(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記有機酸(A)は、アビエチン酸、ピマール酸、イソピマール酸、パラストリン酸、デヒドロアビエチン酸、ネオアビエチン酸、セバシン酸、アスコルビン酸、スベリン酸からなる群より選ばれる少なくとも1の有機酸である請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電性接着剤組成物。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明を実施するための形態を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。また、本明細書において数値範囲を示す「〜」とは、その前後に記載された数値を下限値、及び上限値として含む意味で使用される。
【0019】
[有機酸(A)]
本発明の導電性接着剤組成物は、酸解離定数pKaが4.8以下である有機酸(A)を導電性接着剤組成物の全体量に対して0.01〜0.2質量%含有する。
【0020】
本発明において、有機酸(A)は、単独の酸を用いてもよく、2種以上の酸を用いてもよい。
【0021】
一般的に導電性フィラーの表面にはステアリン酸やオレイン酸等のpKaが5.0程度の有機脂肪酸(コーティング剤)が被覆されているが、本発明における有機酸(A)のpKaは4.8以下であり、これらの酸と比較して低い。pKaが低い酸ほど静電的な作用により導電性フィラー表面に吸着しやすいため、本発明における導電性フィラーは、有機酸(A)によって強固に被覆された状態となる。
上述の繰り返しの温度変化による被接着材料の剥離の原因の一つとして、導電性フィラーの再焼結が挙げられるが、本発明における導電性フィラーは、有機酸(A)によって強固に被覆されているため、この再焼結が抑制される。したがって、本発明の導電性接着剤組成物は繰り返しの温度変化による剥離が生じにくい。
当該効果を奏するために、有機酸(A)のpKaは4.8以下であればよいが、好ましくは4.7以下であり、より好ましくは4.6以下である。
また、有機酸(A)の酸解離定数pKaの下限は、特に限定はされないが、pKaが低い有機酸は、金属と有機塩を形成し導電性接着剤組成物が増粘する恐れがあるため、4.3以上とすることが好ましく、4.4以上とすることがより好ましく、4.5以上とすることがさらに好ましい。
また、有機酸(A)が酸解離定数pKaを複数有する場合、複数の酸解離定数pKaの内少なくとも一つが4.8以下であればよい。
なお、有機酸(A)として2種以上の酸を用いる場合は、少なくとも一つが4.8以下であればよい。
【0022】
本発明において有機酸(A)は導電性接着剤組成物の全体量に対して0.01〜0.2質量%含有される。
有機酸(A)は、繰り返しの温度変化による剥離の抑制に寄与する成分であるが、含有量が過剰であると、硬化させる際に導電性フィラー間や導電性フィラーと被着金属面との焼結を阻害し接合状態が悪化するため、かえって繰り返しの温度変化による剥離が生じやすくなる。一方、含有量が少なすぎると、剥離抑制の効果が得られない。
上記観点から、有機酸(A)の含有量は0.01質量%以上であり、好ましくは0.03質量%以上であり、より好ましくは0.05質量%以上である。また、有機酸(A)の含有量は0.2質量%以下であり、好ましくは0.15質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以下である。
【0023】
本発明において、有機酸(A)の分子量が小さすぎると導電性接着剤組成物の硬化時に蒸発または熱分解する恐れがある。したがって、有機酸(A)の分子量は170以上であることが好ましく、185以上であることがより好ましく、200以上であることがさらに好ましい。
また、ペースト化を容易にするために、有機酸(A)の分子量は500以下であることが好ましく、400以下であることがより好ましく、350以下であることがさらに好ましい。
なお、有機酸(A)として2種以上の酸を用いる場合は、少なくとも一種の分子量が170以上であることが好ましい。
