特許第6584832号(P6584832)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6584832グロー放電発光分析装置、試料ホルダ及びグロー放電発生方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6584832
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】グロー放電発光分析装置、試料ホルダ及びグロー放電発生方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/67 20060101AFI20190919BHJP
【FI】
   G01N21/67 C
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-122263(P2015-122263)
(22)【出願日】2015年6月17日
(65)【公開番号】特開2016-27327(P2016-27327A)
(43)【公開日】2016年2月18日
【審査請求日】2018年3月15日
(31)【優先権主張番号】特願2014-132995(P2014-132995)
(32)【優先日】2014年6月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000155023
【氏名又は名称】株式会社堀場製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】藤本 明良
(72)【発明者】
【氏名】中村 龍人
(72)【発明者】
【氏名】茂原 治久
【審査官】 吉田 将志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−110299(JP,A)
【文献】 実開平04−127562(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0231590(US,A1)
【文献】 特開昭57−066642(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/62−74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部が形成されたハウジング、及び前記開口部に筒状の端部が臨むように前記ハウジング内に配置された第1電極を有するグロー放電管と、該グロー放電管の内部を減圧する減圧部と、前記開口部を通して前記端部に対向する位置に試料を保持する試料ホルダとを備え、前記第1電極と前記試料との間でグロー放電を発生させ、前記試料のグロー放電発光分析を行うグロー放電発光分析装置において、
前記試料ホルダは、
試料が固定される試料固定面を有しており、グロー放電を発生させるための電圧が前記第1電極との間で印加される第2電極と、
冷媒を用いて該第2電極を冷却する冷却部と、
開口端が前記開口部よりも大きい有底筒状をなし、内側に前記試料固定面が配置されており、前記試料固定面に固定された試料が前記端部に対向するように前記開口端が前記開口部の周縁に当接される当接部とを有し、
該当接部は、
前記開口端が塞がれた状態で内部が気密状態になるように構成され、
前記開口端が前記開口部の周縁に当接された状態で前記試料を前記端部へ接近させるように伸縮することが可能であり、
前記減圧部は、
前記当接部が前記開口部の周縁に当接され、前記試料が前記開口部から離れた状態で、前記グロー放電管及び前記当接部の内部を減圧するように構成してあること
を特徴とするグロー放電発光分析装置。
【請求項2】
前記減圧部が前記グロー放電管及び前記当接部の内部を減圧した後に、前記グロー放電管及び前記当接部の内部へ所定のガスを供給するガス供給部を更に備えること
を特徴とする請求項1に記載のグロー放電発光分析装置。
【請求項3】
前記冷却部は、
前記第2電極の外に冷媒を配置する冷媒配置部と、
前記第2電極から前記冷媒配置部へ熱を伝導させる熱伝導部とを有すること
を特徴とする請求項1又は2に記載のグロー放電発光分析装置。
【請求項4】
グロー放電管を用いてグロー放電を発生させるための試料を保持する試料ホルダにおいて、
試料が固定される試料固定面を有しており、グロー放電を発生させるための電圧が印加される電極と、
冷媒を用いて該電極を冷却する冷却部と、
開口端を有する有底筒状をなし、内側に前記試料固定面が配置されており、前記開口端がグロー放電管に当接される当接部とを備え、
該当接部は、
前記開口端が塞がれた状態で内部が気密状態になるように構成され、
伸縮することが可能になっていること
を特徴とする試料ホルダ。
【請求項5】
前記当接部は、
内側に前記試料固定面が配置された有底の外筒部と、
両端が開口した筒状をなし、前記外筒部に対して軸方向に摺動可能に少なくとも一部が前記外筒部に同軸に内嵌した内筒部と
を有することを特徴とする請求項4に記載の試料ホルダ。
【請求項6】
前記当接部は、
内側に前記試料固定面が配置され、底が塞がれた内筒部と、
両端が開口した筒状をなし、前記内筒部に対して軸方向に摺動可能に少なくとも一部が前記内筒部に同軸に外嵌した外筒部と
を有することを特徴とする請求項4に記載の試料ホルダ。
【請求項7】
前記冷却部は、
前記電極の外に冷媒を配置する冷媒配置部と、
