(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記2枚の異形プレートの回転中心を座標中心とした二次元座標に、少なくとも前記外周縁の曲率が異なる領域ごとに前記第2ノズルの向きが座標表記されたノズル姿勢マップを有し、
前記制御部は、前記ノズル姿勢マップに基づいて前記第2ノズルの向きを制御するものであることを特徴とする請求項1に記載の溶接装置。
前記ノズル駆動部による前記第2ノズルの向き変動動作と共に、前記第2ノズルを前記外周縁に向かって接近させるリンク機構を備えることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の溶接装置。
前記第1ノズルは前記リンク機構に取り付けられ、前記第2ノズルの向き変動動作と共に前記リンク機構によって前記第2ノズルと同一方向へ回動されることを特徴とする請求項5に記載の溶接装置。
前記複数のノズルに設けられ、前記ノズルから噴射されるシールドガスを前記異形プレートの表裏面に交差する方向に設けられ、シールドガス噴射空間を両側から覆う一対の耐熱性カバーを備えることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の溶接装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
真円形プレートを回転させ、溶接トーチを外周縁に対向配置して外周縁同士を溶接する場合、回転中心と外周縁との距離は常に一定であるので、アフタシールドノズルを溶接された外周縁に対して適当な距離に配置して酸化防止効果を高めることは容易である。
しかし、回転中心から外周縁までの長さが周方向で異なる異形プレートの外周縁同士を同じ方法で溶接する場合、外周縁の周方向で回転中心と外周縁との距離が異なるので、アフタシールドノズルを溶接された外周縁に対して常に最適な位置に配置することは容易ではない。
【0005】
幾つかの実施形態は、異形プレートの外周縁同士を溶接する場合に、溶接部の酸化防止効果を向上させ、溶接焼けなどの溶接欠陥を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)幾つかの実施形態に係る溶接装置は、
重ね合った2枚の異形プレートの外周縁同士を溶接する溶接装置であって、
前記2枚の異形プレートが重ね合った状態で固定される回転台と、
前記回転台に固定された前記2枚の異形プレートの外周縁に対向する位置に配置される溶接トーチを有するトーチユニットと、
前記溶接トーチより前記回転台の回転方向下流側に位置して前記溶接トーチに設けられ、前記回転方向に沿って並設されて前記外周縁に向かってシールドガスを噴射し、前記回転方向上流側に位置する第1ノズル及び前記回転方向下流側に位置する第2ノズルを含む複数のノズルを有するアフタシールド部と、
前記溶接トーチに設けられ前記第2ノズルを前記外周縁の周方向(前記回転方向と同一方向又は逆方向)へ回動させるノズル駆動部と、
前記第2ノズルから噴射される前記シールドガスが前記溶接トーチで溶接された前記外周縁に到達する距離が短くなる方向へ前記ノズルの向きを制御する制御部と、
を備える。
【0007】
本明細書において、「異形プレート」とは、プレートが回転台に固定されたとき、回転中心から外周縁までの長さが周方向で異なるプレートを言う。例えば、外周縁が真円形のように周方向で同一の曲率を有する円弧で構成されるものではなく、周方向で異なる曲率を有するものである。例えば、楕円形のプレートなどが該当するが、楕円形のように外周縁が円弧のみで構成される形状に限定されない。
【0008】
溶接トーチによって外周縁同士が溶接され、溶接直後の溶接部は複数のノズルから噴射されるシールドガスによって覆われることで酸化が抑制される。
上記(1)の構成において、シールドガスによる酸化防止効果を高めるためには、異形プレートの溶接された外周縁に対してノズルを接近させることが望ましい。
【0009】