【0024】
また、特に限定されないが、本発明において有機酸(A)は好ましくはアビエチン酸、ピマール酸、イソピマール酸、パラストリン酸、デヒドロアビエチン酸、ネオアビエチン酸、セバシン酸、アスコルビン酸、スベリン酸からなる群より選ばれる少なくとも1の有機酸である。
【0025】
[導電性フィラー(B)]
本発明における導電性フィラー(B)は、導電性接着剤組成物における導電性に寄与する成分であれば特に制限されない。中でも、金属やカーボンナノチューブ等が好ましい。金属としては、一般的な導体として扱われる金属の粉末は全て利用することができる。例えば、銀、銅、金、ニッケル、アルミニウム、クロム、白金、パラジウム、タングステン、モリブデン等の単体、これら2種以上の金属からなる合金、これら金属のコーティング品、これら金属の酸化物、あるいはこれら金属の化合物で良好な導電性を有するもの等が挙げられる。中でも、酸化しづらく熱伝導性が高いことから、銀または銅を主成分とする金属がより好ましく、電導性や抗酸化性に優れることから銀を主成分とする金属が特により好ましい。ここで「主成分」とは、導電性粒子中の成分の中で、最も含有量の多い成分を示す。
単独の導電性フィラーを用いてもよく、2種以上の導電性フィラーを用いてもよい。
【0026】
本発明の導電性接着剤組成物において、導電性フィラー(B)の含有量が少ない場合、良好な熱伝導率を確保することができない。従って、本発明において、導電性フィラー(B)の含有量は導電性接着剤組成物の全体量に対して85質量%以上とする。
さらに良好な熱伝導率を得るため、導電性フィラー(B)の含有量は導電性接着剤組成物の全体量に対して91質量%以上であることが好ましい。
一方、導電性フィラーの含有量が増加すると、ペースト化が困難となる恐れがある。したがって、本発明において、導電性フィラー(B)の含有量は特に限定はされないが、96質量%以下であることが好ましく、93質量%以下であることがより好ましい。
【0027】
導電性フィラー(B)の平均粒子径(d50)は特に限定されないが、導電性フィラー(B)を微粉化する際のコスト、ペースト化の容易性、被接着材料との密着性の確保等の観点から、好ましくは0.05〜20μm、より好ましくは0.08〜10μm、さらに好ましくは0.1〜6μmである。
【0028】
なお、導電性フィラー(B)の平均粒子径はレーザー回折・散乱式粒度分析計を用いて測定された粒子径分布の50%平均粒子径(d50)とする。例えば、日機装株式会社製のレーザー回折・散乱式粒度分析計MT−3000を用いて測定することができる。
【0029】
また、平均粒子径の異なる複数の導電性フィラーを用いることもでき、優れた導電性や熱伝導率を得るために、平均粒子径がマイクロメートルオーダーの導電性フィラーと、平均粒子径がナノメートルオーダーの導電性フィラーを混合して用いることが好ましい。
この場合、マイクロメートルオーダーの導電性フィラーの平均粒子径は、溶剤量の低減、硬化後の収縮率の低減等の観点から0.7μm以上とすることが好ましく、1μm以上とすることがより好ましく、1.5μm以上とすることがさらに好ましい。また、20μm以下とすることが好ましく、10μm以下とすることがより好ましく、6μm以下とすることがさらに好ましい。
また、ナノメートルオーダーの導電性フィラーの粒子径は、導電性の向上、接合信頼性の向上等の観点から50nm以上とすることが好ましく、70nm以上とすることがより好ましく、100nm以上とすることがさらに好ましい。また、300nm以下とすることが好ましく、200nm以下とすることがより好ましく、150nm以下とすることがさらに好ましい。
また、マイクロメートルオーダーの導電性フィラーとナノメートルオーダーの導電性フィラーを混合して用いる場合、導電性、接合信頼性等の観点から導電性接着剤組成物におけるマイクロメートルオーダーの導電性フィラーとナノメートルオーダーの導電性フィラーの含有量の比は、質量比で90/10〜50/50とすることが好ましく、80/20〜60/40とすることがより好ましく、75/25〜65/35とすることがより好ましい。
【0030】