前記電極から前記冷媒配置部へ熱を伝導させる熱伝導部とを有すること
を特徴とする請求項4乃至6のいずれか一つに記載の試料ホルダ。
【請求項8】
開口部が形成されたハウジング、及び前記開口部に筒状の端部が臨むように前記ハウジング内に配置された電極を有するグロー放電管と、請求項乃至のいずれか一つに記載の試料ホルダとを用いてグロー放電を発生させる方法であって、
前記試料ホルダの試料固定面に試料を固定し、
固定された試料が前記端部に対向するように、前記試料ホルダの当接部の開口端を前記開口部の周縁に当接させ、
前記試料固定面に固定された試料が前記開口部から離れた状態で、前記グロー放電管及び前記当接部の内部を減圧し、
前記当接部を短縮させて、前記試料を前記端部へ接近させ、
前記試料ホルダの冷却部へ冷媒を供給して、前記試料ホルダの電極の冷却を開始し、
前記グロー放電管の電極と前記試料ホルダの電極との間に、グロー放電を発生させるための電圧を印加すること
を特徴とするグロー放電発生方法。
【請求項9】
前記グロー放電管及び前記当接部の内部を減圧した後、前記試料ホルダの電極の冷却を開始する前に、前記グロー放電管及び前記当接部の内部へ所定のガスを供給すること
を特徴とする請求項8に記載のグロー放電発生方法。
【請求項10】
前記試料が前記開口部を塞ぐ位置まで前記試料を前記端部へ接近させること
を特徴とする請求項8又は9に記載のグロー放電発生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グロー放電発光分析に用いるグロー放電発光分析装置、試料ホルダ及びグロー放電発生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、試料に含まれる成分を分析するために、グロー放電を利用して成分の分析を行うグロー放電発光分析が行われている。グロー放電を発生させるためのグロー放電管は、円筒部を有する電極を備えており、分析対象の試料が円筒部に対向するように配置され、グロー放電管内へ不活性ガスが供給され、電極の円筒部と試料との間に電圧が印加されることでグロー放電が発生する。グロー放電によって発生したイオンにより試料の表面はスパッタリングされ、スパッタリングによって試料から放出された原子等の粒子は励起されて発光する。
【0003】
スパッタリングによって試料には熱が発生し、試料によっては溶融する虞がある。従来のグロー放電管は、電極の円筒部が臨んだ開口部を試料で塞ぐことで減圧状態を保っているので、試料が溶融した場合は、減圧状態が保たれなくなり、グロー放電の継続が困難になる。また、試料中の元素が熱によって移動し、深さ方向の元素分布が変化する可能性がある。試料の元素分布が変化した場合、試料の元素分布を調べることが困難になる。また、有機試料では、熱によって試料が変質する虞があり、この場合は試料の分子を分析することが困難になる。熱による影響が出ないようにスパッタリングの強度を低下させた場合は、グロー放電発光の強度が低下し、十分な分析ができなくなる。そこで、グロー放電発光分析の最中に試料を冷却することが行われる。特許文献1には、試料を保持する試料ホルダに水ジャケットを備え、試料を冷却しながらグロー放電発光分析を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3345490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
試料を効率的に冷却するためには、水よりも低温の冷媒を用いることが考えられる。しかしながら、特許文献1に開示された試料ホルダでより低温の冷媒を用いた場合は、試料が結露する虞がある。グロー放電発光分析では試料に高周波電圧を印加することでグロー放電を発生させているので、試料が結露した場合は、高周波電圧が減衰し、十分なグロー放電が発生しないという問題がある。また、特許文献1に開示された試料ホルダは、導電材製のばねを利用して試料をグロー放電発光管の開口部に押し当て、ばねを通じて試料に電圧を印加するようになっている。しかしながら、ばねを通じて電圧を試料に印加した場合は、試料に印加される電圧が不十分となり、十分なグロー放電が得られない虞がある。
【0006】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、試料を冷却しながら十分なグロー放電を発生させることができるグロー放電発光分析装置、試料ホルダ及びグロー放電発生方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るグロー放電発光分析装置は、開口部が形成されたハウジング、及び前記開口部に筒状の端部が臨むように前記ハウジング内に配置された第1電極を有するグロー放電管と、該グロー放電管の内部を減圧する減圧部と、前記開口部を通して前記端部に対向する位置に試料を保持する試料ホルダとを備え、前記第1電極と前記試料との間でグロー放電を発生させ、前記試料のグロー放電発光分析を行うグロー放電発光分析装置において、前記試料ホルダは、試料が固定される試料固定面を有しており、グロー放電を発生させるための電圧が前記第1電極との間で印加される第2電極と、冷媒を用いて該第2電極を冷却する冷却部と、開口端が前記開口部よりも大きい有底筒状をなし、内側に前記試料固定面が配置されており、前記試料固定面に固定された試料が前記端部に対向するように前記開口端が前記開口部の周縁に当接される当接部とを有し、該当接部は、前記開口端が塞がれた状態で内部が気密状態になるように構成され、前記開口端が前記開口部の周縁に当接された状態で前記試料を前記端部へ接近させるように伸縮することが可能であり、前記減圧部は、前記当接部が前記開口部の周縁に当接され、前記試料が前記開口部から離れた状態で、前記グロー放電管及び前記当接部の内部を減圧するように構成してあることを特徴とする。