回転台の回転方向下流側に配置される第2ノズルは、外周縁の曲率によっては、溶接後の外周縁から離れてしまう場合が考えられる。そこで、上記制御部によって上記ノズル駆動部を制御し、第2ノズルを外周縁の周方向へ回動させることで、第2ノズルから噴射されるシールドガスが溶接トーチで溶接された外周縁に到達する距離を短くする。これによって、第2ノズルから噴射されるシールドガスによる酸化防止効果を向上できる。
回転方向上流側で溶接トーチの近傍に配置される第1ノズルは、必ずしも向き制御を行わなくても、酸化防止効果を得ることができる。
【0010】
また、アフタシールド部は溶接トーチに設けられ、溶接トーチと共に移動するため、独自の駆動部を必要とせず、低コスト化できる。また、複数のノズルを溶接トーチに設けることで、溶接トーチに対する複数のノズルの相対位置を溶接された外周縁に対するシールドガスの噴射タイミングが最適となるように予め正確に位置決めできる。
【0011】
(2)一実施形態では、前記(1)の構成において、
前記制御部は、前記2枚の異形プレートの回転中心を座標中心とした二次元座標に、少なくとも前記外周縁の曲率が異なる領域ごとに前記第2ノズルの向きが座標表記されたノズル姿勢マップを有し、
前記制御部は、前記ノズル姿勢マップに基づいて前記第2ノズルの向きを制御するものである。
上記(2)の構成によれば、ノズル姿勢マップに基づいて第2ノズルの向きが酸化防止効果を高めることができるように予め設定されるため、溶接後の外周縁の酸化防止効果を向上できる。
【0012】
(3)一実施形態では、前記(2)の構成において、
前記ノズル姿勢マップにおいて、
前記第2ノズルの向きは、前記第2ノズルに相対する前記外周縁の接線に対する前記ノズルの軸線の角度で表される。
上記(3)の構成によれば、ノズル姿勢マップにおいて、第2ノズルの向きを外周縁の接線に対する第2ノズルの軸線の角度で表すことで、上記二次元座標で第2ノズルの向きを設定するのが容易になる。
【0013】
(4)一実施形態では、前記(1)〜(3)の何れかの構成において、
前記ノズル駆動部は、
前記第2ノズルに回動可能に取り付けられたピストンロッドを有するエアシリンダを含む。
上記(4)の構成によれば、上記ノズル駆動部を上記エアシリンダで構成することで簡素化かつ軽量化できる。そのため、ノズル駆動部を溶接トーチに設けてもトーチユニットの重量化をまねかず、トーチユニットの作動の負担とならない。
【0014】
(5)一実施形態では、前記(1)〜(4)の何れかの構成において、
前記ノズル駆動部による前記第2ノズルの向き変動動作と共に前記第2ノズルを前記外周縁に向かって接近させるリンク機構を備える。
上記(5)の構成によれば、第2ノズルはノズル駆動部による向き変動動作と共に外周縁に接近できるので、シールドガスによる溶接部の遮蔽効果を高め、溶接部の酸化防止効果をさらに向上できる。
【0015】
(6)一実施形態では、前記(5)の構成において、
前記第1ノズルは前記リンク機構に取り付けられ、前記第2ノズルの向き変動動作と共に前記リンク機構によって前記第2ノズルと同一方向へ回動可能に構成されている。
上記(6)の構成によれば、第2ノズルの向き変動動作時に第1ノズルを協動させることで、溶接部の酸化防止効果をさらに向上できる。
【0016】
(7)一実施形態では、前記(1)〜(6)の構成において、
前記複数のノズルに設けられ、前記ノズルから噴射されるシールドガスを前記異形プレートの表裏面に交差する方向に設けられ、シールドガス噴射空間を両側から覆う一対の耐熱性カバーを備える。
上記(7)の構成によれば、上記耐熱性カバーを備えることで、ノズルから噴き出したシールドガスがノズル及び溶接された外周縁の周囲から拡散するのを抑制できるため、溶接された外周縁の酸化防止効果を向上できる。
【0017】
(8)一実施形態では、前記(7)の構成において、
前記ノズルのノズル口は矩形断面を有し、
前記耐熱性カバーは、前記矩形断面を構成し前記外周縁に沿う方向に配置された隔壁の外面に取り付けられる。
