特許第6584416号(P6584416)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6584416
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】太陽熱発電所のための配管系
(51)【国際特許分類】
   F24S 60/30 20180101AFI20190919BHJP
   F24S 40/48 20180101ALI20190919BHJP
【FI】
   F24S60/30
   F24S40/48
【請求項の数】20
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-548171(P2016-548171)
(86)(22)【出願日】2015年1月23日
(65)【公表番号】特表2017-505416(P2017-505416A)
(43)【公表日】2017年2月16日
(86)【国際出願番号】EP2015051387
(87)【国際公開番号】WO2015110594
(87)【国際公開日】20150730
【審査請求日】2018年1月19日
(31)【優先権主張番号】14152453.8
(32)【優先日】2014年1月24日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン ヴォアトマン
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ルッツ
(72)【発明者】
【氏名】カタリーナ フェーダーゼル
(72)【発明者】
【氏名】ケアスティン シアレ−アーント
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン マウラー
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ラーデンベアガー
【審査官】 柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】 特表2014−531552(JP,A)
【文献】 特開2006−329491(JP,A)
【文献】 特表2013−525740(JP,A)
【文献】 特開2008−014627(JP,A)
【文献】 特開2015−190673(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24S 60/30
F24S 40/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽発電所のための配管系(1)であって、ここで、該配管系は、少なくとも1つのレシーバー管(13)または中央レシーバー、ならびに少なくとも1つの排出容器(21)および/または熱媒体のための貯蔵器を備え、前記レシーバー管または中央レシーバーにおいて熱媒体は入射する太陽エネルギーによって加熱され、ここで、該熱媒体は最高運転温度で0.5bar未満の蒸気圧を有する、太陽発電所のための配管系(1)において、該配管系がさらにガス往復系(31)を含み、該ガス往復系(31)は、太陽発電所で使用される複数の容器のガス空間を互いに接続し、かつ中央ガス貯蔵器(35)および/または中央ガス接続口(37)および中央ガス排出口(39)を備え、該中央ガス排出口を通してガス環境に放出可能であることを特徴とする、前記配管系。
【請求項2】
前記中央ガス接続口(37)に、ガスの圧力を高めることができるポンプが割り当てられていることを特徴とする、請求項1に記載の配管系。
【請求項3】
熱媒体のための前記貯蔵器は、成層型貯蔵器であることを特徴とする、請求項1または2に記載の配管系。
【請求項4】
前記ガス往復系(31)は、前記レシーバー管(13)の排出弁と接続されている加圧系(43)に接続されていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の配管系。
【請求項5】
前記中央ガス排出口(39)は、ガス洗浄のための装置(41)を備えることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の配管系。
【請求項6】
前記ガス洗浄のための装置(41)は、固形物および/または窒素酸化物をガスから除去することを特徴とする、請求項5に記載の配管系。
【請求項7】
前記ガス往復系(31)の配管は、ループ配管(13)に向かう熱媒体のための収集管(9、11)および分配管(5、7)に対して平行に延びることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の配管系。
【請求項8】
前記レシーバー管(13)は、レシーバーを備えるループ配管であることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の配管系。
【請求項9】
収集管および分配管は互いに間隔を空けて置かれており、かつレシーバー管は収集管と分配管との間で線状に延びることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の配管系。
【請求項10】