【0008】
本発明に係るグロー放電発光分析装置は、前記減圧部が前記グロー放電管及び前記当接部の内部を減圧した後に、前記グロー放電管及び前記当接部の内部へ所定のガスを供給するガス供給部を更に備えることを特徴とする。
【0009】
本発明に係るグロー放電発光分析装置は、前記冷却部は、前記第2電極の外に冷媒を配置する冷媒配置部と、前記第2電極から前記冷媒配置部へ熱を伝導させる熱伝導部とを有することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る試料ホルダは、グロー放電管を用いてグロー放電を発生させるための試料を保持する試料ホルダにおいて、試料が固定される試料固定面を有しており、グロー放電を発生させるための電圧が印加される電極と、冷媒を用いて該電極を冷却する冷却部と、開口端を有する有底筒状をなし、内側に前記試料固定面が配置されており、前記開口端がグロー放電管に当接される当接部とを備え、該当接部は、前記開口端が塞がれた状態で内部が気密状態になるように構成され、伸縮することが可能になっていることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る試料ホルダは、前記当接部は、内側に前記試料固定面が配置された有底の外筒部と、両端が開口した筒状をなし、前記外筒部に対して軸方向に摺動可能に少なくとも一部が前記外筒部に同軸に内嵌した内筒部とを有することを特徴とする。
【0012】
本発明に係る試料ホルダは、前記当接部は、内側に前記試料固定面が配置され、底が塞がれた内筒部と、両端が開口した筒状をなし、前記内筒部に対して軸方向に摺動可能に少なくとも一部が前記内筒部に同軸に外嵌した外筒部とを有することを特徴とする。
【0013】
本発明に係る試料ホルダは、前記冷却部は、前記電極の外に冷媒を配置する冷媒配置部と、前記電極から前記冷媒配置部へ熱を伝導させる熱伝導部とを有することを特徴とする。
【0014】
本発明に係るグロー放電発生方法は、開口部が形成されたハウジング、及び前記開口部に筒状の端部が臨むように前記ハウジング内に配置された電極を有するグロー放電管と、本発明に係る試料ホルダとを用いてグロー放電を発生させる方法であって、前記試料ホルダの試料固定面に試料を固定し、固定された試料が前記端部に対向するように、前記試料ホルダの当接部の開口端を前記開口部の周縁に当接させ、前記試料固定面に固定された試料が前記開口部から離れた状態で、前記グロー放電管及び前記当接部の内部を減圧し、前記当接部を短縮させて、前記試料を前記端部へ接近させ、前記試料ホルダの冷却部へ冷媒を供給して、前記試料ホルダの電極の冷却を開始し、前記グロー放電管の電極と前記試料ホルダの電極との間に、グロー放電を発生させるための電圧を印加することを特徴とする。
【0015】
本発明に係るグロー放電発生方法は、前記グロー放電管及び前記当接部の内部を減圧した後、前記試料ホルダの電極の冷却を開始する前に、前記グロー放電管及び前記当接部の内部へ所定のガスを供給することを特徴とする。
【0016】
本発明に係るグロー放電発生方法は、前記試料が前記開口部を塞ぐ位置まで前記試料を前記端部へ接近させることを特徴とする。
【0017】
本発明においては、開口部に第1電極の筒状の端部が臨んだグロー放電管と、試料を保持する試料ホルダとを備えたグロー放電発光分析装置で、グロー放電を発生させる。試料ホルダは、試料が固定される試料固定面を有する第2電極と、試料固定面を内側に配置した有底筒状の当接部とを備え、当接部の開口端がグロー放電管の開口部の周縁に当接される。当接部がグロー放電管に当接することにより、試料固定面に固定された試料が第1電極の端部に対向する。また、当接部は伸縮することが可能であり、試料が開口部から離れた状態では、グロー放電管及び当接部の内部が連通する。試料が開口部から離れた状態で、連通したグロー放電管及び当接部の内部を減圧する。当接部を短縮させて試料を第1電極の端部に近づけ、第2電極を冷媒で冷却し、第1電極及び第2電極の間にグロー放電を発生させるための電圧を印加する。当接部の内部を減圧した状態で冷却を行うので、冷却時に結露が発生し難い。また、電圧を印加される第2電極の試料固定面に試料が固定されるので、従来技術よりも直接的に試料に電圧が印加される。
【0018】
また、本発明においては、グロー放電管及び当接部の内部を減圧した後、第2電極を冷却する前に、連通したグロー放電管及び当接部の内部へ所定のガスを供給する。試料ホルダ内の空気が所定のガスで置換された状態で第2電極の冷却が行われるので、冷却時に結露が発生し難い。
【0019】
また、本発明においては、試料ホルダの当接部は、有底の外筒部と、外筒部に対して軸方向に摺動可能に外筒部に内嵌した内筒部とを有する。内筒部が外筒部に対して摺動することによって、当接部が伸縮する。
【0020】
また、本発明においては、試料ホルダの当接部は、底が塞がれた内筒部と、内筒部に対して軸方向に摺動可能に内筒部に外嵌した外筒部とを有する。外筒部が内筒部に対して摺動することによって、当接部が伸縮する。