上記(8)の構成によれば、耐熱性カバーを平坦な隔壁外面に取り付けるため、耐熱性カバーの取り付けが容易になる。また、耐熱性カバーによってノズル及び溶接された外周縁の周囲を、外周縁の表裏面と交差する方向両側から挟むように覆うので、シールドガスの拡散防止効果を向上でき、溶接された外周縁の酸化防止効果を向上できる。
【発明の効果】
【0018】
幾つかの実施形態によれば、異形プレートの外周縁同士を溶接する場合に、溶接トーチに近い位置に設けられた第1ノズルだけでなく、回転方向下流側に設けられた第2ノズルから噴射されるシールドガスによる酸化防止効果を向上できるので、溶接焼けなどの溶接欠陥を抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載され又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一つの構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0021】
一実施形態に係る溶接装置10は、
図1及び
図2に示すように、溶接対象となる重ね合った2枚の異形プレートP
1及びP
2の外周縁e1及びe2同士を溶接するものである。溶接装置10は回転台12a及び12bを備え、異形プレートP
1及びP
2は重ね合った状態で回転台12a及び12b間に配置され、これら回転台によって挟持される。異形プレートP
1及びP
2は同一の大きさ及び同一の形状を有し、互いに重ね合ったとき、これらの外周縁e1及びe2は実質的に一致する。
回転台12a及び12bに固定された2枚の異形プレートP
1及びP
2の外周縁e1及びe2に対向する外側位置に溶接トーチ14が配置される。溶接トーチ14はトーチユニット16に取り付けられる。
【0022】
さらに、溶接トーチ14より回転台12a及び12bの回転方向aの下流側に位置するアフタシールド部20を備える。アフタシールド部20は、溶接トーチ14に設けられ、回転台12aおよび12bの回転方向aに沿って並設された複数のノズル22a及び22bを有する。ノズル22a及び22bはシールドガスを噴射するノズル口24a及び24bを有し、ノズル口24a及び24bは外周縁e1及びe2に向けて配置される。複数のノズル22a及び22bのうち、第1ノズル22aは回転方向上流側に配置され、第2ノズル22bは回転方向下流側に配置される。
【0023】
溶接装置10は、さらに、
図1に示すように、第2ノズル22bのノズル口24bを外周縁の周方向(回転方向aと同一方向又は逆方向)へ回動させるノズル駆動部26を備える。第2ノズル22bの向きは、
図3に示す第1制御部28によって、ノズル口24bから噴射されるシールドガスが外周縁e1及びe2の溶接部wに到達する距離が短くなる方向(通常第1ノズル22a側)へ制御される。
図5はこのように第2ノズル22bの向きが制御された状態を示す。
【0024】
上記構成において、回転台12a及び12bは例えば一定周速度で回転される。溶接トーチ14によって異形プレートP
1及びP
2の外周縁同士が溶接され、外周縁e1及びe2の溶接部wは複数のノズル22a及び22bから噴射されるアフタシールドガスによって酸化が抑制される。このとき、
図5に示すように、第1制御部28によって、ノズル口24bの向きは外周縁の溶接部wに対するシールドガス到達距離が短くなるように制御されるため、アフタシールドガスによる酸化防止効果を向上できる。これによって、溶接焼けなどの溶接欠陥を防止できる。
【0025】
このように、溶接トーチ14との間隔が第1ノズル22aより離れた第2ノズル22bの向き制御を行うことで、溶接部wの酸化防止効果を向上できる。
また、アフタシールド部20は溶接トーチ14に設けられるため、独自の駆動部を必要とせず、低コスト化できる。また、溶接トーチ14に対する複数のノズル22a及び22bの相対位置を溶接部wに対するシールドガスの噴射タイミングが最適となるように予め正確に位置決めできる。
【0026】
図6(A)は、曲率が小さい外周縁e1及びe2を溶接する場合を示し、
図6(B)は、曲率が大きい外周縁e1及びe2を溶接する場合を示す。
