理も図8図9に示す通りである。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の3軸能動制御型磁気軸受及びその組立方法は、組立性が良好なため、産業上広く利用可能なものである。
【符号の説明】
【0040】
1 第1スラストステータコア(第1スラスト制御用固定子)
1a 円筒部分
1b 円環状部分
2 第2スラストステータコア(第2スラスト制御用固定子)
3,4 スラスト巻線
5 ラジアルステータコア(ラジアル制御用固定子)
5a スリット
5b ティース
6 ラジアル巻線
7 永久磁石
8 ロータコア
9 シャフト
11a 第1スラストステータコア(第1スラスト制御用固定子)
11b 第2スラストステータコア(第2スラスト制御用固定子)
12 第3スラストステータコア(第3スラスト制御用固定子)
φa,φb,φc,φd 磁束
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14