【0021】
また、本発明においては、試料ホルダの当接部を短縮させて、試料がグロー放電管の開口部を塞ぐ位置まで試料を第1電極の端部へ接近させる。試料と第1電極の端部との距離が最短となり、グロー放電が発生し易くなる。
【発明の効果】
【0022】
本発明にあっては、グロー放電発光分析を行うために十分なグロー放電が発生する。従って、グロー放電発光分析装置は、試料を十分に冷却しながらグロー放電発光分析を行うことができる等、本発明は優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施の形態1に係るグロー放電発光分析装置の構成を示すブロック図である。
図2】実施の形態1に係るグロー放電管及び試料ホルダの内部構成を示す断面図である。
図3】実施の形態1に係る試料ホルダの内部構成を示す断面図である。
図4】実施の形態1に係る試料ホルダの使用態様を示す断面図である。
図5】グロー放電発生方法、及びグロー放電発光分析方法を説明するためのフローチャートである。
図6】実施の形態2に係る試料ホルダの内部構成を示す断面図である。
図7】実施の形態2に係る試料ホルダの使用態様を示す断面図である。
図8】実施の形態2に係る試料ホルダの使用態様を示す断面図である。
図9】実施の形態3に係るグロー放電発光分析装置の構成を示すブロック図である。
図10】実施の形態3に係る試料ホルダ2の内部構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下本発明をその実施の形態を示す図面に基づき具体的に説明する。
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係るグロー放電発光分析装置の構成を示すブロック図である。グロー放電発光分析装置は、グロー放電を発生させるグロー放電管1、試料を保持する試料ホルダ2、グロー放電により発生する光を分光して強度を測定する分光器3、グロー放電を発生させるための高周波電圧を発生させる電源部4、及びグロー放電発光分析装置の全体的な制御を行う制御部6を備えている。試料ホルダ2は、試料に電圧を印加するための電極を含んでおり、電極は電源部4に接続されている。また、試料ホルダ2は、流体の冷媒を供給されて試料を冷却する機能を有している。グロー放電発光分析装置は、試料ホルダ2へ冷媒を供給する冷媒供給部5を備えている。冷媒供給部5と試料ホルダ2との間には、冷媒が通過する配管が配置されており、冷媒供給部5は配管を介して試料ホルダ2に連結されている。冷媒は、例えば、冷水、液体窒素、又は液体窒素を気化させた窒素ガス等である。冷媒供給部5は、冷媒を回収する構成であってもよく、回収しない構成であってもよい。例えば、冷媒供給部5は、液体窒素タンクと、液体窒素を気化させるヒータとを含んでいる。
【0025】
またグロー放電発光分析装置は、グロー放電管1の内部を減圧する真空ポンプ等の減圧部7と、減圧後にグロー放電管1の内部へアルゴンガスを供給するためのガス供給部8とを備えている。減圧部7とグロー放電管1との間には、減圧用の配管が配置されている。ガス供給部8は、アルゴンガスを充填したボンベを含んでおり、ガス供給部8からグロー放電管1まで、アルゴンガスを供給するための配管が配置されている。ガス供給部8は、アルゴンガスの流量を調整するための電磁弁を具備している。
【0026】
制御部6は、コンピュータを用いてなり、演算を行う演算部、メモリ、データを記憶する記憶部、及び情報を表示する表示部を備えている。分光器3、電源部4及びガス供給部8は、制御部6に接続されている。制御部6は、分光器3、電源部4及びガス供給部8の動作を制御する。なお、制御部6は、冷媒供給部5の動作をも制御する形態であってもよい。更に、グロー放電発光分析装置は、試料ホルダ2をグロー放電管1へ押し付ける押圧部9を備えている。押圧部9は、例えばエアシリンダである。
【0027】
図2は、実施の形態1に係るグロー放電管1及び試料ホルダ2の内部構成を示す断面図である。グロー放電管1は短円柱状のランプボディ11、陽極12、セラミック部材13、及び押圧ブロック15が組み合わされて構成されている。陽極12は、グロー放電管1の電極であり、第1電極に相当する。ランプボディ11、セラミック部材13及び押圧ブロック15は、ハウジングに相当する。
【0028】
ランプボディ11には、押圧ブロック15が組み合わされる端面11aの中心箇所に陽極12を取り付けるための窪部11bが凹設されており、窪部11bの中心部に中心孔11cが穿設されている。また、ランプボディ11には、周壁部11dから中心へ向けて減圧用の吸引孔11e、11fが複数設けられている。一部の吸引孔11eは中心孔11cと連通しており、他の吸引孔11fは窪部11b側に連通している。吸引孔11e、11fには、減圧装置5に連結した配管が連結されている。また、ランプボディ11には、周壁部11dから中心へ向けてアルゴンガス供給用のガス供給孔11gを中心孔11cと連通するように形成されている。ガス供給孔11gには、ガス供給部8に連結した配管が連結されている。更に、ランプボディ11は、アース線が接続されてアース電位となっている。
【0029】