第1ノズル22aより回転方向下流側に配置される第2ノズル22bは、
図6(B)に示すように、溶接部wの外周縁の曲率が大きい場合、外周縁から離れてしまうおそれがある。そこで、第1制御部28によってノズル駆動部26を制御し、第2ノズル22bを外周縁の周方向(通常第1ノズル22a側)へ回動させることで、第2ノズルから噴射されるシールドガスが溶接トーチ14で溶接された外周縁に到達する距離を短くする。これによって、第2ノズルから噴射されるシールドガスによる酸化防止効果を向上できる。
回転方向上流側で溶接トーチの近傍に配置される第1ノズル22aは、必ずしも向き可変動作を行わなくても、酸化防止効果を得ることができる。
【0027】
一実施形態では、
図2及び
図3に示すように、溶接トーチ14を外周縁e1及びe2に向かって進退させる第1トーチ駆動部18を備える。
一実施形態では、異形プレートP
1及びP
2は、特許文献1に開示される真円形プレートと同様に、シェルアンドプレート式熱交換器の熱交換部を形成する。異形プレートP
1及びP
2は、上記真円形プレートと同様に、
図1に示すように、内側に冷媒が流通する内円の孔h1及びh2が形成される。内円の孔h1及びh2の内縁を3本の固定つめ(不図示)で合わせることにより、溶接対象となる2枚の異形プレートP
1及びP
2が重ね合わされた状態となる。
【0028】
一実施形態では、
図3及び
図6に示すように、第1制御部28は、回転台12a及び12bの回転中心(即ち、2枚の異形プレートP
1及びP
2の回転中心)O
1を座標中心(0,0)としたx軸及びy軸からなる二次元座標に、少なくとも外周縁の曲率が異なる領域ごとに第2ノズル22bの向きが座標表記されたノズル姿勢マップ30を有する。第1制御部28はノズル姿勢マップ30に基づいて第2ノズル22bの向きを制御する。
このように、ノズル姿勢マップ30に基づいて第2ノズル22bの向きが酸化防止効果を高めるように予め設定されるので、溶接部wの酸化防止効果を向上できる。
【0029】
一実施形態では、
図7に示すように、回転中心O
1を同一中心角θごとに領域R(R
1、R
2、・・・)に分割し、領域R(R
1、R
2、・・・)ごとに第2ノズル22bの向きを座標表記する。第1制御部28は、この座標表記に基づいて第2ノズル22bの向きを制御する。中心角θを小さくすることで、外周縁の周方向で第2ノズル22bの向きをきめ細かく設定できる。
【0030】
一実施形態では、ノズル姿勢マップ30の二次元座標において、
図6に示すように、第2ノズル22bの向きは、第2ノズル22bに相対する外周縁e1及びe2の接線Ltに対する第2ノズル22bの軸線iの角度αで表す。
このように、第2ノズル22bの向きを二次元座標上で接線Ltに対する第2ノズル22bの軸線iの角度αで表すことで、第1制御部28による第2ノズル22bの向きを設定するのが容易になる。
【0031】
一実施形態では、
図1に示すように、ノズル駆動部26は、軸31を介して第2ノズル22bに回動可能に取り付けられたピストンロッド32を有するエアシリンダ34を含む。第1制御部28はエアシリンダ34の駆動を制御する。
上記構成によれば、ノズル駆動部26をエアシリンダ34で構成することで簡素化かつ軽量化できる。そのため、ノズル駆動部26を溶接トーチ14に設けてもトーチユニット16の重量化をまねかず、トーチユニット16の作動の負担とならない。
一実施形態では、
図1に示すように、溶接トーチ14に固定板36が取り付けられ、第1ノズル22a及び第2ノズル22bは固定板36に取り付けられる。第2ノズル22bは軸38を介して固定板36に回動可能に取り付けられる。
【0032】
一実施形態では、
図8に示すように、ノズル駆動部26による第2ノズル22bの向き変動動作と共に、第2ノズル22bを外周縁e1及びe2に向かって近づけるリンク機構40を備える。
上記構成によれば、第2ノズル22bをノズル駆動部26による向き変動動作と共に外周縁e1及びe2に接近させることができるので、シールドガスによる溶接部wの遮蔽効果をさらに向上できる。これによって、シールドガスによる溶接部wの酸化防止効果をさらに向上できる。