導電性フィラー(B)のタップ密度は、特に限定されないが、被接着材料への接着強度を確保するために、4g/cm
3以上であることが好ましく、5g/cm
3以上であることがより好ましく、5.5g/cm
3以上であることがさらに好ましい。また、導電性接着剤組成物を長期保管した際に導電性フィラー(B)が沈降し不安定になることを防ぐために、8g/cm
3以下であることが好ましく、7.5g/cm
3以下であることがより好ましく、7.0g/cm
3以下であることがさらに好ましい。タップ密度は、例えばJIS規格Z2512:2012の金属粉−タップ密度測定方法により測定され算出される。
【0031】
導電性フィラー(B)の比表面積は、特に限定されないが、0.1〜3m
2/gであることが好ましく、より好ましくは0.2〜2m
2/gであり、さらに好ましくは0.3〜1m
2/gである。導電性フィラー(B)の比表面積が0.1m
2/g以上であることにより、被接着材料に接する導電性フィラー(B)の表面積が確保できる。また導電性フィラー(B)の比表面積が3m
2/g以下であることにより、導電性接着剤組成物に含有させる溶剤の量を少なくできる。
【0032】
導電性フィラー(B)の形状は特に限定されず、例えば、粉状、球状、フレーク状、箔状、プレート状、樹枝状等が挙げられる。一般的にはフレーク状または球状が選択される。また、単一の金属の粒子の他、他の金属で表面被覆された金属粒子、又はこれらの混合物を用いることができる。
【0033】
導電性フィラー(B)は、その表面がコーティング剤で被覆されていてもよい。フィラー(B)がコーティング剤で被覆されることにより、エポキシ樹脂等のバインダ樹脂との分散性が向上し、ペースト化しやすくなる。コーティング剤としては、例えば、カルボン酸を含むコーティング剤が挙げられる。カルボン酸を含むコーティング剤を用いることによって、導電性接着剤組成物の放熱性をより一層向上させることができる。
コーティング剤としては、一般的にはpKaが5.0程度、分子量が280程度の酸が用いられ、具体的には先述のとおりステアリン酸、オレイン酸などが用いられる。
導電性フィラー(B)の表面をコーティング剤で被覆する方法としては、例えば、両者をミキサー中で撹拌、混練する方法、該導電性フィラー(B)にカルボン酸の溶液を含浸して溶剤を揮発させる方法等の公知の方法が挙げられる。
【0034】
[バインダ樹脂(C1)、希釈剤(C2)、硬化剤(C3)、硬化促進剤(C4)]
本発明の導電性接着剤組成物は、有機酸(A)、及び導電性フィラー(B)の他に、バインダ樹脂(C1)、希釈剤(C2)、硬化剤(C3)、硬化促進剤(C4)を含有してもよい。
本発明の導電性接着剤組成物に上記(C1)〜(C4)のいずれかを含有させる場合、前記導電性フィラー(B)の含有量を[B]質量%、バインダ樹脂(C1)、希釈剤(C2)、硬化剤(C3)、及び硬化促進剤(C4)の含有量の和を[C]質量%としたとき、[B]/[C]を95/5以上とすると、良好な熱伝導率を得ることができるため、好ましい。より好ましくは96/4以上であり、さらに好ましくは97/3以上である。
以下に、バインダ樹脂(C1)、希釈剤(C2)、硬化剤(C3)、硬化促進剤(C4)について説明する。
【0035】
<バインダ樹脂(C1)>
本発明の導電性接着剤組成物は、有機酸(A)、及び導電性フィラー(B)を分散させるためのバインダ樹脂(C1)を含有することができる。バインダ樹脂は特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂又はポリイミド樹脂等を用いることができ、これらを単独で用いても、複数種類組み合わせて用いてもよい。作業性の観点から本発明におけるバインダ樹脂は熱硬化性樹脂であることが好ましく、エポキシ樹脂であることが特に好ましい。
【0036】
本発明の導電性接着剤組成物にバインダ樹脂(C1)を含有させる場合、その含有量は導電性接着剤組成物の全体量に対して0.4質量%以上であると安定した接着強度を得ることができるため好ましい。より好ましくは0.8質量%以上であり、さらに好ましくは1.0質量%以上である。一方、熱伝導率を確保するため、バインダ樹脂の含有量は導電性接着剤組成物の全体量に対して5.0質量%以下であることが好ましく、3.0質量%以下であることがより好ましく、2.0質量%以下であることがさらに好ましい。