ランプボディ11の窪部11bに収められる陽極12は、円板部12aの中心から円筒部(端部)12bが突出した形状になっている。円筒部12bの内部から円板部12aを貫通する貫通孔12cが穿設されている。また、円板部12aにも穴12dが形成されている。陽極12がランプボディ11の窪部11bに取り付けられた状態では、ランプボディ11の中心孔11cと貫通孔12cとは実質的に同軸に連通している。陽極12は、ランプボディ11の窪部11bに取り付けられると、ランプボディ11を介してアース電位になる。また陽極12がランプボディ11に取り付けられた状態では、円筒部12bがランプボディ11の端面11aから突出した状態となる。陽極12が収められた状態でランプボディ11の中心孔11c及び陽極12の貫通孔12cの密閉性を維持するために、Oリングがランプボディ11及び陽極12の間に取り付けられている。
【0030】
ランプボディ11の中心孔11cの、陽極12の貫通孔12cに連通した端とは逆の端には、光を透過させる窓16が備えられている。窓16の外側には、分光器3が連結されている。分光器3は、窓16を透過して分光器3内へ入射した光を回折格子等を用いて分光し、分光した各波長の光の強度を光電子増倍管等を用いて測定する。分光器3は、制御部6に動作を制御されると共に、測定結果を制御部6へ入力する。
【0031】
陽極12を被うように配置されるセラミック部材13は、絶縁性のセラミックで構成されている。セラミック部材13は、厚みのある円板状に形成されてあり、陽極12の円板部12aを被うフランジ部13dを有している。セラミック部材13の中心となる箇所には、陽極12の円筒部12bを挿通させる挿通孔13cが形成されている。セラミック部材13は、陽極12の円板部12aに対向して配置され、円板部12aとの間には密閉性維持のためにOリングが取り付けられている。セラミック部材13が配置された状態では、挿通孔13cと陽極12の円筒部12bとの間に所定の隙間が形成されている。
【0032】
陽極12及びセラミック部材13をランプボディ11に固定するための押圧ブロック15は、絶縁性の材料で環状に形成された部材である。押圧ブロック15は、内周縁側の突出部15aでセラミック部材13のフランジ部13dをランプボディ11側へ押圧するようにしている。押圧ブロック15自体は、ボルトによりランプボディ11の端面11aに取り付けられている。押圧ブロック15はランプボディ11の端面11aから突出して取り付けられており、押圧ブロック15の内側にセラミック部材13と陽極12の円筒部12bとが配置された構成となっている。セラミック部材13の端面13aには、挿通孔13cが開口しており、挿通孔13cの中に陽極12の円筒部12bが配置されている。挿通孔13cの開口端は、グロー放電管1の開口部13bであり、開口部13bは円筒部12bの先端12eが臨む位置に形成されている。セラミック部材13の端面13aには、開口部13bを塞ぐように、試料ホルダ2が押し当てられる。試料ホルダ2は、押圧部9によって端面13aへ押圧される。
【0033】
図3は、実施の形態1に係る試料ホルダ2の内部構成を示す断面図である。試料ホルダ2は、有底筒状の外筒部21と、両端が開口した内筒部22と、試料20が固定される試料固定面231を有する電極23とを備えている。電極23は、本発明における第2電極に相当する。内筒部22の外面の大きさは、外筒部21の内面よりも若干小さく、かつグロー放電管1の開口部13bよりも大きい。図2に示すように、内筒部22は、外筒部21の開口端から同軸に挿入されることで外筒部21に内嵌する。外筒部21及び内筒部22は、本発明における当接部に相当する。外筒部21は金属製であり、内筒部22は熱伝導率の低い絶縁材製である。内筒部22の外面には、Oリング222が設けられている。Oリング222は、内筒部22が外筒部21に内嵌した状態で、外筒部21の内面と内筒部22の外面との間の隙間を埋める。内筒部22は、外筒部21に内嵌した状態で、軸方向に摺動することができる。これにより、外筒部21及び内筒部22からなる当接部は、伸縮することが可能である。内筒部22の先端は、当接部の開口端223である。開口端223には、Oリング221が設けられている。
【0034】
電極23は、金属製であり、板状の部分から柱状部232が突出した形状になっている。柱状部232は、外筒部21の底を貫通しており、外筒部21及び柱状部232は連結している。柱状部232の先端は、試料20が固定される試料固定面231になっている。試料固定面231は開口端223に臨んでいる。電極23の内部には、冷媒が流れる流路24が形成されている。流路24には、冷媒供給部5に連結された配管が連結される。流路24は、本発明における冷却部に相当する。冷媒供給部5から配管を通じて供給された冷媒が流路24内を流れ、電極23が冷却され、更に試料固定面231に固定された試料20が冷却される。図2には、冷媒の流れを矢印で示している。図示した流路24の形状は一例であり、流路24の形状はその他の形状であってもよい。電極23には、電源部4に接続された電力線233が接続されている。電極23には、電力線233を通じて電源部4から電圧が印加される。外筒部21及び内筒部22からなる当接部は、開口端223を塞いだ状態で内部が気密状態になるようになっている。また、外筒部21及び電極23の先端以外の外面は、断熱材25で覆われている。なお、外筒部21及び電極23は一体になっていてもよい。
【0035】