【0033】
図5において、溶接部wが外周縁e1及びe2の曲率が大きい部位であるとき、第2ノズル22bの軸線iを回転方向aと逆方向へ傾けて溶接部wに対するシールドガス噴射距離を短くする状態を示している。
22bは、ノズル駆動部26によって第2ノズル22bを第1ノズル22a側へ回動させる実施形態のときの第2ノズル22bの位置を示す。22b’は、
図8に示すリンク機構40をさらに備え、第2ノズル22bの回動と同時にリンク機構40によって第2ノズル22bを溶接部w側へ接近したときの第2ノズルの位置を示す。
【0034】
一実施形態では、
図8に示すように、第1ノズル22aはリンク機構40に取り付けられ、第2ノズル22bの回動と共にリンク機構40によって第2ノズル22bと同一方向(即ち溶接トーチ14側)へ回動可能に構成されている。
上記構成によれば、第2ノズル22bの回動動作時に第1ノズル22aを溶接トーチ14側へ回動させることで、シールドガスによる溶接部wの遮蔽効果をさらに向上でき、これによって、溶接部wの酸化防止効果をさらに向上できる。
【0035】
一実施形態では、
図8に示すように、リンク機構40はリンク42a、42b及び42cを含む。リンク42aの一端はエアシリンダ34に接続され、他端はリンク42bの一端と軸44aによって回動可能に接続されている。リンク42bは軸方向中央で軸31に回動可能に支持され、リンク42bの他端はリンク42cの一端と軸44bによって回動可能に接続されている。リンク42cの他端は軸44cによって固定板36に回動可能に接続されている。
ピストンロッド32が伸びると、第2ノズル22bは第1ノズル22a側へ傾くと共に、外周縁e1及びe2へ接近する。同時に第1ノズル22aも溶接トーチ14側(矢印方向)へ傾く。
これによって、溶接部wの溶接直後に溶接部wを第1ノズル22a及び第2ノズル22bから噴射されるシールドガスによる遮蔽効果をさらに向上でき、溶接部wの酸化防止効果をさらに向上できる。
【0036】
一実施形態では、
図9に示すように、複数のノズル22a及び22bに一対の耐熱性カバー46a及び46bが設けられる。一対の耐熱性カバー46a及び46bは、これらのノズルから噴射されるシールドガスGを異形プレートP
1及びP
2の表裏面に対して交差する方向に設けられ、シールドガス噴射空間を両側から覆う。
上記構成によれば、耐熱性カバー46a及び46bを備えることで、第1ノズル22a及び第2ノズル22bから噴き出したシールドガスが溶接部付近から拡散するのを抑制できるため、溶接部wの酸化防止効果を向上できる。
【0037】
一実施形態では、
図9に示すように、第1ノズル22a又は第2ノズル22bのノズル口24a及び24bは矩形断面を有する。耐熱性カバー46a及び46bは、ノズル口24a及び24bの矩形断面を構成し外周縁e1及びe2に沿う方向に配置された隔壁25a及び25bの外面に取り付けられる。
上記構成によれば、耐熱性カバー46a及び46bを平坦な隔壁外面に取り付けるため、耐熱性カバー46a及び46bの取り付けが容易になる。また、シールドガスGの溶接部wへの噴き付け時に、耐熱性カバー46a及び46bによって溶接部wを外周縁e1及びe2の表裏面と交差する方向両側から挟むように覆うので、溶接部wからのシールドガスGの拡散を効果的に抑制でき、溶接部wの酸化防止効果を向上できる。
耐熱性カバー46a及び46bは、例えば、耐熱ガラス製クロスで構成される。耐熱ガラス製クロスで構成することで軽量化が図られ、ノズルの向き制御が容易になる。
【0038】
一実施形態では、第2ノズル22bの向き変動動作と共に、第1ノズル22aを第2ノズル22bと同一方向へ回動させるリンク機構40を備える実施形態において、
図3に示すように、第1ノズル22a及び第2ノズル22bの向きが座標表記されたノズル姿勢マップ30を有する。そして、第1制御部28はノズル姿勢マップ30に基づいて第1ノズル22a及び第2ノズル22bの向きを制御する。