前記太陽発電所で使用される複数の容器は、前記少なくとも1つの排出容器(21)および熱媒体のための前記貯蔵器を含むことを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の配管系。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項に記載の配管系を備える太陽発電所であって、前記太陽発電所は、線形集光式太陽発電所またはタワー式発電所であることを特徴とする前記太陽発電所。
【請求項12】
請求項1から10までのいずれか1項に記載の配管系を備える太陽発電所を運転するための方法であって、排出されるタンクにガスを供給することによってか、または充填されるタンクからガスを取り出すことによって、前記ガス往復系を介して圧力調整を実現することを特徴とする前記方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、低温容器から高温容器へのガス移行が行われる場合、ガスを前記ガス往復系から取り出し、高温容器から低温容器へのガス移行が行われる場合、ガスを前記ガス往復系に供給することを特徴とする前記方法。
【請求項14】
請求項12または13に記載の方法であって、前記中央ガス接続口(37)を介して新たなガスを供給することを特徴とする前記方法。
【請求項15】
請求項12または13に記載の方法であって、前記中央ガス接続口(37)を介して設備ガスを前記ガス往復系(31)に導入することを特徴とする前記方法。
【請求項16】
請求項12から15までのいずれか1項に記載の方法であって、前記ガス往復系(31)に供給されるガスは、前記熱媒体に対して不活性であることを特徴とする前記方法。
【請求項17】
請求項12から16までのいずれか1項に記載の方法であって、前記ガス往復系(31)に供給されるガスは、窒素であることを特徴とする前記方法。
【請求項18】
請求項12から17までのいずれか1項に記載の方法であって、前記ガス往復系(31)に供給されるガスは、水および/または二酸化炭素を含有することを特徴とする前記方法。
【請求項19】
請求項12から15までのいずれか1項に記載の方法であって、前記ガス往復系(31)に供給されるガスは、酸素を含有することを特徴とする前記方法。
【請求項20】
請求項12から15までのいずれか1項に記載の方法であって、前記ガス往復系(31)に供給されるガスは、窒素酸化物を含有することを特徴とする前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのレシーバー管、ならびに少なくとも1つの排出容器および/または熱媒体のための貯蔵器を備え、前記レシーバー管において熱媒体は入射する太陽エネルギーによって加熱され、ここで、熱媒体は最高運転温度で0.5bar未満の蒸気圧を有する、太陽発電所のための配管系を出発点とする。
【0002】
太陽発電所は、例えば線形集光式太陽発電所、例えばフレネル式太陽発電所または放物線トラフ太陽発電所、またはタワー式発電所である。それらの発電所では、最高運転温度で0.5未満の蒸気圧を有する熱媒体として、例えば塩溶融物が使用される。
【0003】
線形集光式太陽発電所では、配管系全体は、一般に網状構造の形態で構成されており、この網状構造が、太陽エネルギーの獲得に役立つ。そのために、太陽の放射エネルギーが放物面鏡またはフレネルミラーを用いてレシーバーに集められる。通常、鏡とレシーバーの組合せは、コレクターと呼ばれる。多数のコレクターが直列に接続されて、いわゆるソーラーループ(Solarschleifen)になる。そのために、レシーバーは、それぞれ配管系と接続されているか、もしくは配管系の一部である。配管系は、伝熱流体が貫流しており、この流体に、レシーバーによって獲得された放射エネルギーが伝達される。
【0004】
最高運転温度で0.5bar未満の蒸気圧を有する熱媒体は、例えば塩溶融物、例えばいわゆる天日塩、60:40の比の硝酸ナトリウムと硝酸カリウムの混合物である。これは、特に、比較的高い運転温度およびそれによって太陽発電所の比較的高い効率を達成するために使用される。
【0005】
太陽エネルギーを集めるために鏡を使用することは、例えば国際公開第2009/101586A2号または国際公開第2012/006257A2号に記載されている。しかし、それらの2つの方法では、太陽エネルギーは、配管内で水を蒸発させるために使用される。この系の欠点は、蒸気を線形集光式太陽発電所において必要とされる量と同じ量を直接貯蔵できないことである。低い蒸気圧、例えば0.5bar未満の蒸気圧を有する伝熱流体が使用される場合、蓄熱は比較的容易である。加熱された伝熱流体は、大型の容器またはタンクに充填される。熱は、この容器から必要のある場合に送出(Austankung)によって得られて、利用することができる。
【0006】
例えば砂、金属または塩を溶かすために、太陽エネルギーを捕集するための鏡を使用することは、国際公開第2010/149177A2号から公知である。
【0007】
太陽発電所内で所望の高温を得るために、熱媒体として、最高運転温度で0.5bar未満の蒸気圧を有する液体、例えば塩溶融物が使用される。通常、蓄熱器として、溶融物が充填されたきわめて大きいタンクが使用される。ここで、例えば、最低運転温度に近い温度を有するタンクと、最高運転温度を有するタンクとからなる組み合わせを準備することが可能である。太陽エネルギーが入射すると熱媒体は加熱されて、比較的低い温度を有するタンクから高温を有するタンクに入れ替えられる。熱を利用するために、熱媒体の熱は、高温を有するタンクから、水を蒸発させるための第二循環に放出されて、冷却された熱媒体は比較的低い温度を有するタンクに返送される。高温を有するタンクおよび低温を有するタンクを使用する代替案として、サーモクラインタンク(thermokliner Tank)とも呼ばれることがある成層型貯蔵器(Schichtenspeicher)を使用することも可能である。