試料ホルダ2を利用したグロー放電発光分析方法を説明する。図4は、実施の形態1に係る試料ホルダ2の使用態様を示す断面図であり、図5は、グロー放電発生方法、及びグロー放電発光分析方法を説明するためのフローチャートである。図4中には、グロー放電管1の一部の断面を示している。まず、試料20を試料固定面231に貼り付けて、試料20を固定する(S1)。試料20は、導電性を有する物質で試料固定面231に貼り付けられることが望ましい。例えば、導電性テープ又は導電性接着剤で試料20を試料固定面231に貼り付ける。次に、内筒部22を外筒部21の開口端から挿入して外筒部21に内嵌させる。次に、図4に示すように、内筒部22が外筒部21から突出した状態で、試料ホルダ2の開口端223をグロー放電管1のセラミック部材13の端面13aに当接させる(S2)。この時、試料ホルダ2がグロー放電管1の開口部13bを塞ぐように、試料ホルダ2の開口端223を開口部13bの周縁に当接させる。この状態で、Oリング221は、試料ホルダ2の開口端223とセラミック部材13の端面13aとの間の隙間を埋める。また、この状態では、図4に示すように、開口部13bを通して、試料固定面231に固定された試料20は陽極12の円筒部12bの先端12eに対向している。また、S2の段階では、試料20と開口部13bとが離れ、間に隙間が空いているように、内筒部22の外筒部21に対する位置を調整する。試料20と開口部13bとの間に隙間が空いているので、グロー放電管1の内部と外筒部21及び内筒部22の内部とが開口部13bを通じて連通している。
【0036】
次に、グロー放電管1の内部と外筒部21及び内筒部22の内部とを減圧部7で減圧する(S3)。グロー放電管1の内部と外筒部21及び内筒部22の内部とが連通しているので、減圧部7がグロー放電管1の内部を減圧することに伴い、外筒部21及び内筒部22の内部も減圧される。次に、ガス供給部8でグロー放電管1の内部と外筒部21及び内筒部22の内部とへ、アルゴンガスを供給する(S4)。グロー放電管1の内部と外筒部21及び内筒部22の内部とが連通しているので、ガス供給部8がグロー放電管1の内部へアルゴンガスを供給することに伴い、外筒部21及び内筒部22の内部へもアルゴンガスが供給される。このように、外筒部21及び内筒部22の内部の減圧及びアルゴンガスの供給により、試料ホルダ2内の空気がアルゴンガスで置換される。
【0037】
次に、押圧部9で試料ホルダ2をグロー放電管1へ向けて押圧することにより、図2に示すように、試料20を陽極12の円筒部12bの先端12eへ接近させる(S5)。試料ホルダ2を押圧することにより、外筒部21及び内筒部22からなる当接部が短縮する向きに内筒部22が外筒部21に対して摺動する。このとき、図2に示すように、試料20がセラミック部材13の端面13aに当接して開口部13bが試料20で塞がれる位置まで、試料20を先端12eへ接近させることが望ましい。この状態では、試料20と先端12eとの距離が最短となり、グロー放電が発生し易くなる。次に、冷媒供給部5から試料ホルダ2への冷媒の供給を開始して、電極23の冷却を開始する(S6)。冷媒供給部5から供給された冷媒が流路24内を流れ、電極23が冷却され、試料20が冷却される。例えば、冷媒として液体窒素又は窒素ガスを用いることにより、マイナス100℃以下の温度に試料20を冷却することもできる。
【0038】
次に、制御部4で電源部3を制御し、電源部30から電極23に高周波電圧を供給することにより、グロー放電を発生させる(S7)。試料20が固定されている電極23に高周波電圧が供給されることにより、陽極12と電極23及び試料20との間に電圧が印加される。陽極12の円筒部12bの先端12eと試料20の表面との間の空間にアルゴンガスが随時供給され、陽極12と試料20との間に電圧が印加されることに応じて、アルゴンガスの雰囲気中で陽極12と試料20との間でグロー放電が発生する。グロー放電が発生することにより、アルゴンガス中でアルゴンイオンが生成する。生成したアルゴンイオンは電圧によって貫通孔12c内で加速し、円筒部12bの先端12eに対向した試料20の表面へアルゴンイオンが衝突し、スパッタリングが行われる。スパッタリングにより、試料20の表面では試料20の構成物質が粒子となって飛び出す。飛び出した粒子は、グロー放電によって励起され、粒子に含まれる元素に固有の波長で発光する。発生した光は窓16を透過して分光器2へ入射され、分光器2は入射された光を分光し、各波長の光の強度を測定し、測定結果を制御部4へ入力する。制御部4は、分光器2から入力された測定結果に基づいて、試料20に含まれる成分を分析するグロー放電発光分析の処理を行う(S8)。以上でグロー放電発光分析方法は終了する。
【0039】