このように、第1制御部28によってノズル姿勢マップ30に基づいて第1ノズル22a及び第2ノズル22bの向きを制御するため、異形プレートP
1及びP
2の外周縁の形状に即応して外周縁e1及びe2の周方向に沿って第1ノズル22a及び第2ノズル22bから噴射シールドガスの溶接部wへの到達距離を常に短くすることができる。これによって、外周縁e1及びe2の周方向全域で溶接部wの酸化防止効果を向上できる。
【0039】
一実施形態では、第2ノズル22bの角度とリンク機構40の構成とによって、第1ノズル22aの角度が自動的に決定される。
これによって、第1ノズル22aの駆動部及び制御部が不要となり、低コスト化できる。
【0040】
一実施形態では、回転台12a及び12bは一定速度で回転すればよいので、該回転台の駆動部を簡素化かつ低コスト化できる。また、溶接トーチ14は外周縁e1及びe2の周方向に対して移動させる必要がなく、基本的に固定配置となるので、溶接トーチ14を外周縁の周方向へ移動させるための駆動部を必要とせず低コスト化できる。
【0041】
一実施形態では、
図1及び
図2に示すように、溶接トーチ14が取り付けられるトーチユニット16は、レール48の長手方向(
図1の矢印b方向)にスライド可能に取り付けられる。トーチユニット16は、第1トーチ駆動部18が設けられる第1ブロック16aと、溶接トーチ14が設けられる第2ブロック16bとで構成される。
一実施形態では、
図2及び
図3に示すように、第1トーチ駆動部18は、外周縁e1及びe2の接線に対する溶接トーチ14の向きを可変とする向き可変部18aと、外周縁e1及びe2に対する溶接トーチ14の間隔を可変とする間隔可変部18bとを含む。
一実施形態では、間隔可変部18bは、外周縁e1及びe2に対する溶接トーチ14の先端の間隔を可変とする。
【0042】
一実施形態では、向き可変部18aは、
図1に示すように、円弧形状を有するレール48を含む。レール48は外周縁e1及びe2と対向する位置に設けられ、かつこれら外周縁の周方向に沿って延設される。一実施形態では、溶接トーチ14の先端は、間隔可変部18bによって外周縁e1及びe2に対して進退する方向(
図1の矢印d方向)へ直線状に移動可能であり、これによって、溶接トーチ14の先端を常に外周縁e1及びe2上に配置できる。レール48の円弧中心を溶接トーチ14の先端の移動線上でかつ外周縁上の1点に設定することで、この1点に溶接トーチ14の先端を合わせながら、外周縁e1及びe2に対する溶接トーチ14の向きを変えることができる。
なお、実際の溶接では、溶接トーチ14の先端は、外周縁e1及びe2に対して外側に微小間隔だけずらした位置に配置される。
【0043】
一実施形態では、向き可変部18aは、
図2に示すように、レール48の表面に設けられたラック50と、ラック50に噛合うピニオン52と、ピニオン52を駆動する駆動部54とで構成される。駆動部54でピニオン52を駆動することで、トーチユニット16はレール48の長手方向に沿って移動する。ピニオン52は台56に回動可能に支持され、駆動部54及び台56は支持台58に固定される。
【0044】
一実施形態では、間隔可変部18bは、
図2に示すように、支持台58に回動可能に支持されるボールネジ60と、支持台58に設けられた駆動部62と、支持台58と一体でボールネジ60と螺合するスライドブロック63とで構成される。スライドブロック63が固定される支持台59は第2ブロック16bの一部を構成する。
駆動部62によってボールネジ60が回動し、外周縁e1及びe2に対する溶接トーチ14の先端の間隔を可変とする。
【0045】
一実施形態では、
図2及び
図4に示すように、第2ブロック16bは、溶接トーチ14を2枚の異形プレートP
1及びP
2の表裏面と交差する方向(例えば
図2の矢印f方向)へ移動可能にする第2トーチ駆動部64と、外周縁e1及びe2に対する溶接トーチ14の間隔を可変とする第3トーチ駆動部66と、を含む。さらに、
図1に示すように、2枚の異形プレートP