【0008】
太陽発電所において、複数の貯蔵タンクを備えていてよく、かつそれらの貯蔵タンクの気相がガス往復管(Gaspendelleitungen)と互いに接続されている貯蔵系が配置されていることは公知である。2タンク系では、ガスは、高温タンクと低温タンクとの間を往復する。そのような往復系に液体窒素タンクからの窒素または空気を供給することができる一方、排ガスが環境に運ばれることも公知である。
【0009】
塩溶融物を使用することの欠点は、塩溶融物が室温を上回る温度では凝固しうることである。それに加えて、たいていの塩溶融物は高温溶融性である。硝酸ナトリウム/硝酸カリウム混合物は、例えば218℃の温度で、質量混合比44:56の場合に共融混合物として溶融する。長い配管系、例えば太陽発電所に見られるような長い配管系では、融点の高い塩溶融物は、熱媒体として確実に扱うのが難しい。塩溶融物の凍結は、配管系において大きな経済的損害を引き起こすことがある。損害の原因は、その溶融体積が大きいこと、つまり、溶融時の体積膨張が著しいことでありうる。このことによって、計器類および配管が押しつぶされて、激しく破損する危険がある。
【0010】
塩溶融物の凍結は、基本的に太陽発電所の運転時間外、つまり、太陽の照射時間外または天候条件による日射不足の場合に起こりうる。ここで、配管系および運転状態に応じて様々な凝固状態をもたらしうる体積収縮が起こる。凝固する溶融物は、多少の差はあれ比較的大きいまとまりで配管系の深部領域に集まる一方、塩が充填されていない空間は、その配管系の上部領域で形成することが予期される。再び溶融する際、場合によって体積膨張する溶融箇所と塩が充填されていない空間とが空間的に大きく隔てられることによって、生じる圧力を低下させるために充分な体積調整を行うことができず、このことが、溶融時の体積膨張による配管系の破損をもたらしうる。
【0011】
現在、停止時間が比較的長い場合に配管系における溶融物の凍結を防ぐため、配管系は空の状態にされる。
【0012】
さらに、配管系における塩溶融物の凍結は、設備故障の場合、例えばエネルギー消失の場合にも防がなければならない。この場合にも、排出装置は、確実に、つまり高い可用性で目的通りに機能するものでなければならない。
【0013】
現在、配管網状構造を空の状態にするために、排出管を下流に配置して、および排出容器を低位にして使用される。通常、配管網状構造を空の状態にするためのエネルギーは、液体の塩溶融物の潜在的なエネルギーから得られる。しかし、排出は、さらにガス圧の作用によって促すこともできる。ガス圧の作用は、例えば配管網状構造の最も高い箇所で行われてよい。
【0014】
優れた排出技術の代替案として、いわゆる天日塩よりも低い融点を有する塩混合物を使用することも可能である。それによって、配管系が凍結および場合によって破損するリスクは低下する。しかし、比較的低い融点を有する使用可能な塩および塩混合物は、その熱安定性が比較的低いこと、およびさらに、好適に使用可能ではない成分または毒物学的に注目すべき成分を含むことがあるという欠点がある。融点の低下は、例えば亜硝酸塩を添加することによって達成される。しかし、この亜硝酸塩は、熱媒体装置の運転温度が高く、かつ酸素が存在している場合、亜硝酸イオンが酸化されて硝酸イオンになりうるという特性があり、それによって、熱媒体の融点は著しく上昇する。このことを回避するために、通常、酸素侵入は、熱媒体循環をきっちり密にして環境ガスから遮断することによって回避される。しかし、遮断された系も、物質を系に導入するかもしくは系から導出することができる入口および出口を必要とする。それらの入口および出口は、制御されていなければならず、ここで、制御は、例えば酸素の排除または大気汚染物質、例えば二酸化窒素の分離を含む。
【0015】
さらに、亜硝酸塩混合物および硝酸塩混合物がその熱安定性の境界範囲にある場合、または不純物、例えば高電荷の金属イオンを含む物質もしくは有機物質と接触する場合、窒素酸化物が形成して、開放系で環境に放出されるという危険がある。これらの2つの問題は、熱媒体循環を環境のガスから閉鎖して動かすことによって収めることができる。そのような閉鎖された熱媒体循環は、例えば化学設備で容易に実現可能である、それというのは、設備のすべての構成要素が、密に隣接して設置されるからである。しかし、これは、大規模で、かつ一般に管の総長さが100km超に達することがある大型太陽発電所の配管網状構造の場合には当てはまらない。排出の場合、配管系の最も高い箇所で、場合によって互いに遠く離れた複数の通気口を開放させる必要がある。通常、通気箇所が互いに遠く離れているために、通気は周囲空気を伴って実施される。しかし、このことも同じく、周囲空気によって、伝熱流体の成分と反応しうる酸素、水または二酸化炭素が制御不可能な量で系に導入されるという欠点を有している。例えば、亜硝酸イオンは、酸素と反応して硝酸イオンになりうる。二酸化炭素は、固形物として沈殿することもある炭酸塩を形成し、水は、硝酸塩および亜硝酸塩と高温で水酸化物を形成しうる。