以上詳述したごとく、本実施の形態においては、試料ホルダ2は、試料20がグロー放電管1の開口部13bから離れた状態で試料20を保持し、グロー放電管1の内部と外筒部21及び内筒部22の内部とを連通させる。このため、グロー放電管1の内部を減圧したときに外筒部21及び内筒部22の内部も減圧され、グロー放電管1の内部へアルゴンガスを供給したときに外筒部21及び内筒部22の内部へもアルゴンガスが供給される。このようにして、試料ホルダ2内の空気がアルゴンガスで置換される。試料ホルダ2内の空気がアルゴンガスで置換された状態では、流路24に冷媒を流して電極23を冷却した場合に試料ホルダ2の内部で結露が発生し難い。このため、試料20が十分に冷却されながらも、グロー放電を発生させるために試料20に印加される高周波電圧はほぼ減衰しない。また、本実施の形態においては、試料20は、電源部4から電圧を印加される電極23の試料固定面231に固定される。このため、ばねを通じて試料に電圧が印加される従来の技術に比べて、より直接的に試料20に電圧が印加される。また、本実施の形態においては、試料ホルダ2がグロー放電管1の陽極12の円筒部12bの先端12eに試料20を接近させるように移動させた上で、電圧が印加される。このように、試料20が先端12eに接近した状態で、従来技術よりも直接的に試料20に電圧が印加され、またこの電圧がほぼ減衰しないので、グロー放電発光分析を行うために十分なグロー放電が容易に発生する。従って、グロー放電発光分析装置は、試料20を十分に冷却しながら試料20のグロー放電発光分析を行うことができる。この結果、熱による影響を排除した試料20の成分分析の結果が得られる。
【0040】
(実施の形態2)
図6は、実施の形態2に係る試料ホルダ2の内部構成を示す断面図である。グロー放電発光分析装置の試料ホルダ2以外の構成は、実施の形態1と同様である。試料ホルダ2は、内筒部26と、両端が開口した外筒部27と、電極23とを備えている。電極23は、金属製であり、板状の部分から柱状部232が突出した形状になっている。内筒部26は、電極23の柱状部232に嵌合している。内筒部26の底は電極23で塞がれており、内側には柱状部232が位置している。電極23の先端は試料固定面231になっている。外筒部27の外面の大きさは、グロー放電管1の開口部13bよりも大きく、外筒部27の内面の大きさは、内筒部26の外面よりも若干大きい。外筒部27は、内筒部26に外嵌している。内筒部26及び外筒部27は、本発明における当接部に相当する。内筒部26及び外筒部27は熱伝導率の低い絶縁材製である。内筒部26の外面には、Oリング261が設けられている。Oリング261は、内筒部26の外面と外筒部27の内面との間の隙間を埋める。外筒部27は、内筒部26に外嵌した状態で、軸方向に内筒部26に対して摺動することができる。これにより、内筒部26及び外筒部27からなる当接部は、伸縮することが可能である。外筒部27の先端は、当接部の開口端272である。開口端272には、Oリング271が設けられている。
【0041】
実施の形態1と同様に、電極23の内部には、冷媒が流れる流路24が形成されている。流路24には、冷媒供給部5に連結された配管が連結される。図示した流路24の形状は一例であり、流路24の形状はその他の形状であってもよい。電極23には、電源部4に接続された電力線233が接続されている。内筒部26及び外筒部27からなる当接部は、開口端272を塞いだ状態で内部が気密状態になるようになっている。また、電極23の側面及び底面は断熱材25で覆われている。なお、内筒部26及び電極23は一体になっていてもよい。
【0042】
図7及び図8は、実施の形態2に係る試料ホルダ2の使用態様を示す断面図である。図7及び図8中には、グロー放電管1の一部の断面を示している。本実施の形態でも、図5のフローチャートに示したグロー放電発生方法、及びグロー放電発光分析方法を行う。試料20を試料固定面231に貼り付けて、試料20を固定する(S1)。次に、外筒部27が内筒部26からある程度突出した状態で、試料ホルダ2の開口端272をグロー放電管1のセラミック部材13の端面13aに当接させる(S2)。図7は、外筒部27が内筒部26からある程度突出した状態で開口端272を端面13aに当接させた状態を示している。この時、試料ホルダ2がグロー放電管1の開口部13bを塞ぐように、試料ホルダ2の開口端272を開口部13bの周縁に当接させる。Oリング271は、試料ホルダ2の開口端272とセラミック部材13の端面13aとの間の隙間を埋める。図7に示すように、試料20は陽極12の円筒部12bの先端12eに対向しており、試料20と開口部13bとの間に隙間が空いている。
【0043】
次に、グロー放電管1の内部と内筒部26及び外筒部27の内部とを減圧部7で減圧し(S3)、ガス供給部8でグロー放電管1の内部と内筒部26及び外筒部27の内部とへアルゴンガスを供給する(S4)。試料ホルダ2内の空気がアルゴンガスで置換される。次に、押圧部9で試料ホルダ2をグロー放電管1へ向けて押圧することにより、試料20を陽極12の円筒部12bの先端12eへ接近させる(S5)。図8は、試料20を先端12eへ接近させた状態を示している。このとき、図8に示すように、試料20がセラミック部材13の端面13aに当接するまで試料20を先端12eへ接近させることが望ましい。次に、冷媒供給部5から試料ホルダ2への冷媒の供給を開始して、電極23の冷却を開始する(S6)。図8には、冷媒の流れを矢印で示している。次に、電源部30から電極23に高周波電圧を供給することによりグロー放電を発生させ(S7)、試料20のグロー放電発光分析を行う(S8)。以上でグロー放電発光分析方法は終了する。
【0044】