1及びP
2の表裏面と交差する方向の重ね合わせ位置及び外周縁e1及びe2に対する溶接トーチ14の間隔を検出する非接触センサ68を備える。
図4に示すように、非接触センサ68の検出値は第2制御部29に入力される。第2制御部29は、異形プレートP
1及びP
2の表裏面と交差する方向において溶接トーチ14の位置が異形プレートP
1及びP
2の重ね合わせ位置に一致するように第2トーチ駆動部64を制御する。また、第2制御部29は、溶接トーチ14と外周縁e1及びe2との間隔が設定値となるように第3トーチ駆動部66を制御する。
【0046】
上記構成によれば、向き可変部18a及び間隔可変部18bによって、外周縁e1及びe2に対する溶接トーチ14の向き及び間隔を外周縁の周方向に沿って設定値に保持できる。また、非接触センサ68の検出によるフィードバック制御により、溶接トーチ14を常に外周縁e1及びe2の重ね合わせ位置に位置させることができるので、溶接部wの入熱量を確保できる。また、上記フィードバック制御によって外周縁e1及びe2に対する溶接トーチ14の間隔を常に設定値に保持できるので、外周縁の周方向に沿って溶接部wの溶け込み深さを均一化でき、溶け込み不足による溶接欠陥を抑制できる。
【0047】
一実施形態では、
図2に示すように、第2トーチ駆動部64は、固定ブロック70と共に支持台72に固定される駆動部74を含む。矢印f方向に配置されたネジ軸76が支持台59を下方から支持する。固定ブロック70では、ネジ軸76とボールネジ78とが互いに交差する方向で螺合し、駆動部74によってボールネジ78及びネジ軸76が回動する。ネジ軸76が回動することで、固定ブロック70及び支持台72が異形プレートP
1及びP
2の合わせ面sと交差する方向(矢印f方向)へ平行移動する。
【0048】
一実施形態では、
図2に示すように、第3トーチ駆動部66は、支持台72に支持されボールネジ80を回動する駆動部82を含む。ボールネジ80にはトーチ本体84に固定されたスライドブロック86が螺合し、ボールネジ80が回動すると、トーチ本体84は外周縁e1及びe2に対して進退する方向へ直線状に移動する。
一実施形態では、
図2に示すように、非接触センサ68は固定板88を介して第2ブロック16bに固定される。従って、非接触センサ68は溶接トーチ14と共に矢印b、d及びf方向へ移動するため、独自の移動手段を必要としない。
一実施形態では、各駆動部54、62、74及び82は、正逆回転可能なサーボモータで構成され、第1制御部28又は第2制御部29によって正逆方向へ回転する。
【0049】
一実施形態では、非接触センサ68はレーザ変位センサであり、第2制御部29は、レーザ変位センサの検出値と第2制御部29に記憶されたマスタ形状とを比較することで、異形プレートP
1及びP
2の重ね合わせ位置、及び外周縁e1及びe2と溶接トーチ14間の間隔を検出する。
このように、非接触センサとしてレーザ変位センサを用い、溶接光などの外乱によって乱されないレーザ光を用いるので、検出精度を向上できる。
特に、波長が長い青色レーザ光を発振するレーザ変位センサを用いることで、さらに検出精度を向上できる。
【0050】
一実施形態では、
図3に示すように、第1制御部28は、トーチ姿勢マップ90及びトーチ向き変位速度マップ92を内蔵している。
トーチ姿勢マップ90は、
図6の(A)及び(B)に示すように、x軸及びy軸からなる二次元座標が用いられる。この二次元座標の座標中心(0、0)に回転台12a及び12bの回転中心(即ち、異形プレートP
1、P
2の回転中心)O
1が配置される。
そして、
図7に示すように、少なくとも外周縁e1、e2の曲率が異なる領域R(R
1、R
2、・・・)ごとに外周縁を分割し、分割された領域の各々の設定位置v(v1、v2、・・・)で溶接トーチ14の位置及び向きが座標表記される。溶接トーチ14の向きは、
図6に示すように、すべての領域の設定位置で外周縁の接線Ltに対し同一角度となるように設定される。
【0051】
トーチ向き変位速度マップ92は、領域R(R
1、R