【0016】
本発明の課題は、太陽発電所のための配管系を提供することであり、この配管系は、発電所の安全な運転を可能にする一方、他方、この配管系では、使用される熱媒体の許容ない化学変化が回避される。
【0017】
この課題は、少なくとも1つのレシーバー管または中央レシーバー、ならびに少なくとも1つの排出容器および/または熱媒体のための貯蔵器を備え、前記レシーバー管において熱媒体は入射する太陽エネルギーによって加熱され、ここで、熱媒体は最高運転温度で0.5bar未満の蒸気圧を有する、太陽発電所のための配管系であって、さらに、少なくとも1つの排出容器および/または熱媒体のための貯蔵器内のガス空間を互いに接続し、かつ中央ガス貯蔵器または中央ガス接続口および中央ガス排出口を備え、この中央ガス排出口を通してガスが環境に放出されうるガス往復系が含まれている太陽発電所のための配管系によって解決される。
【0018】
中央ガス貯蔵器または中央ガス接続口によって、使用される熱媒体を保護するか、または変化させないか、もしくは制御してのみ変化させることができるガスを使用してガス往復系を動かすことが可能である。それによって、系内に含まれるガスが熱媒体を許容できないほどに破損することが回避される。例えば、特別な場合、亜硝酸塩がガス空間内に含まれる酸素によって硝酸塩になる反応は阻止されなければならない、つまり、亜硝酸塩濃度は、融点の上昇を防ぐために最大値に維持される。他方、酸素含有ガスを使用することによって、主に硝酸塩を含有する塩混合物中の亜硝酸塩濃度を特定の値に維持することが可能である、それというのは、場合によって生じる亜硝酸塩とガス中に含まれる酸素とが反応して再び硝酸塩になりうるからである。過度に高い亜硝酸塩濃度は、塩の熱的不安定さをもたらす、それというのは、亜硝酸イオンは、硝酸イオンよりも容易に、かつ低い温度で分解して酸化物イオンになるからである。水の添加によって、熱分解により形成された酸化物イオンが、腐食性が比較的低い水酸化物イオンに変換されうる一方、他方では、過剰の水は、亜硝酸塩および硝酸塩を分解して水酸化物を形成し、それによって塩溶融物の腐食性を高める。二酸化炭素は、炭酸塩の形成によって硝酸塩および亜硝酸塩を分解しうる。
【0019】
本発明によれば、レシーバー管は、レシーバーが配置されている配管である。通常、レシーバーは、ガラス管で取り囲まれている、配管の個々のセグメントである。ガラス管の下側には鏡系が存在しており、この鏡系において、入射する太陽が反射され、ガラス管に向けられる。ガラス管への入射光によって、熱は配管を貫流する熱媒体に伝えられ、それによって、熱媒体が加熱される。
【0020】
本発明の範囲における太陽発電所は、線形集光式太陽発電所、例えばフレネル式太陽発電所または放物線トラフ太陽発電所、またはタワー式発電所であり、それらの発電所では、入射する太陽光は、鏡を使用して、通常タワーに配置されている中央レシーバーに向けられる。
【0021】
本発明によれば、ガス往復系は配管網状構造を有し、この配管網状構造は、太陽発電所で使用される複数の容器のガス空間それぞれと接続されている。それによって、容器の充填または排出の際、排出されるタンクへのガス供給によってか、または充填されるタンクからのガス取り出しによって、ガス往復系を介して圧力調整を実施することが可能である。ガス質量が変わらず、かつ圧力が同じ場合、体積は温度の上昇に伴って増加するため、ガス往復系を通って低温容器から高温容器へのガス移行が行われる場合、熱媒体の詰め替えによって相応の体積変化を調整するために、ガスをガス往復系から取り出す必要がある。相応して、高温容器から低温容器へのガス移行の場合、体積を一定に保つためにガスを供給する必要がある。ここで、ガス排出は、中央ガス排出口を介して行われ、ガス供給は、中央ガス接続口を介して行われるか、または中央ガス貯蔵器から行われる。中央ガス貯蔵器が使用される場合、中央ガス排出口が中央ガス貯蔵器と接続されているのが特に有利であり、その結果、排ガスは、中央ガス貯蔵器内で捕集される。このことは、周囲空気と異なるガスが使用される場合に特に有意義である、それというのは、それによってガス損失を最小限に抑えることができるからである。この場合、中央ガス貯蔵器は、同時に、ガス往復系のための体積調整容器としても用いられる。ここで、ガス貯蔵器は、きわめて小さい正圧を有する容量貯蔵器(Volumenspeicher)としてか、または高圧ガス貯蔵器(Druckgasspeicher)として実現されてよい。
【0022】
中央ガス排出口が企図されている場合、1つのガス排出口のみを企図することが可能であるか、または複数のガス排出口を互いに近くに配置するか、もしくはガス往復系全体に分配して配置することも可能である。同様に、1つの中央ガス排出口のみの代わりに、複数のガス接続口を企図することが可能であり、それらのガス接続口は、同じく互いに近くにあってよいか、またはガス往復系全体に分散される。
【0023】
きわめて低い流れ抵抗を実現するために、ガス往復系に断面の大きい配管が使用される場合が好ましい。そのために、通常、ガス往復系は、数ミリbarのきわめて小さい正圧しか設計されない。小さい正圧を選択することによって、断面の大きい配管を実現できる。ここで、配管を、壁厚を比較的薄くして製造することもできる。