【0037】
<希釈剤(C2)>
本発明の導電性接着剤組成物がバインダ樹脂(C1)を含有する場合、さらにバインダ樹脂(C1)を希釈するための希釈剤(C2)を含有していてもよい。希釈剤を含有する場合、特に限定はされないが反応性希釈剤を用いることが好ましく、反応性希釈剤としては、例えば1,4ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルジグリシジルエーテル等が挙げられる。希釈剤(C2)は1種類だけ使用しても2種類以上を併用してもよい。
【0038】
本発明の導電性接着剤組成物に希釈剤(C2)を含有させる場合、その含有量は導電性接着剤組成物の全体量に対して0.1〜5質量%であると、導電性組成物の粘度が良好な範囲内となるため好ましい。
【0039】
<硬化剤(C3)>
また、本発明の導電性接着剤組成物がバインダ樹脂(C1)を含有する場合、バインダ樹脂(C1)を硬化させるための硬化剤(C3)を含有していてもよい。硬化剤(C3)としては、例えば、三級アミン、アルキル尿素、イミダゾール等のアミン系硬化剤や、フェノール系硬化剤等が挙げられる。硬化剤(C3)は1種類だけ使用しても2種類以上を併用してもよい。
【0040】
本発明の導電性接着剤組成物に硬化剤(C3)を含有させる場合、その含有量は導電性接着剤組成物の全体量に対して1.0質量%以下であることが好ましい。そうすることで未硬化の硬化剤が残りにくくなり、被接着材料との密着性が良好となるためである。
【0041】
<硬化促進剤(C4)>
本発明の導電性接着剤組成物がバインダ樹脂(C1)を含有する場合、バインダ樹脂(C1)の硬化を促進するために硬化促進剤(C4)を含有していてもよい。硬化促進剤(C4)としては、例えば、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4―メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2―メチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノ−2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、第3級アミン類、トリフェニルフォスフィン類、尿素系化合物、フェノール類、アルコール類、カルボン酸類等が例示される。硬化促進剤(C4)は1種類だけ使用しても2種類以上を併用してもよい。
【0042】
本発明の導電性接着剤組成物に硬化促進剤(C4)を含有させる場合、その含有量は特に限定されるものではなく適宜決定すればよいが、一般には導電性接着剤組成物の全体量に対して0.5質量%以下である。
【0043】
[他の成分]
本発明の導電性接着剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分を適宜含有させることができる。他の成分として、例えば溶剤が挙げられる。
【0044】
<溶剤>
本発明の導電性接着剤組成物に溶剤を含有させることにより、ペースト化が容易となる。溶剤は特に限定されないが、導電性接着剤組成物の硬化の際に溶剤が揮発しやすくするためには沸点350℃以下のものが好ましく、沸点300℃以下のものがより好ましい。具体的にはアセテート、エーテル、炭化水素等が挙げられ、より具体的には、ジブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート等が好ましく用いられる。
溶剤の含有率は、導電性接着剤組成物に対して通常15質量%以下であり、作業性の観点から好ましくは10質量%以下である。
【0045】
本発明の導電性接着剤組成物には、溶剤の他にも、酸化防止剤、紫外線吸収剤、粘着付与剤、粘性調整剤、分散剤、カップリング剤、強靭性付与剤、エラストマー等を、本発明の効果を損なわない範囲で適宜含有させることができる。
【0046】