2、・・・)の各々の設定位置v(v1、v2、・・・)の間で、溶接トーチ14による加熱時間が一定となるように、溶接トーチ14の向き変位速度が設定されたマップである。
第1制御部28は、トーチ姿勢マップ90及びトーチ向き変位速度マップ92に基づいて第1トーチ駆動部18を制御する。
【0052】
溶接トーチ14は、トーチ姿勢マップ90に基づいて少なくとも外周縁e1及びe2の曲率が異なる領域ごとに位置及び向きを設定され、かつ外周縁に対する溶接トーチ14の向きは、すべての領域で同一角度に設定されるので、外周縁の周方向に沿って溶け込み不足による溶接欠陥を抑制できる。
トーチ向き変位速度マップ92は、領域R(R
1、R
2、・・・)の各々の設定位置v(v1、v2、・・・)で溶接トーチによる加熱時間が一定となるように、溶接トーチ14の向き変位速度が設定されるため、外周縁の周方向に沿って溶け込み深さを均一化でき、溶け込み不足による溶接欠陥をなくすことができる。
溶接トーチ14の向き変位速度は、異形プレートP
1及びP
2の回転方向aに対して、溶接トーチ14の向きを同一方向へ変位させるか、あるいは逆方向へ変位させるかによって容易に変えることができる。
【0053】
一実施形態では、
図6に示すように、トーチ姿勢マップ90において、溶接トーチ14の先端が二次元座標のy軸と外周縁e1、e2との交点Piに座標表記され,交点Piを通る仮想円Cが設定される。そして、溶接トーチ14の向きは交点Piと仮想円Cの中心点O
2とを通る法線Lnに対して一定の角度を有するように設定される。なお、
図6(A)は、回転台12a、12bの回転中心O
1と仮想円Cの中心点O
2とが一致する場合を示し、
図6(B)は、回転台12a、12bの回転中心O
1と仮想円Cの中心点O
2とが不一致の場合を示す。
【0054】
このように、溶接トーチ14の先端が交点Piに座標表記されることで、第1制御部28により、異形プレートの任意の回転位置で、溶接トーチ14の先端が常に交点Piに位置するように制御される。従って、溶接トーチ14の位置設定が容易になる。また、溶接トーチ14の向きが法線Lnに対して一定の角度を有するように設定されるため、溶接トーチ14の向きを外周縁の接線Lt’に対して常に一定の角度とすることができる。これによって、溶け込み深さを外周縁の周方向に沿って均一化でき、溶け込み不足による溶接欠陥を抑制できる。
なお、実際の溶接時には、溶接トーチ14の先端は交点Piから微小距離だけ外周縁e1及びe2の外側へずらした位置に配置される。
【0055】
一実施形態では、
図10に示すように、溶接トーチ14の向きは法線Lnと一致するように設定される。これによって、溶接トーチ14を外周縁の接線Lt’に対して直角に配置できるため、外周縁の入熱量を最大にできる。従って、外周縁の溶け込み深さを最大にできるため、溶け込み不足による溶接欠陥を抑制できる。
図10(A)は、溶接トーチ14の向きが法線Lnと一致する例を示し(例1)、
図11(A)は、溶接トーチ14の向きが法線Lnと一致せず、法線Lnと角度βだけ異なる例を示す(例2)。例1の場合、外周縁の入熱量は最大となるため、
図10(B)に示すように、溶接部wの溶け込み深さm1は最大となる。例2では、例1と比べて外周縁の入熱量は低減するため、
図11(B)に示すように、溶接部wの溶け込み深さm2は例1より低減する。
【0056】
なお、1つの制御部が第1制御部28及び第2制御部29の機能をすべて併せ持つようにしてもよい。
また、外周縁の分割領域R(R
1、R
2、・・・)を細分化するほど、溶接トーチ14の位置及び向きを精密に制御できる。例えば、中心角度θを1°〜2°ごとに外周縁を分割すれば、溶接トーチ14の位置及び向きを更に精密に制御できる。
【0057】
なお、溶接トーチ14は、例えば、可燃性ガスの燃焼熱でガス溶接機によって被溶接材を加熱して溶接するガス溶接、被溶接材と溶接トーチとの間にアークを発生させて被溶接材を溶融するアーク溶接(プラズマ溶接を含む。)、その他任意の溶接方法で用いられる溶接トーチを使用可能である。