【0024】
本発明の1つの実施態様では、中央ガス接続口を介して新たなガスが供給される。新たなガスの供給によって、例えばガスの環境への放出によって生じうるガス損失を調整することができる。ここで、本発明の範囲では、新たなガスは、外部のリザーバー(Vorrat)から設備に供給することができるガスであることを意味しており、ここで、そのために、例えば外部のガス貯蔵器が企図されていてよい。設備内のガスが周囲空気である場合、新たなガスは、新鮮な空気として周囲から吸い込まれてもよい。必要である場合、新たなガスは、洗浄処理に供されてもよく、この処理は、例えば埃、エアロゾル、水蒸気または二酸化炭素を除去するものである。
【0025】
代替的な実施態様では、中央ガス接続口を介して設備ガスはガス往復系に導入される。ここで、設備ガスとは、例えば中央ガス排出口を介して設備から取り出すことができる、設備に含まれるガスであると理解される。過剰のガス体積が、例えば温度上昇時の熱膨張の結果、設備内で生じる場合、放出されたガスを捕集して、好適なガス容器内で貯蔵する必要がある。代替的に、設備ガスを圧縮して高圧ガス貯蔵器に充填することも可能である。
【0026】
流れが停止状態の場合に配管系を空の状態にするために、ガスをレシーバー管に導入することが必要である。このガスは、ガス往復系から取り出すことができる。排出の速度を増す必要がある場合、その代わりに、高圧のプロペラントガス(Treibgas)がレシーバー管に導入されてよい。そのために、プロペラントガスは、高圧ガス系から直接使用されてよい。
【0027】
配管系を空の状態にするために加圧系(Gasdrucksystem)が企図されているのが好ましい。この加圧系は、例えば排出弁を介して配管系と接続されている配管網状構造を有している。さらに、接続口が排出容器に企図されていてよく、その接続口に、熱媒体が排出のために放出される。しかし、排出容器は、代替的にガス往復系と連結されていてもよいため、配管系の排出およびそれに伴う排出容器の充填の際に、排出容器からのガスはガス往復系に導入される。加圧系によって、充分に高い圧力を有するプロペラントガスを配管系の排出のために準備することが可能である。
【0028】
排出の際、配管内に含まれる熱媒体はガスによって排出容器の方向に運ばれて、排出容器に流れることができる。このことは、特に、配管の凍結を回避できることが利点である。
【0029】
特に、酸素と接触するのが望ましくない熱媒体が使用される場合、例えばこの熱媒体が亜硝酸塩を含む場合、中央ガス接続口を介して供給されるガスをガス貯蔵器内で準備することが必要である。成層型貯蔵器が熱媒体を貯蔵するために使用される場合、ガス貯蔵器は、熱媒体のための高温および低温貯蔵器を備える系におけるよりもかなり小さい寸法を有していてよい。この場合、低温の熱媒体は、例えば国際公開第2011/138270号に記載の通り、液体で送出されてよく、そのようにして熱に伴う体積変動を調整することができる。
【0030】
配管を空の状態にするために高圧ガスを供給するためのガス往復系および場合によって加圧系を、可能な限り短い距離で実現できるようにするために、ガス往復系の配管も、(存在している場合)高圧ガスの配管も、配管系の主分配管(Hauptverteiler)および主収集管(Hauptsammler)に対して平行に配置されている場合が有利である。さらに、可用性の理由から、高圧ガスを供給するための加圧系が、蓄圧器を分散配置して有している場合、特に好ましくは配管系の排出容器の近くに有している場合、および排出弁の近くに有している場合が好ましい。圧力網(Drucknetz)の管に大きい断面は必要ではない、それというのは、加圧下にあるガスが排出に必要とされることはまれであり、それゆえ分散した蓄圧器の充填は、長い時間がかかってよいからである。
【0031】
酸素に耐性のある熱媒体が使用される場合、ガスを周囲空気から得ることが可能である。特に、純粋な硝酸塩溶融物が熱媒体として使用される場合、酸素含有ガスを使用することが好ましい、それというのは、硝酸塩が亜硝酸塩に変換する場合、亜硝酸塩は、存在している酸素によって再び硝酸塩に変換されるからである。それによって、不所望な熱安定性の低下を阻止することができる。酸素含有ガスとして、例えば、空気、酸素富化空気、酸素、または任意の酸素富化不活性ガスも使用されてよい。酸素の代替として、ガス往復系に窒素酸化物を供給することも可能である。一酸化窒素対二酸化窒素の濃度比を用いて、熱媒体の硝酸塩濃度対亜硝酸塩濃度の比に影響を及ぼすことができる。一酸化窒素の高い濃度は、亜硝酸塩の形成を促進し、二酸化窒素の高い濃度は、硝酸塩の形成を促進する。
【0032】
しかし、酸素に耐性のない熱媒体が使用される場合、例えば亜硝酸塩も含む塩溶融物が使用される場合、使用される熱媒体に対して不活性のガスをガス往復系に供給するのが好ましい。この場合、例えば窒素または希ガスが好適であり、好ましくは窒素が好適である。
【0033】
ガス回収管内に存在している設備ガスから高圧ガスを得るのが特に好ましい。設備ガスは、冷却された分離系を介して運ばれるのが好ましく、場合によってろ過されて、圧縮器で所要の圧力段階、好ましくは10bar(絶対)から20bar(絶対)に圧縮される。
【0034】