本実施の形態においても、試料20がグロー放電管1の開口部13bから離れた状態で試料ホルダ2が試料20を保持して、試料ホルダ2内の空気をアルゴンガスで置換することができる。このため、試料20を冷却しながらも、試料ホルダ2内で結露が発生せず、グロー放電を発生させるための高周波電圧が減衰することが無い。また、本実施の形態においても、試料20が電極23の試料固定面231に固定されるので、ばねを通じて試料に電圧が印加される従来の技術に比べて、より直接的に試料20に電圧が印加される。また、本実施の形態においても、試料20がグロー放電管1の陽極12の円筒部12bの先端12eに十分に接近した状態で、電圧が印加される。従って、本実施の形態においても、グロー放電発光分析を行うために十分なグロー放電が容易に発生し、グロー放電発光分析装置は、試料20を十分に冷却しながら試料20のグロー放電発光分析を行うことができる。この結果、熱による影響を排除した試料20の成分分析の結果が得られる。
【0045】
なお、実施の形態1及び2においては、アルゴンガスを利用してグロー放電発光分析を行う形態を示したが、本発明は他のガスを用いる形態であってもよい。例えば、本発明はアルゴンガス以外の希ガスをグロー放電管1及び試料ホルダ2へ供給する形態であってもよく、アルゴンガス又は他の希ガスを含む複数種類のガスを供給する形態であってもよい。また、実施の形態1及び2においては、試料ホルダ2内の空気をアルゴンガスで置換してから電極23の冷却を行う形態を示したが、本発明は、試料ホルダ2の内部を減圧した状態で、試料ホルダ2へガスを供給することなく電極23の冷却を行う形態であってもよい。試料ホルダ2内の空気を置換せずとも、減圧によって空気が大幅に減少しているので、電極23の冷却時に結露が発生し難く、高周波電圧が著しく減衰することは無い。従って、この形態においても、十分なグロー放電を発生させ、試料20を冷却しながらグロー放電発光分析を行うことができる。また、実施の形態1及び2においては、冷媒が流路24を流れることで電極23を冷却する形態を示したが、グロー放電発光分析装置は、その他の方法で電極3を冷却する形態であってもよい。例えば、グロー放電発光分析装置は、ドライアイス等の冷媒に電極23が接触し、熱伝導によって電極23が冷却される形態であってもよい。また、例えば、グロー放電発光分析装置は、ドライアイス等の冷媒を電極23内に貯留させて電極23を冷却する形態であってもよい。また、本発明の用途はグロー放電発光分析に限るものではなく、グロー放電に伴うスパッタリングで試料を加工する作業に本発明を利用することも可能である。
【0046】
(実施の形態3)
図9は、実施の形態3に係るグロー放電発光分析装置の構成を示すブロック図である。グロー放電発光分析装置は、冷媒供給部5を備えていない。試料ホルダ2には、電極23の外に冷媒を配置した冷媒配置部51と、電極23及び冷媒配置部51の間を繋ぐ熱伝導部52とが付属している。
【0047】
図10は、実施の形態3に係る試料ホルダ2の内部構成を示す断面図である。電極23には、流路24は形成されていない。冷媒配置部51は、ドライアイス又は液体窒素等の冷媒53を内部に収納した容器である。冷媒配置部51は、電極23の外に配置されている。熱伝導部52は、電極23と冷媒配置部51との間を連結しており、電極23から冷媒配置部51へ熱を伝導させる部品である。例えば、熱伝導部52は、ヒートパイプであり、高温部が電極23に熱的に接触しており、低温部が冷媒配置部51内の冷媒53に熱的に接触している。また、例えば、熱伝導部52は、銅等の熱伝導率の高い熱伝導材で線状に形成された部材であり、一端が電極23に連結しており、他端が冷媒配置部51内の冷媒53に接触している。電極23の熱は、電極23から冷媒配置部51内の冷媒53へ熱伝導部52を通じて伝導し、電極23及び試料固定面231に固定された試料20が冷却される。なお、熱伝導部52は、電極23又は冷媒配置部51に対して取り外し可能な構成になっていてもよい。また、熱伝導部52は、電極23に連結した部分と冷媒配置部51に連結した部分とが分離可能になっており、使用時に連結される構成になっていてもよい。
【0048】
試料ホルダ2のその他の部分の構成は、実施の形態1又は2と同様である。図10には、試料ホルダ2が実施の形態1と同様に外筒部21及び内筒部22を備えた形態を示したが、試料ホルダ2は、実施の形態2と同様に内筒部26及び外筒部27を備えた形態であってもよい。また、グロー放電発光分析装置のその他の部分の構成は、実施の形態1又は2と同様である。
【0049】
本実施形態においては、熱伝導部52を通じた熱伝導により電極23及び試料20が冷却される。電極23内に直接に冷媒を導入する方法に比べて、グロー放電発光分析装置の構成が簡素となる。また、冷媒の扱いが容易となり、より確実な冷却が可能となる。また、冷媒53の補給が容易であり、冷却及びグロー放電発光分析を長時間継続することが容易となる。従って、グロー放電発光分析を長時間継続する必要のある試料の分析が可能となる。本実施の形態においても、実施の形態1及び2と同様に、グロー放電発光分析装置は、試料20を十分に冷却しながら試料20のグロー放電発光分析を行うことができる。
【符号の説明】
【0050】
1 グロー放電管
11 ランプボディ
12 陽極(第1電極)
12b 円筒部(端部)
13 セラミック部材
13b 開口部
15 押圧ブロック
2 試料ホルダ
20 試料
21、27 外筒部(当接部)
22、26 内筒部(当接部)
23 電極(第2電極)
231 試料固定面
24 流路(冷却部)
3 分光器
4 電源部
5 冷媒供給部
6 制御部
7 減圧部
8 ガス供給部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10