本発明の導電性接着剤組成物は、上記の(A)及び(B)並びに任意成分として(C1)〜(C4)及びその他の成分を、任意の順序で混合、撹拌することにより得ることができる。分散方法としては、例えば、二本ロール、三本ロール、サンドミル、ロールミル、ボールミル、コロイドミル、ジェットミル、ビーズミル、ニーダー、ホモジナイザー、及びプロペラレスミキサー等の方式を採用することができる。
【0047】
また、本発明の導電性接着剤硬化物は、上記の本発明の導電性接着剤組成物を硬化させることにより得られる。硬化の方法は特に限定されないが、例えば、導電性接着剤組成物を100〜250℃で0.5〜3時間熱処理することで、導電性接着剤硬化物を得ることができる。
【0048】
本発明の導電性接着剤硬化物の熱伝導率は、被接着材料の放熱性を確保するために、5W/m・K以上であることが好ましく、10W/m・K以上であることがより好ましく、20W/m・K以上であることがさらに好ましい。なお、導電性接着剤硬化物の熱伝導率は、実施例の欄に記載の方法を用いて算出することができる。
【0049】
また、本発明の導電性接着剤組成物を用いて接着を行う際には、通常加熱により導電性接着剤組成物を硬化させて接着を行う。その際の加熱の温度は特に限定はされないが、導電性フィラー(B)同士、及び、被接着材料と導電性フィラー(B)との間に、互いに点接触した近接状態を形成させ、接着部としての形状を安定させるために、100℃以上であることが好ましく、130℃以上であることがより好ましく、150℃以上であることがさらに好ましい。
また、導電性フィラー(B)同士の結合が過度に進行し導電性フィラー(B)間のネッキングが生じて強固に結合し、硬すぎる状態となることを避けるために、250℃以下であることが好ましく、230℃以下であることがより好ましく、210℃以下であることがさらに好ましい。
【0050】
本発明の導電性接着剤組成物を用いて被接着材料を接着した場合に、繰り返し温度変化を受けた場合にも被接着材料の剥離が生じにくくなっていることを評価する方法としては、種々の方法が挙げられるが、例えば、実施例において後述する方法で冷熱サイクル試験を行い、試験後の剥離面積の割合を実施例において後述する方法で測定する方法が挙げられる。当該方法で測定した剥離面積の割合は20%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましく、10%以下であることがさらに好ましい。
【0051】
本発明の導電性接着剤組成物は、電子機器における部品の接着に用いることができる。
【実施例】
【0052】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0053】
A.導電性接着剤組成物の調製
表1に記載された各材料を三本ロールにて混練し、表1に示す組成の導電性接着剤組成物を調製した(表1中の各材料の数値は導電性接着剤組成物の総質量に対する含有量(質量%)を表す)。使用した材料は下記の通りである。なお、混練の順番は、(C1)〜(C4)、(A)、(B)、溶剤の順である。
【0054】
[有機酸(A)]
・アビエチン酸:酸解離定数pKa:4.64、分子量:302.44、融点:139℃
・セバシン酸:酸解離定数pKa
1:4.72、分子量:202.25、融点:131℃
・アスコルビン酸:酸解離定数pKa:4.17、分子量:176.12、融点:190℃
[他の有機酸]
・ステアリン酸:酸解離定数pKa:5、分子量:284.48、融点:69.6℃
[導電性フィラー(B)]
・銀粒子1:フレーク状、平均粒子径d50:4μm、タップ密度:6.7g/cm
3、田中貴金属工業社製
・銀粒子2:球状、平均粒子径d50:0.8μm、タップ密度:5.5g/cm
3、田中貴金属工業社製
・銀粒子3:球状、平均粒子径d50:50nm
・銀コート銅粒子:フレーク状、平均粒子径d50:6μm、銀含有量20質量%、Metalor社製
[バインダ樹脂(C1)、希釈剤(C2)、硬化剤(C3)、硬化促進剤(C4)]
・バインダ樹脂1:フェノールノボラック型(「EPALLOY(登録商標) 8330」(商品名)、Emerald Performance Materials社製、室温で液状、エポキシ当量:177g/eq