太陽発電所が、熱媒体のための成層型貯蔵器ではなく、高温貯蔵器および低温貯蔵器を備えている場合、熱媒体は、運転中に低温貯蔵器から高温貯蔵器にレシーバー管を通って運ばれ、ここで、レシーバー管内の熱媒体は、入射する太陽光エネルギーによって加熱される。エネルギー獲得のため、熱媒体は、高温貯蔵器から低温貯蔵器に運ばれて、例えば発電のためのタービンおよび発電機の駆動に使用される過熱水蒸気を生成するために熱を放出する。熱媒体を高温貯蔵器から低温貯蔵器に、または低温貯蔵器から高温貯蔵器に運ぶことによって、そのつど、2つの貯蔵器のうちの1つの空間は液体が放出され、もう1つ貯蔵器は液体で占められる。液体が放出された空間は、ガス供給によって調整されなければならない。そのためにガス往復系が利用される。ガスが貯蔵器から追い出されるのと同時に、この貯蔵器に熱媒体が導入される。次に、このガスは、ガス往復系を通って、充填される貯蔵器から排出される貯蔵器に移すことができる。しかし、ここで、ガスの温度が、実質的にその周囲の温度によって決められていることが考慮されるべきである。したがって、低温貯蔵器内のガスは、その中に含まれている熱媒体のおおよその温度を有している。相応のことが高温タンク内のガスにも当てはまる。高温タンクから低温タンクへのガス交換およびその反対の場合、ガスは、温度調整によってその周囲の温度になる。つまり、ガスは、ガス往復系における位置によって異なる温度を有している。その平均温度の高さに応じて、ガスは異なる大きさの体積を必要とする、それというのは、ガスが占める体積は、質量が同じ場合、温度によって異なるからである。温度の上昇に伴って体積も増加する。このことは、ガスは、高温タンクが空の状態であり、かつ低温タンクが満たされている場合、大きい体積を必要とし、低温タンクが空の状態であり、かつ高温タンクが満たされている場合、小さい体積を必要とすることを意味している。さらに、このことは、大きい体積が必要とされる場合、より多くのガスが系内にあるため、体積調整のためにそれぞれガスが系に導入されるか、または系から取り除かれる必要を生じさせる。系からのガスの導入または除去は、中央ガス接続口もしくは中央ガス排出口を介して行われる。特に不活性ガスが使用される場合、ここで、ガス排出口を介して系から除去されたガスを中央ガス貯蔵器内で中間貯蔵して、大きいガス体積が必要とされる場合にこの中間貯蔵器から中央ガス接続口を介して再び系に供給することが必要である。
【0035】
ガスとして周囲空気が使用される場合、高温タンクを空の状態にする場合、過剰ガスは、排ガス弁を介して環境に放出され、相応して低温タンクを空の状態にする場合、周囲空気は、中央ガス接続口を介して供給される。
【0036】
特に、ガスが環境に放出される場合、中央ガス排出口がガス洗浄のための装置を備えている場合が好ましい。ガス洗浄のための装置において、放出された設備ガスから環境に有害なガスを除去することができる。さらに、ガス洗浄のための装置を使用して、例えばガスを含む固形物または液体を除去することも可能である。このようにして、例えば、ガスと一緒に連行される液滴、例えば熱媒体、または冷却によって凝固した熱媒体を、それらが環境に放出される前にガスから分離することが可能である。例えば、中央ガス貯蔵器の汚染を回避するために、液体または固形物が中央ガス貯蔵器に供給される前にそれらをガスから除去することも可能である。
【0037】
特に、熱媒体として硝酸塩および/または亜硝酸塩が使用される場合、ガス洗浄のための装置は、窒素酸化物をガスから除去する場合にさらに好ましい。窒素酸化物は、例えば亜硝酸塩または硝酸塩の酸素による還元によって生じうる。環境保護の理由から、窒素酸化物を可能な限り少なく環境に放出するか、またはまったく放出しないことが求められているため、それらをガスから除去する必要がある。ここで、窒素酸化物の除去は、慣用の、当業者に公知の脱硝装置によって行うことができる。
【0038】
線形集光式太陽発電所、例えば放物線トラフ太陽発電所またはフレネル式太陽発電所では、レシーバーが収容されている配管系が、熱媒体が供給および排出される中央収集管と中央分配管それぞれを介して接続されている複数のソーラーフィールドの形態で配置されているため、ガス往復系の配管が、レシーバー管に向かう熱媒体のための収集管および分配管に対して平行に延びるように敷設することがさらに有利である。このようにして、ガス往復系のための配管を可能な限り短く形成することができる。さらに、必要な箇所それぞれで、費用のかかる配管作業を企図する必要なしに、ガス往復系の配管を収集管および分配管と接続することが可能である。
【0039】
太陽発電所が複数のレシーバー管を備えている場合、レシーバー管は、通常、収集管および分配管と接続されている。熱媒体は、分配管を介して低温貯蔵領域からレシーバー管に供給され、熱媒体が加熱されるレシーバー管を貫流して収集管を流れ、熱媒体は、この収集管を通って高温貯蔵領域に運ばれる。ここで、高温貯蔵領域および低温貯蔵領域それぞれは、構造上別個の容器によって実現されるか、または代替的に成層型貯蔵器内の貯蔵領域として実現されてよく、ここで、通常、低温貯蔵領域は、成層型貯蔵器の下部に存在しており、高温貯蔵領域は上部に存在している。
【0040】
太陽発電所が作られる地域の地形に応じて、収集管および分配管は、構造上互いに近く配置されるか、または互いに間隔を空けて置かれてよい。収集管および分配管が構造上互いに近くに配置されている場合、通常、レシーバー管は、ループ配管(Rohrleitungsschleifen)である。それによって、レシーバー管を通って流れる熱媒体を加熱するために必要な充分に長いレシーバー管の長さを実現することができる。収集管と分配管が互いに間隔を空けて置かれている場合、レシーバー管は、線状に収集管および分配管を接続してもよい。この場合、収集管、分配管およびレシーバー管は、はしごの形態を有しており、ここで、レシーバー管は、はしごの段を形成している。
【0041】
本発明の実施例を図に示し、以下の記載において詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】線形集光式太陽発電所を示す図
図2】外部に対して閉鎖されたガス往復系を備える線形集光式太陽発電所を示す図
図3】外部に対して閉鎖されたガス往復系ならびにソーラーフィールドの充填および排出のための加圧系を備える線形集光式太陽発電所を示す図
図4】ダブルH型構造の線形集光式太陽発電所を示す図
【0043】
図1には、線形集光式太陽発電所が図示されている。
【0044】
線形集光式太陽発電所1は、複数のセグメント3を有しており、このセグメントはそれぞれ、分配管5を介して中央分配管7と接続され、収集管9を介して中央収集管11と接続されている。分配管5および収集管9を介して、レシーバー管13それぞれに熱媒体が供給される。そのために、熱媒体は、中央分配管7を介して分配管5に送られて、分配管5からレシーバー管13に流れる。レシーバー管13それぞれは、ここに図示されていないレシーバーを備えており、そのレシーバー内で、熱媒体が太陽の放射によって加熱される。加熱された熱媒体は、レシーバー管13から収集管9に、そしてそこから中央収集管11に流れる。ここに示される実施形態では、レシーバー管13は、ループ配管として形成されている。
【0045】
中央分配管7は、低温貯蔵器15と接続されており、太陽光がレシーバーに当たっている限り、この貯蔵器から熱媒体が取り出される。加熱された熱媒体は、次に中央収集管11を通って高温貯蔵器17に導入される。
【0046】
通常、レシーバーは、ガラス管で取り囲まれている、配管の個々のセグメントである。ガラス管の下側に鏡系が存在しており、その鏡系で、入射する太陽光が反射されて、ガラス管に向けられる。ガラス管への入射光によって、熱は、配管を貫流する熱媒体に伝えられ、それによって、熱媒体が加熱される。ここで、放物線トラフ太陽発電所では、鏡は、例えばトラフの形態でガラス管の下側に配置されている。フレネル式太陽発電所では、調整可能な鏡が、配管の下側に存在しており、この鏡は、入射光エネルギーの角度に応じて動かすことができる。
【0047】
エネルギーを得るために、高温の熱媒体は高温貯蔵器17からポンプ19を用いて取り出して、ここに図示されていない熱交換器に送られる。熱交換器内で、熱媒体は、熱を蒸気循環に放出し、この蒸気循環中で水蒸気が発生して過熱される。過熱蒸気によって、例えば発電のための発電機を駆動するためのタービンを運転することができる。熱交換器を離れた冷却された熱媒体は、低温貯蔵器15に返送される。通常、貯蔵された熱媒体の量は、高温の熱媒体の量が、太陽が照っていないか、または不充分な太陽光が存在している場合に、大量の熱媒体を加熱するために、タービンをさらに動かすのに充分な量である。
【0048】
停止時間に線形集光式太陽発電所1の配管を空の状態にできるようにするために、セグメント3はいずれも排出容器21を備えている。ここで、排出容器21は、排出導管23を介してセグメント3の収集管9と接続されている。セグメント3それぞれの分配管5には、通気弁25が接続されており、この通気弁は、セグメント3の配管を空の状態にするために開放される。そのために、通気弁25を通って高圧ガスが分配管5に導入されて、このガスは、分配管5およびレシーバー管13を通って収集管9に流れ、それによって、熱媒体は、収集管9、レシーバー管13および分配管5から排出導管23を通って排出容器21に押し出される。
【0049】
新たに運転する場合に個々のセグメント3に再び熱媒体を充填するために、熱媒体は、排出容器21から排出導管23を通って収集管9に送られて、そこからレシーバー管13を通って分配管5に返送される。ここで、ガスは、配管から通気弁25を通ってガス往復系33に抜ける。そのために必要な管は図示されていない。熱媒体をガス往復系33に運ばないために、通気弁25と分配管5との間に相検出器27が配置されている。相検出器27では、気相と液相との入れ替わり(Wechsel)が見られる。検出された入れ替わりは、気相がレシーバー管13から充分に押し出されたこと、かつそれに応じてレシーバー管13が液体充填されていることを示す。レシーバー管13の充填は、この事象によって終了する。
【0050】
配管を空の状態にするためのプロペラントガス(Treibgas)は、例えば分散型高圧ガス貯蔵器29から取り出される。ここで、いずれのセグメント3にも分散型蓄圧器29が割り当てられ、ここで、分散型蓄圧器29は、通気弁25を介して分配管5およびレシーバー管13と接続されている。
【0051】
図2には、外部に対して閉鎖されたガス往復系を備える線形集光式太陽発電所が図示されている。
【0052】