・バインダ樹脂2:「EPICLON(登録商標) 830−S」(商品名)、大日本インキ化学工業社製、室温で液状、エポキシ当量:169g/eq
・バインダ樹脂3:「アデカレジン(登録商標) EP−3950L」(商品名)、ADEKA社製、室温で液状、エポキシ等量:95g/eq
・希釈剤:2官能反応性希釈剤(アデカグリシロール(登録商標) ED−523L、ADEKA社製)
・硬化剤:フェノール系硬化剤(MEH8000H、明和化成社製)
・硬化促進剤:2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール(2PHZ)
[他の成分]
・溶剤:ブチルカルビトールアセテート(東京化成工業社製)
【0055】
B.物性評価
(熱伝導率)
得られた導電性接着剤組成物を10mm×10mmの銀メッキした銅リードフレームに塗布し、塗布面に5mm×5mmの銀スパッタリングシリコンチップを戴置後、窒素雰囲気下、250℃で60分加熱し、銀メッキした銅リードフレームと銀スパッタリングしたシリコンチップが導電性接着剤硬化物により接合された接合体(以下、単に「接合体」ともいう)を作製した。
得られた接合体の熱伝導率を表1に示す。
なお、熱伝導率λ(W/m・K)は、レーザーフラッシュ法熱定数測定装置(「TC−7000」(商品名)、ULVAC−RIKO社製)を用いてASTM−E1461に準拠して測定した熱拡散a、ピクノメーター法により算出した室温での比重d、および、示差走査熱量測定装置 (「DSC7020」(商品名)、セイコー電子工業社製)を用いてJIS−K7123 2012に準拠して測定した室温での比熱Cpを用いて、関係式λ=a×d×Cpにより算出した。
【0056】
(剥離面積)
また、得られた接合体を用いて冷熱サイクル試験を行い、剥離面積を測定した。この試験では、基板を−50℃に30分間保持した後に150℃に30分間保持する操作を1サイクルとして2000サイクル繰り返し、試験後のシリコンチップの剥離面積の割合を測定した。結果を表1に示す。
なお、剥離面積の割合は、超音波映像・検査装置「Fine SAT」(商品名)で得られた2000サイクル後の剥離状態の画像を二値化ソフト「image J」で濃淡を白と黒の二階調に画像変換し、以下の関係式で求めた。
剥離面積の割合(%)=剥離面積(黒色画素数)÷チップ面積(黒色画素数+白色画素数)×100
【0057】
(室温接合強度)
得られた導電性接着剤組成物を10mm×10mmの銀メッキした銅リードフレームに塗布し、塗布面に2mm×2mmの銀スパッタリングシリコンチップを戴置後、窒素雰囲気下、250℃で60分加熱し、銀メッキした銅リードフレームと銀スパッタリングしたシリコンチップが導電性接着剤硬化物により接合された接合体(以下、単に「接合体」ともいう)を作製した。得られた接合体に対してノードソン・アドバンスト・テクノロジー社製のボンドテスター4000を用いて室温において破壊試験を行い、室温における接合強度を得た。室温接合強度は、20MPa以上であれば良好な接合強度であるといえる。
【0058】
(260℃接合強度)
得られた導電性接着剤組成物を10mm×10mmの銀メッキした銅リードフレームに塗布し、塗布面に2mm×2mmの銀スパッタリングシリコンチップを戴置後、窒素雰囲気下、250℃で60分加熱し、銀メッキした銅リードフレームと銀スパッタリングしたシリコンチップが導電性接着剤硬化物により接合された接合体(以下、単に「接合体」ともいう)を作製した。得られた接合体に対してノードソン・アドバンスト・テクノロジー社製のボンドテスター4000を用いてステージを260℃に加熱して破壊試験を行うことにより、260℃における接合強度を得た。260℃接合強度は、10MPa以上であれば良好な接合強度であるといえる。
【0059】
【表1】
【0060】
表1に示すように、実施例で得られた接合体は、比較例で得られた接合体と比べて冷熱サイクル試験後の剥離面積が少なかった。
この結果から、本発明の導電性接着剤組成物によれば、繰り返し温度変化を受けた場合にも被接着材料の剥離が生じにくく、熱伝導率にも優れた接着を達成できることが確認された。