図2に示された線形集光式太陽発電所1の構造は、図1に示されたものに実質的に相応している。図1に示された太陽発電所1と比べて、図2に示された線形集光式太陽発電所1ではさらにガス往復系31が含まれている。ガス往復系31は、ガス回収配管網状構造33を有しており、この構造は、ガス容量貯蔵器(Gasvolumenspeicher)35、低温貯蔵器15、高温貯蔵器17ならびにすべての排出容器21と接続されている。ここで、ガス接続口それぞれは、低温貯蔵器15、高温貯蔵器17および排出容器21の頂部に存在しているため、ガス回収配管網状構造33は、容器15、17、21それぞれのガス空間とそれぞれ接続している。同様に、成層型貯蔵器が低温および高温貯蔵器15、17の代わりに組み込まれてもよい。
【0053】
さらに、ガス回収配管網状構造33は、中央ガス接続口37およびガス排出口39を備えている。中央ガス接続口37を介して、必要である場合に追加のガスを供給することができ、ガス排出口39を介して過剰なガスを排出することができる。排ガスを条件調整するために、ガス排出口39に排ガス洗浄装置41が企図されているのが好ましい。排ガス洗浄は、例えば放出されるガスの窒素酸化物を分解するための脱硝系である。
【0054】
ガス往復系によって、個々の貯蔵容器15、17、21における充填レベルが異なる場合、圧力変化を調整することが可能である。したがって、例えばガスは、熱媒体の加熱中に高温貯蔵器17から低温貯蔵器15に到達することがある。その場合、相応のガス体積を満たすために比較的大きいガス質量が必要とされる場合、過剰なガスは、ガス容量貯蔵器35内で捕集されて、そこから再びガス往復系31に戻ってよい。
【0055】
図3は、外部に対して閉鎖されたガス往復系ならびにソーラーフィールドを充填および排出するための加圧系を備える線形集光式太陽発電所を図示している。
【0056】
図3に示された線形集光式太陽発電所1では、さらに加圧系43が配置されている。加圧系43は、高圧ガス配管系45を備えており、この管系に、分散型高圧ガス貯蔵器29および排出容器21が接続されている。高圧ガス配管系45を介して分散型蓄圧器29を充填することができる。さらに、加圧系43は、中央高圧ガス貯蔵器47を備えていてよい。中央高圧ガス貯蔵器47は、特に高圧ガスをさらに貯蔵するために利用することができる。中央高圧ガス貯蔵器47の使用は任意である。中央高圧ガス貯蔵器47の代替として、またはそれに加えて、加圧系43は圧縮器49を介してガス往復系31のガス回収配管網状構造33と接続される。それによって、ガスをガス往復系31から圧縮器49を介して加圧系43に供給することが可能である。場合によって加圧往復系31のガス中に含まれている異成分を除去するために、圧縮器49に分離装置51を前接続することが有利である。
【0057】
線形集光式太陽発電所1の熱媒体を運ぶ配管を空の状態にするために、高圧ガスは、分散型蓄圧器29から通気弁25および相検出器27を備える相分離器を介して分配管5に供給される。高圧ガスは、熱媒体を分配管5、レシーバー管13および収集管9から排出容器21に追い出す。それによって、排出容器21は、熱媒体が充填されて、排出容器21内に含まれているガスは、排出容器からガス往復系33に押される。
【0058】
線形集光式太陽発電所1を再運転するために、高圧ガスは高圧ガス配管系45を介して排出容器21に押されて、このようにして熱媒体は、排出導管23を通ってまず収集管9に、そして収集管を介してレシーバー管13および分配管5に返送される。それによって、熱媒体を運ぶ配管が再び熱媒体で充填されるため、線形集光式太陽発電所1を再運転することができる。系を空の状態にした後、分散型高圧ガス貯蔵器29は、再び高圧ガスで充填される。そのために、例えば設備ガスは、ガス往復系33から圧縮器49を介して加圧系43に導入されるか、または代替的に中央高圧ガス貯蔵器47に導入される。
【0059】
図4は、線形集光式太陽発電所1のセグメント3の考えられる配置を示しており、この配置は、最小の配管長さを可能にするものである。ここで、この配置はダブルH構造である。
【0060】
最小の配管長さを保証するために、高温貯蔵器17および低温貯蔵器15を線形集光式太陽発電所の中央に配置することが有利である。低温貯蔵器15および高温貯蔵器17から、中央分配管7および中央収集管11がH型に延びている。ここで、低温貯蔵器15および高温貯蔵器17は、Hの中央に存在している。Hのそれぞれの端辺では、中央分配管7および中央収集管11から、個々のセグメント3の分配管5および収集管9がそれぞれ分岐している。このようにして、Hのそれぞれの端辺には2つのセグメント3が配置されているため、それによって同じくHの構造がそれぞれ生じる。
【0061】
ガス回収配管網状構造および高圧ガス配管系の配管長さを可能な限り短く保つためにも、ガス往復系および加圧系の配管が、中央分配管7および中央収集管11に対して平行に延びている場合が有利である。
【0062】
大量のセグメントが所望される場合、追加のセグメント3を中央分配管7および中央収集管11と接続できるようにするために、そのつど、中央分配管7および中央収集管11を延長することが可能であるため、線形集光式太陽発電所1全体の場合も1つの低温貯蔵器15および1つの高温貯蔵器17は充分である。熱媒体の量が非常に多いため、複数の低温貯蔵器15および高温貯蔵器17が必要となる場合、個々の線形集光式太陽発電所1それぞれは、独立して運転することができる。代替的に、ガス往復系、高圧ガス系および熱媒体を運ぶ系も連結して運転することも可能である。
図1
図2
図3
図4